JP2006297377A - 植物を用いた有機物質汚染環境の浄化方法 - Google Patents

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健一 堀内
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一史 矢崎
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Abstract

【課題】本発明は、有機物質で汚染された土壌又は水を浄化するための新規な手段を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、脂溶性物質が根部の表層部に存在する植物又は根部における脂溶性物質の含有量が多い植物を有機物質で汚染された土壌又は水環境で栽培して、土壌又は水環境中の有機物質を植物中に取り込む工程、を包含する、有機物質で汚染された土壌又は水環境の浄化方法を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、主に、脂溶性物質が根部の表層部に存在する植物又は根部における脂溶性物質の含有量が多い植物を用いて、有機物質で汚染された環境を浄化する方法に関する。
近年、有機物質による環境の汚染が深刻な問題となっている。そこで、環境中に含まれる有機物質を効率的に除去する方法が求められている。
環境汚染の原因となる有機物質(以下、「有機汚染物質」とも称する)を除去する一つの方法として、有機汚染物質に対して高い分解能力をもつ生物種(多くの場合、バクテリア)を利用する方法、即ち、バイオリメディエーション(bioremediation)が知られている。しかし、実際の汚染環境中でバイオリメディエーションを行っても、有機汚染物質が十分に除去されないことが多い。また、生物種が小さい場合には、その回収が困難である。
有機汚染物質を除去する別の方法として、界面活性剤を汚染環境に添加する方法がある。実際、界面活性剤の添加により、微生物による土壌中の有機汚染物質の分解効率が向上することが報告されている。しかし、界面活性剤の回収が困難であるため、界面活性剤による環境汚染が心配される。別に、バイオサーファクタント(biosurfactant)の使用も検討されているが費用面で困難が大きい。
一方、代表的な有機汚染物質として、芳香環、炭素環及び複素環等の環状構造を有する化合物が知られている。これらの化合物は、化石燃料の燃焼、都市ガスやコールタール製造、自動車燃料の燃焼(自動車排ガス)、廃棄物焼却処分等の様々な経路を通じて環境中に大量に放出されたり、除草剤、駆除剤、防虫剤、抗菌剤等として環境中に大量に散布されたりしている。これらの化合物には、高い変異原性、発ガン性、内分泌かく乱作用等の生物に有害な作用を有するものが多数存在している。その物性は、通常、分子内の環の数に依存し、環の数が多く分子量が大きいものほど、低い水溶性及び高い土壌粒子吸着性を有し、分解能力をもつ生物種からの分解を受けにくく、環境中に長期間残留する傾向を有する。このような残留性有機物質の代表例として、多環芳香族炭化水素(PAH)が挙げられる。中でも、高い分子量を有するPAH、即ち、HMW−PAH(High Molecular Weight PAH)は、分解能力をもつ生物種からの分解を非常に受けにくく、環境中に長期間残留することが知られている。
本発明は、有機物質で汚染された土壌又は水環境を浄化するための新規な手段を提供することを課題とする。
本発明は、主に、以下の事項に関する。
〔項1〕
脂溶性物質が根部の表層部に存在する植物又は根部における脂溶性物質の含有量が多い植物を有機物質で汚染された土壌又は水環境で栽培して、土壌又は水環境中の有機物質を植物中に取り込む工程、
を包含する、有機物質で汚染された土壌又は水環境の浄化方法。
〔項2〕
更に、有機物質を取り込んだ植物を回収する工程、を包含する、〔項1〕に記載の浄化方法。
〔項3〕
前記植物がムラサキ科、キョウチクトウ科及びアカネ科からなる群より選択される少なくとも1種の植物である、〔項1〕又は〔項2〕に記載の浄化方法。
〔項4〕
前記植物がムラサキ科ムラサキ、キョウチクトウ科インドジャボク、アカネ科トコン及びアカネ科チャボイナモリからなる群より選択される少なくとも1種の植物である、〔項3〕に記載の浄化方法。
〔項5〕
