以下、図面を参照して、NOXセンサの故障を診断するための本発明の故障診断装置について説明する。NOXセンサは図2において、参照番号1で示されており、このNOXセンサ1は内燃機関50に接続された排気通路51に取り付けられ、内燃機関50から排出される排気ガス中の窒素酸化物(NOX)の濃度を検出することができる。NOXセンサ1からは排気ガス中のNOX濃度に対応する出力が図示していない電子制御装置(ECU)に送られる。ECUは、NOXセンサ1から受信したNOX濃度に対応する出力値に基づいて、内燃機関の運転状態が所望の運転状態になるように、内燃機関の運転条件を変更する。
NOXセンサ1が適用される内燃機関は、大部分の機関運転領域において、燃焼室内における空燃比が理論空燃比よりも大きいリーンであるような圧縮点火式の内燃機関である。この圧縮点火式の内燃機関では、燃焼室において酸素過剰状態で燃料が燃焼するので、燃焼室内にてNOXが生成されやすく、燃焼室から排出される排気ガスにはNOXが含まれている。
さて、NOXセンサ1のセンサ部の構造を示した図1を参照すると、NOXセンサ1のセンサ部は互いに積層された6つの酸化ジルコニウム等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなり、これら6つの固体電解質層を以下、上から順に第1層L1、第2層L2、第3層L3、第4層L4、第5層L5、第6層L6と称する。
第1層L1と第3層L3との間には、例えば、多孔質材料または細孔を形成されている材料からなる第1の拡散律速部材2と第2の拡散律速部材3とが配置されている。これら拡散律速部材2,3間には、第1室4が形成される。第2の拡散律速部材3と第2層L2との間には、第2室5が形成されている。また、第3層L3と第5層L5との間には、外気に連通している大気室6が形成されている。一方、第1の拡散律速部材2の外端面は排気ガスと接触している。したがって、排気ガスは第1の拡散律速部材2を介して第1室4内に流入し、斯くして、第1室4内は排気ガスで満たされている。
一方、第1室4に面する第1層L1の内周面上には、陰極側第1ポンプ電極7が形成されている。第1層L1の外周面上には、陽極側第1ポンプ電極8が形成されている。これら第1ポンプ電極7,8間には第1ポンプ電圧源9により電圧が印加される。第1ポンプ電極7,8間に電圧が印加されると、第1室4内の排気ガス中に含まれる酸素が陰極側第1ポンプ電極7と接触して酸素イオンとなる。この酸素イオンは、第1層L1内を陽極側第1ポンプ電極8に向けて流れる。したがって、第1室4内の排気ガス中に含まれる酸素は第1層L1内を移動して外部に汲み出されることになる。このとき外部に汲み出される酸素量は第1ポンプ電圧源9の電圧が高くなるほど多くなる。
すなわち、本実施形態では、陰極側第1ポンプ電極7および陽極側第1ポンプ電極8が、それぞれ、排気ガスから酸素を排出するための第1の酸素ポンプセルの対面する2つの電極板を構成する。
一方、大気室6に面する第3層L3の内周面上には、基準電極10が形成されている。ところで、酸素イオン伝導性のある固体電解質からなる層(以下、固体電解質層と称す)では、固体電解質層の両側において酸素濃度に差があると、酸素濃度の高い側から酸素濃度の低い側に向けて固体電解質層内を酸素イオンが移動する。図1に示されている例では、大気室6内の酸素濃度の方が第1室4内の酸素濃度よりも高いので、大気室6内の酸素は基準電極10と接触することによって電荷を受け取って酸素イオンとなる。この酸素イオンは第3層L3、第2層L2および第1層L1内を移動し、陰極側第1ポンプ電極7において電荷を放出する。その結果、基準電極10と陰極側第1ポンプ電極7との間に符号11で示した電圧V0が発生する。この電圧V0は大気室6内と第1室4内との酸素濃度差に比例する。
図1に示されている例では、排気ガス中のNOX濃度を検出するときには、この電圧V0が第1室4内の酸素濃度が1p.p.m.のときに生ずる電圧に一致するように、第1ポンプ電圧源9の電圧がフィードバック制御される。すなわち、第1室4内の酸素は第1室4内の酸素濃度が1p.p.m.となるように第1層L1を通って汲み出され、それによって、第1室4内の酸素濃度が1p.p.m.に維持される。
すなわち、本実施形態では、基準電極10および陰極側第1ポンプ電極7が、それぞれ、第1室4内の排気ガス中の酸素濃度を監視するための第1の酸素濃度監視セルの対面する2つの電極板を構成する。
なお、陰極側第1ポンプ電極7は、NOXに対しては還元性の低い材料、例えば、金(Au)と白金(Pt)との合金から形成されており、したがって、排気ガス中に含まれるNOXは第1室4内ではほとんど還元されない。したがって、このNOXは第2の拡散律速部材3を通って第2室5内に流入する。
一方、第2室5に面する第1層L1の内周面上には、陰極側第2ポンプ電極12が形成されている。陰極側第2ポンプ電極12と陽極側第1ポンプ電極8との間には、第2ポンプ電圧源13によって電圧が印加される。これらポンプ電極12,8間に電圧が印加されると、第2室5内の排気ガス中に含まれる酸素が陰極側第2ポンプ電極12と接触して酸素イオンとなる。この酸素イオンは第1層L1内を陽極側第1ポンプ電極8に向けて流れる。したがって、第2室5内の排気ガス中に含まれる酸素は第1層L1内を移動して外部に汲み出されることになる。このときに外部に汲み出される酸素量は第2ポンプ電圧源13の電圧が高くなるほど多くなる。
すなわち、本実施形態では、陰極側第2ポンプ電極12および陽極側第1ポンプ電極8も、それぞれ、排気ガスから酸素を排出するための第2の酸素ポンプセルの対面する2つの電極板を構成する。
一方、上述したように、固体電解質層の両側において酸素濃度に差があると、酸素濃度の高い側から酸素濃度の低い側に向けて固体電解質層内を酸素イオンが移動する。図1に示されている例では、第2室5内の酸素濃度よりも大気室6内の酸素濃度のほうが高いので、大気室6内の酸素は基準電極10と接触することによって電荷を受け取って酸素イオンとなる。この酸素イオンは第3層L3、第2層L2および第1層L1内を移動し、陰極側第2ポンプ電極12において電荷を放出する。その結果、基準電極10と陰極側第2ポンプ電極12との間に符号14で示した電圧V1が発生する。この電圧V1は大気室6内と第2室5内との酸素濃度差に比例する。
図1に示されている例では、排気ガス中のNOX濃度を検出するときには、この電圧V1が第2室5内の酸素濃度が0.01p.p.m.のときに生ずる電圧に一致するように、第2ポンプ電圧源13の電圧がフィードバック制御される。すなわち、第2室5内の酸素は第2室5内の酸素濃度が0.01p.p.m.となるように第1層L1を通って汲み出され、それによって第2室5内の酸素濃度が0.01p.p.m.に維持される。
すなわち、本実施形態では、基準電極10および陰極側第2ポンプ電極12が、それぞれ、第2室5内の排気ガス中の酸素濃度を監視するための第2の酸素濃度監視セルの対面する2つの電極板を構成する。
なお、陰極側第2ポンプ電極12もNOXに対しては還元性の低い材料、例えば、金(Au)と白金(Pt)との合金から形成されており、したがって、排気ガス中に含まれるNOXは陰極側第2ポンプ電極12と接触してもほとんど還元されない。
一方、第2室5に面する第3層L3の内周面上には、NOX検出用の陰極側ポンプ電極15が形成されている。陰極側ポンプ電極15はNOXに対して強い還元性を有する材料、例えば、ロジウム(Rh)や白金(Pt)から形成されている。したがって、第2室5内のNOX、実際には大部分を占めるNOが陰極側ポンプ電極15上においてN2とO2とに分解される。図1に示されているように、陰極側ポンプ電極15と基準電極10との間には、一定電圧16が印加されており、したがって、陰極側ポンプ電極15上において分解生成されたO2は酸素イオンとなって第3層L3内を基準電極10に向けて移動する。このとき、陰極側ポンプ電極15と基準電極10との間には、この酸素イオン量に比例した符号17で示した電流I1が流れる。
すなわち、本実施形態では、陰極側ポンプ電極15および基準電極10が、それぞれ、排気ガス中のNOXを分解して新たに酸素を生成するための酸素生成セルの対面する2つの電極板を構成する。さらに、これら陰極側ポンプ電極15および基準電極10は、それぞれ、酸素生成セルによって生成された酸素濃度を検出するための酸素濃度検出セルの対面する2つの電極板をも構成する。
