JP2006266073A - 木製扉 - Google Patents

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Abstract

【課題】骨組や框組等の補強材を不要としつつ、反りを有効に防止することができる芯材を提供すると共に、扉全体に反りが生じるのを有効に防止することができ、しかも低コスト化を図ることができる木製扉用芯材及び木製扉を提供する。
【解決手段】3枚の木製板(桐板20A、20B、20C)を積層した構造を有し、内側の木製板(桐板20A)の厚さを、外側の木製板(桐板20B、20C)の厚さよりも厚くした芯材10、及びこの芯材を木製扉の芯材として適用した木製扉用芯材、並びにこの木製扉用芯材の両面に表面材を接合した木製扉とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、木製部材等により構成される構造体の芯材、及び住宅等の扉として適用される木製扉用芯材、特に、骨組・框組等の補強材が不要となる芯材又は木製扉用芯材、並びにこのような木製扉用芯材を少なくとも具備した木製扉に関する。
従来から、住宅等の扉として木製扉が使用されている。木製扉は、1枚の天然木材を使用することで高級なイメージを得ることができる反面、コストが高くなってしまう。このため、最近では、複数枚の木製板を積層して芯材とし、この芯材を取り囲むように芯材の骨組みとして設けられた補強材(框枠)を有する木製扉が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような複数枚の木製板からなる芯材を用いた木製扉では、芯材が反ってしまい、結果として扉全体が反ってしまうという問題があった。この扉の反りは、木材内部の水分が暖かい方向から冷たい方向に移動し、これによって冷たい側の木材が膨張することで生じる現象であると考えられている。
なお、従来では、このような扉の反りを防止するために、芯材を取り囲むように補強材が設けられているが、これでも、扉の反りを十分に防止することができていないのが実情である。
また、近年、木製扉に対しては、低コスト化が要求されているが、補強材を用いると、木製扉を構成する部材の点数が多くなり、作製工数も多くなって、結果としてコストが嵩んでしまっているのが実情である。
特開2004−232449号公報
本発明は上述した事情に鑑み、骨組や框組等の補強材を不要としつつ、反りを有効に防止することができる芯材を提供すると共に、扉全体に反りが生じるのを有効に防止することができ、しかも低コスト化を図ることができる木製扉用芯材及び木製扉を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、3枚の木製板を積層した構造を有し、内側の木製板の厚さが、外側の木製板の厚さよりも厚いことを特徴とする芯材にある。
本発明の第2の態様は、扉形状を有する3枚の木製板を積層した構造を有し、内側の木製板の厚さが、外側の木製板の厚さよりも厚いことを特徴とする木製扉用芯材にある。
本発明の第3の態様は、扉形状を有する3枚の木製板を積層した構造を有し、反り止めのために、内側の木製板の厚さを外側の木製板の厚さよりも厚くしたことを特徴とする木製扉用芯材にある。
本発明の第4の態様は、第2又は3の態様において、前記内側の木製板の厚さが、前記外側の木製板の厚さの1.5倍以上であることを特徴とする木製扉用芯材にある。
本発明の第5の態様は、第2又は3の態様において、前記内側の木製板の厚さが、前記外側の木製板の厚さの2.0倍以上であることを特徴とする木製扉用芯材にある。
本発明の第6の態様は、第2〜5の何れかの態様において、木目を交差させて前記3枚の木製板を積層した3層クロス張り構造を有することを特徴とする木製扉用芯材にある。
本発明の第7の態様は、第6の態様において、前記内側の木製板の木目方向が横目方向であると共に前記外側の木製板の木目方向が前記内側の木製板の木目方向と直交する縦目方向であることを特徴とする木製扉用芯材にある。
本発明の第8の態様は、第2〜7の何れかの態様において、前記内側の木製板と前記外側の木製板との間に防水シートが設けられていることを特徴とする木製扉用芯材にある。
本発明の第9の態様は、第2〜8の何れかの態様において、少なくとも前記内側の木製板が、桐板であることを特徴とする木製扉用芯材にある。
