JP2006282489A - カーボンナノチューブとハイドロキシアパタイトとからなる複合材料とその製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブとハイドロキシアパタイトとからなる複合材料とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 生体活性に優れた人造セラミックスであるハイドロキシアパタイトの欠点である低強度と低靭性を改善するため、ハイドロキシアパタイトをカーボンナノチューブで補強する製造方法を提供する。
【解決手段】 カーボンナノチューブの1.0-40mass%と、焼結中にハイドロキシアパタイトを生成する原料の組み合わせの混合粉体を用い、ハイドロキシアパタイト相当量99.0-60mass%とを、水あるいはアルコール等の溶媒にいれスラリー状にして3−180分間混合し、ホットプレスあるいは放電プラズマ焼結機(SPS)の加圧焼結機を用いて1000℃-1300℃の温度範囲で、加圧力を5-200MPaとして、非酸化性雰囲気中で焼結する製造方法であり、カーボンナノチューブとハイドロキシアパタイトからなるナノ複合体がハイドロキシアパタイト中に分散した組織となる複合材料である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、人造セラミックスとして最も生体活性に優れ、人工骨や人工歯根に利用されているハイドロキシアパタイトに関し、この機械的性質を改善するためにカーボンナノチューブを複合させた新規な複合材料とその製造方法に関するものである。
骨ならびに歯根が欠損あるいは破損したときに、代わりに使えるセラミックスとしてハイドロキシアパタイト、アルミナ、ジルコニア等が研究され、利用のための製造もされてきた。生体材料としての重要なことは生体に対する毒性がなく、生体とのなじみがよくその周囲に生体が復活する生体活性に優れていることである。アルミナやジルコニアは強度が大きく、生体内でもイオンが溶け出すことがなく、毒性がほとんどないという点では優れている。しかし、アルミナやジルコニアは生体活性が悪いために実用化されているももの、広範囲に生体材料として使用されるまでにはいたっていない。
ハイドロキシアパタイトは骨の成分でもあり、生体活性に優れて人工的にも容易に製造できるため、生体材料としては最適である。しかし、この材料に関する最大の欠点は、靭性と強度特性とが極めて小さいことである。そのために、応力が作用するところでの使用は不可能で、骨の欠損部分を補修する材料として使用されているにすぎない。
ハイドロキシアパタイトを生体にたいして毒性のない材料で補強し、強度と靭性とを大きくすることが出来れば、生体材料として広範囲に使うことが可能であり、このような研究も広く行われてきた。その例としては、セラミックスの中で靭性の最も大きなジルコニアをハイドロキシアパタイトに複合化して靭性と強度とを向上させる試み(例えば、非特許文献1参照)、Ti金属粒の複合化(例えば、特許文献1、2、3参照)、炭素繊維での補強がある(例えば、非特許文献2参照)。
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しかしジルコニアとハイドロキシアパタイトとの間には靭性と強度とに大きな差があり、亀裂はハイドロキシアパタイ粒を選択して進行するため、靭性と強度とを大きく改善する結果とはならず、この系の材料が実際には使用されていない。Ti金属とハイドロキシアパタイト複合材料においては、Tiによる補強効果があるものの、二つの物質の熱膨張の違いに由来する残留応力によるクラックの発生、あるいは二つの間の反応のためか、製品として市場にでてくるまでにはなっていない。また炭素繊維の補強においても、繊維とマトリックスのハイドロキシアパタイトとの大きい熱膨張差の問題のために、靭性と強度との両方を大きくすることはできず、実用化にされるまでにはいたっていない。
上記のような従来の技術ではハイドロキシアパタイトの低い強度と靭性を改善し、実用的水準に到達することはできなかった。本発明は、カーボンナノチューブでハイドロキシアパタイトを補強することで、靭性と強度および生体活性に優れた複合材料とその製造方法とを提供することを目的としている。