上述したように、第1室4内ではNOXはほとんど還元されず、また、第2室5内には酸素はほとんど存在しない。したがって電流I1は排気ガス中に含まれるNOX濃度に比例することになり、斯くして電流I1から排気ガス中のNOX濃度を検出できることになる。
なお、第5層L5と第6層L6との間には、NOXセンサ1のセンサ部を加熱するための電気ヒータ19が配置されている。この電気ヒータ19によってNOXセンサ1のセンサ部は700℃から800℃に加熱される。
次に、NOXセンサの故障を診断するための本発明の故障診断装置について図3を参照して説明する。陰極側第1ポンプ電極7と陽極側第1ポンプ電極8との間、すなわち、第1の酸素ポンプセルの電極板7,8間に電圧が印加され、第1室4から外部へと酸素が排出されると、電極板7,8間に符号18で示した電流I2が流れる。電流I2は第1室4から外部へと排出される酸素の量に比例する。電極板7,8間に印加される電圧が高くなるほど、第1室4から外部へと排出される酸素の量は多くなり、したがって、このとき、電流I2も大きくなる。
また、図3は、第1室4内の排気ガスの空燃比(すなわち、酸素濃度)と第1の酸素ポンプセルの電極板7,8間に印加される電圧Eとそのときに電極板7,8間に流れる電流I2との関係を示している。図3において、線Lairは排気ガス中の酸素濃度が空気中の酸素濃度に等しいときの印加電圧Eと電流I2との関係を示し、線L18は排気ガスの空燃比が18であるときの印加電圧Eと電流I2との関係を示し、線L16は排気ガスの空燃比が16であるときの印加電圧Eと電流I2との関係を示している。ここで排気ガスの空燃比とは、内燃機関の燃焼室内に供給された空気と燃料との比を意味する。
排気ガス中の酸素濃度が空気中の酸素濃度に等しい場合を例にとって説明すると、このときには、印加電圧Eが零から大きくなるほど、電流I2も線Lairに沿って大きくなる。そして、印加電圧Eが或る特定の値に達すると印加電圧Eが大きくなったとしても電流I2はそれほど大きくならず、印加電圧Eに関係なく略一定の値で推移する。しかしながら、印加電圧Eがさらに大きくなって或る特定の値を超えると、印加電圧Eが大きくなるほど、電流I2も線Lairに沿って大きくなる。
排気ガス中の酸素濃度が空気中の酸素濃度ではない場合であっても、印加電圧Eに関係なく電流I2が略一定の値で推移するときのその電流I2の値が異なることを除けば、印加電圧Eと電流I2との関係は、排気ガス中の酸素濃度が空気中の酸素濃度に等しい場合の関係に概ね類似している。なお、排気ガスの空燃比が小さくなるほど、印加電圧Eに関係なく電流I2が略一定の値で推移するときのその電流I2の値は小さくなる。
このように、第1の酸素ポンプセルに印加される印加電圧Eと電流I2との間の関係は予め判っているので、排気ガス中の酸素濃度が既知であれば、第1の酸素ポンプセルが正常である場合に、第1の酸素ポンプセルに一定の電圧が印加されたときの電流I2の値は計算によって予想可能である。
そこで、第1の実施形態の故障診断装置では、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が既知であるという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに、第1の酸素ポンプセルに流れる電流I2を検出し、この電流I2が第1の酸素ポンプセルが正常であるときにとりうると予想される値(以下、予想値と称す)にあれば、第1の酸素ポンプセルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電流I2が上記予想値からずれていれば、第1の酸素ポンプセルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
なお、印加電圧Eに関係なく電流I2が略一定の値で推移するときのその印加電圧Eを所定電圧と称すると、第1の酸素ポンプセルにこの所定電圧が印加された場合、第1の酸素ポンプセルが正常であれば、第1の酸素ポンプセルに流れる電流I2は略一定の値で推移する。ここで、第1の酸素ポンプセルが正常であると診断するときに用いる上記予想値をこの略一定の値近傍の範囲とすれば、第1の酸素ポンプセルの故障以外の原因によって電流I2が予想値から僅かにずれた場合に、第1の酸素ポンプセルが故障しているとは診断されず、第1の酸素ポンプセルの故障によって電流I2が予想値から比較的大きくずれた場合にのみ、第1の酸素ポンプセルが故障していると診断されるようになるので、NOXセンサ1の故障を精度高く診断することができる。
また、排気ガス中の酸素濃度が既知であるときとは、例えば、機関減速時に燃料噴射弁からの燃料が停止されるようになっている場合には、内燃機関の運転状態がこの燃料噴射弁から燃料が停止される運転状態(以下、フューエルカット運転状態と称す)にあるときである。このときの排気ガス中の酸素濃度は大気中の酸素濃度に等しい。
或いは、排気ガス中の酸素濃度が既知であるときとは、例えば、通常は排気ガスの空燃比は理論空燃比よりも大きくリーンとなっており、排気ガスの空燃比がリーンであるときに排気ガス中のNOXを吸収によって保持し且つ排気ガスの空燃比が理論空燃比または理論空燃比よりも大きいリッチとなると保持しているNOXを還元浄化することができるNOX触媒がNOXセンサ下流の排気通路内に配置されている場合において、内燃機関の運転状態が、NOX触媒にてNOXを還元浄化するために排気ガスの空燃比が理論空燃比とされている運転状態(以下、リッチスパイク運転状態と称す)にあるときである。
或いは、排気ガス中の酸素濃度が既知であるときとは、例えば、内燃機関の運転状態がアイドリング状態などの低負荷低回転の運転状態にあるときである。
次に、第2の実施形態の故障診断装置について説明する。基準電極10と陰極側第1ポンプ電極7との間、すなわち、第1の酸素濃度監視セルの電極板10,7間に発生する電圧V0は、大気室6内と第1室4内との酸素濃度差に比例する。ここで、第1の酸素ポンプセルによって第1室4から外部に排出される酸素の量は、第1の酸素ポンプセルに印加される電圧に基づいて、計算によって予想可能であるので、排気ガス中の酸素濃度が既知であれば、大気室6内と第1室4内との酸素濃度差も計算によって予想可能である。したがって、このとき、第1の酸素濃度監視セルが正常である場合に、第1の酸素濃度監視セルの電極板10,7間に発生する電圧V0の値も計算によって予想可能である。
そこで、第2の実施形態の故障診断装置では、第1の実施形態と同様に排気ガス中の酸素濃度が既知であるという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに、第1の酸素濃度監視セルに発生する電圧V0を検出し、この電圧V0が第1の酸素濃度監視セルが正常であるときにとりうると予想される値(以下、予想値と称す)にあれば、第1の酸素濃度監視セルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電圧V0が上記予想値からずれていれば、第1の酸素濃度監視セルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
なお、第2の実施形態において、第1の酸素ポンプセルに印加する電圧を上述した所定電圧とすれば、第1の酸素ポンプセルに印加される電圧が所定電圧から若干ずれたとしても、第1の酸素ポンプセルによって排気ガスから排出される酸素の量は略一定量で安定しているので、第1の酸素濃度監視セルの故障を確実に診断することができ、したがって、NOXセンサ1の故障を確実に診断することができるようになる。
次に、第3の実施形態の故障診断装置について説明する。陰極側第2ポンプ電極12と陽極側第1ポンプ電極8との間、すなわち、第2の酸素ポンプセルの電極板12,8間に電圧が印加され、第2室5から外部へと酸素が排出されると、電極板12,8間に符号19で示した電流I3が流れる。電流I3は第1室5から外部へと排出される酸素の量に比例する。電極板12,8間に印加される電圧が高くなるほど、第2室5から外部へと排出される酸素の量は多くなり、したがって、このとき、電流I3も大きくなる。
さて、ここで、第2室5内の排気ガスの空燃比(すなわち、酸素濃度)と第2の酸素ポンプセルに印加される印加電圧と電流I3との関係は、図3に示されている第1の酸素ポンプセルに印加される印加電圧Eと電流I2との関係と同様である。すなわち、第2の酸素ポンプセルに到来する排気ガス中の酸素濃度が或る特定の濃度であるときに、第2の酸素ポンプセルの電極板12,8間に或る特定の電圧が印加されると、電流I3は或る特定の値となる。
