JP2006325458A - 仔稚魚の飼育装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
仔稚魚の魚体にダメージを与えることなく、飼育水中に適当な乱流強度を提供することで、仔稚魚の生残率を向上させる。
【解決手段】
仔稚魚及び餌料を含む飼育水中に、水を吐出させて、乱流エネルギー散逸率が1.0×10-8〜1.0×10-7m2s-3の範囲の乱流を飼育水中に生成させる。
【選択図】
図5

Description

本発明は、仔稚魚の飼育装置及び方法に係り、詳しくは、仔稚魚の生残率を向上させることができる飼育装置及び方法に関するものである。
稚仔の成長や生残には、餌密度の効果だけではなく、餌との遭遇確率がそれらの良し悪しを左右することが指摘されてきており、その遭遇確率を支配する乱流の影響を定量的に検討することが、近年極めて重要な問題となってきている。
乱流が生物に及ぼす影響に関する研究は、predator-preyモデルとして遊泳力をほとんど持たない動物プランクトンを対象にRothchild・Osborn(1988)によって提言され、その後、MacKenzie・Leggett(1991)がこの乱流による効果を仔魚に適用し、摂餌効率と乱流の関係をモデル化した。Sundby・Fossum(1990)は、ノルウェー北部海域でサンプリングおよび観測を行い、風速の変化に伴って大西洋マダラ仔魚の摂餌率が変わることを観察し、その風応力によって発生する乱流の影響を示唆した。これらを飼育実験によって検証するために、fathead minnow (コイ科の実験魚)を用いて、乱流の効果についての検証が行われた(Landry et al, 1995)。しかし、この実験では、乱流強度と仔魚の生残率の関係においてDome型のピークを明確に捉えられることは出来なかった。これは、メッシュの振動によって乱流を発生させていたことが原因として考えられる。この方法では弱いエネルギーの乱流しか発生させられないので、明瞭なピークを捉えるための実験設定ができなかったものと推察される。
その後、Utne-Palmら(2004)によって、乱流と摂餌行動の関係についての解析が行われ、木村ら(2004)によるキハダの飼育実験で、初めて中庸となる乱流強度でDome型のピークを持つ生残曲線を描くことに成功した(非特許文献1)。
しかし、木村らの実験では、エアーレーション強度を変化させることによって乱流強度を変えるという手法をとっていたが、エアーレーションによって生じる気泡は、仔魚に衝突し彼らに致命的な影響を及ぼし得る。特に、より強い乱流を生成しようとすれば、それだけ多くの気泡が生成されることになり、魚体へのダメージが尚更大きくなるおそれがある。
また、摂餌効率のための適当な乱流強度は、魚の種類によっても異なる(一つの理由としては、産卵海域が異なることが挙げられる)と考えられる。
木村伸吾, 中田英昭, Margulies D, Suter JM, Hunt SL(2004):海洋乱流がキハダマグロ仔魚に及ぼす影響、日本水産学会誌、70,175-178。
本発明の目的は、仔稚魚の魚体にダメージを与えることなく、飼育水中に適当な乱流強度を提供することで、仔稚魚の生残率を向上させることにある。
本発明の他の目的は、マグロ属魚類、特に、クロマグロの仔魚の生残率を向上させることにある。
かかる目的を解決するために本発明が採用した第1の技術手段は、仔稚魚及び餌料を含む飼育水を収容する水槽と、該水槽の飼育水中に乱流を生成させる乱流生成手段と、を有し、該乱流生成手段は、飼育水中に配設された一つ又は複数の水吐出口を有し、該吐出口から飼育水中に水を吐出することで飼育水中に乱流を生成させると共に、単位時間当たりの吐出水量を可変とすることで生成される乱流の強度を制御可能に構成したことを特徴とする仔稚魚の飼育装置、である。
本発明が採用した第2の技術手段は、仔稚魚及び餌料を含む飼育水中に、水を吐出させて、乱流エネルギー散逸率が1.0×10-8〜1.0×10-7m2s-3の範囲の乱流を飼育水中に生成させることを特徴とする仔稚魚の飼育方法、である。
本発明の対象となる仔稚魚は、好ましくは、仔魚である。なぜなら、仔魚は自ら水中を自由に移動できないため、乱流により餌料との遭遇確率を上昇させることが重要となるからである。また、餌料との遭遇確率を良好に確保するには、飼育水中には、仔稚魚に対して飽和量の餌料が含まれることが望ましい。