前記有機物質が、芳香族化合物、脂環式化合物、複素環式化合物、芳香環、芳香属性を有さない炭素環及び芳香属性を有さない複素環からなる群より選択される少なくとも2種の環状構造を有する有機化合物、並びに、それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、〔項1〕〜〔項4〕のいずれかに記載の浄化方法。
〔項6〕
前記有機物質が、アトラジン、ダイオキシン類、PCB、フタル酸エステル類、エストラジオール及びベンツピレンからなる群より選択される少なくとも1種である、〔項5〕に記載の方法。
〔項7〕
前記植物が、M−9培地で培養された毛状根である、〔項1〕〜〔項6〕のいずれかに記載の方法。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明では、脂溶性物質が根部の表層部に存在する植物又は根部における脂溶性物質の含有量が多い植物を有機物質で汚染された土壌又は水環境において栽培し、土壌又は水環境中の有機物質を植物中に取り込み、その後、必要に応じて、有機物質を取り込んだ植物を回収することにより、土壌又は水環境から有機物質を除去する。
本発明において使用される植物は、脂溶性物質が根部の表層部に存在する植物又は根部における脂溶性物質の含有量が多い植物であれば、特に限定されない。
ここで、「脂溶性物質が根部の表層部に存在する」とは、脂溶性物質が根部の内部よりも表層部において高い濃度で存在することを意味する。その濃度は、内部から表層部に向かって勾配(グラディエント)を形成し、表層部において最も高くなっていることが好ましい。表層部とは、中心と表面とを比べて、表面に近い部分を意味する。
また、「根部における脂溶性物質の含有量が多い」とは、脂溶性物質の局在は問わず、根部における脂溶性物質の総含有量が多いことを意味する。
本発明において使用される植物は、例えば、ムラサキ科(例えば、ムラサキ、ホタルカズラ、ミヤマホタルカズラ)、キョウチクトウ科(例えば、インドジャボク、キョウチクトウ)、アカネ科(例えば、トコン、チャボイナモリ、セイヨウアカネ)、タデ科(例えばダイオウ)、ナデシコ科(例えばサボンソウ)が挙げられる。この中でも、特に、ムラサキ、インドジャボク、トコン、チャボイナモリが好ましい。
根部とは、植物の生命維持に必要な水及び養分を吸収し、植物体を支持する器官を意味し、根、根茎、塊根、付着根等が含まれる。本発明において使用される植物の根部の形態は、特に限定されないが、好ましくは、毛状、塊状、紐状のような有機物質の効率的吸収、有機物質の大量蓄積、大量輸送を可能にし得る形態である。
本発明において使用される植物は、慣例的な遺伝子操作及び/又は交雑によって改変された改変品種であってもよい。
遺伝子操作による改変は、例えば、脂溶性物質を根部において発現し得る局在化シグナルを導入すること、脂溶性物質の生産量を高める変異を導入すること、種々の環境汚染物質(例えば、重金属)に対する耐性を高める変異を導入すること、根の形態を変更する(例えば、毛状根又は塊根を形成する)変異を導入すること、毒性物質を化学修飾することで無毒化する変異を導入すること等により達成され得る。各種遺伝子操作は、慣例的な手順に従って行われる。また、遺伝子操作により改変される個体が、後述する交雑によって得られる改変品種であってもよい。
交雑による改変は、例えば、根部における脂溶性物質の生産量が高い個体、種々の環境汚染物質(例えば、重金属)に対する耐性を有する個体、発達した毛状根又は塊根を有する個体、毒性物質を化学修飾することで無毒化する個体の個体間で受粉を行うことによって達成され得る。交雑させる個体の一方又は両方が、前記の遺伝子操作によって得られた改変品種であってもよい。ここで、交雑に使用される個体は、互いに、同様又は類似の性質を有していてもよいし、異なる性質を有していてもよい。また、交雑させる個体の品種は、同じであってもよいし、異なってもよいが、同じであることが好ましい。
また、本発明において使用される植物は、完全な植物体を形成していなくてもよい。つまり、本発明の植物は、一部の器官のみが発達した形態を有していてもよい。例えば、本発明では、根部(例えば、毛状根)のみが発達した植物体を好適に使用することができる。根部のみを培養する技術については、例えば、Shimomura K, Sudo H, Saga H, Komada H (1991) Shikonin production and secretion by hairy root cultures of Lithospermum erythrorhizon. Plant Cell Rep 10: 282−285を参照のこと。
