JP2006281964A - 自動車センターピラーおよび自動車センターピラーの耐上部座屈性の性能評価方法 - Google Patents

自動車センターピラーおよび自動車センターピラーの耐上部座屈性の性能評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 側突時において、センターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈を防止できる自動車センターピラーを提供しようとするものである。
【解決手段】 センターピラー構造に対する有限要素法解析用モデルを用いた動的陽解法による動的圧壊試験解析を行って求められる、センターピラー上部1aへの落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈限界断面モ−メントM1と、センターピラー下部1bへの落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈位置近傍での断面モ−メントM2との各最大値同士の差M1−M2が、絶対値で0.5kN・m以上である上部と下部との強度バランスを有することである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、側突時の耐上部座屈性に優れた自動車センターピラーおよび側突時の自動車センターピラーの耐上部座屈性の性能評価方法に関するものである。
自動車センターピラーは、アウタパネルとインナパネルとで閉断面を形成し、この閉断面内の長手方向に亙ってリインフォースメントを配置した構成であり、センターピラーの上端がルーフサイドレール、下端がドア開口部の下縁部を形成するサイドシル(ロッカーとも言う)に各々接合される。
近年の自動車の軽量化指向に伴い、これらセンターピラーを構成する成形パネル(成形フレーム)の板厚は、アウタパネルやインナパネルとも、大幅に薄肉化されている。また、成形パネルに用いられる鋼板やアルミニウム合金板は、ハイテン化 (高強度化) されている。
しかし、センターピラーにおける、成形パネルの薄肉化は、中空パネル構造体としての強度、剛性の低下や、自動車車体側面からの衝突(側突)時の衝撃吸収性の低下を伴う。これに対し、センターピラーは、側突に対応して、乗員を保護する重要部材である。このため、側突発生時に、衝突荷重を受けて、センターピラー上部でのくの字状に折れ曲がり、車室内(車室側)へ変形するような、座屈発生は一切許容されない。これは、近年のセンターピラーの側突基準として、乗員の腹部や腰部に比して、乗員の頭部や胸部への障害値がより重み付けされていることにもよる。
このため、センターピラーの補強構造は、例え構成する成形パネルを薄肉化しても、センターピラーの上部を座屈させず、下部での座屈や、変位を大きくするような設計が必要となる。
一方、従来から、側突発生時に衝突荷重を受けても、車室内(車室側)へ変形することの無いようなセンターピラーの補強構造が種々提案されている(例えば特許文献1、2、3参照)。
特開2002−347655号公報 (特許請求の範囲、図1) 特開2003−2234号公報 (特許請求の範囲、図3) 特開2003−276639号公報 (特許請求の範囲、図1)
しかし、これら従来技術のように、中空パネル構造体としての補強構造を、車種や設定側突荷重に応じて設計したとしても、実際にセンターピラー上部の側突発生時に衝突荷重を受けた際に、センターピラー上部で、くの字状に折れ曲がるなどの座屈が発生する可能性がある。なお、ここで言うセンターピラー上部とは、センターピラー全長の1/3部分より上であり、これより下をセンターピラー下部と言う。
このセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈は、センターピラーの剛性不足が原因としても、より具体的な発生原因や発生機構が不明であった。このため、センターピラー設計の段階で、上部でのくの字状の折れ曲がり座屈を圧壊解析によって予測することは行なわれてはいるものの、確実に、このくの字状の折れ曲がり座屈を防止できる設計と予めすることは、非常に困難であった。
このため、実際にセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈が発生するか否か、即ち、実際の側突発生時に乗員保護が図れるか否かは、実際の衝突試験によって確認せざるを得なかった。そして、この実際の衝突試験結果による設計変更など、試行錯誤的に、側突発生時の衝突安全性を確保していたのが、これまでの実情である。
