JP2006306170A - ハイブリッド車の駆動制御装置および駆動制御方法 - Google Patents

ハイブリッド車の駆動制御装置および駆動制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 油圧締結要素の締結時、締結油圧を安定して供給でき、ショックの発生を防止できるハイブリッド車の駆動制御装置および駆動制御方法を提供する。
【解決手段】 締結開始条件成立時からエンジンクラッチECの締結制御開始までの遅延時間ΔTmoveを、モータのモータ室内ATF量が多いほど長く設定する遅延時間設定手段(ステップS2)を備え、締結圧制御手段(ステップS4)は、遅延時間ΔTmove経過後、エンジンクラッチECの締結制御を開始する。
【選択図】 図6

Description

本発明は、モータポンプを備えたハイブリッド車の駆動制御装置に関する。
従来のハイブリッド車では、モータ室に油溜まりを設け、この油溜まりにモータポンプから供給される自動変速機油を貯留してステータ、ロータを冷却し、モータの発熱を抑制している。油溜まりに貯留された自動変速機油は、モータ回転によりモータ室外部へと排出される(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−262275号公報
しかしながら、上記従来技術にあっては、モータ停止後もモータポンプは所定時間作動しているため、モータ室からの自動変速機油の排出が停止してモータ室残留油量が増加し、自動変速機油の油量収支が厳しくなる。この状態で油圧締結要素を締結した場合、油圧締結要素へ安定した締結油圧が供給されず、ショックが発生するという問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、油圧締結要素の締結時、締結油圧を安定して供給でき、ショックの発生を防止できるハイブリッド車の駆動制御装置および駆動制御方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車の駆動制御方法では、
駆動力発生源としてエンジンとモータを有し、油圧締結要素を備えた駆動力合成変速機と、前記モータと駆動力合成変速機に自動変速機油を供給するモータポンプと、所定の締結開始条件成立により、前記油圧締結要素の締結制御を開始する締結圧制御手段と、を備えたハイブリッド車において、
前記締結開始条件成立時から前記油圧締結要素の締結制御開始までの遅延時間を、前記モータのモータ室残留油量が多いほど長く設定する遅延時間設定手段を備え、
前記締結圧制御手段は、前記遅延時間経過後、前記油圧締結要素の締結制御を開始することを特徴とする。
よって、本発明にあっては、油圧締結要素の締結開始制御を遅延させている間、モータの回転を用いてモータ室残留油量を低減できるため、自動変速機油の油量収支が安定した状態で、油圧締結要素の締結制御を開始でき、ショックの発生を防止できる。
以下、本発明のハイブリッド車の駆動制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
[ハイブリッド車の駆動系構成]
図1は、実施例1のハイブリッド車の駆動系を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、エンジンEと、第1モータジェネレータMG1(モータ)と、第2モータジェネレータMG2(モータ)と、出力ギヤOGと、駆動力合成変速機TMと、を有する。
エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの目標エンジントルク指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。
第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータである。この同期型モータジェネレータは、インナーロータIRとステータSとアウターロータORとを径方向に重ね合わせた多層モータCMのうち、アウターロータORとステータSとで第1モータジェネレータMG1を構成し、アウターロータORとステータSとで第2モータジェネレータMG2を構成する。このインナーロータIRとアウターロータORとは、ステータSに対し、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することによりそれぞれ独立に制御される。
駆動力合成変速機TMは、ラビニョウ型遊星歯車列PGRと、ローブレーキLBと、を有し、ラビニョウ型遊星歯車列PGRは、第1サンギヤS1と、第1ピニオンP1と、第1リングギヤR1と、第2サンギヤS2と、第2ピニオンP2と、第2リングギヤR2と、互いに噛み合う第1ピニオンP1と第2ピニオンP2とを支持する共通キャリアPCと、によって構成されている。つまり、ラビニョウ型遊星歯車PGRは、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、共通キャリアPCと、の5つの回転要素を有する。この5つの回転要素に対する入出力部材の連結関係について説明する。
