JP2006312647A - 同種及び異種間移植 - Google Patents

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Abstract

【課題】寛容を誘導する方法。
【解決手段】レシピエントに、補助減縮治療の短期コースを施与するか又は免疫抑制剤の短期コースを施与することにより移植片の受容を延長する短期コース及び方法を施与することを含む寛容誘導方法。
【選択図】なし

Description

発明の背景
この発明は、組織及び器官の移植に関するものである。
発明の要約
この発明は、外来抗原例えば同種又は異種の組織若しくは器官の移植片上の抗原に対する寛容を誘導する幾つかの方法を提供する。これらの方法は、個別に用いても互いに組合せて用いてもよい。例えば、補助減縮剤の短期投与例えばシクロスポリンA(CsA)の短期高投与量のコースが移植片の受容を有意に延長し得ることが見出されている。この発明の短期の補助減縮方法は、移植片受容を延長させるための他の1つ以上の方法と組合せることが出来る。例えば、不一致(unmatched)のドナーのクラスI及び他のマイナーな不一致のドナー抗原に対する寛容を誘導するための高投与量のシクロスポリン治療の短期コースをレトロウイルスでトランスフォームした骨髄細胞の移植と組合せて不一致のドナーのクラスIIに対する寛容を誘導することが出来る。不一致のドナーのクラスI及び他のマイナー抗原に対する寛容を誘導するために投与する高投与量シクロスポリンの短期コースを、ドナーの骨髄細胞の移植と組合せて、不一致のドナーのクラスIIに対する寛容を誘導することも出来る。
従って、この発明は、一面において、レシピエント哺乳動物例えば霊長類例えばヒトにおいて、ドナー霊長類からの同種移植片に対する寛容を誘導する方法であって、移植片をレシピエント中に移植して、補助減縮治療の短期コース例えば高投与量シクロスポリンの短期コースをレシピエントに施与することを含む上記の方法を特徴とする。この補助減縮治療の短期コースを、一般に、移植片をレシピエント中に導入した頃に施与する。
好ましくは、レシピエントは、移植片の拒絶に影響する第1の遺伝子座、例えばMHCクラスI若しくはII遺伝子座又はマイナー抗原遺伝子座においてミスマッチであり、且つ移植片の拒絶に影響する第2の遺伝子座、例えばMHCクラスI若しくはII遺伝子座又はマイナー抗原遺伝子座においてマッチする(又は、ミスマッチ寛容である)。第2の遺伝子座におけるマッチングは、適当な遺伝子型のレシピエント又はドナーの選択により達成することが出来る。レシピエントを、任意の寛容誘導方法例えばドナーの骨髄組織をレシピエントに投与してドナーの骨髄において発現されたドナー抗原に対する寛容を誘導すること、レシピエントの幹細胞からドナーのMHC抗原を発現させてドナー抗原に対する寛容を誘導すること、又は移植片の免疫学的特性を例えば移植片の細胞表面分子をマスクし、開裂させ若しくは改変することにより変えることによって第2の遺伝子座でミスマッチの寛容にすることが出来る。好適具体例において、第2の遺伝子座をマッチさせ又は該遺伝子座に対する寛容を誘導するために利用出来る任意の方法を用いて、移植片の拒絶に影響する第3の遺伝子座例えばMHCクラスI若しくはII遺伝子座又はマイナー抗原遺伝子座をマッチさせ又は該遺伝子座に対する寛容を誘導することが出来る。
好適具体例において、レシピエント及びドナーは、クラスII遺伝子座においてマッチし且つ補助減縮治療の短期コースは、移植片における不一致のクラスI及び/又はマイナー抗原に対する寛容を誘導する。好適具体例において、クラスII抗原に対する寛容は、補助減縮治療の短期コース以外の方法により誘導され、補助減縮治療の短期コースは、移植片における不一致のクラスI及びマイナー抗原に対する寛容を誘導する。
好適具体例において、補助減縮治療の短期コースの持続は、レシピエント種の成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後でその抗原の拒絶を開始するのに必要とされる期間とほぼ等しいかそれより短く、一層好適な具体例においては、この持続は、レシピエントの成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後でその抗原の拒絶を開始するのに必要とされる期間の2、3、4、5若しくは10倍にほぼ等しいか又はそれより短い。
他の好適具体例において、補助減縮治療の短期コースを、レシピエントにおける成熟T細胞によるサイトカインの放出を刺激する治療の不在において、例えば、補助減縮治療の所望の効果を打ち消すのに十分な濃度のステロイド剤の不在、例えば、レシピエントにおける成熟T細胞によるサイトカインの放出を刺激する濃度のプレドニゾン(17,21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,11、20−トリオン)の不在において投与する。好適具体例において、補助減縮治療の短期コースを、ステロイド剤の不在、例えばプレドニゾンの不在において施与する。
好適具体例において、補助減縮治療を、移植片を導入する前又は導入した頃に開始し、短期コースは手術中又は手術後であり、或はドナー及びレシピエントはクラスIマッチする。
補助減縮剤の短期投与、例えばシクロスポリンA(CsA)の短期高投与量コースによる寛容の誘導方法を、寛容を誘導するための他の方法、例えば抗原に対する寛容を誘導するための形質導入された骨髄細胞の移植方法、例えば米国特許出願第008/126,122号(1993年9月23日出願)と組合せることが出来る。
従って、他の面において、この発明は、第1の種のレシピエント哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトにおける、第2の種の哺乳動物、例えばブタ、例えばミニブタからの移植片に対する寛容を誘導する方法を特徴とし、好ましくは、この移植片は主要組織適合複合体(MHC)抗原を発現する。この方法は、第2の種のMHC抗原をコードするDNAを、レシピエント哺乳動物の造血幹細胞例えば骨髄造血幹細胞中に挿入し、MHC抗原をコードするDNAをレシピエントにおいて発現させ、好ましくは移植片をそのレシピエントに移植し、そして好ましくはそのレシピエントに補助減縮治療の短期コース例えば高投与量シクロスポリン治療の短期コースを施与することを含む。補助減縮治療の短期コースを、一般に、移植片をレシピエントに導入した頃に施与する。
好適具体例において、補助減縮治療の短期コースはMHC抗原の発現に続いてレシピエントに導入された移植片の不一致のクラスI及び/又はマイナー抗原に対する寛容を誘導する。
好適具体例において、補助減縮治療の短期コースの持続は、レシピエント種の成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後でその抗原の拒絶を開始するのに要する期間とほぼ等しいか又はそれより短く、一層好適な具体例においては、この持続は、レシピエント種の成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後にその抗原の拒絶を開始するのに要する期間の2、3、4、5若しくは10倍とほぼ等しいか又はそれより短い。
他の好適具体例において、補助減縮治療の短期コースを、レシピエントにおける成熟T細胞によるサイトカインの放出を刺激する治療の不在において、例えば、補助減縮治療の所望の効果を打ち消すのに十分な濃度のステロイド剤の不在、例えばレシピエントにおける成熟T細胞によるサイトカインの放出を刺激する濃度のプレドニゾン(17,21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,11,20−トリオン)の不在において投与する。好適具体例において、補助減縮治療の短期コースを、ステロイド剤の不在、例えばプレドニゾンの不在において施与する。
好適具体例において、補助減縮治療を、移植片を導入する前若しくは導入する頃に開始し、短期コースは、手術中又は手術後である。
好適具体例は、DNA挿入前にレシピエント哺乳動物から細胞を取り出し、DNA挿入後にレシピエント哺乳動物に戻すもの、DNAを移植片を得た哺乳動物個体から得るもの、DNAを移植片を得た哺乳動物個体と同系である哺乳動物個体から得るもの、DNAを移植片を得た哺乳動物個体とMHCマッチした好ましくは同一の哺乳動物個体から得るもの、DNAがMHCクラスI遺伝子を含むもの、DNAがMHCクラスII遺伝子を含むもの、DNAを例えばレトロウイルス例えばMoloneyに基づくレトロウイルスにより形質導入により細胞に挿入するもの及びDNAをレシピエントに導入した後に少なくとも14日、好ましくは30日、一層好ましくは60日、最も好ましくは120日にわたってレシピエントの骨髄細胞及び/又は末梢血液細胞においてそのDNAが発現されるものを含む。
他の好適具体例は、造血幹細胞の移植前に、例えばレシピエント哺乳動物を低線量例えば約100〜400ラドで照射すること(レシピエントの骨髄を涸渇又は部分的に涸渇させるための全身照射)により造血空間を創るステップ、造血幹細胞移植前に、レシピエント哺乳動物を1回以上約700ラドの胸腺照射で照射するか又はここに記載したように免疫抑制剤の短期コースをレシピエントに施与することによる胸腺T細胞の不活性化を含む。
他の好適具体例は、移植片の移植前に、例えば第2の種の哺乳動物から得た器官、例えば肝臓及び腎臓を血液灌流させることにより、レシピエント哺乳動物の血液から天然の抗体を涸渇させるステップを含む(器官の血液灌流中に、血液中の抗体は期間の細胞表面の抗原に結合し、それ故、血液から除去される)。
他の好適具体例において、この方法は、更に、造血幹細胞移植前に、レシピエント中に該レシピエント哺乳動物の成熟T細胞に結合し得る抗体を導入することを含む。
他の好適具体例は、更に、ドナーから得た移植片例えば肝臓又は腎臓をレシピエント中に導入するステップを含む。
他の面において、この発明は、レシピエント哺乳動物、好ましくは霊長類例えばヒトにおいて、同種のドナーから得られた移植片に対する寛容を誘導する方法を特徴とし、その移植片は好ましくはMHC抗原を発現する。この方法は、ドナーのMHC抗原をコードするDNAをレシピエントの造血幹細胞、例えば骨髄造血幹細胞中に挿入し、このMHCをコードするDNAをレシピエント中で発現させ、好ましくはこの移植片をレシピエントに移植し、そして好ましくはレシピエントに補助減縮治療の短期コース例えば高投与量シクロスポリンの短期コースを施与することを含む。この補助減縮治療の短期コースを、一般に、移植片をレシピエント中に導入した頃に施与する。
好適具体例において、この補助減縮治療の短期コースは、MHC抗原の発現に続いてレシピエント中に導入された移植片の不一致のクラスI及び/又はマイナー抗原に対する寛容を誘導する。
好適具体例において、補助減縮治療の短期コースの持続は、レシピエント種の成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後にその抗原の拒絶を開始するのに要する期間とほぼ同じかそれより短く、一層好適な具体例においては、この持続は、レシピエント種の成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後にその抗原の拒絶を開始するのに要する期間の2、3、4、5若しくは10倍にほぼ等しいか又はそれより短い。
他の好適具体例において、補助減縮治療の短期コースを、レシピエントにおける成熟T細胞によるサイトカインの放出を刺激する治療の不在において、例えば補助減縮治療の所望の効果を打ち消すのに十分な濃度のステロイド剤の不在、例えばレシピエントにおける成熟T細胞によるサイトカインの放出を刺激する濃度のプレドニゾン(17,21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,11,20−トリオン)の不在において投与する。好適具体例において、補助減縮治療の短期コースを、ステロイド剤の不在、例えばプレドニゾンの不在において施与する。
好適具体例において、補助減縮治療を、移植片を導入する前又は導入した頃に開始し、短期コースは手術中であるか又は手術後であり、或はドナー及びレシピエントはクラスIマッチする。
好適具体例は、DNA挿入前に細胞をレシピエントから取り出してDNA挿入後にレシピエントに戻すもの、DNAがMHCクラスI遺伝子を含むもの、DNAがMHCクラスII遺伝子を含むもの、DNAを例えばレトロウイルス例えばMoloneyに基づくレトロウイルスにより形質導入により細胞中に挿入するもの及びDNAをレシピエント中に導入してから少なくとも14日、好ましくは30日、一層好ましくは60日、最も好ましくは120日後に、DNAがレシピエントの骨髄細胞及び/又は末梢血液細胞において発現されるものを含む。
他の好適具体例において、この方法は、更に、造血幹細胞の移植前に、レシピエント中に該レシピエント哺乳動物の成熟T細胞に結合し得る抗体を導入することを含む。
好適具体例において、移植片は、肝臓又は腎臓である。
他の好適具体例は、造血幹細胞の移植前に、例えばレシピエント哺乳動物を低線量例えば約100〜400ラドで照射すること(レシピエントの骨髄を涸渇させ又は部分的に涸渇させるための全身照射)により造血空間を創るステップ、造血幹細胞の移植前に1回以上レシピエント哺乳動物を例えば約700ラドの胸腺照射で照射し又は上記のように免疫抑制剤の短期コースをレシピエントに施与することによる胸腺T細胞の不活性化を含む。
他の好適具体例は、移植片の移植前に、例えば第2の種の哺乳動物から得た器官、例えば肝臓又は腎臓を血液灌流することにより、レシピエント哺乳動物の血液から天然の抗体を涸渇させることを含む(器官の血液灌流において、血液中の抗体は、器官の細胞表面の抗原と結合し、それ故、血液から除去される)。
補助減縮剤の短期間投与、例えばシクロスポリンA(CsA)の短期の高投与量コースで寛容を誘導する方法を、他の寛容を誘導するための方法、例えば抗原に対する寛容を誘導するためのドナー幹細胞の移植を用いる寛容を誘導する方法、例えば1992年2月19日に出願された米国特許出願第07/838,595号に記載された方法と組合せることが出来る。
従って、他の面において、この発明は、第1の種のレシピエント哺乳動物、例えば霊長類例えばヒトにおいて第2の哺乳動物好ましくは不調和の種例えばブタ例えばミニブタ又は不調和の霊長類種から得た移植片に対する寛容を誘導する方法を特徴とする。この方法は、好ましくは移植片の移植前又は移植と同時に、例えば静脈注射によりレシピエント哺乳動物に、第2の種の造血幹細胞例えば骨髄細胞又は胎児の肝若しくは脾臓細胞を導入すること(好ましくは、これらの造血幹細胞は、レシピエント哺乳動物中の部位に向かう)、(適宜に)例えば造血幹細胞をレシピエント哺乳動物中に導入する前に該レシピエント哺乳動物のナチュラルキラー細胞に結合し得る抗体をそのレシピエント哺乳動物中に導入することによりレシピエント哺乳動物のナチュラルキラー細胞を不活性化すること、好ましくは移植片をそのレシピエント中に移植すること及び好ましくはレシピエントに補助減縮治療の短期コース例えば高投与量シクロスポリンの短期コースを施与することを含む。補助減縮治療の短期コースを、一般に、移植片をレシピエント中に導入した時点で施与する。
好適具体例において、補助減縮治療の短期コースは、レシピエント中に導入された移植片の不一致のクラスI及び/又はマイナー抗原に対する寛容を誘導する。
好適具体例において、補助減縮治療の短期コースの持続は、レシピエント種の成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後にその抗原の拒絶を開始するのに要する期間とほぼ同じか又はそれより短く、一層好適な具体例においては、この持続は、レシピエント種の成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後にその抗原の拒絶を開始するのに要する期間の2、3、4、5若しくは10倍とほぼ同じか又はそれより短い。
他の好適具体例において、補助減縮治療の短期コースを、レシピエントの成熟T細胞によるサイトカインの放出を刺激する治療の不在において、例えば補助減縮治療の所望の効果を打ち消すのに十分な濃度のステロイド剤の不在、例えばレシピエントの成熟T細胞によるサイトカインの放出を刺激する濃度のプレドニゾン(17,21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,11,20−トリオン)の不在において投与する。好適具体例において、補助減縮治療の短期コースを、ステロイド剤の不在、例えばプレドニゾンの不在において施与する。
好適具体例において、補助減縮治療を、移植片を導入する前又は導入する頃に開始し、又は短期コースは手術中であり、短期コースは手術後である。
下記において一層詳細に説明するように、これらの造血細胞は、レシピエントに、B細胞及びT細胞レベルの両方における寛容を誘導することによって、後に続く移植片に対する準備をさせる。好ましくは、造血細胞は、胎児の肝若しくは脾臓細胞、又は未成熟細胞を含む骨髄細胞(即ち、未分化造血幹細胞、これらの所望の細胞を投与前に骨髄から分離することが出来る)であり、又はかかる細胞を含む複合骨髄試料を用いることが出来る。
抗NK抗体の1つの源は、抗ヒト胸腺細胞ポリクローナル抗血清である。下記で論ずるように、好ましくは、T細胞並びにNK細胞を溶解させる第2の抗成熟T細胞抗体をも投与することが出来る。T細胞を溶解させることは、骨髄及び異種移植片生存の両者にとって有利である。抗T細胞抗体は、抗NK抗体と共に抗胸腺細胞抗血清中に存在する。抗NK又は抗T細胞抗体の反復投与が好ましい。モノクローナル調製物をこの発明の方法で用いることが出来る。
他の好適具体例は、レシピエント哺乳動物へドナー種特異的間質組織、好ましくは造血間質組織例えば胎児の肝又は胸腺を導入するステップを含む。好適具体例において、間質組織を、造血幹細胞と同時に又はそれより前に導入し、造血幹細胞を、抗体と同時に又はそれより前に導入する。
他の好適具体例は、第2の種と同じ哺乳動物が移植片及び造血細胞の一方又は両方のドナーであるもの、及び抗体が例えばウマ又はブタから得られた抗ヒト胸腺細胞ポリクローナル抗血清であるものを含む。
他の好適具体例は、造血幹細胞の移植前に、例えばレシピエント哺乳動物を低線量例えば約100〜400ラドで照射すること(レシピエントの骨髄を涸渇させ又は部分的に涸渇させるための全身照射)により造血空間を創るステップ、造血幹細胞移植前に、レシピエント哺乳動物を1回以上約700ラドの胸腺照射で照射するか又はここに記載したように免疫抑制剤の短期コースをレシピエントに施与することによる胸腺T細胞の不活性化を含む。
他の好適具体例は、造血幹細胞の移植前に、例えば第2の種の哺乳動物から得た器官、例えば肝臓又は腎臓を血液灌流することにより、レシピエント哺乳動物の血液から天然の抗体を涸渇させるステップを含む(器官の血液灌流において、血液中の抗体は、器官の細胞表面の抗原と結合し、それ故、血液から除去される)。
他の好適具体例において、この方法は、更に、造血幹細胞移植前に、レシピエント中に該レシピエント哺乳動物の成熟T細胞に結合し得る抗体を導入することを含む。
好適具体例において、この方法は、レシピエント中にドナーから得た移植片(それは、造血幹細胞とは異なる器官、例えば肝臓又は腎臓から得られる)を導入するステップを含む。
他の面において、この発明は、レシピエント哺乳動物、好ましくは霊長類、好ましくはヒトにおいて、例えば同種のドナーから得た移植片に対する寛容を誘導する方法を特徴とする。この方法は、好ましくは移植片の移植前又は移植と同時に、例えば静脈注射によりレシピエント中に、哺乳動物好ましくはドナーの造血幹細胞例えば骨髄細胞又は胎児の肝若しくは脾臓細胞を導入すること(好ましくは、造血幹細胞は、レシピエント中の部位に向かう)、(適宜に)レシピエントのT細胞を、例えばレシピエントに造血幹細胞を導入する前に、そのレシピエントのT細胞に結合し得る抗体をそのレシピエントに導入することにより不活性化すること、好ましくは、移植片をそのレシピエントに移植すること及び、好ましくは補助減縮治療の短期コース、例えば高投与量シクロスポリンの短期コースをレシピエントに施与することを含む。補助減縮治療の短期コースを、一般に、移植片をレシピエントに導入する時点で施与する。
好適具体例において、補助減縮治療の短期コースは、レシピエントに導入された移植片の不一致のクラスI及びマイナー抗原に対する寛容を誘導する。
好適具体例において、補助減縮治療の短期コースの持続は、レシピエント種の成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後にその抗原の拒絶を開始するのに要する期間とほぼ同じか又はそれより短く、一層好適な具体例においては、その持続は、レシピエント種の成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後にその抗原の拒絶を開始するのに要する期間の2、3、4、5若しくは10倍とほぼ同じか又はそれより短い。
他の好適具体例において、補助減縮治療の短期コースを、レシピエントの成熟T細胞によるサイトカインの放出を刺激する治療の不在において、例えば補助減縮治療の所望の効果を打ち消すのに十分な濃度のステロイド剤の不在、例えばレシピエントの成熟T細胞によるサイトカインの放出を刺激する濃度のプレドニゾン(17,21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,11,20−トリオン)の不在において投与する。好適具体例において、補助減縮治療の短期コースを、ステロイド剤の不在、例えばプレドニゾンの不在において施与する。
好適具体例において、補助減縮治療を、移植片を導入する前又は導入する頃に開始し、短期コースは手術中であり、短期コースは手術後であり、ドナー及びレシピエントはクラスIマッチする。
好適具体例において、造血幹細胞を抗体の投与と同時に又は投与前に導入し、この抗体は抗ヒト胸腺細胞ポリクローナル抗血清であり、そしてこの抗血清はウマ又はブタから得られる。
