JP2006290908A - ポリエステル製造方法、ポリエステルおよびポリエステル成型体 - Google Patents

ポリエステル製造方法、ポリエステルおよびポリエステル成型体 Download PDF

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Abstract

【課題】リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、経済性の高い方法でポリエステルの製造工程で留出されるグリコールを循環再使用できる方法を提供する。また、低コストで製造でき、かつ高品質、特に静電密着性に優れたポリエステルおよびその成型体を提供する。
【解決手段】リン化合物の存在下で芳香族ジカルボン酸を主体とするジカルボン酸とエチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールよりなる群から選ばれる1種のグリコールを主たるグリコール成分とする芳香族ポリエステルを連続的に製造する方法において、リン化合物を添加する前の反応槽より留出する留出物とリン化合物を添加した反応槽およびそれ以降の反応槽より留出する留出物を区分して処理し再使用するポリエステル製造方法。また、該製造方法で製造されたポリエステルおよびその成型体。
【選択図】なし

Description

本発明はポリエステルの連続製造方法ならびに該製造方法で製造されたポリエステルおよびその成型体に関する。さらに詳しくは、経済的に実施することができて、かつ高品質なポリエステルが得られるポリエステルの製造方法ならびに該製造方法で製造されたポリエステルおよびその成型体に関するものである。
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステルは、機械的特性および化学的特性に優れており、それぞれのポリエステルの特性に応じて、例えば衣料用や産業資材用の繊維、包装用、磁気テープ用、光学用などのフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等の広範な分野において使用されている。
現在、これらのポリエステルは、反応性を高めるために酸成分に対してグリコール成分を過剰に用いて、エステル化反応あるいはエステル交換反応により両末端にグリコールが縮合されたオリゴマーとして、これを高温、減圧下でエステル交換による脱グリコール反応、いわゆる重縮合反応により高分子量のポリエステルを得る2段階反応の方法がとられている。また、近年、製造コストが安いことより、芳香族ジカルボン酸とグリコールを原料とする、いわゆる直接エステル化法が主流になってきている。そして、それぞれ別の反応槽が用いられており、エステル化反応および重縮合反応ともに均一に段階的に反応を進行させるために、これらの反応装置はそれぞれ複数の反応槽を有している。
直接エステル化法においては、ポリエステルの製造は芳香族ジカルボン酸とグリコールをスラリー調合槽でスラリーを調合しエステル化反応槽に供給されエステル化反応が行われる。芳香族ジカルボン酸が固体でありグリコールに不溶であることより、これらの原料はスラリー状でエステル化反応槽に供給されるが、このスラリーの流動性を確保するため、理論必要量以上のグリコールを原料として供給し、過剰部分を回収する方法が一般的である。また、エステル化されたオリゴマーは重縮合反応槽で脱グリコール反応によりポリエステルが生成される。これらの過剰使用のグリコールや重縮合反応により生ずるグリコールは回収され再使用する必要がある。これらのグリコールの回収、再使用の方法はポリエステルの製造コストに大きく影響を及ぼすので、各種方法が開示されている。
エステル化反応槽の留出液の低沸点留分を精留除去しスラリー調合槽に循環し再使用する方法(特許文献1参照)、エステル化反応槽から排出されるエチレングリコールの低沸点留分を精留除去しエチレングリコール貯槽に供給するとともに、この一部を重縮合反応槽に設けられた湿式コンデンサーの循環液として用い凝縮液をエチレングリコール貯槽に供給し、該エチレングリコール貯槽に滞留したエチレングリコールをスラリー調合用に再使用する方法(特許文献2参照)、重縮合反応槽より発生する留出液を湿式コンデンサーにて凝縮し、エステル化反応槽に設けられた蒸留塔へ送り低沸点留分を除いた後、スラリー調合槽に戻して再使用する方法(特許文献3参照)、重縮合反応槽で発生する留出液を連続的に単蒸留し、この連続単蒸留缶の底部抜き出し液を回分式単蒸留缶に送液して単蒸留を行い、初留部分を除いた蒸留液を重縮合反応ガスの凝縮用冷媒液の一部と使用する方法(特許文献4参照)、エステル化反応槽留出液は低沸点留分を精留除去し、重縮合反応槽留出液は低沸点留分と高沸点留分を除去し、スラリー調合に循環し再使用する方法(特許文献5参照)、エステル化反応2段階目の反応槽から排出される留出液を蒸留精製せずに直接、原料の一部、または全量として再使用する方法(特許文献6参照)、重縮合反応槽からの留出液をフラッシュ蒸留により低沸点留分を精留除去して原料グリコールの一部として再使用する方法(特許文献7参照)が開示されている。
特開昭53−126096号公報 特開昭55−56120号公報 特開昭60−163918号公報 特開平8−325363号公報 特許第3424755号公報 特開平10−279677号公報 WO01/083582号公報
一方、ポリエステルの製造においては、エステル化やエステル交換反応触媒に用いられる金属化合物の封鎖、ポリエステル製造工程で例えば金属化合物との反応により微粒子を析出させるいわゆる内部粒子法あるいはポリエステルに静電密着性を付与するために添加する金属化合物の封鎖や静電密着特性の向上のため等にリン化合物が添加される場合が多い。これらのリン化合物はその一部が留出グリコールに混入する。該留出グリコールに混入したリン化合物は再使用の際に上記反応に影響するのでその混入を阻止あるいは制御する必要があるが、上記の特許文献において開示された技術では、循環再使用されるグリコールへのリン化合物の混入に関しては全く配慮がなされていない。
例えば、特定構造のリン化合物を用いた内部粒子法によるポリエチレンテレフタレートの製造方法おいて、リン化合物の一部がエチレングリコールと共に系外に留出し、このエチレングリコールを再使用すると、エステル交換反応や析出粒子の粒子径や粒子量が変化しフィルムとした時、望みの表面特性を与えるポリエステルが再現よく得られないという課題が知られている。該課題を解決する方法として、ポリエステルの製造工程より留出したエチレングリコールをアルカリ化合物の存在下で加熱処理後蒸留したエチレングリコールを使用する方法(特許文献8)、留出エチレングリコールを同容量以上の水を加えて加熱して、混入したリン化合物を水と共に留去させて得たエチレングリコールを使用する方法(特許文献9参照)および留出エチレングリコールに対して0.2〜10wt%の水を添加し加熱処理した後、蒸留して回収したエチレングリコールを使用する方法(特許文献10参照)が開示されている。
特開昭57−14619号公報 特開昭57−14620号公報 特開昭59−96124号公報
上記方法はリン化合物の回収エチレングリコールに混入を阻止する方法としては有効な方法であるが、経済性の点で不利であるという課題を有する。
従って、リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、ポリエステルの製造工程で留出されるグリコールを経済性の高い方法で留出グリコールに混入するリン化合物を除去し循環再使用できる方法の確立が強く嘱望されている。
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、経済性の高い方法でポリエステルの製造工程で留出されるグリコールを循環再使用できる方法を提供するものである。また、本発明は低コストで製造でき、かつ高品質、特に静電密着性に優れたポリエステルおよびその成型体を提供するものである。