本発明者らは、ハイドロキシアパタイトの製造方法、その性質、結晶性を調べ、補強の方法を鋭意検討してきた。補強材料の探索の結果、カーボンナノチューブの存在に気がついた。カーボンナノチューブは1991年に発見された比較的新しいい材料である(例えば、非特許文献3参照)。この材料はアスペクト比が大きく、強度と弾性率とが非常に大きな微細なチューブ構造のナノ繊維である。化学的性質はほぼ黒鉛材料に類似し、生体適合性も黒鉛材料にほぼ類似し、生体に対する毒性はないと考えられている。このカーボンナノチューブでハイドロキシアパタイトを補強することで、靭性と強度とを向上できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、カーボンナノチューブ1.0-40mass%とハイドロキシアパタイト99.0-60mass%とからなる複合材料であり、カーボンナノチューブとハイドロキシアパタイトとがナノ複合体を形成し、それがハイドロキシアパタイト中に分散することで、強度と靭性とを大きくしていることを特徴とする複合材料が得られる。本発明のカーボンナノチューブとは単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、非晶質カーボンナノチューブの総称であり、これらのいずれを用いても補強効果は変わらず、またそれぞれ1種または2種以上の混合物を用いても、同様にその効果は変わらない。
また、本発明によれば、カーボンナノチューブの1.0-40mass%と、ハイドロキシアパタイト相当量の99.0-60mass%の6モルのCaHPO4あるいはCaHPO4・2H2Oと、4モルのCa(OH)2とを、水あるいはアルコール類の溶媒にいれスラリー状にして混合し、加圧焼結機を用いて1000℃-1300℃の温度範囲で、加圧力を10-200MPaとして、非酸化性雰囲気中で焼結することで高強度・高靭性複合材料の製造方法が得られる。なお、本発明の製造方法においては、6モルのCaHPO4あるいはCaHPO4・2H2Oと、4モルのCa(OH)2とからなる混合原料からは、5-200MPaの加圧下で、1000℃-1300℃の温度範囲ではハイドロキシアパタイトを生成する。
スラリーの混合には自転・公転方式スーパーミキサーを用いるのが好ましく、加圧焼結機としてはホットプレス(HP)か放電プラズマ焼結機(SPS)を用いることが好ましく、総称のカーボンナノチューブに含まれる単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、非晶質カーボンナノチューブから選ばれる1種またまた
は2種以上を用いるとことが好ましい。
本発明によれば、ハイドロキシアパタイトをカーボンナノチューブで補強することができるようになり、得られた複合材料の靭性と強度とがハイドロキシアパタイトのそれより大きくすることが出来る。
以下、本発明の実施するための最良の形態について、詳細に説明する。通常、ハイドロキシアパタイトは、水溶液からの析出法、溶液からの加水分解法、水熱合成法、固相反応法で製造されている(例えば、非特許文献4参照)。このうち、析出法と加水分解法を適用して低温で得られたハイドロキシアパタイトは、その結晶性が悪いため、高温の800℃近傍の温度で熱処理して実用に供している。これらの方法で合成されたハイドロキシアパタイト粒の大きさは500nm以上である。水熱合成法では200℃近傍の低温で結晶性に優れたハイドロキシアパタイトを合成することができる。この方法で合成されるハイドロキシアパタイトは結晶性が良く基本的には単結晶であるが、その大きさは1000nm以上の大きさである。固相反応法においては、6モルのCaHPO4と4モルのCa(OH)2の混合原料を、1000℃以上の高温で反応させることでハイドロキシアパタイトが生成するが、その大きさは1000nm以上である。以上の原料を用いて焼結体を得るためには、ハイドロキシアパタイトの焼結性が良くないために、加圧焼結法が用いられている。