本発明において使用される植物は、予め、特殊な条件下(例えば、脂溶性物質が根部の表層部に存在する条件下、根部における脂溶性物質の含有量が多くなる条件下等)において栽培又は培養されたものであってもよい。
本発明の1つの好ましい実施形態において、植物として、ムラサキ科ムラサキが使用される。ムラサキ科ムラサキは、多数の分岐を有する毛状根をもち、その毛状根の表層部に界面活性様作用を有するシコニンという脂溶性物質を保持している。それゆえ、ムラサキ科ムラサキを用いれば、有機汚染物質の効率的な除去が可能である。
本発明の別の1つの好ましい実施形態において、M−9培地で予め培養されたムラサキ科ムラサキの毛状根が使用される。このときの培養条件は、適宜設定され得、例えば、温度が22〜23℃程度、培養日数が3日〜14日程度である。このように予めM−9培地で培養された毛状根は、シコニンを高い含有量で有し得る。
本発明では、前述したような植物を有機物質で汚染された土壌又は水環境において、栽培する。その栽培方法を以下に説明する。
土壌における植物の栽培方法としては、植物種に適した慣例的な方法が用いられる。例えば、前述の植物を汚染土壌へ移植し又は前述の植物の種子を汚染土壌へ播種し、植物種、植物の成長段階、気候などに応じて、水、肥料(例えば、堆肥)、汚染されていない土等を所定量補給しながら栽培することができる。土壌汚染がひどく種子からの栽培が困難な場合は、予め植物にとって好適な生育条件で栽培した後に、汚染土壌へ移植することが望ましい。
ここで、土壌とは、地殻の最表層部分を意味する。土壌を構成する固体、液体、気体の各成分及びバランスは如何なるものであってもよい。それゆえ、本発明の土壌には、水分を多く含む湿地(例えば、河川又はそのほとり、湖沼又はそのほとり、湿原、沼地、海岸、水田、干潟等)や水分量の少ない乾燥地帯も含まれる。
土壌は、概して、例えば、農地、ゴルフ場、牧場、住宅地、商業用地、工業用地、工業用水の流域、産業用地、或いはそれらの予定地又は跡地であるが、これらに限定されない。人工埋立地も、本発明が適用される土壌に含まれる。
次いで、必要に応じて、土壌で栽培した植物を回収する。植物が体内で有機物質を無毒化する場合には、植物を必ずしも回収する必要はないが、有機物質が完全に無毒化されない場合には、回収し、適当な方法で処理することが望ましい。
土壌で栽培した植物を回収する方法としては、植物種に適した慣例的な方法(例えば、収穫機を用いる方法)が用いられる。このとき、根部を含む植物全体を回収することが特に好ましい。また、植物を回収する前に、土壌中の有機物質の濃度を測定し、濃度が低減されたことを確認することが望ましい。そして、有機物質の濃度の低減が目標に達している場合には、植物を回収し、有機物質の濃度の低減が目標に達していない場合には、目標に達するまで植物を栽培するか又は本発明を繰返し実施することが望ましい。
有機物質で汚染された水環境における植物の栽培方法としては、植物種に適した慣例的な方法が用いられる。例えば、予め稚苗以上の成長段階まで栽培した後に、慣例的な水耕栽培を行う。
水耕栽培では、例えば、支持体(例えば、スポンジ、スポンジ状の樹脂)に植物の種子を蒔き、稚苗以上の成長段階に達するまで適当な条件下で栽培する。このとき、植物の根部が支持体に絡まり、水流や浮力に耐え得る程度に固定化されるまで栽培することが好ましい。次いで、根部を支持体ごと有機物質で汚染された水環境へ浸すか、又は、支持体に固定化された植物を容器内に設置し、そこに有機物質汚染水を流し入れる。その後、栽培を続ける。自然環境(例えば、河川、湖沼等)から取水した汚染水を用いる場合、自然環境中の土、粘土、砂等と共に汚染水を取水することが好ましい。また、必要に応じて、水流発生装置、攪拌装置、温度調節装置等を設置してもよい。
次いで、必要に応じて、水環境で栽培した植物を回収する。植物が体内で有機物質を無毒化する場合には、植物を必ずしも回収する必要はないが、有機物質が完全に無毒化されない場合には、回収することが望ましい。水環境で栽培した植物を回収する方法としては、植物種に適した慣例的な方法(例えば、植物が固定化された支持体ごと回収する方法)が用いられる。このとき、根部を含む植物全体を回収することが好ましい。また、植物を回収する前に、水中の有機物質の濃度を測定し、濃度が低減されたことを確認することが望ましい。そして、有機物質の濃度の低減が目標に達している場合には、植物を回収し、有機物質の濃度の低減が目標に達していない場合には、目標に達するまで植物を栽培するか又は本発明を繰返し実施することが望ましい。
