JP2006299842A - 微小流体輸送ポンプ及び導電性高分子アクチュエータ素子 - Google Patents

微小流体輸送ポンプ及び導電性高分子アクチュエータ素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 精度の良い流量調整が可能であり、化学的分析用或いはDNA解析用ポンプ、体内埋め込み式インシュリンポンプ、試薬ディスペンサー用ポンプ、血液検査用チップ用ポンプなどに好適に用いられる微小流体輸送ポンプ及びこれに用いられるアクチュエータ素子を提供するところにある。
【解決手段】 電解質を含む流体の輸送を制御する駆動部として導電性高分子アクチュエータ素子を備えた微小流体輸送ポンプであって、
上記導電性高分子アクチュエータ素子が平板状の導電性高分子膜を有し、
上記平板状の導電性高分子膜が、酸化によりアニオンがドープし、還元によりカチオンがドープし、酸化によりカチオンが脱ドープして電解伸縮するカチオン駆動型導電性高分子膜の中央領域に、還元によりアニオンが脱ドープして電解伸縮するアニオン駆動型導電性高分子膜が積層されたバイモルフ構造部を備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、微小流体輸送ポンプに関し、さらに詳細には化学的分析用、DNA解析用、試薬ディスペンサー用、血液検査用チップなどに用いられるマイクロポンプ或いは小型乃至超小型ポンプにおける導電性高分子アクチュエータ素子の改良に関する。
従来、微小流体輸送ポンプとして、例えば化学的分析用或いはDNA解析用ポンプのほか、糖尿病患者へのインシュリン投与に用いられる体内埋め込み式インシュリンポンプなどに、小型乃至超小型ポンプが提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2003−13878
しかし、化学的分析用或いはDNA解析用ポンプは、例えば1〜10μl程度の微小量で、迅速、高精度が要求される。また、インシュリンポンプも、通常時は例えば0.5μl/min、食事時は3μl/minの精度のよい微小流量の調整が必要で、また体内埋め込み式インシュリンポンプともなると長時間駆動が可能な小型乃至超小型ポンプが要求されるが、精度の良い流量調整が可能な微小流体輸送ポンプ及びこれに用いられるアクチュエータ素子は未だ提供されていない。
また近時では、チップ内に採血液の流路とこれに供給する試薬の流路が形成され、これらの各流体をポンプで行う検査チップが提案されているが、このチップに好適な超小型ポンプ及びこれに用いられる導電性高分子アクチュエータ素子も未だ提供されていない。
本発明の目的は、精度の良い流量調整が可能であり、化学的分析用或いはDNA解析用ポンプ、体内埋め込み式インシュリンポンプ、試薬ディスペンサー用ポンプ、血液検査用チップ用ポンプなどに好適に用いられる微小流体輸送ポンプ及びこれに用いられるアクチュエータ素子を提供するところにある。
本請求項1の発明は、流体の輸送を制御する駆動部として導電性高分子アクチュエータ素子を備えた微小流体輸送ポンプであって、
上記導電性高分子アクチュエータ素子が平板状の導電性高分子膜を有し、
上記平板状の導電性高分子膜が、酸化によりアニオンがドープし、還元によりアニオンが脱ドープして電解伸縮するアニオン駆動型導電性高分子膜と、還元によりカチオンがドープし、酸化によりカチオンが脱ドープして電解伸縮するカチオン駆動型導電性高分子膜とが積層されたバイモルフ構造部を少なくとも一部に備えた微小流体輸送ポンプである。
本請求項2の発明は、前記平板状の導電性高分子膜が、単層構造の前記カチオン駆動型導電性高分子膜とこのカチオン駆動型導電性高分子膜の中央領域に前記アニオン駆動型導電性高分子膜が積層形成された局部的なバイモルフ構造部を備えている請求項1記載の微小流体輸送ポンプである。