本発明は上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。即ち本発明は、リン化合物の存在下で芳香族ジカルボン酸を主体とするジカルボン酸とエチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールよりなる群から選ばれる1種のグリコールを主たるグリコール成分とする芳香族ポリエステルを連続的に製造する方法において、リン化合物を添加する前の反応槽より留出する留出物とリン化合物を添加した反応槽およびそれ以降の反応槽より留出する留出物を区分して処理し再使用することを特徴とするポリエステル製造方法である。
この場合において、リン化合物を添加する前の反応槽より留出する留出物(A)は水を主体とした低沸点留分を分留除去し、残留分をポリエステル製造用のグリコールの一部または全量として再使用することが、好適である。
さらに、この場合において、リン化合物を添加した反応槽およびそれ以降の反応槽より留出する留出物(B)は水を主体とした低沸点留分とポリエステルオリゴマーやリン化合物等を含む高沸点留分を分留除去した中留分をポリエステル製造用のグリコールの一部または全量として再使用することが好適である。
さらに、この場合において、留出物(B)より回収されたグリコール中のリン元素含有量が10ppm以下であることが好適である。
さらに、この場合において、留出物(B)は水を主体とした低沸点留分を分留除去した後に、再度分留してポリエステルオリゴマーやリン化合物等を含む高沸点留分を分留除去することが好適である。
さらに、この場合において、エステル化反応槽からの留出物の低沸点留分の分留除去は留出物自体が有する熱により行うことが好適である。
さらに、この場合において、リン化合物を第2エステル化反応槽および/またはそれ以降に添加することが好適である。
また、本発明は上記方法で製造されたポリエステルおよびその成型体である。
この場合において、少なくともアルカリ土類金属およびリン化合物を含むポリエステルであり、ポリエステルの溶融比抵抗が0.5×108Ω・cm以下であるポリエステルおよびその成型体が好適である。
本発明によるポリエステルの製造方法は、リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、該ポリエステルの製造工程で留出されるグリコール中に混入するリン化合物を経済性の高い方法で除去しており、該リン化合物によるポリエステルの重縮合触媒活性や品質に対する悪影響を回避し循環再使用できるので、運転経費の削減と設備の簡略化が達成できるという利点を有する。さらには重縮合生産性を低下させることなく、かつ高品質、特に静電密着性の優れたポリエステルが安定して製造できるという極めて顕著な効果を奏する。また、本発明のポリエステルは安価である上に、高品質、特に静電密着性が優れており、例えば、フィルム等の成型体の原料樹脂として好適であるという利点を有する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に言うポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分としそして主たるグリコール成分がエチレングリコール、1,3−プロパンジオールまたは1,4−ブタンジオールであるポリエステルである。
また、本発明で上記ポリエステルを製造する際に対象とする反応は、エステル交換反応またはエステル化反応およびその後の重縮合反応である。エステル交換反応では、芳香族ジカルボン酸成分は、好ましくは、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとして用いた原料に由来し、またエステル化反応では遊離の芳香族ジカルボン酸として用いた原料に由来する。後者のエステル化反応による、いわゆる直接重縮合法の適用が経済性の点で好ましい。
本発明で用いられる芳香族ジカルボン酸としては、例えばオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4、4’
−ビフェニルジカルボン酸、4、4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’−ビ
フェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカル
ボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などが挙げられる。またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、少割合であればジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体等を共重合成分として用いてもよい。
また、本発明のポリエステルには、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール等の三官能以上の多官能化合物あるいは安息香酸、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物等の化合物を共重合することができる。
炭素数2〜4のアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールまたは1,4−ブタンジオールが用いられる。
また、少割合であれば、炭素数2〜4のアルキレングリコール以外のグリコール成分としては、例えばエチレングリコール(主たるグリコールがエチレングリコール以外のとき)、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール(主たるグリコールが1,3−プロパンジオール以外のとき)、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール(主たるグリコールが1,4−ブタンジオール以外のとき)、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、プロピレングリコール等を挙げることができる。これらのグリコール成分は、1種のみで用いても、あるいは2種以上を併せて用いてもよい。また炭素数2〜4のアルキレングリコールが全グリコール成分を基準として100モル%を占めていてもよい。
これらグリコール以外に少量であれば多価アルコールを併用しても良い。該多価アルコールとしては、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸を併用しても良い。該ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、環状エステルの併用も許容される。該環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらの化合物のアルキルエステルやヒドロキシルアルキルエステル等が挙げられる。
ジオールのエステル形成性誘導体としては、ジオールの酢酸等の低級脂肪族カルボン酸とのエステルが挙げられる。
本発明のポリエステルとしてはPET、PBT、ポリプロピレンテレフタレート、PEN、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートおよびこれらの共重合体が好ましく、これらのうちPETおよびこの共重合体が特に好ましい。共重合体としてはエチレンテレフタレート単位を50モル%以上よりなるものが好ましく、70モル%以上がより好ましい。PETが特に好ましい。
本発明のポリエステルの製造は触媒の存在下で行われる。