他の好適具体例は、造血幹細胞移植前に、レシピエントのNK細胞を、例えばレシピエント中にレシピエント哺乳動物のNK細胞に結合し得る抗体を導入することにより不活性化又は涸渇させる更なるステップを含み及び同じ個体が移植片及び骨髄の両者のドナーであるものを含む。
他の好適具体例は、造血幹細胞移植前に、例えばレシピエント哺乳動物を低線量例えば約100〜400ラドで照射すること(レシピエントの骨髄を涸渇させ又は部分的に涸渇させるための全身照射)により造血空間を創るステップ、造血幹細胞移植前に1回以上レシピエント哺乳動物を例えば約700ラドの胸腺照射で照射し又はここに記載のようにレシピエントに免疫抑制剤の短期コースを施与することにより胸腺T細胞を不活性化することを含む。
他の好適具体例は、骨髄移植前に、ドナーから得た器官例えば肝臓又は腎臓を血液灌流することにより、レシピエントの血液から天然の抗体を吸収する更なるステップを含む。
好適具体例は、レシピエント哺乳動物にドナー種特異的間質組織好ましくは造血間質組織例えば胎児の肝又は胸腺を導入するステップを含む。
好適具体例において、この方法は、レシピエント中に造血幹細胞と異なる期間例えば肝臓又は腎臓から得た移植片を導入するステップを含む。
補助減縮剤の短期投与例えばシクロスポリンA(CsA)の短期高投与量コースによる寛容を誘導する方法は、更に他の寛容を誘導する方法、例えば異種胸腺移植片の移植を利用して寛容を誘導する方法例えば1993年12月7日出願の米国特許出願第08/163,912号に記載された方法、寛容促進若しくはGVHD阻止性サイトカインの活性レベルを増大させ又は寛容阻止若しくはGVHD促進性サイトカインの活性レベルを減少させる方法例えば1993年8月30日出願の米国特許出願第08/114,072号に記載された方法、臍帯血液細胞を用いて寛容を誘導する方法例えば1993年11月10日出願の米国特許出願第08/150,739号に記載された方法、及び1994年2月14日出願のSykes及びSachsのPCT/US94/01616号に開示された寛容を誘導するための方法と組合せることが出来る。
免疫抑制剤例えばシクロスポリンの短期コースを用いてそうしなければ同種移植片又は異種移植片の拒絶を促進するT細胞活性を減少させ又は阻害することが出来るということも発見された。
従って、他の面において、この発明は、レシピエント哺乳動物例えば霊長類例えばヒトにおいて、T細胞活性好ましくは胸腺若しくはリンパ節T細胞の活性を減じ又は阻害する方法を特徴とする。この方法は、移植片に対する寛容を誘導し、レシピエントにT細胞好ましくは胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化するのに十分な免疫抑制剤例えばシクロスポリンの短期コースを施与し、そして好ましくはこの移植片をこのレシピエントに移植することを含む。
移植片に対する寛容を、如何なる方法例えばここで論じた方法の何れによって誘導してもよい。例えば、寛容を、ドナー同種若しくは異種の造血幹細胞の投与、補助減縮剤の短期コースの施与、又は移植片の免疫学的特性を、その細胞表面分子マスクし、開裂させ若しくは改変することにより変えることによって誘導することが出来る。
好適具体例において、免疫抑制剤の短期コースの持続は、30日にほぼ等しいか、8〜12日にほぼ等しいか又はそれより短い(好ましくは、約10日)か、8〜12日又は10日間の2、3、4、5若しくは10倍にほぼ等しいか又はそれより短い。
好適具体例において、短期コースを、寛容を誘導するための治療を開始する前又は開始する頃に、例えば異種、同種、遺伝子操作した同系の又は遺伝子操作した自己の幹細胞をレシピエントに導入する頃に開始する。短期コースを、寛容を誘導するための治療を開始する日に、例えば異種、同種、遺伝子操作した同系の又は遺伝子操作した自己の幹細胞をレシピエントに導入する日に開始する。短期コースを、寛容を誘導するための治療を開始する前又は開始後1、2、4、6、8又は10日以内に、例えば異種、同種、遺伝子操作した同系の又は遺伝子操作した自己の幹細胞をレシピエントに導入する前又は導入後1、2、4、6、8又は10日以内に開始する。
他の好適具体例において、免疫抑制剤の短期コースを抗T細胞抗体と共に施与し、免疫抑制剤の短期コースは、T細胞の抗体に基づく不活性化例えばATG抗体若しくは類似の調製物の静脈投与による不活性化によっては不活性化されないT細胞例えば胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化するのに十分である。
好適具体例において、レシピエント哺乳動物は、マウス又はラット以外である。
この発明のT細胞好ましくは胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化する方法は、T細胞の不活性化が望ましい寛容を誘導する方法と組合せることが出来る。この発明の抗T細胞法を、かかる寛容を誘導する方法において要求され若しくは有用であるT細胞の不活性化のための方法の代りに又はそれに加えて用いることが出来る。例えば、この発明の抗胸腺又はリンパ節T細胞法を、形質導入された骨髄細胞の移植のための方法例えば1993年9月23日出願の米国特許出願第008/126,122号に開示された方法と共に用いて抗原に対する寛容を誘導することが出来る。
従って、他の面において、この発明は、第1の種のレシピエント哺乳動物における第2の種のドナー哺乳動物からの移植片の受容を促進する方法を特徴とし、好ましくはこの移植片は主要組織適合複合体(MHC)抗原を発現する。この方法は、第2の種のMHC抗原をコードするDNAをレシピエント哺乳動物の造血幹細胞例えば骨髄造血幹細胞中に挿入すること、MHC抗原をコードするDNAをレシピエント中で発現させること、及び好ましくは、レシピエントに免疫抑制剤の短期コース例えばレシピエントのT細胞好ましくは胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化するのに十分なシクロスポリン治療の短期コースを施与する(そうでなければ、胸腺若しくはリンパ節T細胞は移植片又は操作した(engineered)細胞の生存を阻害する)ことを含む。
好適具体例において、免疫抑制剤の短期コースの持続は、30日にほぼ等しいか、8〜12日にほぼ等しいか又はそれより短いか(好ましくは、約10日)、8〜12日又は10日間の2、3、4、5若しくは10倍にほぼ等しいか又はそれより短い。
好適具体例において、レシピエント哺乳動物は、霊長類、例えばヒトであり、ドナー哺乳動物はブタ、例えばミニブタである。
好適具体例において、短期コースを、遺伝子操作した幹細胞をレシピエントに導入する前又は導入する頃に開始し、短期コースを、遺伝子操作した幹細胞をレシピエントに導入する前又は導入後1、2、4、6、8又は10日以内に開始する。
他の好適具体例において、免疫抑制剤の短期コースを抗T細胞抗体と共に施与し、免疫抑制剤の短期コースは、抗体に基づくT細胞の不活性化例えばATG若しくは類似の抗体調製物の静脈投与による不活性化によっては不活性化されないT細胞例えば胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化するのに十分である。
好適具体例は、細胞を、DNA挿入前にレシピエント哺乳動物から取り出してDNA挿入後にレシピエント哺乳動物に戻すもの、DNAを移植片を得た哺乳動物個体から得るもの、DNAを移植片を得た哺乳動物個体と同系である哺乳動物個体から得るもの、DNAを移植片を得た哺乳動物個体とMHCマッチした好ましくは同一の哺乳動物個体から得るもの、DNAがMHCクラスI遺伝子を含むもの、DNAがMHCクラスII遺伝子を含むもの、DNAを形質導入により、例えばレトロウイルス例えばMoloneyに基づくレトロウイルスにより細胞に挿入するもの、及びDNAが、そのDNAをレシピエントに導入した後に、レシピエントの骨髄細胞及び/又は末梢血液細胞中で少なくとも14日、好ましくは30日、一層好ましくは60日、最も好ましくは120日間にわたって発現されるものを含む。
他の好適具体例は、造血幹細胞移植前に、移植した幹細胞の植付け及び生存を促進するために、例えばレシピエント哺乳動物を低線量例えば約100〜400ラドで照射すること(レシピエントの骨髄を涸渇させ又は部分的に涸渇させるための全身照射)によりレシピエント中に造血空間を創るステップを含む。
好適具体例において、この方法は更に、レシピエントへの胸腺照射例えば700ラドの胸腺照射の施与を含む。
他の好適具体例は、例えば第2の種の哺乳動物から得た器官例えば肝臓又は腎臓を血液灌流することにより、レシピエント哺乳動物の血液から天然の抗体を涸渇させるステップを含む(器官の血液灌流において、血液中の抗体はその器官の細胞表面の抗原と結合し、それ故、血液から除去される)。
他の好適具体例は、更に、レシピエント中に、ドナーから得た移植片例えば肝臓又は腎臓を導入するステップを含む。
他の面において、この発明は、レシピエント哺乳動物、好ましくは霊長類例えばヒトにおける同種のドナーから得た移植片の受容を促進する方法を特徴とし、その移植片はMHC抗原を発現する。この方法は、ドナーのMHC抗原をコードするDNAをレシピエントの造血幹細胞例えば骨髄造血幹細胞中に挿入し、そのMHC抗原をコードするDNAをレシピエント中で発現させ、そして好ましくは、そのレシピエントに、レシピエントのT細胞好ましくは胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化するのに十分な免疫抑制剤の短期コース例えばシクロスポリン治療の短期コースを施与する(そうしなければ、胸腺若しくはリンパ節のT細胞は移植片又は操作した細胞の生存を阻害する)ことを含む。
好適具体例において、免疫抑制剤の短期コースの持続は、30日にほぼ等しいか、8〜12日(好ましくは、約10日)にほぼ等しいか又はそれより短いか、8〜12日又は10日間の2、3、4、5若しくは10倍にほぼ等しいか又はそれより短い。
好適具体例において、短期コースを、遺伝子操作した幹細胞をレシピエントに導入する前又は導入する頃に開始し、短期コースを、遺伝子操作した幹細胞をレシピエントに導入する日に開始し、短期コースを、遺伝子操作した幹細胞をレシピエントに導入する前又は導入後1、2、4、6、8又は10日以内に開始する。
他の好適具体例において、免疫抑制剤の短期コースを抗T細胞抗体と共に施与し、免疫抑制剤の短期コースは抗体に基づくT細胞の不活性化例えばATG若しくは類似の抗体調製物の静脈投与による不活性化によっては不活性化されないT細胞例えば胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化するのに十分である。
好適具体例は、細胞をDNA挿入前にレシピエントから取り出してDNA挿入後にレシピエントに戻すもの、DNAがMHCクラスI遺伝子を含むもの、DNAがMHCクラスII遺伝子を含むもの、DNAを形質導入により、例えばレトロウイルス例えばMoloneyに基づくレトロウイルスにより細胞に挿入するもの及びDNAが、そのDNAをレシピエント中に導入した後、レシピエントの骨髄細胞及び/又は末梢血液細胞において、少なくとも14日、好ましくは30日、一層好ましくは60日、最も好ましくは120日発現されるものを含む。
他の好適具体例は、造血幹細胞移植前に、移植した幹細胞の植付け及び生存を促進するために、例えばレシピエント哺乳動物を低線量例えば100〜400ラドで照射すること(レシピエントの骨髄を涸渇させ又は部分的に涸渇させるための全身照射)により、レシピエント中に造血空間を創るステップを含む。
好適具体例において、この方法は、更に、レシピエントに対する胸腺照射例えば700ラドの胸腺照射の施与を含む。
他の好適具体例は、例えば第2の種の哺乳動物から得た器官例えば肝臓又は腎臓を血液灌流することによりレシピエント哺乳動物の血液から天然の抗体を涸渇させるステップを含む(器官の血液灌流において、血液中の抗体は器官の細胞表面の抗原に結合し、それ故、血液から除去される)。
他の好適具体例は、更に、レシピエント中に、ドナーから得た移植片例えば肝臓又は腎臓を導入するステップを含む。
この発明のT細胞好ましくは胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化する方法は、抗原に対する寛容を誘導するためにドナーの幹細胞の移植を用いる寛容を誘導する方法例えば1992年2月19日出願の米国特許出願第07/838,595号に記載された方法(参考として本明細書中に援用する)と組合せることが出来る。
従って、他の面において、この発明は、第1の種のレシピエント哺乳動物例えば霊長類例えばヒトにおける第2の哺乳動物好ましくは調和しない種、例えばブタ例えばミニブタ又は調和しない霊長類種から得た移植片の受容を促進する方法を特徴とする。この方法は、例えば静脈注射によって、レシピエント哺乳動物中に第2の種の造血幹細胞例えば骨髄細胞又は胎児の肝若しくは脾臓細胞を導入し(好ましくは、これらの造血幹細胞はレシピエント哺乳動物中の部位に向かう)、(適宜に)レシピエント哺乳動物のナチュラルキラー細胞を、例えば造血幹細胞をレシピエント哺乳動物中に導入する前にそのレシピエント哺乳動物中に該レシピエント哺乳動物のナチュラルキラー細胞に結合し得る抗体を導入することによって不活性化し、(適宜に)レシピエント哺乳動物のT細胞を、例えば造血幹細胞をレシピエント哺乳動物中に導入する前にそのレシピエント哺乳動物中に該レシピエント哺乳動物のT細胞に結合し得る抗体を導入することによって不活性化し、そして好ましくは、レシピエントに、レシピエントのT細胞好ましくは胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化するのに十分な免疫抑制剤の短期コース例えばシクロスポリン治療の短期コースを施与する(そうしないと、胸腺若しくはリンパ節T細胞は操作した細胞の植付け又は生存を阻害するかも知れない)ことを含む。
好適具体例において、免疫抑制剤の短期コースの持続は、30日にほぼ等しいか、8〜12日(好ましくは、約10日)にほぼ等しいか又はそれより短いか、上記の8〜12又は10日間の2、3、4、5若しくは10倍にほぼ等しいか又はそれより短い。
好適具体例において、短期コースを、幹細胞をレシピエント中に導入する前又は導入する頃に開始し、短期コースを、幹細胞をレシピエントに導入する日に開始し、短期コースを、幹細胞をレシピエントに導入する前又は導入後1、2、4、6、8若しくは10日以内に開始する。
他の好適具体例において、免疫抑制剤の短期コースを抗T細胞抗体又は胸腺照射例えば700ラドの胸腺照射の一方又は両方と共に施与し、免疫抑制の短期コースは、抗体に基づくT細胞の不活性化例えばATG抗体調製物の静脈投与による不活性化では不活性化されないT細胞例えば胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化するのに十分である。
下記に一層詳細に説明するように、造血細胞は、これらの造血細胞は、レシピエントに、B細胞及びT細胞レベルの両方における寛容を誘導することによって、後に続く移植片に対する準備をさせる。好ましくは、造血細胞は、胎児の肝若しくは脾臓細胞、又は未成熟細胞を含む骨髄細胞(即ち、未分化造血幹細胞、これらの所望の細胞を投与前に骨髄から分離することが出来る)であり、又はかかる細胞を含む複合骨髄試料を用いることが出来る。
抗NK抗体の1つの源は、抗ヒト胸腺細胞ポリクローナル抗血清である。下記で論ずるように、好ましくは、T細胞並びにNK細胞を溶解させる第2の抗成熟T細胞抗体をも投与することが出来る。T細胞を溶解させることは、骨髄及び異種移植片生存の両者にとって有利である。抗T細胞抗体は、抗NK抗体と共に抗胸腺細胞抗血清中に存在する。抗NK又は抗T細胞抗体の反復投与が好ましい。モノクローナル調製物をこの発明の方法で用いることが出来る。
他の好適具体例は、レシピエント哺乳動物へドナー種特異的間質組織、好ましくは造血間質組織例えば胎児の肝又は胸腺を導入するステップを含む。好適具体例において、間質組織を、造血幹細胞と同時に又はそれより前に導入し、造血幹細胞を、抗NK若しくはT細胞抗体と同時に又はそれより前に導入する。
他の好適具体例は、第2の種と同じ哺乳動物が移植片及び造血細胞の一方又は両方のドナーであるもの、及び抗T若しくは抗NK細胞抗体が例えばウマ又はブタから得られた抗ヒト胸腺細胞ポリクローナル抗血清であるものを含む。
他の好適具体例は、造血幹細胞移植前に、移植した幹細胞の植付け及び生存を促進するために、例えばレシピエント哺乳動物を低線量例えば約100〜400ラドで照射すること(レシピエントの骨髄を涸渇させ又は部分的に涸渇させるための全身照射)により、レシピエント中に造血空間を創るステップを含む。
好適具体例において、この方法は、更に、レシピエントに対する胸腺照射例えば300〜700ラドの胸腺照射の施与を含む。
他の好適具体例は、造血幹細胞の移植前に、例えば第2の種の哺乳動物から得た器官、例えば肝臓又は腎臓を血液灌流することにより、レシピエント哺乳動物の血液から天然の抗体を涸渇させるステップを含む(器官の血液灌流において、血液中の抗体は、器官の細胞表面の抗原と結合し、それ故、血液から除去される)。
他の好適具体例は、更に、レシピエント中に、ドナーから得た移植片、例えば造血幹細胞とは異なる器官例えば肝臓又は腎臓から得た移植片を導入するステップを含む。
好適具体例において、幹細胞を、移植片の移植の前に又は移植と同時にレシピエント中に導入する。
他の面において、この発明は、レシピエント哺乳動物好ましくは霊長類例えばヒトにおける同種のドナーから得た移植片の受容を促進する方法を特徴とする。この方法は、例えばレシピエントへの静脈注射により、哺乳動物好ましくはドナーの造血幹細胞例えば骨髄細胞又は胎児の肝若しくは脾臓細胞を導入すること(好ましくは、これらの造血幹細胞は、レシピエント中の部位に向かう)、(適宜に)レシピエントのT細胞を、例えば造血幹細胞をレシピエントに導入する前にそのレシピエント中にそのレシピエントのT細胞に結合し得る抗体を導入することにより不活性化すること、及び好ましくは、レシピエントに、レシピエントのT細胞好ましくは胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化するのに十分な免疫抑制剤の短期コース例えばシクロスポリン治療の短期コースを施与する(そうしないと、胸腺又はリンパ節T細胞は操作した細胞の植付け又は生存を阻害するかも知れない)ことを含む。
好適具体例において、免疫抑制剤の短期コースの持続は、30日にほぼ等しいか、8〜12日(好ましくは、約10日)にほぼ等しいかそれより短いか、上記の8〜12日又は10日間の2、3、4、5若しくは10倍にほぼ等しいか又はそれより短い。
好適具体例において、短期コースを、幹細胞をレシピエント中に導入する前又は導入する頃に開始し、短期コースを、幹細胞をレシピエント中に導入する日に開始し、短期コースを、幹細胞をレシピエント中に導入する前又は導入後1、2、4、6、8若しくは10日以内に開始する。
他の好適具体例において、免疫抑制剤の短期コースを抗T細胞抗体又は胸腺照射例えば700ラドの胸腺照射の一方又は両方と共に施与し、免疫抑制の短期コースは抗体に基づくT細胞の不活性化例えばATG抗体調製物の静脈投与による不活性化では不活性化されないT細胞例えば胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化するのに十分である。
好適具体例において、抗T細胞又はNK細胞抗体は、抗ヒト胸腺細胞ポリクローナル抗血清であり、この抗血清はウマ又はブタから得られる。
他の好適具体例は、造血幹細胞移植前に、レシピエントのNK細胞を、例えばそのレシピエント哺乳動物中にそのレシピエント哺乳動物のNK細胞に結合し得る抗体を導入することによって不活性化する更なるステップを含み、及び同じ個体が移植片と骨髄の両者のドナーであるものを含む。
他の好適具体例は、造血幹細胞移植前に、移植した幹細胞の植付け及び生存を促進するために、例えばレシピエント哺乳動物を低線量例えば約100〜400ラドで照射すること(レシピエントの骨髄を涸渇させ又は部分的に涸渇させるための全身照射)によって、レシピエント中に造血空間を創るステップを含む。
好適具体例において、この方法は、更に、レシピエントに対する胸腺照射例えば700ラドの胸腺照射を施与することを含む。
他の好適具体例は、骨髄移植前に、ドナーから得た器官例えば肝臓又は腎臓を血液灌流することによって、レシピエントの血液から天然の抗体を吸収する更なるステップを含む。
好適具体例は、レシピエント哺乳動物中に、ドナー種特異的な間質組織、好ましくは造血間質組織例えば胎児の肝若しくは胸腺を導入するステップを含む。
他の好適具体例は、更に、レシピエント中に、ドナーから得た移植片、例えば造血幹細胞と異なる器官例えば肝臓又は腎臓から得た移植片を導入するステップを含む。
好適具体例において、幹細胞を、移植片の移植前又は移植と同時にレシピエントに導入する。
この発明のT細胞好ましくは胸腺若しくはリンパ節T細胞を不活性化する方法を、胸腺若しくはリンパ節T細胞の不活性化が望ましい更に他の寛容を誘導する方法と共に用いることが出来る。例えば、この発明の抗胸腺又はリンパ節T細胞法を、寛容を誘導すために異種胸腺移植片の移植を用いる方法例えば1993年12月7日出願の米国特許出願第08/163,912号に記載された方法、寛容促進若しくはGVHD阻止性サイトカインの活性レベルを増大させ又は寛容阻止若しくはGVHD促進性サイトカインの活性レベルを減少させる方法例えば1993年8月30日出願の米国特許出願第08/114,072号に記載された方法、臍帯血液細胞を用いて寛容を誘導する方法例えば1993年11月10日出願の米国特許出願第08/150,739号に記載された方法、及び1994年2月14日出願のSykes及びSachsのPCT/US94/01616号に開示された寛容を誘導するための方法と共に用いることが出来る。
