JP2006272374A - カーボン繊維の切断・加工方法及びその装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 カーボン繊維3を載置台4に載置し、電子ビームのカーボン繊維への衝突エネルギーと強度とをカーボン繊維に損傷が生じない程度の所定の条件の電子ビームを走査部7によりカーボン繊維3の所望の位置に照射し、所定の圧力の酸化性ガスを導入部9から真空槽2に導入し、電子ビームが照射されている部位の炭素原子のみを酸化性ガスと化学的に反応させ、一酸化炭素或いは二酸化炭素ガスとして蒸発させることによって、カーボン繊維を切断・加工する。
【選択図】 図1
Description
例えば、マリモカーボンは、粒径が500nm以下の酸化ダイヤモンドを核としてカーボンナノチューブが放射状に成長した、径がμmオーダーの球状の微粒子、すなわちマリモ状のカーボン繊維であるが、カーボンナノチューブが核の回りに極めて高密度に成長しており、これらのカーボンナノチューブの先端にグラファイト・エッジがあるため、マリモカーボンを分極性電極として用いた電気二重層キャパシタは、活性炭を分極性電極に用いた従来の電気二重層キャパシタよりも蓄電容量が大きいことが見出され(特許文献4参照)注目を集めている。
このため、水素吸着能力や電気二重層コンデンサの蓄電容量をさらに向上するために、グラファイト・エッジをさらに高密度に有するカーボン繊維の合成方法が研究されているが、一方、従来のカーボン繊維を加工してグラファイト・エッジを増やすことも一つの方法である。例えば、マリモカーボンのカーボンナノチューブの先端部分を切断できれば、全てのカーボンナノチューブがグラファイト・エッジを有することになり、水素吸着能力や電気二重層コンデンサの蓄電容量を飛躍的に向上することができる。
例えば、粉体のマリモカーボンのカーボンナノチューブを切断しようとした場合、カーボンナノチューブの長さは数μm、径は数十nmであるから、機械的に切断することはもちろん不可能であり、また、微細な光束のレーザー光を使用した場合には、光束が照射された部位のみならず、カーボンナノチューブ全体が瞬時に加熱されてしまうために、カーボンナノチューブ全体が蒸発してしまうか、蒸発しないまでも構造が変形し、切断後においてもカーボン繊維の構造に基づく特性を保持することは困難である。
このように、従来、カーボン繊維を切断し、切断後においてもカーボン繊維の構造に基づく特性を失わないように切断する方法はなかった。
しかしながら、カーボンナノチューブの所望の位置を切断でき、且つ、カーボンナノチューブの特性を損なわずに切断できる方法がないため、未だに実現されていない。
しかしながら、垂直な断面が得られるように切断でき、且つ、カーボンナノチューブの特性を損なわずに切断できる方法がないため、未だに実現されていない。
電子ビームの照射は、スポット照射、ライン走査照射又は領域照射であればよい。酸化性ガスは、酸素ガス、亜酸化窒素ガス又は空気であればよい。また、本発明の方法によって切断・加工できるカーボン繊維は、例えば、マリモカーボン、カーボンナノフィラメント又はカーボンナノチューブである。
本発明の方法に於ける所定の条件の酸化性ガスの圧力は電子ビームが照射されている部位のカーボン繊維と酸化性ガスとが酸化反応を生ずる圧力である。また、本発明の方法に於ける電子ビームの所定の条件は、電子ビームがカーボン繊維へ衝突する際の電子ビームの運動エネルギーがカーボン繊維に損傷を与えない条件の電子ビームであり、例えば、走査型電子顕微鏡の試料室にカーボン繊維を真空(13Pa以下)で保持してカーボン繊維像を観測した際に、観測によってカーボン繊維に蒸発、溶解、変形等の損傷が生じない範囲の、カーボン繊維に電子が衝突する際に有している運動エネルギー及びその電子の個数である。
このため、電子ビームが照射されている部位のカーボン繊維は損傷を生ずるほど励起されてはいないが、二次電子を放出する程度には励起されており、二次電子を放出できる励起状態は炭素原子と酸化性ガスとの酸化反応が自発的に生ずる励起状態でもあるためと考えられる。すなわち、電子ビームが照射されている部位の炭素原子のみが酸化性ガスと化学的に反応し、一酸化炭素或いは二酸化炭素ガスとなって蒸発することによって、カーボン繊維が切断・加工される。この切断・加工は化学反応による切断・加工であるため、機械的切断・加工や熱的切断・加工と異なり、切断箇所以外の部位に損傷を与えることが極めて少なく、このため、カーボン繊維の構造に基づく特性を損なうことなく切断・加工できるものと考えられる。
上記構成に加え、さらに、カーボン繊維に電子ビームを照射して発生する二次電子及び/又は反射電子の強度を検出する検出器と、検出器の出力を画像に構成する画像構成部を有していても良い。
またさらに、カーボン繊維に電子ビームを照射して発生する二次電子及び/又は反射電子の強度を検出する検出器と、検出器の出力を画像に構成する画像構成部を有する場合には、載置台に載置したカーボン繊維を、真空状態で二次電子像又は反射電子像として観測し、この観測から切断・加工箇所を決定し、切断・加工箇所の座標データにより走査部を駆動することにより、決定した切断・加工箇所に電子ビームを照射しても良い。
この場合には、極めて精密な切断・加工が可能になり、例えば、カーボンナノチューブを所望の長さに切断・加工することができる。
初めに本発明のカーボン繊維の切断・加工装置を説明する。
図1は本発明のカーボン繊維の切断・加工装置の構成を示す図である。本発明のカーボン繊維の切断・加工装置1は、真空槽2と、真空槽2内に配設した、カーボン繊維3を載置する載置台4と、載置台4に載置するカーボン繊維3に電子ビーム5を照射する電子銃6と、電子銃6の電子ビームを走査する走査部7と、真空槽2の真空度を制御する排気部8と、真空槽2に酸化性ガスを導入するガス導入部9とから構成される。
