以下、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明のコリオリ流量計の上下流配管構造の一実施の形態を示す平面図、図2は正面図、図3は側面図である。また、図4は上流配管及び下流配管の平面図、図5は正面図、図6は側面図である。さらに、図7は配管サポート部材を構成する配管サポート板の平面図、図8は配管サポート板の一部断面を含む正面図である。
図1ないし図3において、引用符号1は、被測定流体(図示省略)が流れる上流側のライン配管2及び下流側のライン配管3の間に取り付けられるコリオリ流量計を示している。このコリオリ流量計1は、流量計本体4と、流量計本体4から延びる上流配管5及び下流配管6と、配管サポート部材7とを備えて構成されている。上流配管5は、流量計本体4から上流側のライン配管2へ向けて延び、この上流側のライン配管2に対しては、流量制御弁8及びチーズ(T)9を介して接続されている。また、下流配管6は、流量計本体4から下流側のライン配管3へ向けて延び、この下流側のライン配管3に対しては、流量制御弁10を介して接続されている。上流配管5及び下流配管6は、各一箇所同士が近づけられており、この近づけた部分に配管サポート部材7が設けられている。
本発明は、配管サポート部材7を用いて上流配管5及び下流配管6の中間を一旦一つに纏める、というコリオリ流量計1の上下流配管構造に特徴を有している。また、本発明は、この配管構造を有するコリオリ流量計1の流量計本体4の固定に関しても特徴を有している。以下、図1ないし図8を参照しながらコリオリ流量計1の各構成部材や配管構造の特徴について説明する。
流量計本体4は、筐体11と、流量計本体4を架台12に対して取り付ける台座補強板13と、筐体11内に収納されるフローチューブ(図示省略)と、駆動装置(図示省略)、一対の振動検出センサ(図示省略)及び温度センサ(図示省略)を有するセンサ部(図示省略)と、このセンサ部からの信号に基づいて質量流量等の演算処理を行う信号演算処理部(図示省略)と、前記駆動装置を励振するための励振回路部(図示省略)と、前記信号演算処理部及び前記励振回路部を内蔵するとともに電源接続部14を有する端子箱15とを備えて構成されている。このような構成の流量計本体4は、前記フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出することにより前記被計測流体の質量流量及び/又は密度を得るようになっている。
筐体11は、曲げやねじれに強固な構造を有している。また、筐体11は、前記フローチューブを収納することができる大きさに形成されている。さらに、筐体11は、前記フローチューブ等の流量計要部を保護することができるように形成されている。このような筐体11の内部には、アルゴンガス等の不活性ガスが充填されている。不活性ガスの充填により、前記フローチューブ等への結露が防止されるようになっている。
台座補強板13は、台座取付板16と、一対の継ぎ手17と、この一対の継ぎ手17を支持する継ぎ手支持部18とを有している。台座取付板16と一対の継ぎ手支持部18は、金属の一体物で形成されている。台座取付板16の上面略中央には、筐体11が固着されている。台座取付板16は、この下面が架台12の流量計本体取付部19に対して面接触するような状態で固定されている。台座取付板16の流量計本体取付部19に対する固定に関しては、三点のボルト20及びナット21の締め付けが採用されている。三点のボルト20及びナット21の締め付けを採用することにより、空間座標において面が確定するようになる。従って、流量計本体4は、架台12に対して一定位置に保持されている。尚、引用符号22は球面座金を示している。
一対の継ぎ手17には、前記フローチューブの一対の流入出口部23が各々接続されている。一対の流入出口部23は、筐体11から外方へ突出するように配置形成されている。