本発明の複合材料の補強材として用いられるカーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザー蒸発法、プラズマ合成法、炭化水素触媒分解法によって主に作られている。これらの方法によって製造されるカーボンナノチューブには、単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、非晶質カーボンナノチューブである。触媒としてFe,
Co, Ni、Ceなどの金属触媒を使うと合成が容易になるため、多くのカーボンナノチューブ製品にはこれらの金属が共存している。しかし、これら金属触媒は酸による洗浄で除去できるので、使用上の問題はない。機械的性質はこの4種類のカーボンナノチューブについて大きな差はなく、他の材料に比べて強度と弾性率がかなり大きく、多層カーボンナノチューブの弾性率は1800GPa(例えば、非特許文献5参照)であり、単層カーボンナノチューブの強度は45GPa(例えば、非特許文献6参照)であると報告されている。このように強度と弾性率とが大きいため、補強材として大きな可能性を持っている。
ハイドロキシアパタイトをカーボンナノチューブで補強する試みはすでに報告されている(例えば、非特許文献7参照)。それによると、カーボンナノチューブには多層カーボンナノチューブを使い、希アンモニア水にCa(NO3)2・4H2O溶解し、さらに多層カーボンナノチューブを加える。この多層カーボンナノチューブ分散溶液に、希アンモニア水に(NH4)2HPO4を溶解した溶液を滴下し、ハイドロキシアパタイトを生成させた後、オートクレーブに入れて118℃で処理してから乾燥することで、多層カーボンナノチューブ分散ハイドロキシアパタイト粉末を合成した。この混合粉末をホットプレス法にて、1200℃で焼結して複合材料を製造している。この複合材料の圧縮強度は102MPaであり、ホットプレスで焼結したハイドロキシアパタイトの63MPaより1.6倍大きくなっている。この複合材料に含まれる多層カーボンナノチューブの量は2mass%であり、それ以上に多層カーボンナノチューブを多くした実験は行われていない。通常圧縮強度は、曲げ強度の半分以下であり、先の複合材料とハイドロキシアパタイトの圧縮強度を曲げ強度に換算すると、その半分以下の強度でかなり小さい値となる。さらに、この複合材料の組織についての記載はないが、合成法から考えると、ハイドロキシアパタイトの結晶粒の大きさは500nm以上になっていると推定される。
本発明において、固相法でハイドロキシアパタイトを生成する、6モルのCaHPO4 あるいはCaHPO4・2H2Oと、4モルのCa(OH)2との混合原料を用いているが、この二つの原料から1000℃以上の高温の焼結過程でハイドロキシアパタイトを生成させている。高温にて生成したハイドロキシアパタイトは、生成と同時にカーボンナノチューブとナノ複合体を作る。図3は、このナノ複合体の例として、多層カーボンナノチューブとハイドロキシアパタイトから合成したものの透過電子顕微鏡写真である。この写真は加圧方向に垂直な面であり、多層カーボンナノチューブは平面的に整列されている。この写真に示されるように、ハイドロキシアパタイトは50nmの微細な粒であり、これと多層カーボンナノチューブとが絡み合ったナノ複合組織を形成している。
複合材料の強度と靭性とは残留応力の大きさに依存する。一般的には、残留応力が多くなると強度と靭性は下がる。その理由は、クラックの発生によって残留応力が緩和できるためである。残留応力が少ないときには、主に粒界の強度が弱くなり、クラックの偏向による靭性向上の効果が大きく、強度と靭性の向上の可能性もある。カーボンナノチューブとハイドロキシアパタイトの間の熱膨張差は大きく、カーボンナノチューブの均一分散では、カーボンナノチューブに対し、マトリックスのハイドロキシアパタイトから大きな圧縮応力が作用し、添加量が少なくても複合材料中に大きな残留応力が発生する。この結果、カーボンナノチューブの添加量が多くなると、複合材料にはクラックが発生し合成不可能になる。図2は均一分散系でカーボンナノチューブに働くハイドロキシアパタイトマトリックスからの圧縮応力を示している概念図である。