第1サンギヤS1には、第1モータジェネレータMG1が連結されている。第1リングギヤR1は、ローブレーキLBを介して変速機ケースTCに固定可能に設けられている。第2サンギヤS2には、第2モータジェネレータMG2が連結されている。第2リングギヤR2には、エンジンクラッチ(油圧締結要素)ECを介してエンジンEが連結されている。共通キャリアPCには、出力ギヤOGが直結されている。
図2は、実施例1の駆動系の構成図である。なお、図2のラビニョウ型遊星歯車列PGRは、図1に対してエンジンクラッチECとローブレーキLBの連結位置が異なるが、作用は等価である。図2に示すように、出力ギヤOGには第1カウンターギヤCG1が噛み合い、カウンターシャフトCSを介して設けられた第2カウンターギヤCG2がドライブギヤDGと噛み合い、ディファレンシャルギヤユニットDGUから図外のドライブシャフトを介して左右の駆動輪に駆動力が伝達される。
上記連結関係により、図3に示す共線図上において、第1モータジェネレータMG1(第1サンギヤS1)、エンジンE(第2リングギヤR2)、出力ギアOG(共通キャリアPC)、ローブレーキLB(第1リングギヤR1)、第2モータジェネレータMG2(第2サンギヤS2)の順に配列され、ラビニョウ型遊星歯車列PGRの動的な動作を簡易的に表せる剛体レバーモデルを導入することができる。
ここで、「共線図」とは、差動歯車のギヤ比を考える場合、式により求める方法に代え、より簡単で分かりやすい作図により求める方法で用いられる速度線図であり、縦軸に各回転要素の回転数(回転速度)をとり、横軸に各回転要素をとり、各回転要素の間隔をサンギヤとリングギヤの歯数比に基づく共線図レバー比になるように配置したものである。
エンジンクラッチECとローブレーキLBは、後述する油圧制御装置5からのクラッチ・ブレーキ油圧により締結される多板摩擦クラッチと多板摩擦ブレーキであり、エンジンクラッチECは、図3の共線図上において、エンジンEと共に第2リングギヤR2の回転速度軸と一致する位置に配置され、ローブレーキLBは、図3の共線図上において、第1リングギヤR1の回転速度軸(出力ギヤOGの回転速度軸と第2サンギヤS2の回転速度軸との間の位置)に配置される。
モータポンプMPは、統合コントローラ6からの指令によりエンジンEおよび駆動力合成変速機TMと独立に駆動し、オイルパン17に貯留された自動変速機油(ATF)を所定圧まで上昇させ、油圧制御装置5へ供給する。ATFは、クラッチ・ブレーキ油圧としてエンジンクラッチECおよびローブレーキLBの締結動作に使用され、残りは、ラビニョウ型遊星歯車列PGRおよびモータジェネレータMG1,MG2の潤滑・冷却油として用いられる。
図2に示すように、ATFは、モータジェネレータMG1,MG2およびラビニョウ型遊星歯車列PGRの共通回転軸18から、図外の軸心油路を介してモータジェネレータMG1,MG2およびラビニョウ型遊星歯車列PGRに供給される。モータジェネレータMG1,MG2に供給されたATFは、変速機ケースTCのモータ室19に設けられた油溜まり20に貯留され、モータジェネレータMG1,MG2の回転に応じて変速機ケースTCからオイルパン17へと排出される。
[ハイブリッド車の制御系構成]
実施例1におけるハイブリッド車の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、油圧制御装置5と、統合コントローラ6と、アクセル開度センサ7と、車速センサ8と、エンジン回転数センサ9と、第1モータジェネレータ回転数センサ10と、第2モータジェネレータ回転数センサ11と、第2リングギヤ回転数センサ12と、ポンプモータ回転数センサ13と、ATF温度センサ(油温検出手段)16と、を有して構成されている。
エンジンコントローラ1は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APとエンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neを入力する統合コントローラ6からの目標エンジントルク指令に応じ、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。
モータコントローラ2は、レゾルバによる両モータジェネレータ回転数センサ10,11からのモータジェネレータ回転数N1,N2を入力する統合コントローラ6からの目標モータジェネレータトルク指令に応じ、第1モータジェネレータMG1のモータ動作点(N1,T1)と、第2モータジェネレータMG2のモータ動作点(N2,T2)と、をそれぞれ独立に制御する指令(デバイス制御信号)をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2からは、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリS.O.Cの情報が統合コントローラ6に対して出力される。
