JP2006312940A - 独立燃焼室式内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】ノッキングによる機関各部のダメージを引き起こすことなく、高圧縮比を実現できる内燃機関を提供する。
【解決手段】ハウジング4とピストン2との間に形成される可変容積の作動室7内において吸入、圧縮、爆発、膨張および排気の各行程を行う内燃機関であって、上記ハウジング4に形成され、燃料供給手段(6)を備えかつ内部で独立的に燃焼を行う固定容積の独立燃焼室1と、該独立燃焼室1と上記可変容積の作動室7とを連通する少なくとも一つの連通路11(12)と、上記作動室7から該独立燃焼室1への圧縮空気の導入を許容するとともに、該独立燃焼室1から該作動室7への燃焼ガスを所定のタイミングで噴出させる制御弁3(13)とを備え、該独立燃焼室1における主燃焼を作動室7に対して非連通状態で行うように構成している。
【選択図】 図1

Description

本発明は内燃機関、特に高圧縮型の独立燃焼室式内燃機関に関する。
一般に、内燃機関は、火花点火式(オットーサイクル式内燃機関) と、圧縮着火式内燃機関(ディーゼルサイクル内燃機関) に大きく分けられる。火花点火式内燃機関は、燃焼室としての作動室において吸気された空気と燃料との混合気を圧縮した後に点火プラグによって点火して燃焼させるように構成される。また圧縮着火式内燃機関は、圧縮されて高温となった空気の中に燃料を噴射し、圧縮熱により着火燃焼させるように構成されている。
特開2004- 211633号公報
ところで、この種の内燃機関の熱効率は圧縮比によって大きく支配され、その意味において高圧縮を実現できる圧縮着火式内燃機関すなわちディーゼルサイクル式内燃機関の方が熱効率が高く、燃費的にも有利となっている。すなわち、火花点火式内燃機関の場合、いわゆるノッキング、特にスパークノックの発生により圧縮比をむやみに上げることができず、現実的には圧縮比10〜12程度の設定となっている。圧縮比が22から23程度に設定できるディーゼル式内燃機関はその分熱効率が高い。
しかしながらディーゼル式内燃機関においても、火花点火式内燃機関とは発生メカニズムは異なるがいわゆるディーゼルノックと呼ばれるノック現象が発生する。スパークノックおよびディーゼルノック、いずれにしろこれらの現象は、燃焼というよりも爆発に近い燃焼速度で燃焼し、きわめて高い衝撃波が発生することになる。
この衝撃波によってピストンリングの破損、ピストンそのものの溶損といった機関の致命傷となる。したがって、火花点火式内燃機関および圧縮着火式内燃機関など着火形式にかかわらず、ノッキングによる機関ダメージがネックとなって高圧縮比化に制限を受けている。
本発明はかかる点に着目してなされたもので、ノッキングによる機関各部のダメージを引き起こすことなく、高圧縮比を実現できる内燃機関を提供することをその目的とする。
上記課題を解決する請求項1に示す手段は、ハウジングとピストンとの間に形成される可変容積の作動室内において吸入、圧縮、爆発、膨張および排気の各行程を行う内燃機関であって、
上記ハウジングに形成され、燃料供給手段を備えかつ該燃料供給手段からの燃料と作動室からの空気の供給を受け内部で独立的に主燃焼を行う固定容積の独立燃焼室と、
該独立燃焼室と上記可変容積の作動室とを連通する少なくとも一つの連通路と、上記作動室から該独立燃焼室への圧縮空気の導入を許容するとともに、該独立燃焼室から燃焼ガスを圧縮上死点後所定のタイミングで作動室内に噴出させるように制御する制御弁とを備え、該制御弁が、該独立燃焼室内の圧力を受け上記制御弁を構成する弁体を閉鎖方向に付勢する受圧面を備え、かつ該独立燃焼室における主燃焼を作動室に対して非連通状態で独立的に行うように、圧縮上死点付近であって上記燃料供給手段の燃料噴射時期を含みかつ圧縮上死点を含む所定の範囲内において上記連通路を閉じるように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、独立燃焼室内での主燃焼が、作動室とは隔絶されて独立的に行われることになるので、高圧縮比の設定下にあって独立燃焼室内にて早期着火による異常燃焼が起きても、その衝撃波は直接独立燃焼室内において作用し、作動室を構成するピストン表面に直接作用することはない。