上流配管5は、上流側のライン配管2と流量計本体4とを繋ぐ配管であって、図示のようにこの一端が上流側のライン配管2に接続されるとともに、他端が流量計本体4の継ぎ手17に接続されている。上流配管5は、配管サポート部材7を設ける中間部分24と、上流側のライン配管2側となるライン配管接続部分25と、流量計本体4側となる流量計本体接続部分26とを有している。中間部分24は、ライン配管接続部分25の向きを90°転向させるように円弧状に屈曲形成されている。ライン配管接続部分25は、直線状の形状に形成されている。ライン配管接続部分25の管軸は、中間部分24によって流量計本体接続部分26の管軸に対し直交するように設定されている。流量計本体接続部分26は、コ字状(又はU字状)の形状に形成されている。このような形状の流量計本体接続部分26の配置は、中間部分24の位置を、言い換えれば配管サポート部材7の位置を流量計本体4の上方に位置させるように配置されている。
下流配管6は、下流側のライン配管3と流量計本体4とを繋ぐ配管であって、図示のようにこの一端が下流側のライン配管3に接続されるとともに、他端が流量計本体4の継ぎ手17に接続されている。下流配管6は、配管サポート部材7を設ける中間部分27と、下流側のライン配管3側となるライン配管接続部分28と、流量計本体4側となる流量計本体接続部分29とを有している。中間部分27は、ライン配管接続部分28の向きを90°転向させるように円弧状に屈曲形成されている。ライン配管接続部分28は、直線状の形状に形成されている。ライン配管接続部分28の管軸は、中間部分27によって流量計本体接続部分29の管軸に対し直交するように設定されている。流量計本体接続部分29は、コ字状(又はU字状)の形状に形成されている。このような形状の流量計本体接続部分29の配置は、中間部分27の位置を、言い換えれば配管サポート部材7の位置を流量計本体4の上方に位置させるように配置されている。
上流配管5及び下流配管6についてもう少し詳しく説明すると、上流配管5における流量計本体接続部分26と、下流配管6における流量計本体接続部分29は、次の点で差異を有している。すなわち、二本の配管の高さHは、例えば206.5mmで共通しているものの、幅方向の長さW1、W2は、一方(W1)が263mm、もう一方(W2)が268mmで異なっている。また、流量計本体4における駆動周波数を例えば82Hzとすると、この駆動周波数82Hzに対し前者が3.5倍の287Hz、後者が3.3倍の270Hzとなっている。尚、この周波数差は6%、チューブ周波数に対しては20%となっており、一般的には音叉現象が生じ難い周波数差となっている。
その他、曲げの曲率半径は、高圧ガス保安協会の基準により、耐圧上4D以上が有利であることが知られている。本形態において、全ての配管の曲げの曲率半径は、5Dとなっている(D:チューブ直径)。上流配管5及び下流配管6の継ぎ手17に対する接続は、流量計本体接続部分26及び29の形状がコ字状であることから、流量計本体接続部分26及び29を若干撓ませることにより、容易に接続することができるようになっている。
配管サポート部材7は、上流配管5及び下流配管6の中間部分24及び27を一旦一つに纏めるために設けられている。本形態において、配管サポート部材7は、中間部分24及び27を上下から挟み込むような一対の配管サポート板30で構成されている。配管サポート板30は、特に限定するものではないが、図示のような略円盤状に形成されている。このような配管サポート板30には、中央に架台12に対しての固定用の貫通孔31が形成されている。また、配管サポート板30には、四つの配管支持溝32と、中間部分24及び27を収容するための円形収容凹部33と、四つの貫通孔34とが形成されている。
上流配管5及び下流配管6の中間部分24及び27は、一対の配管サポート板30により上下から挟み込まれると、中間部分24及び27の屈曲部分同士が貫通孔31を挟む両側で近接するとともに対向するようになっている。また、上流配管5及び下流配管6は、配管支持溝32で支持されるようになっている。配管サポート部材7は、中央の貫通孔31にボルト35を差し込み、そして、ナット36を螺合させると、架台12の一対の配管サポート部材取付部37に対して固定されるようになっている。尚、配管サポート板30同士の固定のために、四つの貫通孔34を用いても良いものとする。
配管サポート部材7は、架台12の一対の配管サポート部材取付部37に固定されると、この固定軸が上流配管5及び下流配管6のライン配管接続部分25及び28の管軸を結ぶ線を交叉するように、また、流量計本体接続部分26及び29の管軸を結ぶ線を交叉するようになっている。