本請求項3の発明は、前記アクチュエータ素子が、電極部をカチオン駆動型導電性高分子膜に備え、前記カチオン駆動型導電性高分子膜の表面が、前記バイモルフ構造部を除き、前記電解質を含む流体から絶縁されている請求項2記載の微小流体輸送ポンプである。
本請求項4の発明は、前記平板状の導電性高分子膜が、開口穴を有する単層構造の前記カチオン駆動型導電性高分子膜と、このカチオン駆動型導電性高分子膜の前記開口穴及びその周囲を被覆する前記アニオン駆動型導電性高分子膜とを備え、
前記開口穴の周囲に前記アニオン駆動型導電性高分子膜と前記カチオン駆動型導電性高分子膜とが積層されたバイモルフ構造部が形成され、前記開口穴の部位に単層構造の前記アニオン駆動型導電性高分子膜が形成されている請求項1記載の微小流体輸送ポンプである。
本請求項5の発明は、前記アクチュエータ素子が、電極部をカチオン駆動型導電性高分子膜に備え、
前記カチオン駆動型導電性高分子膜の表面が、前記アニオン駆動型導電性高分子膜が被覆する前記開口穴及びその周囲を除き、前記電解質を含む流体から絶縁されている請求項4記載の微小流体輸送ポンプ。
本請求項6の発明は、前記バイモルフ構造部は、前記カチオン駆動型導電性高分子膜の中央領域に形成されている請求項1〜5のいずれかの項に記載の微小流体輸送ポンプである。
本請求項7の発明は、前記カチオン駆動型導電性高分子膜が、モノマーおよび支持電解質をそれぞれピロール(Py)およびドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)として電解重合法により得られた平面状導電性高分子であり、
前記アニオン駆動型導電性高分子膜が、このカチオン駆動型導電性高分子膜上に、モノマーおよび支持電解質をそれぞれピロール(Py)およびパラフェノールスルホン酸(PPS)として電解重合することにより得られた平面状導電性高分子である請求項1〜6のいずれかの項に記載の微小流体輸送ポンプである。
本請求項8の発明は、平板状の導電性高分子膜を有し、
上記平板状の導電性高分子膜が、還元によりカチオンがドープし、酸化によりカチオンが脱ドープして電解伸縮する単層構造のカチオン駆動型導電性高分子膜と、このカチオン駆動型導電性高分子膜の中心領域に、酸化によりアニオンがドープし、還元によりアニオンが脱ドープして電解伸縮するアニオン駆動型導電性高分子膜とが積層されたバイモルフ構造部を備え、
周囲に作用電極が固定されている
導電性高分子アクチュエータである。
本発明は、上記により、塩化ナトリウムなどの電解質を含む流体中において、前記バイモルフ構造(二層構造)の平板状導電性高分子アクチュエータ素子に対して作用電極を通じて電圧が印加されることにより、前記アニオン駆動型導電性高分子膜は酸化により前記流体中のアニオンがドープするために伸長し、還元により前記流体中のアニオンが脱ドープするために伸縮する。一方、前記カチオン駆動型導電性高分子膜は、還元によりカチオンがドープするために伸長し、酸化によりカチオンが脱ドープするために収縮する。従って、前記平板状の導電性高分子膜の前記バイモルフ構造部においては、酸化により前記アニオン駆動型導電性高分子膜の伸長と前記カチオン駆動型導電性高分子膜の収縮が同時に発生するため、前記アニオン駆動型導電性高分子膜又は前記カチオン駆動型導電性高分子膜の単層構造からなる導電性高分子膜で構成された高分子アクチュエータと比較して変形度合いが大きいことから、前記バイモルフ構造部(二層構造部)において、酸化により右側又は左側へと大きく屈曲し、また還元により左側又は右側へと大きく屈曲するもので、この繰り返しによって一定の周波数にて大きな変形を与えることができる。
特に、前記平板状の導電性高分子膜が、開口穴を有する単層構造の前記カチオン駆動型導電性高分子膜と、このカチオン駆動型導電性高分子膜の前記開口穴及びその周囲を被覆する前記アニオン駆動型導電性高分子膜とを備え、