しかし、ここで得られた複合材料は、ナノ複合体がハイドロキシアパタイト中に分散した組織であり、均一分散にはなっていない。このナノ複合では、カーボンナノチューブはハイドロキシアパタイト中に閉じ込められていないで、二つが絡み合った状態になっており、絡み合った二つの間に強力な化学結合が出来る可能性はなく、分子間力のみの結合と考えられる。このナノ複合において、カーボンナノチューブとハイドロキシアパタイトとの間の分子間結合力が大きいと、これらの二つの熱膨張差による残留応力が緩和できなくなり、多層カーボンナノチューブの添加量の増大に伴って、この残留応力は複合材料を破壊するまでになる。しかし、緻密で割れない複合材料が得られていることは、残留応力の緩和が行われていることを示している。すなわち、ナノ複合体内では分子間力による結合が弱く、多層カーボンナノチューブは変形できる状態になっている。ナノ粒子のハイドロキシアパタイトが収縮するに従って、多層カーボンナノチューブは長さ方向で曲がることが可能で、これによって残留応力の緩和が可能である。応力が緩和されたナノ複合体全体の熱膨張係数は、ハイドロキシアパタイトのそれに近い値となり、複合材料の靭性と強度とが大きい残留応力によって小さくなることはない。複合材料中でクラックが進展すると、ナノ複合体中ではカーボンナノチューブの引き抜きが起き、これによって靭性と強度の増大がもたらされる。図1は、カーボンナノチューブと微細なハイドロキシアパタイトからなるナノ複合体へ働く、ハイドロキシアパタイトからの圧縮応力を示す概念図である。
本発明の複合材料を製造するためには、微細で異方性の大きいカーボンナノチューブとハイドロキシアパタイトとを均一に混合する必要がある。混合技術のうち、ハイドロキシアパタイトは溶液にできないので、粉末同士の混合技術を採用する必要がある。粉体の混合方法には色々あるが、カーボンナノチューブは凝集する傾向があるために、乾燥状態での均一混合が困難である。また、溶媒を使った湿式混合において、溶媒の量が多いと比重差による沈殿速度の違いから分離が起き、均一混合を達成するのが困難である。この分離沈殿を防ぐために、水やアルコールに粉体を入れて粘性の大きなスラリーを作り、それをボールミルで長時間回転混合する方法が一般的に行われている。
しかし、この方法ではボールによってカーボンナノチューブが破壊される。本発明では、この破壊を防ぎ短時間で均一混合を行うために、スラリーの混合を自転・公転スーパー
ミキサーを使って行った。この装置は、スラリーの入った容器を自転させ、それを支える本体を反対方向に公転させて混合を行うもので、粘性の高いものの混合に適している。このように反対方向に自転と公転をさせることにより、スラリーにせん断応力を作用させて、凝集した部分を破壊する力を与えている。この方法により比較的短時間での均一混合が可能になる。このスラリーを作るに際し、分散をよくするために界面活性剤や分散剤を添加すると均一混合の時間を短くできる。
本発明で使用する加圧焼結機はホットプレスと放電プラズマ焼結機(SPS)である。ハイドロキシアパタイトは焼結しにくいために、無加圧焼結法では緻密で強度の大きい焼結体とすることが困難である。そのためにハイドロキシアパタイトの焼結には主にホットプレスが用いられてきた。本発明の複合材料の製造にもホットプレスを用いると緻密な複合材料を作ることができる。放電プラズマ焼結機(SPS)はプラズマ活性化焼結機(PAS)、放電プラズマシステム(SPS)、パルス通電焼結機などと呼ばれ、金属やセラミックスを焼結するために開発された装置であり、その構成の特徴は、伝導性の型に試料を詰めて、これに直接にパルス直流電流を流して加熱するところにある。その結果、型内の試料にパルスの電場が作用し、物質の拡散が促進され、塑性変形し易くなる。さらに、電気抵抗の大きな粉末においては、試料表面にわずかな電流が流れ、これが結晶表面での分子の移動を加速し結晶成長を促進する。固相反応においても分子の移動が促進されるために、従来よりも低温で反応できるようになる。このようなSPSの効果を使うことにより、従来は不可能であったWCのみからなる焼結体や、AlNのみからなる焼結体の製造が可能になっている。