架台12は、十分に剛性の高い構造のものであって、流量計本体取付部19と、一対の配管サポート部材取付部37と、柱部38とを備えて構成されている。流量計本体取付部19と一対の配管サポート部材取付部37は、所定の間隔をあけて柱部38に強固に取り付けられている。
以上、図1ないし図8を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、コリオリ流量計1の上流配管5及び下流配管6を、配管サポート部材7を用いて一旦一つに纏め、この配管サポート部材7を架台12に対して一箇所で固定するとともに、流量計本体4の架台12への固定を3点としている。従って、本発明によれば、外力が上流配管5及び下流配管6や流量計本体4に加わっても、ゼロ点シフトや器差のスパンシフトが生じない高い安定性を持ったコリオリ流量計1とすることができる。
また、本発明によれば、ガス計測に限らず液体計測においても、DC成分的な配管ストレス(圧力や温度による影響、履歴が残るような衝撃圧による影響)だけでなくAC成分的な連続する配管振動に対してもコリオリ流量計1の配管状態を長期に亘り安定な状態に保つことができる。
また、本発明によれば、配管サポート部材7を用いていることから、ほぼ単純な2つの上流配管5及び下流配管6のみの振動系とすることができる。
また、本発明によれば、配管サポート部材7と架台12との固定を1点とし、上流配管5及び下流配管6を上流側のライン配管2及び下流側のライン配管3の方向に対し互いに対向する90°水平方向に転向させることで、配管のストレスを1点の固定部(配管サポート部材7の前記固定軸)に集中させることができる。そして、これにより配管ストレスを相殺することができる。尚、本形態のように力点と固定点とを可能な限り近接させることで、配管に曲げモーメントを発生させることなく上流側のライン配管2及び下流側のライン配管3の配管ストレスを架台12に伝えることができる。
また、本発明によれば、仮にコリオリ流量計1自体から振動が漏洩したとしても、この漏洩する振動に対し、上流配管5及び下流配管6の管軸方向に伝わる振動要素を対向させていることから、鏡像のベクトルとして配管サポート部材7の部分において振動を相殺することができる。従って、上流側のライン配管2及び下流側のライン配管3への振動漏洩を最小限に抑えることができる(これは従来からの本体を架台に固定せず配管のみでサポートするタイプのコリオリ流量計に対し、より理想的な配管となり、基準器としての使用用途としても有効な流量計固定方法となる)。
また、本発明によれば、流量計本体4を架台12に対して三点のボルト20及びナット21の締め付けによって固定していることから、配管ストレスが架台12を通じて流量計本体4の固定部分に到達した場合や、架台12の溶接構造等の残留応力が開放された場合、さらには上流配管5及び下流配管6から流量計本体4に向け直接応力が伝播した場合が仮にあったとしても、架台12と流量計本体4との間に応力が生じないようにすることができる。従って、固定の条件を常に一定を保つことができる。
次に、図9ないし図29を参照しながら本発明の補足説明をする。ここでは、本発明がいかに効果的であるかを模式的な図を用いて説明する。尚、図中には符号のかわりに部材名称等が入っている。
図9は、コリオリ流量計の架台への固定方法を示す立体図である。コリオリ流量計の架台への固定として、図9では4点で固定を行っている(固定はボルト+ナットによる結束)。この場合、架台が歪んでいる(架台と流量計本体との固定点が一致しない)と、固定の際にコリオリ流量計の筐体(本体)に歪みや応力が生じてしまう可能性がある。このため、コリオリ流量計の器差性能等の特性が悪化したり、長期に亘って応力が開放されると、固定の条件が変化することによってゼロ点がシフトしたり、器差がシフトする可能性がある。
一方、図10では、コリオリ流量計の架台への固定として3点で固定を行っており(固定はボルト+ナットによる結束)、この場合、架台が歪んでいても固定の際にコリオリ流量計の筐体(本体)に歪みや応力が生じることはない。このため、コリオリ流量計の器差性能等の特性が長期に亘って安定したものとなる。これは前記4点を厳密に平面内に含めるために大変な労力を要し、現実には不可能であることからも分かるように、前記3点の固定が有効になる。