ここで、上述したように、第1の酸素ポンプセルに印加される印加電圧Eと電流I2との間の関係は予め判っているので、排気ガス中の酸素濃度が既知であれば、第1の酸素ポンプセルに印加される電圧に基づいて第1の酸素ポンプセルによって第1室4から外部に排出される酸素の量は計算によって予想可能であるので、第2室5に流入する排気ガス中の酸素濃度も計算によって予想可能である。そして、第2の酸素ポンプセルに印加される印加電圧と電流I3との間の関係も予め判っているので、第2室5内の排気ガス中の酸素濃度が既知であれば、第2の酸素ポンプセルが正常である場合に、第2の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加したときの電流I3の値も計算によって予想可能である。
そこで、第3の実施形態の故障診断装置では、第1の実施形態と同様に排気ガス中の酸素濃度が既知であるという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加すると共に、第2の酸素ポンプセルにも或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに、第2の酸素ポンプセルに流れる電流I3を検出し、この電流I3が第2の酸素ポンプセルが正常であるときにとりうると予想される値(以下、予想値と称す)にあれば、第2の酸素ポンプセルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電流I3が上記予想値からずれていれば、第2の酸素ポンプセルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
なお、第3の実施形態において、第1の酸素ポンプセルに印加する電圧を上述した所定電圧とし、第2の酸素ポンプセルに印加する電圧も上述した所定電圧とすれば、第2の実施形態に関連して説明した理由と同様の理由で、第2の酸素ポンプセルの故障を確実に診断することができ、したがって、NOXセンサ1の故障を確実に診断することができるようになる。
次に、第4の実施形態の故障診断装置について説明する。基準電極10と陰極側第2ポンプ電極12との間、すなわち、第2の酸素濃度監視セルの電極板10,12間に発生する電圧V1は、大気室6内と第2室5内との酸素濃度差に比例する。ここで、上述したように、第1の酸素ポンプセルによって第1室4から外部に排出される酸素の量は、第1の酸素ポンプセルに印加される電圧に基づいて、計算によって予想可能であり、第2の酸素ポンプセルによって第2室5から外部に汲み出される酸素の量は、第2の酸素ポンプセルに印加される電圧に基づいて、計算によって予想可能である。
したがって、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が既知であれば、大気室6内と第2室5内との酸素濃度差も計算によって予想可能である。したがって、このとき、第2の酸素濃度監視セルが正常である場合に、第2の酸素濃度監視セルの電極板10,12間に発生する電圧V1の値も計算によって予想可能である。
そこで、第4の実施形態の故障診断装置では、第1の実施形態と同様に排気ガス中の酸素濃度が既知であるという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加すると共に、第2の酸素ポンプセルにも或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに、第2の酸素濃度監視セルに発生する電圧V1を検出し、この電圧V1が第2の酸素濃度監視セルが正常であるときにとりうると予想される値(以下、予想値と称す)にあれば、第2の酸素濃度監視セルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電圧V1が上記予想値からずれていれば、第2の酸素濃度監視セルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
なお、第4の実施形態において、第1の酸素ポンプセルに印加する電圧を上述した所定電圧とし、第2の酸素ポンプセルに印加する電圧も上述した所定電圧とすれば、第2の実施形態に関連して説明した理由と同様の理由で、第2の酸素濃度監視セルの故障を確実に診断することができ、したがって、NOXセンサ1の故障を確実に診断することができるようになる。
次に、第5の実施形態の故障診断装置について説明する。陰極側ポンプ電極15と基準電極10との間、すなわち、酸素濃度検出セルの電極板15,10間に流れる電流I1は、第2室5内の酸素濃度およびNOX濃度に比例する。
ここで、上述したように、第1の酸素ポンプセルによって第1室4から外部に排出される酸素の量は、第1の酸素ポンプセルに印加される電圧に基づいて、計算によって予想可能であり、第2の酸素ポンプセルによって第2室5から外部に排出される酸素の量は、第2の酸素ポンプセルに印加される電圧に基づいて、計算によって予想可能である。
したがって、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が既知であれば、第2室5内の酸素濃度も計算によって算出可能である。したがって、このとき、第2室5内のNOX濃度、すなわち、NOXセンサ1に到来する排気ガス中のNOX濃度が既知であれば、酸素濃度検出セルが正常である場合に、酸素濃度検出セルの電極板15,10間に流れる電流I1の値も計算によって予想可能である。
そこで、第5の実施形態の故障診断装置では、第1の実施形態と同様にNOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が既知であるという故障診断条件が成立し、且つ、この排気ガス中のNOX濃度も既知であるという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加すると共に、第2の酸素ポンプセルにも或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに、酸素濃度検出セルに流れる電流I1を検出し、この電流I1が酸素濃度検出セルが正常であるときにとりうると予想される値(以下、予想値と称す)にあれば、酸素濃度検出セルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電流I1が上記予想値からずれていれば、酸素濃度検出セルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
なお、第5の実施形態において、第1の酸素ポンプセルに印加する電圧を上述した所定電圧とし、第2の酸素ポンプセルに印加する電圧も上述した所定電圧とすれば、第2の実施形態に関連して説明した理由と同様の理由で、酸素濃度検出セルの故障を確実に診断することができ、したがって、NOXセンサ1の故障を確実に診断することができるようになる。
また、排気ガス中の酸素濃度およびNOX濃度が既知であるときとは、例えば、内燃機関の運転状態が上述したフューエルカット運転状態にあるとき、または、内燃機関の運転状態が上述したリッチスパイク運転状態にあるとき、または、内燃機関の運転状態がアイドリング状態などの低負荷低回転の状態にあるときである。
次に、第6の実施形態の故障診断装置について図4を参照して説明する。図4(A)はNOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度の推移を示す。図4(A)に示した例では、排気ガス中の酸素濃度Coは、時刻t1において比較的低い濃度(以下、低濃度と称す)Colから上昇し始め、時刻t3において比較的高い濃度(以下、高濃度と称す)Cohに達し、その後、高濃度Cohで推移する。
ところで、上述したように、第1の酸素ポンプセルに流れる電流I2は第1室4から外部へと排出される酸素の量に比例する。したがって、第1室4に流入する排気ガス中の酸素濃度Coが図4(A)に示されているように変化するときに、第1室4内の酸素濃度が一定の濃度となるように第1の酸素ポンプセルに電圧が印加されていると、第1の酸素ポンプによって第1室4から外部へと排出される酸素の量は第1室4内に流入する排気ガス中の酸素濃度の変化に追従して変化し、したがって、第1の酸素ポンプセルに流れる電流I2も第1室4に流入する排気ガス中の酸素濃度の変化に追従して変化する。