「胸腺又はリンパ節T細胞を不活性化することの出来る免疫抑制剤」とは、ここで用いる場合、適当な投与量で投与した場合に、胸腺又はリンパ節T細胞の不活性化を生じる薬剤、例えば化学剤例えば薬物をいう。かかる薬剤の例は、シクロスポリン、FK−506及びラパマイシンである。抗T細胞抗体は薬剤として使用するのに好適でない(それらは胸腺又はリンパ節T細胞を不活性化する効果が比較的低いので)。薬剤を、抗T細胞抗体例えば抗ATG調製物の投与によっては不活性化されない胸腺又はリンパ節T細胞の有意の不活性化を生じるのに十分な投与量で投与すべきである。推定の薬剤及びそれらの有効濃度を、イン・ビトロ又はイン・ビボ試験により、例えば推定の薬剤を試験動物に投与し、胸腺又はリンパ節の試料を取り出して、活性T細胞の存在についてイン・ビトロ又はイン・ビボで試験することによって予備スクリーニングすることが出来る。かかる予備スクリーニングした推定の薬剤を、次いで、更に、移植アッセイにおいて試験することが出来る。
「免疫抑制剤の短期コース」とは、ここで用いる場合、一時的な長期でない治療のコースを意味する。この治療は、寛容を誘導するための治療を開始する前又は開始する頃に、例えば異種、同種、遺伝子操作した同系の又は遺伝子操作した自己の幹細胞をレシピエントに導入する頃に開始すべきである。例えば、短期コースを、寛容を誘導するための治療を開始する日、例えば異種、同種、遺伝子操作した同系の又は遺伝子操作した自己の幹細胞をレシピエントに導入する日に開始することが出来、或は、短期コースを、寛容を誘導するための治療を開始する前又は開始後1、2、4、6、8若しくは10日以内に、例えば異種、同種、遺伝子操作した同系の又は遺伝子操作した自己の幹細胞をレシピエントに導入する前又は導入後1、2、4、6、8若しくは10日以内に開始することが出来る。この短期コースを、約8〜12日(好ましくは、約10日)以下の期間、又は8〜12日又は10日間の2、3、4、5若しくは10倍に等しいか又はそれより短い時間続ける。最適には、この短期コースを、約30日続ける。投与量は、胸腺又はリンパ節T細胞を不活性化するのに十分な血中レベルを維持するのに十分であるべきである。約15/mg/kg/日の投与量が有効であることが霊長類において見出されている。
「リンパ節又は胸腺T細胞」とは、ここで用いる場合、T細胞不活性化の従来法例えば抗T細胞抗体例えばATG調製物の単独での静脈投与による不活性化に耐性であるT細胞のことをいう。
「補助減縮」とは、ここで用いる場合、寛容が望まれる抗原への最初の曝露の際のレシピエントのT細胞からの少なくとも1種のサイトカイン例えばIL−2、IL−4、IL−6、ガンマーインターフェロン又はTNFの何れかの放出を阻止することによるT細胞補助の減縮を意味する。レシピエントのT細胞のサイトカイン分泌において誘導される阻止は、補助の減縮中に投与される抗原に対してレシピエントが寛容化されるだけ十分でなければならない。理論に縛られる訳ではないが、減縮のレベルは、外来抗原の最初の認識に伴うIL−2の初期バーストを実質的に排除するが寛容の教育及び生成に重要なすべての成熟T細胞を排除するのではないものであると考えられる。
「補助減縮剤」とは、ここで用いる場合、サイトカイン放出の減縮を生じる薬剤例えば免疫抑制剤である。補助減縮剤の例はシクロスポリン、FK−506及びラパマイシンである。抗T細胞抗体は、T細胞を排除するので、補助減縮剤として用いるのに好ましくない。補助減縮剤は、寛容を生じるサイトカイン放出の阻止のレベルを与えるのに十分な投与量で投与しなければならない。この補助減縮剤は、サイトカイン例えばIL−2の放出を促進する治療の不在において投与すべきである。推定の薬剤補助減縮剤を、イン・ビトロ又はイン・ビボ試験により、例えば推定の薬剤をT細胞と接触させ、処理したT細胞のサイトカイン例えばIL−2を放出する能力を測定することにより予備スクリーニングすることが出来る。サイトカイン放出の阻止は、その推定の薬剤の補助減縮剤としての効力を示している。かかる予備スクリーニングした推定の薬剤を、次いで、更に、腎臓移植アッセイにおいて試験することが出来る。腎臓移植アッセイにおいて、推定の補助減縮剤を、その推定の薬剤をレシピエントのサルに投与し、次いで、クラスIIマッチしクラスI及びマイナー抗原ミスマッチしたドナーのサルからの腎臓をそのレシピエント中に移植することにより、効力について試験することが出来る。ドナーのサルに対する寛容(移植片の延長された受容による指示)はその推定の薬剤が試験した投与量において補助減縮剤であることを示す。
「補助減縮剤の短期コース」とは、ここで用いる場合、一時的な長期でない治療のコースを意味する。この治療は、移植片の移植前又は移植の頃に開始すべきである。或は、この治療をレシピエントのドナーの抗原への曝露の前又は曝露の頃に開始することが出来る。最適には、この治療を、レシピエント種の成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後にその抗原の拒絶を開始するのに要する期間とほぼ同じか又はそれより短期間続ける。この治療の持続を、レシピエント種の成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後にその抗原の拒絶を開始するのに要する期間の2、3、4、5若しくは10倍にほぼ等しいか又はそれより短い時間まで延長することが出来る。この持続は、通常、少なくとも、レシピエント種の成熟T細胞について最初に抗原により刺激された後にその抗原の拒絶を開始するのに要する時間に等しい。ブタとサルにおいて、約12日の治療は十分である。サルにおける他の実験は、シクロスポリンA治療の8、9又は10日目において投与したIL−2が移植された組織の拒絶を生じることを示す。従って、8、9又は10日は、恐らく、ブタにおいて十分でない。サルにおいて、10mg/kgのシクロスポリン投与量(血中レベル約500〜1000ng/ml)は、クラスIIマッチしクラスI及びマイナー抗原ミスマッチした腎臓に対する寛容を誘導するのに十分である。同じ血中レベル500〜1000ng/mlは、ブタにおいて寛容を誘導するのに十分である。5mg/kgの長期投与は、(長期免疫抑制により)拒絶を防ぐが寛容を生じない。
「寛容」とは、ここで用いる場合、例えば、非自己MHC抗原のレシピエントへの導入に応じて阻止しなければ生じたであろう移植片レシピエントの免疫応答の阻止をいう。寛容は、体液性、細胞性又はその両者の応答を含み得る。
「造血幹細胞」とは、ここで用いる場合、成熟ミエロイド及び/又はリンパ様細胞に分化することの出来る細胞例えば骨髄細胞をいう。レシピエント又はドナーの臍帯血液から導いた幹細胞をこの発明の方法において用いることが出来る。米国特許第5,192,553号(参考として本明細書中に援用する)及び米国特許第5,004,681号(参考として本明細書中に援用する)を参照されたい。
「MHC抗原」とは、ここで用いる場合、1つ以上のMHC遺伝子の蛋白質生成物をいう。この用語は、レシピエント生物において免疫応答を喚起することの出来るMHC遺伝子の生成物の断片又はアナログを含む。MHC抗原の例は、ヒトMHC遺伝子例えばHLA遺伝子の生成物(及びそれらの断片及びアナログ)を含む。ブタ例えばミニブタのMHC遺伝子は、SLA遺伝子例えばDRB遺伝子の生成物(及びそれらの断片及びアナログ)を含む。
「ミニブタ」とは、ここで用いる場合、完全に又は部分的に、同系交配の動物をいう。
「移植片」とは、ここで用いる場合、身体の一部、器官、組織又は細胞のことをいう。移植片は、器官例えば肝臓、腎臓、心臓又は肺;身体の部分例えば骨又は骨格マトリックス;組織例えば皮膚、腸、内分泌腺;又は種々の型の始原幹細胞からなってよい。
「不調和種の組合せ」とは、ここで用いる場合、一方から他方へ移植片を移植したときに超急性拒絶が起きる2種をいう。一般に、不調和種は異なる目であるが、他方、不調和でない種は同じ目である。例えば、ラット及びマウスは、不調和でない種であり、即ち、それらのMHC抗原は実質的に類似しており且つそれらは同じ目、ゲッ歯類のメンバーである。
「間質組織」とは、ここで用いる場合、機能性要素又は実質組織から区別される器官の支持組織又はマトリックスをいう。
この発明の補助抑制方法は、移植においてしばしば用いられる広いスペクトルの免疫抑制剤の望ましくない長期又は慢性的投与の副作用を回避する。プレドニゾン、イムラン、CyA及び最近ではFK506等の薬物の長期又は慢性的投与は、移植の分野に重大なインパクトを与えた。しかしながら、これらのすべての薬物は、完全には免疫機能を排除しないが拒絶を回避するのに十分なだけ滴定されなければならない免疫系の非特異的抑制を引き起こす。人生の残りの間中慢性的免疫抑制治療を続けなければならない患者は、過剰又は過小の免疫抑制から起きそれぞれ感染及び拒絶により引き起こされる主要な合併症に直面する。この発明の補助抑制方法は、補助減縮剤治療の一時的な短期高投与量コースの施与に基づいている。
レシピエントの胸腺又はリンパ節T細胞は、移植された移植片例えば移植された造血細胞又は移植された器官に対する有意の抵抗の原因である。通常のT細胞涸渇又は不活性化方法例えば抗T細胞抗体の投与は、しばしば、T細胞涸渇又は不活性化の最適レベルに達しないことが見出されている。特に、かかる方法は、胸腺又はリンパ節T細胞の涸渇又は不活性化の最適レベルを与えることが出来ない。レシピエントの胸腺又はリンパ節T細胞を不活性化することの出来る免疫抑制剤例えばシクロスポリンの短期コースをレシピエントに施与するこの発明の方法は、更に徹底した胸腺又はリンパ節T細胞の不活性化を生じ、それ故、移植片組織の改善された受容を生じる。
この発明のレトロウイルス方法は、同種又は異種MHC遺伝子を発現するトランスジェニック自己骨髄細胞を用いる移植されたレシピエントの骨髄の再構築を与える。トランスジェニックMHC遺伝子の発現は、これらの又は密接に関連するMHC遺伝子の生成物を示す移植片に対する寛容を与える。従って、これらの方法は、MHC遺伝子の体細胞トランスファーにより、特異的移植寛容の誘導を与える。この発明のレトロウイルス方法は、移植においてしばしば用いられる広いスペクトルの免疫抑制剤の望ましくない副作用を回避する。
骨髄移植(BMT)によるリンパ造血キメリズムの誘導を介して、移植抗原に対する寛容を達成することが出来る。MHCバリヤーを横切るBMTは、2つの主要な危険を与える:即ち、もし成熟T細胞が骨髄接種物から除去されていないと、レシピエントは重症の移植片対宿主病(GVHD)を発症し得るし、これらの細胞の除去はしばしば植付けの失敗へと導く。この発明のレトロウイルス方法は、(同種異系又は異種に対して)自己の骨髄細胞を用いるレシピエントの骨髄の再構成により特異的寛容を誘導し、GVHDの最小の危険しか有さず且つ骨髄接種物からT細胞を除去する最小の必要性しか有しない寛容を与える。
この発明のレトロウイルス方法は、この発明の補助抑制及びT細胞不活性化方法と組み合わせて移植片の受容を延長させることが出来る。
この発明の造血細胞移植方法は、移植においてしばしば用いられる広いスペクトルの免疫抑制剤の望ましくない副作用を回避する。この発明の造血細胞移植方法は、この発明の補助抑制及びT細胞排除方法と組み合わせて移植片の受容を延長させることが出来る。
この発明の他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明及び請求の範囲から明らかとなろう。
詳細な説明
最初に図面を簡単に説明する。
図面
図1は、GS4.5レトロウイルス構築物の図解である。
図2は、GS4.5プロウイルスゲノム及び予想される転写物の図解である。
図3a及び3bは、形質導入細胞のフローサイトメトリープロフィルの表示である。
図4は、形質導入アッセイの図解である。
図5は、C57BL/10、B10.AKM及びB10.MBR株の遺伝地図の図解である。
図6は、形質導入した骨髄のレシピエントからの脾臓細胞のFACSプロフィルの図解である。
図7a及び7bは、皮膚移植実験における生存対時間のグラフである。
図8a〜dは、移植片拒絶者及び対照からの胸腺細胞のFACS分析の図解である。
図9は、N2−B19−H2bベクターの図解である。
概観
この発明は、外来抗原例えば同種又は異種の組織若しくは器官移植片上の抗原に対する寛容を誘導する幾つかの方法を提供する。これらの方法は、個別に又は組み合わせて利用することが出来る。例えば、補助減縮剤の短期投与例えばシクロスポリンA(CsA)の短期高投与量コースが移植片の受容を有意に延長することが見出された。(好ましくは、この発明の補助減縮養生法は、最初の抗原認識に伴うIL−2の初期バーストを実質的に排除するが、成熟T細胞を排除しない。これは、成熟T細胞を排除する抗T細胞抗体治療と区別される。)
免疫抑制剤例えばシクロスポリンの短期コースを用いて、さもなければ移植片の拒絶を促進するであろうT細胞を不活性化することが出来ることも見出された。
霊長類における腎臓の同種移植片に対するシクロスポリン誘導された寛容の効果を示す実験を下記の第I節に記載する。この発明の補助抑制方法を、移植片の受容を延長させるための他の方法と組み合わせることが出来る。下記の第II節は、MHC不同に対する寛容を誘導するためのレトロウイルスによりトランスフォームした骨髄細胞の移植を論ずる。この方法は、この発明の補助抑制方法例えばクラスI及び他のマイナー不同に対する寛容を誘導するためのシクロスポリンの高投与量の短期コースと組み合わせることが出来る。
下記の第III節は、MHC不同に対する寛容を誘導するための骨髄細胞の移植を論ずる。この方法は、クラスI及び他のマイナー不同に対する寛容を誘導するための高投与量シクロスポリン投与の短期コースと組み合わせることが出来る。T細胞を排除するためにシクロスポリンの短期コースを骨髄移植と組み合わせることも出来る。
I.高投与量シクロスポリンの短期移植後コース(サイトカイン放出を刺激する薬剤の不在にて施与する)は、霊長類において部分的にマッチする同種移植片の受容を延長させる
T細胞補助排除免疫抑制の短期コース(高投与量シクロスポリンの短期コースの形態)を伴って又は伴わないで、カニクイザル間で腎臓移植を行なった。この養生法は、移植片の受容を有意に延長させた。高投与量シクロスポリン(プレドニゾンを伴わない)の移植後コースを受けたサルは、MLC(混合リンパ球倍容アッセイ)非反応性クラスI及びマイナー抗原マッチしたドナーからの腎臓移植片に対して65日間にわたって寛容であった(下記参照)。移植後シクロスポリンを受けなかったサルは同じ不同の移植片を20日未満で拒絶した。この仕事を、下記において一層詳細に論ずる。
動物。カニクイザルは、Charles River Research Laboratoriesから購入した。これらの動物を、隔離し、病原体の全試験を行ない、次いで、AAALAC公認の設備内で、実験動物の世話及び使用のためのN.I.H.ガイドに厳密に適合した環境制御された室内に収容した。
分類。動物を、標準的な補体媒介の細胞毒性アッセイによりクラスI抗原について、及びMLC非反応性によりクラスIIマッチングについて分類した。
免疫抑制。CsAの静脈投与用調製物(Sandimmune,i.v.)をニュージャージー、Hanover在、Sndoz PharmaceuticalsCorporationより入手した。サルは、約10mg/kgの12回投与を受けた(最初の投与を、移植片の血管再生の4時間前に与えた)。CsAを250mlの通常の塩溶液にて希釈して1時間にわたって静脈から注入した。CsAを他の免疫抑制剤を伴わずに投与した。治療の持続は12日であった。ブタにおける適当な投与量は、筋肉内送達で、約15mg/kgである。何れの動物における投与も、血中レベルが約500〜1000ng/mlに維持されるようにすべきである。
腎臓の機能、拒絶及び病理学。腎臓の機能を血清中のクレアチニン及びBUNレベルにより追跡した。病理はバイオプシーによった。バイオプシーを、7日目に行ない、次いで、2か月間1週毎に行ない、次いで、1か月毎に行なった。
結果。対照レシピエント(シクロスポリンなし)は、移植された腎臓を15日未満で拒絶した。6匹のシクロスポリン処理した動物での結果は、次の通りであった:動物1は、65日目(即ち、移植後65日目)に死亡し、移植物は拒絶された(この動物の血中シクロスポリンレベルが移植後の最初の7日間において500ng/mlより低かったことに注意すべきである);動物2は、バイオプシーの出血から65日目に死亡し、移植された腎臓は死亡時に正常であった;動物3は、82日目に死亡し、55日目に幾らかの拒絶が見られた;動物4は、70日目において依然として正常であった(その時点で実験は未だ進行中であった);動物5は、40日目において依然として正常であった(その時点において実験は未だ進行中であった);及び動物6は26日目において依然として正常であった(その時点において実験は未だ進行中であった)。
II.クラスII不同に対する寛容を誘導するためのレトロウイルスでトランスフォームした骨髄細胞の移植と組み合わせたクラスI及び他のマイナー不同に対する寛容を誘導するための高投与量シクロスポリンの短期コース(サイトカインの放出を刺激する治療の不在例えばプレドニゾンの不在にて施与する)
レトロウイルスでのトランスフォーメーション
レトロウイルスでのトランスフォーメーションは、同種又は異種MHC遺伝子を発現するトランスジェニック骨髄細胞好ましくは自己骨髄細胞を用いる移植されたレシピエントの骨髄の再構築を与える。トランスジェニックMHC遺伝子の発現は、これらの又は密接に関連したMHC遺伝子の生成物を示す移植片に対する寛容を与える。従って、これらの方法は、MHC遺伝子の体細胞トランスファーにより特異的移植寛容の誘導を与える。MHC遺伝子のレトロウイルスによる導入は、単独で又はここに記載のT細胞補助減縮方法と組み合わせて用いることが出来る。このアプローチを以下において詳細に論じる。
MHC遺伝子:様々な種のMHC遺伝子はよく研究されている。例えば、ヒトのHLA遺伝子(Hansen等、1989、The Major Histocompatibility Complex,Fundamental Immunology第二版 W.E. Paul編、New York在、Raven Press Ltd.,中を参照されたい。参考として本明細書中に援用する。)及びブタのSLA遺伝子(Sachs等、1988、Immunogenetics 28:22-29参照。参考として本明細書中に援用する)がクローン化され、特性決定されている。
MHC抗原をコードする遺伝子をこの発明の方法において用いて、その又は密接に関連したMHC抗原を示す移植片に対する寛容を与えることが出来る。この発明の方法を用いて、同種移植片(例えば、移植片のドナー及びレシピエントの両者がヒト)及び異種移植片(例えば、移植片のドナーが非ヒト動物例えばブタ例えばミニブタであり、移植片のレシピエントがヒト)に対する寛容を与えることが出来る。
MHC遺伝子を供給する個体は、特にMHC遺伝子に関して、移植片を与える個体と出来るだけ遺伝的に類似しているべきである。例えば、移植片ドナーがヒトであり且つ移植片レシピエントがヒトである同種移植片においては、ドナーからのMHC遺伝子を用いるのが好ましい。この具体例において、MHCプローブ例えば第三者からのプローブ又は合成の共通プローブを用いて、MHC遺伝子又は移植片ドナー個体の遺伝子をコードするDNAを単離することが出来る。これは、寛容を与えるために使用する遺伝子及び移植片上にMHC抗原を発現する遺伝子間に最も近いマッチを与える。
異種移植片において、移植片のドナー個体と寛容を与えるDNAを与える個体とは同一個体であるべきであり又は出来るだけ密接に関連しているべきである。例えば、移植片組織を高度に同系交配のドナー集団から得ることは好ましく、MHC遺伝子についてホモ接合であると一層好ましい。これは、多くの移植片レシピエントに対して単一クローン化MHC配列を使用することを可能にする。
骨髄細胞のトランスフォーメーション:MHC遺伝子を、これらの遺伝子の発現を寛容を与えるのに十分なレベル及び期間で与える任意の方法によって骨髄細胞中に導入することが出来る。これらの方法は、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、粒子銃及びウイルスベクター例えばレトロウイルスによる形質導入を含む。
組換えレトロウイルスは、好適な送達システムである。それらは、過去数年にわたって、遺伝子トランスファー用のビヒクルとして大規模に開発された。例えば、Eglitis等、1988,Adv.Exp.Med.Biol.241:19を参照されたい。最も簡単なレトロウイルスベクター構築物は、ウイルスの構造遺伝子を単一遺伝子で置換したものであり、次いで、該単一遺伝子をウイルスのロングターミナルリピート(LTR)中に含まれる制御要素の制御下で転写する。Mologeyマウス白血病ウイルス(MoMuLV)を含む種々の単一遺伝子ベクター主鎖が用いられてきた。選択可能マーカー及び第2の関心ある遺伝子等の種々の遺伝子の複数の挿入が可能なレトロウイルスをこの型の主鎖から導くことが出来る。Gilboa,1988,Adv.Exp.Med.Biol.241:29参照。
蛋白質生成物の発現のためのベクターの構築物の要素例えばプロモーターの選択は、当業者には公知である。レトロウイルスベクターからの最も効率的な発現は、「強い」プロモーター例えばSV40プロモーター又はLTRプロモーターを用いて転写を制御した場合に見られる。Chang等、1989、Int.J.Cell Cloning 7:264に総説あり。これらのプロモーターは、構成的であり、一般に、組織特異的発現を可能にしない。しかしながら、通常すべての組織で発現されるクラスI遺伝子の場合には、遍在的発現は機能的目的について許容される。ハウスキーピング遺伝子プロモーター例えばチミジンキナーゼプロモーターは、クラスII遺伝子の発現用に適したプロモーターである。