図11(a)〜図11(e)、図12(a)〜図12(e)は、流量計本体の固定方法に関し、架台のバネ要素とコリオリ流量計の上下流の配管系のバネ要素とを模式的に表したものである。
図11(a)は、流量計本体を架台に固定していない場合の例であり、上下流の配管が一旦配管サポート部(部材)の1点で纏められている状態を示している。上下流の配管は、バネ要素となりうるが、配管サポート部材の位置に外力が働いても、ここでは1点なので上下流の配管は外力の影響を受けないものとなる。
図11(b)は、図11(a)の状態で流量計本体を架台に1点のみで固定した場合の例を示している。ここで配管サポート部材と架台との間もバネ要素となりうる。配管サポート部材に外力が働くと、流量計本体がz軸方向の変位以外の自由度で動く可能性がある。但し、上下流配管のバネ要素には均等に外力が作用するので、センサへの影響は少ないものとなる。
図11(c)は、流量計本体の架台への固定を2点とした場合の例である。この場合、流量計本体の固定としては不十分である。
図11(d)は、流量計本体の固定を3点とした場合の例である。この場合、3点で面が空間座標において確定することから、流量計本体は架台に対し一定位置に保持される。
図11(e)は、流量計本体の架台への固定を4点とした場合の例である。この場合、4点では固定の面の条件が一定とはなり得ず、また、配管サポート部材へ働く外力が架台にも伝播してしまうと、架台が歪み、流量計本体に応力が生じてしまう場合があるので、流量計全体(流量計本体+上下流配管)の固定が一定条件とはなり得ない。
図12(a)は、流量計本体を架台に固定していない場合の例である。図12(a)は、上下流の配管が2箇所の離れた位置でサポートされている状態を示している。通常の口径の大きいコリオリ流量計はこの方式が殆どである。上下流の配管は、バネ要素となっている。図11(a)と異なる部分は、外力により2つの固定端間の相対関係(変位、角変位)が変化すると、上下流配管のバネ要素が変化することである。
図12(b)は、図12(a)の状態で流量計本体を架台に1点で固定した場合の例を示している。2つの配管サポート部材と架台との間に2つのバネ要素が存在している。2つの固定端に対して相対的に異なる方向に変位(角変位)を与えた場合、ここでの例示の中で最悪の結果となるものである(ゼロシフトや器差シフトが大きい)。図12(b)は、従来の配管のみで固定されたコリオリ流量計において、ケース(筐体)が軽く架台(大地)に接触している状態に相当する。
図12(c)は、流量計本体の架台への固定を2点とした場合の例である。この場合、流量計本体の固定としては不十分である。
図12(d)は、流量計本体の架台への固定を3点とした場合の例である。この場合、3点で面が空間座標において確定することから、流量計本体は架台に対して一定位置に保持される。
図12(e)は、流量計本体の架台への固定を4点とした場合の例である。この場合、4点では固定の面の条件が一定とはなり得ず、また、配管サポート部材へ働く外力が架台にも伝播してしまうと、架台が歪み、流量計本体に応力が生じてしまう場合があるので、流量計全体(流量計本体+上下流配管)の固定が一定条件とはなり得ない。
尚、図12(a)〜図12(e)に共通していえることは、外力により2つの固定端間の相対関係(変位、角変位)が変化しなくても、絶対的な変位や角変位が生じるだけで、上下流配管のバネ要素の相対関係が大きく変化してしまうことである。理想的な配管は、図11(a)の例であるが、流量計本体を架台に固定せざるを得ない場合には、図11(d)の例となる。
図13(a)〜図13(d)、図14(a)〜図14(d)は、流量計本体の固定点と配管サポート部材の点を結んだ図である。ここでは相対的な位置関係を決定する要素(振動要素ではない)が示されている。
図13(a)は、固定点が1点で配管サポート部材の位置も1点の場合の例であり、図11(b)に相当する。要素数は1である。図13(a)では、空間において要素の軸回りに回転自由であることが分かる。