したがって、独立燃焼室内の燃焼ガスの圧力は独立燃焼室内にて平滑化され所定のタイミングで作動室内に噴出されることになるので、ピストン表面には高圧燃焼ガスは作用するが、ノッキングにより発生する衝撃波が直接作用することはないので、ピストンはもちろんのこと、ピストンにつながる各部の破損等のダメージを引き起こすことはない。したがって、高圧縮比を実現でき、燃焼効率を大幅に向上できる。燃料にガソリンを使用する場合には、低オクタン価でよくなり、軽・重油を使用する場合には、セタン価の調整が不要になる。
しかも、独立燃焼室と作動室との連通、非連通とを制御する制御弁の弁体が、独立燃焼室内の圧力により弁体を閉鎖方向に付勢されるように受圧面を備えていることにより、独立燃焼室内において発生する高圧ガスによって不用意に開かれることがなく、高圧縮比エンジンとしての上記作用効果を確実に保障することができる。
ハウジングとピストンとの間に形成される可変容積の作動室内において吸入、圧縮、爆発、膨張および排気の各行程を行う内燃機関であって、上記ハウジングに形成され、燃料供給手段を備えかつ内部で独立的に燃焼を行う固定容積の独立燃焼室と、該独立燃焼室と上記可変容積の作動室とを連通する少なくとも一つの連通路と、上記作動室から該独立燃焼室への圧縮空気の導入を許容するとともに、該独立燃焼室から該作動室への燃焼ガスを所定のタイミングで噴出させる制御弁とを備え、該独立燃焼室における主燃焼を作動室に対して非連通状態で独立的に行うように構成したことを特徴とする独立燃焼式内燃機関である。
図1、2に示す第1実施例の独立燃焼室式内燃機関は、ハウジング4と往復動するピストン2との間に形成される可変容積の作動室7内において吸入、圧縮、爆発、膨張および排気の各行程を行ういわゆる往復動式の内燃機関であって、ハウジング4に独立的に設けられる独立燃焼室1と、該独立燃焼室1と可変容積の作動室7に連通する二つの連通路11、12と、該連通路の連通状態を制限する第1および第2の制御弁3、13とを備えている。
独立燃焼室1は、ハウジング4を構成するシリンダ・ヘッド43に形成されており、その容積は作動室7の容積とあいまって、圧縮比が通常のディーゼル式内燃機関の圧縮比を大きく超えた例えば40程度の超高圧縮比になるように設定されている。また、独立燃焼室1は容積に対して表面積が最小になるようにほぼ球形状に形成されており、その頂部には燃料供給装置としての燃料噴射ノズル6が設けられている。燃料噴射ノズル6としては高圧力状態での噴射が可能であればよく、従来のディーゼルエンジンのように微粒化性能に優れたノズルである必要はない。多少微粒化性能が低くても独立燃焼室1内は超高圧縮下にあるとともに作動室7に対して独立的に主燃焼が行われるので異常燃焼が発生しにくく、また発生しても作動室を構成するピストン2およびピストン周辺各部への悪影響は発生することはない。
第1および第2連通路11、12は、ピストン・ヘッド21とハウジング4としてのシリンダ41内面との間に形成される可変容積の作動室7と独立燃焼室1とを連通するもので、第1連通路11は独立燃焼室1に対して軸心方向に開口し、第2連通路12は独立燃焼室1の接線方向に開口するように形成されている。