効率的パッケージングの細胞系統の使用は、生成した組換えビリオンの感染効率及び感染スペクトルの両者を増大させることが出来る。Miller,1990,Human Gene Therapy 1:5を参照されたい。マウスレトロウイルスベクターは、遺伝子を効率よくマウスの胚細胞(例えば、Wagner等、1985、EMBO J.4:663;Griedley等、1987 Trends Genet.3:162を参照されたい)及び造血幹細胞(例えば、Lemischka等、1986,Cell 45:917-927;Dick等、1986,Trends in Genetics 2:165-170)にトランスファーするために用いられてきた。
以前に可能であったよりずっと高いウイルス力価の達成を可能にする最近のレトロウイルス技術における改良は、いわゆる「ピンポン」法と呼ばれる環境栄養性及び両栄養性パッケージング細胞系統間での連続的トランスファーによる増幅を含む。Kozak等、1990J.Virol.64:3500-3508;Bodine等、1989,Prog.Clin.Biol.Res.319:589-600を参照されたい。
形質導入の効率は、レシピエントへの導入前の感染骨髄の予備選択(選択可能遺伝子を高レベルで発現する骨髄細胞を豊富にすること)によって増大させることが出来る。Bick等、1985,Cell 42:71-79;Keller等、1985,Nature 318:149-154を参照されたい。更に、ウイルス力価を増大させる最近の技術は、ウイルス生成細胞系統との直接的インキュベーションではなく、ウイルス含有上清の利用により効率的形質導入を達成することを可能にする。例えば、Bodine等、1989,Prog.Clin.Biol.Res.319:589-600を参照されたい。細胞性DNAの複製がレトロウイルスベクターの宿主ゲノム中へのインテグレーションに必要であるので、例えばイン・ビトロで成長因子で処理することにより標的細胞の分裂を誘導することによって標的幹細胞が活発に細胞周期を巡る頻度を増すことは望ましく(例えば、Lemischka等、1986,Cell 45:917-927を参照されたい)、IL−3とIL−6の組合せは、明らかに最も効力があり(例えば、Bodine等、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.86:8897-8901を参照されたい)、或は、骨髄採取前にレシピエントを5−フルオロウラシルにさらすこと(例えば、Mori等、1984,Jpn.J.Clin.Oncol.14前出1:457-463参照)は望ましい。例えば、Lemischka等、1986,Cell 45:917-927;Chang等、1989,Int.J.Cell Cloning 7:264-280を参照されたい。
N2A又は他のMoloneyに基づくベクターは、ヒト骨髄細胞を形質導入するための好適なレトロウイルスベクターである。
トランスフォームした骨髄細胞導入用の調製用養生法骨髄細胞を調製するために、レシピエントは、除去しないと植付けに抵抗するかも知れない免疫応答の除去を受けなければならない。
改変した自己の造血幹細胞の植付けを可能にするのに必要な調製用養生法は、同種の骨髄移植に必要とされるものよりずっと低毒性であってよく、好ましくは、最近マウスモデルにおいて示されたように、モノクローナル抗体を用いる成熟T細胞の涸渇のみを必要とする。Sharabi等、1989,J.Exp.Med.169:493-502参照。一時的発現が寛容を誘導するのに十分であり、混合異種骨髄移植物モデルにおいて心臓移植物について見られたように、たとえ造血細胞における発現が失われても移植物により維持され得ることはあり得る。Ildstad等、1985,Transplant.Proc.17:535-538。
移植片及び補助減縮:上記の補助減縮方法を、上記のようにして移植片の移植と共に施与することが出来る。
レトロウイルス媒介の遺伝子トランスファーによるマウス骨髄造血細胞におけるブタクラスII遺伝子の持続的発現
概観:ミニブタモデルにおける移植寛容の誘導への遺伝子トランスファーアプローチの効率を、薬剤耐性マーカー(ネオマイシン)及びブタクラスIIDRBcDNAを発現するように処理した二重コピーレトロウイルスベクターを用いることによって示した。これらのベクターを含む感染性粒子を、環境栄養性及び両栄養性パッケージング細胞系統の両者を用いて、>1×106のG418耐性コロニー形成単位/mlの力価にて生成した。DRAトランスフェクトし続いてウイルス含有上清で形質導入したマウス繊維芽細胞のフローサイトメトリー分析は、トランスファーされた配列がDR表面発現を生じるのに十分であることを示した。マウス骨髄の高力価生成系統との同時培養は、G418選択下でのコロニー形成頻度で測定して、顆粒細胞/マクロファージコロニー形成単位(CFU−GM)40%の形質導入へと導く。長期骨髄培養にて5週間近く後に、ウイルスにさらした骨髄は依然G418耐性CFU−GMを25%の頻度で含有した。更に、事実上すべての形質導入し且つ選択したコロニーは、DRB特異的な転写物を含んだ。これらの結果は、非常に原始的な骨髄造血前駆細胞の有意の割合がDRB組換えベクターで形質導入され得ること及びベクター配列がこれらの細胞の分化した子孫において発現されることを示している。これらの実験を下記に詳細に記載する。
ヒトにおけるSLA−DRB組換えレトロウイルスの構築及びスクリーニング、Lee等、1982,Nature 299:750-752,Das等、1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:3543-3547 ブタDRA遺伝子の配列は最小限に多型である。それ故、同種のDRBcDNAの骨髄細胞中への形質導入は、同種のクラスIIDR分子の発現を、この抗原を発現することを託された細胞に与えるのに十分であるべきである。
レトロウイルス構築物の詳細を図1に与える。2つの型のレトロウイルス構築物GS4.4及びGS4.5を調製した。図1の図解は、GS4.5レトロウイルス構築物を描写している。図1の矢印は、転写の向きを示している。GS4.5において、DRBcDNA転写の向きはウイルスの転写と同じである。GS4.4において(示してない)、TKプロモーター及びDRBcDNAを、ウイルス転写に関する転写の逆向きでN2Aの3’LTR中に挿入し、シミアンウイルス40の3’RNAプロセッシングシグナルを加えた。pBStとは、Bluescriptベクター配列(Stratagene)のことをいう。チミジンキナーゼ(TK)プロモーターを、単純ヘルペスウイルスTK遺伝子からの215塩基対(bp)のPvuII−PstI断片内に含んだ。McKnight,1980 Nucleic Acids Res.8:5949-5964。シミアンウイルス40の3’RNAプロセッシングシグナルをpBLCAT3プラスミッドからの142bpのHpaI−SmaI断片内に含んだ。Luckow等、(1987)Nucleic Acids Res.15:5490-5497(図1参照)。プロモーターの結合部、クラスIIcDNA及びベクター配列の配列分析は、これらの構築物が適当に結合されたことを確実にした。
これらのレトロウイルス構築物を、両栄養性パッケージング細胞系統PA317中にトランスフェクトし、トランスフェクタントをG418含有培地にて選択した。全部で24及び36の、それぞれGS4.4及びGS4.5組換えプラスミッドでトランスフェクトしたクローンを、培養上清のPEG沈殿及びウイルスRNAのスロットブロット分析により試験した。これらの内のそれぞれ8及び12クローンは、GS4.4から得たクローンのDRBシグナルの方が一貫して弱かったが、DRBについて陽性であることが見出された。ゲノム及びスプライスされたGS4.5細胞からの転写物のPEG沈殿した粒子のドットブロット分析による分析は、GS4.5によりトランスフェクトされた種々のクローン中のウイルス転写物中の異質性を示した。一実験において、2つのクローンはDRB+/Neo+ウイルスRNAを含み、2つはDRB+/Neo-RNAを含み、2つはDRB-/Neo+RNAを含み、そして1つはクラスII又はNeoシグナルを示さなかった。DRB陽性クローンの上清のG418耐性(G418r)力価測定は、GS4.5トランスフェクトしたクローンにより生成した平均力価(103〜104CFU/ml)がGS4.4トランスフェクトしたクローンのそれ(102〜103CFU/ml)より有意に高いことを確実にした。それ故、更なる形質導入実験をGS4.5C4と命名した最良のクローン(3×104CFU/mlの初期G418r力価を生じた)を用いて行なった。
プラスミッドの調製、クローニング手順、DNA配列決定、RNA調製、ノーザンブロット及びRNAスロットブロットは、標準的方法Sambrook等、1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual第二版(Cold Spring Harbor在、Cold Spring Harbor Lab.)により行なった。ブロットの最後の洗浄を、0.1×SSPE(1×SSPE=0.18M NaCl/10mMリン酸ナトリウム、pH7.4/1mM EDTA)にて、60℃で30分間行なった。
パケージング細胞系統PA317(Miller等、1986,Mol.Cell.Biol.6:2895-2902)、GP+E−86(Markowitz等、1988,J.Virol 62:1120-124)、psiCRIP(Danos等、1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6460-6464)及びこれらの派生物を37℃で、0.1mM非必須アミノ酸(Whittaker Bioproducts)、抗生物質ペニシリン(5単位/ml)及びストレプトマイシン(5μg/ml)を補った10%(v/v)ウシ胎児血清を加えたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;GIBCO)にて維持した。
C4クローンのウイルス力価の改良
最近のデータは、高レトロウイルス力価を含む上清が骨髄細胞を形質導入するための最良の候補であることを示した(Bodine等、1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:3738-3742)ので、C4生成クローンの力価を、「ピンポン」増幅(Bestwick等、1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5404-5408)によって増大させた。ほぼ集密なC4培養の上清を用いてGP+E−86環境栄養性パッケージング細胞を形質導入してG418選択を適用した。48クローンを単離し、ウイルス粒子の生成についてPEG沈殿によりスクリーニングした。これらのクローンの18からの上清は、ウイルスRNAのドットブロット分析によりDRB陽性であり、0.5〜3.5×104CFU/mlのG418r力価を有した。1つの陽性クローンを、次いで、両栄養性ヒグロマイシン耐性パッケージング細胞系統psiCRIPを用いるピンポン技術により増幅した。48のヒグロマイシン耐性クローンからの上清をDRB陽性ウイルスRNAの存在についてPEG沈殿により試験し、G418r力価を測定した。すべてのクローンは、DRBプローブを用いるドットブロット分析により陽性であり、生成した力価は、1×105〜1×107CFU/mlであった。最大力価を生じた両栄養性クローンGS4.5A4を、ヘルパーウイルスの存在についてS+Lアッセイにより試験した。複製能力のあるヘルパーウイルスは検出されなかった。
ウイルス力価の増幅を、ピンポン技術により達成した。psiCRIPパッケージング細胞は、ある型のベクターを用いるとPA317よりヘルパーウイルスを生成しない傾向があるという証拠(Miller,1990,Hum.GeneTherapy 1:5-14)があるので、DRB組換えウイルスをpsiCRIP/GP−E−86プロデューサーの組合せを用いて調製した。検出可能なヘルパーウイルスを伴わない>1×107CFU/mlの力価が得られ、この戦略がイン・ビボ実験に適した安全なウイルス粒子を生成することを確実にした。それぞれ異なるパッケージング細胞系統から導いたGS4.5生成クローンC4、A9及びA4のノーザンブロット分析は、保存されたハイブリダイゼーションパターンを示した。完全長ウイルスゲノム、スプライスされたNeo転写物及びDRB転写単位に対応するRNA種が、更なるRNA種を伴って見られた。これらの実験において認められた高分子量サイズの種は、TKプロモーターから始まり他方のロングターミナルリピート(LTR)内で終るリードスルー転写物を構成し得る。不規則なDRB転写物を与えたトランスフェクションにより得られたビリオンプロデューサークローンの多くと対照的に、形質導入により得られたものは、安定なDRBハイブリダイゼーションパターンを示し、増幅手順中に組換え事象が起きなかったことをを示唆した。
レトロウイルス力価を以下のようにして測定した。複製欠損レトロウイルス粒子を、標準的リン酸カルシウム沈殿法(Wigler等、1978,Cell 14:725-733)を用いて、初期に組換え構築物でトランスフェクトしたパッケージング細胞系統から生成した。レトロウイルス生成を、薬物耐性力価(G418耐性コロニー形成単位/ml、CFU/ml)により、記載されたようにして評価した。Bodine等、1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:3738-3742。psiCRIP系統を除いて、G418(GIBCO)選択を、活性成分中(500μg/ml)にて10〜12日間行なった。ヒグロマイシンB選択を、活性薬物を含む培地(50μg/ml)にて10日間、psiCRIP誘導したパッケージングクローンに適用した。複製能力のあるヘルパーウイルス力価をPG4ネコ細胞においてS+-法によりアッセイした。Bassen等、1971,Nature 229:564-566。
ウイルス粒子のPEG沈殿を下記のように行なった。1mlの培養上清中に含まれるビリオンを、0.5mlの30%(w/v)ポリエチレングリコール(PEG)を用いて、30分間4℃で沈殿させた。遠心分離の後に、ペレットを、RNアーゼ阻害剤(バナジルリボヌクレアーゼ複合体、BRL)の混合物で処理し、フェノール/クロロホルム抽出し、そしてエタノール沈殿した。次いで、ペレットを、15.7%(v/v)ホルムアルデヒド中に再懸濁し、連続希釈物をニトロセルロース膜上に点状に付着させた。
パッケージング細胞クローンにおけるDRB転写の分析
種々のプロデューサークローン内の導入されたDRBcDNAの正確な転写について試験するために、これらのクローンから単離したRNAを含むノーザンブロットをDRB及びNeoプローブとハイブリダイズさせた。図2は、プロウイルスゲノムの構造及びウイルスのLTR又はTKプロモーターの何れかから開始した転写物の予想されるサイズを描いている。PA317(クローンC4)、GP+E−86(クローンA9)及びpsiCRIP(クローンA4)細胞から得られた3つのGS4.5含有クローンの各々は、DRB陽性転写物を示した。報告されたように(Hantzopoulos等、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3519-3523)、スプライスされてないゲノムRNA(バンドa)及びスプライスされたNeo転写物(バンドb)が認められた。更に、DRBプローブとユニークにハイブリダイズし得る、DRBcDNA転写単位について予想されるサイズ(1700塩基、バンドc)に対応する転写物が検出された。
形質導入した繊維芽細胞上のSLA−DR抗原の表面発現
イン・ビトロアッセイを開発して、マウス繊維芽細胞上のSLA−DR抗原の表面発現を試験した。図3に示したフローサイトメトリー(FCM)プロフィルは、3×104のG418r力価(クローンC4)が、形質導入されたDRAトランスフェクタントの細胞表面でのDR抗原の発現を促進するのに十分であったことを示している。図3において、実線はDR細胞表面発現(抗DR抗体結合)(GS4.5C4(B)及びGS4.5A4(C)のそれぞれでの形質導入の3日後の細胞の細胞のバルク集団の22%及び75%)を示し、破線は抗マウスクラスI抗体結合を示し(陽性対照)、点線は抗ブタCD8抗体結合を示す(陰性対照)。形質導入した細胞のバルク集団の22%はDR陽性であり、サブクローンはクラスII発現を5か月より長く維持した。力価の増大(クローンA4)は形質導入された細胞数の増加(形質導入した集団の75%がDR陽性であった)及びDRシグナルの輝度と相関した。
クラスII形質導入アッセイを、図4に図解したように行なった。NIH3T3細胞を、プラスミッド発現ベクター(Okayama等、1982,Mol.Cell.Biol.2:161-170)に挿入したSLA−DRAdcDNAでトランスフェクトした。高レベルのDRAmRNAを発現する約3×104細胞の安定DRAトランスフェクタント(クローン11/12.2F)を、次いで、1mlのDRB含有レトロウイルス上清で一晩形質導入した。細胞を、続いて、10%ウシ胎児血清及び抗生物質を補った新鮮なDMEM中で更に2日間培養し、DR抗原の細胞表面発現をFCM分析により試験した。
ここに記載したクラスII形質導入アッセイは、レトロウイルス構築物の発現と機能力価の両者を試験する迅速で簡単な方法を提供する。DRAでトランスフェクトした細胞を用いることにより、2つの別々のベクターによる形質導入の後の長々しい二重の選択(Yang等、1987,Mol.Cell Biol.1:3923-3928;Korman等、1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:2150-2154)は不要となる。DRヘテロ二量体の細胞表面発現をFCM分析により形質導入の3日後に示し、トランスファーされた配列が有意のレベルのDRβ鎖を生成するのに十分であるという直接的証拠を与えた。一層重要なことには、この試験は、独立に制御される薬物耐性マーカーの発現ではなく、関心ある遺伝子の発現に基づいて「機能」力価の測定を与える。
SLA−DRBプローブは、DRβ鎖の完全なコード配列を含むEcoRIcDNA断片(Gustafsson等、1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9798-9802)であった。ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(Neo)プローブは、N2AレトロウイルスプラスミッドのBclI−XhoI断片であった。Hantzopoulos等、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3519-3523。
マウス骨髄前駆細胞に形質導入されたブタDRBcDNAの発現
ミエロイドクローン原性前駆細胞が形質導入される効率を、GS4.5由来のビリオンに骨髄細胞をさらした後に選択量のG418を用いて及び用いないでCFU−GMについてアッセイすることにより測定した。この薬物の存在及び不在において、2つの実験について形成されたコロニー数の比較は、ミエロイド前駆細胞の初期集団の約40%が形質導入されることを示した。G418rCFU−GMの頻度を、形質導入した骨髄試料を33日間にわたって長期培養条件下で発達させた後に再度測定した。培養の33日後に存在した前駆細胞の25%は、依然として、G418選択下でコロニーを生じた。CFU−GMから生じた細胞のコロニーを、DRB特異的転写物の存在について、RNAをcDNAに変換し次いでここ及びShafer等、1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9670に記載されたようにPCR増幅を行なうことによって試験した。360bpのDRB特異的生成物が、新たに形質導入された骨髄からの6つのG418選択したコロニーの5つにおいて検出され、33日間の培養の後に存在した形質導入された前駆細胞から得られた6つのコロニーはすべて陽性であった。これらの試料の幾つかにおいて認められた100bpの更なるバンドは、恐らく、非特異的プライミング事象のストイキャスティック(stoichastic)な性質を反映する。DRB特異的な転写物は又、薬物耐性コロニーのバルク集団及びプロデューサー細胞においても検出されたが、対照例えば未形質導入コロニーのバルク集団、キャリアーRNAを供給するために用いられた繊維芽細胞及び上記のように処理したが逆転写酵素を用いなかった形質導入したコロニーのバルク集団においては検出されなかった。これらの後者のデータは、PCRシグナルがcDNAの合成に依存したことを示し、ウイルスメッセージではなくプロウイルスが増幅された断片の原因である可能性を排除している。
ウイルスデザインの改変、ウイルス力価の増加、前駆細胞を刺激する成長因子の利用、及び形質導入前の幹細胞の選択を含む最近の改良は、造血区画における形質導入された遺伝子の長期発現を改善することを示した。Bodine等、1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:3738-3742;Bodine等、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8897-8901;Wilson等、1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:439-443;Kang等、1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9803-9807;Bender等、1989, Mol.Cell.Biol.9:1426-1434。これらの実験は、造血細胞中にトランスファーされた主要組織適合性複合クラスII遺伝子の発現の達成におけるレトロウイルスによる遺伝子トランスファー技術の利用可能性を示す。発生的に原始的な造血細胞が形質導入される効率を測定するために、33日間の長期培養に維持した感染骨髄細胞を発達させた後に、G418rCFU−GMの頻度を評価した。外来のDRBcDNAの発現も又、感染直後又は延長した培養期間の後に存在する形質導入されたCFU−GMから得た細胞においてモニターした。事実上すべての個別に試験したコロニーはDRB特異的転写物について陽性であり、DRB組換えベクターがマウス造血細胞における発現に適していることを示唆している。