本発明の第10の態様は、第2〜9の何れかの態様において、蝶番が取り付けられるアンカー部材が端部に固定されていることを特徴とする木製扉用芯材にある。
本発明の第11の態様は、第10の態様において、前記アンカー部材の外周面には複数の突起部が設けられていることを特徴とする木製扉用芯材にある。
本発明の第12の態様は、第2〜11の何れかの態様に記載の木製扉用芯材の両面に表面材を接合したものであることを特徴とする木製扉にある。
本発明の第13の態様は、第12の態様において、前記木製扉用芯材の少なくとも片面には、前記表面材が防水シートを介して接合されていることを特徴とする木製扉にある。
本発明の第14の態様は、第12又は13の態様において、蝶番が取り付けられるアンカー部材が前記木製扉用芯材の端部に固定され、前記蝶番が前記アンカー部材を介して前記木製扉用芯材の端部に直接取り付けられていることを特徴とする木製扉にある。
本発明の第15の態様は、第14の態様において、前記蝶番が前記アンカー部材にねじ結合されていることを特徴とする木製扉にある。
本発明の第16の態様は、第12〜15の何れかの態様において、前記木製扉用芯材を構成する3枚の木製板として桐板を用いた木製防火扉であることを特徴とする木製扉にある。
本発明の第17の態様は、扉形状を有する3枚の木製板を積層した構造を有し、内側の木製板の厚さを外側の木製板の厚さよりも厚くして、扉内部の骨組、又は反り止めのための框組を不要とした木製扉用芯材にある。
本発明の第18の態様は、扉形状を有する3枚の木製板の木目を交差させて当該3枚の木製板を積層した3層クロス張り構造を有し、内側の木製板の厚さを外側の木製板の厚さよりも厚くしたことを特徴とする木製扉用芯材にある。
本発明の第19の態様は、扉形状を有する3枚の桐板の木目を交差させて当該3枚の桐板を積層した3層クロス張り構造を有し、内側の桐板の厚さを外側の桐板の厚さよりも厚くしたことを特徴とする木製扉用芯材にある。
本発明の第20の態様は、請求項17〜19の何れかに記載の木製扉用芯材の両面に表面材を接合したものであることを特徴とする木製扉にある。
本発明の芯材は、3枚の木製板により芯材を構成すると共に、内側の木製板の厚さを外側の木製板の厚さよりも大きくすることにより、芯材に骨組や框組等の補強材を設けなくても、芯材の表側と裏側との温度差が大きい環境下において、芯材に反りが生じるのを有効に防止することができる。そして、このような本発明の芯材を、例えば、木製部材等により構成される構造体の芯材として用いることで、構造体の形状安定性を高めることができるという効果を奏する。
また、本発明の木製扉用芯材は、上記芯材を木製扉の芯材として適用することにより、上述した芯材と同様に反りを防止でき、このような木製扉用芯材を用いて作製した本発明の木製扉においても、扉の表側と裏側との温度差が大きい環境下において、木製扉用芯材の反りを有効に防止できるため、扉の形状安定性を高めることができるという効果を奏する。
そして、本発明の芯材、木製扉用芯材、及び木製扉においては、芯材の補強材が不要となって部品点数を低減することができ、低コスト化を図ることができるという効果も奏する。
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の芯材は、骨組や框組等の補強材を不要とした構造を有し、具体的には、3枚の木製板を積層した構造を有し、内側の木製板の厚さを、外側の木製板の厚さよりも厚くした点に特徴がある。これにより、芯材に反りが生じるのを有効に防止(抑制)することができる。特に、本発明の芯材を木製扉用芯材として木製扉の構造に適用することにより、木製扉の反りを有効に防止することができる。但し、本発明は、木製扉用芯材に限定されず、芯材を必要とする構造体に適用することで、その構造体の形状安定性を高めることができる。なお、ここで、構造体としては、例えば、テーブルの天板や棚等の家具類、又は床材や壁材等の建材等、或いは車や船等の乗り物の内張りやインテリア等を含むものが挙げられ、これらの芯材に本発明の芯材を適用することが可能である。
ここで、内側の木製板の厚さは、好ましくは外側の木製板の厚さの1.5倍以上とするのがよく、さらに好ましくは2.0倍以上とするのがよい。これにより、芯材に反りが生じるのを効果的に防止することができる。
また、芯材としては、好ましくは、奇数枚、例えば、3枚の木製板を重ね合わせて構成される積層板であるのがよく、さらに好ましくは、木製板の木目を交差させて3枚の木製板を積層した3層クロス張り(変則クロス張り)の積層板であるのがよい。これにより、芯材に反りが生じるのをより効果的に防止することができる。
