JP2006268928A - 直流電源駆動型超伝導センス回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】直流電源で動作する際、複雑なタイミングシーケンスを必要とせずバイアス電流の動作マージンが大きい、単一磁束量子(SFQ)パルス出力の取得を可能とする。
【解決手段】 超伝導ランダムアクセスメモリのセンスライン3とバイアス抵抗RB1と負荷抵抗RLと負荷インダクタンスLRとを含むセンスライン情報検出部1とSFQ素子で形成されたRSフリップフロップ2とから構成され、一端を接地面に接続するセンスライン3と一端を直流電流供給端子Aに接続するバイアス抵抗RB1とは接続点Cで接続され、接続点CとRSフリップフロップ2のデータ信号入力端との間に負荷抵抗RLと負荷インダクタンスLRとが直列に接続されている。センスライン情報検出部1は、複数が並列配備され一つのRSフリップフロップ2に接続される構成とすることもできる。
【選択図】図1
【解決手段】 超伝導ランダムアクセスメモリのセンスライン3とバイアス抵抗RB1と負荷抵抗RLと負荷インダクタンスLRとを含むセンスライン情報検出部1とSFQ素子で形成されたRSフリップフロップ2とから構成され、一端を接地面に接続するセンスライン3と一端を直流電流供給端子Aに接続するバイアス抵抗RB1とは接続点Cで接続され、接続点CとRSフリップフロップ2のデータ信号入力端との間に負荷抵抗RLと負荷インダクタンスLRとが直列に接続されている。センスライン情報検出部1は、複数が並列配備され一つのRSフリップフロップ2に接続される構成とすることもできる。
【選択図】図1
Description
本発明は、極低温で動作する超伝導集積回路において使用されるセンス回路に関する。特に、超低消費電力で且つ超高速動作可能な単一磁束量子(SFQ: Single Flux Quantum)素子を用いた超伝導集積回路に関するもので、より具体的には超伝導ランダムアクセスメモリ(RAM)におけるメモリセルアレイの情報を読み出す直流電源駆動型超伝導センス回路に関するものである。
超伝導集積回路には、大きく分けて二つの種類がある。一つは、ジョセフソン接合の電流電圧特性に現れる強い非線形性を利用したもので、電圧型論理と呼ばれている。電圧型論理は、半導体の集積回路で使用されている論理と同じ論理形式である。他の一つは、ジョセフソン接合における電流位相特性の非線形性を利用したものでフラクソイド型論理と呼ばれている。
電圧型論理の超伝導集積回路は、一定の時間(例えばクロック周期の間)に、所定の電圧(通常、状態「0」を零電圧レベル、状態「1」を所望の出力電圧レベルに設定する)を出力することを特徴とする回路であり、この電圧レベルに応じて論理動作を行う。電圧型論理の超伝導集積回路の動作信号は、回路の動作周期(クロック周期)の間は一定の値をとることからレベル信号とも呼ばれる。電圧型論理の超伝導集積回路では、通常、マッカンバ係数が「50」以上のアンダーダンピング状態のジョセフソン接合を交流電流でバイアスして使用する。
マッカンバ係数は、ジョセフソン接合の特性を示す一つの定数であり「2πI0CRD 2/Φ0」で示される。ここで、「I0」はジョセフソン接合の臨界電流値、「C」はキャパシタンス、「RD」は抵抗、且つ「Φ0」は単一磁束量子(SFQ)を示す(詳しくは、非特許文献2:倍風館発行の超高速ジョセフソン・デバイスの38頁参照)。マッカンバ係数が「50」以上のジョセフソン接合は、一度電圧状態にスイッチすると、電源電流(バイアス電流)を零にしないと超伝導状態に戻らないため、通常、交流電源で使用される。また、このような特性から、電圧型論理のジョセフソン接合をラッチング素子と呼ぶこともある。
一方、フラクソイド型論理の超伝導集積回路は、磁束量子に起因したパルスを出力することを特徴とする回路であり、特に単一磁束量子(SFQ)を情報の担体として使用する回路をSFQ回路と呼んでいる。SFQ回路は、単一磁束量子(SFQ)パルスの伝搬や回路の量子状態に応じて論理動作を行う回路であり、SFQ回路の動作信号がSFQパルスであることからパルス論理とも呼ばれている。SFQ回路では、通常、マッカンバ係数が「1」程度のオーバーダンピング状態のジョセフソン接合を直流電流でバイアスして使用する。このようなSFQ回路は、直流電源で動作し、超低消費電力で且つ超高速動作可能であるという特長がある。