したがって、本発明の第一の目的は、側突時のセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈を予め設計段階で防止できるとともに、実際の側突時においても、センターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈を防止できる自動車センターピラーを提供しようとするものである。また、本発明の別の目的は、側突時のセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈発生状態を予め設計段階で予測できる、側突時の自動車センターピラーの耐上部座屈性の性能評価方法を提供しようとするものである。
第一の目的を達成するために、本発明側突時の耐上部座屈性に優れた自動車センターピラーの要旨は、アウタパネルとインナパネルとで閉断面を形成し、この閉断面内の長手方向に亙ってリインフォースメントを配置した構造の自動車センターピラーであって、解析の前提条件として、前記センターピラーの上端がルーフサイドレール、下端がドア開口部の下縁部を形成するサイドシルに各々接合されるとともに、前記センターピラー全長の1/3部分より上を上部、これより下を下部とし、更に、バリアによる前記センターピラーへの側突を模擬したセンターピラーへの落錘衝突時に、前記ルーフサイドレールと前記サイドシルとが車体内側に向かって回転する回転モーメントを有する、と各々仮定して、前記センターピラー構造に対する有限要素法解析用モデルを用いた動的陽解法による動的圧壊試験解析を行って求められる、センターピラー上部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈限界断面モ−メントM1と、センターピラー下部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈位置近傍での断面モ−メントM2との各最大値同士の差M1−M2が、絶対値で0.5kN・m以上である上部と下部との強度バランスを有することである。
また、上記本発明の別の目的を達成するために、本発明側突時の自動車センターピラーの耐上部座屈性の性能評価方法の要旨は、アウタパネルとインナパネルとで閉断面を形成し、この閉断面内の長手方向に亙ってリインフォースメントを配置したセンターピラー構造を形成し、このセンターピラー構造に対して、有限要素法解析用モデルを用いた動的陽解法による動的圧壊試験解析を行うに際し、解析の前提条件として、前記センターピラーの上端がルーフサイドレール、下端がドア開口部の下縁部を形成するサイドシルに各々接合されるとともに、前記センターピラー全長の1/3部分より上を上部、これより下を下部とし、更に、バリアによる前記センターピラーへの側突を模擬したセンターピラーへの落錘衝突時に、前記ルーフサイドレールと前記サイドシルとが車体内側に向かって回転する回転モーメントを有する、と各々仮定して、センターピラー上部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈限界断面モ−メントM1と、センターピラー下部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈位置近傍での断面モ−メントM2とを各々求め、これらM1とM2との最大値同士の差M1−M2から、センターピラー上部と下部との強度バランスを評価することである。
本発明者らは、側突時のセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈の原因が、センターピラー上部と下部での強度バランスの悪さに起因することを知見した。
このセンターピラー上部と下部での強度バランスとは、センターピラー上部と下部での断面力の差であり、センターピラー上部への側突時におけるセンターピラー上部の座屈限界断面モ−メントと、センターピラー下部への側突時におけるセンターピラー上部の座屈位置近傍での断面モ−メントとの差として表すことができる。
これまでも、衝突安全基準として定められているセンターピラー下部位置での圧壊解析を行い、バリアの進入速度、バリアの進入量、センターピラー長手方向の断面2次モーメント分布などを求め、バリアの進入速度やバリアの進入量が小さいほど、センターピラーの衝突安全性が優れるとする、予測評価方法は知られていた。
しかし、実際の側突においては、バリアの進入量が小さくても、側突時のセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈が起こり得るため、上記予測評価方法では、センターピラー設計の段階で、上部でのくの字状の折れ曲がり座屈を予測し、これを防止した設計と予めすることは、前記した通り、非常に困難であった。