このような芯材を構成する木製板は、1枚板でもよいし、集成板でもよい。また、木製板としては、例えば、桐、杉、椋等の板材が挙げられるが、これらの中でも、木材の比重が0.3以下のもの、具体的には、桐材からなる桐板であるのが特に好ましい。桐材は、他の木材と比べて反り難く、しかも軽量だからである。したがって、本発明においては、芯材として、桐板を積層して構成される桐芯材であるのが好ましく、さらに好ましくは、3枚の桐板を積層した3層クロス張り、特に、3枚の桐板の中で内側の桐板の木目方向を横目方向とし、外側の桐板の木目方向を縦目方向とした3層クロス張り(桐3プライ変則クロス張り)の桐芯材であるのがよい。これにより、桐芯材に反りが生じるのをより効果的に防止することができる。勿論本発明はこれに限定されず、内側の木製板を桐板とし、その外側の木製板を桐板以外の木材からなる板としてもよい。
以上説明したように、本発明では、3枚の木製板を積層して芯材とすると共に、内側の木製板の厚さを外側の木製板の厚さよりも大きくしたので、芯材に骨組や框組等の補強材を設けなくても、芯材の表側と裏側との温度差が大きい環境下において、芯材に反りが生じるのを有効に防止することができる。
また、本発明では、上述した芯材を木製扉用芯材として適用した木製扉とすることで、扉に反りが生じるのを有効に防止することができる。そして、木製扉用芯材を桐芯材とすることで、例えば、桐以外の木材や、集成材、L.V.L合板等を用いた場合と比較して、扉としての優れた耐火性能が得られる。このため、本発明の桐芯材を有する木製扉は、木製防火扉として用いることができる。
さらに、本発明では、木製扉を作製する際には、補強材が不要となるため、3枚の木製板で構成され且つ内側の木製板の厚さを外側の木製板よりも厚くした木製扉用芯材によって木製扉を効率よく製造することができる。このようにして製造された木製扉は、木製扉用芯材の反りが有効に防止されるため、扉自体の反りも有効に防止することができる。また、扉構成部材の数が少なくなり、木製扉を低コストで実現することができる。
例えば、本発明によれば、補強材が不要となるので、上述した芯材又は木製扉用芯材、或いは木製扉の製造コストを、補強材を有する従来の芯材又は従来の木製扉の製造コストの3分の1に削減することができる。
また、従来の製造ラインをそのまま使用することができるため、設備投資が不要となるという効果もある。なお、新規に製造ラインを導入する際には、補強材を設けるための設備が不要となるため、初期投資を大幅に低減することができる。
さらに、木製扉用芯材の両面又は片面に表面材を接合して木製扉としてもよい。この場合、表面材としては、特に限定されないが、例えば、木材をそのまま使用した無垢材でもよいが、合板としてもよい。これにより、低コストで無垢扉を作製することができ、質感を向上すると共に、見栄えを良くし、製品価値を高めることができる。
また、本発明では、この表面材と木製扉用芯材との間に防水シートを設けた木製扉としてもよい。これにより、木製扉用芯材の内部に存在する水分が外部に発散(移動)するのを防水シートによって遮断し、木製扉用芯材の内部の水分の移動を木製扉用芯材だけで留め、外側の表面材に移動させないようにすることで、扉に反りが生じるのを更に効果的に防止することができる。
ここで、防水シートとしては、例えば、樹脂シート、紙や布に樹脂や撥水塗料をコーティングしたシート、具体的には、VSシート、VRシート等を挙げることができる。また、樹脂シートに紙を積層したものを用いてもよい。樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ナイロン等を挙げることができる。なお、防水シートは、透湿度として、20(g/m・24hours)以下、好ましくは、10(g/m・24hours)以下のものを用いることが好ましい。この防水シートの厚さについては、例えば、木製扉用芯材の反りを有効に防止できる程度の厚さであればよく、具体的には、30μm以上の厚さであるのが好ましい。また、防水シートは、接着剤を介して接着してもよいし、例えば、木製扉用芯材と表面材との間に介在させた状態でのプレス圧力によって接着してもよい。