第1制御弁3は、ピストン0の頂部に一体に形成された副ピストンとして構成され、ピストン2の往復動により第1連通路11の作動室側の開口部を開閉制御するように構成されている。副ピストン3の外周にはラビリンスパッキンとしての環状溝が複数個設けられており、燃焼ガスの作動室7への漏洩を防ぐように構成されている。第1制御弁3の開閉時期は、例えば圧縮上死点前30度から圧縮上死点後30度の間連通路を閉じ、その前後では連通路を開くように設定されている。この開閉時期は機関の仕様によって変更する必要がある。閉じ初めの時期は、燃料噴射ノズルの燃料噴射時期より以前でかつ作動室の圧力が最大値付近にあるピストン位置に設定すればよい。また、開き始めの時期は、独立燃焼室における主燃焼が作動室に対して独立的になされ、ピストンに対する燃焼ガスの作用が、出力が最大になるような角度位置に設定すればよい。なお、第1制御弁3は、副ピストン形式に限らず、ポペット弁あるいはロータリ弁であってもよい。また、その駆動方式も機械的あるいは電気的のいずれであってもよい。
第2制御弁13は、第2連通路12の作動室側近傍の開口部に設けられており、弁座に適合するコーン形状の弁体13aとステム13bとで構成されている。弁体13aとステム13bとの境界部には独立燃焼室からのガス圧を受け、弁体13aを弁座方向に付勢する受圧面が設けられている。この受圧面は、独立燃焼室1における爆発燃焼、つまり主燃焼を作動室7に対し非連通状態で独立的に行うに当たって、第2制御弁13の閉鎖状態を確実に行うためのものである。また、第2制御弁13は、圧縮上死点前30度から圧縮上死点前10度の範囲で開き独立燃焼室内の圧力が作動室7より高くなれば閉じるように設定されている。この第2制御弁13はばねで一方向に付勢する一方向弁であってもよく、出力軸としてのクランクシャフト5の回転に同期して機械的あるいは電気的に制御するものであってもよい。
以下本発明に係わる独立燃焼室式内燃機関の第1実施例の動作を図4、図5(行程〈1〉から行程〈12〉)に基づいて説明する。
先ず行程〈1〉の状態は、ピストン2は最下降状態にあり、作動室7内には吸気ポート8を介して空気がその容積分充填された状態にある。この状態において、副ピストン3はピストンとともに最下降位置にあり、また第2制御弁13は閉じられているので、独立燃焼室1と作動室7とは第1連通路11を介して相互に連通されている。この状態から圧縮行程に移行することになる。
行程〈2〉において、回転角度:θ=−45度(圧縮上死点前45度)近傍では、該圧縮行程の途中であり、充填空気は圧縮され、第1連通路11を介して独立燃焼室1内に導入され、独立燃焼室1内の圧力は次第に高くなる。
行程〈3〉において、回転角度:θ=−30度近傍では、ピストン2の上昇に伴って副ピストン3が、第1連通路11を閉じ始めると共に、作動室7内の充填空気は、第2制御弁13を開き第2連通路12を介して独立燃焼室1内部へ導入される。
行程〈4〉において、回転角度:θ=−15度近傍では、該圧縮行程の最終段階にさしかかり、独立燃焼室1内の圧力は高圧力状態となる。
行程〈5〉において、回転角度:θ=−10度近傍では、圧縮行程の最終段階直前の状態になり、第2制御弁13が閉じ、独立燃焼室1内は高圧高温状態となる。なお、本実施例の第2制御弁13はこのタイミングで強制的に閉じるように構成されている。
行程〈6〉、〈7〉において、回転角度:θ=0度(圧縮上死点)では、燃料噴射ノズル6から燃料が噴射され高温の空気と混合されながら爆発燃焼が行われる。この場合、燃料噴射ノズルから噴射される燃料は、従来のディーゼル式内燃機関のような分散噴射ではなく、集中的に一気に必要燃料が噴射されるように設定されている。したがって、独立燃焼室1内の圧力は衝撃波を伴って急激に立ち上がる。衝撃波を伴う爆発燃焼は、独立燃焼室1内にて独立的に発生し、作動室7を構成するピストン2およびシール部材等にその衝撃波が直接作用することはない。