前記従来の圧壊解析が、側突時のセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈を予測できなかったのは、センターピラー上部、下部それぞれの断面強度は予測できても、下部への衝突時に、上部が座屈に対してどの程度余裕を持っているかが予測できなかったためである。
これに対して、本発明では、動的圧壊試験解析にて求められる、センターピラー上部への側突時におけるセンターピラー上部の座屈限界断面モ−メントM1と、センターピラー下部への側突時におけるセンターピラー上部の座屈位置近傍での断面モ−メントM2とが、センターピラーを構成する各部材の、材料強度、板厚、断面形状で定まる側突時のセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈に直接係わり、これらM1とM2とによって、センターピラー上部と下部との強度バランスが評価できることを知見した。
そして、更に、上記M1とM2との最大値同士の差M1−M2が、センターピラー上部と下部での強度バランスを良く表しており、この差の絶対値の大小関係によって、設計した自動車センターピラーが、耐上部座屈性に優れるか否か予測できることを知見した。そして、この解析による予測結果は、実際の動的圧壊試験における、センターピラーの耐上部座屈性と良く対応していることも確認した。したがって、この結果は、実際の側突においても同様の効果を示すことが裏付けられた。
したがって、本発明によれば、側突時のセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈を予め設計段階で防止できるとともに、実際の側突時においても、センターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈を防止できる自動車センターピラーを提供できる。
また、上部でのくの字状の折れ曲がり座屈を防止した状態で、各部材の材料強度、板厚の最適化や、断面形状、レインフォース位置等の構造に関する最適化も可能となり、圧潰性能に優れ重量の軽いセンターピラーを提供することが可能となる。
更に、側突時のセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈発生状態を予め設計段階で予測できる、側突時の自動車センターピラーの耐上部座屈性の性能評価方法を提供できる。
本発明の実施の形態について、図を用いて、以下に説明する。
(センターピラー構造)
先ず、本発明センターピラーの基本的な構造について、図1〜3を用いて説明する。図1は自動車センターピラーの側面図、図2は図1のII−II線断面図、図3は図1のIII−III線断面図、である。このセンターピラーの構造はFEM解析の前提ともなる。
図1に示すように、自動車センタピラー1は、上端部12が車体のルーフサイドレール4に、下端部11が車体のサイドシル(ロッカー)5に、それぞれ溶接されている。センタピラー1は、前後方向の幅が下方へ行くに従って徐々に広くなっており、上端部12および下端部11はT字形に形成されて、それぞれルーフサイドレール4およびサイドシル5との溶接強度を高くしている。また、側突(側面衝突)時において、荷重を主としてセンタピラー1の下半部に作用させるように、センタピラー1は一般に上方へ向け車内側へ傾斜して立設されている。更に、センタピラー1の閉断面内には、センタピラー1の縦方向(長手方向)に亙って、リインフォースメント2が設けてある。また、更にレインフォースメント2の内側に、部分的にレインフォースメント(フランジレスのコの字断面形状の場合が多い)を配置することも多い。
このようなセンターピラー1において、本発明では、図示する通り、センターピラー全長の1/3部分より上の部分をセンターピラー上部1a、これより下の部分をセンターピラー下部1bと規定する。
図2ないし図3に示すように、センタピラー1はアウタパネル13とインナパネル14で閉断面構造としてある。アウタパネル13は断面ほぼ台形で前後の端縁にそれぞれフランジ131が形成してある。インナパネル14も実質的には断面ほぼ台形で前後の端縁にそれぞれフランジ141が形成してある。インナパネル14は局部的に図2に示すように凹凸状としてある。