なお、このような防止シートは、少なくとも木製扉用芯材と表面材との間に設ければよいが、勿論これに限定されず、木製扉用芯材を構成する木製板の間、具体的には、内側の木製板と外側の木製板との間に設けるようにしてもよい。これにより、木製扉用芯材の内部から外部への水分移動をより効果的に防止することができ、扉に反りが生じるのをより確実に防止することができる。
但し、本発明の芯材又は木製扉用芯材は、上述したように、3枚の木製板を積層して芯材とすると共に、内側の木製板の厚さを外側の木製板の厚さよりも大きくすることで、防水シートを用いなくても、芯材又は木製扉用芯材、或いは木製扉の反りを十分に防止することができることは言うまでもない。
また、このように、扉全体に反りが生じるのを防止することができるため、本発明の木製扉では、木製扉用芯材の反り防止のための補強材が不要となる。すなわち、芯材を取り囲むように補強材を設けなくても、扉全体に反りが生じるのを有効に防止することができる。
さらに、本発明では、補強材不要の芯材によって木製扉を構成することで、補強材を有する芯材によって構成される従来の木製扉と比べて、音波によって生じる芯材の振動が低減され、面方向への優れた遮音性能を得ることができる。
また、桐板は、熱伝導率が他の木材と比べて大幅に低く、このような桐板を主体とする桐芯材を用いて木製扉を構成することで、桐板以外の木材からなる木製板で構成される芯材と比べて、優れた断熱性能を得ることができる。
なお、格子状に組まれた角材により構成される芯材と、この芯材の両面に接合される化粧板とからなる従来の木製扉(框扉;フラッシュドア)は、扉内部に数多くの空間が存在しており、これら各空間を介して熱や振動(音波)が通過するため、遮音性能及び断熱性能が低い。また、このような扉内部の空間に、グラスウール、ロックウール、ペーパーコアー等が充填されているものもある。これに対し、本発明の木製扉は、何れにしても、框扉や骨組を有する扉等と比べて扉内部に空間や隙間等が存在しないため、優れた遮音性能及び断熱性能を得ることができる。
また、本発明者は、桐材が本来持つ復元力が他の木材と比べて非常に強い点に着目し、このような特異な性質を有する桐板を用いて上述した構造の桐芯材とし、反り防止のための補強材を用いることなくこの桐芯材の端面にアンカー部材を直接固定し、さらに、このアンカー部材を介して蝶番を装着するようにした。このように本発明の桐芯材を用いて木製扉を構成することで、扉の部品点数を少なくすることができ、コストを大幅に低減することができる。また、蝶番がアンカー部材によって取り付けられているので、桐芯材と蝶番との十分な結合力を長期に亘って確保することができる。
ここで、本発明において、蝶番を取り付けるのに用いるアンカー部材としては、例えば、ねじ部を有し、皿ねじによりアンカー部材に蝶番を取り付ける。また、本発明では、アンカー部材の外周面に、複数の突起部を設けるようにするのが好ましい。これは、このような複数の突起部を外周面に有するアンカー部材(鬼目ナット付アンカー部材)を桐芯材の端面に固定する際、複数の突起部が桐芯材に食い込み、その後の桐材の高い復元力によってアンカー部材が桐芯材に締め付けられ、アンカー部材と桐芯材との結合力が高められるからである。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1に係る芯材を示す要部拡大断面図である。図示するように、本実施例の芯材10は、3枚の桐板20A、20B、20Cを積層した積層板、具体的には、木目を交差させた状態で桐板20A、20B、20Cを積層した3層クロス張りの桐芯材からなる。なお、本実施例では、内側の桐板20Aの木目方向を横目方向とし、外側の桐板20B、20Cの木目方向をそれぞれ縦目方向とした。
そして、本発明では、このような内側の桐板20Aの厚さWを、外側の桐板20B、20Cの厚さWよりも厚くなるようにした。具体的には、本実施例の芯材10では、内側の桐板20Aの厚さWを約14mmとし、外側の桐板20B、20Cの厚さWのそれぞれを約8mmとした。すなわち、内側の桐板20Aの厚さWを、外側の桐板20B、20Cの厚さWの約1.75倍とした。
[試験例1]
ここで、上述した桐芯材である芯材10を2つ用意して、一方の芯材10を試験体Aとし、他方の芯材10を試験体Bとし、以下に説明する条件で、これら試験体A及びBの形状安定性に関する試験を実施した。図2は、試験体A及びBの形状安定性に関する試験での設置状況を示す図である。
