JP2006319390A - アレイスピーカ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】全周波数帯域で同等の指向性を実現する。
【解決手段】スピーカアレイ装置は、入力音声信号を複数の周波数帯域に分割するフィルタ21,22と、分割された帯域に応じた異なるアレイ長を有する複数のスピーカアレイ106,107と、外部から設定された音響ビームの広がり角度と各スピーカアレイのアレイ長に基づいて焦点距離を帯域毎に計算する計算部7と、前記分割された帯域の音声信号が対応するスピーカアレイから出力され、計算された焦点距離だけ離れた空間上の焦点に到達するように、各スピーカユニットを独立に駆動する指向性制御手段(遅延部23,24、制御部25、D/Aコンバータ3,4、アンプ5、6)とを有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、複数のスピーカユニットから音声信号を空間上の所望の位置に向けて指向性を制御して出力するアレイスピーカ装置に関するものである。
従来より、複数のスピーカユニットをマトリクス状に配置したアレイスピーカ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。図7は、従来のアレイスピーカ装置のバッフル板の平面図である。図7において、101はアレイスピーカ装置の前面のバッフル板、102はバッフル板101に取り付けられたスピーカユニット、Cはアレイ長、Pはアレイピッチである。アレイスピーカ装置の特徴は、所望の焦点方向に指向性を有するビーム状の音声信号を出力できる点である。
従来のアレイスピーカ装置では、図8、図9に示すように、音響ビームの指向性強さをバッフル板101から焦点Fまでの焦点距離Aにより設定していた。図8は焦点Fがスピーカユニット102の後方にある場合、図9は焦点Fがスピーカユニット102の前方にある場合を示している。図8、図9において、Bは音響ビームの広がり角度、Eは視聴位置Uにおける音響ビームの幅である。音響ビームの広がり角度Bは、焦点距離Aとアレイ長Cとが決まると自動的に決まる。また、音響ビームの幅Eは、焦点距離Aとアレイ長Cとバッフル板101から視聴位置Uまでの距離Dとが決まると自動的に決まる。焦点距離Aが小さくなれば、音響ビームの広がり角度B及び幅Eは大きくなり、焦点距離Aが大きくなれば、広がり角度B及び幅Eは小さくなる。
特開平5−41897号公報
ところで、従来のアレイスピーカ装置では、装置全体の再生周波数を広帯域化するために、個々のスピーカユニットの再生周波数帯域を広くする必要があり、スピーカユニットのコストが高くなって、その結果スピーカ装置が高価になるという問題点があった。また、アレイスピーカ装置において指向性制御の低域周波数限界を低くするためには、アレイ長を大きくする必要があり、スピーカユニットの数量が多くなって、コストが高くなる。そこで、スピーカユニットの数量を減らすために個々のスピーカユニットの口径を大きくすると、アレイピッチが大きくなり、指向性制御の高域周波数限界が低くなってしまい、スピーカユニット自体の高域再生周波数限界も低くなるという問題点があった。一方、アレイスピーカ装置において指向性制御の高域周波数限界を高くするためには、アレイピッチを小さくする必要があり、個々のスピーカユニットの口径を小さくしなければならない。しかし、スピーカユニットの口径を小さくすると、スピーカユニット自体の低域再生周波数限界が高くなってしまい、また必要なアレイ長を確保するためにスピーカユニットの数量が多くなって、コストが高くなるという問題点があった。
そこで、以上の問題点を解決するために、図10に示すように、音声信号の再生周波数帯域を複数に分割して、分割した各帯域に応じた複数種類のスピーカユニットをバッフル板101に配置することが考えられる。図10において、104は音声信号のクロスオーバー周波数以上の高域成分を再生する高音用スピーカユニット、105は音声信号のクロスオーバー周波数以下の低域成分を再生する低音用スピーカユニット、106は複数の高音用スピーカユニット104からなる高音用スピーカアレイ、107は複数の低音用スピーカユニット105からなる低音用スピーカアレイ、C1は高音用スピーカアレイ106のアレイ長、C2は低音用スピーカアレイ107のアレイ長、P1は高音用スピーカアレイ106のアレイピッチ、P2は低音用スピーカアレイ107のアレイピッチである。