アウタパネルとインナパネルは、通常、センタピラー1の上部1aと下部1bとで同じ板厚とされる。特に、アウタパネルは、軟鋼板で板厚も薄いため、耐衝撃にはほとんど寄与しないためである。ただ、センタピラーの上部と下部とで、アウタパネル13およびインナパネル14の厚みは必ずしも同じとしなくても良い。これに対して、レインフォースはセンタピラー1の上部1aと下部1bとで板厚を変え、通常通り、下部で座屈させるようにしても良い。
リインフォースメント2の断面形状および幅寸法はアウタパネル13とほぼ合致する形状および寸法に設定してあり、前後の端縁にフランジ201が形成してある。リインフォースメント2は、アウタパネル13およびインナパネル14よりもやや厚い鋼板からなることが好ましい。
センタピラー1は、リインフォースメント2をアウタパネル13の内面に沿わせて、センタピラー1の縦方向(長手方向)に亙って配している。そして、その前後のフランジ201を、それぞれアウタパネル13およびインナパネル14の前後のフランジ131および141で挟み、3枚重ねとしたフランジを一体にスポット溶接することで構成されている。
このリインフォースメント2のセンタピラー1の縦方向の長さは、車体強度やセンタピラーの上部1aに必要な乗員保護のためなどの要求強度に応じて選択される。リインフォースメント2は、通常通り、アウタパネル13と同様、ルーフサイドレール4からサイドシル5まで存在させる。但し、インナパネル14やリインフォースメント2の内側のレインフォースについては、その長さが変更される。
前記図1の態様においては、リインフォースメント2は、センタピラー1の上端部12から下端部11に亙って延在し センターピラー上部の2aとセンターピラー下部の2bとに2分割されて、互いに接合されている。22はリインホースメント2の上端縁、21はリインホースメント2の下端縁、23は上部リインホースメント2aと下部リインホースメント2bとの接合部を各々示す。
(センターピラー上部と下部の強度バランス)
以上説明したセンターピラーの基本的な構造に対して、本発明では、後述する有限要素法解析用モデルを用いた動的陽解法による動的圧壊試験解析を行ない、センターピラー上部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈限界断面モ−メントM1と、センターピラー下部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈位置近傍での断面モ−メントM2との内、最大値となる断面モ−メント同士の差M1−M2が0.5kN・m以上である上部と下部との強度バランスを有するものとする。
図4を用いて、この本発明の概念を更に説明する。図4は、前記図1〜3で説明した自動車センターピラーを模式化した説明図である。図4において、1はセンターピラー、4はサイドシル、5はルーフサイドレールである。図4のセンターピラー1においても、全長の1/3部分より上が上部1a、これより下が下部1bである。また、4はセンターピラー上部1aへの衝突バリア(落錘)、5はセンターピラー下部1bへの衝突バリア(落錘)を示す。
センターピラー上部1aへの衝突バリア31による側突時に生じるセンターピラー上部1aでのくの字状の折れ曲がり座屈は、センタピラーの上部1aと下部1bとの強度バランスの悪さに起因する。前記した通り、センタピラー1では、側突発生時に、センターピラー上部1aでのくの字状の折れ曲がり座屈発生は許容されないために、通常は、センターピラーの上部を座屈させず、下部での座屈や、変位を大きくするような設計がなされる。
高い衝突性能を要求される場合、本発明のように、センターピラー上下部の強度バランスを考慮しながら強化(高強度化、板厚増加、ビード追加等)しなければならない。例えば、センターピラー下部が過剰に強化されると、センターピラー下部1bへの落錘衝突時に、上部1aに負担がかかり、M2が高くなるため、上部座屈の恐れがある。また、下部1bが極端に弱い場合は、バリアの進入が極端に大きくなるため、センターピラーとして失格となる。従って、上部1aを強化しながら下部1bも強化し、バランスを取りながら上部1aでの座屈を避ける必要がある。
一方、センターピラー上部1aが過剰に強化されると、これによって、上記センターピラー上部1aの座屈限界断面モ−メントM1は高くなるものの、一方で、センターピラーの下部1bの強度が弱くなり過ぎ、センターピラー下部1bへの側突時(落錘衝突時)におけるセンターピラー上部1aの座屈位置近傍での断面モ−メントM2が高くなる場合が生じる。このように、センターピラー上部1aの座屈位置近傍での断面モ−メントM2が高くなった場合、センターピラー上部と下部での強度バランスが悪くなる。このため、幾ら、センターピラー上部1aの強度や剛性を高くしても、センターピラー上部1aへの衝突バリア31による側突時に、センターピラー上部1aでのくの字状の折れ曲がり座屈が生じやすくなる。