なお、ジョセフソン接合は、マッカンバ係数の値により動作特性が大きく変化する。SFQ回路で使用されるマッカンバ係数が「1」程度のジョセフソン接合は、1個のSFQパルスの入力によりジョセフソン接合がスイッチした際に一個のSFQパルスを発生して自動的に超伝導状態に戻るという特徴がある。このため、直流電源で動作させることができる。これに対して、電圧型論理の回路で使用されるマッカンバ係数が「50」以上のジョセフソン接合(ラッチング素子)は、一度電圧状態にスイッチすると一定の電圧レベルを維持(これはSFQパルスが連続して発生している状態)しており、電源電流を零にしない限り超伝導状態に戻らないという特徴がある。なお、マッカンバ係数は、実際のジョセフソン接合では幾つかの接合パラメータに依存するが、臨界電流密度が2.5kA/cm2から10kA/cm2程度のNb/AlOx/Nb接合では数万から数百程度と大きいため、ジョセフソン接合に並列に所望の値の抵抗を接続することで、マッカンバ係数「1」又は「50」以上のジョセフソン接合を容易に実現することができる。
ランダムアクセスメモリでは、メモリセルは2次元のマトリックスアレイで構成される。メモリセルへのアクセスは、このマトリックスアレイの行方向(横)と列方向(縦)との2方向からの信号の一致論理により行われる。これにより2次元のマトリックスアレイ中の特定メモリセルが選択されて、情報の書込みや読出しが行われる。このメモリセルの2次元マトリックスアレイの中から選択されたメモリセルに保持された情報「1」又は「0」を読み出すための回路が、センス回路である。
従来、このようなセンス回路として、大きく分けて2種類が提案されている。一つは、例えば特開平3−35757号公報(特許文献1)に開示されている電圧論理型(レベル論理型)のラッチング素子で構成されたセンス回路である。しかし、電圧論理型のラッチング素子は、交流電源で動作させる必要があるため、消費電力や高速動作の観点から大きな問題点がある。
他の一つは、直流電源で動作するセンス回路であり、例えば、下記の非特許文献2に報告されている超伝導センスバス方式におけるセンス回路がある。
次に、図4及び図5を参照して従来技術を説明する。
図4には、従来技術による直流電源駆動の超伝導センス回路における等価回路図が示される。メモリセルアレイの一部であるセンスライン(以後、Sラインと呼称する)11−Xと、このSライン11−Xと磁気的に結合するように配置されたジョセフソン接合を含んだゲート(GB)12−Xと、このゲート(GB)12−Xを直列接続したセンスバスループ13とから構成されている。
図5には、この従来技術によるセンスバス方式の超伝導センス回路における動作波形の概略図が示されている。図5において、縦軸は電流値であり、横軸は時間である。図5において、上からセンスバスループ13を流れる電流ISBの波形、Sライン11−Xを流れる電流ISの波形、ゲートGB12−Xのインダクタンス(Li)を流れる電流(Ii)の波形、及び出力ゲート(GC)14の制御配線を流れる電流(ID)の波形を示す。
この動作波形に基づいて、従来技術の回路動作を説明する。
まず、この回路の動作を簡単に説明する。メモリセルアレイの選択されたメモリセルがデータ「1」を保持していた場合、メモリセルアレイの読出し動作により、Sライン11−Xの中の選択されたメモリセルのセンスゲートが電圧状態にスイッチすることで、Sライン11−Xを流れていた電流ISが零に立ち下がる。これにより、Sライン11−Xと磁気的に結合しているゲートGB12−Xに一時的に電流Iiが流れる。その結果ゲートGB12−Xが電圧状態にスイッチして、センスバスループ13に流れていた電流ISBを零に立ち下げる。その結果、センスバスループ13の電流は、出力ゲートGC14の制御配線とゲートGA15とを介して流れるようになり、出力ゲートGC14が電圧状態にスイッチして情報「1」を出力する。
このように、このセンス回路は、Sライン(センスライン)11−Xの電流ISの立ち下がりを検出する回路である。しかしながら、Sライン11−Xの電流ISは、メモリセルの情報が「0」の場合はメモリセルアレイの読出し動作では立ち下がらないが、動作周期(クロック)の最後には点線で図示されるように電流ISの波形を立ち下げる必要がある。この際にもゲートGB12−Xは一時的に電圧になり、出力ゲートGC14の制御配線に電流が入力されることになる。しかし、その際には出力ゲートGC14のバイアス電流が流れていないようにしておく必要がある。
以上の動作で、メモリセルアレイの選択されたメモリセルの情報を読み出すことができる直流電源で動作可能な超伝導センス回路を実現することができる。