試験体Aについては、図2(a)に示すように、枠体1の開口部2に芯材10を嵌合させて端面を固定ビス3によって3箇所固定した後、試験体Aの表面側の対角線状に対向する一対の角部に1本の第1計測糸4を固定し、裏面側にはこの第1計測糸4に交差する対角線状に対向する一対の角部に1本の第2計測糸5を固定した。一方、試験体Bについては、図2(b)に示すように、十数年額縁として用いられて反ったことがない天然木からなる枠体6の切欠き部に、試験体Bを載置し、これを天然木集成材からなる台座7の上に載置した。
そして、まず、試験体A及びBを氷点下7℃、湿度70〜80%の環境下に6時間放置(試験環境a)した後、室温25℃、湿度20%の室内にて、試験体A及びBの表面にハロゲン照射機によって70℃の温風を当てながら、試験体A及びBを2時間加熱した(試験環境b)。次に、氷点下8℃、外気湿度80%の室外に2時間放置(試験環境c)した後、室温25℃、湿度20%の室内にて、ハロゲン照射機によって70℃の温風を当てながら2時間加熱した(試験環境d)。次いで、室温24℃、湿度20%の室内に10時間放置した(試験環境e)。最後に、試験体A及びBをガラス越しに直射日光が照射される環境下に移動し、その直射日光で試験体A及びBの表面温度が50〜60℃となるようにし、室温24〜26℃、湿度20%の環境下で、48時間放置した(試験環境f)。
また、試験体A及びBとの比較のため、内側の桐材の厚さを外側の桐材の厚さと同等とした以外は上述した試験体A及びBに用いたものと同様の芯材を用意し、これを試験体Cとして、この試験体Cを上述の試験環境a〜fに曝す試験を実施した。
以上の試験終了後、試験体Aの反り、ねじれ、寸法について第1及び第2測定糸を基準としてそれぞれ計測したところ、試験前の状態から全く変化していないことが分かった。また、試験体Bについては、枠体6の端面を計測点として、試験体Bの反り、ねじれ、寸法について計測したところ、試験前の状態から全く変化していないことが分かった。これに対し、試験体Cは、試験環境aの開始から約3時間で大きく反ってしまった。また、試験体Bの台座(天然木集成材)は、試験環境dの時点で、大きく反ってしまい、安定性が保てない状況になっていた。
次に、上記試験環境a〜fに曝した試験体A及びBをそのままの状態で、氷点下15℃、湿度70%の外部日射が無い環境下に移動して2時間放置した後、直射日光を浴びせることにより、試験体A及びBの表面温度を60℃となるようにし、裏面(日陰側の面)温度を氷点下5℃とし、この環境下に3時間放置した(試験環境g)。
その後、湿度80%、気温2℃〜氷点下15℃、日射時の試験体A及びBの表面温度が50℃となる環境の室外にて、暴露試験を2日間行った(試験環境h)。
最後に、室温25℃、湿度25%の室内にて、試験体A及びBの表面にハロゲン照射機によって70℃の温風を当てて、試験体A及びBを3〜4時間加熱した(試験環境i)。
上記の試験環境g、試験環境h、試験環境iにそれぞれ曝した後に、試験体Aの反り、ねじれ、寸法について第1及び第2測定糸を基準としてそれぞれ計測した。試験体Bについては、枠体6の端面を計測点として、試験体Bの反り、ねじれ、寸法について計測した。そして、何れの状態においても、試験体A及びBの状態は、試験前の状態から全く変化していないことが分かった。
以上のことから、本実施例の芯材10は、非常に過酷な温度変化が生じるような環境に曝されたとしても、反り、ねじれ、寸法変化等が生じるのを長期に亘って有効に防止することができる。したがって、本実施例の芯材10によれば、室内用の扉に適用した場合、又は、極寒、猛暑等の地域にて一方面が外気に曝される外部用扉の芯材として適用した場合において、優れた形状安定性を発揮する木製扉を実現することができる。
[試験例2]
以下の過酷な条件下で、上述した試験体Bの形状安定性に関する試験を更に実施した。具体的には、試験体Bを氷点下7℃、湿度70〜80%の外気中に8時間放置した後、その試験体Bを冷たい床に寝かせ、試験体Bの床面とは反対の表面側の湿度を20%とし、試験体Bの表面にハロゲン照射機によって70℃の温風を当てて、その試験体Bを2時間加熱した。
この試験終了後、試験体Bの反り、ねじれ、寸法変化を測定したところ、試験体Bの端部が床面から約3mm、試験体Bの表面と第1測定糸との間の最大距離が約3mmであり、このことから、このような過酷な条件下でも試験体Bの反りは非常に小さく抑えられることが分かった。