前記開口穴の周囲に前記アニオン駆動型導電性高分子膜と前記カチオン駆動型導電性高分子膜とが積層されたバイモルフ構造部が形成され、前記開口穴の部位に単層構造の前記アニオン駆動型導電性高分子膜が形成されている、いわゆるパターニングしたバイモルフ構造の導電性高分子アクチュエータ素子を備えたポンプの場合、いわゆるパターニングしていないものと比較してさらにその変形量が大きく、また周波数も大きくなる。
従って、かかる平板状導電性高分子アクチュエータ素子に対し作用電極を通じて印加電圧をマイナスからプラスの範囲で繰り返し与えることにより、この平板状導電性高分子アクチュエータ素子はバイモルフ構造部において正逆方向の屈曲ないし湾曲を繰り返し、いわゆるポンプの駆動部として動作する。
したがって、本発明のポンプは、安価、小型乃至超小型にして軽量で、しかも低駆動電圧で良好な応答性、耐久性を持ちながら、精度の良い流量調整を可能であり、化学的分析用或いはDNA解析用ポンプ、体内埋め込み式インシュリンポンプ、試薬ディスペンサー用ポンプ、血液検査用チップ用ポンプなどの微小流体輸送ポンプに好適に用いることができる。
図1は本発明に係る微小流体輸送ポンプに備える導電性高分子アクチュエータ素子の一実施形態を示す概略斜視図である。図2(a)は図1におけるII−II線概略断面図、図2(b)は還元状態における導電性高分子アクチュエータ素子の動作を示す概略断面図、図2(c)は酸化状態における導電性高分子アクチュエータ素子の動作を示す概略断面図である。
図1において、この導電性高分子アクチュエータ素子100は、ポンプにおいて流体の輸送を制御する駆動部として動作するが、図示のとおり、平板状の導電性高分子膜110から構成されている。また平板状の導電性高分子膜110は、図2(b)に示すように還元によりカチオンがドープし、図2(c)に示すように酸化によりカチオンが脱ドープしてそれぞれ電解伸縮するカチオン駆動型導電性高分子膜111と、酸化によりアニオンがドープし、還元によりアニオンが脱ドープして電解伸縮するアニオン駆動型導電性高分子膜112とが積層されたバイモルフ構造部113を備えている。
特に、本実施形態の導電性高分子アクチュエータ素子は、図1及び図2に示すように、前記平板状の導電性高分子膜110が、単層構造の前記カチオン駆動型導電性高分子膜111とこのカチオン駆動型導電性高分子膜111の中央領域に前記アニオン駆動型導電性高分子膜112が積層形成された局部的なバイモルフ構造部113を備えている。そして、図1及び図2には示されていないが、作用電極部をカチオン駆動型導電性高分子膜111の外周部に固定し、前記カチオン駆動型導電性高分子膜111の表面が、前記バイモルフ構造部113を除き、電解質を含む流体から絶縁される構成を採用している。なお、この実施形態で絶縁部は絶縁テープで構成されているが、特に限定されない。
本実施形態は、上記により、塩化ナトリウムなどの電解質を含む流体中において、平板状導電性高分子アクチュエータ素子に対して作用電極を通じてマイナスの電圧が印加されることにより、図2(b)に示されるように、前記バイモルフ構造部113において、当該バイモルフ構造部113を構成する前記カチオン駆動型導電性高分子膜111では還元によりカチオン(例えばナトリウムイオン)がドープするために伸長し、前記アニオン駆動型導電性高分子膜112では反対に還元によりアニオン(例えば塩素イオン)が脱ドープするために収縮し、左側に凸状に屈曲ないし湾曲する。一方、平板状導電性高分子アクチュエータ素子に対し前記マイナスの電圧が解除され又はプラスの電圧が印加されると、図2(a)から図2(c)に示すように、前記バイモルフ構造部113において、当該バイモルフ構造部113を構成する前記アニオン駆動型導電性高分子膜112では酸化によりアニオン(例えば塩素イオン)がドープするために伸長し、前記カチオン駆動型導電性高分子膜111では反対に酸化によりカチオン(例えばナトリウムイオン)が脱ドープするために収縮し、右側に凸状に屈曲ないし湾曲する。この繰り返しによって一定の周波数にて変形することから、これを用いてポンプの駆動部として用いることができる。