骨髄細胞を、6〜12週齢の雌のC57BL/10マウスの大腿骨から得て、記載されたようにして調製した。Ildstad等、1984,Nature 307:168-170。顆粒細胞/マクロファージコロニー形成単位(CFU−GM)についてのメチルセルロースコロニーアッセイ(Eaves 等、1978,Blood 52:1196-1210)を、5%(v/v)マウスインターロイキン3培養上清(Collaborative Research)を用いて、記載されたようにして行なった。長期デクスター型骨髄培養を、60mm培養皿にて、2×107の有核細胞を用いて開始した。Eaves等、1987,CRC Crit.Rev.Oncol.Hematol.7:125-138。
骨髄細胞を、本質的にBodine等、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8897-8901に記載されたようにして、形質導入した。簡単に言えば、骨髄細胞を、2日間5−フルオロウラシル(150mg/kg)で処理した6〜12週齢の雌のC57BL/10ドナーから採取した。予備刺激を、1×106細胞/mlを、2日間、7.5%インターロイキン3培養補充物及び組換えヒトインターロイキン6(200単位/ml;メリーランド、Bethesda在、National Institute of HealthのJ.Juleより寄贈)を加えた長期デクスター型骨髄培養培地中でインキュベートすることにより行なった。骨髄細胞を、48時間、ほぼ集密なウイルスプロデューサー、ポリブレン(8mg/ml)及び上記のサイトカインを含む10cmプレート当り5×106細胞を加えることにより形質導入した。
CFU−誘導したコロニーにおけるDRB特異的転写物の検出を下記のようにして行なった。個々のCFUコロニー及び全プレート(バルク)上に存在するコロニーに対応する細胞を、最初に、メチルセルロース培養から、リン酸緩衝塩溶液中での希釈及び遠心分離によって抽出した。次いで、これらの細胞を、1×106のNIH3T3細胞(キャリアーRNA供給用)と合わせて、全RNAを、グアニジンイソチオシアネート/CsCl法を用いて調製した。第1鎖cDNAを、Invitrogen Red Module キットを用いて、20μgの全RNAから調製した。次いで、cDNAを、SLA DRB特異的オリゴヌクレオチド04(5'-CCACAGGCCTGATCCCTAATGG)(SEQ ID NO:1)及び17(5'-AGCATAGCAGGAGCCTTCTCATG)(SEQ ID NO:2)の存在下で、Cetus GeneAmpキットを、勧められるように(Perkin-Elmer/Cetus)用いる50サイクルのPCR増幅にかけた。反応生成物を、3%NuSieveアガロースゲル(FMC)上での電気泳動後にエチジウムブロミドで染色することにより可視化した。
FCM分析を、FAC-ScanIIフルオレセンス活性化セルソーター(Becton Dickenson)を用いて、抗DRモノクローナル抗体40D(Pierres等、1980,Eur.J.Immunol.10:950-957)、抗H−2dアロ抗血清又は抗ブタCD8モノクローナル抗体76−2−11(Pescovitz等、1984,J.Exp.Med.160:1495-1505)で染色し、その後、フルオレセインイソチオシアネート標識したヤギ抗マウス抗体(Boehringer Manheim)で処理した細胞について行なった。
同種クラスIIcDNAの組換えレトロウイルスで形質導入したブタ骨髄細胞中での発現
MHC遺伝子(DRB)を、組換えレトロウイルスベクター(GS4.5)及びイン・ビボ適用するためにデザインされた形質導入プロトコールを用いて、ブタからのクローン原性前駆細胞中にトランスファーした。選択可能な薬物耐性遺伝子及びこのベクターによりトランスファーされた同種クラスIIcDNAの両者を、これらの形質導入された前駆細胞の子孫中で発現させた。Neo遺伝子の発現を、G418選択下でのコロニー形成により機能的にモニターし、他方、クラスII転写物の存在をPCR分析により検出した。この後者の方法を用いて、内在性及びウイルス由来のDRB遺伝子の両者の、形質導入して選択したコロニーにおける転写発現を示した。
第一次のブタ繊維芽細胞を、高力価のウイルス上清と共に培養し、次いで、DRB及びNeoに特異的なプローブを用いてノーザンブロットにより分析した。DRBプローブとユニークにハイブリダイズし且つTKプロモーターから始まりLTR3’RNAプロセッシング部位にて終了するDRBcDNA転写単位について予想される位置(1700塩基)に移動する特異的転写物が認められた。
GS4.5含有ビリオンがブタ骨髄造血前駆細胞を形質導入することが出来るか否かを測定するために、ブタCFU−GMに適合させたコロニーアッセイを使用した。形質導入を、SLACハプロタイプのドナーからの骨髄を高力価ウイルス上清中でインキュベートすることにより行なった。全部で5つの独立した実験について、G418の存在及び不在において形成されたコロニー数の比較は、CFU−GMの5〜14%が形質導入されたことを示した。
形質導入したCFU−GMから生ずる細胞のコロニーを、DRB特異的転写物の存在について、RNAをcDNAに変換し、次いでPCR増幅を行なうことによって試験した。内在性DRBc遺伝子に存在しない多型のSau3AI制限部位を利用して、DRBd特異的転写物の存在を明確に示した。PCR生成物のゲル電気泳動は、ベクター由来のDRBd転写物を示す183/177ダブレットが、形質導入して選択したCFU−GMの子孫のプールからだけでなく、試験した6つの別個のコロニーの少なくとも4つからの試料においても増幅されたことを示した。内在性DRBc転写物を示す360bpのPCR断片も又、SLACドナーから単離されたPBLからだけでなく、プールしたコロニー試料及び幾つかの個々のコロニー試料の両者からも予想されるので増幅した。
レトロウイルスGS4.5の構築及び高力価のウイルス上清の作成は、以下に記載したようにした。CFU由来のコロニー中のDRB特異的転写物のcDNAのPCRによる検出は、上記及び下記のようにした。SLAcドナーからの骨髄をGS4.5含有ビリオンにさらし、G418選択したコロニーを、DRBc(内在性)及びDRBd(ウイルス由来)特異的転写物の存在について、cDNAのPCRとそれに続くSau3AIでの消化及びアガロースゲル電気泳動により試験した。対照は次の通りであった:逆転写酵素の存在又は不在において合成されたテンプレート;GS4.5含有ビリオンを産生する細胞、SLAc又はSLAdドナーから単離されたPBL、及びキャリアーRNAとして用いられる形質導入してないプロデューサー細胞に由来するテンプレート。
骨髄の形質導入を下記のように行なった。ブタ骨髄を、以前に記載されたようにして採取し(Pennington等、1988,Transplantation 45:21-26)、形質導入を、骨髄細胞を高力価ウイルス上清中で、3〜3のm.o.i.にて、8μg/mlのポリブレンの存在下で、37℃で5時間インキュベートするにより行なった。ミエロイド前駆細胞を、PHA刺激したブタリンパ球調整培地を成長因子源として用いて、メチルセルロース培養におけるコロニー形成によりアッセイした。選択培地は、1.2mg/mlの活性G418を含有した。
形質導入した骨髄を、致死照射したミニブタに投与した。5週目に、末梢血液リンパ球を、サザーン、ノーザン及び細胞表面FACS分析により分析した。これらのすべての試験により、これらの細胞中の形質導入された同種クラスII遺伝子の存在及びこの遺伝子の生成物の発現の証拠があった。特に、ノーザン分析は、転写されたcDNAに特徴的なバンドを示し、アロ抗血清及びDRに対するモノクローナル抗体の組合せを用いるFACS分析は、末梢リンパ球表面におけるDRβの形質導入された対立遺伝子の存在を示した。
同種寛容
B10.MBR−B10.AKM株組合せの開発
MHCについて真にコンジェニックである株を維持することを意図して、各コンジェニック系統の共通バックグラウンドパートナー株への戻し交配が、15年以上前に始められた。戻し交配動物を交雑させ、適当な子孫を、各コンジェニック系統を再樹立するために血清学的分類により選択した。こうして、C57BL/10は、一標準バックグラウンド株として用いられ、B10バックグラウンド上のすべての他のコンジェニック系統を、6〜10世代で各々一回このC57BL/10系統に戻し交配した。
各コンジェニック系統のその血統の明らかな標準系統への戻し交配において、勿論、内部MHC組換え事象が起きる機会はある。交雑(F2)世代の分類は血清学的にかかる組換え事象を示し、組換えが遺伝研究に潜在的に興味のある新たなハプロタイプを与える場合は、それを外部交配させ、次いで、交雑させてホモ接合の組換えH−2ハプロタイプを生成する。このコロニーで始まるかかる組換え体の最も大切なものの一つは、B10.MBR系統であり(Sachs等、1979,J.Immunol.123:1965-1969)、それは、B10.AKMのC57BL/10への戻し交配中の組換え事象から得られた。この株はIkからIbを分離した最初のものであったので、R−2免疫遺伝学の研究において広く用いられた。更に、親のB10.AKM株と組合せて、MBR株は、単離されたK遺伝子をこれらの2株間で異なる唯一のMHCとして試験する可能性を提供する。それ故、図5に示したように、Kb遺伝子のB10.AKM骨髄幹細胞中への導入は、理論的に、B10.MBRのすべての細胞表面MHC抗原の発現へと導く。骨髄由来細胞集団における発現は、形質導入した遺伝子の生成物に対する移植寛容を生じ、この寛容は、B10.MBR株からの組織移植片により試験することが出来る。
形質導入した骨髄を用いる骨髄除去マウスの再構築
80匹の予期されるドナーB10.AKMマウスを−7日目に150mg/kgの5FUで処理した。これらのマウスから−5日目に骨髄を採取し、抗CD4及び抗CD8モノクローナル抗体(mAb)プラス補体で処理して成熟T細胞を除去し、psiCripパッケージング細胞系統からのN2−B19−H2bウイルス含有上清(H2)と共に5日間培養した。対照として、骨髄の1/2をN2−B19−H2bを含まない対照パッケージング細胞からの上清(A2)と共にインキュベートした。0日目に、45匹のB10.AKMレシピエントに10Gyの全身照射(TBI)を行ない、続いて、種々の濃度の培養骨髄細胞(A2又はH2)を投与した。
b発現
13日目に最小投与量の培養骨髄を受けた数匹の動物を殺して個々の脾臓コロニーを採取し、N2−B19−H2bDNAの存在についてPCRにより分析した。更に、脾臓細胞懸濁液を調製し、Kbの細胞表面発現について、蛍光活性化セルソーター(FACS)上のフローミクロフルオロメトリーにより分析した。FACS分析は、H2処理した骨髄を受けたすべての動物が対照を上回る幾らかのレベルのKb発現を示す(非反応性抗体で染色)ことを示した。これらの結果を図6に示す(これは、形質導入骨髄のレシピエントからの脾臓細胞のFACSプロフィルである。A=抗Kb抗体;B=対照抗体)。形質導入してない骨髄のレシピエントからの脾臓細胞も又、陰性であった。更に、PCR分析は、試験した各コロニーが形質導入されたDNAを含むことを示した。動物を、その後、末梢血液リンパ球(PBL)についてFACS及びPCR分析した。28日目及び40日目に、PCR分析は陽性であった。しかしながら、細胞表面発現についてのFACS分析は変化し易く、殆どのH2動物からのPBLは、抗Kb抗体で染色したA2動物からのPBLと比較して又は非反応性HOPC抗体で染色したH2動物からのPBLと比較して、抗Kbでの染色に対して全ピークの僅かなシフト示した。
同種移植片
40日目に、B10.MBR(Kb特異的)及びB10.BR(対照。異種の第三者のクラス I)ドナーからの皮膚をすべての動物に移植した。移植片の生存を毎日、拒絶が完了するまで、blinded観察者によって記録した(即ち、どの移植片がどのドナー株からのものであるかを知らないで読みを行なった)。生存時間を図7に示し、B10.MBR皮膚移植片の生存の顕著で特異的な延長をKb形質導入したBMCのレシピエント(図7B)について示すが、対照骨髄のレシピエント(図7A)については示さない。長期の完全なB10.MBR皮膚移植片を有する動物の1匹を114日目に殺して、そのリンパ組織の細胞懸濁液をFACSによって試験し、B10.MBR皮膚移植片が拒絶された動物からの同じ細胞懸濁液と比較した。抗KbmABを用いた胸腺細胞の染色において著しい違いが見られた。細胞懸濁液を調製して、抗KbmAB28−8−6又は対照抗体HOPC1の何れかで染色した。寛容な動物からの胸腺細胞の亜集団は、HOPC1に比べて増大した28−8−6での染色への顕著なシフトを示したが、他方、移植片を失った動物からの胸腺細胞の染色パターンには本質的に何の変化もなかった。図8は、皮膚移植片拒絶者(図8A、B)及び皮膚移植受入者(図8C、D)からの胸腺細胞についてのFACS分析を示している。対照HOPC1抗体(図8A、C)及び特異的抗Kb抗体(図8B、D)を用いた染色。骨髄細胞についての染色パターンの類似の比較は、寛容マウスの骨髄中の細胞集団における低レベルのKb発現の存在を示したが、皮膚移植片を拒絶したマウスでは示さなかった。これらの結果は、多能性幹細胞若しくは初期前駆細胞集団は寛容マウスにおいてはKbを発現するが、拒絶者マウスにおいては発現しないこと並びに、このBMC幹細胞は、胸腺において、Kb反応性TCRを伴う胸腺細胞の発生の不活性化に重要な細胞上にKb抗原の連続的源を提供するということを示している。Kb発現が寛容マウスの脾臓細胞において検出されなかったこと及び一般に脾臓細胞発現は皮膚移植片の寛容と相関しなかったということに注目するのは興味深い。脾臓は胸腺で成熟するT細胞を含んでいるので、これらの結果は、胸腺細胞が成熟するにつれてKbの発現を失うのか或は、Kbを有するこの動物の胸腺細胞がマクロファージ等の非リンパ様細胞系統の細胞であることに何れかを示唆している。
長期間の発現
上述のように、B10.AKM及びB10.MBRコンジェニックマウス系統は、MHCクラスI領域を除いて同一である。B10.MBR系統からのクラスI遺伝子を含む組換えレトロウイルス(H−2Kb)は、B19パーボウイルスプロモーター(B19−H2Kb)に結合し、ネオマイシン耐性(neor)遺伝子を、B10.AKM(H−2Kb)骨髄細胞に導入した。対照として、neor遺伝子のみを含む組換えレトロウイルスをB10.AKM骨髄細胞に導入した。形質導入した骨髄を、抗CD8モノクローナル抗体で前処理した致死的に照射したAKMレシピエントに注入した。BMTの12週後に、量的PCRを用いて、すべてのレシピエント動物において末梢血液細胞の5〜30%にB19−H−2Kbプロウイルス配列が存在するということを示した。逆転写酵素PCRを用いて、レシピエント動物のサブセットの骨髄及び脾臓から単離したRNA中にB19−H−2KbmRNAを示した。
bレトロウイルスベクターの構築
レトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイルスに基づくベクターN2(Armentano等、J.Virol.61:1647-1650)を用いた。このウイルス内のコード領域をその構築の間に削除して選択可能マーカー遺伝子、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Neo)(ウイルス性LTRプロモーターから転写されてG418に対する薬剤耐性を与える)で置き換えた。この伝統的N2ウイルスを、次いで、パーボウイルス由来のプロモーターB19(Liu等、1991,J. Virol.(印刷中))のNeoの下流への挿入(クラスI抗原H−2Kbをコードして新たな組換えウイルスN2−B19−H2bを形成する1.6kbのcDNAが続く)により更に改変した。図9は、N2−B19−H26レトロウイルスベクター(P=PstI;X=XhoI;H=HinDIII;E=EcoRI;B=BamHI)を描写している。この後者のcDNAは、別の目的のためのH−2bcDNAライブラリーの構築中に、Waneck等により導かれた(Waneck等、1987,J.Exp.Med.165:1358-1370)。
両栄養性(psi−Crip)(Danos等、1988,Proc.Natl.Acad.Sci.85:6460-6464)及び環境栄養性(psi−2)(Sambrook等、1989,Molecularcloniong:A laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,viral production)のパッケージング細胞系統を用いて、ウイルス性生産者細胞系統が生成された。これらの細胞系統は、特に、組換え不全ウイルスを生成するためのウイルス性構造蛋白質を生成するためにデザインされた。ウイルス生成は、psi−CripをN2−B19−H2bでトランスフェクトすることにより達成した。両栄養性及び環境栄養性の両生産者細胞系統を、次いで、同時培養して多重集積事象及び高発現を与えた[即ち、「ピンポン」技術。Bestwick等、1988,Proc.Natl.Acad.Sci.85:5404-5408を参照されたい]。この技術において、同時培養は、両栄養性及び環境栄養性ウイルスは異なるレセプターを認識するので、内因性分泌蛋白質によるウイルス抗原レセプター妨害を克服する。次いで、3T3細胞において107cfu/mlを超えるG418耐性の力価を生成する環境栄養性psi−2ウイルス性生産者クローンを選択した。
組換えウイルス由来のKbが発現されることを確実にするために、形質導入した3T3細胞を、この抗原に特異的なモノクローナル抗体で染色してフローミクロフルオロメトリーにより分析した。これらの実験は、ウイルス由来のKbの高レベルの発現を明確に示した。
動物及び管理は、次の通りであった:B10.BMR系統[Sachs等、1979,J.Immunol.123:1965-1969]は、約6年前に、メイン州Bar HarborのJackson研究所に与えられ、現在、その源から、特定の病原体を有しないこの動物のストックを入手することが出来る。生きている間は、動物を、オートクレーブした食餌及びオートクレーブした酸性化した飲料水を含むオートクレーブしたミクロアイソレーターケージに移すべきである。解釈可能な生存研究を実施し得るようにする動物を病原体を有しない状態に維持するのに有効な無菌動物取扱手順を用いるべきである。
骨髄移植を次のようにして実施した。マウスにおける骨髄移植のための技術は、当業者には公知である(例えば、Sykes等、1988,J.Immunol.140:2903-2911を参照されたい)。簡単に言えば、12〜16週齢のレシピエントB10.AKMマウスを致死的に照射(1025R、137Cs源、110R/分)して、8時間以内に、6〜14週齢の同性のドナーの脛骨及び大腿骨から得た2.5×106の骨髄細胞で再構成した。動物は、滅菌したミクロアイソレーターケージ内に収容され、オートクレーブした食餌及びオートクレーブした酸性化した飲料水を受ける。同系の骨髄は同種の遺伝子で形質導入されるので及び骨髄は5FU処理したマウス(正常マウスより低い全細胞カウントを有するが一層高い幹細胞含量を有する)に由来するので、これらの研究のために、この一般的技術の幾らかの改変が必要である。従って、このプロトコールは、次のとおりである:
1.多能性幹細胞に循環を誘導するために、ドナーを150mg/kgの5−フルオロウラシルで−7日目に処理する(静脈注射)。
2.骨髄をドナーから−5日目に採集して、mAB及び補体によりT細胞涸渇させる。
3.骨髄を、Kb遺伝子を含む高力価の非感染性レトロウイルス粒子を生成する環境栄養性パッケージング細胞系統(B17H2Kb−18)からの上清中で5日間培養する(下記参照)。IL−3及びIL−6をこれらの培養に加える。
4.0日目に、レシピエントB10.AKMマウスを致死的照射して(10.25Gy)、Kb遺伝子を形質導入した2.5×106のBMCで再構成する。対照動物を同様に処理する(但し、それらは、Kb含有ベクターにさらしてない同じ環境栄養性パッケージング系統からの上清にさらした骨髄を受ける)。レシピエントを抗CD8モノクローナル抗体で前処理することも出来る。
細胞及び血清学的アッセイを次のようにして実施する。
抗クラスI細胞媒介のリンパ球溶解(CML)のアッセイ:脾臓をBMTレシピエント及び正常マウスから取り出し、赤血球をACK緩衝液を用いて溶解させて単一細胞懸濁液を調製する。細胞を、100メッシュナイロンを通して濾過し、洗浄して、10%ウシ胎児血清、0.025mM 2−メルカプトエタノール、0.01M HEPES緩衝液、0.09mM 非必須アミノ酸、1mM ピルビン酸ナトリウム、2mM グルタミン、100U/ml ペニシリン及び100μg/ml ストレプトマイシンを加えたRPMI1640からなる完全培地中に4×106/mlで再懸濁させる。90μlの応答細胞を、照射(30Gy)した刺激用脾臓細胞と共にCostar 96ウェル丸底プレートに加える。培養を、3つの複製それぞれの2列においてセットアップし、6%CO2中で37℃にて5日間のインキュベーションの後に、5つの異なる応答者:標的比の全部にて細胞溶解能力を試験し得るように2倍の連続稀釈物を3連の第2列から調製した。51Cr標識した2日間コンカナバリンA誘導したリンパ芽球を、次いで、ウェル当り104の芽細胞で加えて37℃、6%CO2で4時間インキュベートする。プレートをTitertek上清採集システム(バージニア州、Sterling在、Skatron,Inc.)を用いて採集し、51Cr放出を自動ガンマーカウンターを用いて測定する。細胞溶解能力は、測定がプレートされた応答者の数に基づいてされるように、5日間のインキュベーション期間の終りに存在する生細胞の数ではなくて最初にプレートした細胞培養において直接測定する。この方法論は、この研究所で開発されて、数年間にわたって、個々の動物からの脾臓細胞応答の分析のために首尾よく用いられてきた[Sykes,M.等、1988 J.Immunol. 140:2903-2911]。特異的溶解パーセントは、下記の式を用いて計算する:
Figure 2006312647
限界稀釈分析:応答者及び刺激者(6×105、30Gy照射)細胞を、96ウェルプレート中で13%TCGF(BALB/c conA活性化脾臓細胞から得たレクチン不活性化conA上清)を含む完全培地中で、7日間同時培養する。105(24ウェル)、3×104(24ウェル)、104(30ウェル)、3000(30ウェル)、1000(30ウェル)、300(30ウェル)及び100(30ウェル)の応答者細胞を調製する。3000の51Cr標識したconA芽細胞を各ウェルに7日目に加えて、4時間51Cr放出を測定する。51Cr放出が、同数の標的細胞を加えただけの刺激細胞を含む24ウェル中の平均51Cr放出を3標準偏差超えている場合に、ウェルを陽性と考える。ポアッソン分布を用いて各標的を認識する前駆体CTLの頻度を測定し、統計的分析をTaswellのカイ二乗法によって実施する(Taswell,1981,J.Immunol.126:1614)。
フローミクロフルオロメトリー:1色及び2色のフローサイトメトリーを実施して、特定の表現型を発現している細胞のパーセンテージを、前にSykes,1990,J.Immunol.145:3209-3215に詳細に記載されたようにして2色データから測定する。Lysis IIソフトウェアプログラム(Becton Dickinson)を用いて、前方角及び90°光散乱に基づくゲート制御により顆粒球をリンパ球から区別する。細胞ソーティングをCoulter Epics Eliteセルソーターにて行なう。
フローサイトメトリー用の細胞懸濁液:PBL、BMC、胸腺細胞、脾臓細胞及びリンパ節懸濁液を、前に記載されたようにして調製する(Sykes,M.等、1988,J.Immunol.140:2903-2911;Sykes,M.1990,J.Immunol.145:3209-3215;Sharabi,Y.等、1990,J.Exp.Med.172:195-202)。全末梢白血球細胞懸濁液(顆粒球を含む)を、ヘパリン処理した血液を、エッペンドルフ遠心分離機で14,000RPMで2分間遠心してからバフィーコート層を吸引して調製した。これらの細胞を15mlの円錐チューブに移して洗う。残ったペレットを汚染している赤血球(RBC)を、4.5mlの蒸留H2Oに5秒間さらすことにより溶解させてから0.5mlの10×PBSでレスキューする。
細胞染色:1色及び2色染色を、前に記載されたようにして実施する(Sykes,M.,1990,J.Immunol.145:3209-3215;Sykes等、1988,J.Immunol.141:2282-2288)。直接染色のみを用いるときはいつでも、ラット抗マウスRcτR mAB 2.4G2(Unkeless,J.C.,1979,J.Exp.Med.150:580-596)の培養上清を用いて、FcτR結合による非特異的染色をブロックする。次のmABを用いる:ビオチン化マウスKb特異的IgG2a mAB28−8−6(Ozato等、1981,J.Immunol.126:317-321)及び対照用マウスIgG2a mAB HOPC1(マウス抗原に対する公知の特異的結合を有しない)を、プロテインAセファロースカラムにおける精製によって調製し、我々の研究室において用いられる標準的手順によりビオチン化する;ラット抗MAC1 mAB M1/70(Springer等、Eur.J.Immunol.9:301)を培養上清として用い、マウス抗ラットIgG特異的mAB MAR18.5により染色する;FITC標識したラット抗マウス顆粒球抗体Gr1をPharmingenから購入する;FITC標識したラット抗マウスIgM mAbをZymedから購入する;FITC標識したラット抗マウスThy1.2 mABをBecton-Dickinsonから購入する;FITC標識したマウス抗ヒトCD3 mAB Leu4(Becton Dickenson)をFITC標識したネガティブ対照として直接使用する。
胸腺組織の免疫蛍光検査:組織をL15培地中で24時間インキュベートしてバックグラウンド染色を減少させ、次いで、切断してイソペンタン中での凍結のためにO.C.T.化合物中に包埋する。凍結切片(厚さ4μm)を低温保持装置にて調製し、乾燥してアセトン中で固定し、PBS中で洗う。第1の抗体インキュベーション(28−8−6との)を、Fcレセプターを飽和するために、2%正常マウス血清の存在下で実施する。45分後に、スライドを4回洗い、FITC結合した第2の試薬(モノクローナルラット抗マウスIgG2a−FITC、Pandexより購入)を加える。第2の試薬と共に45分間のインキュベーションの後に、4回の洗浄を行なって組織を載せる。切片を、蛍光顕微鏡下で、その組織が得られた動物の群を知らない観察者によって検査する。
骨髄操作及びアッセイを次のようにして実施した:
マウス骨髄幹細胞の形質導入:骨髄細胞の形質導入に用いる方法論は、以前に記載されている(Karlsson等、1988,Proc.Natl.Acad.Sci.85:6062-6066)。骨髄を、2日前に150mg/kgの5−FUで処理した6〜12週齢の雌B10.AKMドナーから採集する。T細胞涸渇(上記参照)に続いて、骨髄を分割して、10cmプレート当り107細胞を、8μg/mlのポリブレン、10%FCS、0.6% IL−3含有上清、0.6% IL−6含有上清及びB19H2Kb若しくはN2細胞由来の新鮮な上清の存在下で5日間培養する。IL−3及びIL−6含有上清は、マウスrIL−3遺伝子含有プラスミッドpCD−IL−3又はrIL−6遺伝子含有プラスミッドpCD−IL−6で、それぞれ、トランスフェクトしたCOS7細胞の48時間上清である(両プラスミッドは DNAX Corp.のFrank Lee博士により提供された)。IL−3含有上清を、IL−3依存性細胞系統32Dの増殖を、これらの上清の稀釈物の存在下において試験することにより力価測定し、IL−6を、IL−6依存性系統T1165を指示細胞系統として用いて同じ方法で力価測定する。我々は又、最近記載されたように(Zsebo等、1990,Cell 63:125-201)、骨髄形質導入におけるマウスSCFの効果を試験する。
これらのウイルス含有上清を、毎日、各プレートの非付着層を採集し、細胞をペレット化して新たに採集して濾過したウイルス含有B19H2Kb若しくはN2上清(添加剤を含む)に再懸濁することによって新鮮にする。5日後、非付着及び付着BMCを採集して洗浄し、HEPES緩衝液及びヘパリン10U/Mlを加えたゲンタマイシンを含むMedium 199に2.5×106/mlで再懸濁する。この懸濁液の1mlを照射したマウスに静脈注射する。
マウスCFU−GMアッセイ:CFU−GM(コロニー形成単位−顆粒球/マクロファージ)として公知の骨髄前駆細胞を試験するために、骨髄細胞を、30%限定ウシ胎児血清(FBS)(ユタ州、Logan在、HyClone)、10-4M β−メルカプトエタノール、抗生物質、5%(v/v)マウスIL−3培養補足(マサチューセッツ州、Bedford在、Collaborative ResearchInc.)及び0.8%メチルセルロース(Vancouver在 Terry Fox Laboratoryから購入した市販の調製溶液の36%v/vの添加による)を含むIMDM培地からなるプレート用培地に懸濁する。この懸濁液の1.1mlを、次いで、35mm組織培養プレートに分配して(2連で)、37℃のインキュベーター中に置く。その結果のCFU−GM由来のコロニーを、5〜7日後に、顕微鏡的に数える。形質導入したCFU−GMを、培養培地に0.9μg/mlの活性G418を含ませることにより選択する。形質導入頻度を、次いで、薬剤の存在下及び不在下のコロニーに由来するCFU−GMの比により測定する。
分子的方法を次のようにして行なった:
N2−B19−H2bベクター:このベクターを、元のレトロウイルスベクターN2(Eglitis等、1985,Science 230:1395-1398)から出発して構築した(更なるBamHI部位をXhoI部位の直ぐ3’側に誘導するようにShimadaにより改変された)。それは、Waneck(Waneck等、1987,J.Exp.Med.165:1358-1370)に記載されたように前にベクターpBG367にクローン化されたKbcDNAを含む。この遺伝子を、N2−B19−H2b構築物を生成するために、高い効率のパーボウイルス由来のプロモーターであるB19プロモーター[Liu等、1991,J.Virol.印刷中]の制御下に置いた。
サザーンブロット分析を、PBL、胸腺細胞、BMC、脾臓細胞又はリンパ節細胞懸濁液から抽出したDNAについて、標準的方法(Ausubel等、1989,Current protocols in molecular biology.John Wiley & Sons,ニューヨーク)を用いて行なうことが出来、pBG367からEcoRIによって遊離されたKbcDNAの断片を用いてプローブ検出を行なう。ゲノムDNAを、形質導入したKbを他のB10.AKM系統のクラスI遺伝子と区別することの出来る酵素で切断する。公知の配列から、EcoRIは、1.6kbのバンドを形質導入したKbcDNAから遊離させるはずなので、この目的に十分なものであることがわかる(それは予想される内在性のB10.AKMのKk及びDqクラスIバンドと異なる)(Arnold等、1984,Nucl.Acids Res. 12:9473-9485;Lee等、J.Exp.Med.168:1719-1739)。しかしながら、他のクラスI及びクラスI様遺伝子から遊離したバンドとの混同がないことを確実にするために、我々は、幾つかの酵素を先ず、B10.AKM由来のDNAについて試験して適当な制限酵素の組合せを選択する。
DNAのPCR分析を、前に我々の予備研究において有効であることを示したプライマーを用いて実施することが出来る(図4参照)。
5'プライマー: 5'-GGCCCACACTCGCTGAGGTATTTCGTC-3'(α1エキソンの5’末端をカバー)(配列番号3)
3'プライマー: 5'-GCCAGAGATCACCTGAATAGTGTGA-3'(α2エキソンの5’末端をカバー)(配列番号4)
これらの特異的オリゴヌクレオチド及びCetus GeneAmp キット(コネチカット、Norwalk,Perkin Elmer Cetus )を製造者の指示に従って用いて、DNAを25サイクルのPCR増幅にかける。更に、生成物を電気泳動の後にオートラジオグラフィーによって可視化するために[32]PdCTPをPCR反応に含ませる。
RNAを、5×106 〜5×107 細胞から、グアニジンイソチオシアネート及びCsCl法(Chirgwin等、 1979, Biochem.18:5294-5308)を用いて単離することが出来、ノーザン分析、RNアーゼ保護分析及び逆転写酵素により形成された生成物のPCR分析に用いる。5×106 未満の細胞しか利用できない状況(例えば下記の個々のマウスの尾からの採血)のために、我々は、QuickPrep mRNA Purification Kit(Amgen)を、小型化したRNA調製手順として利用する。
ノーザン分析を、標準的方法(Ausubel 等、 1989, Current protocols in molecular biology John & Sons ニューヨーク)及び同じKb cDNA由来のプローブを用いて行なうことが出来る。ベクター由来のKb mRNAは、cDNAの3’末端とウイルス性3’LTR内のポリアデニル化部位との間にベクター配列を含むために、内在性のクラスI転写物より大きい(2.5kb対1.6kb)。それ故、ベクター由来のKb mRNAをKb cDNAプローブとクロスハイブリダイズし得る内在性転写物から区別することは容易である。我々は又、転写物のユニークな非Kb 配列から導いたプローブをも利用する(例えば、B19又はN2由来のベクター配列からのもの)。
RNアーゼ保護分析は、標準的なノーザンブロットより高感度であり、しかも定量的である。公開された方法(Sambrook等、 1989, Molecular cloning:A laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor)に基く手順を用いてリボプローブを導く。簡単に言えば、Kb cDNAを、T3及びT7RNAポリメラーゼプロモーター配列(Stratageneからのブルースクリプト又はブルースクリプトプラスミッド)を含むプラスミッドベクター中にクローン化する。適当なポリメラーゼ及び32P−ヌクレオチドを用いて、挿入物の転写を開始して放射性Kb RNAを精製する。このプローブを、次いで、種々のRNA調製物とインキュベートし、その後、リボヌクレアーゼで処理する。RNAの存在を、配列決定用ゲル上で電気泳動により評価する。
RNAの逆転写酵素処理の後に、PCRを、Kb 転写物を検出するための高感度の手順として用いる。適当なプライマーを、レトロウイルス由来の転写物を特異的に増幅するためにデザインする(1つのプライマーが、構築物の5’UT領域及びcDNA配列から導かれた配列をカバーする)。簡単に言えば、RNAを、GuSCN/CsCl法により調製し、第1鎖cDNAを5μgの全RNAからスーパースクリプト予備増幅システム(メリーランド、 Gaithersburg在、 BRL/Life Technologies, Inc. )を用いて調製する。PCR増幅を、Cetus GeneAmp キット(コネチカット、 Norwalk 在、 Perkin Elmer Cetus)を用いて、50サイクル行なう(Hansen等、 J.Immunol. 118:1403-1408)。反応生成物を、3% NuSieve アガロースゲル(メイン、 Rockland 在、 FMC BioProducts )上での電気泳動の後に可視化する。
同種MHC遺伝子トランスファープラスシクロスポリン
第1に血管新生した同種移植片の運命の決定においてクラスIIMHC遺伝子座における違いが決定的に重要であることは、以前に、部分的に同系交配したミニブタにおいて示された。移植後の早い時期に与えたシクロスポリンは、一律に、クラスIIマッチしたクラスIミスマッチの腎臓同種移植片の寛容へ導く。しかしながら、シクロスポリン単独では、完全MHCバリヤーを横切る寛容を生成しない。クラスIIの重要性と一致して、クラスIIバリヤーを横切る同種骨髄移植は、骨髄ドナーのクラスIIにマッチするがレシピエントとは完全に異なる腎臓移植片に対する寛容を誘導する。下記の実験において、SLA不同の腎臓移植を達成するための特異的移植寛容を、レシピエントの骨髄を一般に移植前に同種SLAクラスII遺伝子を有するレトロウイルス発現ベクターでの形質導入により改変する自己の骨髄移植によって誘導した。レトロウイルス発現ベクターは、SLA−DRBa 又はDRBc の何れかについてのcDNA及び薬物選択マーカー(Neo)を含み、高力価のウイルス上清を両栄養性パッケージング細胞系統を用いて調製した。この研究に含まれた5匹の動物からの骨髄を2日目に採取し、次いで、同種(n=4)又は同系(n=1)MHC遺伝子の何れかについて、約48時間にわたって、ウイルス含有上清と共に培養した。−1日又は0日目の致死照射(24時間間隔を置いた2フラクションにて10Gy)の後で、動物に、0日目に、0.4〜1.3×108 細胞/kgを移植した。遺伝子トランスファーの効力を、ネオマイシン耐性について選択するためのG418の存在下で、顆粒球/マクロファージ前駆細胞についてのコロニー形成単位アッセイ(CFU−GM)を用いて試験した。G418耐性CFU−GMの頻度は、移植直後に動物間で有意に変動し(6.5〜25.9%)、時間と共にゆっくり減少した。すべての動物は、骨髄移植の3か月後までに、同種刺激に対する応答性を回復した(MLRにより試験)。クラスIIMHCのDQ及びDR分子に特異的なMAbを、DQ及びDRの認識の効果を分離するために、「ブロッキング」MLR研究のために用いた。同種DRB遺伝子で形質導入した骨髄移植のレシピエントからの細胞を用いるアッセイにおいて、遺伝子ドナー型細胞に対する応答のDR部分は、強く減少され、形質導入した遺伝子のDR特異的無応答性の誘導における効力を示した。この効果は、gg方向に対するDRBa よりcc組合せに対するDRBd において一層著しいにもかかわらずすべての実験動物において認められた。同系遺伝子で形質導入した対照動物からの細胞を用いるMRLにおいて、MLR中のDR又はDQのブロッキングは、同じハプロタイプの天然の動物において認められたものと同一の反応性パターンを示した。BMTの5か月後に、動物を、遺伝子ドナー型のクラスIIにマッチ且つ元のレシピエントのハプロタイプとは完全にミスマッチである腎臓移植片により攻撃誘発(challenged)した。クラスIMHC及びマイナー抗原不同に対して寛容化するために、12日間にわたって10〜15mg/kg/日でシクロスポリンを静脈投与した。3匹の動物が、それらの腎臓移植片を8、22及び40日目に拒絶した。8日目の早められた拒絶の様式は、同種遺伝子生成物の発現の望ましくない効果としての増感を示唆するものであった。これらの何れのレシピエントにおいても、抗ドナー型抗体の存在は、フローサイトメトリーによって検出されなかった。一匹の動物が寛容になり、移植後101日目で正常のクレアチニンレベルを示した。同系遺伝子で形質導入した骨髄を受けた動物は、高クレアチニンレベルで病理学的血管変化を伴う重大な拒絶を受けた。最長生存腎臓移植片のレシピエントも又、G418rCFU−GMの初期頻度に基づいて判断して、最も効率的に形質導入された自己骨髄を受けた。この一例において、組換えサイトカイン[Pixy321 (Pixyは、ヒトGM−CSF/IL3融合蛋白質である)100単位/ml;マウス幹細胞成長因子20単位/ml;これらのサイトカインを使用したが、トランスフォームされた細胞と同じ種からのサイトカインも又使用出来る]を、同種DRBレトロウイルス発現ベクターでの形質導入中、培養培地に含ませた。これらのサイトカインは、最終的にDRB特異的な低応答性を誘導した樹状細胞の前駆細胞を含む多系列多能性造血幹細胞の形質導入へと導いた。これらの実験は、骨髄細胞中への体細胞クラスIIMHCDRB遺伝子トランスファーが、レシピエントの免疫応答に際して著しい機能的意義を有することを示す。イン・ビトロ及び一層重要なことにはイン・ビボにおいて、完全にミスマッチの腎臓移植片の生存のドナー特異的な延長の誘導に伴って免疫機能が有意に調節された。同種骨髄幹細胞のMHC遺伝子での形質導入は、リンパ造血キメリズムに匹敵する機構によりMHCバリヤーを横切る寛容を誘導する方法を提供する。ここに記載した実験で用いた致死的照射は、一層臨床的に許容される様式で骨髄植付けを可能にする骨髄除去しない条件の養生法で置き換えることが出来る。
III.骨髄移植を伴う寛容の誘導
クラスI及び他のマイナーな不同に対する寛容を誘導するための、骨髄細胞の移植と組合せた高投与量シクロスポリンの短期コース(サイトカイン放出を刺激する治療例えばプレドニゾンでの治療の不在にて施与する)は、クラスII不同に対する寛容を誘導する
異種移植片:
下記の手順を、移植された器官(異種移植片)が拒絶前に異種移植宿主において生存する時間を延長するためにデザインした。この器官は任意の器官例えば肝臓、腎臓、心臓であってよい。主要な戦略は、器官灌流による天然抗体の排除、寛容誘導性骨髄の移植、適宜に、ドナーの間質組織の移植、及び適宜に、上記のように移植片の導入の頃に補助減縮剤の短期コースを施与することである。レシピエントの移植に対する準備は、これらのステップの何れか又はすべてを含む。好ましくは、それらを下記の順序で行なう。
第一に、ウマ抗ヒト胸腺細胞グロブリン(ATG)の調製物を、レシピエントに静脈注射する。この抗体調製物は、成熟T細胞及びナチュラルキラー細胞を排除する。もし排除されないと、成熟T細胞は、骨髄移植片及び異種移植片自身(感作後)の両者の拒絶を促進するであろう。同様に重要なことであるが、ATG調製物は又、ナチュラルキラー(NK)細胞をも排除する。NK細胞は、恐らく、移植された器官に影響を有しないが、新たに導入された骨髄を直接作用して拒絶するであろう。任意の哺乳動物宿主から得た抗ヒトATG、例えばウマ由来のATGより低い力価であったが、ブタで生成されたATGも用いることが出来る。ATGは、ATGにおけるポリクローナル混合物はすべての宿主NK細胞を溶解させることが出来るが、抗NKモノクローナル抗体は一般にすべての宿主NK細胞を溶解させることはないので、抗NKモノクローナル抗体より優れている。しかしながら、抗NKモノクローナル抗体を用いることは出来る。
宿主T細胞が移植後再生する時期における、宿主胸腺中のドナー抗原の存在は、宿主T細胞を寛容化するために決定的に重要である。もしドナーの造血幹細胞を、宿主T細胞が再生される前に宿主胸腺内で樹立して寛容を誘導することが出来なかったならば、この非骨髄除去養生法の間中、抗レシピエントT細胞抗体の反復投与が必要であろう。宿主T細胞の連続的涸渇は、数週間にわたって必要であろう。或は、例えば、もしこのアプローチが成功せず、寛容がこれらの動物において誘導されない[ドナー皮膚移植片受容、特異的細胞性低応答性(イン・ビトロ)及び体液性寛容により測定]ならば、このアプローチを改変して宿主の胸腺摘出を含むことが出来る。胸腺摘出されたレシピエントにおいて、宿主T細胞は、宿主胸腺内で分化する機会を持たず、従って、ドナーの胸腺内で分化しなければならない。もしこれが可能でないならば、その動物は、免疫適格について、ドナー胸腺内でのドナーT細胞の発達に依存しなければならない。免疫適格は、非ドナー型異種ドナー皮膚移植片を拒絶する能力及び病原体を含む環境で生存する能力により測定することが出来る。