本発明において使用される触媒は、公知の反応触媒であり、例えばアンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物、ゲルマニウム化合物およびアルミニウム化合物等を用いることができる。
本発明において使用可能なアンチモン化合物としては、特に限定はされないが、好適な化合物として三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが挙げられ、特に三酸化アンチモンの使用が好ましい。また、ゲルマニウム化合物としては、特に限定はされないが、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、特に二酸化ゲルマニウムが好ましい。二酸化ゲルマニウムとしては結晶性のものと非晶性のものの両方が使用できる。
本発明において使用可能なチタン化合物としては特に限定はされないが、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート、蓚酸チタン酸リチウム、蓚酸チタン酸カリウム、蓚酸チタン酸アンモニウム、酸化チタン、チタンとケイ素やジルコニウムやアルカリ金属やアルカリ土類金属などとの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステル、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する多価アルコール、2−ヒドロキシカルボン酸および塩基からなる反応生成物などが挙げられ、このうちチタンとケイ素の複合酸化物、チタンとマグネシウムの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物が好ましい。
またスズ化合物としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド、ジブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸などが挙げられ、特にモノブチルヒドロキシスズオキサイドの使用が好ましい。
また、アルミニウム化合物としては、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩が挙げられる。これらのうちカルボン酸塩が特に好ましい。
このような触媒を供給する位置や供給方法については、特に限定されるものではなく、製造条件に対応して適宜決定すればよい。
本発明においては、リン化合物の使用が必須である。リン化合物としては、特に限定はされないが、リン酸ならびにトリメチルリン酸、トリエチルリン酸、フェニルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル、亜リン酸ならびにトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスファイト等の亜リン酸エステルなどが挙げられる。
本発明においては、アルカリ土類金属化合物の使用が好ましい。さらに、アルカリ金属化合物の併用がより好ましい。
本発明において使用するアルカリ金属は、Li,Na,K,Rb,Csである。NaまたはK化合物の使用が好ましい。アルカリ土類金属としては、Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、特に高度な静電密着性を付与するためには、MgまたはCa化合物の使用が好ましい。
上記のアルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属などの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる場合が有る。さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受け易くなるとともに、重合したポリエステルは着色し易くなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。従って、本発明のアルカリ金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物として好適なものは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、および酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属などの金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、特に酢酸塩の使用が好ましい。
上記のアルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物およびリン化合物を添加することにより、ポリエステルの静電密着性を向上させることができる。ポリエステルの静電密着性とは、例えば、ポリエステルをフィルムやシートに溶融押出し法で成型する場合のキャスティング時に必要な特性である。すなわち、押出口金から溶融押出したフイルム状物を回転冷却ドラムで急冷する際、該フイルム状物の表面に静電荷を析出させ、フイルム状物を冷却ドラムの表面に静電力で密着させる静電密着法が知られている。しかし、この方法においては、生産能力を高めるために冷却ドラムの回転速度を上げるとフイルム状物と冷却ドラムとの密着力が減少し、フイルム状物と冷却ドラムとの間に気体を噛み込むようになるピンナーバブルの発生がおこり、厚み斑や外観不良発生の原因となる。静電密着性とは、この静電密着法において、大きな静電密着力が付与できるようにポリエステルの特性を改質し、高速でキャスティングしても厚み精度の高い製膜製品が得られるポリエステル樹脂の特性である。
近年ポリエステルフィルムやシートに対する品質に対する要求特性はますます厳しくなり、それに伴い厚み精度を向上させることが必要な条件となってきており、ポリエステルの重要な特性の一つである。
この静電密着性はポリエステルの溶融比抵抗と相関しており、ポリエステルの溶融比抵抗により静電密着キャスト法においてピンナーブルの発生を抑制しながらキャストできる最高のキャスティング速度、すなわち静電密着性が変化する。溶融比抵抗が低ポリエステルほど、高速でキャスティングすることが可能となり、フイルム生産性の面から非常に重要である。
ポリエステルの溶融比抵抗は、0.5×108Ω・cm以下であることが好ましい。0.5×108Ω・cmより高ければ、静電密着性が悪化し、キャスティング速度が遅くなり生産性が悪くなる。好ましくは、0.4×108Ω・cm以下、さらに好ましくは、0.3×108Ω・である。このポリエステルの溶融比抵抗を付与を付与する方法は限定されないが、上記のアルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物およびリン化合物をポリエステルに添加し、これらの元素の原子比を特定範囲にすることが好ましい実施態様である。この場合、リン元素の量によりポリエステルの溶融比抵抗が大きく変化するので厳密な制御が必要である。
アルカリ土類金属化合物およびアルカリ金属化合物としては、それぞれの金属元素としてポリエステル中の残存量として3〜200ppmおよび0.5〜20ppmが好ましい。
また、リン化合物としては、ポリエステル中の残存量としてリン元素/アルカリ土類金属元素の原子比で0.1〜5.0の範囲で添加するのが好ましい。
ポリエステル中のアルカリ土類金属元素含有量は5〜160ppmがより好ましく、10〜120ppmがさらに好ましく、15〜100ppmがよりさらに好ましい。アルカリ土類金属元素含有量が3ppm未満ではポリエステルの溶融比抵抗の低下が少なくなり静電密着性が悪化するので好ましくない。逆に、200ppmを超えた場合は、ポリエステルの熱安定性等の安定性が低下したり、ポリエステルの着色が増大するので好ましくない。