図3は本発明に係る微小流体輸送ポンプに備えるいわゆるパターニングしたバイモルフ構造の導電性高分子アクチュエータ素子の他実施形態を示す概略斜視図である。図4(a)は図3におけるIV−IV線概略断面図、図4(b)は還元状態における当該導電性高分子アクチュエータ素子の動作を示す概略断面図、図4(c)は酸化状態における当該導電性高分子アクチュエータ素子の動作を示す概略断面図である。
図3に示すように、この導電性高分子アクチュエータ素子200は、既述した導電性高分子アクチュエータ素子100と異なり、平板状の導電性高分子膜210が、開口穴214を有する単層構造の前記カチオン駆動型導電性高分子膜211と、このカチオン駆動型導電性高分子膜211の前記開口穴214及びその周囲215を被覆する前記アニオン駆動型導電性高分子膜212とを備え、
前記開口穴の周囲に前記アニオン駆動型導電性高分子膜212と前記カチオン駆動型導電性高分子膜211とが積層されたバイモルフ構造部213が形成され、前記開口穴214の部位に単層構造の前記アニオン駆動型導電性高分子膜212が形成されている。
従って、このいわゆるパターニングしたバイモルフ構造の実施形態のアクチュエータ素子では、塩化ナトリウムなどの電解質を含む流体中において、平板状導電性高分子アクチュエータ素子に対して作用電極を通じてマイナスの電圧が印加されることにより、図4(b)に示されるように、バイモルフ構造部213において、当該バイモルフ構造部113を構成する前記カチオン駆動型導電性高分子膜211では還元によりカチオン(例えばナトリウムイオン)がドープするために伸長するが、その一方でその伸長に呼応して前記カチオン駆動型導電性高分子膜211の開口穴214からアニオン駆動型導電性高分子膜112が入り込む。すなわち、カチオン駆動型導電性高分子膜211においてカチオン(例えばナトリウムイオン)がドープして伸長し開口穴214を開口する方向へ変形する一方で、アニオン(例えば塩素イオン)が脱ドープすることからアニオン駆動型導電性高分子膜112がその開口穴214を入り込む方向に収縮し、よってこのカチオン駆動型導電性高分子膜211とアニオン駆動型導電性高分子膜112との相乗作用によって、パターニングを施していない前記実施形態の導電性高分子膜110と相違して大きく変形するものである。
同様に、この実施形態の導電性高分子アクチュエータ素子は、酸化状態では図4(c)に示すように、カチオン(例えばナトリウムイオン)が脱ドープするために収縮するカチオン駆動型導電性高分子膜211の動作に追随して、アニオン駆動型導電性高分子膜112がアニオン(例えば塩素イオン)がドープするために伸長し、これらの相乗作用によって、パターニングを施していない前記実施形態の導電性高分子膜110と相違して大きく変形する。
すなわち、本実施形態の導電性高分子アクチュエータ素子は、カチオン駆動型導電性高分子膜211に開けられた開口穴によって当該カチオン駆動型導電性高分子膜211の変形がカチオン駆動型導電性高分子膜211自身による規制が解除され、アニオン駆動型導電性高分子膜112の変形に規制し従属する構成である。従って、かかるパターニングされた導電性高分子アクチュエータ素子は、パターニングされていない前記実施形態の導電性高分子アクチュエータ素子と比較し、さらに大きく変形し、還元状態では左側に大きく凸状に屈曲ないし湾曲し、酸化により右側に大きく凸状に屈曲ないし湾曲する。この繰り返しによって一定の周波数にて変形することから、これを用いてポンプの駆動部として用いることができる。