したがって、第1の酸素ポンプセルが正常である場合に、第1室4内の酸素濃度が一定の濃度となるように第1の酸素ポンプセルに電圧を印加している間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図4(A)に示されているように推移すると、第1の酸素ポンプセルに流れる電流I2は、図4(B)に示されているように推移する。
すなわち、電流I2は、時刻t2までは比較的低い電流値(以下、低電流値と称す)I2lで推移しているが、時刻t2において低電流値I2lから上昇し始める。電流I2が上昇し始める時刻が酸素濃度Coが上昇し始める時刻よりも遅れるのは、排気ガスが内燃機関から排出されてからNOXセンサ1に到達するまでに時間を要するからである。そして、電流I2は、その後、上昇し続けるが、時刻t4において比較的高い電流値(以下、高電流値と称す)I2hに達した後、高電流値I2hで推移する。
一方、第1の酸素ポンプセルが故障している場合には、電流I2は、図5(C)に示されているように推移する。すなわち、電流I2は、時刻t2までは低電流値I2lで推移し、時刻t2において低電流値I2lから上昇し始め、時刻t5において高電流値I2hに達した後、高電流値I2hで推移する。
さて、ここで、図4(B)と図4(C)とを比較すると、上述したように第1の酸素ポンプセルに電圧を印加している間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図4(A)に示されているように推移したときに、電流I2が低電流値I2lから高電流値I2hまで上昇するのにかかる時間は、第1の酸素ポンプセルが正常である場合よりも、第1の酸素ポンプセルが故障している場合のほうが長いことが判る。すなわち、第1の酸素ポンプセル内に流れる電流I2の上昇率は、第1の酸素ポンプセルが正常である場合よりも、第1の酸素ポンプセルが故障している場合のほうが小さい。
このように、電流I2の上昇率が第1の酸素ポンプセルが正常である場合よりも、第1の酸素ポンプセルが故障している場合のほうが短くなるのは、酸素濃度の変化に応答する第1の酸素ポンプセルの応答速度が遅くなったり、第1の酸素ポンプセルの出力自体が小さくなったりするからである。
このように、電流I2の上昇率が第1の酸素ポンプセルが正常である場合と第1の酸素ポンプセルが故障している場合とで異なることを利用して、第6の実施形態の故障診断装置では、排気ガス中の酸素濃度が所定の増大幅よりも大きく増大するという故障診断条件が成立したときに、第1室4内の酸素濃度が一定の濃度(例えば1p.p.m.)となるように第1の酸素ポンプセルに電圧を印加する。そして、このときに電流I2が変化し始めてから一定の値で推移するまでの間の電流I2の上昇率を算出し、この電流I2の上昇率が所定の上昇率よりも大きければ、第1の酸素ポンプセルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電流I2の上昇率が上記所定の上昇率よりも小さければ、第1の酸素ポンプセルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第7の実施形態の故障診断装置について説明する。第1の酸素ポンプセルに一定の電圧が印加されていると、第1の酸素ポンプセルによって第1室4から外部へと排出される酸素の量は一定である。したがって、第1の酸素ポンプセルに一定の電圧が印加されている間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が変化すると、第1室4内の酸素濃度は、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度の変化に追従して変化する。また、第1の酸素濃度監視セルに発生する電圧V0は大気室6内と第1室4内との酸素濃度差に比例する。したがって、第1室4内の酸素濃度が変化すると、第1の酸素濃度監視セルに発生する電圧V0も、第1室4内の酸素濃度の変化に追従して変化する。
したがって、第1の酸素ポンプセルに一定電圧が印加されている間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図4(A)に示されているように推移すると、第1の酸素濃度監視セルに発生する電圧V0も、第6の実施形態における電流I2と同様に上昇する。
そして、このときに電圧V0が変化し始めてから一定の値で推移するまでの間の電圧V0の上昇率は、第1の酸素濃度監視セルが正常である場合よりも、第1の酸素濃度監視セルが故障している場合のほうが小さい。このように、電圧V0の上昇率が小さくなる理由は、第2の実施形態に関する説明と第6の実施形態に関する説明とを参照すれば明らかとなろう。
このように、電圧V0の上昇率が、第1の酸素濃度監視セルが正常である場合と第1の酸素濃度監視セルが故障している場合とで異なることを利用して、第7の実施形態の故障診断装置では、第6の実施形態と同様に排気ガス中の酸素濃度が所定の増大幅よりも大きく増大するという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに、第1の酸素濃度監視セルに発生する電圧V0を検出し、この電圧V0の上昇率を算出し、この電圧V0の上昇率が所定の上昇率よりも大きければ、第1の酸素濃度監視セルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電圧V0の上昇率が上記所定の値よりも小さければ、第1の酸素濃度監視セルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第8の実施形態の故障診断装置について説明する。第1の酸素ポンプセルに一定の電圧が印加されていると、第1の酸素ポンプセルによって第1室4から外部へと排出される酸素の量は一定である。したがって、第1の酸素ポンプセルに一定の電圧が印加されている間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が変化すると、第2室5内に流入する排気ガス中の酸素濃度は、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度の変化に追従して変化する。
また、第2室5内の酸素濃度が一定の濃度になるように第2の酸素ポンプセルに電圧が印加されていると、第2の酸素ポンプセルによって第2室5から外部へと排出される酸素の量は第2室5内に流入する排気ガス中の酸素濃度に比例する。したがって、第2室5内の酸素濃度が一定の濃度になるように第2の酸素ポンプセルに電圧が印加されている間に、第2室5内に流入する排気ガス中の酸素濃度が変化すると、第2の酸素ポンプセルに流れる電流I3も、第2室5に流入する排気ガス中の酸素濃度の変化に追従して変化する。
したがって、第1の酸素ポンプセルに一定電圧が印加され、且つ、第2室5内の酸素濃度が一定の濃度となるように第2の酸素ポンプセルに電圧が印加されている間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図4(A)に示されているように推移すると、第2の酸素ポンプセルに流れる電流I3も、第6の実施形態における電流I2と同様に上昇する。
そして、このときに電流I3が変化し始めてから一定の値で推移するまでの間の電流I3の上昇率は、第2の酸素ポンプセルが正常である場合よりも、第2の酸素ポンプセルが故障している場合のほうが小さい。このように、電流I3の上昇率が小さくなる理由は、第3の実施形態に関する説明と第6の実施形態に関する説明とを参照すれば明らかとなろう。