インバータ3は、第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2との各ステータコイルに接続され、モータコントローラ2からの指令により独立した三相交流を作り出す。このインバータ3には、力行時に放電し回生時に充電するバッテリ4が接続されている。
油圧制御装置5は、統合コントローラ6からの油圧指令を受け、エンジンクラッチECと、ローブレーキLBと、の締結油圧制御および解放油圧制御を行う。この締結油圧制御および解放油圧制御には、滑り締結制御や滑り解放制御による半クラッチ制御も含む。
統合コントローラ6は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APと、車速センサ8からの車速VSPと、エンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neと、第1モータジェネレータ回転数センサ10からの第1モータジェネレータ回転数N1と、第2モータジェネレータ回転数センサ11からの第2モータジェネレータ回転数N2と、第2リングギヤ回転数センサ12からのエンジン入力回転速度ωiと、ポンプモータ回転数センサ13からのポンプモータ回転数Npと、ATF温度センサ16からのATF温度Tatf等の情報を入力し、所定の演算処理を行う。そして、エンジンコントローラ1、モータコントローラ2、油圧制御装置5に対し演算処理結果にしたがって制御指令を出力する。
また、統合コントローラ6は、エンジン始動時、モータジェネレータ回転数N1,N2と、ポンプモータ回転数Npの履歴に基づいて、モータジェネレータMG1,MG2の回転開始からエンジンクラッチECの締結開始までの時間を遅延させる。
なお、統合コントローラ6とエンジンコントローラ1、および統合コントローラ6とモータコントローラ2とは、情報交換のためにそれぞれ双方向通信線14,15により接続されている。
[ハイブリッド車の走行モード]
実施例1のハイブリッド車における走行モードとしては、電気自動車無段変速モード(以下、「EVモード」という。)と、電気自動車固定変速モード(以下、「EV-LBモード」という。)と、ハイブリッド車固定変速モード(以下、「LBモード」という。)と、ハイブリッド車無段変速モード(以下、「E-iVTモード」という。)と、を有する。なお、「EVモード」と「EV-LBモード」とが「電気自動車走行モード」であり、「LBモード」と「E-iVTモード」が「ハイブリッド車走行モード」である。
「EVモード」は、図3(a)の共線図に示すように、2つのモータジェネレータMG1.MG2のみで走行する無段変速モードであり、エンジンEは駆動(最低域回転数制御)でエンジンクラッチECは解放である。
「EV-LBモード」は、図3(b)の共線図に示すように、ローブレーキLBを締結した状態で、2つのモータジェネレータMG1,MG2のみで走行する固定変速モードであり、エンジンEは駆動(最低域回転数制御)でエンジンクラッチECは解放である。第1モータジェネレータMG1から出力Outputへの減速比、および、第2モータジェネレータMG2から出力Outputへの減速比が大きいので駆動力が大きく出るモードである。
「LBモード」は、図3(c)の共線図に示すように、ローブレーキLBを締結した状態で、エンジンEとモータジェネレータMG1,MG2で走行する固定変速モードであり、エンジンEは運転でエンジンクラッチECは締結である。エンジンEとモータジェネレータMG1,MG2から出力Outputへの減速比が大きいので駆動力が大きく出るモードである。
「E-iVTモード」は、図3(d)の共線図に示すように、エンジンEとモータジェネレータMG1,MG2で走行する無段変速モードであり、エンジンEは運転でエンジンクラッチECは締結である。
そして、4つの走行モードのモード切り替え制御は、統合コントローラ6により行われる。すなわち、統合コントローラ6には、要求駆動力Fdrv(アクセル開度APにより求められる。)と車速VSPとバッテリS.O.Cによる三次元空間に、4つの走行モードを割り振った走行モードマップが予め設定されていて(図4)、車両の停止時や走行時には、要求駆動力Fdrvと車速VSPとバッテリS.O.Cの各検知値により走行モードマップが検索され、要求駆動力Fdrvと車速VSPにより決まる車両動作点やバッテリ充電量に応じて最適な走行モードが選択される。なお、図4は三次元走行モードマップをバッテリS.O.Cが充分な容量域のある値で切り取ることにより、要求駆動力Fdrvと車速VSPとの二次元によりあらわした走行モードマップの一例である。
走行モードマップの選択により、「EVモード」と「EV-LBモード」との間においてモード遷移を行う場合、図5に示すように、ローブレーキLBの締結・解放が行われる。「E-iVTモード」と「LBモード」との間においてモード遷移を行う場合、図5に示すように、ローブレーキLBの締結・解放が行われる。また、「EVモード」と「E-iVTモード」との間においてモード遷移を行う場合、図5に示すように、エンジンクラッチECの締結・解放が行われる。「EV-LBモード」と「LBモード」との間においてモード遷移を行う場合、図5に示すように、エンジンクラッチECの締結・解放が行われる。