本発明の一つの好ましい態様では、飼育水中の乱流の強度は、飼育水中の乱流エネルギー散逸率を、1.0×10-8〜1.0×10-7m2s-3の範囲に制御することで達成される。飼育水中の乱流エネルギー散逸率が、1.0×10-8より小さいと、仔稚魚と餌料との遭遇確率が低過ぎることになる。飼育水中の乱流エネルギー散逸率が、1.0×10-7m2s-3より大きいと、餌遭遇確率は十分であるものの、乱流速度が大きすぎるため、仔魚が高速で通過する餌を捉えることができず、索餌成功率が低過ぎることになる。
本発明の対象となる魚類は、特には限定されず、海水魚、淡水魚、回遊魚、沿海魚等が含まれる。外洋性の回遊魚としては、クロマグロ、キハダ等のマグロ属魚類が例示され、沿岸域に産卵場を持つ魚種としては、マダイやヒラメが例示される。
本発明の一つの好ましい態様では、仔稚魚はマグロ属魚類の仔魚であり、飼育水中の乱流エネルギー散逸率を、1.0×10-8〜6.0×10-8m2s-3に制御するものである。マグロ属魚類がクロマグロの場合には、好ましくは、飼育水中の乱流エネルギー散逸率を、2.0×10-8〜5.0×10-8m2s-3に制御する。マグロ属魚類がキハダの場合には、好ましくは、飼育水中の乱流エネルギー散逸率を、1.0×10-8〜4.0×10-8m2s-3に制御する。
本発明が採用した第3の技術手段は、クロマグロの仔魚及び餌料を含む飼育水を収容する水槽と、該水槽の飼育水中に乱流を生成させる乱流生成手段と、を有し、該乱流生成手段によって、飼育水中の乱流エネルギー散逸率を、2.0×10-8〜5.0×10-8m2s-3の範囲に制御することを特徴とするクロマグロ仔魚の飼育装置、である。
本発明が採用した第4の技術手段は、クロマグロの仔魚及び餌料を含む飼育水中に、乱流エネルギー散逸率が2.0×10-8〜5.0×10-8m2s-3の範囲の、乱流を生成させることを特徴とするクロマグロ仔魚の飼育方法、である。
本発明において、好ましくは、乱流生成手段は、飼育水中に配設された一つ又は複数の水吐出口を有し、該吐出口から飼育水中に水を吐出することで飼育水中に乱流を生成させるものである。飼育水中により均一に乱流を生成させるには、吐出口は複数であることが好ましい。
本発明において、単位時間当たりの吐出水量の調節は、乱流生成手段がポンプを有する場合には、一つの態様では、出力の異なる2つ以上のポンプを用意し、一つ、あるいは、複数のポンプの組み合わせ、を選択することで、行う。また、他の態様では、前記ポンプの選択に代えて、あるいは、加えて、バルブの調整を調節することで、単位時間当たりの吐出水量を調節する。単位時間当たりの吐出水量は、典型的には、流速を意味し、吐出口から吐出される水の流速を制御することで単位時間当たり吐出水量を調節する。また、本明細書において、単位時間当たりの吐出水量の調節は、乱流生成手段が多数の吐出口を有する場合に、例えば独立して設けた各バルブの開閉によって実際に水を吐出する吐出口を選択することで、全体としての単位時間当たりの吐出水量を調節するものでもよい。
単位時間当たりの吐出水量を大きくすると、生成される乱流の強度も大きくなる。一般に、乱流エネルギー散逸率の値は、流速のほぼ2乗に比例する。単位時間当たりの吐出水量と生成される乱流の強度との関係は、吐出口の空間的配置や水槽の形状等の要因によって異なるが、ある特定の装置において、これらの要因が決定されていれば、単位時間当たりの吐出水量を調節することで生成される乱流の強度を制御することが可能である。
本発明の一つの好ましい態様では、乱流生成手段において、吐出口から水中に吐出する水は、一つあるいは複数のポンプを介して循環される水槽内の飼育水である。
本発明では、飼育水中に水を噴出することで飼育水中に乱流を生成させ、かつ、生成させる乱流の強度を制御可能としたので、飼育水中の仔稚魚に悪影響を及ぼすことなく、望ましい生残率を得ることができる適度な強度の乱流を生成することができ、効率的な仔魚の育成ができる。
本発明では、マグロ属魚類、特にクロマグロの仔魚の生残率を向上させることができる。
[飼育装置]