行程〈8〉において、回転角度:θ=+15度近傍では、作動室の行程としては膨張行程へ移行しており圧縮上死点から徐々に容積が増加し作動室7内の圧力は低下を始める。この状態において独立燃焼室1は作動室7とは非連通の状態で独立的に燃焼が行われ、その間、初期に発生した衝撃波は緩和される。しかも、回転角の変移とは異なる爆発圧力の保持がなされるので燃焼がより早く、大量の燃料にもかかわらず燃焼され、連通路11が開かれるまで、高温高圧状態が独立燃焼室内で保たれ、この燃焼熱平衡状態は回転角度:θ=+20度近傍まで持続する。
行程〈9〉、〈10〉、〈11〉において、回転角度:θ=+30度ないし+60度では、ピストン2の下降に伴って副ピストン3が下降すると第1連通路11が開放される。この開放によって独立燃焼室1内の高圧燃焼ガスは作動室7内に一気に噴出され、その圧力によってピストン2を下降させる。このとき、第1連通路11から噴出する燃焼ガスは比較的短時間に行われることになるので、作動室7内の圧力変化形態はオットーサイクルのような急激な圧力状態となり、その噴出タイミングを適切に設定することにより、高圧縮比下での高効率化とあいまってオットーサイクル的な効率化も加わることになる。
行程〈12〉において、回転角度:θ=±180度近傍では、下死点となり膨張行程が終了し排気ポート9が開かれて以後排気行程に移行する。
つぎに、図6に示す第2実施例について説明する。第1実施例と同一部分および相当部分は同一の符号を付し詳細な説明は省略する。
図6に示す第2実施例の独立燃焼室式内燃機関は、ハウジング4とピストン2との間に形成される可変容積の作動室4内において吸入、圧縮、爆発、膨張および排気の各行程を行う内燃機関であって、上記ハウジング4に形成され、燃料供給手段6を備えかつ内部で独立的に燃焼を行う固定容積の独立燃焼室1と、該独立燃焼室1と上記可変容積の作動室7とを連通する一つの連通路11と、上記作動室7から該独立燃焼室1への圧縮空気の導入を許容するとともに、該独立燃焼室1から該作動室7への燃焼ガスを所定のタイミングで噴出させる制御弁3とを備え、該独立燃焼室1における主燃焼を作動室7に対して非連通状態で独立的に行うように構成したことを特徴とする。
すなわち、第2実施例の独立燃焼室式内燃機関は、第1実施例が2つの連通路を用いているのに対して、一本の連通路11でもって作動室と独立燃焼室1とを連通し、単一の連通路11に設けられた一個の制御弁3によって、独立燃焼室1内での上述の主燃焼が行われ、高圧縮比の元で得られる高圧ガスを所定のタイミングで作動室7に導くように構成したことを特徴としている。この連通路11は独立燃焼室1に対し、圧縮空気が導入される際、スワールを発生させるように接線方向に開口され、また、作動室側の開口部近くに上記制御弁3が設けられており、この制御弁3は、第1実施例の第1制御弁3としての副ピストン3の開閉タイミングと同様に、圧縮上死点前15度から圧縮上死点後30度の間閉じ、30度を越えて開くように設定されている。この制御弁3は第1実施例の第2制御弁13と同様に、弁体3aとステム3bを備え、その境界部には、燃焼ガスが作用したとき、弁体3aを弁座方向に付勢するように受圧面が形成されている。したがって、第2実施例の独立燃焼室式内燃機関は、第1実施例に比べ、連通路の数、制御弁の数が少なく、その分構造が簡単になる。なお、本実施例においては、燃料噴射ノズルに加えて水噴射ノズル61が設けられており、独立燃焼室内に噴射することにより、燃焼温度を下げることができ、窒素酸化物の低減に貢献する。
以上のように構成された第2実施例の独立燃焼室式内燃機関は、図6、図7に示すように、第1実施例の12行程と実質的に同一の行程で作動する。
図9ないし図11に示す第3実施例の独立燃焼室式内燃機関は、ロータリ式内燃機関への適用例で、上記第1、第2実施例と同様に高効率独立燃焼室式内燃機関が得られる。
図9は、本発明にかかわる、独立燃焼室式内燃機関としての自己着火式のロータリ式内燃機関に関し、トロコイド状の内周面を有するロータハウジング4と、その内周面に沿って遊星回転運動する三角形状のピストンとしてのロータ2を備えている。