ポリエステル中のアルカリ金属元素含有量は1〜40ppmがより好ましく、2〜30ppmがさらに好ましく、3〜20ppmがよりさらに好ましい。アルカリ金属元素含有量が0.5ppm未満ではポリエステルの溶融比抵抗の低下が少なくなり静電密着性が悪化する。さらに、副反応であるグリコール成分同士の縮合反応が増加し、例えば、グリコール成分としてエチレングリコールを用いた場合はジエチレングリコールの副生が増大する。該副反応の増大によりポリエステルの融点低下や熱酸化安定性等の品質低下が低下するので好ましくない。逆に、50ppmを超えた場合は、ポリエステルの溶融比抵抗の低下やグリコール成分同士の縮合反応の抑制効果が頭打ちになり、かつポリエステルの着色が増大し色調の低下が起こるので好ましくない。
リン元素/アルカリ土類金属元素(原子比)は0.15〜4.0がより好ましく、0.20〜3.0がさらに好ましい。リン元素/アルカリ土類金属元素(原子比)が0.10未満ではポリエステルの熱安定性が低下するので好ましくない。一方、リン元素/アルカリ土類金属元素(原子比)が5.0を超えた場合は、ポリエステルの溶融比抵抗の低下が少なくなり静電密着性が悪化するので好ましくない。
本発明におけるポリエステルの製造方法は連続式重縮合法である必要がある。連続式重縮合法は回分式重縮合法に比して品質の均一性や経済性において有利である。本発明における連続式重縮合法は、ジカルボン酸とジオールとの反応で製造する、いわゆる直接エステル化法であってもジカルボン酸のエステル形成性誘導体とジオールとの反応で製造する、いわゆるエステル交換法のどちらであっても構わない。また、エステル化、エステル交換および重縮合工程の反応器の個数やサイズおよび各工程の製造条件等は限定なく適宜選択できる。前述のごとく直接エステル化法が経済性の点で有利であり好ましい。
直接エステル化法による製造法を以下に例示する。
テレフタル酸1モルに対して1.02〜1.5モル、好ましくは1.03〜1.4モルのエチレングリコ−ルが含まれたスラリ−を調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。
エステル化反応は、1〜3個のエステル化反応槽を直列に連結した多段式装置を用いて、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は常圧〜0.29MPa、好ましくは0.005〜0.19MPaである。最終段目のエステル化反応の温度は通常250〜290℃好ましくは255〜275℃であり、圧力は通常0〜0.15MPa、好ましくは0〜0.13MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配されることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化反応により分子量500〜2000程度の低次縮合物が得られる。引き続き重縮合反応槽に移送し重縮合を行う。該重縮合工程の反応槽数も限定されない。一般には初期重縮合、中期重縮合および後期重縮合の3段階方式が取られている。重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は0.065〜0.0026MPa、好ましくは200〜30Torrで、最終段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は0.0013〜0.000013MPa、好ましくは0.00065〜0.000065MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される極限粘度の上昇の度合は滑らかに分配されることが好ましい。
エステル交換法の場合は、エステル交換反応は、1〜2個のエステル交換反応器を直列に連結した装置を用いて、例えば、ジメチルテレフタレートとエチレングリコ−ルとを連続的に反応器に供給し、反応によって生成したメタノ−ルを精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル交換反応の温度は180〜250℃、好ましくは200〜240℃である。最終段目のエステル交換反応の温度は通常230〜270℃、好ましくは240〜265℃であり、エステル交換触媒として、Zn,Cd,Mg,Mn,Co,Ca,Baなどの脂肪酸塩、炭酸塩等を用いる。
エステル交換法で実施する場合は、エステル交換反応終了時にリン化合物を添加し上記エステル交換触媒を封鎖することが好ましい。
本発明においては、リン化合物を添加する前の反応槽より留出する留出物とリン化合物を添加した反応槽およびそれ以降の反応槽より留出する留出物を区分して処理し再使用することが重要である。
前述のごとく、ポリエステルの製造工程において添加されるリン化合物はその一部が留出グリコールに混入するために、該留出グリコールを再使用する場合には、回収グリコール中にリン化合物の混入を阻止あるいは制御する必要がある。特に、本発明の好ましい実施態様であるポリエステルの静電密着性を向上させるためにアルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物およびリン化合物をポリエステルに添加し、これらの元素の原子比を特定範囲にする方法においては、リン化合物の量によりこの特性が大きく変化するので極めて重要である。また、重縮合触媒としてチタン系、錫系あるいはアルミニウム系触媒を用いる場合もリン化合物の量は重縮合触媒活性に大きく影響するので重要である。該留出グリコールに混入されるリン化合物は添加時とは構造が変化しており、上記影響に対してより顕著な影響を及ぼすという側面を有している。一方、リン化合物を添加する前の反応槽より留出する留出物にはリン化合物が混入しないので、両者を区分して処理し再使用することは、経済性、すなわち、運転経費の節減と設備の簡略化に大きな影響を及ぼす。
リン化合物を添加する前の反応槽より留出する留出物(A)は、水を主体とした低沸点留分を分留除去し、残留分をポリエステル製造用のグリコールの一部または全量として再使用することが好ましい。
一方、リン化合物を添加した反応槽およびそれ以降の反応槽より留出する留出物(B)は、水を主体とした低沸点留分とポリエステルオリゴマーやリン化合物等を含む高沸点留分を分留除去した中留分をポリエステル製造用のグリコールの一部または全量として再使用することが好ましい。該留出物(B)も留出物(A)と同様に水を主体とした低沸点留分を分留除去し、残留分をポリエステル製造用のグリコールの一部または全量として再使用、すなわち、特許文献3に記載の方法に準じた方法で実施した場合は、回収グリコールにリン化合物が混入し悪影響を及ぼすので好ましくない。
また、留出物(A)も留出物(B)と同様に低沸点留分と高沸点留分の両方を分留除去した中留分をポリエステル製造用のグリコールの一部または全量として再使用した場合は、留出物(A)の処理が過剰となり設備および運転経費の増大に繋がり経済的に不利となり好ましくない。一般に、留出物(A)は留出物(B)に比して量が多いので、本発明の方法である両者を区分して実施することの経済的効果は大きい。
本発明においては、留出物(B)は水を主体とした低沸点留分を分留除去した後に、再度分留してポリエステルオリゴマーやリン化合物等を含む高沸点留分を分留除去することが好適である。さらに、この場合において、エステル化反応槽からの留出物の低沸点留分の分留除去は留出物自体が有する熱により連続的に行うことが好適である。このことにより、運転経費の節減と設備の簡略化がより増大できる。必要において、配管の加熱や熱交換により補助加熱することも排除はされない。重縮合反応槽からの留出物は、一般には湿式コンデンサーで冷却凝縮される回収されるので、加熱して蒸留塔に供給される。高沸点留分の分留除去は回分式で実施してもよい。