センターピラー上部と下部での強度バランス(最大値となる断面モ−メントM1、M2同士の差M1−M2)とは、センターピラー上部における上記両断面モ−メント(断面力)の差、即ち、側突荷重によってセンターピラー上部断面に生じる断面力の差を表す。したがって、この断面力の差(上記M1とM2の差)の絶対値が大きいほど、センターピラー上部と下部での強度バランスが良好となる。一方、上記M1とM2の差の絶対値が0.5kN・m未満と小さいほど、上記した通り、センターピラー上部と下部での強度バランスが悪くなって、側突時のセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈が発生しやすくなる。
勿論、この座屈は、センターピラー上部の強度が弱くなりすぎても生じる。しかし、そのようなセンターピラーは実際には存在せず、本発明では、センターピラーの上部を座屈させず、下部での座屈や、変位を大きくするような設計がなされた通常のセンターピラーを対象としている。
また、例えば、極端に下部の強度が弱い場合、M2は小さくなるため、断面力の差(M1−M2)は大きくなる。しかし、これも現実的なピラーとは言えず、本発明では、このような現実ばなれしたセンターピラーは対象外とし。前記した通り、現実的な設計がなされた通常のセンターピラーを対象としている。
したがって、本発明における自動車センターピラーは、側突時の耐上部座屈性に優れたものとするために、センターピラー上部と下部との強度バランス(センターピラー上部の断面力)を、後述する有限要素法解析用モデルを用いた動的陽解法による解析によって導き出される上記M1とM2の絶対値の差(以下、単に差とも言う)で、0.5kN・m以上とする。
(解析)
以下に、上記M1とM2とを導き出すための解析方法について説明する。
図5は、本発明自動車センターピラーの耐上部座屈性の性能評価方法のフローチャートである。図5に示す通り、ステップS1で、設計されたセンターピラーの構造を形成する。ここで、センタピラー1の構造は、アウタパネル13およびインナパネル14とで閉断面を形成し、この閉断面内の長手方向に亙ってリインフォースメント2を配置したものとする。
但し、センタピラー1のアウタパネル13やサイドシル5のアウタパネルは軟鋼板から通常は構成されており、側突時のセンタピラー1の強度、剛性には大きくは係わらないため、設計されたセンターピラーの構造としては必須に形成しなくても良い。
次ぎに、ステップS2で仮定条件(前提条件、境界条件とも言う)を置く。本発明における仮定条件とは、以下の通りである。
1.前記センターピラーの上端がルーフサイドレール、下端がドア開口部の下縁部を形成するサイドシルに各々接合される。
2.前記センターピラー全長の1/3部分より上を上部、これより下を下部とする。
3.バリアによる前記センターピラーへの側突を模擬したセンターピラーへの落錘衝突時に、前記ルーフサイドレールと前記サイドシルとが車体内側に向かって回転する回転モーメントを有する。
これらステップS2での仮定条件は、解析精度や再現性を得るために必要となる。特に、落錘衝突時に、ルーフサイドレール4とサイドシル5とが、回転する矢印40、41で示す、車体内側に向かって回転する回転モーメントを有する、と各々仮定する点は、実際の側突時のセンターピラーの変形機構に対応させる意味で重要である。即ち、実際の側突時のセンターピラーの変形においても、ルーフサイドレール4と前記サイドシル5とは、車体内側に向かって回転する回転モーメントを有して変形する。
これらの仮定条件(前提条件)を置いた上で、ステップS3で、上記センターピラー構造を、部材の各断面形状データからメッシュ化し、有限要素法解析用シェルモデル(FEMモデル)を形成する。
このモデル化の際に、センターピラーの上端が接合されるルーフサイドレールや、センターピラーの下端が接合されるサイドシルを含めた、材料特性を与える。
更に、ステップS4で、下記荷重データ、部材各板厚データ、部材各強度データ、をFEMモデルに与えた上で、動的陽解法により解析を行なう。
荷重データ:センターピラー下部への落錘衝突条件〔落錘位置(下部からの距離mm)、初速m/s、重量kg〕
部材各板厚データ:センターピラーの構造を形成する各部材の板厚(mm)
部材各強度データ:センターピラーの構造を形成する各部材の強度(MPa)