このように、電子導電性高分子アクチュエータの電解伸縮の主なメカニズムは、イオンの脱注入(ドープ,脱ドープ)であるが、電子導電性高分子の中でも、ポリピロール(Polypyrrole,PPy)が、酸性領域からアルカリ性領域の広範囲のpH領域で安定的に駆動可能であり、また機械的強度も高く、十分な伸縮が得られる。
ピロール(Py)をモノマーとし、2種類の支持電解質(パラフェノールスルホン酸(PPS)およびドデシルベンゼンスルホン酸(DBS))を用いたバイモルフ(2層構造)構造部を有する前記図1に示す構造からなる実施形態の導電性高分子アクチュエータ素子を試作した。
2回の電解重合によりPPy.PPS/PPy.DBSのバイモルフ構造部を有する前記実施形態の導電性高分子アクチュエータ素子が得られる。パラフェノールスルホン酸(PPS)で電解重合を行ったPPy.PPSはアニオン駆動型導電性高分子膜であり、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS))で電解重合を行ったPPy.DBSはカチオン駆動型導電性高分子膜を形成する。
すなわち、この実施例では、モノマーおよび支持電解質をそれぞれポリピロールPPyおよびドデシルベンゼンスルホン酸DBSとして電解重合法により作成した単層構造(PPy.DBS)からなる大きさ30mm×30mmおよび膜厚t=25μmのPPy.DBS平面状導電性高分子膜の上に、中心領域(10mm×10mm)以外を絶縁テープにより覆い、モノマーおよび支持電解質をそれぞれポリピロールPPyおよびパラフェノールスルホン酸PPSとして電解重合することにより中心部のみバイモルフ構造部となる導電性高分子アクチュエータ素子を得た。バイモルフ構造部の膜厚はt=45μm、アニオン駆動型導電性高分子膜の膜厚t=20μmである。
また、他実施例として、パラフェノールスルホン酸(PPS)の電解重合に前記図3に示したパターンニングを施して5mm×5mm大きさの開口穴を形成した以外は前記実施例と同様にして導電性高分子アクチュエータ素子を作成した。バイモルフ構造部の膜厚はt=45μm、単層構造(PPy.DBS)のカチオン駆動型導電性高分子膜の膜厚t=25μm、アニオン駆動型導電性高分子膜の膜厚t=20μmである。
[比較例1]
比較例1として、モノマーおよび支持電解質をそれぞれポリピロールPPyおよびドデシルベンゼンスルホン酸DBSとして電解重合法により作成した単層構造(PPy.DBS)からなる大きさ30mm×30mmおよび膜厚t=25μmである単層構造のPPy.DBS平面状導電性高分子膜からなる導電性高分子アクチュエータ素子を作成した。なお、実施例1と同様に、中心領域(10mm×10mm)以外は絶縁テープにより覆われている。
[変位量の測定]
前記実施例及び比較例の平面状導電性高分子アクチュエータ素子についてそのバイモルフ部の変形量を、図5に示す変位量測定装置を用いて測定した。すなわち、容器中に、銀線および白金板をそれぞれ参照電極(RE)および対向電極(CE)とし、図5に示すように前記実施例及び比較例の平面状導電性高分子アクチュエータ素子をそれぞれセットし、1.0[mol/l]のNaCl溶液中での測定を行った。導電性高分子アクチュエータ素子は図5に示すように白金の作用電極(WE)により外周を固定している。印加電圧は三角波波形であり、印加電圧範囲は−1.1<V<0.6[V]である。変位計はKEYENCE(キーエンス)社製、可視光レーザー式変位センサLB−1000(分離能:8μm)を用い、図6に示すように、レーザー光を平面状導電性高分子アクチュエータ素子に照射し、レーザー変位計からの変位前の導電性高分子アクチュエータ素子の距離と変位後の導電性高分子アクチュエータ素子のの距離を測定し、(+)位置と(−)位置のデータをそれぞれコンピューターに取り込むことによって評価した。