ロータハウジング4とロータ2との間には三つの独立した作動室7a、7b、7cが形成され、この作動室はロータ2の回転に伴い容積が変化し、吸気上死点位置から吸入が開始され、吸気下死点位置で容積が最大になり、下死点位置から容積が小さくなり圧縮上死点位置で容積が最小になる。圧縮上死点からは再び容積が大きくなり、排気下死点においてその容積が最大になる。このように、ロータ2の遊星回転運動に伴う作動室の容積変化によって吸入、圧縮、爆発、膨張、排気の各行程が繰り返され、その力が出力軸としての偏心軸5から駆動力として取り出される。
ロータ2の各頂点部にはアペックスシール2a、2b、2cがそれぞれ設けられており、各作動室相互間のシールを行うようになっている。また、偏心軸5は偏心部5aを有し、偏心部5aによってロータ2が支承され、ロータ2の1回転に対し偏心軸5が3回転するように偏心量が設定されている。
ロータハウジング4には、長軸Xをはさんで、一側に吸気ポート8および排気ポート9が設けられ他側に本発明にかかわる独立燃焼室1が設けられている。独立燃焼室1は球形をなし、圧縮上死点にある作動室に対して、第1連通路11および第2連通路12を介して連通されている。第1連通路11は、短軸Yに対しリーデイング側に位置し、排気下死点にある作動室のトレーリング側アペックスシールの位置近傍に開口している。第2連通路12は、短軸Yに対しトレーリング側に位置し、吸気下死点にある作動室のリーデイング側アペックスシールの近傍に開口している。
第1連通路11には燃料噴射ノズル6の噴射時期より以前に閉じ、圧縮上死点付近の所定のタイミング(例えば圧縮上死点後20度ないし30度)で開くように電気的あるいは機械的に制御される第1制御弁3が設けられている。この第1制御弁3は、独立燃焼室内1における主燃焼が作動室7に対して遮断された状態で行うためのものであり、独立燃焼室1内において早期着火等の異常燃焼が生じても、その燃焼圧が直接ロータ表面に作用することはなく、所定の時期までは独立燃焼室1内に密封されることになる。また、第1制御弁3は、図10の拡大図に示すように、弁座3cと適合する弁体3aとステム3bとを備え、この弁体3aの先端円柱部3dは、第1連通路3の作動室側開口部と遊嵌状態となるように構成され、その先端はトロコイド内周面に対し可及的に近接するように構成されている。先端がトロコイド内周面より外方に位置すると開口部内にデッドボリュウムが生じ、アペックスシールが通過する際、隣接作動室間への圧力の吹き抜けが生じるので、このボリュウムはできるだけ小さくする必要がある。
第2連通路12には、作動室から独立燃焼室1への作動ガス(圧縮空気)の流通を許し、独立燃焼室1から作動室への作動ガスの流出を阻止する第2制御弁13が設けられている。この第2制御弁13は図11の部分拡大図に示すごとく、弁座13cと適合する弁体13aとステム13bとで構成され、常時バネ等によって閉鎖方向に付勢されており、作動室側の圧力が独立燃焼室1より高いときにのみ第2連通路13を開くように構成されている。また、弁体13aの先端には円柱部13dが設けられており、第1制御弁と同様に開口部におけるデッドボリュウムが小さくなるようにトロコイド面に近接して設けられている。
以上のように構成された本発明に係わる独立燃焼室式ロータリ式内燃機関は、以下のように作動する。
ロータハウジング4の内周面とロータフランク面とで構成される3つの作動室7a、7b、7cはロータ2先端のアペックスシール2a、2b、2cによって作動室相互間の機密が保たれており、ロータ2の回転に伴って各作動室は独立して容積変化を行い、吸入、圧縮、爆発、膨張、排気の各行程を行う。