飼育装置は、飼育水を収容する水槽と、乱流生成手段と、を有する。乱流生成手段は、吸水パイプと、圧送パイプと、吸水パイプと圧送パイプの間に設けた循環水ポンプとを有し、吸水パイプの吸水口及び、圧送パイプの吐出口は、共に、飼育水中に配設されている。循環水ポンプによって、吸水パイプの吸水口から取り込んだ飼育水を、圧送パイプの吐出口から飼育水中に噴出させて、飼育水中に乱流を生成する。
より具体的には、図1に示すように、実験に用いた飼育装置は、飼育水を収容する円筒状の水槽1から構成される。吸水口を形成する吸水パイプ2の先端部は、飼育水内に位置しており、吸水パイプ2の基端部には、循環水ポンプ3が連結されている。吸水パイプ2の先端部には、行灯型ネット20が設けてあり、行灯型ネット20を介して、吸水口から飼育水が取り込まれる。循環水ポンプ3には、圧送パイプ4の基端部が連結されており、圧送パイプ4の先端部には、平面視十字状に形成された吐出パイプ5が連結されている。4つの吐出パイプから平面視十字状に配設された吐出パイプ5は、水槽1の底部に載置されており、各吐出パイプの周面には、複数の吐出口50が形成されている。圧送パイプ4にはバルブ6が設けてあり、吐出パイプ5の吐出口50から吐出される水の流速を調節できるようになっている。十字状の吐出パイプ5は、直径16mmの塩化ビニール製の円筒パイプであり、2cm間隔で直径3mmの穴が、鉛直方向に対して左右45°方向に2ヶ所ずつ設けてある。吐出パイプ5を十字状に配設し、かつ、吐出パイプ5には、鉛直方向に対して左右45°方向に位置して吐出口50を設けることで、水槽1内の飼育水中に、より均一な乱流を生成できるようになっている。
実験では、透明FRP製500Lの円筒状の水槽(直径;1050,深さ;740mm)を用いたが、本発明に使用される水槽の形状や大きさは限定されない。また、実験では、十字状の吐出パイプを用いたが、飼育水中により均一な乱流を生成するものであれば、吐出パイプの空間的配設や吐出口の個数や位置も限定されない。実験では、底面から上方に向って水を噴出させているが、水の噴出方向は、これには限定されず、例えば、側方から横方向に水を噴出させてもよい。また、圧送パイプ4と吐出パイプ5を一部材から一体的に形成してもよい。乱流による摂餌生残効率の向上を図るのであれば、可能な限り層流状態にならないようにする必要がある。特に、大型水槽で行うのであれば表層と底層に均一に乱流の発生できるように、乱流生成手段を構成する必要がある。
飼育実験に用いた飼育装置では、クロマグロの仔魚を500Lの水槽に収容した飼育水中に、密度20000尾/tの割合で収容し、餌料としてL型ワムシとナンノクロロプシスをそれぞれ密度5個/ml、500000-700000cell/mlとなるように給餌した。餌密度を一定に保つため、毎日7時及び13時に10ml駒込ピペットを用いて水槽内3カ所で採水して残餌量を調べ、不足分を給餌した。
ポンプは、水陸両用ポンプ(レイシー社製,出力20l/min及び40l/min)を使用した。吐出水量の調整は、ポンプの種類、個数及びバルブで調節した。吐出口からの吐出水量を変えることにより、飼育水中に生成される乱流強度を6段階(Low、Semi-low、Mid、Semi-high、High、Extra high)に設定した。そして、飼育水内の乱流エネルギー散逸率を算出することにより、乱流強度を定量的に評価した。
[乱流強度]
三次元方向の流速が計測可能なDoppler流速計(Nortek社製、精度は測定値の±0.5%±1mm/s)を用いて水槽内の12点(1平面6点を2層)の流速を毎秒15回で計測し、その計測値に基づいて乱流エネルギー散逸率を算出することにより、乱流強度を定量的に評価した(図2参照)。乱流強度の定量化は、得られた流速データから以下の式に従って乱流エネルギー散逸率を計算することで行う。
Figure 2006325458
νは分子粘性係数(10-6m2s-1)、zは鉛直方向の2層間の距離、u’は平均流速からの偏差を表す。この乱流エネルギー散逸率εを乱流強度として実験を行った。
[餌との遭遇確率]
餌遭遇率の計算について説明する。Lough(1996)の式を用いて、乱流段階ごとのワムシと仔魚の遭遇率を求めた。仔魚の餌生物に対する相対速度V (relative velocity; ms-1)は以下の式、
Figure 2006325458