しかしながら、従来の直流電源で動作可能なセンスバス方式の超伝導センス回路は、センスラインの信号の立下りを検出する必要があり、且つ、出力ゲートへの電流の切替えをクロック信号との適切なタイミングで調整する必要がある。このため、回路の動作マージンが狭く、且つ十分なタイミングマージンを設定する必要があるため高速に動作させることが困難であるという問題点があった。
本発明の目的は、複雑なタイミングシーケンスを必要とせず、バイアス電流の動作マージンが大きく、且つ単一磁束量子(SFQ)パルス出力が得られる直流電源で動作可能な超伝導センス回路を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明では、少なくとも一つのセンスライン情報検出部と単一磁束量子(SFQ)を動作の基本とする一つのSFQ回路とを具備し、前記センスライン情報検出部は、ランダムアクセスメモリのセンスラインとバイアス抵抗と負荷抵抗と負荷インダクタンスとから構成され、前記センスラインの一端は接地面に接続され他端は第1の接続点に接続され、前記バイアス抵抗の一端は直流電流供給端子に接続され他端は前記第1の接続点に接続され、前記第1の接続点と前記センスライン情報検出部の出力端との間に前記負荷抵抗と前記負荷インダクタンスとが直列に接続された構成を有し、且つ前記複数個のセンスライン情報検出部の出力端が前記SFQ回路のデータ信号入力端に接続されていることを一つの主要な特徴としている。
上記SFQ回路は、データ信号入力端とクロック信号入力端と信号出力端とを有し、データ信号入力端へのデータ信号の入力に応じて、その情報を保持し、その後クロック信号がクロック信号入力端に入力した際にデータ信号の値に応じて信号出力端に単一磁束量子(SFQ)パルスを出力する機能を有することができる。
上記センスラインは、ランダムアクセスメモリの少なくとも1つにおける記憶セルの読出しゲートが直列に接続された構成を具備することができる。
また、上記センスラインの全てのジョセフソン接合は、マッカンバ係数が「50」以上のアンダーダンピング状態で動作するように設定され、SFQ回路の全てのジョセフソン接合は、マッカンバ係数が「1」程度のオーバーダンピング状態で動作するように設定されることが望ましい。更に、センスラインも含めて全てのジョセフソン接合は、マッカンバ係数が「1」程度のオーバーダンピング状態で動作するように設定することもできる。
上述したように、本発明により、複雑なタイミングシーケンスを必要とせず、センスラインからの情報を読み出し、単一磁束量子(SFQ)パルス出力が得られる直流電源で動作可能な超伝導センス回路を構成することができる。
本発明の直流電源駆動型超伝導センス回路は、メモリセルアレイの一部であるセンスライン(以後、Sライン)からの情報を読み出して、読み出した情報をいったんSFQ回路に保持する。そして、次のクロック信号でSFQ回路に保持された情報を読み出す。従って、メモリセルの情報は、本センス回路により2段のクロック周期で本センス回路の後段の回路に伝達されるので、本センス回路は2段のパイプラインで動作しているという特徴を有している。すなわち、このパイプラインにより、回路の高速動作が可能になるという利点もある。
また、ランダムアクセスメモリのSラインの平均的な特性インピーダンスの値により、以下の2種類の回路構成をとることができる。マッカンバ係数「1」のジョセフソン接合が電圧状態にスイッチした際のジョセフソン接合の内部抵抗値に比べて、Sラインの平均的な特性インピーダンスが「大きい場合」と「同程度か或いは小さい場合」の2種類である。マッカンバ係数「1」のジョセフソン接合の内部抵抗は、接合の種類、臨界電流密度及び臨界電流値に大きく依存する。例えば、「Nb/AlOx/Nb」で構成されたジョセフソン接合で、臨界電流密度が10kA/cm2で、臨界電流値が0.1mAのマッカンバ係数「1」の接合の内部抵抗は、7Ω程度である。この場合には、例えばSラインの平均的な特性インピーダンスが20Ω以上では「大きい場合」になり、10Ω以下では「同程度か或いは小さい場合」になる。
まず、ランダムアクセスメモリのSラインの平均的な特性インピーダンスが「大きい場合」には、Sラインの全てのジョセフソン接合を、マッカンバ係数が「50」以上のアンダーダンピング状態で動作するように、設定する。この場合、接合はラッチング素子的な特性を有するようになるが、Sラインの負荷となる負荷抵抗RLと負荷インダクタンスLRとの値を適切に設定することで、Sラインのジョセフソン接合が一度電圧状態にスイッチしても自動的に超伝導状態に戻るようになっている。これはラッチング素子のセルフリセットモードと言われる動作状態である。この時、負荷インダクタンスLRを通してSFQ回路に流れ込む信号は、複数個のSFQパルスになる。複数個のSFQパルスが入力してもSFQ回路は問題なく動作する。最初に入力したSFQパルスによりSFQ回路に情報「1」が保持された際には、2番目以降に入力したSFQパルスは、次のクロックパルスが入力されるまで自動的に排除される。SFQ回路に情報「1」が保持された状態でSFQ回路のクロック信号入力端にSFQパルスが入力した際に、信号出力端BにSFQパルスが出力され情報「1」の読出しが完了する。