次に、作用を説明する。
[エンジン始動制御処理]
図6は、実施例1の統合コントローラ6で実行されるエンジン始動制御処理の流れを示すフローチャートで、この処理は、エンジン始動要求がなされたときに実行される。以下、ステップ毎の処理を説明する。
ステップS1では、第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2が共に停止してからモータポンプMPが停止するまでの時間差ΔTstoreを算出し、ステップS2へ移行する。
ステップS2では、ステップS1で算出した時間差ΔTstoreと、ΔTstore−ΔTmoveマップに基づき、遅延時間ΔTmoveを決定し、ステップS3へ移行する(遅延時間設定手段に相当)。図7は、ΔTstore−ΔTmoveマップの一例であり、時間差ΔTstoreが多いほど、遅延時間ΔTmoveを大きくし、さらに、モータ室19の油溜まり20に貯留されるATF量には上限があるため、遅延時間ΔTmoveには上限値ΔTmove_maxを設定している。
また、実施例1では、ATF温度センサ16からのATF温度Tatfに応じて、遅延時間ΔTmoveを設定する。図8に示すように、ATF温度Tatfが低いほど、遅延時間ΔTmoveを大きな値とし、ATF温度Tatfが高いほど、遅延時間ΔTmoveを小さな値とする。
ステップS3では、エンジン始動要求後の第1モータジェネレータMG1または第2モータジェネレータのモータ回転時間TsmotがステップS2で決定した遅延時間ΔTmoveよりも大きいか否かを判定する。YESの場合にはステップS4へ移行し、NOの場合にはステップS3を繰り返す。ここで、モータ回転時間Tsmotにおけるモータ回転数は、モータ停止前のモータ回転数N1,N2とポンプ回転数Npに応じた所定回転数とする(モータ室残留油量吐出制御手段に相当)。
ステップS4では、エンジンクラッチECの締結シーケンスを開始する指令を、油圧制御装置5へ出力し、リターンへ移行する(締結圧制御手段に相当)。
[モータ室へのATF残留]
従来のハイブリッド車では、モータ室に油溜まりを設け、この油溜まりにモータポンプから供給されるATFを貯留してモータのステータおよびロータを冷却しているが、ロータ停止後もモータ冷却のためにモータポンプを作動させる必要があり、この間にモータ室にATFが残留する。したがって、ATF総量に占めるモータ室ATF量(モータ室残留油量)の割合が大きくなるため、ポンプ発生圧の安定性が低下する。
この状態でエンジン始動要求がなされたとき、エンジン回転数を引き上げるべくエンジンクラッチの締結を開始すると、油圧の安定性が低いことからエンジン回転数の引き上げに起因するショックが発生してしまう。一方、システムのATF総量を増やして締結油圧不足を解消する方法も考えられるが、ATF総量を増やした場合には、ギヤ系のATF攪拌抵抗が増大するため、走行性能に影響を及ぼす。
[エンジンクラッチ締結圧補償制御作用]
これに対し、実施例1では、ATFをモータ室19に溜めてしまうモータポンプ回転数Npの履歴とモータ室19からATFの吐出作用のあるモータ回転数N1,N2の履歴に応じてATF吐出時間ΔTsmotの設定を行う。すなわち、モータが停止しても、モータポンプMPがラビニョウ型遊星歯車列PGRの各ギヤとモータジェネレータMG1,MG2のステータSおよびロータIR,ORの冷却のために作動している。この時間差ΔTstoreを履歴として用い、次回エンジン始動要求が発生したときに利用する。時間差TstoreからATF吐出のための遅延時間ΔTmoveをマップより設定し、エンジン始動要求が発生した場合には、モータ回転時間Tsmotが遅延時間ΔTmoveを超えるまでモータを回転させ、モータ室19からATFを吐出後、エンジンクラッチECの締結シーケンスを開始する。
[ATF温度に応じた遅延時間ΔTmove設定作用]
また、実施例1では、ATF温度が低いほど遅延時間ΔTmoveを大きくする。すなわち、ATF粘度が高いほどATF吐出時間を長くすることで、ATF粘度にかかわらず、油圧制御の安定性を向上できる。
[遅延時間ΔTmoveの上限値設定作用]
実施例1では、遅延時間ΔTmoveに上限値ΔTmove_maxを設定した。すなわち、モータ室ATF量には上限があるため、遅延時間ΔTmoveに上限値ΔTmove_maxを設けることで、過大な遅延時間の設定によりエンジン始動が大幅に遅れるのを回避できる。
[タイムチャート]
実施例1のエンジンクラッチ締結圧補償制御作用を、図9のタイムチャートに基づいて説明する。
時点t1では、モータジェネレータMG1,MG2が共に停止する。
時点t1〜t2の期間では、モータポンプMPがラビニョウ型遊星歯車列PGRの各ギヤとモータジェネレータMG1,MG2のステータSおよびロータIR,ORの冷却のために作動するため、モータ室内ATF量は増加する。