ここで、上記各部材データは、最低、ルーフサイドレール、サイドシル(ロッカレール)インナ、サイドシルリインフォースメント、センタピラーインナ、センタピラーリインフォースメント、とする。その他、サイドシルアウタ、センタピラーアウタなどの上記データは選択的とするが、各部材データが多いほど解析精度が良くなる。
FEMモデルの解析の際に使用するソフトは、実際の側面衝突を考慮し、解析結果の再現性を持たせるために、上記動的陽解法とすることが好ましい。
この解析によって、ステップS5として、センターピラー上部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈限界断面モ−メントM1と、センターピラー下部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈位置近傍での断面モ−メントM2とを求める。
そして、ステップS6として、最大値となる断面モ−メントM1、M2同士の差M1−M2を求め、ステップS7として、このM1−M2が、例えば0.5kN・m以上であるか否かに基づき、センターピラーの上部と下部との強度バランスを評価する。
(動的圧壊試験解析方法)
以下に、上記M1とM2とを導き出すための、動的圧壊試験解析方法の実施例について、図6〜8を用いて説明する。図6〜8は、前記図1〜3のセンターピラー1の作成解析モデルと境界条件(仮定条件)を示す。なお、図6〜8では、ルーフサイドレール、サイドシルインナ、サイドシルリインフォースメント、センタピラーインナ、センタピラーリインフォースメントをメッシュ化して、解析モデルを作成しており、サイドシルアウタやセンタピラーアウタなどは省略している。
また、図6〜8では、共通して、センターピラーの上端12および下端11がルーフサイドレール4とサイドシル5とに各々軽結合されるものと仮定している。
図6には、前記図4のバリア32によるセンターピラー下部1bへの側突を模擬した落錘衝突位置をAで示している。
図7では、落錘衝突時に、ルーフサイドレール4とサイドシル5とが、回転する矢印40、41で示す、車体内側に向かって回転する回転モーメントを有する、と各々仮定した状態を示している。この仮定のために、センターピラーの上端12および下端11がスポット接合されるルーフサイドレール4とサイドシル5は、前記矢印40、41方向に回転できるよう、パイプに対して各々リング38、39を介して結合していると仮定する。これは、前記した実際の側突時のセンターピラーの変形機構に対応させるためである。
図7では、この仮定のために、ルーフサイドレール4とサイドシル5が、摩擦係数で拘束されながら、前記矢印40、41方向に回転可能な各々リング38、39を介してパイプへ結合していると仮定する。
図8はセンターピラー1上部1aの座屈限界断面モ−メントと、座屈位置近傍での断面モ−メントを測定する位置をCで示す。Aはバリア32によるセンターピラー下部1bへの側突を模擬した落錘衝突位置、Bはバリア31によるセンターピラー上部1aへの側突を模擬した落錘衝突位置である。
これら図6〜8のセンターピラーの作成解析モデルに、表1、2に示す、部材各板厚データ、表2に示す部材各強度データ、機械的特性(swift式の係数)、歪速度依存特性係数(Cowper-symonds 式) を各々与えた上で、動的陽解法により、動的圧壊試験解析を行なった。解析ソルバーはLS−DYNAver.960を用いた。
解析は、センターピラーの上部センタピラーR/F(リインフォースメント)を、各々980MPa 級と590MPa 級の2種類の高張力鋼板を使い分け、他の条件は同じとした2つのケース1(980MPa 級)、2(590MPa 級)について行なった。
なお、荷重データは、センターピラー下部への落錘衝突条件〔落錘位置A:センターピラー下部からの距離300mm、落錘位置B:センターピラー下部からの距離600mm、初速8.9m/s、落錘重量171kg〕とした。
この解析により、センターピラー上部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈限界断面モ−メントM1と、センターピラー下部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈位置近傍での断面モ−メントM2とを各々時間の変化として求めた。これらの結果を、図9に示す。図9では、横軸に時間(sec)、縦軸に両モ−メントM1、M2を断面力(kN・m)として表示している。図9において、細い実線が980MPa級の高張力鋼板を用いた場合のM1、細い点線が980MPa級の高張力鋼板を用いた場合のM2である。また、太い実線が590MPa 級の高張力鋼板を用いた場合のM1、太い点線が590MPa 級の高張力鋼板を用いた場合のM2である。