このように、電流I3の上昇率が、第2の酸素ポンプセルが正常である場合と第2の酸素ポンプセルが故障している場合とで異なることを利用して、第8の実施形態の故障診断装置では、第6の実施形態と同様に排気ガス中の酸素濃度が所定の増大幅よりも大きく増大するという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加すると共に、第2室5内の酸素濃度が一定の濃度(例えば、0.01p.p.m.)となるように第2の酸素ポンプセルに電圧を印加する。そして、このときに、第2の酸素ポンプセルに流れる電流I3を検出し、この電流I3の上昇率を算出し、この電流I3の上昇率が所定の上昇率よりも大きければ、第2の酸素ポンプセルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電流I3の上昇率が上記所定の上昇率よりも小さければ、第2の酸素ポンプセルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第9の実施形態の故障診断装置について説明する。第8の実施形態に関連して説明したように、第1の酸素ポンプセルに一定の電圧が印加されている間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が変化すると、第2室5内に流入する排気ガス中の酸素濃度は、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度の変化に追従して変化する。
また、第2の酸素ポンプセルに一定の電圧が印加されていると、第2の酸素ポンプセルによって第2室5から外部へと排出される酸素の量は一定である。したがって、第2の酸素ポンプセルに一定の電圧が印加されている間に、第2室5内に流入する排気ガス中の酸素濃度が変化すると、第2室5内の酸素濃度は、第2室5内に流入する排気ガス中の酸素濃度の変化に追従して変化する。
さらに、第2の酸素濃度監視セルに発生する電圧V1は大気室6内と第2室5内との酸素濃度差に比例する。したがって、第2室5内の酸素濃度が変化すると、第2の酸素濃度監視セルに発生する電圧V1も、第2室5内の酸素濃度の変化に追従して変化する。
したがって、第1の酸素ポンプセルに一定電圧が印加され、且つ、第2の酸素ポンプセルにも一定電圧が印加されている間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図4(A)に示されているように推移すると、第2の酸素濃度監視セルに発生する電圧V1も、第6の実施形態における電流I2と同様に上昇する。
そして、このときに電圧V1が変化し始めてから一定の値で推移するまでの間の電圧V1の上昇率は、第2の酸素濃度監視セルが正常である場合よりも、第2の酸素濃度監視セルが故障している場合のほうが小さい。このように、電圧V1の上昇率が小さくなる理由は、第4の実施形態に関する説明と第6の実施形態に関する説明とを参照すれば明らかとなろう。
このように、電圧V1の上昇率が、第2の酸素濃度監視セルが正常である場合と第2の酸素濃度監視セルが故障している場合とで異なることを利用して、第9の実施形態の故障診断装置では、第6の実施形態と同様に排気ガス中の酸素濃度が所定の増大幅よりも大きく増大するという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加すると共に、第2の酸素ポンプセルにも或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに、第2の酸素濃度監視セルに発生する電圧V1を検出し、この電圧V1の上昇率を算出し、この電圧V1の上昇率が所定の上昇率よりも大きければ、第2の酸素濃度監視セルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電圧V1の上昇率が上記所定の上昇率よりも小さければ、第2の酸素濃度監視セルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第10の実施形態の故障診断装置について説明する。第9の実施形態に関連して説明したように、第1の酸素ポンプセルに一定の電圧が印加されており、且つ、第2の酸素ポンプセルにも一定の電圧が印加されている間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が変化すると、第2室5内の酸素濃度は、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度の変化に追従して変化する。
また、第5の実施形態に関連して説明したように、酸素濃度検出セルに流れる電流I1は、第2室5内のNOX濃度および酸素濃度に比例する。したがって、第2室5内のNOX濃度が一定であれば、電流I1は第2室内の酸素濃度の変化に追従して変化する。
したがって、第1の酸素ポンプセルに一定の電圧が印加されており、且つ、第2の酸素ポンプセルにも一定の電圧が印加されている間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図4(A)に示されているように推移し、しかも、このときの排気ガス中のNOX濃度が一定であると、酸素濃度検出セルに流れる電流I1も、第6の実施形態における電流I2と同様に上昇する。
そして、このときに電流I1が変化し始めてから一定の値で推移するまでの間の電流I1の上昇率は、酸素濃度検出セルが正常である場合よりも、酸素濃度検出セルが故障している場合のほうが小さい。このように、電流I1の上昇率が小さくなる理由は、第5の実施形態に関する説明と第6の実施形態に関する説明とを参照すれば明らかとなろう。
このように、電流I1の上昇率が、酸素濃度検出セルが正常である場合と酸素濃度検出セルが故障している場合とで異なることを利用して、第10の実施形態の故障診断装置では、第6の実施形態と同様に排気ガス中の酸素濃度が所定の増大幅よりも大きく増大するという故障診断条件が成立し、且つ、排気ガス中のNOX濃度が一定であるという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加すると共に、第2の酸素ポンプセルにも或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに、酸素濃度検出セルに流れる電流I1を検出し、この電流I1の上昇率を算出し、この電流I1の上昇率が所定の上昇率よりも大きければ、酸素濃度検出セルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電流I1の上昇率が上記所定の上昇率よりも小さければ、酸素濃度検出セルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
なお、上述した第6〜第10の実施形態において、排気ガス中の酸素濃度が所定の増大幅よりも大きく増大するときとは、例えば、内燃機関の運転状態が通常の運転状態から上述したフューエルカット運転状態へと移行するとき、或いは、その逆に移行するとき、或いは、通常の運転状態から上述したリッチスパイク運転状態へと移行するとき、或いは、その逆に移行するときである。もちろん、第6〜第10の実施形態において、NOXセンサ1の故障を診断するために、内燃機関の運転状態を強制的に変更することによって、排気ガス中の酸素濃度を強制的に所定の増大幅よりも大きく増大するようにしてもよい。また、第6〜第10の実施形態において、上昇率の代わりに、電流I2、電圧V0、電流I3、電圧V1、または電流I1が或る値から別の或る値にまで上昇するまでにかかる時間を用いて、NOXセンサ1に故障を診断してもよい。
また、上述した第6〜第10の実施形態において、排気ガス中の酸素濃度が所定の増大幅よりも大きく増大するという条件を、排気ガス中の酸素濃度が所定の減少幅よりも大きく減少するという条件に代えてもよい。
次に、第11の実施形態の故障診断装置について図5を参照して説明する。図5(A)はNOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度の推移を示す。図5(A)に示した例では、排気ガス中の酸素濃度Coは、時刻t1において比較的低い濃度(低濃度)Colから上昇し始め、時刻t2において比較的高い濃度(高濃度)Cohに達し、その後、下降し、時刻t3において低濃度Colに達し、その後、低濃度Colと高濃度Cohとの間で上昇と下降とを繰り返す。
ところで、第6の実施形態に関連して説明したように、第1室4内に流入する排気ガス中の酸素濃度Coが図5(A)に示されているように変化するときに、第1室4内の酸素濃度が一定の濃度となるように第1の酸素ポンプセルに電圧が印加されていると、第1の酸素ポンプセルの電極板7,8間に流れる電流I2は第1室4に流入する排気ガス中の酸素濃度の変化に追従して変化する。
したがって、第1の酸素ポンプセルが正常である場合に、第1室4内の酸素濃度が一定の濃度となるように第1の酸素ポンプセルに電圧を印加している間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図5(A)に示されているように推移すると、第1の酸素ポンプセルに流れる電流I2は、図5(B)に示されているように推移する。