一方、ランダムアクセスメモリのセンスラインの平均的な特性インピーダンスが「同程度か或いは小さい場合」には、マッカンバ係数「1」程度の接合で構成してもよい。この場合、センスラインの読み出しゲートが一時的に電圧状態にスイッチした時の内部抵抗と線路の特性インピーダンスとがほぼ整合するため、Sラインの読出しゲートがスイッチして発生したSFQパルスは、伝送線路的に超高速で電流振幅の減衰なしに伝搬する。従って、Sラインからの出力である負荷インダクタンスLRを流れる電流は、この場合はSFQパルスになるが、負荷抵抗RL1と負荷インダクタンスLRとの値を適切に調整することにより上記と同様の機能を有し、より高速動作が可能な直流電源駆動型超伝導センス回路を実現できる。
本発明の直流電源駆動型超伝導センス回路の動作速度(クロック周波数)は、Sラインからの信号の読出し時間に大きく依存する。この読出し時間は、上記のようにSラインの特性インピーダンスなど幾つかの回路定数にも依存するが、大きくはSラインの全インダクタンスに依存し、このインダクタンスの大きさは直列接続されるメモリセルの読出しゲートの数に比例する。従って、所望のクロック周波数で動作させるためには、一つのセンスラインを構成するメモリセルの読出しゲートの数を制限する必要がある。例えば、直列接続された読出しゲートの数が32個で10GHzのクロック周波数で動作が可能な場合、20GHzのクロック周波数で動作させるためには半分の16個程度にする必要がある。
本発明による直流電源駆動型超伝導センス回路は、ランダムアクセスメモリのメモリセルアレイの選択されたメモリセルに保持された情報をセンスラインで読み出し、この情報を一時的にRSフリップフロップ等の単一磁束量子(SFQ)を動作の基本とするSFQ回路に保持し、次のクロック信号の入力により、情報「1」に対応してSFQパルスを出力し、情報「0」に対応してSFQパルスを出力しない機能を有する直流電源で動作可能な超伝導センス回路を実現できる。このように、本発明は、センスラインからの情報の読出しが簡単で、且つ、読み出した情報を動作マージンの広いSFQ回路に保持することで、全体として動作マージンの広いセンス回路を実現できるという効果がある。更に、この回路の動作は、複雑なタイミングシーケンスを必要としないことに加え、最初のクロック周期の間にセンスラインでメモリセルの情報を読み出してSFQ回路に保持し、次のクロック周期で保持した情報を出力するという2段のパイプラインで動作するため、高速動作が可能であるという効果もある。
また、複数個のセンスライン情報検出部に対してSFQ回路を共通化するという構成では、素子数を削減できるので、レイアウト面積及び消費電力も削減できるという効果もある。
本発明による直流電源駆動型超伝導センス回路として、複雑なタイミングシーケンスを必要とせず、バイアス電流の動作マージンが大きく、且つ単一磁束量子(SFQ)パルス出力が得られる直流電源で動作可能にするという目的を、ランダムアクセスメモリのセンスライン、バイアス抵抗、負荷抵抗、及び負荷インダクタンスとにより構成されるセンスライン情報検出部と単一磁束量子(SFQ)を動作の基本とするSFQ回路とで構成することにより実現した。
本発明の実施例1について図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本発明による直流電源駆動型超伝導センス回路の実施の一形態を等価回路で示す説明図である。
まず、本回路の構成と機能とについて説明する。
本実施例1では、超伝導ランダムアクセスメモリにおけるメモリセルアレイに接続するセンスライン情報検出部1が単一磁束量子(SFQ)を動作の基本とするSFQ回路であるRSフリップフロップ回路2を介して外部に情報を出力する構成を有している。センスライン情報検出部1は、メモリセルのセンスゲートが直列に接続されたセンスライン(以後、Sライン)3とバイアス抵抗RB1と負荷抵抗RL1と負荷インダクタンスLRとから構成されている。