さらに、本発明においては、設備および運転経費が増大する留出物(B)の処理量を出来るだけ軽減する意味で、リン化合物の添加を第2エステル化反応槽以降のできるかぎり工程の後の方に設定するのが好ましい。
低沸点留分および高沸点留分除去のそれぞれの蒸留塔の性能は前者が8〜15段、後者が20〜30段が好ましい。泡鐘カラムおよび充填カラムのどちらでもよい。還流比は蒸留塔の性能や回収グリコールの要求品質により適宜設定される。
本発明においては、留出物(B)より低沸点留分および高沸点留分が除去された回収グリコールはリン元素含有量が10ppm以下であることが好ましい。8ppm以下がより好ましく、5ppm以下がさらに好ましい。リン元素含有量が10ppmを超えた場合は、該回収グリコールを使用すると前述したようなリン化合物による好ましくない現象が引き起こされる。
留出物(A)や(B)より低沸点留分を除去する蒸留においては、蒸留の温度管理は、最上段でなく中段で検出し行う方が管理精度が向上するので好ましい。
本発明において、炭素数2〜4のアルキレングリコールを含有する留出物から分離される低沸点物としては、炭素数2〜4のアルキレングリコールとしてエチレングリコールを使用した場合は、水、アセトアルデヒド、2−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルセロソルブあるいはこれらの化合物以外の沸点が165℃以下のものが主たる対象となる。炭素数2〜4のアルキレングリコールとして1,3−プロパンジオールを使用した場合は、水、アリルアルコール、アクロレイン、3−エトキシ−1−プルパノールあるいはこれらの化合物以外の沸点が165℃以下のものが主たる対象となる。炭素数2〜4のアルキレンコールとして1,3−プロパンジオールを使用した場合は、水、アリルアルコール、アクロレイン、3−エトキシ−1−プルパノールあるいはこれらの化合物以外の沸点が165℃以下のものが主たる対象となる。炭素数2〜4のアルキレングリコールとして1,4−ブタンジオールを使用した場合は、テトラヒドロフラン、水あるいはテトラヒドロフラン以外の沸点が165℃以下の化合物が主たる対象となる。
上記方法で回収されたグリコールの再使用方法は、限定されない。グリコール貯槽に蓄えた後に、ポリエステル製造用のグリコールとして再使用するのが好ましい。留出物(A)および(B)からの回収グリコールはそれぞれ別個の貯槽に蓄えてもよいし、一括して蓄えてもよい。また、回収されたプラントで使用してもよいし、別プラントで使用してもよい。また、留出物(A)の場合は、蒸留塔下部の体積を大きくしてこの部分に貯留をしてもよい。
本発明においては、必要に応じて、工程内、外において未精製あるいは精製グリコールを濾過等の処理を行いポリエステルオリゴマー等の固形分を除去し、配管詰りを回避したり、純度を向上させる等の方法を取り入れることも好ましい実施態様である。
回収グリコールの使用割合は制限がなく、適宜設定して使用することができる。全量を回収グリコール用いてポリエステルを製造してもよい。
本発明におけるエステル化またはエステル交換反応条件や生成物の低次縮合物の特性および重縮合反応条件は、ポリエステルの品質や生産性を考慮し適宜設定すればよい。
なお、本発明においては、回収PETボトルの化学分解回収法で得られたテレフタル酸、ジメチルテレフタレートあるいはエチレングリコール等のリサイクル原料を用いることは、省資源や環境保護に役立つので好ましい実施態様である。
本発明方法により得られたポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス気流下でポリエステル樹脂を加熱し、さらに重縮合を進めたり、該ポリエステル樹脂中に含まれている環状3量体等のオリゴマーやアセトアルデヒド等の副生成物を除去する等の手段を取ることも何ら制約を受けない。また、例えば超臨界圧抽出法等の抽出法でポリエステル樹脂を精製し前記の副生成物等の不純物を除去する等の処理を行うことを取り入れても良い。
本発明のポリエステル中には、有機系、無機系、及び有機金属系のトナー、ならびに蛍光増白剤などを含むことができ、これらを一種もしくは二種以上含有することによって、ポリエステルの黄み等の着色をさらに優れたレベルにまで抑えることができる。また他の任意の重合体や制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
これらの添加剤は、ポリエステルの重合時もしくは重合後、あるいはポリエステルの成形時の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは対象とするポリエステルの構造や得られるポリエステルの要求性能に応じてそれぞれ適宜選択すれば良い。
本発明のポリエステル重縮合触媒を用いて重縮合したポリエステルは常法の溶融紡糸法により繊維を製造することが可能であり、紡糸・延伸を2ステップで行う方法及び1ステップで行う方法が採用できる。さらに、捲縮付与、熱セットやカット工程を備えたステープルの製造方法やモノフィラメントなど公知の繊維製造方法がすべて適用できるものである。
また得られた繊維は異型断面糸、中空断面糸、複合繊維、原着糸等の種々繊維構造となすことができ、糸加工においても例えば混繊、混紡、等の公知の手段を採用することができる。
更に上記ポリエステル繊維は織編物或いは不織布、等の繊維構造体となすことができる。
そして上記ポリエステル繊維は、衣料用繊維、カーテン、カーペット、ふとん綿、ファイバーフィル等に代表されるインテリア・寝装用繊維、タイヤコード、ロープ等の抗張力線、土木・建築資材、エアバッグ等の車輛用資材、等に代表される産業資材用繊維、各種織物、各種編物、ネット、短繊維不織布、長繊維不織布用、等の各種繊維用途に使用することができる。
本発明のポリエステルは、中空成形体として好適に用いられる。
中空成形体としては、ミネラルウオーター、ジュース、ワインやウイスキー等の飲料容器、ほ乳瓶、瓶詰め食品容器、整髪料や化粧品等の容器、住居および食器用洗剤容器等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエステルの持つ衛生性及び強度、耐溶剤性を活かした耐圧容器、耐熱耐圧容器、耐アルコール容器として各種飲料用に特に好適である。中空成形体の製造は、溶融重合や固相重合によって得られたポリエステルチップを真空乾燥法等によって乾燥後、押し出し成型機や射出成形機等の成形機によって成形する方法や、溶融重合後の溶融体を溶融状態のまま成形機に導入して成形する直接成形方法により、有底の予備成形体を得る。さらに、この予備成形体を延伸ブロー成形、ダイレクトブロー成形、押出ブロー成形などのブロー成型法により最終的な中空成形体が得られる。もちろん、上記の押し出し成型機や射出成形機等の成形機によって得られた成形体を最終的な中空容器とすることもできる。
このような中空成形体の製造の際には、製造工程で発生した廃棄樹脂や市場から回収されたポリエステル樹脂を混合することもできる。このようなリサイクル樹脂であっても、本発明のポリエステル樹脂は劣化が少なく、高品質の中空成型品を得ることができる。
さらには、このような容器は、中間層にポリビニルアルコールやポリメタキシリレンジアミンアジペートなどのガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層やリサイクルポリエステル層を設けた多層構造をとることも可能である。また、蒸着やCVD(ケミカルベーパーデポジット)等の方法を用いて、容器の内外をアルミニウムなどの金属やダイヤモンド状カーボンの層で被覆することも可能である。
なお、中空成形体の口栓部等の結晶性を上げるため、ポリエチレンを初めとする他の樹脂やタルク等の無機核剤を添加することもできる。