図9において、ケース1(980MPa級)、ケース2(590MPa 級)について、各々、最大値となる断面モ−メントM1、M2同士の絶対値の差M1−M2を求めると、ケース1では約1.0kN・m、ケース2では約0.5kN・mである。
また、この解析により、ケース1、2について、センターピラー下部への落錘衝突時における、相当塑性ひずみ分布を求めた。更に、この解析により、ケース1について、センターピラー下部への落錘衝突時における、座屈部の変形モードを求めた。
この結果、本解析例では、ケース1、2とも、センターピラーの上部では座屈せず、下部で座屈していた。但し、最大値となる断面モ−メントM1、M2同士の絶対値の差M1−M2が0.5kN・m未満となった場合には、センターピラーの上部で座屈することが予測された。
また、更に、この解析により、ケース1について、荷重−変位関係を求めた。この荷重−変位関係を図10に、細い実線(解析と表示)で示す。
(実際の動的圧壊試験による検証)
この解析を検証するために、上記解析を行なった2つのケース1(980MPa級)、2(590MPa 級)について、実際に、図7の解析形状に対応したセンターピラー(但し、解析条件と同じでアウタは無く、インナとリインフォースメントのみ)を製作し、動的圧壊試験を行なった。
圧壊試験は、センターピラーのルーフサイドレール4側と、サイドシル5側とを、各々治具(治具台)上に載置し、センターピラー部分が水平に、かつ地上から浮かせるように配置した。この際、落錘衝突時に、前記図7の解析と同様に、ルーフサイドレール4側とサイドシル5側とが回転可能なように治具に固定した。その上で、図7に示す下部落錘位置Aに落錘(重量1.673kN、落下高さは5m)を衝突させた。
この実際のセンターピラー動的圧壊試験における、座屈モードを相当塑性ひずみ分布は、ケース1、2とも、上記解析による動的圧壊試験と、ほぼ同一であった。また、上記解析と実際のセンターピラー動的圧壊試験における、両者の座屈部の変形モードは、ケース1、2とも、上記解析による動的圧壊試験と、ほぼ同一位置のセンターピラー下部にて座屈が発生していた。
この実際のセンターピラー動的圧壊試験では、前記解析例と同様、ケース1、2とも、センターピラーの上部では座屈せず、下部で座屈していた。
更に、この実際のセンターピラー動的圧壊試験における、ケース1の荷重−変位関係を図10に太い実線(実験と表示)で示す。この図10の通り、上記解析による動的圧壊試験と、実際のセンターピラー動的圧壊試験とでは、両者の荷重−変位関係はほぼ対応乃至相関している。
(実際の動的圧壊試験と解析結果との比較)
これらの結果から、本発明の上記動的圧壊試験の解析結果は、実際のセンターピラーの動的圧壊試験結果と良く対応していることが分かる。
そして、実際のセンターピラーの動的圧壊試験結果により裏付けられた、本発明の上記解析結果から、ケース1(980N 級)の方が、ケース2(590N 級)よりも、座屈開始のタイミングは同じであるものの、エネルギー吸収量は高く、センターピラー上部での耐くの字状の折れ曲がり座屈性には有利であることが分かる。
更に、前記図9における、最大値となる断面モ−メントM1、M2同士の絶対値の差M1−M2が約1.0kN・mと比較的高いケース1(980N 級)の方が、約0.5kN・mと比較的低いケース2(590N 級)よりも、断面力が高く、センターピラー上部での耐くの字状の折れ曲がり座屈性には有利であることが分かる。
即ち、本発明において、解析により求めた上記両断面モ−メントM1、M2の最大値同士を比較して、その最大値同士の絶対値の差M1−M2を0.5kN・m以上とすることの、センターピラー上部での耐くの字状の折れ曲がり座屈性に対する臨界的な意義が分かる。
また、上部センタピラーR/Fの同一板厚(1.4mm)では、上部センタピラーR/Fの鋼材強度を変えただけで、センターピラー上部と下部での強度バランス(M1とM2の差)は大きく変わることが分かる。そして、上部センタピラーR/Fが同一の板厚の場合、強度が高い方が、センターピラー上部での耐くの字状の折れ曲がり座屈性は有利であることが分かる。また、ケース1(980N 級)のセンターピラー上部での耐くの字状の折れ曲がり座屈性には余裕があり、上部センタピラーR/Fの板厚をより薄くして、センターピラーを軽量化できることが分かる。
以上の結果から、本発明を用いれば、センターピラー上部での耐くの字状の折れ曲がり座屈性を抑制した上で、更に軽量化できるセンターピラーの設計ができることが分かる。
Figure 2006281964
Figure 2006281964