図9の状態において、作動室2aは、吸気ポート8と連通し吸気行程の初期状態にある。この状態から順次回転が進み、吸気下死点後20度において作動室2aのトレーリング側のアペックスシール2cが吸気ポート8上を通過するまで空気が吸入され、以後容積が順次減少し、吸入された空気は順次圧縮され、実質的に圧縮行程に移行する。その過程において、作動室7aのリーデイング側のアペックスシール2aが第2連通路13の開口部上を通過し、第2連通路13の開口部が作動室7aに開口すると、第2制御弁13の弁体13aが弁座13cから離れ、独立燃焼室1と作動室7aとは第2連通路12を介して連通され、作動室7a内の圧縮空気は独立燃焼室1内に導かれる。
この時、リーデイング側アペックスシール2aが第1連通路11の開口部の手前にあり、その開口部が膨張行程にある先行作動室7b内に開口している状態においては、独立燃焼室1は、第1連通路11および第2連通路13を介して、膨張行程にある先行作動室7bと圧縮行程にある後続作動室7aが相互に連通することになる。この時、先行作動室7b内の圧力が後続作動室7aの圧力より高い間は、第2制御弁13は閉じることになるので、圧縮空気の吹き抜けおよび先行作動室の燃焼ガスの吹き抜けが生じることはない。しかしながら、先行作動室7bが膨張行程の後半になると、先行作動室7bと後続作動室7aの圧力関係が逆転することになり、この段階では第1制御弁3によって第1連通路11が閉じられているので、後続作動室7aの圧縮空気は独立燃焼室1内に貯えられ、先行作動室7b内に吹き抜けることはない。
この状態から作動室7aの圧縮行程が更に進むと、第1連通路11の開口部も作動室7aに開口することになり、独立燃焼室1内の圧力は次第に高圧となり、作動室7aの容積が最小になる圧縮上死点において最大になる。この状態において、独立燃焼室1内の空気は、断熱圧縮により高温状態にあり、この状態で燃料噴射ノズル6から燃料が噴射される。
噴射された燃料は、高温高圧空気と混合される過程で自己着火し、爆発的に燃焼が開始される。この時、第1制御弁3および第2制御弁13はともに閉じており、独立燃焼室1での爆発燃焼は作動室7aに対して独立的に行われているので、早期着火等の異常燃焼が生じても初期圧力は独立燃焼室1内にて平滑化され、ロータ2に直接作用することはない。
次いで、圧縮上死点後20度に達すると第1制御弁3が開放され、高圧燃焼ガスが作動室7a内に噴出され、その圧力はロータ2のフランク面に作用し、偏心軸5にその力が伝えられる。この作用は、膨張行程を通じて行われ、作動室7aのリーデイング側アペックスシール2aが排気ポート9上を通過するまで継続される。その後、排気行程に移行し、作動室7a内の燃焼ガスは順次排気ポート9から排出されることになる。
図12に示す第4実施例の独立燃焼室式内燃機関は、上記第3実施例と同様に、ロータリ式内燃機関への適用例であって、第3実施例が二つの連通路を備えているのに対し、単独の連通路を備え、全体の構造を簡略化することを特徴とする。本実施例においては、独立燃焼室1と作動室とを連通する連通路11は、トロコイド内周面の短軸付近に開口し、開口部近くにおいて制御弁3でもって作動室との連通、非連通が制御される。制御弁3の開閉時期は、例えば、圧縮上死点前20度から圧縮上死点後20度の間、閉じ、他の領域では開かれるように制御される。つまり、閉じ初めの時期は、燃料噴射ノズル6の燃料噴射時期より以前でかつ作動室の圧力が最大値付近にあるピストン位置に設定すればよく、また、開き始めの時期は、独立燃焼室1における主燃焼が作動室に対して独立的になされ、ロータ2に対する燃焼ガスの作用が、出力が最大になるような角度位置に設定すればよい。また、連通路の作動室側の開口位置は、短軸位置よりリーデイング側に設けるほうが独立燃焼室内の燃焼ガスを出力として有効に取り出す上でより有効となる。つまり、短軸よりトレーリング側に設けると、膨張行程の初期状態でトレーリング側のアペックスシールが連通路の開口部を通過し連通路が後続作動室に開口することになり、燃焼圧力が有効に活用されないことになるばかりか、後続作動室に作用することで逆トルクが発生することになり好ましくない。