図13(b)は、固定点が2点で配管サポート部材の位置が1点の場合の例であり、図11(c)に相当する。要素数は3である。図13(b)では、空間座標において面が決定される。配管サポート部材に、固定点の2点を結ぶ軸に対して垂直方向に外力が働いた場合には、固定点の2点を結ぶ軸回りに回転することが分かる。
図13(c)は、固定点が3点で配管サポート部材の位置が1点の場合の例であり、図11(d)に相当する。要素数は6である。図13(c)は、立方体を形作る最小単位であることから、配管サポート部材に外力が働いても構造体は不動である。
図13(d)は、固定点が4点で配管サポート部材の位置が1点の場合の例であり、図11(e)に相当する。要素数は10である。図13(d)は、図13(c)に対し固定点が1点増えるものである。しかしながら、構造が複雑になって解析や設計が難しくなることが分かる。
図14(a)は、固定点が1点で配管サポート部材の位置が2点の場合の例であり、図12(b)に相当する。要素数は2である。図14(a)では、2箇所の配管サポート部材の変位により構造体が固定点を基準に回転自由に変形することが分かる。
図14(b)は、固定点が2点で配管サポート部材の位置が2点の場合の例であり、図12(c)に相当する。要素数は5である。図14(b)は、2箇所の配管サポート部材の変位が2つの固定点を結ぶ軸に対して回転の自由度が与えられている。しかしながら、2箇所の配管サポート部材同士は互いに拘束しあうことをしていないのでそれぞればらばらな回転運動をする。
図14(c)は、固定点が3点で配管サポート部材の位置が2点の場合の例であり、図12(d)に相当する。要素数は8である。図14(c)では、2箇所の配管サポート部材の位置が各々3点の固定点により空間内で決定されている。しかしながら、図13(c)に比べると要素が増え、解析や設計が難しくなるのに加え、上下流の配管サポート部材での固定の条件を等しくすることは困難である。
図14(d)は、固定点が4点で配管サポート部材の位置が2点の場合の例であり、図12(e)に相当する。要素数は14である。図14(d)では、上下流の配管サポート部材で固定の条件を等しくすることは容易であるが、構造が複雑になり解析や設計が難しくなることが分かる。
理想的な配管は、図13(c)(図11(d))の例となる。
図15(a)〜図15(d)、図16(a)〜図16(d)、図17(a)〜図17(d)は、流量計本体の固定位置の個数と、外力の作用点の位置の関係とを示した説明図である。空間座標の中での物体の挙動には、6つの自由度(x軸、y軸、z軸方向の変位とx軸、y軸、z軸回りの角変位)があるが、ここでは特に外力(変位のみ)により図心(固定部又は複数の固定部分の中心)にどのような角変位が生じるかを示している。角変位に着目したのは、角変位によりコリオリ流量計のゼロ点シフトや器差のスパンシフトが生じ易いからである。
作用点に働く外力として、y方向プラス向きを流れ方向とすると、左右、前後、上下方向の変位(外力をここでは変位として表す)と、図心を通る左右軸、前後軸、上下軸回りの回転運動とを次に示す記号で表すことにする。流量計本体の上流から下流方向に向かって左右、前後、上位下方向にそれぞれx軸、y軸、z軸をとると、次のようになる。
(1)作用点に働く左右方向(x軸方向)の変位(外力):X、(2)作用点に働く前後方向(y軸方向)の変位(外力):Y、(3)作用点に働く上下方向(z軸方向)の変位(外力):Z、(4)図心の左右軸(x軸)回りの角変位:Xp(ピッチング)、(5)図心の前後軸(y軸)回りの角変位:Yr(ローリング)、(6)図心の上下軸(z軸)回りの角変位:Zy(ヨーイング)
図15(a)は、固定位置が1箇所で作用点が固定位置に一致している場合の例である。外力X、Y、Zが作用点に働いてもモーメントが生じないので、図心(固定点)には角変位が生じないものとなる。
図15(b)は、固定位置が2箇所で、作用点が2箇所の固定位置を結ぶ線上の中間地点に存在する場合の例である。外力X、Y、Zが作用点に働いてもモーメントが生じないので、図心(固定点)には角変位が生じないものとなる。
