JP2006302689A - オージェ電子分光分析装置及びオージェ電子分光分析法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
同心円筒鏡型のエネルギー分光器を有するオージェ電子分光分析装置を用いた固体表面の化学状態を分析法において、運動エネルギーの高い成分の検出する分解能を向上させる装置及び方法を提供することである。より具体的には、CMA型のAES装置を用いて、運動エネルギーの高いオージェ電子を測定する際に、運動エネルギーの低いオージェ電子を測定したときと同程度の分解能を備えた分析方法及び分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
測定中の試料に、グランドに対して正のバイアス電圧を印加したところ、試料から検出されたオージェ電子の運動エネルギーが、負の方向に平行移動したように減少した。このため、従来運動エネルギーの高いオージェ電子を検出する成分においても、運動エネルギーの低い領域でオージェ電子が検出することができた。
【選択図】図1
同心円筒鏡型のエネルギー分光器を有するオージェ電子分光分析装置を用いた固体表面の化学状態を分析法において、運動エネルギーの高い成分の検出する分解能を向上させる装置及び方法を提供することである。より具体的には、CMA型のAES装置を用いて、運動エネルギーの高いオージェ電子を測定する際に、運動エネルギーの低いオージェ電子を測定したときと同程度の分解能を備えた分析方法及び分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
測定中の試料に、グランドに対して正のバイアス電圧を印加したところ、試料から検出されたオージェ電子の運動エネルギーが、負の方向に平行移動したように減少した。このため、従来運動エネルギーの高いオージェ電子を検出する成分においても、運動エネルギーの低い領域でオージェ電子が検出することができた。
【選択図】図1
Description
本発明は固体表面の化学状態の分析に用いるオージェ電子分光分析装置およびオージェ電子分光分析法に関する。
固体表面の化学状態を分析する方法としては、オージェ電子分光分析法(以下、AESとする)、X線光電子分光法(以下、XPSとする)や、二次イオン質量分析法(以下、SIMSとする)等が挙げられ広く使用されている。なかでも、オージェ電子分光分析方法は表面組成を迅速に知り得る方法として、すでに半導体工場などで生産ラインに組み入れられており、もっとも多用されている表面化学分析法の一つである。
AES法は、真空中で細く絞った電子線を固体表面に照射し、発生するオージェ電子のエネルギーと数を測定することにより、固体表面に存在する元素の種類と量を同定する方法である。電子線は細く絞ることができるため、試料表面から深さ数nm程度の局所領域分析が可能であるという特長をもつ。オージェ電子分光分析法では横軸に元素固有のオージェ電子の運動エネルギー(kinetic energy)縦軸に電子のカウント数またはその微分型を示したスペクトルが示され、また、ある特定のピーク(運動エネルギー)に対してマッピング分析や線分析が行なわれる。また、イオン銃と組み合わせることにより深さ方向分析(デプスプロファイル)が可能となる。
オージェ電子分光分析装置(以下、AES装置とする)において、サンプルから放出されたオージェ電子のエネルギーの測定方法には電子の軌道を曲げる方法が用いられており、エネルギー分光器として、同心円筒鏡型(以下、CMAとする)と同心半球型(以下、CHAとする)と呼ばれるものが知られている。CMA型の分光器は二つの円筒が等軸に配置されており、内側円筒はアースされ、外円筒には負電圧がかかる。CMA型分光器内に入った電子は外円筒の負電圧により軌道を曲げられ、負電圧に対応したエネルギーを持つ電子のみが軸上に集結するようになっている。
前者のCMA型分光器は電子の取り込み角が大きいため、効率よく電子を取り込むことができる。このため、高感度で迅速な測定ができる。
一方、後者のCHA型分光器はCMA型分光器と比較して、インプットレンズで決められる電子の取り込み角が小さいため、高感度測定は難しく、測定に時間がかかる。
ところで、AES装置においては、通常は分光器内にかかる電場を連続的に変化させて、その電場に対応した電子を捕集・増幅して計測する、Constant Retarding modeと呼ばれるモードを使用する。分光器の分解能ΔEは電子の分光器内の運動エネルギーEpに比例し、その値は装置に依存しており、(式1)で表される。
ΔE/Ep=constant(定数)(式1)
つまり、分解能ΔEは、分光器内のオージェ電子の運動エネルギーEpに依存し、該運動エネルギーが高いほど、分解能が低下するという特性を有する。
ΔE/Ep=constant(定数)(式1)
つまり、分解能ΔEは、分光器内のオージェ電子の運動エネルギーEpに依存し、該運動エネルギーが高いほど、分解能が低下するという特性を有する。