本発明の1つの実施形態において、植物として根部(例えば、毛状根)のみが発達した植物が使用される。この植物は、必要に応じて、ネットに入れられるか又は支持体に固定化されて、土壌又は水環境中において栽培され、その後、回収される。
このように本発明を実施することによって、土壌又は水環境中の有機物質を除去することができる。
本発明によって除去される有機物質としては、本発明に従って栽培される植物の根部における脂溶性物質と親和性を有する有機物質であれば、特に限定されない。本発明によって除去される有機物質は、通常、本発明に従って栽培される植物の根部の周囲環境において、脂質に溶ける(脂溶性)又は脂質に溶けやすい、即ち、水に溶けない(不溶性)又は水に溶けにくい(難溶性)性質を有する。
このような有機物質としては、例えば、〔1〕芳香族化合物、〔2〕脂環式化合物、〔3〕複素環式化合物、〔4〕芳香環、芳香属性を有さない炭素環及び芳香属性を有さない複素環からなる群より選択される少なくとも2種の環状構造を有する有機化合物、或いは、〔5〕〔1〕〜〔4〕の誘導体が挙げられる。
芳香族化合物を構成する代表的な芳香環としては、ベンゼン環、縮合ベンゼン環、芳香属性の複素環が挙げられる。芳香族化合物中の芳香環の数は、特に限定されず、1又はそれ以上である。芳香環の骨格を構成する原子の数は、特に限定されないが、多くの場合、5又は6である。
脂環式化合物は、一般的に、炭素原子が環状に結合した構造をもつ炭素環式化合物のうち、芳香族化合物を除くものをいう。脂環式化合物中の炭素環の数は、特に限定されず、1又はそれ以上である。また、炭素環の骨格を構成する炭素原子の数は、特に限定されないが、多くの場合、3、4、5、6、7又は8である。炭素環は、不飽和結合を含まない飽和構造(例えば、シクロアルカン)を有してもよいし、不飽和結合を含む不飽和構造(例えば、シクロアルケン、シクロアルキン)を有してもよい。
複素環式化合物(即ち、ヘテロ環式化合物)とは、環状構造をもつ有機化合物のうち、環状構造の骨格を形成する原子として、炭素原子の他にヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素、リン等)を含む有機化合物をいう。複素環式化合物には、芳香属性を有するものと、芳香属性を有さないものとがあるが、本書における複素環式化合物は、芳香属性を有さない複素環式化合物を意味する。芳香属性を有する複素環式化合物は、前記の芳香族化合物に分類されることとする。複素環化合物中の複素環の数は、特に限定されず、1又はそれ以上である。また、複素環の骨格を構成する原子の数は、特に限定されないが、多くの場合、3、4、5、6又は7である。
芳香環、芳香属性を有さない炭素環及び芳香属性を有さない複素環からなる群より選択される少なくとも2種の環状構造を有する有機化合物とは、前述の芳香族化合物における芳香環、前述の脂環化合物における非芳香属性の炭素環、前述の複素環式化合物における非芳香属性の複素環のうち2又はそれ以上の環状構造を有する有機化合物である。その環状構造の組み合わせは、特に限定されない。
上記有機物質において2又はそれ以上の環が存在する場合には、2又はそれ以上の環が互いに縮合していてもよい。また、2又はそれ以上の環が、慣例的な架橋基を介して架橋されていてもよい。慣例的な架橋基としては、例えば、−CH−、−O−、−S−、−CO−、−CS−、−NH−、−OCONH−、−CONH−が挙げられるが、これらに限定されない。
また、上記有機物質の誘導体としては、上記有機物質の少なくとも1つの官能基を慣例的な置換基、例えば、水素、酸素、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アミノ基、シアノ基、フェニル基等で置換した置換体が例示される。また、有機物質が1又はそれ以上の環を有する場合には、その環の一部が開環したものも、植物根部における脂溶性物質と親和性を有する限りにおいて、上記有機物質の誘導体に含まれる。
有機物質の分子量は、特に限定されないが、通常80〜3000程度、好ましくは、120〜900程度、より好ましくは150〜700程度、さらにより好ましくは200〜500程度である。
