JP2006276425A - 複合型レンズ - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な屈折率を備え、且つ特定波長の光をカットすることが可能な複合型レンズを提供する。
【解決手段】
複合型レンズ10は、球面又は粗い非球面形状に形成されたガラスレンズ11と、ガラスレンズ11の表面に形成された樹脂層12とを備える。樹脂層12は、特定波長の光を吸収する配位子を備える銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン等の金属錯体をエポキシ樹脂等の樹脂に分散させ、硬化させて形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、レンズ表面に樹脂層が形成された複合型レンズに関する。
従来、カメラ、顕微鏡などの光学製品にはガラスレンズが利用されている。樹脂レンズは温度変化により光学性能が変動するため、特に高精度が要求される利用方法ではガラスレンズが好んで用いられている。
また、非球面形状のレンズは、高い収差補正能力を備えておりレンズの構成枚数が少ないコンパクトな光学系でも優れた結像性能を実現できるため、広く利用されている。
非球面形状のガラスレンズを製造する際、一般に研削加工が用いられる。研削加工はガラスレンズを一枚ずつ削るため、非球面形状のガラスレンズの製造コストは高いという問題がある。
そこで、球面又は粗い非球面形状に形成されたガラスレンズ上に樹脂を接合し非球面形状に形成した樹脂接合型非球面レンズ(複合型レンズ)が開発されている(例えば、特許文献1)。
また、従来デジタルカメラ等の撮像装置で撮像素子として用いられるCCD(Charge Coupled Devices)等は赤外領域の光にも感度を有するため、赤外領域の光によるノイズをなくすために赤外領域の光をカットするフィルタがレンズと撮像素子との間に設けられている(例えば特許文献2)。
特開平06−270166号公報 特開2004−88181号公報(第1図)
しかし、ガラスレンズ上に接合される樹脂は屈折率に限界があり、特許文献1に開示された樹脂接合型非球面レンズ(複合型レンズ)には構成のバリエーションに限界があった。
また、近年デジタルカメラ等の撮像装置の小型化が進んでおり、小型化に対応するためには部品点数を減らすことが好ましい。そこで、特許文献2で開示されている撮像素子とレンズとの間に配置された赤外領域の光をカットするフィルタの機能をレンズに組み込み、部品点数を削減することが望まれている。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、良好な屈折率を備え、且つ特定波長の光をカットすることが可能な複合型レンズを提供することを目的とする。
本発明の第1の観点に係る複合型レンズは、
特定波長の光をカットする複合型レンズであって、
レンズと、
前記レンズ表面に形成され、且つ特定波長の光を吸収する配位子を備える金属錯体を分散させた樹脂層とを備えることを特徴とする。
前記配位子は、フタロシアニン誘導体であってもよい。
前記配位子は、ポルフィリン誘導体であってもよい。
前記金属錯体の金属は、銅であってもよい。
本発明によれば、特定波長を吸収する配位子を備える金属錯体を分散させた樹脂をレンズ表面に形成することで、良好な屈折率を得ることができ、且つ特定波長の光をカットすることが可能な複合型レンズを提供することができる。
本発明の実施の形態に係る複合型レンズについて図を用いて説明する。
本発明の実施の形態に係る複合型レンズ10は、図1に示すようにガラスレンズ11と、ガラスレンズ11の表面に形成され樹脂中に特定波長の光を吸収する特性を有する配位子を備える金属錯体を分散させた樹脂層12と、から構成される。
ガラスレンズ11は、ガラスから形成されたレンズであり、ガラスレンズ11の表面は球面又は粗い非球面に形成される。ガラスレンズ11は、凸レンズであっても凹レンズであってもよい。また、ガラスレンズ11の表面には、図1に示すように樹脂層12が形成される。
樹脂層12は金属錯体を分散させた樹脂から構成され、図1に示すようにレンズ11の表面に例えば非球面形状に形成される。樹脂層12は、ガラスレンズ11と、例えば非球面形状に形成された金型との間に、金属錯体を分散させた未硬化の樹脂を注入し硬化させて形成される。樹脂層12は、特定波長の光を吸収し、カットする特性を備える。樹脂層12の特定波長の光を吸収する特性は、金属錯体の分散濃度、錯体と配位子との比率、混合させる金属錯体の種類等で制御される。また、本発明の樹脂層12中には金属錯体が均一に分散されているため、樹脂層12の厚みの偏りが大きいと特定波長の光をカットする機能にばらつきが生ずるおそれがある。従って、樹脂層12の特定波長の光を吸収する特性は、樹脂層12の厚みの勾配を調節することによっても制御される。
樹脂層12を形成する樹脂としては、透光性を備える樹脂を用いることができ、具体的にはエポキシ樹脂 、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ウレタンアクリレート、紫外線硬化性樹脂 、変成アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
金属錯体とは、金属イオンの周囲に他の原子、分子あるいはイオン等の配位子が配位結合した化合物である。金属錯体を構成する金属は、例えば銅、コバルト、鉄、ニッケル、アンチモン等の遷移金属である。本発明では金属錯体中の金属イオンによって樹脂層12の屈折率が向上し、樹脂中に分散される金属は原子量が大きいほど樹脂層12の屈折率を良好に向上させるため好ましい。本発明では金属錯体を構成する金属イオンとして特に銅イオンを例に挙げて説明する。
金属錯体の配位子としては、樹脂層12に要求される特性に応じて、紫外領域、赤外領域等、特定波長の光を吸収する特性を備える配位子のいずれを用いることも可能である。特に配位子が疎水性である場合、配位子が分散剤として機能し金属錯体を容易に樹脂中に分散させることが可能となるので好ましい。なお、親水性の配位子を用いることも可能であり、この場合、機械的手法により金属錯体を樹脂中に分散させる。
本発明では、近赤外領域に光吸収特性を持つ、例えば化学式1に一般式を示すフタロシアニン系化合物を用いる。特に本実施の形態では、Mは銅であり、化学式2に示すR〜R16が水素原子から構成される銅フタロシアニンと、化学式3に示すR〜R16を塩素で置換したハロゲン化銅フタロシアニンとを用いる。なお、銅フタロシアニンと、ハロゲン化銅フタロシアニンとは、樹脂層12に要求される光吸収特性を実現できるよう、適宜混合する濃度、錯体と配位子との比率を調節する。