また、上記の試験終了後、試験体Bを室内に移動し、温度25℃、湿度20%の環境下に1時間放置したところ、試験開始前の状態に復元した。このように、試験体Bである本実施例の芯材10は、過酷な条件下において僅か数ミリ程度の反りが生じたとしても、比較的短時間で復元することから、非常に優れた形状安定性を有することが明らかとなった。
[試験例3]
以下の過酷な条件下で、上述した試験体Bの形状安定性に関する試験を更に実施した。具体的には、試験体Bを雪の上に寝かせ、雪中温度氷点下8℃で、直射日光を浴びせることにより試験体Bの表面温度を60℃となるようにし、表裏の温度差を68℃とした環境下で、試験体Bを3時間放置した。そして、試験体Bの反りを測定したところ、試験体Bは全く反っていなかった。
その後、試験体Bを室内に移動し、温度25℃、湿度20%にて、試験体Bの表面にハロゲン照射機によって70℃の温風を当てて、その試験体Bを2時間加熱した。
この試験終了後、試験体Bの反り、ねじれ、寸法変化を測定したところ、試験体Bの端部が床面から約6mm、試験体Bの表面と第1測定糸との間の最大距離が約6mmであり、このことから、このような過酷な条件下でも試験体Bの反りは非常に小さく抑えられることが分かった。
また、上記の試験終了後、試験体Bを室内に移動し、温度25℃、湿度20%の環境下に80分間放置したところ、試験開始前の状態に復元した。このように、試験体Bである本実施例の芯材10は、過酷な条件下において僅か数ミリ程度の反りが生じたとしても、比較的短時間で復元することから、上述した試験例2と同様に、非常に優れた形状安定性を有することが明らかとなった。
(実施例2)
図3は、本発明の実施例2に係る木製扉の要部拡大断面図である。図示するように、本実施例の木製扉100は、上述した実施例1の芯材10の両面に、厚さ5mm程度の桐板からなる化粧板30を接合したものである。このような構成の木製扉100によれば、内側の桐板20Aの厚さが外側の桐板20B、20Cの厚さより大きくなっているので、扉全体に反りが生じるのを有効に防止することができる。
(実施例3)
図4は、本発明の実施例3に係る木製扉の要部拡大断面図である。図示するように、本実施例の木製扉100Aは、芯材10と化粧板30との間に防水シート40を設けた以外は上述した実施例2と同様の構成を有する。なお、防水シート40としては、透湿度が7〜10(g/m・24hours)、厚さが40μmの防水シート((株)トッパン・コスモ製;VSシート)を用いた。なお、透湿度は、JIS Z 0208カップ法(40℃90%RH)に準拠して測定した。
このように芯材10と化粧板30との間に防水シート40を設けることで、芯材10の内部の水分が外部、すなわち、化粧板30に移動するのを防水シート40によって遮断することができる。これにより、木製扉100Aに反りが生じるのを更に効果的に防止することができる。
(実施例4)
図5は、本発明の芯材を用いた木製扉の概略を示す斜視図であり、図6は、図5に示す木製扉の要部拡大断面図である。図示するように、本実施例の木製扉100Bは、上述した実施例2の木製扉100の端面に化粧板30をさらに接合し、芯材10の端面にアンカー部材50を介して蝶番60を取り付けたものである。
具体的には、内側の桐板20Aには、芯材10の端面に蝶番60を装着するためのアンカー部材50が固定され、アンカー部材50にはねじ穴(9φ、50mm)51が形成されている。なお、このようなアンカー部材50の全長や外径等の寸法については、例えば、扉重量又は、蝶番60及び芯材10の寸法等に応じて適宜調整すればよい。蝶番60の羽根板61には、複数の貫通孔62が設けられ、蝶番60は、貫通孔62を介して、木ビス70が芯材10に打ち込まれている。そして、皿ビス80がアンカー部材50のねじ穴51にねじ込まれることで、芯材10の端面に蝶番60が直接装着されるようになっている。本実施例では、羽根板61に貫通孔62を3つ並設し、両側の貫通孔62を木ビス70用とし、中央の貫通孔62を皿ビス80用とした。勿論、木ビス70及び皿ビス80の位置については、これに限定されず、例えば、羽根板の四隅に木ビス用の貫通孔を設け、羽根板の略中央部に皿ビス用の貫通孔を設けた木製扉としてもよい。これにより、蝶番が芯材に対してより強固に固定された木製扉を実現することができる。