すなわち、電流I2は、時刻t2までは比較的低い電流値(低電流値)I2で推移しているが、時刻t3において低電流値I2lから上昇し始める。電流I2が上昇し始める時刻t2が酸素濃度Coが上昇し始める時刻t1よりも遅れる理由は、第6の実施形態に関連して説明した理由と同じである。そして、電流I2は、その後、上昇し続けるが、時刻t4において比較的高い電流値(高電流値)I2hに達した後、下降し、時刻t5において低電流値I2lに達する。そして、その後、電流I2は、低電流値I2lと高電流値I2hとの間で上昇と下降とを繰り返す。
一方、第1の酸素ポンプセルが故障している場合には、電流I2は、図5(C)に示されているように推移する。すなわち、電流I2は、時刻t2までは低電流値I2lで推移しているが、時刻t3において低電流値I2lから上昇し始める。そして、電流I2は、その後、上昇し続けるが、時刻t4において高電流値I2hより低いが低電流値I2lよりも高い電流値(以下、中電流値と称す)I2mに達した後、下降し、時刻t5において低電流値I2lに達する。そして、その後、電流I2は、低電流値I2lと中電流値I2mとの間で上昇と下降とを繰り返す。
さて、ここで、図5(B)と図5(C)とを比較すると、上述したように第1の酸素ポンプセルに電圧を印加している間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図5(A)に示されているように推移したときに、電流I2を時間の関数でプロットしてこれらプロット点を結んで形成される曲線(以下、電流I2の軌跡線と称す)の単位時間当たりの長さ(以下、電流I2の軌跡長と称す)は、第1の酸素ポンプセルが正常である場合よりも、第1の酸素ポンプセルが故障している場合のほうが短いことが判る。
このように、電流I2の軌跡長が第1の酸素ポンプセルが正常である場合よりも、第1の酸素ポンプセルが故障している場合のほうが短くなるのは、第1の酸素ポンプセルが故障すると、酸素濃度の変化に応答する第1の酸素ポンプセルの応答速度が遅くなったり、第1の酸素ポンプセルの出力自体が小さくなったりするからである。
このように、電流I2の軌跡長が第1の酸素ポンプセルが正常である場合と第1の酸素ポンプセルが故障している場合とで異なることを利用して、第11の実施形態の故障診断装置では、排気ガス中の酸素濃度が所定の変化幅で上昇と下降とを繰り返しているという故障診断条件が成立したときに、第1室4内の酸素濃度が一定の濃度(例えば、1p.p.m.)となるように第1の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに電流I2の軌跡長を算出し、この電流I2の軌跡長が所定の長さよりも長ければ、第1の酸素ポンプセルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電流I2の軌跡長が上記所定の長さよりも短ければ、第1の酸素ポンプセルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第11の実施形態の変更実施形態について図6を参照して説明する。図6(A)〜(C)は図5(A)〜(C)と同様の図である。すなわち、図6(A)はNOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度の推移を示す。また、図6(B)は、第1の酸素ポンプセルが正常である場合に、第11の実施形態と同様に第1の酸素ポンプセルに電圧を印加している間に、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図6(A)に示されているように推移したときに、第1の酸素ポンプセルに流れる電流I2の推移を示す。一方、図6(C)は、第1の酸素ポンプセルが故障している場合における図6(B)と同様の図である。
さて、図6(B)および図6(C)とを比較すると、第1の酸素ポンプセルに流れる電流I2に対して基準となる一定の電流値(以下、基準電流値と称す)Irを定めておき、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図6(A)に示されているように推移し、且つ、第11の実施形態と同様に第1の酸素ポンプセルに電圧を印加している間に、基準電流値Irを時間の関数でプロットしてこれらプロット点を結んで形成される直線(以下、基準線と称す)と電流I2の軌跡線とによって囲まれる領域の面積(以下、電流I2の軌跡面積と称す)は、第1の酸素ポンプセルが正常である場合よりも、第1の酸素ポンプセルが故障している場合のほうが狭いことが判る。
このように、電流I2の軌跡面積が第1の酸素ポンプセルが正常である場合と第1の酸素ポンプセルが故障している場合とで異なることを利用して、第11の実施形態の変更実施形態では、第11の実施形態と同様の故障診断条件が成立したときに、第11の実施形態と同様に第1の酸素ポンプセルに電圧を印加する。そして、このときに電流I2の軌跡面積を算出し、この電流I2の軌跡面積が所定の面積よりも広ければ、第1の酸素ポンプセルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電流I2の軌跡面積が上記所定の面積よりも狭ければ、第1の酸素ポンプセルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第12の実施形態の故障診断装置について説明する。NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図5(A)に示されているように推移している間に、第1の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加したときに、第1の酸素濃度監視セルに発生する電圧V0を時間の関数でプロットしてこれらプロット点を結んで形成される曲線(以下、電圧V0の軌跡線と称す)の単位時間当たりの長さ(以下、電圧V0の軌跡長と称す)は、第1の酸素濃度監視セルが正常である場合よりも、第1の酸素濃度監視セルが故障している場合のほうが短い。
このように、電圧V0の軌跡長が、第1の酸素濃度監視セルが正常である場合よりも、第1の酸素濃度監視セルが故障している場合のほうが短くなる理由は、第2の実施形態に関する説明と第11の実施形態に関する説明とを参照すれば明らかとなろう。
このように、電圧V0の軌跡長が、第1の酸素濃度監視セルが正常である場合と第1の酸素濃度監視セルが故障している場合とで異なることを利用して、第12の実施形態の故障診断装置では、第11の実施形態と同様に排気ガス中の酸素濃度が所定の変化幅で上昇と下降とを繰り返しているという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに、第1の酸素濃度監視セルに発生する電圧V0を検出し、電圧V0の軌跡長を算出し、この電圧V0の軌跡長が所定の長さよりも長ければ、第1の酸素濃度監視セルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電圧V0の軌跡長が上記所定の長さよりも短ければ、第1の酸素濃度監視セルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第12の実施形態の変更実施形態について説明する。第11の実施形態の変更実施形態に関する説明を参照すると判るように、第1の酸素濃度監視セルに発生する電圧V0に対して基準となる一定の電圧値(以下、基準電圧値と称す)を定めておき、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図6(A)に示されているように推移し、且つ、第12の実施形態と同様に第1の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加している間に、上記基準電圧値を時間の関数でプロットしてこれらプロット点を結んで形成される直線(以下、基準線と称す)と電圧V0の軌跡線とによって囲まれる領域の面積(以下、電圧V0の軌跡面積と称す)は、第1の酸素濃度監視セルが正常である場合よりも、第1の酸素濃度監視セルが故障している場合のほうが狭い。