また、本発明のポリエステルは押し出し機からシ−ト状物に押し出し、シートとすることもできる。このようなシートは、真空成形や圧空成形、型押し等により加工し、食品や雑貨用のトレイや容器、カップ、ブリスタ−パック、電子部品のキャリアテープ、電子部品配送用トレイとして用いる。また、シートは各種カードとして利用することもできる。
これら、シートの場合でも、上述のような中間層にガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層やリサイクルポリエステル層を設けた多層構造をとることも可能である。
また、同様にリサイクル樹脂を混合することもできる。さらには、結晶性の耐熱性容器とすることを目的に、ポリエチレンを初めとする他の樹脂やタルク等の無機核剤を添加し、結晶性を高めることできる。
本発明のポリエステル製造方法で得られたポリエステルは、フイルムに用いることができる。その方法は、ポリエステルを溶融押出しし、T−ダイスより冷却回転ロール上にシート状に成型し、未延伸シートを作成する。この際、例えば特公平6−39521号公報、特公平6−45175号公報に記載の技術を適用することにより、高速製膜性が可能となる。また、複数の押出し機を用い、コア層、スキン層に各種機能を分担させ、共押出し法により積層フイルムとしても良い。
本発明のポリエステル製造方法で得られたポリエステルは、配向ポリエステルフィルムに用いることができる。配向ポリエステルフイルムは、公知の方法を用いて、ポリエステルのガラス転移温度以上結晶化温度未満で、少なくとも一軸方向に1.1〜6倍に延伸することにより得ることができる。
例えば、二軸配向ポリエステルフイルムを製造する場合、縦方向または横方向に一軸延伸を行い、次いで直交方向に延伸する逐次二軸延伸方法、縦方向及び横方向に同時に延伸する同時二軸延伸する方法、さらに同時二軸延伸する際の駆動方法としてリニアモーターを用いる方法のほか、横・縦・縦延伸法、縦・横・縦延伸法、縦・縦・横延伸法など、同一方向に数回に分けて延伸する多段延伸方法を採用することができる。
さらに、延伸終了後、フイルムの熱収縮率を低減させるために、(融点−50℃)〜融点未満の温度で30秒以内、好ましくは10秒以内で熱固定処理を行い、0.5〜10%の縦弛緩処理、横弛緩処理などを施すことが好ましい。
前述のごとく本発明のポリエステルは優れた静電密着性を有しているので、該フイルムの製造時のキャスティング工程には静電密着法を採用するのが好ましい実施態様である。
得られた配向ポリエステルフイルムは、厚みが1μm以上1000μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上200μm以下である。1μm未満では腰が無く取り扱いが困難である。また1000μmを超えると硬すぎて取り扱いが困難である。
また、接着性、離型性、制電性、赤外線吸収性、抗菌性、耐擦り傷性、などの各種機能を付与するために、配向ポリエステルフイルム表面にコーティング法により高分子樹脂を被覆してもよい。また、被覆層にのみ無機及び/又は有機粒子を含有させて、易滑高透明ポリエステルフイルムとしてもよい。さらに、無機蒸着層を設け酸素、水、オリゴマーなどの各種バリア機能を付与したり、スパッタリング法などで導電層を設け導電性を付与することもできる。また、配向ポリエステルフイルムの滑り性、走行性、耐摩耗性、巻き取り性などのハンドリング特性を向上させるために、ポリエステルの重合工程で、無機及び有機塩粒子又は耐熱性高分子樹脂粒子を添加して、フイルム表面に凹凸を形成させてもよい。また、これらの粒子は無機・有機又は親水・疎水等の表面処理がされたもの、されていないもの、どちらを使っても良いが、例えば分散性を向上させる等の目的で、表面処理した粒子を用いる方が好ましいケースがある。
無機粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム、ソジュウムカルシウムアルミシリケート等が挙げられる。
有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他に、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子を用いても良い。
上記不活性粒子を基材フイルムとなるポリエステル中に含有させる方法は、限定されないが、(a)ポリエステル構成成分であるジオール中で不活性粒子をスラリー状に分散処理し、該不活性粒子スラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する方法、(b)ポリエステルフイルムの溶融押出し工程においてベント式二軸押出し機で、溶融ポリエステル樹脂に分散処理した不活性粒子の水スラリーを添加する方法、(c)ポリエステル樹脂と不活性粒子を溶融状態で混練する方法(d)ポリエステル樹脂と不活性粒子のマスターレジンを溶融状態で混練する方法などが例示される。
重合反応系に添加する方法の場合、不活性粒子のジオールスラリーを、エステル化反応またはエステル交換反応前から重縮合反応開始前の溶融粘度の低い反応系に添加することが好ましい。また、不活性粒子のジオールスラリーを調製する際には、高圧分散機、ビーズミル、超音波分散などの物理的な分散処理を行うとことが好ましい。さらに、分散処理したスラリーを安定化させるために、使用する粒子の種類に応じて適切な化学的な分散安定化処理を併用することが好ましい。
分散安定化処理としては、例えば無機酸化物粒子や粒子表面にカルボキシル基を有する架橋高分子粒子などの場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物をスラリーに添加し、電気的な反発により粒子間の再凝集を抑制することができる。また、炭酸カルシウム粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などの場合にはトリポリ燐酸ナトリウムやトリポリ燐酸カリウムをスラリー中に添加することが好ましい。
また、不活性粒子のジオールスラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する際、スラリーをジオールの沸点近くまで加熱処理することも、重合反応系へ添加した際のヒートショック(スラリーと重合反応系との温度差)を小さくすることができるため、粒子の分散性の点で好ましい。
本発明の配向ポリエステルフイルムは、好ましくは帯電防止性フイルム、易接着性フイルム、カード用、ダミー缶用、農業用、建材用、化粧材用、壁紙用、OHPフイルム用、印刷用、インクジェット記録用、昇華転写記録用、レーザービームプリンタ記録用、電子写真記録用、熱転写記録用、感熱転写記録用、プリント基板配線用、メンブレンスイッチ用、プラズマディスプレイ用、タッチパネル用、マスキングフィルム用、写真製版用、レントゲンフィルム用、写真ネガフィルム用、位相差フイルム用、偏光フイルム用、偏光膜保護(TAC)用、プロテクトフィルム用、感光性樹脂フイルム用、視野拡大フイルム用、拡散シート用、反射フイルム用、反射防止フイルム用、導電性フイルム用、セパレータ用、紫外線防止用、バックグラインドテープ用などに用いられる。