貧血を回避するために、レシピエントを脾臓摘出することも必要又は望ましいであろう。
第2に、レシピエントに、新たに注入された骨髄細胞のための場所を作るために低線量照射を施与する。100〜400ラドの準致死線量(全身照射)プラス700ラドの局所的胸腺照射が、この目的に効果的であることが見出された。
第3に、天然の抗体を、ドナー種の肝臓の血液灌流によりレシピエントの血液から吸収する。前もって形成されていた天然抗体(nAB)が、移植片拒絶の第一次因子である。天然抗体は異種内皮細胞に結合し、それらは第1にIgMクラスである。これらの抗体は、異種ドナーの抗原に対する如何なる公知の以前の曝露にも依存しない。これらの天然抗体をを生成するB細胞は、T細胞非依存性の傾向があり、通常、発生中に自己抗原に曝露されることによりこれらの抗原に対して寛容となる。新たに発生中のB細胞が寛容化される機構は未知である。肝臓は、腎臓より一層効果的な天然抗体の吸収体である。
骨髄除去をしない手順における第4のステップは、ドナー間質組織好ましくは胎児の肝臓、胸腺及び/又は胎児の脾臓から得たものをレシピエント中に好ましくは腎臓被膜内に移植することである。異種バリヤーを横切る幹細胞植付け及び造血は、ドナー種からの造血間質環境を提供することにより増大される。間質マトリックスは、造血細胞及びそれらの間質環境間の相互作用に必要な種特異的因子例えば造血成長因子、接着分子及びそれらのリガンドを供給する。
肝臓は、胎児における造血の主要部位であるので、胎児肝も又造血幹細胞源として骨髄の代替物として働き得る。胸腺は、T細胞成熟の主要部位である。各器官は、宿主中に移植されたそれぞれの未分化幹細胞の分化を支持することの出来る器官特異的な間質マトリックスを含む。成体胸腺を使用することも出来るが、妊娠の十分初期に得られた胎児組織は、GVHDを引き起こし得る成熟Tリンパ球を含まないので好ましい。GVHDに対する更なる用心として、胸腺間質組織を、移植前に、例えば1000ラドで照射することが出来る。移植の別法又は補助として胎児肝細胞を懸濁液にて投与することが出来る。
第5に、ドナーの骨髄細胞(BMC)又は他の造血幹細胞の源例えば胎児肝懸濁液を、レシピエントに注入する。ドナーのBMCは、レシピエントの適当な部位に帰り、残りの宿主細胞と隣接して成長して増殖し、キメラ状リンパ造血集団を形成する。このプロセスにより、新たに形成中のB細胞(及びそれらが産生する抗体)は、ドナー抗原にさらされるので、この移植片は自己として認識されるようになる。ドナーに対する寛容は又、造血幹細胞例えばBMCの植付けが達成された動物中のT細胞レベルにおいても認められる。骨髄キメリズムが誘導されてから数か月後に器官移植片をかかるレシピエント中に位置させた場合には、ドナーに対する天然抗体は消失し、移植片は免疫系の体液性及び細胞性防御の両者に受容されるはずである。このアプローチは、造血細胞移植、例えばBMT例えば胎児肝懸濁液の移植の後、器官移植の時点で正常な健康及び免疫適格が回復している程十分長期間経っても器官移植を可能にするという更なる利点を有する。異種ドナーの利用は、同じ動物又は遺伝的にマッチする動物からの骨髄細胞及び器官を使用する可能性を与える。
最後に、補助減縮剤の短期コース例えば高投与量
CsAの短期コースをレシピエントに施与することが出来る。上記のように、このコースを移植の頃又はその少し前に初め且つ、成熟T細胞が刺激され、拒絶を開始するのに要する時間とほぼ等しい時間にわたって継続する。これらの手順の何れもが移植された器官の生存を助成し得るが、最良の結果は、すべてのステップを組合せて用いたときに達成される。この発明の方法を用いて、同種移植片(例えば、移植片のドナー及びレシピエントの両者がヒト)及び異種移植片(例えば、移植片のドナーが非ヒト動物、例えばブタ例えばミニブタであり、移植片レシピエントが霊長類、例えばヒト)に対する寛容を与えることが出来る。
これらの手順の何れもが移植された期間の生存を助成するが、最良の結果は、すべてのステップを組合せて用いたときに達成される。この発明の方法を用いて、同種移植片(例えば、移植片のドナー及びレシピエントの両者がヒト)及び異種移植片(例えば、移植片のドナーが非ヒト動物、例えばブタ例えばミニブタであり、移植片レシピエントが霊長類、例えばヒト)に対する寛容を与えることが出来る。
異種移植片の場合に、移植片のドナー及び寛容誘導性造血細胞又は灌流用の肝臓を供給する個体は、同一個体であるか又は出来るだけ密接に関連しているべきである。例えば、高度に同系交配したドナー集団から移植用組織を得ることは好ましい。
詳細なプロトコール
ミニブタドナーからの腎臓のレシピエントとしてカニクイザルを準備する下記のプロトコールにおいて、レシピエントの動脈及び静脈カニューレを灌流用肝臓に接続した時点をゼロ時間と定義する。
−1日目において、市販のウマ抗ヒト抗胸腺細胞グロブリン(ATG)の調製物をレシピエントに注射する。ATGは、排除しなければ、寛容を誘導するために用いる骨髄細胞の拒絶を引き起こすであろう成熟T細胞及びナチュラルキラー細胞を排除する。レシピエントを麻酔し、IVカテーテルをレシピエントに挿入し、そして6mlのヘパリン化全血液を感染前に取り出す。次いで、ATG調製物を静脈注射する(50mg/kg)。6mlのヘパリン化全血液を、30分、24時間及び48時間の時点において試験するために吸い出す。血液試料を、ナチュラルキラー細胞活性に対する抗体処理の効果について分析し(K562標的について試験)、CD4、CD8、CD3、CD11b及びCD16を含むリンパ球サブポピュレーションについてFACS分析により分析する。両アッセイからの予備データは、細胞の両グループがATGの投与により排除されることを示す。もし成熟T細胞及びNK細胞が排除されないならば、器官移植の前及び後のこの手順のもっと遅い時期に再投与することが出来る。
準致死的照射を、−1〜−8日目に、レシピエントに施与することが出来る。照射は、十分なレシピエントの内在性BMCを排除して新たに導入された外来のBMCの造血を刺激するのに必要である。準致死的全身照射は、レシピエントに対する最小毒性効果にて植付けを許すのに十分である。全身照射(150ラド)を、両側からの(TRBC)コバルト遠隔放射線療法で、10ラド/分にて、カニクイザルレシピエントに施与する。植付けを促進するために、胸腺の局所的照射(700ラド)も用いることが出来る。
天然抗体は、器官拒絶の第1の原因である。移植前にレシピエントの循環系から天然抗体を除去するために、0日目に、天然抗体(nAB)の手術的吸収を、下記のようにミニブタの肝臓を用いて行なう。−90分において、ブタドナーを麻酔し、標準的手術手順により肝臓を取り出す準備をする。−60分において、レシピエントのサルを麻酔する。末梢IVカテーテルを挿入し、6mlの全血液試料を吸い出す。正中線切開により、腹大動脈及び大静脈を取り出す。血液採取用のサイドポートを有するシラスティックカニューレをこれらの血管に挿入する。
−30分において、肝臓をインシトゥーで薄色になるまで灌流し、次いで、ブタドナーから取り出して冷リンゲルラクテート中に置く。この肝臓を、サルにおける再灌流の直前まで冷やしておく。肝臓のバイオプシーを行なう。−10分において、肝臓を温アルブミン溶液で、肝臓が暖まる(37℃)まで灌流する。
0時間において、レシピエントの動脈及び静脈カニューレをドナーの肝臓の門脈及び大静脈に接続して灌流を開始する。肝臓バイオプシーを、30分及び60分にそれぞれ行なう。レシピエント血液試料を血清用にも、30分及び60分にてそれぞれ吸い出す。60分に、肝臓をカニューレから分離し、レシピエントの大血管を修復する。レシピエントのサルから有害な天然抗体を吸収する機能を果たした肝臓を捨てる。血清用の更なる血液試料をレシピエントから、2、24及び48時間にて吸い出す。この手順を2つのブタ肝臓の順次的灌流にて行なった場合、第2の肝臓は、灌流中軽い虚血性変化の証拠を示さなかった。30分の灌流の終りに、第2の肝臓は、隣接する2つのカニューレにおいて動脈の流入血液と比べて黒ずんだ静脈の流出血液により証明されるように大いに正常且つ機能的であるようであった。これらの肝臓からの組織切片は正常であったが、免疫蛍光染色は内皮細胞にIgMを示した。血清試料は、天然抗体の減少を示した。
T細胞及びB細胞媒介の寛容による移植された器官の長期生存を促進するために、ドナー骨髄細胞をレシピエントに投与してキメラ状骨髄を形成する。骨髄中のドナー抗原の存在は、新たにB細胞を発生させ且つ新たにT細胞を感作してドナーの抗原を自己として認識させ、それにより、ドナー由来の移植された器官に対する寛容を誘導することを可能にする。ドナーのBMCを安定化するために、ドナーの間質組織(胎児肝の組織スライスの形態)、胸腺及び/又は胎児脾臓を、レシピエントの腎臓被膜の下に移植する。間質組織は、好ましくは、造血幹細胞例えばBMC又は胎児肝細胞懸濁液の投与と同時に又は投与前に移植する。
キメリズムの後に、2色フローサイトメトリーを用いることが出来る。このアッセイは、モノクローナル抗体を用いて、ドナークラスI主要組織適合抗原及び白血球共通抗原をレシピエントクラスI主要組織適合抗原に対して識別する。次に、BMCを、器官移植と同時に又は移植前に注射することが出来る。以前に記載のように、骨髄を採取し、静脈注射(7.5×108 /kg)する(Pennington等、1988,Transplantation 45:21-26)。寛容が誘導される前に天然抗体の再発が見られ、これらの抗体が移植片に障害を引き起こすならば、プロトコールを改変してBMT後に十分時間をおいて器官移植前に体液性寛容が樹立されるようにすることが出来る。
上記のアプローチは、共同して移植拒絶の問題を防ぐようにデザインされている。腎臓をカニクイザルに、肝臓の天然抗体吸収後に、寛容を誘導するための骨髄移植を用いずに移植した場合には、腎臓機能は、腎臓の拒絶の前に1〜2日間持続した。4つの手順(肝臓灌流による天然抗体の吸収、ATGの投与、準致死的照射及び骨髄注入、その後にブタ腎臓を霊長類レシピエントに移植する)を行なった場合には、腎臓は、拒絶前に7日間機能した。移植された器官の拒絶にもかかわらず、レシピエントは健康を維持した。
ブタ胎児肝及び胸腺間質組織を2匹の準致死的照射したSCIDマウスの腎臓被膜下に移植した場合、移植の2週間後において、末梢血液白血球の25〜50%は、ドナー系列であった。胎児肝を胸腺を伴わずに受けた第3の動物においては、有意の程度のキメリズムは検出されなかった。
この発明の方法を、説明したように、組合せて、又は一部分で用いることが出来る。
この骨髄細胞を導入する方法を変えることが出来、特に、(1)造血幹細胞の注射と移植との時間間隔を増すこと;(2)注射する造血幹細胞の量を増し又は減じること;(3)造血幹細胞注射の回数を変えること;(4)造血幹細胞の送達方法を変えること;(5)造血幹細胞の組織源を変えること、例えば胎児肝細胞懸濁液を用いることが出来る;又は(6)造血幹細胞のドナー源を変えることによって変えることが出来る。移植片ドナーから導いた造血幹細胞が好適であるが、造血幹細胞を他の個体若しくは種から、又は遺伝子操作した同系交配ドナー株から、又はイン・ビトロ細胞培養から得ることも出来る。
造血幹細胞の移植のためにレシピエントを準備する方法を変えることが出来る。例えば、レシピエントは、脾臓摘出又は胸腺摘出を受けることが出来る。後者は、好ましくは、骨髄を除去しない養生法の前例えば−14日に施与する。
天然抗体の血液灌流は、(1)他の血管器官例えば肝臓、腎臓、腸を利用する;(2)複数の逐次的器官を利用する;(3)各器官を灌流する時間の長さを変える;(4)灌流される器官のドナーを変えることが出来る。レシピエントの照射は、(1)準致死的範囲より低い全身照射の吸収線量を変える;(2)種々の身体部分(例えば、胸腺、脾臓)を標的とする;(3)照射率を変える(例えば、10ラド/分、15ラド/分);又は(4)照射と造血幹細胞移植との時間間隔を変える(1〜14日の任意の時間間隔を用いることが出来、ある種の利益は4〜7日の時間間隔の利用から生じ得る)ことを利用することが出来る。造血細胞移植前に導入する抗体を、(1)T細胞サブセット又はNK細胞に対するモノクローナル抗体を利用すること(例えば、Hercend 等の米国特許第4,772,552号に記載された抗NKH1A 、参考として本明細書中に援用する);(2)抗ヒトATGを他の哺乳動物宿主にて調製すること(例えば、サル、ブタ、ウサギ、イヌ);又は(3)上記の宿主の何れかにおいて調製した抗サルATGを用いることにより変えることが出来る。
この発明の方法を他の哺乳動物レシピエント(例えば、アカゲザル)に用いることが出来、又、他の哺乳動物ドナー(例えば、霊長類、ヒツジ又はイヌ)を用いることが出来る。血液灌流の別法又は補助として、宿主抗体を、過剰の造血細胞の投与により涸渇させることが出来る。
造血細胞移植例えばBMT前に導入する間質組織を、(1)胎児肝及び胸腺組織を細胞懸濁液として投与すること;(2)胎児肝又は胸腺間質組織の何れか一方のみを投与すること;(3)間質移植組織を他の被膜を有する十分血管化された部位に置くこと、又は(4)成体胸腺又は胎児脾臓を間質組織源として用いることにより変えることが出来る。
キメラブタにおける完全にMHCミスマッチの腎臓同種移植片に対する寛容
ミニブタにおける腎臓移植片(KTx)の寛容の達成に対する主要組織適合性複合体(MHC)クラスIIマッチングの圧倒的重要性が以前に示された。クラスII抗原がマッチする場合、MHCクラスI及びマイナー抗原(MA)バリヤーを越える長期の特異的寛容を、シクロスポリンの短期コースによって一様に誘導することが出来る。しかしながら、シクロスポリンは、全MHCバリヤーを越えるこの効果を生じない。単一ハプロタイプクラスIIMHC+MAバリヤーを越える骨髄移植(BMT)は、FCMにより確認されたように、完全キメラ動物を創出した。これらのキメラは、BMTの2〜3か月後に正常な細胞性免疫機能を回復する(MLR及びCMLにより試験)。4匹のかかるキメラ動物(表1の1〜4番参照)は、MBTドナーとクラスIIマッチするがレシピエントとは完全にミスマッチのドナーからの腎臓移植片を受けた。シクロスポリン(10mg/kg/日)の12日コースが、腎臓移植後の唯一の免疫抑制であった。4匹のすべてのブタは、300日より長期間正常クレアチニン(Cr)値(<2mg%)を維持し、一レシピエントは、良好な腎臓機能を有して3年より長く生存し、移植片組織学は最小境界線拒絶を示した。これらの結果は、BMTによるクラスII抗原に対する寛容の誘導が、完全に異種の腎臓移植片に対する特異的寛容を誘導することを可能にすることを示す(皮膚移植片により試験)。続いて、我々は、この現象の特異性を、単一ハプロタイプクラスII+MAミスマッチBMTが、レシピエント及びBMTドナーの両者と完全にミスマッチの腎臓移植片のシクロスポリン誘導した長期受容を促進するかを測定することによって試験した(表1の5〜10番)。シクロスポリンの12日コースは、キメラレシピエントにおけるかかる腎臓移植片の長期生存を与えた。5番の動物は未だ生存し、正常Crレベルを有して臨床的に良好であった;しかしながら、組織学は、境界線拒絶を示している。6番の動物を腎臓移植の18か月後に殺したが、腎臓機能の低下を有した(Cr>11mg%)。7番の動物を、感染症の故に、腎臓移植の6か月後に殺したが、腎臓移植片は、血管傷害の徴候を有しない中程度の腸管(tubulointestinal)浸潤物を示した。両長期生存動物(3番及び5番のブタ)を、最近、抗ドナー反応性について試験した。CML及びMLRは、腎臓移植片ドナー型細胞に対する特異的非応答性を示した。8〜10番のブタは、異系交配したヨークシャードナーからの腎臓移植片を受けた。これらの動物は、シクロスポリン治療の停止後少しして始まる不可逆的腎不全を発生した。
Figure 2006312647
従って、MHCクラスIIミスマッチのBMTレシピエントにおけるシクロスポリンの手術後短期コースは、BMTドナーとクラスIIマッチする腎臓移植片に対する寛容を誘導することを可能にする。ある場合には、明らかに複数の遺伝子座の不同の程度に依存(同系交配及び異系交配ドナー間の差異と比較)して、レシピエント及びBMTドナーの両者と完全にミスマッチの腎臓移植片に対する長期非応答性を達成することが出来る。
霊長類同種腎臓移植におけるT細胞機能を抑制するためのシクロスポリンの短期コース
下記の実験は、植付けを達成するための骨髄を除去しないプロトコールにおいて得られた混合キメリズムが、多系列リンパ造血キメリズム及び完全にMHCミスマッチのカニクイザル間の腎臓移植片に対する長期の寛容を生じ得ることを示す。骨髄移植を寛容誘導養生法として用いる場合には、宿主のリンパ造血要素の完全除去は、必要でないし望ましくもない。それよりも、混合キメリズムの状態を達成することが有利であり、該状態において、ある種のドナー由来の要素の存在が特異的寛容を誘導し、他方、宿主型抗原提示細胞は正常免疫適格を維持する。
混合キメリズムを達成するためには、成熟宿主T細胞の除去が重要であることがマウスにおける研究において示されている。完全にMHCミスマッチのカニクイザルを用いる初期の研究において、種々のモノクローナル抗体を、成熟T細胞サブセット(抗CD4及び抗CD8)並びにT細胞涸渇剤としての抗胸腺グロブリン(ATG)の幾つかの源に対して試験した。これらの抗体処理は末梢血液中のT細胞の著しい涸渇を生じたが、リンパ節のバイオプシーは、残余のT細胞が残っており、しばしば抗体で覆われていることを示した。T細胞機能を更に抑制するために、筋肉内投与用の油中シクロスポリン(CyA)調製物を用いる治療の1か月コースを、調製養生法に加えた。この治療は、薬物投与中にシクロスポリンの治療レベルを生じ、薬物を停止した後3週間の期間にわたって漸減するレベルを生じた。非致死的な調製養生法の基本的プロトコールは、次の通りである:体重6〜10kgのカニクイザル(マサチューセッツ、Wilmington 在、 Charles River Primates)を、300ラドのWBI、−6日目における単一照射(#M393)又は−6日目と−5日目の各150ラドの2フラクション(#M3093及び#M3293)で処理した。700ラドの胸腺照射を−1日目に施与した。ウマ抗ヒト胸腺グロブリン(ATG)(Upjohn)を、−2、−1及び0日目に50mg/kgにて筋肉内投与した。0日目に、正中線切開により、ドナーの腎動脈及び腎静脈を、レシピエントの大動脈及び大静脈中に、それぞれ、末端から側面へ(end to side)吻合し且つ排尿のために尿管尿管吻合することにより、正常位の腎臓移植を行った。骨髄を2匹のドナーウサギから採取し、単離細胞浮遊液として調製して、腎臓移植の最後にレシピエント中に静脈から注入した。シクロスポリン(Sandimmun,15mg/kg/日、オリーブ油中に懸濁)での治療(筋肉内投与)を、0日目に始めて27日間継続した。
サル#393は、8日目に汎血球減少となり、血液型の適合した輸血を3回必要とし、次の2週間にわたって全血液を照射した。しかしながら、末梢血液成分はその後徐々に回復し、30日目までに正常となった。腎臓機能は250日より長期にわたって正常であり、215日目のバイオプシーは正常腎臓を示した。
この動物について、ドナーを宿主から区別することを予め測定したモノクローナル抗クラスI抗体を用いて、逐次的フローサイトメトリー(FMC)分析を行ない、リンパ様細胞、単核細胞及び好中球ポピュレーションを散乱プロフィル測定により分析した。3つのすべてのサブポピュレーションにおけるキメリズムの明白な証拠が、最初、10日目に検出され、27日目にシクロスポリン治療を停止するまで同様に高レベルを持続した。それ故に、各サブポピュレーションにおいて検出されたキメリズムのレベルは減少したが、キメリズムは、FCMによって、リンパ球(1.5%)及び単核細胞(29%)中で、203日目に依然として検出可能であった(最後の日に試験した)。更に、203日目の骨髄吸引は、FCMにより、11.2%のドナー細胞を示した。
混合リンパ球反応は、予備移植を行ない、移植後159日目に、抗ドナー反応性の特異的喪失を示した(表2)。
Figure 2006312647
この結果は、27日目以後、何らの更なる外因性の免疫抑制を伴わずに正常な腎臓機能及び正常な腎臓組織学と合わせて、我々に、特異的な移植寛容がこの動物中に混合キメリズムの樹立により誘導されたということを結論させる。更なる2匹の動物を、同じプロトコールで処理したが、3週間にわたる徐々に漸減するレベルではなく、停止後に血液中のシクロスポリンレベルの急激な下降を生じるシクロスポリン調製物の静脈内投与を用いた。これらの動物の内の1匹は、感染症のため、形成不全期間中に12日目に死亡し、他方は、シクロスポリンの停止後にキメリズムの証拠を喪失し、100日目に未だ生存したが、臨床及び病理学的基準の両者により慢性的拒絶と一致する経過を示した。
調製養生法の毒性を減少させるために、我々は、続いて、照射プロトコールを改変した。一匹の動物(#3893)において、WBIを1.5Gyに減らした。この動物は、混合キメリズムを発生し得ず、腎臓移植片を拒絶した(47日目にて、クレアチニン=12.1)。更なる2匹の動物(#3093及び#3292)において、WBIを3.0Gyに維持したが、単一照射ではなく、連続する2日(−6及び−5日目)の1.5Gyに分けた。これらの動物の両者とも混合多系統キメリズムを生じ、それぞれ、11及び20日目に最初に検出可能であった。それらは、分割しない照射を受けた動物よりずっと低い調製養生法の毒性を示し、両者は、この文章を書いているこの時点において、正常の腎臓機能を持つキメラを維持している(それぞれ、40日目及び25日目)。
混合キメリズムアプローチによるブタからサルへの腎臓異種移植