このように、電圧V0の軌跡面積が第1の酸素濃度監視セルが正常である場合よりも、第1の酸素濃度監視セルが故障している場合のほうが狭い理由は、第7の実施形態に関する説明と第11の実施形態の変更実施形態に関する説明とを参照すれば明らかとなろう。
このように、電圧V0の軌跡面積が第1の酸素濃度監視セルが正常である場合と第1の酸素濃度監視セルが故障している場合とで異なることを利用して、第12の実施形態の変更実施形態では、第12の実施形態と同様の故障診断条件が成立したときに、第12の実施形態と同様に第1の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加する。そして、このときに電圧V0の軌跡面積を算出し、この電圧V0の軌跡面積が所定の面積よりも広ければ、第1の酸素濃度監視セルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電圧V0の軌跡面積が上記所定の面積よりも狭ければ、第1の酸素濃度監視セルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第13の実施形態の故障診断装置について説明する。NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図5(A)に示されているように推移している間に、第1の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加すると共に、第2室5内の酸素濃度が一定の濃度となるように第2の酸素ポンプセルに電圧を印加したときに、第2の酸素ポンプセル内を流れる電流I3を時間の関数でプロットしてこれらプロット点を結んで形成される曲線(以下、電流I3の軌跡線と称す)の単位時間当たりの長さ(以下、電流I3の軌跡長と称す)は、第2の酸素ポンプセルが正常である場合よりも、第2の酸素ポンプセルが故障している場合のほうが短い。
このように、電流I3の軌跡長が第2の酸素ポンプセルが正常である場合よりも、第2の酸素ポンプセルが故障している場合のほうが短くなる理由は、第8の実施形態に関する説明と第11の実施形態に関する説明とを参照すれば明らかとなろう。
このように、電流I3の軌跡長が第2の酸素ポンプセルが正常である場合と第2の酸素ポンプセルが故障している場合とで異なることを利用して、第13の実施形態の故障診断装置では、第11の実施形態と同様に排気ガス中の酸素濃度が所定の変化幅で上昇と下降とを繰り返しているという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加すると共に、第2室5内の酸素濃度が一定の濃度(例えば、0.01p.p.m.)となるように第2の酸素ポンプセルに電圧を印加する。そして、このときに、第2の酸素ポンプセルに流れる電流I3を検出し、この電流I3の軌跡長を算出し、この電流I3の軌跡長が所定の長さよりも長ければ、第2の酸素ポンプセルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電流I3の軌跡長が上記所定の長さよりも短ければ、第2の酸素ポンプセルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第13の実施形態の変更実施形態について説明する。第11の実施形態の変更実施形態に関する説明を参照すると判るように、第2の酸素ポンプセル内を流れる電流I3に対して基準となる一定の電流値(以下、基準電流値と称す)を定めておき、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図6(A)に示されているように推移し、且つ、第13の実施形態と同様に第1の酸素ポンプセルおよび第2の酸素ポンプセルに電圧を印加している間に、上記基準電流値を時間の関数でプロットしてこれらプロット点を結んで形成される直線(以下、基準線と称す)と上記電流I3の軌跡線とによって囲まれる領域の面積(以下、電流I3の軌跡面積と称す)は、第2の酸素ポンプセルが正常である場合よりも、第2の酸素ポンプセルが故障している場合のほうが狭い。
このように、電流I3の軌跡面積が第2の酸素ポンプセルが正常である場合よりも、第2の酸素ポンプセルが故障している場合のほうが狭い理由は、第8の実施形態に関する説明と第11の実施形態の変更実施形態に関する説明とを参照すれば明らかとなろう。
このように、電流I3の軌跡面積が第2の酸素ポンプセルが正常である場合と第2の酸素ポンプセルが故障している場合とで異なることを利用して、第13の実施形態の変更実施形態では、第13の実施形態と同様の故障診断条件が成立したときに、第13の実施形態と同様に第1の酸素ポンプセルおよび第2の酸素ポンプセルに電圧を印加する。そして、このときに電流I3の軌跡面積を算出し、この電流I3の軌跡面積が所定の面積よりも広ければ、第2の酸素ポンプセルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電流I3の軌跡面積が上記所定の面積よりも狭ければ、第2の酸素ポンプセルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第14の実施形態の故障診断装置について説明する。NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図5(A)に示されているように推移している間に、第1の酸素ポンプセルおよび第2の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加したときに、第2の酸素濃度監視セルに発生する電圧V1を時間の関数でプロットしてこれらプロット点を結んで形成される曲線(以下、電圧V1の軌跡線と称す)の単位時間当たりの長さ(以下、電圧V1の軌跡長と称す)は、第2の酸素濃度監視セルが正常である場合よりも、第2の酸素濃度監視セルが故障している場合のほうが短い。
このように、電圧V1の軌跡長が第2の酸素濃度監視セルが正常である場合よりも、第2の酸素濃度監視セルが故障している場合のほうが短くなる理由は、第9の実施形態に関する説明と第11の実施形態に関する説明とを参照すれば明らかとなろう。
このように、電圧V1の軌跡長が第2の酸素濃度監視セルが正常である場合と第2の酸素濃度監視セルが故障している場合とで異なることを利用して、第14の実施形態の故障診断装置では、第11の実施形態と同様にNOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が所定の変化幅で上昇と下降とを繰り返しているという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルおよび第2の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに、第2の酸素濃度監視セルに発生する電圧V1を検出し、この電圧V1の軌跡長を算出し、この電圧V1の軌跡長が所定の長さよりも長ければ、第2の酸素濃度監視セルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電圧V1の軌跡長が上記所定の長さよりも短ければ、第2の酸素濃度監視セルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第14の実施形態の変更実施形態について説明する。第11の実施形態の変更実施形態に関する説明を参照すると判るように、第2の酸素濃度監視セルに発生する電圧V1に対して基準となる一定の電圧値(以下、基準電圧値と称す)を定めておき、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図6(A)に示されているように推移し、且つ、第14の実施形態と同様に第1の酸素ポンプセルおよび第2の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加している間に、上記基準電圧値を時間の関数でプロットしてこれらプロット点を結んで形成される直線(以下、基準線と称す)と上記電圧V1の軌跡線とによって囲まれる領域の面積(以下、電圧V1の軌跡面積と称す)は、第2の酸素濃度監視セルが正常である場合よりも、第2の酸素濃度監視セルが故障している場合のほうが狭い。
このように、電圧V1の軌跡面積が第2の酸素濃度監視セルが正常である場合よりも、第2の酸素濃度監視セルが故障している場合のほうが狭い理由は、第9の実施形態に関する説明と第11の実施形態の変更実施形態に関する説明とを参照すれば明らかとなろう。