CHA型の分光器は半径の異なる半球を2個重ね合わせたもので、この2つの半球の間に電圧をかけると、半球内に入射された電子のうち、かけられた電圧に対応したもののみが射出されるようになっている。CHA型の場合、半球内に電子を導入する前にインプットレンズを設置し、このインプットレンズにより電子のエネルギーを減速させることができ、この減速した電子を分光器に導入することができる。そのため、分光器内エネルギーEp<初期エネルギーEkとすることが可能で、減速比を1以上にすることができる。このため、運動エネルギーの高い成分を分析する際においても、検出する電子を減速することが可能で、このため、分解能が良好であった。
しかし、CMA型の分光器はインプットレンズがなく、電子のエネルギーをそのまま測定する。したがって、初期エネルギーをEk、分光器内エネルギーをEpとしたときに、Ek/Epで表される減速比(retarading ratio)は1となる。このため、CMA型のAES装置は、運動エネルギーの高い成分の検出において、CHA型のような電子の減速機構がなく、分解能が良好ではなかった。
つまり、CMA型のエネルギー分光器を有するAES装置は、CHA型と比べ、電子の取り込み角が大きく、高感度で迅速な測定が出来るという利点を有する一方、CHA型と比べ、運動エネルギーの高い成分を分析する際に、エネルギー分解能が悪いという問題を有していた。
例えば、銅−亜鉛合金においては、Cu LMMとZn LMMが900eV付近で重なるため、従来のCMA型分光器では十分な分離ができていない。また、珪素については、Si KLLが1600eV付近に観察され、化学状態により10V程度のシフトがあることが、CHA型分光器を有するAES装置での測定で判明しているが、CMA型分光器ではシフトの評価が難しかった。
分解能を向上させたCMA型のAES装置として特許文献1が公開されている。しかし、特許文献1は、バックグラウンドのノイズを除去することにより、全体的な分解能を向上させようとするものである。そして、CMA型のAES装置において、運動エネルギーの高い成分を分解能良く検出できないという課題は依然残されていた。
特開平3−71547号公報
本発明は、前記従来の問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、CMA型のAES装置を用いた固体表面の化学状態を分析法において、運動エネルギーの高い成分の検出する分解能を向上させる装置及び方法を提供することである。より具体的には、CMA型のAES装置を用いて、運動エネルギーの高いオージェ電子を測定する際に、運動エネルギーの低いオージェ電子を測定したときと同程度の分解能を備えた分析方法及び分析装置を提供することを目的とする。
ところで、本発明者の検討によれば、CMA型のAES装置を用いた分析において、試料ホルダーに固定された測定中の試料に対し、グランドに対して正のバイアス電圧を印加したところ、試料から検出されたオージェ電子の運動エネルギーが、負の方向に平行移動したように減少した。このため、従来運動エネルギーの高いオージェ電子を検出する成分においても、運動エネルギーの低い領域でオージェ電子が検出されることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、同心円筒鏡型のエネルギー分光器を有するオージェ電子分光分析装置において、
少なくとも測定中の試料にグランドに対して正のバイアス電圧を印加する手段を有するオージェ電子分光分析装置である。
請求項2に記載の発明は、前記試料ホルダーにかけるバイアス電圧の絶対値が50V〜2500Vであることを特徴とする請求項1記載のオージェ電子分光分析装置である。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のオージェ電子分光分析装置を用いた表面分析方法において、前記試料に正の電圧を印加して、オージェ電子の運動エネルギーを測定することを特徴とする表面分析方法である。
少なくとも測定中の試料にグランドに対して正のバイアス電圧を印加する手段を有するオージェ電子分光分析装置である。
請求項2に記載の発明は、前記試料ホルダーにかけるバイアス電圧の絶対値が50V〜2500Vであることを特徴とする請求項1記載のオージェ電子分光分析装置である。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のオージェ電子分光分析装置を用いた表面分析方法において、前記試料に正の電圧を印加して、オージェ電子の運動エネルギーを測定することを特徴とする表面分析方法である。