図10に示すアレイスピーカ装置の場合、通常、C1<C2となる。この場合、図11のように高音用スピーカアレイ106と低音用スピーカアレイ107で焦点距離Aを同じにすると、高音ビームの広がり角度B1と低音ビームの広がり角度B2が異なり、また視聴位置Uにおける高音ビームの幅E1と低音ビームの幅E2も異なる。すなわち、B1<B2、E1<E2となる。図11はマルチウェイ構成の場合を示しているが、帯域毎のスピーカユニットを全て同口径とした場合でも、アレイ長が帯域毎に異なる場合には、音響ビームの広がり角度及び幅が帯域毎に異なる。アレイスピーカ装置で指向性を制御する場合、全周波数帯域でほぼ同様の指向性を持つことが望ましいが、分割した帯域毎にスピーカユニットを配置すると、帯域毎に指向性が異なることになる。
以上のように、図7に示した従来のアレイスピーカ装置では、コストが高くなるという問題点があり、さらに指向性制御の周波数限界を低域化するための条件と高域化するための条件が両立しないという問題点があった。また、この問題点を解決するために、図10に示したように帯域毎にスピーカユニットを配置すると、帯域毎に指向性が異なるという問題点があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、コストの低減と、指向性制御の高域周波数限界と低域周波数限界の独立した設定と、全周波数帯域で同等の指向性とを実現することができるアレイスピーカ装置を提供することを目的とする。
本発明は、複数のスピーカユニットから構成されるスピーカアレイから音声信号を空間上の焦点に向けて指向性を制御して出力するアレイスピーカ装置において、入力音声信号を複数の周波数帯域に分割する分割手段と、前記分割された帯域に応じた異なるアレイ長を有する複数のスピーカアレイと、外部から設定された音響ビームの広がり角度と各スピーカアレイの既知のアレイ長に基づいて焦点距離を帯域毎に計算する計算手段と、前記分割された帯域の音声信号が対応するスピーカアレイから出力され、前記計算された焦点距離だけ離れた空間上の焦点に到達するように、各スピーカユニットを独立に駆動する指向性制御手段とを有するものである。
また、本発明のアレイスピーカ装置は、入力音声信号を複数の周波数帯域に分割する分割手段と、前記分割された帯域に応じた異なるアレイ長を有する複数のスピーカアレイと、前記複数のスピーカアレイのうちいずれか1つについて外部から設定された焦点距離と各スピーカアレイの既知のアレイ長に基づいて、各スピーカアレイの音響ビームの広がり角度が同じになるように、前記焦点距離が設定されていないスピーカアレイについて焦点距離を帯域毎に計算する計算手段と、前記分割された帯域の音声信号が対応するスピーカアレイから出力され、前記設定又は計算された焦点距離だけ離れた空間上の焦点に到達するように、各スピーカユニットを独立に駆動する指向性制御手段とを有するものである。
また、本発明のアレイスピーカ装置は、入力音声信号を複数の周波数帯域に分割する分割手段と、前記分割された帯域に応じた異なるアレイ長を有する複数のスピーカアレイと、外部から設定された、視聴位置における音響ビームの幅と各スピーカアレイの既知のアレイ長に基づいて焦点距離を帯域毎に計算する計算手段と、前記分割された帯域の音声信号が対応するスピーカアレイから出力され、前記計算された焦点距離だけ離れた空間上の焦点に到達するように、各スピーカユニットを独立に駆動する指向性制御手段とを有するものである。
また、本発明のアレイスピーカ装置の1構成例において、前記指向性制御手段は、前記分割された帯域の音声信号に対してそれぞれ遅延時間を付加した音声信号をこの帯域に対応するスピーカユニットの数だけ生成することを帯域毎に行う遅延部と、前記遅延時間が付加された音声信号をそれぞれ増幅して各スピーカユニットを駆動するアンプと、帯域毎の焦点距離に基づいて前記遅延時間をスピーカユニット毎に設定することを帯域毎に行う制御部とを有するものである。