Sライン3の一端は接地面に接続され他端は接続点Cに接続され、バイアス抵抗RB1の一端は直流電流供給端Aに接続され他端は接続点Cに接続され、接続点CとRSフリップフロップ回路2の信号入力端との間に負荷抵抗RL1と負荷インダクタンスLRとが接続される。また、RSフリップフロップ回路2の信号出力端は出力端Bに接続されている。
本実施例1では、単一磁束量子(SFQ)を動作の基本とするSFQ回路として、RSフリップフロップ回路2を使用したが、この回路構成及び動作に関しては、例えば、非特許文献3「IEEE Transaction on applied superconductivity, vol. 1, no. 1, p.7, 1991のFig.7」に詳しく記載されている。
また、本実施例1では、センスライン3は、32個のメモリセルの読出しゲート(センスゲート)4が直列に接続された構成を有し、その平均的な特性インピーダンスは20Ωとした。超伝導のメモリセルは、一般的に書込みゲートを含んだ超伝導ループと読出しゲート(センスゲート)4で構成され、情報の書込みや保持を書込みゲートを含んだ超伝導ループで行い、この超伝導ループに保持された情報を読出しゲート(センスゲート)4で行う。読出しゲート(センスゲート)4は、超伝導ループの情報を非破壊で読み出すために、通常超伝導ループと磁気的に結合した量子干渉素子とで構成される。
本実施の形態では、超伝導ループの一部が制御配線となった磁気結合型2接合量子干渉素子(2J-SQUID)で構成されている。メモリセルの構成には、様々な構成が考えられるので、図1では超伝導ループの一部と磁気結合型2接合量子干渉素子(2J-SQUID)による読出しゲート(センスゲート)4部分とのみが記載されている。
読出しゲート(センスゲート)4部分の2接合量子干渉素子(2J-SQUID)は、接地側のジョセフソン接合JS1とバイアス抵抗RB1側のインダクタンスLS1との直列接続と、接地側のジョセフソン接合JS2とバイアス抵抗RB1側のインダクタンスLS2との直列接続とが並列に接続されている。このジョセフソン接合JS1とJS2とは、マッカンバ係数が「50」以上のアンダーダンピング状態で動作するように設定されている。一方RSフリップフロップ回路2の全てのジョセフソン接合J1〜J4は、マッカンバ係数が「1」程度のオーバーダンピング状態で動作するように設定されている。
図2には、本実施例1における直流電源駆動型超伝導センス回路の動作波形の概略図が示される。図2に図1を併せ参照して、この動作波形に基づく、実施例1の回路動作を説明する。
図2において、縦軸は電流値であり、横軸は時間である。図2において、上からメモリセルの読み出しゲート(2J-SQUID)に磁気的に結合した配線に流れる電流ICELLの波形、センスライン(Sライン)を流れる電流ISの波形、負荷インダクタンスLRを流れる電流ISOの波形、RSフリップフロップ2のインダクタンスL1を流れる電流ILOOPの波形、RSフリップフロップ2のクロック信号入力端に入力される電流ICLOCKの波形、及びRSフリップフロップ2の信号出力端Bに出力される電流IOUTの波形それぞれが示される。
本実施例1における直流電源駆動型超伝導センス回路では、初期状態として、直流電流供給端Aから供給された所望の値の直流バイアス電流がバイアス抵抗RB1とセンスライン(Sライン)を介して接地に流れている。
メモリセルアレイの選択されたメモリセルがデータ「1」を保持していた場合、メモリセルアレイの読出し動作により、選択されたメモリセルにおける読出しゲートの磁気的に結合した制御配線に図2に示される波形で電流ICELLが流れる。これにより、選択されたメモリセルの読出しゲートが電圧状態にスイッチする。この時、読出しゲートの負荷としてはSラインのインダクタンスLSXと負荷抵抗RL1と負荷インダクタンスLRとが見えるが、これらの値を適切に設定しておくことにより読出しゲートをセルフリセットモードで動作させることができる。従って、Sラインの出力側にあたるインダクタンスLRを流れる電流ISOは、図2で示されたような複数個のSFQパルスにより複合されたMFQと呼ばれる波形を形成する。この波形に対応して、Sラインを流れていた電流ISは、図2で示されるような上記MFQ波形とは逆の波形で一旦立ち下がるが直ちに戻る波形になる。
次に、負荷インダクタンスLRを介してMFQパルスがRSフリップフロップ2に入力されると、RSフリップフロップ2のジョセフソン接合J1が一時的に電圧状態にスイッチすることで、ジョセフソン接合J1,J2及びインダクタンスL1からなる超伝導ループに情報「1」が保持される。この時のインダクタンスL1には、図2の電流ILOOPで示した波形の電流が流れた状態になる。