このように、電圧V1の軌跡面積が第2の酸素濃度監視セルが正常である場合と第2の酸素濃度監視セルが故障している場合とで異なることを利用して、第14の実施形態の変更実施形態では、第14の実施形態と同様の故障診断条件が成立したときに、第14の実施形態と同様に第1の酸素ポンプセルおよび第2の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに電圧V1の軌跡面積を算出し、この電圧V1の軌跡面積が所定の面積よりも広ければ、第2の酸素濃度監視セルが正常であり、したがって、NOXセンサ1が正常であると診断し、一方、電圧V1の軌跡面積が上記所定の面積よりも狭ければ、第2の酸素濃度監視セルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第15の実施形態の故障診断装置について説明する。NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図5(A)に示されているように推移しており、且つ、NOXセンサ1に到来する排気ガス中のNOX濃度が一定である間に、第1の酸素ポンプセルおよび第2の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加したときに、酸素濃度検出セル内を流れる電流I1を時間の関数でプロットしてこれらプロットを結んで形成される曲線(以下、電流I1の軌跡線と称す)の単位時間当たりの長さ(以下、電流I1の軌跡長と称す)は、酸素濃度検出セルが正常である場合よりも、酸素濃度検出セルが故障している場合のほうが短い。
このように、電流I1の軌跡長が酸素濃度検出セルが正常である場合よりも、酸素濃度検出セルが故障している場合のほうが短くなる理由は、第10の実施形態に関する説明と第11の実施形態に関する説明とを参照すれば明らかとなろう。
このように、電流I1の軌跡長が酸素濃度検出セルが正常である場合と酸素濃度検出セルが故障している場合とで異なることを利用して、第15の実施形態の故障診断装置では、第11の実施形態と同様にNOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が所定の変化幅で上昇と下降とを繰り返しており且つNOXセンサ1に到来する排気ガス中のNOX濃度が一定であるという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルおよび第2の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに、酸素濃度検出セル内を流れる電流I1を検出し、この電流I1の軌跡長を算出し、この電流I1の軌跡長が所定の長さよりも長ければ、酸素濃度検出セルは正常であり、したがって、NOXセンサ1は正常であると診断し、一方、電流I1の軌跡長が上記所定の長さよりも短ければ、酸素濃度検出セルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。
次に、第15の実施形態の変更実施形態について説明する。第11の実施形態の変更実施形態に関する説明を参照すると判るように、酸素濃度検出セル内を流れる電流I1に対して基準となる一定の電流値(以下、基準電流値と称す)を定めておき、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が図6(A)に示されているように推移し、且つ、NOXセンサ1に到来する排気ガス中のNOX濃度が一定であり、且つ、第15の実施形態と同様に第1の酸素ポンプセルおよび第2の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加している間に、上記基準電流値を時間の関数でプロットしてこれらプロット点を結んで形成される直線(以下、基準線と称す)と上記電流I1の軌跡線とによって囲まれる領域の面積(以下、電流I1の軌跡面積と称す)は、酸素濃度検出セルが正常である場合よりも、酸素濃度検出セルが故障している場合のほうが狭い。
このように、電流I1の軌跡面積が酸素濃度検出セルが正常である場合よりも、酸素濃度検出セルが故障している場合のほうが狭い理由は、第10の実施形態に関する説明と第11の実施形態の変更実施形態に関する説明とを参照すれば明らかとなろう。
このように、電流I1の軌跡面積が酸素濃度検出セルが正常である場合と酸素濃度検出セルが故障している場合とで異なることを利用して、第15の実施形態の変更実施形態では、第15の実施形態と同様の故障診断条件が成立したときに、第15の実施形態と同様に第1の酸素ポンプセルおよび第2の酸素ポンプセルに或る特定の一定電圧を印加する。そして、このときに電流I1の軌跡面積を算出し、この電流I1の軌跡面積が所定の面積よりも広ければ、酸素濃度検出セルが正常であると診断し、一方、電流I1の軌跡面積が上記所定の面積よりも狭ければ、酸素濃度検出セルは故障しており、したがって、NOXセンサ1は故障していると診断する。なお、第11〜第15の実施形態またはその変更実施形態において、排気ガス中の酸素濃度を所定の変化幅で強制的に上昇させたり下降させ、このときに故障診断条件が成立したとしてもよい。
また、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が一定であるときに、第1の酸素ポンプセルに所定の幅で増減する電圧を印加すれば、図5(B)や図6(B)に示されているように、第1の酸素ポンプセルに流れる電流I2や第1の酸素濃度監視セルに発生する電圧V0も増減する。そこで、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が一定であるという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに所定の幅で増減する電圧を印加し、第11あるいは第12の実施形態またはその変更実施形態と同様に、このときの電流I2または電圧V0の上昇率、または、電流I2または電圧V0の軌跡長、または、電流I2または電圧V0の軌跡面積に基づいて、NOXセンサ1の故障を診断することもできる。
また、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が一定であるときに、第1の酸素ポンプセルに所定の幅で増減する電圧を印加し、第2の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加すれば、第2の酸素ポンプセルに流れる電流I3や第2の酸素濃度監視セルに発生する電圧V1も増減する。そこで、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度が一定であるという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに所定の幅で増減する電圧を印加すると共に、第2の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加し、第13あるいは第14の実施形態またはその変更実施形態と同様に、このときの電流I3または電圧V1の上昇率、または、電流I3または電圧V1の軌跡長、または、電流I3または電圧V1の軌跡面積に基づいて、NOXセンサ1の故障を診断することもできる。
さらに、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度およびNOX濃度が一定であるときに、第1の酸素ポンプセルに所定の幅で増減する電圧を印加し、第2の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加すれば、酸素濃度検出セルに流れる電流I1も増減する。そこで、NOXセンサ1に到来する排気ガス中の酸素濃度およびNOX濃度が一定であるという故障診断条件が成立したときに、第1の酸素ポンプセルに所定の幅で増減する電圧を印加すると共に、第2の酸素ポンプセルに一定の電圧を印加し、第15の実施形態またはその変更実施形態と同様に、このときの電流I1の上昇率、または、電流I1の軌跡長、または、電流I1の軌跡面積に基づいて、NOXセンサ1の故障を診断することもできる。また、第11〜第15の実施形態またはその変更実施形態において、軌跡長または軌跡面積の代わりに、軌跡長と軌跡面積との比を用いて、NOXセンサ1の故障を診断してもよい。