下記の実験は、以前に調和性ゲッ歯動物系において効果が示された異種リンパ造血キメリズムアプローチによる、サルにおけるブタの器官に対する寛容の誘導を示す。今までに、16匹のカニクイザルが、ブタ腎臓移植片を同じドナーからの異種骨髄と共に受けた。これらの異種移植片についての調製養生法は、1)骨髄を除去しない全身照射(WBI)及び胸腺照射による調整;2)サルの血液をブタの肝臓を灌流させることによる前に形成されたmAbの除去;3)脾臓摘出術;4)ATG及び/又はmAbを用いるT細胞涸渇;及び5)シクロスポリン(及びある種の動物では抗IgMmAb)を用いる手術後免疫抑制を含む。10匹の動物が4日より長く生存し、最長で13日間生存し、11日目まで正常な腎臓機能を有した。この動物において、ブタの細胞は、移植後10日目においてのみ末梢血液中に検出され、これは、一時的な異種キメリズムを示唆した。2匹のサルは、腎臓異種移植前に脾臓摘出とブタ肝臓灌流のみを受けた。これらの動物の一方において、移植後更なる免疫抑制は施与しなかったが、腎臓は、3日間機能し、その後急速に機能を喪失して、5日目までに完全に拒絶された。このサルの血清のフローサイトメトリーによる分析は、拒絶と相関する高力価のIgMの再発を示した。第2の動物において、シクロスポリン15mg/kg/日及び15デオキシスペルグアリン(DSG)6mg/kg/日を、移植後に静脈投与した。腎臓は、7日目まで機能し、その後衰弱して、8日目に除去された。病理学的検査は、パッチ状の間質の出血に加えて焦点の炎症性浸潤物を示した。この浸潤物は、約20%のT細胞を含んだ(CD3、CD4及びCD8に対するmAbを用いる染色により測定)。IgM天然抗体は、この動物における肝臓灌流中に効果的に除去され、著しいことには、それらはその後血清中に現れず、IgGレベルは、7日目に上昇し始め、腎臓機能不全の開始と相関した。これらの結果は、1)天然抗体(IgM)応答が、ブタ肝臓による吸収及びDSGによる手術後抑制を含む調製養生法の構成要素により効果的に排除されたこと;及び2)この調製養生法のT細胞抑制用の構成要素(即ち、照射、シクロスポリン及びATG)は、これらの実験において、細胞性及び第二次(IgG)応答を防ぐことを要求されることを示す。
他の具体例
造血細胞移植例えばBMT前に導入した間質組織を、(1)胎児肝及び胸腺組織を細胞懸濁液として投与すること;(2)胎児肝又は胸腺間質組織の何れか一方のみを投与すること;(3)間質移植組織を他の被膜を有する十分血管化した部位内に置くこと;又は(4)成体胸腺又は胎児脾臓を間質組織源として使用することによって変えることが出来る。
同種抗原又は同種移植片に対する寛容を誘導し又は受容を促進するためのここに記載した方法は、ドナーとレシピエント間で移植片拒絶に影響するMHC遺伝子座又は他の遺伝子座に如何なる程度のミスマッチがある場合にも使用することが出来る。好ましくは、少なくとも1つのMHC遺伝子座又は認識及び拒絶を媒介する少なくとも1つの他の遺伝子座例えばマイナー抗原遺伝子座にミスマッチがある。クラスI及びクラスIIMHC遺伝子座に関して、ドナー及びレシピエントは、クラスIでマッチし且つクラスIIでミスマッチする;クラスIでミスマッチし且つクラスIIでマッチする;クラスIでミスマッチし且つクラスIIでミスマッチする;クラスIでマッチし且つクラスIIでマッチすることがあり得る。これらの組合せの何れにおいても、認識及び拒絶を制御する他の遺伝子座例えばマイナー抗原遺伝子座は、マッチし又はミスマッチし得る。上述のように、少なくとも一遺伝子座においてミスマッチであることが好ましい。MHCクラスIにおいてミスマッチとは、1つ以上のMHCクラスI遺伝子座についてミスマッチであることを意味し、例えばヒトの場合には、HLA−A、HLA−B若しくはHLA−Cの1つ以上におけるミスマッチ、又はブタの場合には、1つ以上のSLAクラスI遺伝子座例えばブタA若しくはB遺伝子座におけるミスマッチを意味する。MHCクラスIIにおいてミスマッチとは、1つ以上のMHCクラスII遺伝子座においてミスマッチであることを意味し、例えばヒトの場合には、DPα、DPβ、DQα、DQβ、DRα若しくはDRβの1つ以上においてミスマッチ、又はブタの場合には、1つ又はSLAクラスII遺伝子座におけるミスマッチ例えばDQα若しくはβ又はDRα若しくはβにおけるミスマッチを意味する。
同種抗原又は同種移植片に対する寛容を誘導するためのここに記載の方法は、ドナーとレシピエントの間に、混合リンパ球アッセイにおける如何なる程度の反応性がある場合(例えば、ドナーとレシピエントの間の混合リンパ球反応性がない場合、低い場合、中程度の場合又は高い場合)にも使用することが出来る。好適具体例において、混合リンパ球反応性を用いてクラスIIについてのミスマッチを規定し、この発明は、混合リンパ球アッセイにより規定した如何なる程度のミスマッチを有する個体間の同種移植をも実施する方法を含む。血清学的試験を用いてクラスI又はII遺伝子座におけるミスマッチを規定することが出来、この発明は、血清学的方法で測定してクラスI又はIIにおいて如何なる程度のミスマッチを有する個体間の同種移植をも実施する方法を含む。好適具体例において、この発明は、血清学的及び又は混合リンパ球反応性アッセイにより測定してクラスI及びクラスIIの両者においてミスマッチである個体間の同種移植を実施する方法を特徴とする。
この発明の方法は、新生物疾患、特に通常の様式の治療例えば化学療法又は放射線療法に耐性の疾患で苦しめられている組織又は器官を置き換えるのに特に有用である。この発明の方法を用いて、移植片例えば同種移植片例えば1つ以上のクラスI遺伝子座、1つ以上のクラスII遺伝子座、又は1つ以上のクラスI及びクラスIIの各遺伝子座でミスマッチのドナーからの同種移植片に対する寛容を誘導することが出来る。好適具体例において、移植片は、消化管由来の組織例えば胃由来の組織又は腸組織(例えば小腸、大腸若しくは結腸)を含み;移植片は、レシピエントの消化系の一部、例えば消化管例えば胃、腸(例えば、小腸、大腸、結腸)の全部又は部分を置き換える。
寛容とは、ここで用いる場合、抗原に対する完全な免疫学的寛容だけでなく、部分的な免疫学的寛容即ちこの発明の方法を用いなかったならば見られたであろうものより大きい程度の抗原に対するの寛容のことをもいう。
ここで論ずる場合、混合キメリズムの発生を促進するために、移植片レシピエントを照射にさらすことは、しばしば、望ましい。本発明者は、照射線量を分割することにより、即ち照射を2回以上の曝露又は期間にて加えることにより、照射毒性を一層減じて混合キメリズムを誘導することが可能であることを発見した。従って、異種移植片又は同種移植片のレシピエント、例えば霊長類レシピエント例えばヒトレシピエントの照射を要するこの発明の任意の方法において、照射を、単一曝露において加えることが出来、又は、一層好ましくは、2回以上の曝露若しくは期間に分割することが出来る。分割した線量の合計は、好ましくは、単一曝露で与えた場合に混合キメリズムを生じ得る照射線量(例えば、ラド又はGy)に等しい。これらの分割は、好ましくは、ほぼ等しい線量である。例えば、700ラドの単一照射線量を、例えば350ラドの2フラクション又は100ラドの7フラクションで置き換えることが出来る。照射線量の分割過多もこの発明の方法において用いることが出来る。これらの分割を同じ日に加え、又は1、2、3、4、5日若しくはそれより多い日数の間隔をおいて分割することが出来る。全身照射、胸腺照射、又はこれらの両方を分割することが出来る。
本発明者は又、調製養生法の多く又はすべてを、寛容化幹細胞及び/又は移植片の移植の数日以内に、好ましくは72、48若しくは24時間以内にレシピエント例えば同種移植片若しくは異種移植片レシピエントに加え又は施与することが出来ることをも発見した。これは、特に、死体からの移植片を受けるヒトの場合に有用である。従って、幹細胞及び/又は移植片の移植前の処理、例えば、宿主抗体を不活性化し若しくは涸渇させる処理、宿主T細胞若しくはNK細胞を不活性化する処理、又は照射を要するこの発明の任意の方法において、これらの処理を、幹細胞及び/又は移植片の移植の数日以内に、好ましくは72、48若しくは24時間以内に施与することが出来る。特に、同種移植片の霊長類例えばヒトレシピエントに、宿主抗体を不活性化し又は涸渇させる処理、宿主T細胞若しくはNK細胞を不活性化する処理、又は照射の何れか若しくはすべてを、幹細胞及び/又は移植片の移植の数日以内、好ましくは72、48若しくは24時間以内に与えることが出来る。例えば、レシピエントのT細胞及び/又はNK細胞を涸渇させる処理、例えばATGの投与を−2、−1及び0日目に与えることが出来、WBI、胸腺照射及び幹細胞(例えば、骨髄幹細胞)を0日目に施与することが出来る。(移植片例えば腎臓同種移植片を0日目に移植する)。
この発明の方法は、レシピエントの脾臓摘出を含むことが出来る。
ここで論ずるように、血液灌流例えばドナー器官を用いる血液灌流を用いて、宿主の天然抗体を涸渇させることが出来る。天然抗体を涸渇させるかさもなければ不活性化する他の方法は、ここに記載の任意の方法と共に用いることが出来る。例えば、天然抗体を涸渇させ又は不活性化する薬物例えばデオキシスペルグアリン(DSG)(Bristol )又は抗IgM抗体を同種移植片又は異種移植片のレシピエントに投与することが出来る。DSG(又は類似の薬物)、抗IgM抗体、及び血液灌流の1つ以上を用いて、この発明の方法において、レシピエントの天然抗体を涸渇させさもなければ不活性化することが出来る。濃度6mg/kg/日のDSGの静脈投与は、ブタからカニクイザルへの腎臓移植において天然抗体を抑制するのに有用であることが見出された。
ここに記載した方法の幾つかは、致死的照射を用いて造血空間を創り、それにより、同種、異種、同系、又は遺伝子操作した自己の幹細胞の投与に対するレシピエントの準備をする。ここに記載の方法、特に霊長類用又は臨床用の方法の何れにおいても、かかる細胞の投与のための造血空間を、非致死的方法、例えば準致死的照射線量、骨髄涸渇用薬物又は抗体を施与することによって創るのが好ましい。準致死的レベルの骨髄涸渇の利用は、レシピエントにおいて混合キメリズムの生成を与える。混合キメリズムは、一般に、レシピエント骨髄の全除去又は致死的除去及び、その後の投与された幹細胞でのレシピエントの完全再構成に好適である。
胸腺T細胞の不活性化のための別法も又、この発明の具体例に含まれる。ここに記載の方法の幾つかは、宿主胸腺T細胞を不活性化するか、さもなければ、宿主の胸腺T細胞媒介のドナー抗原に対する応答を減らす胸腺照射の施与を含む。この発明の同種又は異種移植方法において必要とされる胸腺照射を、宿主の胸腺T細胞媒介の応答を(例えば、胸腺T細胞を涸渇させ及び/又はT細胞レセプター(TCR)、CD4コレセプター若しくはCD8コレセプターの1つ以上を下方調節することにより)減じる他の治療で補い、又は置き換えることが出来ることが見出されている。例えば、胸腺照射を、宿主の胸腺T細胞媒介の応答を減少させるのに十分な回数、十分な投与量で、十分な期間投与される抗T細胞抗体(例えば、抗CD4及び/又は抗CD8モノクローナル抗体)で補い、又は置き換えることが出来る。
最良の結果を得るためには、抗T細胞抗体を、反復投与すべきである。例えば、抗T細胞抗体を、ドナー骨髄移植前に1、2、3回又はそれより多数回投与することが出来る。典型的には、抗体の骨髄移植前投与を、骨髄移植の約5日前に患者に与える。更に、骨髄移植の6、7又は8日前の投与を与えることも出来る。最初に治療を施し、次いで、患者が血清中の過剰の抗体及び末梢T細胞の約99%涸渇を示すまで予備骨髄投与を1〜5日毎に反復し、次いで、骨髄移植を行うのが望ましい。抗T細胞抗体を、ドナー骨髄移植後にも、1、2、3回又はそれより多数回投与することが出来る。典型的には、骨髄移植後治療を、骨髄移植後約2〜14日に与える。骨髄後施与を、必要な回数だけ反復することが出来る。2回以上の施与を与える場合は、これらの施与を約1週間間隔にすることが出来る。もし患者が早期の又は望ましくないT細胞回復を受けるようならば、更なる投与を与えることが出来る。好ましくは、抗T細胞抗体を、ドナー骨髄移植前に、少なくとも1回(好ましくは、2、3回又はそれより多数回)投与し、ドナー骨髄移植後に、少なくとも1回(好ましくは、2、3回又はそれより多数回)投与する。
下記の実験は、更なるT細胞涸渇用抗体が、骨髄を除去しない条件の養生法において胸腺照射に置き換って、同種骨髄の植付け及びドナー特異的な寛容の誘導を与え得ることを示す。
マウスにおいて、同種骨髄植付け及びドナー特異的寛容の誘導を与える、低毒性の、骨髄除去しない条件の養生法が、以前に記載されている。涸渇投与量の抗CD4及び抗CD8モノクローナル抗体による−5日目の予備治療、0日目の3Gyの全身照射及び7Gyの胸腺照射の施与及びその後の完全にMHCミスマッチのドナー骨髄細胞の投与を含む養生法は、永久的混合キメリズム及び皮膚移植片寛容の誘導を与える。このプロトコールにおける胸腺照射ステップは、更なる抗CD4及び抗CD8モノクローナル抗体治療で置き換えることが出来る。多系統キメリズムを、0日目に同種(B10.A、H−2a )骨髄移植を受けその後3Gyの全身照射を胸腺照射を伴って又は伴わないで受け、及び骨髄移植前及び後の様々なスケジュールでモノクローナル抗体による治療を受けたB10(H−2b )マウスにおいて比較した。胸腺照射を受けるか又は骨髄移植前のモノクローナル抗体治療を少なくとも2回受けた殆どの動物(52匹中の50匹)は、長期多系統末梢血液混合同種キメリズムを示した(フローサイトメトリー分析による)。対照的に、骨髄移植前のモノクローナル抗体治療を胸腺照射を伴わずに1回だけ受けた8匹の動物の内1匹だけが、継続する(20週より長期)混合キメリズムを発生した。すべてのキメラ動物は、100日より長期間にわたってドナー皮膚移植片を受容し、第三者のBALB/c移植片を14日以内に拒絶した。それ故、混合キメリズム及びドナー特異的皮膚移植片受容は、骨髄移植前モノクローナル抗体治療を少なくとも2回行なうならば、胸腺照射を用いることなく誘導することが出来る。(モノクローナル抗体治療は、約5日間隔で、最終治療は、骨髄移植の1日前であった。)しかしながら、ドナーT細胞再構成のレベルは、骨髄移植後に胸腺照射を受けるか又は更なる抗T細胞モノクローナル抗体治療を受けた動物において最高であった。2回の骨髄移植前モノクローナル抗体治療(モノクローナル抗体治療は、約5日間隔とし、最終治療は骨髄移植の1日前であった)を受け且つ胸腺照射を受けてない20匹のマウスの内11匹は、6週目において、比較的低レベルのドナーT細胞再構成(20%未満のドナーで、80%を超える宿主)を示し、これらの内の9匹は、20週目までに、全系統中のドナー細胞の顕著な消失を示した。対照的に、1又は2回の骨髄移植後モノクローナル抗体治療(モノクローナル抗体治療は、約7日間隔とし、最初の治療は骨髄移植後7日目であった)を受けた同様に治療した12匹のマウスの内12匹は、6週目に、高レベルのドナーT細胞再構成(平均86±12%のドナー)を示し及び、20週目に、全系統中で存続する高レベルのドナー再構成を示した。従って、骨髄移植前T細胞涸渇用モノクローナル抗体の第2投与は、胸腺照射に置き換わり且つ我々の養生法における寛容誘導を与えることが出来るが、骨髄移植の1〜2週後に投与する更なるモノクローナル抗体は、永続的な混合キメリズム及び寛容を確実に誘導する能力を増大させることが出来る。反復抗T細胞モノクローナル抗体治療がこの養生法における胸腺照射に置き換わる能力が、最初のモノクローナル抗体治療による涸渇を逃れた宿主胸腺細胞を涸渇させるそれらの能力を反映することは最もありそうである。これらのモノクローナル抗体は、殆どの宿主T細胞を涸渇させ、少数の残存細胞上のTCR並びにCD4及びCD8コレセプターの両者の下方調節を誘導する。これらの動物において、ドナー骨髄由来細胞の宿主胸腺への早期移動は、ドナー抗原を認識するTCRを有する成熟宿主型胸腺細胞の完全なクローン涸渇と関連している。かかるTCRを有する宿主T細胞の小集団がキメラ脾臓中に存続しても、これらの細胞は、それらのTCRによる刺激に対してアネルギーである。これらの細胞は、モノクローナル抗体治療後にCD4又はCD8を下方調節することにより涸渇を逃れることが出来たのであろう。従って、この比較的非毒性の養生法は、存在するT細胞レパトアの殆どを除去し、胸腺内ドナー抗原の存在下で新たなT細胞を発生させ、及び末梢における少数の残存宿主T細胞間でアネルギーを誘導することによって多能性造血幹細胞植付け及び特異的寛容を達成する。
GS4.5レトロウイルス構築物の図解である。 GS4.5プロウイルスゲノム及び予想される転写物の図解である。 3a及び3bは、形質導入細胞のフローサイトメトリープロフィルの表示である。 形質導入アッセイの図解である。 C57BL/10、B10.AKM及びB10.MBR株の遺伝地図の図解である。 形質導入した骨髄のレシピエントからの脾臓細胞のFACSプロフィルの図解である。 7a及び7bは、皮膚移植実験における生存対時間のグラフである。 8a〜dは、移植片拒絶者及び対照からの胸腺細胞のFACS分析の図解である。 N2−B19−H2bベクターの図解である。

Claims (18)

  1. レシピエント霊長類に、ドナー霊長類からの同種移植片に対する寛容を誘発させる方法にして、
    前記レシピエントに前記同種移植片を移植し、そして
    該レシピエントに補助減縮治療の短期コースを施して前記同種移植片に対する寛容を誘発させることを含む方法。
  2. 補助減縮治療の短期コースは、同種移植片がレシピエントに導入されるほぼ同じ時に概ね施される、請求項1の方法。
  3. レシピエントが、移植片拒絶に影響する第1の遺伝子座でミスマッチし、且つ移植片拒絶に影響する第2の遺伝子座でマッチし或はミスマッチに寛容である、請求項1の方法。
  4. 補助減縮治療の短期コースの持続は、レシピエント種の成熟T細胞が最初に抗原で刺激された後該抗原の拒絶を開始するのに必要とされる期間にほぼ等しいかそれより短い、請求項1の方法。
  5. 補助減縮治療の短期コースは、レシピエントの成熟T細胞によるサイトカインの放出を刺激する処置を行わずに施される、請求項1の方法。
  6. 補助減縮治療の短期コースがプレドニゾンの不存在で施される、請求項1の方法。
  7. 補助減縮剤がシクロスポリンAよりなる、請求項1の方法。
  8. 第1の種のレシピエント哺乳動物に、第2の種の哺乳動物からの移植片に対する寛容を誘発させる方法にして、
    前記第2の種のMHC抗原をコードするDNAを前記レシピエント哺乳動物の造血幹細胞に挿入し、
    前記MHC抗原をコードするDNAを前記レシピエントに発現させ、
    前記移植片を該レシピエントに移植し、そして
    該レシピエントに補助減縮治療の短期コースを施して前記移植片に対する寛容を誘発させることを含む方法。
  9. レシピエント霊長類に、同じ種のドナーから得られる移植片に対する寛容を誘発させる方法にして、
    前記ドナーのMHC抗原をコードするDNAを前記レシピエントの造血幹細胞に挿入し、
    前記MHC抗原をコードするDNAを前記レシピエントに発現させ、
    前記移植片を該レシピエントに移植し、そして
    該レシピエントに補助減縮治療の短期コースを施して前記移植片に対する寛容を誘発させることを含む方法。
  10. 第1の種のレシピエント哺乳動物に、第2の種の哺乳動物から得られる移植片に対する寛容を誘発させる方法にして、
    前記レシピエント哺乳動物に第2の種の造血幹細胞を導入し、
    前記移植片を前記レシピエントに移植し、そして
    該レシピエントに補助減縮治療の短期コースを施して前記移植片に対する寛容を誘発させることを含む方法。
  11. レシピエント哺乳動物に、同じ種のドナー哺乳動物から得られる移植片に対する寛容を誘発させる方法にして、
    前記レシピエント哺乳動物に前記ドナーの造血幹細胞を導入し、
    前記移植片を前記レシピエントに移植し、そして
    該レシピエントに補助減縮治療の短期コースを施して前記移植片に対する寛容を誘発させることを含む方法。
  12. ドナー哺乳動物から移植片を受けるレシピエント哺乳動物の胸腺ないしリンパ節T細胞の活性を減少または抑制する方法にして、
    前記移植片に対する寛容を誘発させ、
    前記レシピエントに、胸腺ないしリンパ節T細胞を不活性化するのに十分な短期コースの免疫抑制剤を施し、そして
    前記移植片を前記レシピエンスに移植することを含む方法。
  13. 短期コースの免疫抑制剤の持続がほぼ30日に等しい、請求項12の方法。
  14. 短期コースは、寛容を誘発させる治療が始まる前か或はほぼ同じ時に開始される、請求項12の方法。
  15. 第1の種のレシピエント哺乳動物で、第2の種のドナー哺乳動物からの移植片の受容を促進させる方法にして、
    前記第2の種のMHC抗原をコードするDNAを前記レシピエント哺乳動物の造血幹細胞に挿入し、
    前記MHC抗原をコードするDNAを前記レシピエントに発現させ、
    前記移植片を前記レシピエントに移植し、そして
    該レシピエントに、その胸腺ないしリンパ節T細胞を不活性化するのに十分な免疫抑制剤の短期コースを施すことを含む方法。
  16. レシピエント哺乳動物で、同じ種のドナーから得られる移植片の受容を促進させる方法にして、
    前記ドナーのMHC抗原をコードするDNAを前記レシピエントの造血幹細胞に挿入し、
    前記MHC抗原をコードするDNAを前記レシピエントに発現させ、そして
    該レシピエントに、その胸腺ないしリンパ節T細胞を不活性化するのに十分な免疫抑制剤の短期コースを施すことを含む方法。
  17. 第1の種のレシピエント哺乳動物で、第2の種の哺乳動物から得られる移植片の受容を促進させる方法にして、
    前記レシピエンス哺乳動物に第2の種の造血幹細胞を導入し、そして
    該レシピエントに、その胸腺ないしリンパ節T細胞を不活性化するのに十分な免疫抑制剤の短期コースを施すことを含む方法。
  18. レシピエント哺乳動物で、同じ種のドナーから得られる移植片の受容を促進させる方法にして、
    前記レシピエントに前記ドナーの造血幹細胞を導入し、そして
    該レシピエントに、その胸腺ないしリンパ節T細胞を不活性化するのに十分な免疫抑制剤の短期コースを施すことを含む方法。
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