図15(c)は、固定位置が3箇所で、作用点が3箇所の固定位置を含む平面上で且つ三角形の図心に存在する場合の例である。外力X、Y、Zが作用点に働いてもモーメントが生じないので、図心(固定点)には角変位が生じないものとなる。
図15(d)は、固定位置が4箇所で、作用点が4箇所の固定位置を含む平面上で且つ四角形の図心に存在する場合の例である。外力X、Y、Zが作用点に働いてもモーメントが生じないので、図心(固定点)には角変位が生じないものとなる。
図16(a)は、固定位置が1箇所で、作用点がy軸上にあり且つ固定位置から距離δだけ離れている場合の例である。外力X、Y、Zが作用点に働くと、図心(固定点)回りには外力Zによるモーメントによってx軸回りの角変位Xpが生じることになる。また、外力Xによるモーメントによってz軸回りの角変位Zyが生じることになる。
図16(b)は、固定位置が2箇所で、作用点が2箇所の固定位置を結ぶ線上の中間地点(図心)からy軸方向に距離δだけ離れて存在する場合の例である。外力X、Y、Zが作用点に働くと、図心回りには外力Zによるモーメントによってx軸回りの角変位Xpが生じることになる。また、2つの固定位置を結ぶ構造体の剛性が低い場合には、外力Xによってz軸回りの角変位Zyが生じることになる。
図16(c)は、固定位置が3箇所で、作用点が3箇所の固定位置を含む平面上で且つ三角形の図心からy軸方向に距離δだけ離れて存在する場合の例である。外力X、Y、Zが作用点に働くと、図心回りには、3つの固定位置を結ぶ構造体の剛性が低い場合に、外力Zによるモーメントによってx軸回りの角変位Xpが生じることになる。また、3つの固定位置を結ぶ構造体の剛性が低い場合には、外力Xによってz軸回りの角変位Zyが生じることになる。
図16(d)は、固定位置が4箇所で、作用点が4箇所の固定位置を含む平面上で且つ四角形の図心からy軸方向に距離δだけ離れて存在する場合の例である。外力X、Y、Zが作用点に働くと、図心回りには、4つの固定位置を結ぶ構造体の剛性が低い場合に、外力Zによるモーメントによってx軸回りの角変位Xpが生じることになる。また、4つの固定位置を結ぶ構造体の剛性が低い場合には、外力Xによってz軸回りの角変位Zyが生じることになる。
図17(a)は、固定位置が1箇所で、作用点がz軸上にあり且つ固定位置から距離δだけ離れている場合の例である。外力X、Y、Zが作用点に働くと、図心(固定点)回りには外力Yによるモーメントによってx軸回りの角変位Xpが生じることになる。また、外力Xによるモーメントによってy軸回りの角変位Yrが生じることになる。
図17(b)は、固定位置が2箇所で、作用点が2箇所の固定位置を結ぶ線上の中間地点(図心)からz軸方向に距離δだけ離れて存在する場合の例である。外力X、Y、Zが作用点に働くと、図心回りには外力Yによるモーメントによってx軸回りの角変位Xpが生じることになる。また、2つの固定位置を結ぶ構造体の剛性が低い場合には、外力Xによってy軸回りの角変位Yrが生じることになる。
図17(c)は、固定位置が3箇所で、作用点が3箇所の固定位置を含む平面上で且つ三角形の図心からz軸方向に距離δだけ離れて存在する場合の例である。外力X、Y、Zが作用点に働くと、図心回りには、3つの固定位置を結ぶ構造体の剛性が低い場合に、外力Yによるモーメントによってx軸回りの角変位Xpが生じることになる。また、3つの固定位置を結ぶ構造体の剛性が低い場合には、外力Xによるモーメントによってy軸回りの角変位Yrが生じることになる。
図17(d)は、固定位置が4箇所で、作用点が4箇所の固定位置を含む平面上で且つ四角形の図心からz軸方向に距離δだけ離れて存在する場合の例である。外力X、Y、Zが作用点に働くと、図心回りには、4つの固定位置を結ぶ構造体の剛性が低い場合に、外力Yによるモーメントによってx軸回りの角変位Xpが生じることになる。また、4つの固定位置を結ぶ構造体の剛性が低い場合には、外力Xによるモーメントによってy軸回りの角変位Yrが生じることになる。
図18(a)〜図18(d)は、図15、図16、図17における流量計本体を3点で支持する場合を例にしており、図心から外力の作用点の距離を一定とし、その結んだ直線と3点の固定部分を含む平面との角度を、垂直から水平方向に傾けた場合の詳細な説明図である。