図7は、印加電圧[V]と電流[mA]とのCV(電流−電圧)曲線及び印加電圧[V]と中心領域の変位量[mm]との関係を、実施例1及び比較例1の各平面状導電性高分子アクチュエータ素子について測定した結果を示すグラフである。図7は横軸に印加電圧を示し、左および右の縦軸にそれぞれ電流および変位量を示す。実線および破線はそれぞれ、比較例1の単層構造(PPy.DBS)の平面状導電性高分子アクチュエータ素子、実施例1のバイモルフ構造部(PPy.PPS/PPy.DBS)を持つ平面状導電性高分子アクチュエータ素子を示している。
印加電圧は−1.1[V]から0.6[V]の範囲で三角波で与え、その速度は20[mV/sec]である。図7のCV曲線より、いずれのアクチュエータ素子も0.3[V]付近で酸化状態、−0.6[V]付近で還元状態にあることがわかる。比較例1の単層構造のアクチュエータ素子は還元状態時に中心がレーザー変位計側に1.5[mm]程度変形しており、酸化状態時には原型へ戻っていることがわかる。一方、実施例1のバイモルフ構造のアクチュエータ素子は、還元状態時に対向電極側へ変形していることがわかる。その最大変位量は2.0[mm]程度であり、単層構造に比べ大きい。バイモルフ構造の場合、還元状態時にPPy.DBS層が膨潤(伸長)する一方で、バイモルフ構造部のPPy.PPS層が収縮するためにその中心は大きく変形する。
図8は、印加電圧[V]と電流[mA]とのCV(電流−電圧)曲線及び印加電圧[V]と中心領域の変位量[mm]との関係を、前記実施例1のバイモルフ構造のアクチュエータ素子と実施例2のパターンニングしたバイモルフ構造のアクチュエータ素子についてそれぞれ測定した結果を示すグラフである。図8も横軸に印加電圧を示し、左および右の縦軸にそれぞれ電流および変位量を示す。破線および一点鎖線はそれぞれ、実施例1のバイモルフ構造部(PPy.PPS/PPy.DBS)を持つ平面状導電性高分子アクチュエータ素子、実施例2のパターンニングしたバイモルフ構造のアクチュエータ素子である。
印加電圧も前記と同様、−1.1[V]から0.6[V]の範囲で三角波で与え、その速度は20[mV/sec]である。図8より、パターンニングしたバイモルフ構造のアクチュエータは、パターンニングしていないバイモルフ構造のアクチュエータに比べ大きな変位となっていることがわかる。従って、バイモルフ構造にするだけでなく、パターンニングが変形に有効であることがわかる。
次に、バイモルフ構造部の膜厚75[μm]、単層構造(PPy.DBS)のカチオン駆動型導電性高分子膜の膜厚t=45μm、アニオン駆動型導電性高分子膜の膜厚t=30μmとした以外は実施例1と同様にして実施例3のバイモルフ構造のアクチュエータ素子を作成した。
また実施例2と同様にパターンニングしたこと以外は実施例3と同様にしてパターンニングした実施例4のバイモルフ構造のアクチュエータ素子を作成した。
図9は、実施例3及び実施例4の平面状導電性高分子アクチュエータの最大変形量とその周波数の関係を示している。図9より、最大で2.0[mm]程度の変形が可能であり、その周波数は0.006[Hz]であることが認められた。また、変形量が100[μm]程度であれば1.5[Hz]での変形が可能であることがわかった。さらには、バイモルフ構造をパターンニングすることにより、周波数に対する変形量は大きくなる。特に、3.0[Hz]での変形も可能になることがわかった。