本発明の複合材料において、強度と靭性とをハイドロキシアパタイトのそれより大きくするためには、カーボンナノチューブを1.0mass%以上複合させる必要がある。これよりカーボンナノチューブの添加量が少ないと、強度と靭性とはハイドロキシアパタイトのそれより大きくはならない。一方、カーボンナノチューブの添加量を40mass%以上にすると、カーボンナノチューブが多く、それだけが固まった状態の部分が生成し、強度と靭性とが下がるようになる。次に、本発明に係る複合材料の製造方法について説明する。先述したように、複合材料の製造には、単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブおよび非晶質カーボンナノチューブのすべてを使用することができる。さらに、これらの2種以上の混合物を使用することができる。一方、ハイドロキシアパタイトとしては、固相反応でハイドロキシアパタイトを生成する、6モルのCaHPO4と4モルのCa(OH)2や、6モルのCaHPO4・2H2Oと4モルのCa(OH)2の混合原料を使用する。この混合原料からは1000℃-1300℃での焼結中にハイドロキシアパタイトが生成する。
続いて、ハイドロキシアパタイトとカーボンナノチューブとの混合であるが、まず、カーボンナノチューブの規定量を秤量し、それを容器に入れて、水または蒸留水、あるいはメタノール、エタノール等のアルコールを加えてスラリーを作る。スラリー中でのカーボンナノチューブの分散を良くするために、界面活性剤あるいは分散剤を添加すると混合時間が短縮できる。海面活性剤や分散剤には多くの種類があるが、これらの中でアルカリあるいはアルカリ土類に属する元素を含まないものを使用する必要がある。これらの元素が含まれていると複合材料中に残るからである。その加える量の目安は、溶媒に対して0.1−10vol%である。0.1vol%以下では添加効果が小さく、10vol%以上添加しても効果には変化がなくなる。このスラリーにハイドロキシアパタイト粉を入れて、3-180分間、自転・公転スーパーミキサーを使って混合する。混合時間が3分以下では混合が均一に行われず、180分以上今後しても混合の程度が変わらない。この混合したスラリーを減圧濾過して水分を除き、さらにホットプレートあるいは乾燥機を用いて150-200℃で乾燥し、同時に添加した界面活性剤あるいは分散剤を分解し、焼結用の混合原料とする。この混合原料を超硬製あるいは黒鉛製の型に詰めて、加圧焼結機にセットして焼結を行う。
加圧焼結機を使う理由は、ハイドロキシアパタイトの焼結を無加圧下の加熱で行うと、
緻密にするのが困難であり、さらにカーボンナノチューブを添加することで焼結が促進されることがないために、加圧下で焼結する必要があるためである。加圧焼結機としては、ホットプレスとSPSとを使うことで緻密な焼結体を得ることができる。ホットプレスにおいては、型に詰めた混合原料を外熱加熱によって温度を上げ加圧下で焼結する。一方、SPSにおいては、混合原料の入った型にパルス直流を流し、直接加熱して加圧下で焼結する。焼結温度は1000℃-1300℃の範囲であり、加圧力は5-200MPaである。終結温度は加圧力と関連し、焼結温度を下げるためには加圧力を大きくする必要がある。加圧力は型の耐圧性能で決まる。緻密な黒鉛型は2400℃の温度まで、最大200MPaまで使用することができる。焼結温度を1000℃以下にすると、加圧力を200MPaと大きくしても、複合材料を緻密に焼結することはできないので、焼結温度を1000℃以上とすることが不可欠である。温度を1300℃以上にすると、ハイドロキシアパタイトは分解し他の化合物になるので、この温度以下で複合材料の焼結を行う必要がある。加圧力を200MPa以上に高くすると、耐圧製に優れた緻密な黒鉛型でも破壊するので、この加圧力以下で複合材料の焼結を行う必要があり、5MPa以下に加圧力を下げると複合材料を緻密にするのが困難になので、これ以上の加圧下で焼結を行うことが重要である。
なお、焼結の雰囲気としては、酸化雰囲気ではカーボンナノチューブが酸化されるので、非酸化性である真空や、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリュームガスその他の非酸化性のガスとすることが必要である。