本発明によれば、音声信号の再生周波数帯域を複数に分割して、分割した帯域に応じた異なるアレイ長を有する複数のスピーカアレイを用いることにより、個々のスピーカユニットの受け持つ再生周波数帯域を従来よりも狭くできるので、スピーカユニットのコストを低減することができる。また、高音を受け持つスピーカユニットの口径を小さくすることができるので、高音用スピーカアレイのアレイピッチを小さくすることができ、アレイスピーカ装置の指向性制御の高域周波数限界を高くすることができる。また、高音用スピーカユニット自体の高域再生周波数限界も高くすることができる。一方、低音を受け持つスピーカユニットの口径を大きくすることができるので、アレイスピーカ装置の指向性制御の低域周波数限界を低くするために必要なアレイ長を従来よりも少ないスピーカ数量で実現することができる。また、低音用スピーカユニット自体の低域再生周波数限界も低くすることができる。その結果、本発明によれば、指向性制御の高域周波数限界と低域周波数限界を独立に設定することができる。また、本発明によれば、外部から設定された音響ビームの広がり角度と各スピーカアレイのアレイ長に基づいて焦点距離を帯域毎に計算することにより、あるいは複数のスピーカアレイのうちいずれか1つについて外部から設定された焦点距離と各スピーカアレイのアレイ長に基づいて、焦点距離が設定されていないスピーカアレイについて焦点距離を帯域毎に計算することにより、あるいは外部から設定された、視聴位置における音響ビームの幅と各スピーカアレイのアレイ長に基づいて焦点距離を帯域毎に計算することにより、全周波数帯域で指向性の強さをほぼ同じにすることができる。
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態においても、バッフル板上のスピーカユニットの配置は図10と同じであるので、図10の符号を用いて本実施の形態を説明する。本実施の形態は、アレイスピーカ装置の再生周波数帯域を複数に分割して、分割した各帯域に応じた複数種類のスピーカユニットをそれぞれ対応する帯域毎に直線状に配置したものである。図10の例では、再生周波数帯域を2つに分割して、高音用スピーカユニット104と低音用スピーカユニット105をそれぞれ直線状に配置している。高音用スピーカユニット104と低音用スピーカユニット105は、それぞれの口径に応じたピッチP1,P2で配置される。
高音用スピーカユニット104が受け持つ指向性制御の低域周波数限界はクロスオーバー周波数迄でよいので、高音用スピーカユニット104の口径は図7に示したスピーカユニット102よりも小さくなる。高音用スピーカアレイ106のアレイ長C1は、クロスオーバー周波数迄の指向性制御を行うのに十分な長さに設定すればよい。また、低音用スピーカユニット105が受け持つ指向性制御の高域周波数限界はクロスオーバー周波数迄でよいので、低音用スピーカユニット105の口径はスピーカユニット102よりも大きくなる。低音用スピーカアレイ107のアレイ長C2は、アレイスピーカ装置の指向性制御の低域周波数限界設計値に合わせた長さに設定すればよい。
図1は、本実施の形態のアレイスピーカ装置の回路構成を示すブロック図である。アレイスピーカ装置は、高音用スピーカユニット104(104−1〜104−n)と、低音用スピーカユニット105(105−1〜105−m)と、A/Dコンバータ1と、デジタルシグナルプロセッサ(以下、DSPとする)2と、D/Aコンバータ3(3−1〜3−n),4(4−1〜4−m)と、アンプ5(5−1〜5−n),6(6−1〜6−m)と、計算部7とを有する。DSP2は、フィルタ21,22と、遅延部23,24と、制御部25とを有する。フィルタ21,22は分割手段を構成し、遅延部23,24と制御部25とD/Aコンバータ3,4とアンプ5、6とは指向性制御手段を構成している。
まず、A/Dコンバータ1は、入力音声信号をディジタル信号に変換してDSP2に出力する。入力音声信号がディジタル信号の場合には、A/Dコンバータ1を介さずにDSP2に直接入力してよいことは言うまでもない。
次に、DSP2のフィルタ21は、入力音声信号の高域成分を抽出し、フィルタ22は、低域成分を抽出する。
フィルタ21を通過した入力音声信号の高域成分は、遅延部23に入力され、遅延部23によりそれぞれ遅延時間が付加されたn個(高音用スピーカユニット104の個数)の高域成分となる。このとき、高音用スピーカユニット104−i(i=1,2,・・・・n)に供給される高域成分に対して遅延部23が付加する遅延時間は、スピーカユニット104−iから放射される音声が空間上の所定の焦点に向かうように調整される。遅延部23の遅延時間は、焦点の位置と各スピーカユニット104−1〜104−nの位置とに基づいて制御部25によりスピーカユニット毎に計算され、遅延部23に設定される。