パターンニングしたバイモルフ構造の導電性高分子アクチュエータ素子を用いて、図10及び図11に示す微小流体輸送ポンプ(微小流体輸送デバイス)を試作した。図10は同微小流体輸送ポンプに係る装置の分解状態を示す斜視図である。また図11は図10において組み立てられた当該ポンプの斜視図である。図10及び図11に示すように、パターンニングしたバイモルフ構造の導電性高分子アクチュエータ素子の周囲には作用電極216が固定されており、この作用電極216に連続するリード線217がさらに設けられている。ポンプのハウジング300内には流体の流路301があり、これに輸送チューブ302が連ながり、前記導電性高分子アクチュエータ素子は図10に示すようにこの流体の流路301の上から閉鎖する状態にしてフレーム400を被せて、図11のように固定する構成である。
なお、流路301は吸排空間であり、この吸排空間(流路301)とアクチュエータ素子との間にはビニール膜が設置されており、この吸排空間(流路301)内に貯液されている液体とアクチュエータ素子の周囲にある液体とを遮断する状態で構成している。なお、ポンプは、排気(排水)側チューブを吸排空間(流路301)に接続して構成されているもの、或は排気(排水)側チューブと吸気(吸水)側チューブの両者を吸排空間(流路301)に接続して構成することも可能である。
次に、図12に示すように、20mm×20mm×3mmの流路301の一面に前記アクチュエータ素子を設置し、直径3mmの輸送チューブ302内の水位を輸送した。このアクチュエータ素子を駆動した場合の水位変化を図13に示す。なお、この水位変化は、図12に示すように、容器中に、銀線および白金板をそれぞれ参照電極(RE)および対向電極(CE)とし、さらに白金の作用電極(WE)が接続さたれ平面状導電性高分子アクチュエータ素子をセットし、1.0[mol/l]のNaCl溶液中で測定した。なお、印加電圧速度は20[mV/sec](=0.006[Hz])、印加電圧範囲は−1.1<V<0.6[V]であり、実時間×10で測定した
図13に示すように、輸送チューブ302内において振幅約2mm程度の周期的な水位変化が確認できた。その流量は28μl/minであることから、マイクロ分析システム(μ−TAS)等に必要とされる流量とほぼ一致することから、これらに応用することが可能である。
なお、前記ポンプは、パターンニングしたバイモルフ構造の導電性高分子アクチュエータ素子を用いているが、パターニングされていないバイモルフ構造の導電性高分子アクチュエータ素子を用いることもできる。
本発明は、上記のとおりであるので、化学的分析用、DNA解析用、試薬ディスペンサー用、血液検査用チップなどに用いられる小型乃至超小型ポンプに好適に用いられる。
本発明に係る微小流体輸送ポンプに備える導電性高分子アクチュエータ素子の一実施形態を示す概略斜視図である。 図2(a)は図1におけるII−II線概略断面図、図2(b)は還元状態における導電性高分子アクチュエータ素子の動作を示す概略断面図、図2(c)は酸化状態における導電性高分子アクチュエータ素子の動作を示す概略断面図である。 本発明に係る微小流体輸送ポンプに備えるいわゆるパターニングしたバイモルフ構造の導電性高分子アクチュエータ素子の他実施形態を示す概略斜視図である。 図4(a)は図3におけるIV−IV線概略断面図、図4(b)は還元状態における当該導電性高分子アクチュエータ素子の動作を示す概略断面図、図4(c)は酸化状態における当該導電性高分子アクチュエータ素子の動作を示す概略断面図である。 変位量測定装置を示す概略図である。 レーザー変位計の測定方法を示す概略図である。 印加電圧[V]と電流[mA]とのCV(電流−電圧)曲線及び印加電圧[V]と中心領域の変位量[mm]との関係を、実施例1及び比較例1の各平面状導電性高分子アクチュエータ素子について測定した結果を示すグラフである。 印加電圧[V]と電流[mA]とのCV(電流−電圧)曲線及び印加電圧[V]と中心領域の変位量[mm]との関係を、前記実施例1のバイモルフ構造のアクチュエータ素子と実施例2のパターンニングしたバイモルフ構造のアクチュエータ素子についてそれぞれ測定した結果を示すグラフである。 実施例3及び実施例4の平面状導電性高分子アクチュエータの最大変形量とその周波数の関係を示すグラフである。 同微小流体輸送ポンプに係る装置の分解状態を示す斜視図である。 図10において組み立てられた当該ポンプの斜視図である。 このアクチュエータ素子を駆動した場合の水位変化を測定する装置を示す概略図である。 同装置で測定された輸送チューブ302内の水位変化を示す概略図である。