一定割合の多層カーボンナノチューブと、ハイドロキシアパタイト相当量する割合の6モルのCaHPO4・2H2Oと4モルのCa(OH)2の混合原料とを、蒸留水に分散剤として2,2’,2”-ニトリロトリエタノールを5vol%添加した溶液に加えてスラリーを作り、これを自転・公転スーパーミキサーを用いて室温にて1時間混合した。混合後、乾燥機を使って混合したスラリーを200℃で乾燥して混合粉体を得た。この混合粉体を黒鉛型に詰めて、放電プラズマ焼結機(SPS)に据付、真空にしてから加圧して昇温を開始し、所定の温度に30分間保持して複合材料を得た。複合材料の多層カーボンナノチューブの割合と、焼結条件、かさ密度、曲げ強度、破壊靭性を表1に示した。図4は、多層カーボンナノチューブを6wt%添加した複合材料の破断面の走査型電子顕微鏡写真である。この写真は加圧方向に直角の面である。ハイドロキシアパタイトのマトリックス中にナノ複合体が分散しており、このナノ複合体は平板上で写真の面に垂直になっている。ナノ複合体では多層カーボンナノチューブの引き抜きが観測され、この効果によって複合材料の強度と靭性とが向上している。
単層カーボンナノチューブと、ハイドロキシアパタイト相当量の6モルのCaHPO4と4モルのCa(OH)2の混合原料とを、蒸留水にプロピレングリコールを3vol%添加した溶液に加えてスラリーを作り、これを自転・公転スーパーミキサーを用いて室温にて1.5時間混合した。混合後、乾燥機を使って混合したスラリーを210℃で乾燥して混合粉体を得た。この混合粉体を黒鉛型に詰めて、ホットプレス(HP)に据付、真空にしてから加圧して昇温を開始し、所定の温度に2時間保持して複合材料を得た。複合材料の多層カーボンナノチューブの割合と、焼結条件、かさ密度、曲げ強度、破壊靭性を表2に示した。
以上、詳細に説明したように、本発明のカーボンナノチューブとハイドロキシアパタイトからなる複合材料は、ハイドロキシアパタイトのみからなる焼結体に比べ強度と靭性とが大きくなっている。このために生体材料として、骨に代わる人工骨、人工歯根、人工頭骨、人工鼻骨、人工耳小骨として使うことが可能であり、さらに従来ハイドロキシアパタイトでは使えなかった応力が作用する部分である人工関節にも使うことが出来る。
図1は、カーボンナノチューブと微細なハイドロキシアパタイトからなる ナノ複合体へ働くハイドロキシアパタイトからの圧縮応力を示す概念図である。 図2は、均一分散系でカーボンナノチューブに働くハイドロキシアパタイトマトリックスからの圧縮応力を示している概念図である。 図3は、ナノ複合体の例として、多層カーボンナノチューブとハイドロキシアパタイトから合成したものの透過電子顕微鏡写真である。 図4は、多層カーボンナノチューブを6wt%添加した複合材料の破断面の走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (7)

  1. カーボンナノチューブが1.0-40mass%と、ハイドロキシアパタイトが99.0-60mass%とからなる焼結体で、カーボンナノチューブとハイドロキシアパタイトとからなるナノ複合体によってハイドロキシアパタイトを補強してなる複合材料。
  2. カーボンナノチューブの1.0-40mass%と、ハイドロキシアパタイト相当量の99.0-60mass%の6モルのCaHPO4と4モルのCa(OH)2の混合原料とを、水あるいはアルコール類の溶媒にいれスラリー状にして3-180分間混合し、加圧焼結機を用いて1000℃-1300℃の温度範囲で、加圧力を10-200MPaとして、非酸化性雰囲気中で焼結する複合材料の製造方法。
  3. 前記出発原料にCaHPO4の代わりにCaHPO4・2H2Oを用いる請求項2記載の複合材料の製造方法。
  4. 前記混合を自転・公転方式スーパーミキサーを用いる請求項2記載の複合材料の製造方法。
  5. 前記スラリーに界面活性剤あるいは分散剤を添加し、均一混合する請求項2記載の複合材料の製造方法
  6. 前記加圧焼結機に放電プラズマ焼結機(SPS)を用いる請求項2記載の複合材料の製造方法。
  7. 前記加圧焼結機にホットプレス(HP)を用いる請求項2記載の複合材料の製造方法。


















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