時点t2では、モータポンプMPが停止する。このとき、モータ室内ATF量は、モータポンプMPがエンジンクラッチECやローブレーキLBに安定して油圧を供給可能なポンプ圧安定限界量を超えた量となる。
時点t3では、エンジン始動要求がなされるが、モータ回転時間Tsmotは遅延時間ΔTmoveに到達していないため、エンジンクラッチECの締結シーケンスは開始されない。このとき、モータジェネレータMG1,MG2の少なくとも一方とモータポンプMPは回転を開始する。
時点t3〜t4の期間では、モータジェネレータMG1またはモータジェネレータMG2の回転に伴い、モータ室内からATFが吐出され、モータ室内ATF量が減少する。
時点t4では、時点t2からのモータ回転時間Tsmotが遅延時間ΔTmoveを超えたため、エンジンクラッチECの締結シーケンスが開始される。このとき、モータ室内ATF量は、ポンプ圧安定限界量よりも少ないため、エンジンクラッチECへ安定した締結油圧を供給でき、エンジン回転数の引き上げに起因してショックが発生することは無い。
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車の駆動制御装置および駆動制御方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 締結開始条件成立時から油圧締結要素(エンジンクラッチEC)の締結制御開始までの遅延時間ΔTmoveを、モータのモータ室内ATF量が多いほど長く設定する遅延時間設定手段(ステップS2)を備え、締結圧制御手段(ステップS4)は、遅延時間ΔTmove経過後、油圧締結要素の締結制御を開始する。よって、ATFの油量収支が安定した状態で、油圧締結要素の締結制御を開始でき、ショックの発生を防止できる。
(2) 遅延時間設定手段は、モータ回転数N1,N2とポンプモータ回転数Npの履歴に基づいて、遅延時間ΔTmoveを設定するため、モータ室内ATF量を監視することなくモータ室内ATF量に応じた遅延時間ΔTmoveを設定できる。
(3) 締結開始条件成立時から遅延時間ΔTmoveが経過するまで、モータを回転させるモータ室残留油量吐出制御手段(ステップS3)を備えるため、ATFの油量収支を確実に安定させた状態で、油圧締結要素の締結制御を開始できる。
(4) モータ室残留油量吐出制御手段は、モータ回転数N1,N2とポンプモータ回転数Npの履歴に基づいて、モータ回転数を設定するため、モータ室内ATF量を監視することなく油圧締結要素の油圧制御を開始できる。
(5) 遅延時間設定手段は、遅延時間ΔTmoveに上限値ΔTmove_maxを設定するため、過大な遅延時間の設定により油圧締結要素の締結制御が大幅に遅れるのを回避できる。
(6) ATFの温度を検出するATF温度センサ16を備え、遅延時間設定手段は、ATFの温度が低いほど、遅延時間ΔTmoveを長く設定するため、ATF粘度にかかわらず、油圧制御の安定性を向上できる。
(7) モータを、インナーロータIRとステータSとアウターロータORとを径方向に重ね合わせ、アウターロータORとステータSとで第1モータジェネレータMG1を構成し、インナーロータIRとステータSとで第2モータジェネレータMG2を構成する多層モータとした。すなわち、一対のロータとステータで構成される単層モータに対して発熱量の大きな多層モータを用いたハイブリッド車では、単層モータを用いたものと比較してモータ停止後の油圧収支がより厳しくなる。よって、多層モータを用いたハイブリッド車に実施例1の制御を適用することで、ポンプ発生圧の安定性を向上させることができる。
(8) 油圧締結要素を、エンジンEとモータとを連結するエンジンクラッチECとし、締結圧制御手段は、エンジン始動要求が発生したとき、エンジンクラッチECの締結制御を開始するため、エンジンクラッチECのエンジン回転数引き上げに起因するショックの発生を防止できる。
(他の実施例)
以上、本発明のハイブリッド車の駆動制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、各実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、2つのモータジェネレータを用いたハイブリッド車について説明したが、本発明は、駆動力源としてエンジンと1つ以上のモータを有するハイブリッド車に適用できる。
また、実施例1では、駆動力合成変速機としてラビニョウ型遊星歯車列を有する例を示したが、例えば、複数の単純遊星歯車列を備えた差動装置等を有する駆動力合成変速機にも適用できる。
実施例1のハイブリッド車を示す全体システム図である。 実施例1の駆動系の構成を示す図である。 実施例1のハイブリッド車に適用されたラビニョウ型遊星歯車列による各走行モードをあらわす共線図である。 実施例1のハイブリッド車での走行モードマップの一例を示す図である。 実施例1のハイブリッド車での4つの走行モード間におけるモード遷移経路を示す図である。 実施例1の統合コントローラ6で実行されるエンジン始動制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1のΔTstore−ΔTmoveマップの一例である。 実施例1のATF温度に応じたΔTstore−ΔTmoveマップの一例である。 実施例1のエンジンクラッチ締結圧補償制御作用を示すタイムチャートである。