RSフリップフロップ2では、1個のSFQパルスが入力された時点で、上記のように情報が保持され、複数個のSFQパルス(MFQパルス)が入力されても2番目以降のSFQパルスはジョセフソン接合J4により排除されるようになっているので、上記のようにMFQパルスが入力されても問題はない。この状態で、RSフリップフロップ2のクロック信号入力端にクロック信号ICLOCKとして図2に示されるような波形のSFQパルスが入力された場合、ジョセフソン接合J2が一時的に電圧状態にスイッチして、RSフリップフロップ2の超伝導ループに流れていた電流ILOOPを零に立ち下げて、初期状態に戻すと同時に、出力端Bに図2に示される波形のSFQパルスによる電流IOUTを出力して情報「1」が出力される。
一方、メモリセルアレイの選択されたメモリセルがデータ「0」を保持していた場合には、選択されたメモリセルの読出しゲートの磁気的に結合した制御配線に電流が流れないので、読出しゲートは電圧状態にスイッチせず、RSフリップフロップ2への入力信号もなくなる。このため、RSフリップフロップのジョセフソン接合J1,J2及びインダクタンスL1からなる超伝導ループには電流が流れず、情報「0」が保持されている。この状態で、RSフリップフロップ2のクロック信号入力端にクロック信号としてSFQパルスが入力されると、今度はジョセフソン接合J3が一時的に電圧状態にスイッチして、ジョセフソン接合J2は電圧状態にスイッチしないので、出力端BにSFQパルスを出力せず情報「0」が出力される。
以上の動作により、メモリセルアレイの選択されたメモリセルに保持された情報をセンスライン(Sライン)で読み出し、この情報を一時RSフリップフロップに保持し、次のクロック信号の入力によりSFQパルスとして読み出すことができる直流電源で動作可能な超伝導センス回路を実現できる。
また、図1において、具体的な回路定数は例えば以下のように設定することができる。
JS1=0.125mA、JS2=0.125mA、J1=0.25mA、J2=0.20mA、J3=0.18mA、J4=0.15mA、L1=9pH、LR=10pH、LS1=2pH、LS2=2pH、RL1=1Ω、IB1=0.19mA、及びIB2=0.18mA。
ここでは、全てのジョセフソン接合には、臨界電流密度JC=10kA/cm2、接合特性を示す指標Vm=10mVの「Nb/AlOx/Nb」接合が想定されている。センスラインの全てのジョセフソン接合はマッカンバ定数β=182で、また、RSフリップフロップの全てのジョセフソン接合はマッカンバ定数β=1で、それぞれ動作するように設定されている。
なお、臨界電流密度が「2.5kA/cm2」から「10kA/cm2」程度の「Nb/AlOx/Nb」接合では、マッカンバ係数βは数万から数百程度と大きいが、ジョセフソン接合に並列に所望の値の抵抗を接続することにより、マッカンバ係数「1」のジョセフソン接合を容易に実現することができる。
上記回路定数で、シミュレーションにより10GHzクロック周波数での正常動作を確認した。
以上説明したように、本実施例1では、メモリセルアレイの選択されたメモリセルに保持された情報をセンスラインで読み出し、この情報を一時RSフリップフロップに保持し、次のクロック信号の入力により、情報「1」に対応してSFQパルスを出力し、情報「0」に対応してSFQパルスを出力しない機能を有する直流電源で動作可能な超伝導センス回路を実現することができる。
本実施の形態は、従来技術のセンス回路に比べてセンスラインからの情報の読出しが簡単で、且つ、読み出した情報を動作マージンの広いRSフリップフロップに保持することで、全体として動作マージンの広いセンス回路を実現できるという効果がある。さらに、この回路動作は、複雑なタイミングシーケンスを必要としないことに加え、最初のクロック周期の間にセンスラインでメモリセルの情報を読み出してRSフリップフロップに保持し、次のクロック周期で保持した情報を出力するという2段のパイプラインで動作するため、高速動作が可能であるという効果もある。