このように、本実施例では、アンカー部材50によって蝶番60を固定するようにしたので、芯材10の反りを矯正したり、蝶番60を固定するための芯材の骨組みとなる補強材(框枠)が不要となり、部品点数を低減することでコストを大幅に低減することができる。また、蝶番60がアンカー部材50によって装着されているので、芯材10と蝶番60との十分な結合力を長期に亘って確保することができる。
また、本実施例のアンカー部材50は、その外周面に複数の突起部52が設けられている。これにより、複数の突起部52の芯材10への食い込みと、その後の桐板20Aの復元力とが作用して、アンカー部材50を芯材10の端面に強固に固定することができる。すなわち、蝶番60と芯材10との十分な接合力を長期に亘って確保することができる。
なお、本実施例のように、アンカー部材50を内側の桐板20Aに固定する場合には、外側の桐板20B、20Cの代わりに、桐材以外の木材からなる木製板を用いてもよい。
本発明の実施例1に係る芯材の要部拡大断面図である。 試験体A及びBの耐久試験における設置状況を示す図である。 本発明の実施例2に係る木製扉の要部拡大断面図である。 本発明の実施例3に係る木製扉の要部拡大断面図である。 本発明の実施例4に係る木製扉の概略を示す斜視図である。 本発明の実施例4に係る木製扉の要部拡大断面図である。
符号の説明
10 芯材
20A 内側の桐板
20B、20C 外側の桐板
30 化粧板
40 防水シート
50 アンカー部材
60 蝶番
70 木ビス
80 皿ビス


本発明は、例えば、桐材により構成される住宅等の扉として適用される木製扉用芯材を用いて且つ骨組・框組等の補強材不要とした木製扉に関する。
本発明は上述した事情に鑑み、骨組や框組等の補強材を不要としつつ、反りを有効に防止することができる芯材を提供すると共に、扉全体に反りが生じるのを有効に防止することができ、しかも低コスト化を図ることができる木製扉を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、3枚の桐板を積層した構造を有すると共に扉形状を有し且つ内側の桐板の厚さが外側の桐板の厚さよりも厚い木製扉用芯材を用い、当該木製扉用芯材の表面に表面材を接合し且つ框組を介さずに前記木製扉用芯材に蝶番を取り付けたことを特徴とする木製扉にある。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の木製扉において、前記木製扉用芯材が、3枚の桐板の木目を交差させて積層した3層クロス張り構造を有することを特徴とする木製扉にある
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の木製扉において、前記内側の桐板の木目方向が横目方向であると共に前記外側の桐板の木目方向が前記内側の桐板の木目方向と直交する縦目方向であることを特徴とする木製扉にある。
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様に記載の木製扉において、前記内側の木製板の厚さが、前記外側の木製板の厚さの1.5倍以上であることを特徴とする木製扉にある。
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様に記載の木製扉において、前記内側の木製板の厚さが、前記外側の木製板の厚さの2.0倍以上であることを特徴とする木製扉にある。
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様に記載の木製扉において、前記蝶番が前記木製扉用芯材の端部に取り付けられたアンカー部材に固定されていることを特徴とする木製扉にある。
本発明は、3枚の桐板により芯材を構成すると共に、内側の木製板の厚さを外側の木製板の厚さよりも大きくすることにより、芯材に骨組や框組等の補強材を設けなくても、芯材の表側と裏側との温度差が大きい環境下において、芯材に反りが生じるのを有効に防止することができる。そして、このような芯材を木製扉の芯材として適用することにより、上述した芯材と同様に反りを防止でき、このような木製扉用芯材を用いて作製した本発明の木製扉においても、扉の表側と裏側との温度差が大きい環境下において、木製扉用芯材の反りを有効に防止できるため、扉の形状安定性を高めることができるという効果を奏する。
そして、本発明の木製扉においては、芯材の補強材が不要となって部品点数を低減することができ、低コスト化を図ることができるという効果も奏する。