有機物質の具体例としては、アトラジン、ケルセン(ディコフォル、ジコホル)、エスフェンバレレート、フェンバレレート、マラチオン、エンドスルファン(ベンゾエピン)、アルドリン、ディルドリン、DDT、ヘプタクロル、クロルデン、HCB(ヘキサクロロベンゼン)、マイレックス、トキサフェン(カンフェクロル)、BHC(ベンゼンヘキサクロライド)、ダイオキシン類(例えば、PCDDs、PCDFs、コプラナーPCBs)、フラン類(例えば、PCDFs)、ベンツピレン等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、アトラジン、ダイオキシン類、PCB、フタル酸エステル類、エストラジオール、ベンツピレンが挙げられる。
また、環状構造を有する有機物質は、環の性質又は環以外の部分の性質にも依存するが、通常、環の数が多いほど水溶性が低い。それゆえ、本発明において用いられる植物の根部における脂溶性物質は、環の数が多い有機物質に対してより高い親和性を示すと考えられる。
本発明により、脂溶性物質が根部の表層部に存在する植物又は根部における脂溶性物質の含有量が多い植物を利用して、有機物質で汚染された土壌又は水環境を浄化する新規な方法が提供された。
本発明は、植物の根部に存在する脂溶性物質と汚染物質との親和性を利用した方法であるため、脂溶性物質と親和性を有する広範囲な有機物質に対して適用され得る。
本発明によれば、水溶性が低く且つ粒子への吸着性が高いために除去が困難であるとされてきた残留性有機物質を除去することができる。
本発明では、プラントマスが大きい植物を用いるため、微生物を用いる方法と異なり、回収が容易である。また、ほぼ完全に植物を回収すれば、微生物を用いる場合のように、特定種類の外来生物のみが異常繁殖することはない。本発明は、界面活性剤を用いる方法と異なり、土壌又は水を試薬で汚染することなく、有機汚染物質を除去することができる。
以下、本発明をより容易に理解するために実施例を記載するが、この実施例は、本発明を何ら限定するものではない。
M−9培地(シコニン生産用培地)の調製
6.0gのNaHPO、3.0gのKHPO、0.5gのNaCl及び1.0gのNHClを滅菌瓶に入れ、水で1リットルにメスアップし、オートクレーブした。手で持てる程度に冷めたら、1.0mlの1M MgSO(オートクレーブ済)、5.6mlの2M Glucose(濾過滅菌済)、1.0mlの1% Vitamine B1(Thiamine)(濾過滅菌済)及び0.1mlの1M CaCl(オートクレーブ済)を加えた。これをM−9培地として使用した。
LS培地(シコニン非生産用培地)の調製
純水900mlにSucrose 30gを溶かし、表1のStockを所定濃度になるようにピペットで加え、よく撹拌した。1N−NaOHと0.1N−NaOHを用い、pHを5.8に調整後、全体を1Lにメスアップし、オートクレーブで滅菌した。これをLS培地として使用した。
Figure 2006297377
ムラサキ毛状根の前培養
LS培地を用いて22℃、暗条件のもと培養した毛状根株を、クリーンベンチ内にて新しいLS培地(シコニン非生産用培地)30mlもしくはM−9培地(シコニン生産用培地)30mlの入った100ml三角フラスコに入れ、22℃、80rpm、暗条件のもと約2週間培養した。
ムラサキ毛状根によるアトラジン処理
以下の操作は全てクリーンベンチ内で行った。滅菌処理した100ml三角フラスコに、29.7mlのM−9培地もしくはLS培地を入れた後、1000mg/L アトラジンエタノール液を0.3ml添加した(最終アトラジン濃度;10mg/L)。コントロール(培地のみ)及び各サンプル(各培地+アトラジン)を1.4mlずつ採取した(0h後のサンプル)。各サンプル(各培地+アトラジン)28.6mlに、湿重量で約1gの毛状根を加えた。暗条件、22℃、80rpmで120h培養を行った後、培地の採取を行った(120h後のサンプル)。
次いで、HPLCにて、0hと120h後のサンプル中のアトラジン濃度を測定した。
培養液中のアトラジン濃度の分析
濃度の分析には高速液体クロマトグラフィーを用いた。以下に分析条件を示す。
HPLCシステム:島津製作所 高速液体クロマトグラフ LC−VP
カラム:ナカライ Cosmosil 5C18−MSII(4.6mm×250mm)
移動相:60%MeOH(0.3% CHCOOH)
流速:1ml/min
検出:254nm
注入量:20μl
温度:35℃
結果
下記の表2に、シコニン生産性毛状根及びシコニン非生産性毛状根によるアトラジンの除去率(%)を2回測定した結果を示す。ここで、シコニン生産性毛状根は、M−9培地で120h培養されたものであり、シコニン非生産性毛状根は、LS培地で120h培養されたものである。
Figure 2006297377
培養液中のアトラジン濃度の経時変化