図13に示す第5実施例は、多気等内燃機関への適用例を示すもので、独立燃焼室1を気筒数に対して少ない数に設定し、気筒間の作動位相差を利用して共用化を図るように構成されている。このように共用化を図ることで全体構造を簡略化できると同時に小型化を図ることができる。
図14に示す第6実施例は、独立燃焼室を1つの気筒に対して2つ設け、運転状態に応じて選択的に使い分けるように構成されている。つまり、作動室に対する充填空気量が少ない軽負荷状態では一方の独立燃焼室を閉鎖し、他方の独立燃焼室のみを作動させて圧縮比を高め、高負荷状態では両方の独立燃焼室を作動させるように構成されている。このように構成することにより、前運転範囲にわたって高圧縮状態で燃焼させることができるので、より効率的となる。しかも、内燃機関の起動時に複数の独立燃焼室を作動質に対して連通することで起動時のトルクを小さくすることができるので、セルモータの容量を小さくすることができる。
図15に示す第7実施例は、独立燃焼室を1つの気筒に対して2つ設け、各独立燃焼室に連なる連通路を作動室側において合流させ、この合流部において1つの制御弁でもって開閉制御を行うように構成されている。この場合、独立燃焼室は、気筒数に対し2つに限らず3つ以上であってもよい。
また、上記各実施例においては、空気の充填は自然吸気を前提としているが、過給機を用いて充填空気量を増やすことで更なる高圧縮化が可能となる。この場合、メカニカル過給機であってもよいが、多気筒内燃機関において特定の気筒をコンプレッサーとして用い、このコンプレッサーでもって過給を行うようにしてもよい。
また、以上の実施例は基本的に圧縮着火式のディーゼル式内燃機関への適用例についてであるが、火花点火式内燃機関への適用ももちろん可能である。
また、以上の実施例において、一部の実施例において水噴射ノズルを図示しているが、いずれの実施例においても必要に応じて設けることが可能である。
本発明の独立燃焼室式内燃機関の第1実施例の断面図である。 図1のa−a矢視図である。 図2のb−c矢視図である。 同上第1実施例の作動行程図である。 同上作動行程図である。 本発明に係わる第2実施例の断面図である。 同上第2実施例の作動行程図である。 同上作動行程図である。 本発明に係わる第3実施例の断面図である。 図9の一部拡大図である。 図9の一部拡大図である。 本発明に係わる第4実施例の断面図である。 本発明に係わる第5実施例の断面図である。 本発明に係わる第6実施例の断面図である。 本発明の第7実施例の断面図である。
符号の説明
1 独立燃焼室
2 ピストン
3 制御弁
4 ハウジング
6 燃料供給装置
7 作動室
11 連通路(第1連通路)
12 連通路(第2連通路)
13 制御弁(第2制御弁)

Claims (1)

  1. ハウジングとピストンとの間に形成される可変容積の作動室内において吸入、圧縮、爆発、膨張および排気の各行程を行う内燃機関であって、
    上記ハウジングに形成され、燃料供給手段を備えかつ該燃料供給手段からの燃料と作動室からの空気の供給を受け内部で独立的に主燃焼を行う固定容積の独立燃焼室と、
    該独立燃焼室と上記可変容積の作動室とを連通する少なくとも一つの連通路と、上記作動室から該独立燃焼室への圧縮空気の導入を許容するとともに、該独立燃焼室から燃焼ガスを圧縮上死点後所定のタイミングで作動室内に噴出させるように制御する制御弁とを備え、該制御弁が、該独立燃焼室内の圧力を受け上記制御弁を構成する弁体を閉鎖方向に付勢する受圧面を備え、かつ該独立燃焼室における主燃焼を作動室に対して非連通状態で独立的に行うように、圧縮上死点付近であって上記燃料供給手段の燃料噴射時期を含みかつ圧縮上死点を含む所定の範囲内において上記連通路を閉じるように構成されていることを特徴とする独立燃焼室式内燃機関。
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