また、本実施例1では、センスラインの全てのジョセフソン接合をマッカンバ係数が「50」以上の接合で構成したが、センスラインの平均的な特性インピーダンスが低い場合(10Ω以下)には、マッカンバ係数「1」程度の接合で構成しもよい。この場合、センスラインの2接合量子干渉素子(2J-SQUID)が一時的に電圧状態にスイッチした際の内部抵抗と線路の特性インピーダンスとがほぼ整合するため、2接合量子干渉素子(2J-SQUID)がスイッチして発生したSFQパルスは伝送線路的に超高速で電流振幅が減衰なしに伝搬する。従って、センスラインからの出力であるインダクタンスLRを流れる電流ISOは、SFQパルスになるが、負荷抵抗RL1と負荷インダクタンスLRとの値を適切に調整することにより同様の機能を有し、より高速動作が可能な直流電源駆動型超伝導センス回路を実現できるという効果がある。
本実施例1では、センスラインは、32個のメモリセルの読出しゲート(センスゲート)が直列に接続され、その平均的な特性インピーダンスは20Ωとしたが、直列接続する読出しゲートの数又は特性インピーダンスは、任意の値をとることができる。しかし、直列接続する読出しゲートの数又は特性インピーダンスの値によって、回路の動作速度が変わるので、この動作速度に応じてクロック周波数を設定する必要がある。
本実施例1では、センスラインのメモリセルの読出しゲートとして2個のジョセフソン接合で構成された磁気結合型量子干渉ゲート(SQUID)を使用したが、3個のジョセフソン接合で構成された磁気結合型量子干渉ゲート(SQUID)を用いても同様の効果を得ることができる。
本実施例1では、単一磁束量子(SFQ)を動作の基本とするSFQ回路として、RSフリップフロップを使用したが、センスラインからの出力信号を保持し次のクロック信号で保持した情報に応じてSFQパルスを出力するSFQ回路であれば、これ以外の任意のSFQ回路を使用することができる。例えば、このRSフリップフロップの代わりにRSFQのインバータ(非特許文献4:IEEE Transaction on applied superconductivity, vol. 3, no. 1, p. 2569, 1993のFig.5(a)を参照)を使用しても同様の効果を得ることができる。この場合、センスラインからの出力信号の反転出力がインバータの出力端に得られるという効果もある。
本発明の実施例2について図3を参照して説明する。
図3は,本発明による直流電源駆動型超伝導センス回路の第2の実施形態を等価回路で示す説明図である。
本実施例2は、複数個のセンスライン情報検出部1−1,1−2,〜と1個のRSフリップフロップ2によるSFQ回路とから構成されている。
センスライン情報検出部1−Xは、図1で示されるセンスライン情報検出部1と同様の構成を有する。すなわち、図1に示されるように、超伝導ランダムアクセスメモリのメモリセルのセンスゲートが直列に接続されたセンスライン3とバイアス抵抗RB1と負荷抵抗RL1と負荷インダクタンスLRとから構成されている。センスライン3の一端は接地面に接続され他端は接続点Cに接続され、バイアス抵抗RB1の一端は直流電流供給端Aに接続され他端は接続点Cに接続され、第1の接続点CとRSフリップフロップ回路2の信号入力端との間に負荷抵抗RL1と負荷インダクタンスLRとが直列接続される。
このような複数個のセンスライン情報検出部1−1,1−2,〜からの出力信号がRSフリップフロップ回路2のデータ信号入力端に並列に入力される構成になっている。
ランダムアクセスメモリでは、通常、メモリセルアレイの中の選択された一個のメモリセルの情報を読み出すため、複数個のセンスライン情報検出部のセンスラインが同時に選択されることはない。このため、本実施の形態のように、複数個のセンスライン情報検出部に対して、検出した情報を保持するSFQ回路(RSフリップフロップ)を共通化できる。
本実施例2による直流電源駆動型超伝導センス回路の動作は、複数個のセンスライン情報検出部1−1,1−2,〜のうち、いずれか一つのセンスラインに含まれたメモリセルが選択され、その情報が選択されたセンスラインから出力される。その他、各要素回路の動作は上記実施例1の回路動作と同じである。図3における回路定数も上記実施例1と同じ値であってもよい。
本実施例2では、複数個のセンスライン情報検出部からの出力を一個のRSフリップフロップで受けるため、上記実施例1の回路を複数個配置する場合に比べて、RSフリップフロップを共用することによりその数を少なくすることができるという効果がある。これにより、レイアウト面積の削減及び素子数の低減が実現するので、消費電力も削減できるという効果がある。
ランダムアクセスメモリのセンスラインとバイアス抵抗との直列回路の接続点に、負荷抵抗と負荷インダクタンスとの直列回路の一方を接続し他方を出力端として構成されるセンスライン情報検出部の少なくとも一つを備え、その出力端を一つのSFQ回路を介して出力する構成を採用することにより、複雑なタイミングシーケンスを必要とせず、バイアス電流の動作マージンが大きく、直流電源での動作が不可欠であり、且つセンスラインに磁気的に結合した回路(メモリセルなど)の情報を検出し、検出した情報に対応して単一磁束量子(SFQ)パルスの形で情報を出力する機能を必要とするような用途に広く適用できる。