培地の採取を、0、1、2、3、4、5日経過後に行ったこと以外は、実施例1と同様の操作を行うことによって、培養液中のアトラジン濃度の経時変化を調べた。
結果
図1に結果を示す。図1から、シコニン生産性毛状根(白丸)が存在する培地中のアトラジン濃度が、0日目から5日目まで経時的に減少していることがわかる。これに対し、コントロールであるシコニン非生産性毛状根(黒丸)が存在する培地中のアトラジン濃度は、0日目から2日目にかけて多少減少するものの、2日目以降ほとんど変化していない。シコニン生産性毛状根は、シコニン非生産性毛状根と比べて、持続的且つ多量に培地中のアトラジンを体内に取り込んでいることがわかる。
毛状根中アトラジンの抽出・定量
毛状根からのアトラジン抽出:アトラジンに5日間暴露させたムラサキ毛状根を凍結乾燥した後、メタノールを用いて根からアトラジンを抽出した。抽出液を濃縮した後、含まれるアトラジン量を高速液体クロマトグラフィーにより定量した。
HPLCシステム:島津製作所 高速液体クロマトグラフ LC−VP
カラム:ナカライ Cosmosil 5C18−MSII(4.6mm×250mm)
移動相:60%アセトニトリル(0.3% CHCOOH)流速:1ml/min
検出:254nm
注入量:20μl
温度:35℃
結果
図2に結果を示す。図2から、根に移行したアトラジンの大部分が代謝されることなく存在していることが分かった。
図1は、シコニン生産性毛状根(白丸)、又は、シコニン非生産性毛状根(黒丸)存在下における培地中のアトラジン濃度の経時的変化である。シコニン生産性毛状根(白丸)が存在する培地中のアトラジン濃度が、0日目から5日目まで経時的に減少していることがわかる。これに対し、コントロールであるシコニン非生産性毛状根(黒丸)が存在する培地中のアトラジン濃度は、0日目から2日目にかけて多少減少するものの、2日目以降ほとんど変化していない。 図2は、毛状根による培地中からのアトラジン除去量と、その根からの抽出量の比較である。シコニン産生株とシコニン非産生株につき、それぞれ示した。根に移行したアトラジンの大部分が代謝されることなく存在していることが分かる。

Claims (7)

  1. 脂溶性物質が根部の表層部に存在する植物又は根部における脂溶性物質の含有量が多い植物を有機物質で汚染された土壌又は水環境で栽培して、土壌又は水環境中の有機物質を植物中に取り込む工程、
    を包含する、有機物質で汚染された土壌又は水環境の浄化方法。
  2. 更に、有機物質を取り込んだ植物を回収する工程、を包含する、請求項1に記載の浄化方法。
  3. 前記植物がムラサキ科、キョウチクトウ科及びアカネ科からなる群より選択される少なくとも1種の植物である、請求項1又は2に記載の浄化方法。
  4. 前記植物がムラサキ科ムラサキ、キョウチクトウ科インドジャボク、アカネ科トコン及びアカネ科チャボイナモリからなる群より選択される少なくとも1種の植物である、請求項3に記載の浄化方法。
  5. 前記有機物質が、芳香族化合物、脂環式化合物、複素環式化合物、芳香環、芳香属性を有さない炭素環及び芳香属性を有さない複素環からなる群より選択される少なくとも2種の環状構造を有する有機化合物、並びに、それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の浄化方法。
  6. 前記有機物質が、アトラジン、ダイオキシン類、PCB、フタル酸エステル類、エストラジオール及びベンツピレンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記植物が、M−9培地で培養された毛状根である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011217675A (ja) * 2010-04-09 2011-11-04 Wakanyaku Kenkyusho:Kk ムラサキの栽培方法
CN111187785A (zh) * 2020-02-12 2020-05-22 浙江中医药大学 一种短小蛇根草色氨酸脱羧酶基因OpTDC2的克隆表达及应用

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CN111187785B (zh) * 2020-02-12 2021-07-16 浙江中医药大学 一种短小蛇根草色氨酸脱羧酶基因OpTDC2的克隆表达及应用

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