帯電防止用フイルムとしては、例えば特許第2952677号公報、特開平6−184337号公報に記載の技術を用いることができる。易接着性フイルムとしては、例えば特公平07−108563、特開平10−235820、特開平11−323271号公報に、カード用としては例えば特開平10−171956、特開平11−010815号公報に記載の技術を本発明のフイルムに適用できる。ダミー缶用としては例えば特開平10−101103号公報に記載のシート状筒体の替わりに、本発明のフイルム上に意匠を印刷し筒状、半筒状にしたものを用いることができる。建材用、建材用化粧版、化粧材用としては、例えば特開平05−200927号公報に記載の基材シート、特開平07−314630号公報に記載の透明シートとして本発明のフイルムを用いることができる。OHP用(オーバーヘッドプロジェクタ用)としては特開平06−297831号公報に記載の透明樹脂シート、特開平08−305065号公報に記載の透明高分子合成樹脂フイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。インクジェット記録用としては、例えば特開平05−032037号公報に記載の透明基材として本発明のフイルムを用いることができる。昇華転写記録用としては例えば特開2000−025349号公報に記載の透明なフイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。レーザービームプリンタ用、電子写真記録用としては例えば特開平05−088400号公報に記載のプラスチックフイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。熱転写記録用としては例えば特開平07−032754号公報に感熱記録用としては特開平11−034503号公報にそれぞれ記載の方法で本発明のフイルムを用いることができる。プリント基板用としては例えば特開平06−326453号公報に記載のポリエステルフイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。メンブレンスイッチ用としては例えば特開平05−234459号公報に記載の方法で本発明のフイルムを用いることができる。光学フィルタ(熱線フィルタ、プラズマディスプレイ用)としては、例えば特開平11−231126号公報に記載の方法で本発明のフイルムを用いることができる。透明導電性フイルム、タッチパネル用としては例えば特開平11−224539号公報に記載の方法で本発明のフイルムを用いることができる。マスキングフィルム用としては、例えば特開平05−273737号公報に記載の方法で本発明のフイルムを用いることができる。写真製版用としては例えば特開平05−057844号公報に記載の方法で本発明のフイルムを用いることができる。写真用ネガフィルムとしては例えば特開平06−167768号公報の段落番号(0123)に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムとして本発明のフイルムを用いることができる。位相差フイルム用としては例えば特開2000−162419号公報に記載のフイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。セパレータ用としては、例えば特開平11−209711号公報の段落番号(0012)に記載のフイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。紫外線防止用としては例えば特開平10−329291号公報に記載のポリエステルフイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。農業用フイルムとしては、特開平10−166534号公報に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムに本発明のフイルムを適用することにより得ることができる。粘着シートとしては例えば特開平06−122856号公報に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムに本発明の配向ポリエステルフイルムを適用することにより得られる。
これら、シートの場合でも、上述のような中間層にガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層やリサイクルポリエステル層を設けた多層構造をとることも可能である。
また、同様にリサイクル樹脂を混合することもできる。さらには、結晶性の耐熱性容器とすることを目的に、ポリエチレンを初めとする他の樹脂やタルク等の無機核剤を添加し、結晶性を高めることできる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、評価法は以下の方法で実施した。
1、固有粘度(IV)の測定
フェノール/テトラクロロエタン(60:40、重量比)混合溶媒を用いて、30℃で測定した。
2、ポリマー溶融比抵抗(ρi)
275℃で溶融したポリエステル中に2枚の電極板を置き、120Vの電圧を印加した時の電流値(i0)を測定し、比抵抗値ρiを次式により求める。
ρi(Ω・cm)=A/l×V/ i0
ここで、A=電極面積(cm2)、l=電極間距離(cm)、V=電圧(V)である。
3、静電密着性
押出機の口金部と冷却ドラムの間にタングステンワイヤー製の電極を設け、電極とキャスティングドラム間に10〜15KVの電圧を印加してキャスティングを行い、得られたキャスティング原反の表面を肉眼で観察し、ピンナーバブルの発生が起こり始めるキャスティング速度で評価する。キャスティング速度が大きいポリマー程、静電密着性が良好である。
4、回収エチレングリコールの組成分析
試料液に30容量%のジメチルスルホキサイドを添加し、H−NMRおよびC−NMR測定を行い評価した。
5、回収エチレングリコール中のリン元素量の定量
試料を硝酸マグネシウム共存下、550℃で灰化後、1.2M塩酸溶液としてから高周波プラズマ発光分析法により定量した。
実施例1
エステル化反応装置として、攪拌装置、精留塔、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を使用し、テレフタル酸を2トン/hrとし、エチレングリコールをテレフタル酸1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してアンチモン原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で255℃で反応させた。次に、上第1エステル化反応缶内の反応性生物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるエチレングリコールを生成ポリマー(生成PET)に対し8重量%供給し、さらに、生成PETに対してマグネシュウム元素が65ppmとなる量の酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液、生成PETに対してナトリウム元素で5ppmとなる量の酢酸ナトリウムのエチレングリコール溶液および生成PETに対してP元素が20ppmのとなる量のトリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で260℃で反応させた。次に、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、さらに生成PETに対してリン元素が20ppmのとなる量のトリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で260℃で反応させた。
上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、極限粘度0.620dl/gのポリエステルを得た。得られたポリエステルの溶融比抵抗は0.21×108Ω・cmであり、最大キャスチング速度は62m/分であった。
上記ポリエステル製造工程におけるエチレングリコールの流れを図1に示す。
スラリー調合槽2へ供給されるフレッシュエチレングリコールと回収エチレングリコールは質量比で0.4:0.6である。
第一エステル化反応槽3より留出する留出分は段数が15段の泡鐘タイプの蒸留塔