図18(a)は、図15(c)に相当する。本発明では、コリオリ流量計の上下流の配管を一旦一つに束ねることが条件となっているので、流量計本体の3点の固定部を含む平面内に配管を束ねた配管サポート部材と図心(重心)とを設けることは非常に困難である。実際には、図18(b)のように距離δだけ三角形の図心から離れた位置に配管サポート部材を設けるようになる。
図18(c)は、45°だけ配管サポート部材の位置を傾けた例の図である。また、図18(d)は、図16cに相当する図であり、配管サポート部材の位置を90°まで傾けて水平とした図である。図18(b)、図18(c)、図18(d)のうち、作用点に働く外力X、Y、Zの全てに対し、剛性を確保し易いのは図18(b)であることが固定点から作用点までの距離a、b、cが均等で力を分散できることから明らかである。従って、配管サポート部材の位置は、三角形の面に対し垂直で図心を含んだ軸上に存在することが最も良いと言える。
図19(a)は、コリオリ流量計の上下流配管を一旦束ねる配管サポート部材の位置関係を示す全体図である。上下流のライン配管及び上下流配管のライン配管接続部分は、上下流配管の流量計本体接続部分に対して、xy平面内で対向するとともに、90°転向するように保持されている。ここで、ライン配管は、圧力、温度、配管ストレスが変化すると管軸方向に移動する。この時、配管サポート部材を1点で固定しているため、外力により配管サポート部材が回転してしまい、コリオリ流量計の上下流配管に応力を与えてしまう可能性がある。そこで、ライン配管の配管サポート部材への接続は、上下流のライン配管の管軸を固定点(配管サポート部材の固定部)に一致させ、且つ上流の配管の管軸と、下流の配管の管軸とを一致させることが望ましいものとする。以下、具体的に説明する。
図19(b)は、上下流のライン配管及び上下流配管のライン配管接続部分が共にx軸方向プラス側にオフセットしている場合の例である。ここでは、上下流のライン配管及び上下流配管のライン配管接続部分の管軸が一致していることになる。このような状態において、外力Aが互いに逆方向に作用してもその量が異ならない限り、固定点にはモーメントが生じないことになる。しかしながら、外力Bが互いに同方向に作用する場合には、いかなる場合であっても固定点にz軸回りの角変位Zyが生じることになる。
図19(c)は、上下流のライン配管及び上下流配管のライン配管接続部分の管軸が一致し、且つ固定点を通過している場合の例である。ここでは、外力Aが互いに逆方向に作用してもその量が異ならない限り、固定点が動かないことになる。しかしながら、外力Bが互いに同方向に作用する場合には、固定点がy軸方向に変位する可能性がある(固定が十分強固であれば問題ない)。
図19(d)は、上流のライン配管及び上流配管のライン配管接続部分がx軸方向プラス側にオフセット、下流のライン配管及び下流配管のライン配管接続部分がx軸方向マイナス側にオフセットしている場合の例である。すなわち、上下流のライン配管及び上下流配管のライン配管接続部分の管軸が一致していないことになる。ここで、外力Aが互いに逆方向に作用すると、いかなる場合でも固定点にはz軸回りの角変位Zyが生じることになる。また、外力Bが互いに同方向に作用する場合には、固定点がy軸方向に変位する可能性がある(固定が十分強固であれば問題ない)。
図19(e)は、上下流のライン配管及び上下流配管のライン配管接続部分が共にz軸方向プラス側にオフセットしている場合の例である。ここでは、上下流のライン配管及び上下流配管のライン配管接続部分の管軸が一致していることになる。このような状態において、外力Aが互いに逆方向に作用してもその量が異ならない限り、固定点にはモーメントが生じないことになる。しかしながら、外力Bが互いに同方向に作用する場合には、いかなる場合であっても固定点にx軸回りの角変位Xpが生じることになる。
図19(f)は、図19(c)と同じであるので説明を省略する。
図19(g)は、上流のライン配管及び上流配管のライン配管接続部分がz軸方向プラス側にオフセット、下流のライン配管及び下流配管のライン配管接続部分がz軸方向マイナス側にオフセットしている場合の例である。すなわち、上下流のライン配管及び上下流配管のライン配管接続部分の管軸が一致していないことになる。ここで、外力Aが互いに逆方向に作用すると、いかなる場合でも固定点にはx軸回りの角変位Xpが生じることになる。また、外力Bが互いに同方向に作用する場合には、固定点がy軸方向に変位する可能性がある(固定が十分強固であれば問題ない)。