本発明自動車センターピラーによれば、側突時のセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈を予め設計段階で防止できるとともに、実際の側突時においても、センターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈を防止できる自動車センターピラーを提供できる。また、本発明の自動車センターピラーの耐上部座屈性の性能評価方法によれば、実際の側突時のセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈発生状態を予め設計段階で予測できる、自動車センターピラーの耐上部座屈性の性能評価方法を提供できる。
したがって、本発明は自動車センターピラー自体、あるいは側突時のセンターピラー上部でのくの字状の折れ曲がり座屈発生状態の予測や、センターピラーの設計に利用することができる。
本発明センターピラーの前提としての構成を示す側面図である。 図1のII−II線断面図である。 図1のIII−III線断面図である。 本発明に係る解析の概念を示すセンターピラーを模式化した説明図である。 本発明に係る解析のフローチャートを示す説明図である。 本発明に係る解析の解析モデルを示す説明図である。 本発明に係る解析の解析モデルを示す説明図である。 本発明に係る解析の解析モデルを示す説明図である。 本発明に係る解析によるセンターピラー断面力の時間経過を示す説明図である。 本発明に係る解析と実際との圧壊試験におけるセンターピラーの荷重−変位関係を示す図である。
符号の説明
1:自動車センタピラー、2:リインフォースメント、
4:ルーフサイドレール、5:サイドシル、11:センタピラー下端部、
12:センタピラー上端部、13:アウタパネル、14:インナパネル、

Claims (2)

  1. アウタパネルとインナパネルとで閉断面を形成し、この閉断面内の長手方向に亙ってリインフォースメントを配置した構造の自動車センターピラーであって、解析の前提条件として、前記センターピラーの上端がルーフサイドレール、下端がドア開口部の下縁部を形成するサイドシルに各々接合されるとともに、前記センターピラー全長の1/3部分より上を上部、これより下を下部とし、更に、バリアによる前記センターピラーへの側突を模擬したセンターピラーへの落錘衝突時に、前記ルーフサイドレールと前記サイドシルとが車体内側に向かって回転する回転モーメントを有する、と各々仮定して、前記センターピラー構造に対する有限要素法解析用モデルを用いた動的陽解法による動的圧壊試験解析を行って求められる、センターピラー上部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈限界断面モ−メントM1と、センターピラー下部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈位置近傍での断面モ−メントM2との各最大値同士の差M1−M2が、絶対値で0.5kN・m以上である上部と下部との強度バランスを有する、側突時の耐上部座屈性に優れた自動車センターピラー。
  2. 自動車センターピラーに対する側突時の耐上部座屈性の性能評価方法であって、アウタパネルとインナパネルとで閉断面を形成し、この閉断面内の長手方向に亙ってリインフォースメントを配置したセンターピラー構造を形成し、このセンターピラー構造に対して、有限要素法解析用モデルを用いた動的陽解法による動的圧壊試験解析を行うに際し、解析の前提条件として、前記センターピラーの上端がルーフサイドレール、下端がドア開口部の下縁部を形成するサイドシルに各々接合されるとともに、前記センターピラー全長の1/3部分より上を上部、これより下を下部とし、更に、バリアによる前記センターピラーへの側突を模擬したセンターピラーへの落錘衝突時に、前記ルーフサイドレールと前記サイドシルとが車体内側に向かって回転する回転モーメントを有する、と各々仮定して、センターピラー上部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈限界断面モ−メントM1と、センターピラー下部への落錘衝突時におけるセンターピラー上部の座屈位置近傍での断面モ−メントM2とを各々求め、これらM1とM2との最大値同士の差M1−M2から、センターピラー上部と下部との強度バランスを評価することを特徴とする側突時の自動車センターピラーの耐上部座屈性の性能評価方法。
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