ここで、遅延時間の調整について図2を用いて説明する。焦点Fからの距離がLである円弧をZとし、焦点Fと各スピーカユニット104−1〜104−nとを結ぶ直線を延長して、これら延長した直線が円弧Zと交わる交点上に図2の破線で示すような仮想のスピーカユニット108−1〜108−nを配置することを考える。これら仮想のスピーカユニット108−1〜108−nから放射される音声は焦点Fに同時に到達する。実際のスピーカユニット104−i(i=1,2,・・・・n)から放射する音声を焦点Fに同時に到達させるためには、スピーカユニット104−iとこれに対応する仮想のスピーカユニット108−iとの間の距離に応じた遅延(時間差)をスピーカ104−iから出力する音声に付加すればよい。これにより、焦点Fに向かって音響ビームを放出するような指向性を持った音圧分布を得ることができる。
次に、フィルタ22を通過した入力音声信号の低域成分は、遅延部24に入力され、遅延部24によりそれぞれ遅延時間が付加されたm個(低音用スピーカユニット105の個数)の低域成分となる。このとき、低音用スピーカユニット105−j(j=1,2,・・・・m)に供給される低域成分に対して遅延部24が付加する遅延時間は、スピーカユニット105−jから放射される音声が空間上の所定の焦点に向かうように調整される。遅延部24の遅延時間は、高域成分の場合と同様に、焦点の位置と各スピーカユニット105−1〜105−mの位置とに基づいて制御部25によりスピーカユニット毎に設定される。
遅延部23により遅延時間が付加されたn個の高域成分は、D/Aコンバータ3−1〜3−nによってアナログ信号に変換され、一方、遅延部24により遅延時間が付加されたm個の低域成分は、D/Aコンバータ4−1〜4−mによってアナログ信号に変換される。そして、アンプ5−1〜5−nは、D/Aコンバータ3−1〜3−nの出力信号を増幅して高音用スピーカユニット104−1〜104−nを駆動し、アンプ6−1〜6−mは、D/Aコンバータ4−1〜4−mの出力信号を増幅して低音用スピーカユニット105−1〜105−mを駆動する。こうして、音声信号の高域成分と低域成分をそれぞれ所定の焦点に向けて出力することができる。
次に、本実施の形態における音響ビームの指向性強さの設定方法を図3、図4を用いて説明する。図3は焦点がスピーカユニット104,105の後方にある場合、図4は焦点がスピーカユニット104,105の前方にある場合を示している。図3、図4において、F1は高音用スピーカアレイ106の焦点、F2は低音用スピーカアレイ107の焦点、A1は高音用スピーカアレイ106の焦点距離、A2は低音用スピーカアレイ107の焦点距離である。
設計者又はユーザは、図1のスピーカアレイ装置に対して音響ビームの広がり角度Bを設定する。計算部7は、設定された広がり角度Bと高音用スピーカアレイ106のアレイ長C1から高音用スピーカアレイ106の焦点距離A1を計算すると共に、広がり角度Bと低音用スピーカアレイ107のアレイ長C2から低音用スピーカアレイ107の焦点距離A2を計算する。そして、計算部7は、計算した焦点距離A1,A2をDSP2の制御部25に渡す。
前述のとおり、制御部25は、焦点距離A1と高音用スピーカユニット104−1〜104−nの位置に基づいてスピーカユニット104毎に遅延部23の遅延時間を計算して設定し、また焦点距離A2と低音用スピーカユニット105−1〜105−mの位置に基づいてスピーカユニット105毎に遅延部24の遅延時間を計算して設定する。こうして、音響ビームの指向性強さが設定される。
以上のように、本実施の形態では、高音用スピーカユニット104と低音用スピーカユニット105をそれぞれ直線状に配置することで、図7に示した従来のアレイスピーカ装置に比べてスピーカユニットの数量を低減でき、コストを削減することができる。本実施の形態は、水平方向(図10の左右方向)の指向性を重要視したものである。このため、高音用スピーカユニット104と低音用スピーカユニット105をそれぞれ水平方向に直線状に配置している。
また、本実施の形態では、アレイスピーカ装置の再生周波数帯域を分割して、分割した周波数帯域に応じたスピーカユニット104,105を用いることにより以下のような効果を奏する。すなわち、高音用スピーカユニット104が受け持つ指向性制御の低域周波数限界はクロスオーバー周波数迄でよいので、スピーカユニット自体の低域再生周波数限界は、全帯域を受け持つ従来のスピーカユニットに比べて高くてよく、高音用スピーカユニット104の口径を小さくすることができる。その結果、高音用スピーカアレイ106のアレイピッチP1を小さくすることができるので、アレイスピーカ装置の指向性制御の高域周波数限界を高くすることができる。また、前述のとおり高音用スピーカユニット104が受け持つ指向性制御の低域周波数限界はクロスオーバー周波数迄でよいので、高音用スピーカアレイ106のアレイ長C1を短くすることができ、その結果高音用スピーカユニット104の数量を少なくできる。