9に供給され水を主体として低沸点留分を除去し、エチレングリコール貯層15に供給される。ここで回収されるエチレングリコールはスラリー調合槽へ供給されるエチレングリコールの約半量になる。この場合、蒸留に必要な熱は留出分自体が有する熱量で足りるので加熱の必要はない。
第2エステル化反応槽4および第3エステル化反応槽5から留出する留出分は蒸留塔10に供給され水を主体として低沸点留分を除去し、高沸点留分除去用の蒸留塔14に供給される。蒸留塔10および14の段数はそれぞれ15および30段である。
3基の重縮合反応槽6〜8よりから留出する留出分は蒸留塔10に供給され水を主体として低沸点留分を除去し、高沸点留分除去用の蒸留塔14に供給される。ただし、これらの留出物は減圧系で発生するため各反応槽に設置された湿式コンデンサーで凝縮させてエチレングリコール凝縮液貯槽16〜18に供給された後に蒸留塔10に供給される。そのために、熱交換器22で蒸留のための熱量が供給される。一方、第2エステル化反応槽4および第3エステル化反応槽5から留出する留出分は留出分自体が有する熱で蒸留できるので加熱は必要がない。この時、湿式コンデンサーに噴霧されるエチレングリコール液の温度の上昇を抑えるために冷却器19〜21で冷却し湿式コンデンサーに供給される。この凝縮液は各湿式コンデンサーで凝縮された凝縮液自体の自己循環で実施されるが、必要に応じてエチレングリコール貯槽15に貯槽されたエチレングリコールを供給してもよい。
各蒸留塔で回収されたエチレングリコールの成分分析結果を表1に示す。また、蒸留塔14で高沸点留分を留去した回収エチレングリコール中のリン元素含有量は2.5ppmであった。
Figure 2006290908
比較例1
実施例1の方法において、蒸留塔10の塔底留分を蒸留塔14に供給して高沸点留分の除去処理を行うことなくエチレングリコール貯槽15に供給するように変更する以外は、実施例1と同様にして重縮合を行いポリエステルを得た。本比較例1におけるポリエステル製造工程におけるエチレングリコールの流れを図2に示す。蒸留10の塔底留分中にはリン元素が150ppm含まれていた。本比較例で得られたポリエステルの溶融比抵抗は0.81×108Ω・cmと高く、最大キャスチング速度は30m/分であり、静電密着性が著しく劣っていた。また、実施例1に比べ重縮合触媒活性が低下し、ポリエステルの極限粘度も0.605と低かった。
比較例2
比較例1の方法で第2エステル化反応槽に添加するTMP量の添加を取り止め、回収エチレングリコールで持ち込まれたリン化合物で代替する以外は、比較例1と同様にして比較例2のポリエステルを得た。本比較例で得られたポリエステルの溶融比抵抗は0.59×108Ω・cmと高く、最大キャスチング速度は42m/分であり、実施例1で得られたポリエステルに比して静電密着性が劣っていた。この、静電密着性が悪化した原因は明確ではないが、回収エチレングリコール中に含まれるリン化合物は、実施例1で用いたTMPがエチレングリコールエステル等の構造に変質しているために引き起こされた現象と推定している。
実施例2
実施例1の方法において、三酸化アンチモンをテトラブチルチタネートに変更し、かつその添加量を生成ポリエステルに対してチタン原子として15ppmになるように変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施例2のポリエステルを得た。得られたポリエステルの極限粘度は0.62であった。また、溶融比抵抗は0.20×108Ω・cmであり、静電密着性は良好であった。
比較例3
実施例2の方法において、エチレングリコールの回収方法を比較例1の方法に変更する以外は、実施例2と同様にして比較例3のポリエステルを得た。回収エチレングリコール中に存在するリン化合物の影響でチタン触媒の失活が起こり極限粘度が0.450で頭打ちになり所定の極限粘度のポリエステルが得られなかった。
本発明によるポリエステルの製造方法は、リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、該ポリエステルの製造工程で留出されるグリコール中に混入するリン化合物を経済性の高い方法で除去しており、該リン化合物によるポリエステルの重縮合触媒活性や品質に対する悪影響を回避し循環再使用できるので、運転経費の削減と設備の簡略化が達成できるという利点を有する。さらには高品質、特に静電密着性の優れたポリエステルが安定して製造できるという極めて顕著な効果を奏する。また、本発明のポリエステルは安価である上に、高品質、特に静電密着性が優れており、例えば、フィルム等の成型体の原料樹脂として好適であるという利点を有するので産業界に寄与することが大である。
実施例1および2におけるポリエステル製造工程のエチレングリコールの流 れ図である。 比較例1および3におけるポリエステル製造工程のエチレングリコールの流 れ図である。
符号の説明
1:液面計
2:スラリー調合槽
3:第1エステル化反応槽
4:第2エステル化反応槽
5:第3エステル化反応槽
6:第1重縮合反応槽
7:第2重縮合反応槽
8:第3重縮合反応槽
9、10、14:蒸留塔
11〜13:湿式コンデンサー
15:エチレングリコール貯槽
16〜18:エチレングリコール凝縮液貯槽
19〜21:冷却器
22:熱交換器
23〜36:ポンプ

Claims (9)

  1. リン化合物の存在下で芳香族ジカルボン酸を主体とするジカルボン酸とエチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールよりなる群から選ばれる1種のグリコールを主たるグリコール成分とする芳香族ポリエステルを連続的に製造する方法において、リン化合物を添加する前の反応槽より留出する留出物とリン化合物を添加した反応槽およびそれ以降の反応槽より留出する留出物を区分して処理し再使用することを特徴とするポリエステル製造方法。
  2. リン化合物を添加する前の反応槽より留出する留出物(A)は、水を主体とした低沸点留分を分留除去し、残留分をポリエステル製造用のグリコールの一部または全量として再使用することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル製造方法。
  3. リン化合物を添加した反応槽およびそれ以降の反応槽より留出する留出物(B)は、水を主体とした低沸点留分とポリエステルオリゴマーやリン化合物等を含む高沸点留分を分留除去した中留分をポリエステル製造用のグリコールの一部または全量として再使用することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル製造方法。
  4. 留出物(B)は水を主体とした低沸点留分を分留除去した後に、再度分留してポリエステルオリゴマーやリン化合物等を含む高沸点留分を分留除去することを特徴とする請求項3に記載のポリエステル製造方法。
  5. 留出物(B)より回収されたグリコール中のリン元素含有量が10ppm以下であることを特徴とする請求項3および4に記載のポリエステルの製造方法。
  6. エステル化反応槽からの留出物の低沸点留分の分留除去は留出物自体が有する熱により行うことを特徴とする請求項2または4に記載のポリエステル製造方法。
  7. リン化合物を第2エステル化反応槽および/またはそれ以降に添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル製造方法により製造されたポリエステルおよびその成型体
  9. 少なくともアルカリ土類金属およびリン化合物を含むポリエステルであり、ポリエステルの溶融比抵抗が0.5×108Ω・cm以下であることを特徴とする請求項8に記載のポリエステルおよびその成型体。
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