本発明のAES装置を用いてオージェ電子の測定を行なうことにより、高エネルギーのオージェ電子を検出する成分から発せられるオージェ電子を、低エネルギー領域で検出することが可能となった。このため、従来、高エネルギーのオージェ電子を検出する成分においても、分解能のよい分析装置および分析方法を提供できた。さらには、従来、高エネルギー領域で測定されていて分析が困難だったオージェピークについて、スペクトル測定やライン分析、マッピング分析におけるピーク分離等のピーク解析を容易に行なうことが可能となった。
以下に本発明のCMA型のAES装置の一例について、図1を用いて詳細に説明する。
本発明のCMA型のエネルギー分光器を有するオージェ電子分光分析装置の模式図を図1に示した。試料台保持部10は、絶縁ガイシ11を介して位置合わせステージ12に取り付けられており、位置合わせステージ12とは電気的に絶縁している。また、試料保持部10は電源ケーブル13を介して、外部のバイアス電圧電源14と電気的に接続されているため、試料への電圧の印加調整が可能になっている。
試料台8に固定された試料9は予備排気室1に導入後十分排気され、測定室2の試料台保持部10に移動する。位置合わせステージ12を任意に移動し、測定位置を電子線照射位置に合わせる。
電子銃3からレンズ系を通して試料表面に集束された電子線が照射される。入射した電子線により試料表面から二次電子、オージェ電子等が発生し、また、試料表面で反射した電子が反射電子となる。これらの電子はCMA型分光器4により分光され所定の運動エネルギーを持つ電子のみが検出器5より検出される。また、電子線の位置情報と合わせることにより、線分析や面分析が可能となる。
本発明において試料ホルダーにグランドに対して正のバイアス電圧をかける機構として用いられる電源としては、正確にバイアス電圧をかけることができるものであれば良い。オージェ電子分光分析装置には、入射する電子線の電流量を測るための端子を有し、外部の電流計とつなげて使用されている。その端子に対して電源をつなぐことにより、容易に試料ホルダーに電圧をかけることができる。
本発明では印加したバイアス電圧の分だけ電子の運動エネルギーが減少し、CMA型のエネルギー分光器により分光される。したがって、オージェ電子分光分析法にて着目する運動エネルギーをX、印加したバイアス電圧をYとすると、本発明によりエネルギー分解能はX/(X−Y)倍増加することになる。なお、得られるオージェ電子スペクトルは、印加していないスペクトルと比較して運動エネルギーがバイアス電圧分だけ低エネルギー側に平行移動したスペクトルとなる。なお、電荷×電位差=eV(エネルギー)である。
オージェ電子分光分析法では、通常、50eV以上2500eV以下の電子の運動エネルギーの測定を行なう。したがって、本発明で付加するバイアス電圧の絶対値は、電子の運動エネルギーの測定範囲に収まることが望ましく、50V以上2500V以下であることが好ましい。50V以下の場合、本発明の効果が無くなってしまう。2500V以上の場合は、オージェ電子分光分析法の測定範囲外となる。
印加するバイアス電圧の大きさは着目する運動エネルギーによって変更することが可能である。バイアス電圧を印加後、着目する運動エネルギーが100〜500eV付近に調節するのが好適である。
また、電圧を試料ホルダーにかけることにより、入射する電子線の加速電圧も変化する。正のバイアス電圧をかけることにより、入射する電子線は加速されるため、所望の加速電圧で測定するにはかけたバイアス電圧分を所望の加速電圧に減じて測定を行なえばよい。
本発明の実施例及び比較例について示す。CMA型のエネルギー分光器を持つAES装置としてアルバック・ファイ社製のSAM680を用いた。試料電流測定用端子から試料ホルダーにつなぐための電源を接続した。試料には、Cu−Zn合金を用いた。Cu−Zn合金を試料ホルダーに固定後、予備排気室で十分排気を行い、測定室の分析位置に導入した。付属のイオン銃により、分析する試料表面に対し、Arイオンスパッタエッチングを加速電圧4kV、エッチング時間120秒おこなった。
<比較例1>
エッチング終了後、バイアス電圧をかけることなく、加速電圧10kV、試料電流9.5nAで運動エネルギー800eV〜1100eVの範囲についてスペクトル測定を行なった。測定の結果、Cu(LMM)、Zn(LMM)が検出されたが、これらの成分のピークは明瞭に分離できなかった。Zn(LMM)ピーク(990eV)のエネルギー分解能は、ピークの半値幅で約4eVであった。この結果を図2に示す。
エッチング終了後、バイアス電圧をかけることなく、加速電圧10kV、試料電流9.5nAで運動エネルギー800eV〜1100eVの範囲についてスペクトル測定を行なった。測定の結果、Cu(LMM)、Zn(LMM)が検出されたが、これらの成分のピークは明瞭に分離できなかった。Zn(LMM)ピーク(990eV)のエネルギー分解能は、ピークの半値幅で約4eVであった。この結果を図2に示す。
<実施例1>