で表される。uは餌生物(ワムシ)の遊泳速度(ms-1)、vは仔魚の遊泳速度(ms-1)およびwは乱流速度(ms-1)である。また、乱流速度wの算出にあたっては、MacKenzie・Leggett(1991)の以下の式を用いた。
Figure 2006325458
εは乱流エネルギー散逸率(Wm-3)で本実験によって得られた値を用いた。rは餌生物と捕食者の隔離距離(m)を表す。また、本研究ではrを餌密度N (prey/m3)より、N-0.333と近似した。その上で(1)(2)式より、餌遭遇率contact rate C(prey/s)を以下の式から算出した。
Figure 2006325458
Dは、仔魚の餌認知面積に餌密度Nを乗じて求めた。認知面積はクロマグロ仔魚に関する知見が存在しないため、Laurence(1985)が、飼育実験で求めたcodの認知面積2/3π(0.75BL)2を用いた。BL(mm)は仔魚体長を表す。以上より、餌遭遇率Cを、仔魚の遊泳速度(1mm/s,5mm/s,8mm/s)ごとに求めた。
実験では、生残尾数、体長および消化管内ワムシ数を計測するとともに、環境水の水質を調べるために溶存酸素量とpHの測定も併せて行った。生残尾数から生残率を、消火管内ワムシ数から摂餌数を調査した。
[実験結果]
測流の結果、6段階の乱流の乱流エネルギー散逸率は、小さい方から(方法で示した試験区に対応)ε=7.0×10-9,1.3×10-8,2.2×10-8,2.3×10-8,4.0×10-8,2.0×10-7(m2s-3)と算出された。
図3に乱流レベルと孵化後4日における生残率の関係を示す。乱流レベルHighでは、約75%と最も生残率が高くなるDome型の生残率曲線が得られ、その最大値は、基準として設定したLowと比較して約3〜4倍の高生残率を示した。また、非常に強い乱流を与えた乱流レベルExtra highでは、生残率が約1%と非常に低い生残率となり、この強さは仔魚の生残に適していないことが示された。実際の海洋条件に対比させると、Highにおける乱流エネルギー散逸率の値は、風速7m/s程度の風によって表層で発生する乱流の値と一致した(Lough,1996)。このことから、本種はそのような乱流環境を持つ海域を産卵場としていることが考えられる。
摂餌数は、体長TL=3.9±0.05mm時の仔魚の摂餌数を比較した。その結果を図4に示す。生残率でピークを示した乱流レベルHighにおいて空胃率は約2%とほぼ全ての個体で摂餌がなされていることがわかった。消化管内ワムシ数にもHighで10ind/fishとピークが認められ、Lowと比較すると約5倍の違いがあった。消化管内ワムシ数と生残率のピークが一致し、それらの間に高い相関が認められたことは、初期摂餌の成否が生残を決定する重要な要件の一つであり、初期摂餌の環境として、適度な強度を持つ乱流の存在が重要であることが示唆された。一方、乱流レベルExtra highにおいては、空胃率が90%とほとんどの個体で摂餌が認められなかった。
各乱流段階における餌遭遇率(ind/sec)からは、どの遊泳速度においても、乱流段階が上がるにつれ遭遇率が上昇することが認められた。どの段階でも、遊泳速度の速い8mm/secで最も遭遇率が高かった。乱流レベルHighとLow間での遭遇率の差は、遊泳速度1mm/secの場合、約2倍以上の遭遇率の違いが生じたが、遊泳速度8mm/secの場合では、1.5倍ほどしか生じず、遊泳力が増加すると、餌遭遇率に対する乱流の効果が低くなった。成長段階が進むにつれて摂餌数と乱流強度の関係がみられなくなった。これは、仔魚の遊泳能力の向上に起因するものと考えられる。魚谷(1990) らは、現場海域における仔魚の食性調査より、仔魚の消化管内容物組成が体長5mmを境に変化することから、体長5mm以降に遊泳力が急激に増大するとしている。つまり、体長5mmを境に遊泳力備わるために、摂餌に乱流が寄与する割合が小さくなったものと考えられる。