従って、配管サポート部材での上下流配管のライン配管接続部分の固定は、図19(c)(図19(f))に示すように上下流配管のライン配管接続部分の管軸が一致し、且つ固定点を通過していることが望ましいことが分かる。尚、本原理は、配管サポート部材に繋がる上下流配管の流量計本体接続部分についても同様に適用することができる。
続いて、図20ないし図29を参照しながら本発明のコリオリ流量計の上下流配管構造の他の一実施の形態を説明する。尚、図中には符号のかわりに部材名称等を入れるものとする。
図20は、コリオリ流量計の流量計本体上面が直接架台に固着されている例を示している。コリオリ流量計の上下流配管は、一旦配管サポート部材で纏められ、且つ90°水平方向に転向し、配管ラインに接続されている。配管サポート部材は、この下面中央において架台に対し固着されている。
図21は、コリオリ流量計の流量計本体が直接架台に固着されていない例を示している。コリオリ流量計の上下流配管は、一旦配管サポート部材で纏められ、且つ90°水平方向に転向し、配管ラインに接続されている。配管サポート部材は、この下面中央において架台に対し固着されている。
図22は、コリオリ流量計の流量計本体上面が直接架台に固着されている例を示している。コリオリ流量計の上下流配管は、一旦配管サポート部材で纏められ、且つ180°垂直方向に転向し、配管ラインに接続されている。配管サポート部材は、この下面中央において架台に対し固着されている。
図23は、コリオリ流量計の流量計本体が直接架台に固着されていない例を示している。コリオリ流量計の上下流配管は、一旦配管サポート部材で纏められ、且つ180°垂直方向に転向し、配管ラインに接続されている。配管サポート部材は、この下面中央において架台に対し固着されている。
図24は、コリオリ流量計の流量計本体上面が直接架台に固着されている例を示している。コリオリ流量計の上下流配管は、一旦配管サポート部材で纏められ、且つ90°垂直方向に転向し、さらに、連続して同一平面上で逆方向に90°転向(クランク状の曲がり)し、そして、配管ラインに接続されている。配管サポート部材は、この下面中央において架台に対し固着されている。
図25は、コリオリ流量計の流量計本体が直接架台に固着されていない例を示している。コリオリ流量計の上下流配管は、一旦配管サポート部材で纏められ、且つ90°垂直方向に転向し、さらに、連続して同一平面上で逆方向に90°転向(クランク状の曲がり)し、そして、配管ラインに接続されている。配管サポート部材は、この下面中央において架台に対し固着されている。
図26は、コリオリ流量計の流量計本体下面が直接架台に固着されている例を示している。コリオリ流量計の上下流配管は、一旦配管サポート部材で纏められ、且つ90°水平方向に転向し、配管ラインに接続されている。配管サポート部材は、この上面中央において架台に対し固着されている。
図27は、コリオリ流量計の流量計本体下面が直接架台に固着されている例を示している。コリオリ流量計の上下流配管は、一旦配管サポート部材で纏められ、且つ90°水平方向に転向し、配管ラインに接続されている。配管サポート部材は、この下面中央において架台に対し固着されている。
図28は、コリオリ流量計の流量計本体上面が直接架台に固着されている例を示している。コリオリ流量計の上下流配管は、一旦配管サポート部材で纏められ、且つ90°水平方向に転向し、配管ラインに接続されている。配管サポート部材は、この上面中央において架台に対し固着されている。
図29は、コリオリ流量計の流量計本体下面が直接架台に固着されている例を示している。コリオリ流量計の上下流配管は、一旦配管サポート部材で纏められ、且つ90°水平方向に転向し、配管ラインに接続されている。配管サポート部材は、この上面中央及び下面中央において架台に対し固着されている。図29は、図1ないし図3の例に相当する。
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。