エッチング終了後、電源から試料ホルダーに対しバイアス電圧を500V印加し、加速電圧9.5kV(10kV−0.5kV)、試料電流9.5nAで運動エネルギー300eV〜600eVの範囲でスペクトル測定を行なった。測定の結果、Cu(LMM)、Zn(LMM)それぞれから500eV減じた運動エネルギーの位置にピークが検出された。Zn(LMM)ピーク(490eV=990−500)のエネルギー分解能は、ピークの半値幅で約1.8eVであり、さらに、バイアス電圧をかけずに測定したときは分離ができなかった900eV付近のCuとZnのピークが、バイアス電圧を印加することによって明瞭に分離され、バイアス電圧を印加することによってエネルギー分解能の向上が確認された。この結果を図3に示す。
エッチング終了後、電源から試料ホルダーに対しバイアス電圧を500V印加し、加速電圧9.5kV(10kV−0.5kV)、試料電流9.5nAで運動エネルギー300eV〜600eVの範囲でスペクトル測定を行なった。測定の結果、Cu(LMM)、Zn(LMM)それぞれから500eV減じた運動エネルギーの位置にピークが検出された。Zn(LMM)ピーク(490eV=990−500)のエネルギー分解能は、ピークの半値幅で約1.8eVであり、さらに、バイアス電圧をかけずに測定したときは分離ができなかった900eV付近のCuとZnのピークが、バイアス電圧を印加することによって明瞭に分離され、バイアス電圧を印加することによってエネルギー分解能の向上が確認された。この結果を図3に示す。
1 予備排気室
2 測定室
3 電子銃
4 CMA型分光器
5 検出器
6 2次電子検出器
7 イオン銃
8 試料台(外部のバイアス電圧電源14と電気的につながっている。)
9 試料
10 試料台保持部
11 絶縁ガイシ
12 位置合わせステージ
13 電源ケーブル
14 バイアス電圧電源
2 測定室
3 電子銃
4 CMA型分光器
5 検出器
6 2次電子検出器
7 イオン銃
8 試料台(外部のバイアス電圧電源14と電気的につながっている。)
9 試料
10 試料台保持部
11 絶縁ガイシ
12 位置合わせステージ
13 電源ケーブル
14 バイアス電圧電源
Claims (3)
- 同心円筒鏡型のエネルギー分光器を有するオージェ電子分光分析装置において、
少なくとも測定中の試料にグランドに対して正のバイアス電圧を印加する手段を有するオージェ電子分光分析装置。 - 前記試料ホルダーにかけるバイアス電圧の絶対値が50V〜2500Vであることを特徴とする請求項1記載のオージェ電子分光分析装置。
- 請求項1又は2に記載のオージェ電子分光分析装置を用いた表面分析方法において、
前記試料に正の電圧を印加して、オージェ電子の運動エネルギーを測定することを特徴とする表面分析方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005123323A JP2006302689A (ja) | 2005-04-21 | 2005-04-21 | オージェ電子分光分析装置及びオージェ電子分光分析法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010107861A1 (en) | 2009-03-20 | 2010-09-23 | Physical Electronics USA, Inc. | Sample holder apparatus to reduce energy of electrons in an analyzer system and method |
US11031211B2 (en) | 2017-08-24 | 2021-06-08 | Hitachi High-Tech Corporation | Charged particle beam device, and observation method and elemental analysis method using the same |
CN114460114A (zh) * | 2022-04-13 | 2022-05-10 | 季华实验室 | 样品分析方法、装置、设备及存储介质 |
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2005
- 2005-04-21 JP JP2005123323A patent/JP2006302689A/ja active Pending
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DE112017007771B4 (de) | 2017-08-24 | 2023-03-02 | Hitachi High-Technologies Corporation | Vorrichtung für strahl geladener teilchen und beobachtungsverahren und elementanalyseverfahren unter verwendung derselben |
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