また、低音用スピーカユニット105が受け持つ指向性制御の高域周波数限界はクロスオーバー周波数迄でよいので、低音用スピーカアレイ107のアレイピッチP2は図7に示した従来のアレイピッチPよりも大きくてよく、低音用スピーカユニット105の口径を大きくすることができる。その結果、アレイスピーカ装置の指向性制御の低域周波数限界を低くするために必要なアレイ長C2を従来よりも少ないスピーカ数量で実現することができる。また、低音用スピーカユニット105の口径を大きくすることができるので、スピーカユニット自体の低域再生周波数限界も低くすることができる。
また、本実施の形態では、音響ビームの広がり角度Bから高音用スピーカアレイ106の焦点距離A1と低音用スピーカアレイ107の焦点距離A2を計算して、高音用スピーカアレイ106と低音用スピーカアレイ107の指向性を独立に制御するようにしたので、高音用スピーカアレイ106による音響ビームの広がり角度と低音用スピーカアレイ107による音響ビームの広がり角度を同一の値Bにすることができ、高音用スピーカアレイ106と低音用スピーカアレイ107の指向性の強さをほぼ同じにすることができる。
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、設計者又はユーザにより音響ビームの広がり角度Bを直接設定するようにしていたが、設計者又はユーザが高音用スピーカアレイ106もしくは低音用スピーカアレイ107のうちどちらか一方の焦点距離を代表値として設定するようにしてもよい。本実施の形態においても、アレイスピーカ装置の構成は図1と同様であるので、図1、図3、図4の符号を用いて説明する。
例えば、設計者又はユーザが高音用スピーカアレイ106の焦点距離A1を代表値として設定する場合、計算部7は、設定された焦点距離A1と高音用スピーカアレイ106のアレイ長C1と低音用スピーカアレイ107のアレイ長C2から、次式のように低音用スピーカアレイ107の焦点距離A2を計算する。
A2=(C2/C1)×A1 ・・・(1)
そして、計算部7は、設定された焦点距離A1と計算した焦点距離A2をDSP2の制御部25に渡す。以降の処理は第1の実施の形態と同じである。
以上のように、本実施の形態では、高音用スピーカアレイ106もしくは低音用スピーカアレイ107のうちどちらか一方の設定された焦点距離と各スピーカアレイの既知のアレイ長に基づいて、各スピーカアレイの音響ビームの広がり角度が同じになるように、焦点距離が設定されていないスピーカアレイについて焦点距離を計算し、高音用スピーカアレイ106と低音用スピーカアレイ107の指向性を独立に制御するようにしたので、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、本実施の形態では、焦点距離A1から焦点距離A2を計算しているが、焦点距離A2から焦点距離A1を計算してもよいことは言うまでもない
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態では、音響ビームの広がり角度や焦点距離の代わりに、設計者又はユーザが視聴位置における音響ビームの幅を設定する。本実施の形態においても、アレイスピーカ装置の構成は図1と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。図5、図6は、本実施の形態における音響ビームの指向性強さを設定する方法を示す図である。図5は焦点がスピーカユニット104,105の後方にある場合、図6は焦点がスピーカユニット104,105の前方にある場合を示している。
設計者又はユーザは、視聴位置Uにおける音響ビームの幅Eとスピーカから視聴位置Uまでの距離Dとを設定する。図5のように焦点がスピーカユニット104,105の後方にある場合、計算部7は、設定された幅E及び距離Dと高音用スピーカアレイ106のアレイ長C1から、高音用スピーカアレイ106の焦点距離A1を式(2)のように計算する。
A1=C1×D/(E−C1) ・・・(2)