1 センスライン情報検出部
2 RSフリップフロップ(SFQ回路)
3 センスライン(Sライン)
2 RSフリップフロップ(SFQ回路)
3 センスライン(Sライン)
Claims (6)
- ランダムアクセスメモリのセンスラインとバイアス抵抗と負荷抵抗と負荷インダクタンスと単一磁束量子(SFQ)を動作の基本とするSFQ回路とから構成され、前記センスラインの一端は接地面に接続され他端は第1の接続点に接続され、前記バイアス抵抗の一端は直流電流供給端子に接続され他端は前記第1の接続点に接続され、前記第1の接続点と前記SFQ回路のデータ信号入力端との間に前記負荷抵抗と前記負荷インダクタンスとが直列に接続されていることを特徴とする直流電源駆動型超伝導センス回路。
- 複数個のセンスライン情報検出部と単一磁束量子(SFQ)を動作の基本とする一つのSFQ回路とを具備し、
前記センスライン情報検出部は、ランダムアクセスメモリのセンスラインとバイアス抵抗と負荷抵抗と負荷インダクタンスとから構成され、前記センスラインの一端は接地面に接続され他端は第1の接続点に接続され、前記バイアス抵抗の一端は直流電流供給端子に接続され他端は前記第1の接続点に接続され、前記第1の接続点と前記センスライン情報検出部の出力端との間に前記負荷抵抗と前記負荷インダクタンスとが直列に接続された構成を有し、且つ前記複数個のセンスライン情報検出部の出力端が前記SFQ回路のデータ信号入力端に接続されていることを特徴とする直流電源駆動型超伝導センス回路。 - 請求項1又は請求項2に記載の直流電源駆動型超伝導センス回路において、前記SFQ回路は、データ信号入力端とクロック信号入力端と信号出力端とを有し、データ信号入力端へのデータ信号の入力に応じて、その情報を保持し、その後クロック信号がクロック信号入力端に入力した際にデータ信号の値に応じて信号出力端に単一磁束量子(SFQ)パルスを出力する手段を具備することを特徴とする直流電源駆動型超伝導センス回路。
- 請求項1又は請求項2記載の直流電源駆動型超伝導センス回路において、前記センスラインは、ランダムアクセスメモリにおける少なくとも1つの記憶セルの読出しゲートが直列に接続された構成を有することを特徴とする直流電源駆動型超伝導センス回路。
- 請求項1又は請求項2記載の直流電源駆動型超伝導センス回路において、前記センスラインが有する全てのジョセフソン接合は、マッカンバ係数が「50」以上のアンダーダンピング状態で動作するように設定され、前記SFQ回路が有する全てのジョセフソン接合は、マッカンバ係数が「1」程度のオーバーダンピング状態で動作するように設定されていることを特徴とする直流電源駆動型超伝導センス回路。
- 請求項1又は請求項2記載の直流電源駆動型超伝導センス回路において、前記センスライン及び前記SFQ回路が有する全てのジョセフソン接合は、マッカンバ係数が「1」程度のオーバーダンピング状態で動作するように設定されていることを特徴とする直流電源駆動型超伝導センス回路。
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US11/374,028 US7505310B2 (en) | 2005-03-14 | 2006-03-14 | Method of configuring superconducting random access memory, device structure of the same, and superconducting drive circuit |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019522864A (ja) * | 2016-05-27 | 2019-08-15 | ノースロップ グラマン システムズ コーポレイションNorthrop Grumman Systems Corporation | レシプロカル量子論理(rql)センスアンプ |
-
2005
- 2005-03-23 JP JP2005082939A patent/JP2006268928A/ja not_active Withdrawn
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