Claims (8)

  1. 流体の輸送を制御する駆動部として導電性高分子アクチュエータ素子を備えた微小流体輸送ポンプであって、
    上記導電性高分子アクチュエータ素子が平板状の導電性高分子膜を有し、
    上記平板状の導電性高分子膜が、酸化によりアニオンがドープし、還元によりアニオンが脱ドープして電解伸縮するアニオン駆動型導電性高分子膜と、還元によりカチオンがドープし、酸化によりカチオンが脱ドープして電解伸縮するカチオン駆動型導電性高分子膜とが積層されたバイモルフ構造部を少なくとも一部に備えた微小流体輸送ポンプ。
  2. 前記平板状の導電性高分子膜が、単層構造の前記カチオン駆動型導電性高分子膜とこのカチオン駆動型導電性高分子膜の中央領域に前記アニオン駆動型導電性高分子膜が積層形成された局部的なバイモルフ構造部を備えている請求項1記載の微小流体輸送ポンプ。
  3. 前記アクチュエータ素子が、電極部をカチオン駆動型導電性高分子膜に備え、前記カチオン駆動型導電性高分子膜の表面が、前記バイモルフ構造部を除き、前記電解質を含む流体から絶縁されている請求項2記載の微小流体輸送ポンプ。
  4. 前記平板状の導電性高分子膜が、開口穴を有する単層構造の前記カチオン駆動型導電性高分子膜と、このカチオン駆動型導電性高分子膜の前記開口穴及びその周囲を被覆する前記アニオン駆動型導電性高分子膜とを備え、
    前記開口穴の周囲に前記アニオン駆動型導電性高分子膜と前記カチオン駆動型導電性高分子膜とが積層されたバイモルフ構造部が形成され、前記開口穴の部位に単層構造の前記アニオン駆動型導電性高分子膜が形成されている請求項1記載の微小流体輸送ポンプ。
  5. 前記アクチュエータ素子が、電極部をカチオン駆動型導電性高分子膜に備え、
    前記カチオン駆動型導電性高分子膜の表面が、前記アニオン駆動型導電性高分子膜が被覆する前記開口穴及びその周囲を除き、前記電解質を含む流体から絶縁されている請求項4記載の微小流体輸送ポンプ。
  6. 前記バイモルフ構造部は、前記カチオン駆動型導電性高分子膜の中央領域に形成されている請求項1〜5のいずれかの項に記載の微小流体輸送ポンプ。
  7. 前記カチオン駆動型導電性高分子膜が、モノマーおよび支持電解質をそれぞれピロール(Py)およびドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)として電解重合法により得られた平面状導電性高分子であり、
    前記アニオン駆動型導電性高分子膜が、このカチオン駆動型導電性高分子膜上に、モノマーおよび支持電解質をそれぞれピロール(Py)およびパラフェノールスルホン酸(PPS)として電解重合することにより得られた平面状導電性高分子である請求項1〜6のいずれかの項に記載の微小流体輸送ポンプ。
  8. 平板状の導電性高分子膜を有し、
    上記平板状の導電性高分子膜が、還元によりカチオンがドープし、酸化によりカチオンが脱ドープして電解伸縮する単層構造のカチオン駆動型導電性高分子膜と、このカチオン駆動型導電性高分子膜の中心領域に、酸化によりアニオンがドープし、還元によりアニオンが脱ドープして電解伸縮するアニオン駆動型導電性高分子膜とが積層されたバイモルフ構造部を備え、
    周囲に作用電極が固定されている、
    導電性高分子アクチュエータ。
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