また、焦点がスピーカユニット104,105の後方にある場合、計算部7は、設定された幅E及び距離Dと低音用スピーカアレイ107のアレイ長C2から、低音用スピーカアレイ107の焦点距離A2を式(3)のように計算する。
A2=C2×D/(E−C2) ・・・(3)
一方、図6のように焦点がスピーカユニット104,105の前方にある場合、計算部7は、設定された幅E及び距離Dと高音用スピーカアレイ106のアレイ長C1から、高音用スピーカアレイ106の焦点距離A1を式(4)のように計算する。
A1=C1×D/(E+C1) ・・・(4)
また、焦点がスピーカユニット104,105の前方にある場合、計算部7は、設定された幅E及び距離Dと低音用スピーカアレイ107のアレイ長C2から、低音用スピーカアレイ107の焦点距離A2を式(5)のように計算する。
A2=C2×D/(E+C2) ・・・(5)
そして、計算部7は、式(2)と式(3)、又は式(4)と式(5)により計算した焦点距離A1,A2をDSP2の制御部25に渡す。以降の処理は第1の実施の形態と同じである。
以上のように、本実施の形態では、外部から設定された、視聴位置における音響ビームの幅と各スピーカアレイの既知のアレイ長に基づいて、高音用スピーカアレイ106の焦点距離A1と低音用スピーカアレイ107の焦点距離A2を計算して、高音用スピーカアレイ106と低音用スピーカアレイ107の指向性を独立に制御するようにしたので、高音用スピーカアレイ106による音響ビームの幅と低音用スピーカアレイ107による音響ビームの幅を視聴位置において同一の値Eにすることができ、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
[第4の実施の形態]
第2の実施の形態では、代表値として設定された高音用スピーカアレイ106の焦点距離A1から式(1)により低音用スピーカアレイ107の焦点距離A2を一義的に決定しているが、この決定に幅を持たせるようにしてもよい。すなわち、計算部7は、式(1)により焦点距離A2を計算すると共に、次式により焦点距離A2を計算する。
A2=D/[{(D/A1)−1}×(C1/C2)+1] ・・・(4)
式(4)において、スピーカから視聴位置Uまでの距離DはD≧A1を満たす。そして、計算部7は、式(1)により求めた値と式(4)により求めた値の範囲内で、低音用スピーカアレイ107の焦点距離A2を最終的に決定する。
式(4)において、D=A1のとき(視聴位置Uと焦点F1とを一致させるとき)はA1=A2となり、図11で説明している状態になるが、視聴位置Uと焦点とが近い場合は、低音用スピーカアレイ107の音響ビームが視聴位置Uにおいて広がり過ぎるという問題を回避することができる。また、距離Dを無限大にすると、式(1)と式(4)は等しくなる。つまり、距離Dの値がA1から無限大まで変化すると、焦点距離A2の値はA1から(C2/C1)×A1まで変化することになる。したがって、式(1)により求めた値と式(4)により求めた値の範囲内で、低音用スピーカアレイ107の焦点距離A2を決定するようにしてもよい。
なお、図1に示したDSP2の構成は内部の処理を模式的に表したもので、図1の構成に限定するものではない。また、DSP2の内部で必要に応じて音声信号に対する音場処理を行うようにしてもよい。
また、第1〜第4の実施の形態では、アレイスピーカ装置を2ウェイ化する例を示したが、これに限るものではなく、例えば再生周波数帯域を3つに分割して、高音用スピーカユニットと中音用スピーカユニットと低音用スピーカユニットとをそれぞれ直線状に配置し、アレイスピーカ装置を3ウェイ化してもよいことは言うまでもない。
また、第1〜第4の実施の形態では、帯域毎にスピーカユニットの口径を変えているが、全てのスピーカユニットを同一口径としてもよい。また、第1〜第4の実施の形態では、帯域毎のスピーカユニットを1例ずつ配置しているが、帯域毎のスピーカユニットをそれぞれ複数列配置してもよいことは言うまでもない。
本発明は、アレイスピーカ装置に適用することができる。