符号の説明
E エンジン
MG1 第1モータジェネレータ
MG2 第2モータジェネレータ
OG 出力ギヤ
TM 駆動力合成変速機
PGR ラビニョウ型遊星歯車列
EC エンジンクラッチ
LB ローブレーキ
TC 変速機ケース
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 油圧制御装置
6 統合コントローラ
6a 目標回転数演算部
6b トルク指令値設定部
7 アクセル開度センサ
8 車速センサ
9 エンジン回転数センサ
10 第1モータジェネレータ回転数センサ
11 第2モータジェネレータ回転数センサ
12 第2リングギヤ回転数センサ
13 ポンプモータ回転数センサ
16 ATF温度センサ
17 オイルパン
18 共通回転軸
19 モータ室
20 油溜まり

Claims (9)

  1. 駆動力発生源としてエンジンとモータを有し、油圧締結要素を備えた駆動力合成変速機と、前記モータと駆動力合成変速機に自動変速機油を供給するモータポンプと、所定の締結開始条件成立により、前記油圧締結要素の締結制御を開始する締結圧制御手段と、を備えたハイブリッド車において、
    前記締結開始条件成立時から前記油圧締結要素の締結制御開始までの遅延時間を、前記モータのモータ室残留油量が多いほど長く設定する遅延時間設定手段を備え、
    前記締結圧制御手段は、前記遅延時間経過後、前記油圧締結要素の締結制御を開始することを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。
  2. 請求項1に記載のハイブリッド車の駆動制御装置において、
    前記遅延時間設定手段は、モータ回転数とポンプモータ回転数の履歴に基づいて、前記遅延時間を設定することを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車の駆動制御装置において、
    前記締結開始条件成立時から前記遅延時間が経過するまで、前記モータを回転させるモータ室残留油量吐出制御手段を備えることを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。
  4. 請求項3に記載のハイブリッド車の駆動制御装置において、
    前記モータ室残留油量吐出制御手段は、モータ回転数とポンプモータ回転数の履歴に基づいて、モータ回転数を設定することを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のハイブリッド車の駆動制御装置において、
    前記遅延時間設定手段は、前記遅延時間に上限値を設定することを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のハイブリッド車の駆動制御装置において、
    前記自動変速機油の温度を検出する油温検出手段を備え、
    前記遅延時間設定手段は、前記自動変速機油の温度が低いほど、前記遅延時間を長く設定することを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のハイブリッド車の駆動制御装置において、
    前記モータを、インナーロータとステータとアウターロータとを径方向に重ね合わせ、アウターロータとステータとで第1モータを構成し、インナーロータとステータとで第2モータを構成する多層モータとしたことを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のハイブリッド車の駆動制御装置において、
    前記油圧締結要素を、前記エンジンとモータとを連結するエンジンクラッチとし、
    前記締結圧制御手段は、エンジン始動要求が発生したとき、前記エンジンクラッチの締結制御を開始することを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。
  9. 駆動力発生源としてエンジンとモータを有し、油圧締結要素を備えた駆動力合成変速機と、前記モータと駆動力合成変速機に自動変速機油を供給するモータポンプと、所定の締結開始条件成立により、前記油圧締結要素の締結制御を開始する締結圧制御手段と、を備えたハイブリッド車において、
    前記締結開始条件成立時から前記油圧締結要素の締結制御開始までの遅延時間を、前記モータのモータ室残留油量が多いほど長く設定し、遅延時間経過後、前記油圧締結要素の締結制御を開始することを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。
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