上記構成に加え、カーボン繊維3に電子ビーム5を照射して発生する二次電子及び/又は反射電子の強度を検出する検出器10と、検出器10の出力を画像に構成する画像構成部11を有していても良い。
この場合には、極めて精密な切断・加工が可能になり、例えば、カーボンナノチューブを所望の長さに切断・加工することができる。
所定の条件の電子ビームの設定は、電子ビームがカーボン繊維へ衝突する際の運動エネルギーが、カーボン繊維に損傷を与えない条件の電子ビームで、酸化性ガス雰囲気の圧力が約26〜約2600Paであり、電子ビームの出射端とカーボン繊維との距離が30〜50cmであり、所定のビーム径が10〜30nmの場合には、電子銃の加速電圧が3〜30kV、照射電流量が10〜100nAに設定すれば好ましい。
もちろん、電子ビームの出射端とカーボン繊維との距離やビーム径が異なれば、電子銃の所定の加速電圧、照射電流及び酸化性ガスの所定の圧力は変化する。
また、切断・加工できるカーボン繊維は、例えば、マリモカーボン、カーボンナノフィラメント又はカーボンナノチューブである。
図1に示した本発明の装置を用いて本発明の方法によりマリモカーボンのカーボンナノチューブを切断した。
酸化性ガスは酸素ガスを1700Paの圧力で用いた。電子線の径は約20nm、加速電圧は15kV、照射電流(電子銃から放出される電子の単位時間あたりの数を電流に換算した値)は約10nAである。同一の箇所をライン走査(line scan)で照射し、走査速度は約1μm/secであり、走査回数は、約100回である。
図2(b)に見られる切断後のマリモカーボンは溶融や変形が全く見られず、同(a)に見られる切断前のマリモカーボンと比べて右半分が無いだけであることがわかる。また、切断面は電子ビームの通過する面に沿って、あたかもリンゴを鋭利なナイフで切断したように、スッパリと切断されていることがわかる。
このことから、本発明の方法は、照射電子によって励起された炭素原子と酸化性ガスとの化学反応による切断であるため、機械的切断や熱的切断とは異なり、切断部位以外の部位に損傷を与えることが極めて少なく、このため、カーボン繊維の構造に基づく特性を損なうことなく切断できることがわかる。
この図から、カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの軸にほぼ垂直に切断され、且つ、カーボンナノチューブの構造変化がほとんど無いことがわかる。
このことから、本発明の方法によれば、例えば、カーボンナノチューブをその構造に基づく特性を損なうことなしに所望の長さに切断できることがわかる。
また、カーボンナノチューブの所望の位置の切断に本発明の方法を用いれば、カーボンナノチューブを所望の長さに切断できるので、カーボンナノチューブをnmオーダーの電子回路の配線材料や、能動素子材料として使用できるようになる。
また、本発明の方法を用いれば、カーボンナノチューブの軸に垂直な切断面を形成することができるので、カーボンナノチューブを高性能な電子銃や原子間力顕微鏡の探針として用いることができる。
2 真空槽
3 カーボン繊維
4 載置台
5 電子ビーム
6 電子銃
7 走査部
8 排気部
9 ガス導入部
10 検出器
11 画像構成部
Claims (7)
- 所定の圧力の酸化性ガス雰囲気中で、所定の条件の電子ビームをカーボン繊維に照射して、上記カーボン繊維と上記酸化性ガスとの酸化反応により上記カーボン繊維を切断又は加工するカーボン繊維の切断・加工方法であって、
上記酸化性雰囲気の所定の圧力を、上記電子ビームが照射されている部位のカーボン繊維と上記酸化性ガスとが酸化反応を生ずる圧力とし、
上記所定の条件の電子ビームを、カーボン繊維へ衝突する際の上記電子ビームのエネルギーが該カーボン繊維に損傷を与えない条件の電子ビームとしたことを特徴とする、カーボン繊維の切断・加工方法。 - 前記電子ビームの照射は、スポット照射、ライン走査照射又は領域照射であることを特徴とする、請求項1に記載のカーボン繊維の切断・加工方法。
- 前記酸化性ガスは、酸素ガス、亜酸化窒素ガス又は空気であることを特徴とする、請求項1に記載のカーボン繊維の切断・加工方法。
- 前記カーボン繊維は、マリモカーボン、カーボンナノフィラメント又はカーボンナノチューブであることを特徴とする、請求項1に記載のカーボン繊維の切断・加工方法。
- 前記酸化性ガスの所定の圧力は26〜2600Paであり、前記電子ビームの所定の条件は、前記電子ビームの出射端と前記カーボン繊維との距離が30〜50cmでビーム径が10〜30nmの場合に、電子銃の加速電圧が3〜30kVで照射電流量が10〜100nAであることを特徴とする、請求項1に記載のカーボン繊維の切断・加工方法。
- 真空槽と、
この真空槽内に配設したカーボン繊維を載置する載置台と、この載置台に載置するカーボン繊維に電子ビームを照射する電子銃と、
この電子銃の電子ビームを走査する走査部と、
上記真空槽の真空度を制御する排気部と、
上記真空槽に酸化性ガスを導入するガス導入部と、
から成ることを特徴とする、カーボン繊維の切断・加工装置。 - 請求項7の構成に加え、前記カーボン繊維に電子ビームを照射して発生する二次電子及び/又は反射電子の強度を検出する検出器と、
この検出器の出力を画像に構成する画像構成部を有することを特徴とする、請求項6に記載のカーボン繊維の切断・加工装置。
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