本発明の第1の実施の形態のアレイスピーカ装置の回路構成を示すブロック図である。 アレイスピーカ装置の指向性制御の原理を説明するための図である。 図1のアレイスピーカ装置において音響ビームの指向性強さを設定する方法を示す図である。 図1のアレイスピーカ装置において音響ビームの指向性強さを設定する方法を示す図である。 本発明の第3の実施の形態における音響ビームの指向性強さを設定する方法を示す図である。 本発明の第3の実施の形態における音響ビームの指向性強さを設定する方法を示す図である。 従来のアレイスピーカ装置のバッフル板の平面図である。 図7のアレイスピーカ装置において音響ビームの指向性強さを設定する方法を示す図である。 図7のアレイスピーカ装置において音響ビームの指向性強さを設定する方法を示す図である。 マルチウェイ構成のアレイスピーカ装置のバッフル板の平面図である。 図10のアレイスピーカ装置において音響ビームの指向性強さを設定する方法を示す図である。
符号の説明
1…A/Dコンバータ、2…デジタルシグナルプロセッサ、3、4…D/Aコンバータ、5、6…アンプ、7…計算部、21、22…フィルタ、23、24…遅延部、25…制御部、104…高音用スピーカユニット、105…低音用スピーカユニット、106…高音用スピーカアレイ、107…低音用スピーカアレイ、C1…高音用スピーカアレイのアレイ長、C2…低音用スピーカアレイのアレイ長、A1…高音用スピーカアレイの焦点距離、A2…低音用スピーカアレイの焦点距離、B…音響ビームの広がり角度、E…視聴位置における音響ビームの幅。

Claims (4)

  1. 複数のスピーカユニットから構成されるスピーカアレイから音声信号を空間上の焦点に向けて指向性を制御して出力するアレイスピーカ装置において、
    入力音声信号を複数の周波数帯域に分割する分割手段と、
    前記分割された帯域に応じた異なるアレイ長を有する複数のスピーカアレイと、
    外部から設定された音響ビームの広がり角度と各スピーカアレイの既知のアレイ長に基づいて焦点距離を帯域毎に計算する計算手段と、
    前記分割された帯域の音声信号が対応するスピーカアレイから出力され、前記計算された焦点距離だけ離れた空間上の焦点に到達するように、各スピーカユニットを独立に駆動する指向性制御手段とを有することを特徴とするアレイスピーカ装置。
  2. 複数のスピーカユニットから構成されるスピーカアレイから音声信号を空間上の焦点に向けて指向性を制御して出力するアレイスピーカ装置において、
    入力音声信号を複数の周波数帯域に分割する分割手段と、
    前記分割された帯域に応じた異なるアレイ長を有する複数のスピーカアレイと、
    前記複数のスピーカアレイのうちいずれか1つについて外部から設定された焦点距離と各スピーカアレイの既知のアレイ長に基づいて、各スピーカアレイの音響ビームの広がり角度が同じになるように、前記焦点距離が設定されていないスピーカアレイについて焦点距離を帯域毎に計算する計算手段と、
    前記分割された帯域の音声信号が対応するスピーカアレイから出力され、前記設定又は計算された焦点距離だけ離れた空間上の焦点に到達するように、各スピーカユニットを独立に駆動する指向性制御手段とを有することを特徴とするアレイスピーカ装置。
  3. 複数のスピーカユニットから構成されるスピーカアレイから音声信号を空間上の焦点に向けて指向性を制御して出力するアレイスピーカ装置において、
    入力音声信号を複数の周波数帯域に分割する分割手段と、
    前記分割された帯域に応じた異なるアレイ長を有する複数のスピーカアレイと、
    外部から設定された、視聴位置における音響ビームの幅と各スピーカアレイの既知のアレイ長に基づいて焦点距離を帯域毎に計算する計算手段と、
    前記分割された帯域の音声信号が対応するスピーカアレイから出力され、前記計算された焦点距離だけ離れた空間上の焦点に到達するように、各スピーカユニットを独立に駆動する指向性制御手段とを有することを特徴とするアレイスピーカ装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアレイスピーカ装置において、
    前記指向性制御手段は、
    前記分割された帯域の音声信号に対してそれぞれ遅延時間を付加した音声信号をこの帯域に対応するスピーカユニットの数だけ生成することを帯域毎に行う遅延部と、
    前記遅延時間が付加された音声信号をそれぞれ増幅して各スピーカユニットを駆動するアンプと、
    帯域毎の焦点距離に基づいて前記遅延時間をスピーカユニット毎に設定することを帯域毎に行う制御部とを有することを特徴とするアレイスピーカ装置。
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