銅フタロシアニンをジメチルスルホキシド(Dimethylsulfoxide)に溶解させ、測定した吸収スペクトルを図2に示す。銅フタロシアニンは、図2に示すように650nm近辺の近赤外領域に光吸収特性を備える。
また、ハロゲン化銅フタロシアニンをジメチルスルホキシドに溶解させ、測定した吸収スペクトルを図3に示す。ハロゲン化銅フタロシアニンは、図3に示すように650nm近辺の近赤外領域に光吸収特性を備える。
このようなフタロシアニンと、ハロゲン化銅フタロシアニンを所定の割合で混合すると650nm以上の近赤外領域にほぼ一定の光吸収特性が得られる。換言すれば、近赤外領域の波長の光を一定の割合でカットすることができる。
上述したように、本発明の実施の形態に係る複合型レンズ10は、銅フタロシアニン及びハロゲン化銅フタロシアニンを分散させた樹脂層12をガラスレンズ11の表面に形成することによって、銅イオンを樹脂層12中に均一に分散させることができるため金属を分散させない樹脂層を形成した複合型レンズと比較して屈折率を向上させることが可能である。また、本発明では特に疎水性の配位子であるフタロシアニンを配位子として用いており、フタロシアニンが分散剤としての役割を果たし、樹脂層12中に銅イオンを容易に分散させることが可能である。
更に、本発明は特定の波長域に光吸収特性を備える銅フタロシアニン及びハロゲン化銅フタロシアニンを樹脂層12中に分散させることによって、650nm以上の波長の近赤外領域の光を一定の割合で吸収することができる。従って、本発明によれば、金属錯体を樹脂層12中に分散させることによって、屈折率が向上するのみならず、樹脂層12中に分散された配位子によって特定波長の光をカットする機能を備える複合型レンズ10を提供することができる。
また、樹脂層12が形成されるガラスレンズ11にも金属酸化物微粒子等を分散させる等により屈折率の改質を行う、又はガラスレンズ11をガラスではなく樹脂から形成し、樹脂層12と同様に樹脂中に金属錯体を分散させ屈折率の改質及び特定波長の光をカットする特性を備えさせることもできる。このように本発明によればガラスレンズ11と、樹脂層12とを様々に組み合わせることによって従来の複合型レンズと比較して、構成のバリエーションを増加させることができる。
上述したように、本発明の実施の形態に係る複合型レンズ10は、レンズそのものが特定波長の光をカットする機能を有するため、複合型レンズ10が搭載される撮像装置等の部品点数の削減に貢献することも可能である。
本発明は上述した実施の形態に限られず、様々な修正及び応用が可能である。
例えば、上述した実施の形態では金属錯体として銅フタロシアニンとハロゲン化銅フタロシアニンとを用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限られず銅フタロシアニンとハロゲン化銅フタロシアニン以外に近赤外領域に光吸収特性を備えるポルフィリン誘導体を配位子として備える金属錯体を混合することも可能である。また、銅フタロシアニンに代えてポルフィリン誘導体を配位子とする金属錯体を樹脂中に分散させることも可能である。
また、上述した実施の形態では化学式1に示すフタロシアニンのR〜R16を全て塩素(Cl)で置換した場合を例に挙げて説明したが、これらを他のハロゲン元素に置換することも可能であるし、近赤外領域等の特定波長の光吸収特性を備える官能基等に置換することも可能である。
また、赤外、近赤外領域の光のみならず、レンズに要求される吸収特性に応じて例えば紫外領域等、他の波長域に光吸収特性を備える金属錯体を更に混合することも可能である。これらはレンズに要求される特性、配位子の特性等の諸条件に応じて適宜調節する。
また、樹脂層12中には、金属錯体だけでなく紫外線吸収剤、色素等を混入することも可能である。
本発明の実施の形態に係る複合型レンズを示す断面図である。 銅フタロシアニンの吸収スペクトルを示す図である。 ハロゲン化銅フタロシアニンの吸収スペクトルを示す図である。
符号の説明
10 複合型レンズ
11 ガラスレンズ
12 樹脂層

Claims (4)

  1. 特定波長の光をカットする複合型レンズであって、
    レンズと、
    前記レンズ表面に形成され、且つ特定波長の光を吸収する配位子を備える金属錯体を分散させた樹脂層と、を備えることを特徴とする複合型レンズ。
  2. 前記配位子をフタロシアニン誘導体としたことを特徴とする請求項1に記載の複合型レンズ。
  3. 前記配位子をポルフィリン誘導体としたことを特徴とする請求項1に記載の複合型レンズ。
  4. 前記金属錯体の金属を銅としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合型レンズ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013179543A1 (ja) * 2012-05-29 2013-12-05 パナソニック株式会社 レンズ、ハイブリッドレンズ、交換レンズおよび撮像装置

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