単位時間あたりの摂餌数Pingは、単位時間あたりの遭遇回数Penc、単位時間あたり摂餌行動回数Pan、索餌成功率Pcapの関数で示される(Hollong, 1959)。今回の結果から、乱流レベルHighまでは餌遭遇率の増加に伴い摂餌数が増加する傾向が認められた。しかし、乱流レベルExtra highにおいては餌遭遇率が2.5(ind/sec)と高いにも関わらず、実際の飼育実験の結果では摂餌数の減少がみられた。これは、乱流レベルExtra highでは乱流速度が大きすぎるため、仔魚が高速で通過する餌を捉えることができず、索餌成功率Pcapが著しく低下するため、摂餌数Pingが低下したものと考えられる。飼育実験で乱流レベルHighにおいて最も摂餌数が多いことから、遊泳力が1-5mm/secのクロマグロの前期仔魚は、餌遭遇率は1.4(ind /sec)で最も摂餌成功率の上がることが分かった。
本実験の結果とキハダの乱流実験(非特許文献1)の結果を比較すると(図5)、生残率のピークを持つ乱流エネルギー散逸率は互いに近い値をとることが分かった。この値は1.0〜5.0×10-8m2s-3の範囲にあり、このことは、一定強度の乱流による摂餌効率の向上をマグロ属魚類の共通の特徴として取り扱える可能性を示唆するものである。尚、キハダにおける実験は、エアーレーションによって乱流を発生させている点に留意する必要がある。また、本実験結果では、HighとExtra highの間の乱流設定に幅があるので、その間にピークがくる可能性が残っているが、クロマグロにおいては、望ましい乱流エネルギー散逸率は、3.0×10-8〜4.0×10-8m2s-3の範囲にあると考えられる。
本発明は、魚類、好ましくは、マグロ属魚類の増養殖に利用可能である。
乱流レベルごとの孵化後4日における生残率。 流速の測定点を示す図である。 乱流レベルごとの孵化後4日における生残率を示す図である。 乱流レベルごとの消化管内摂餌数(棒グラフ)と空胃率(点線)を示す図である。 乱流エネルギー散逸率とキハダおよびクロマグロの生残率の関係を示す図である。

Claims (10)

  1. 仔稚魚及び餌料を含む飼育水を収容する水槽と、
    該水槽の飼育水中に乱流を生成させる乱流生成手段と、を有し、
    該乱流生成手段は、飼育水中に配設された一つ又は複数の水吐出口を有し、該吐出口から飼育水中に水を吐出することで飼育水中に乱流を生成させると共に、単位時間当たりの吐出水量を可変とすることで生成される乱流の強度を制御可能に構成したことを特徴とする仔稚魚の飼育装置。
  2. 前記乱流生成手段によって、飼育水中の乱流エネルギー散逸率を、1.0×10-8〜1.0×10-7m2s-3の範囲に制御することを特徴とする請求項1に記載の飼育装置。
  3. 前記仔稚魚はマグロ属魚類の仔魚であり、飼育水中の乱流エネルギー散逸率を、1.0×10-8〜6.0×10-8m2s-3に制御することを特徴とする請求項2に記載の飼育装置。
  4. 前記マグロ属魚類はクロマグロであり、飼育水中の乱流エネルギー散逸率を、2.0×10-8〜5.0×10-8m2s-3に制御することを特徴とする請求項3に記載の飼育装置。
  5. 吐出口から水中に吐出する水は、一つあるいは複数のポンプを介して循環される水槽内の飼育水であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の飼育装置。
  6. 仔稚魚及び餌料を含む飼育水中に、水を吐出させて、乱流エネルギー散逸率が1.0×10-8〜1.0×10-7m2s-3の範囲の乱流を飼育水中に生成させることを特徴とする仔稚魚の飼育方法。
  7. 前記仔稚魚はマグロ属魚類の仔魚であり、飼育水中の乱流エネルギー散逸率を、1.0×10-8〜6.0×10-8m2s-3に制御することを特徴とする請求項6に記載の飼育方法。
  8. 前記マグロ属魚類はクロマグロであり、飼育水中の乱流エネルギー散逸率を、2.0×10-8〜5.0×10-8m2s-3に制御することを特徴とする請求項7に記載の飼育方法。
  9. クロマグロの仔魚及び餌料を含む飼育水を収容する水槽と、
    該水槽の飼育水中に乱流を生成させる乱流生成手段と、を有し、
    該乱流生成手段によって、飼育水中の乱流エネルギー散逸率を、2.0×10-8〜5.0×10-8m2s-3の範囲に制御することを特徴とするクロマグロ仔魚の飼育装置。
  10. クロマグロの仔魚及び餌料を含む飼育水中に、乱流エネルギー散逸率が2.0×10-8〜5.0×10-8m2s-3の範囲の、乱流を生成させることを特徴とするクロマグロ仔魚の飼育方法。
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