上記課題を解決する本発明の第1の態様は、3枚の桐板を積層した構造を有すると共に扉形状を有し且つ内側の桐板の厚さが外側の桐板の厚さよりも厚い木製扉用芯材を用い、前記木製扉用芯材が3枚の桐板の木目を交差させて積層した3層クロス張り構造を有すると共に前記内側の桐板の木目方向が横目方向であると共に前記外側の桐板の木目方向が前記内側の桐板の木目方向と直交する縦目方向であり、当該木製扉用芯材の表面に表面材を接合し且つ框組を介さずに前記木製扉用芯材に蝶番を取り付けたことを特徴とする木製扉にある。
本発明の第の態様は、第の態様に記載の木製扉において、前記内側の木製板の厚さが、前記外側の木製板の厚さの1.5倍以上であることを特徴とする木製扉にある。
本発明の第の態様は、第1又は2の態様に記載の木製扉において、前記内側の木製板の厚さが、前記外側の木製板の厚さの2.0倍以上であることを特徴とする木製扉にある。
本発明の第の態様は、第1〜3の何れかの態様に記載の木製扉において、前記蝶番が前記木製扉用芯材の端部に取り付けられたアンカー部材に固定されていることを特徴とする木製扉にある。
本発明は、3枚の桐板により芯材を構成すると共に、内側の木製板の厚さを外側の木製板の厚さよりも大きくし3枚の桐板の木目を交差させて積層した3層クロス張り構造を有すると共に内側の桐板の木目方向が横目方向であると共に外側の桐板の木目方向が内側の桐板の木目方向と直交する縦目方向とすることにより、芯材に骨組や框組等の補強材を設けなくても、芯材の表側と裏側との温度差が大きい環境下において、芯材に反りが生じるのを有効に防止することができる。そして、このような芯材を木製扉の芯材として適用することにより、上述した芯材と同様に反りを防止でき、このような木製扉用芯材を用いて作製した本発明の木製扉においても、扉の表側と裏側との温度差が大きい環境下において、木製扉用芯材の反りを有効に防止できるため、扉の形状安定性を高めることができるという効果を奏する。

Claims (20)

  1. 3枚の木製板を積層した構造を有し、内側の木製板の厚さが、外側の木製板の厚さよりも厚いことを特徴とする芯材。
  2. 扉形状を有する3枚の木製板を積層した構造を有し、内側の木製板の厚さが、外側の木製板の厚さよりも厚いことを特徴とする木製扉用芯材。
  3. 扉形状を有する3枚の木製板を積層した構造を有し、反り止めのために、内側の木製板の厚さを外側の木製板の厚さよりも厚くしたことを特徴とする木製扉用芯材。
  4. 請求項2又は3において、前記内側の木製板の厚さが、前記外側の木製板の厚さの1.5倍以上であることを特徴とする木製扉用芯材。
  5. 請求項2又は3において、前記内側の木製板の厚さが、前記外側の木製板の厚さの2.0倍以上であることを特徴とする木製扉用芯材。
  6. 請求項2〜5の何れかにおいて、木目を交差させて前記3枚の木製板を積層した3層クロス張り構造を有することを特徴とする木製扉用芯材。
  7. 請求項6において、前記内側の木製板の木目方向が横目方向であると共に前記外側の木製板の木目方向が前記内側の木製板の木目方向と直交する縦目方向であることを特徴とする木製扉用芯材。
  8. 請求項2〜7の何れかにおいて、前記内側の木製板と前記外側の木製板との間に防水シートが設けられていることを特徴とする木製扉用芯材。
  9. 請求項2〜8の何れかにおいて、少なくとも前記内側の木製板が、桐板であることを特徴とする木製扉用芯材。
  10. 請求項2〜9の何れかにおいて、蝶番が取り付けられるアンカー部材が端部に固定されていることを特徴とする木製扉用芯材。
  11. 請求項10において、前記アンカー部材の外周面には複数の突起部が設けられていることを特徴とする木製扉用芯材。
  12. 請求項2〜11の何れかに記載の木製扉用芯材の両面に表面材を接合したものであることを特徴とする木製扉。
  13. 請求項12において、前記木製扉用芯材の少なくとも片面には、前記表面材が防水シートを介して接合されていることを特徴とする木製扉。
  14. 請求項12又は13において、蝶番が取り付けられるアンカー部材が前記木製扉用芯材の端部に固定され、前記蝶番が前記アンカー部材を介して前記木製扉用芯材の端部に直接取り付けられていることを特徴とする木製扉。
  15. 請求項14において、前記蝶番が前記アンカー部材にねじ結合されていることを特徴とする木製扉。
  16. 請求項12〜15の何れかにおいて、前記木製扉用芯材を構成する3枚の木製板として桐板を用いた木製防火扉であることを特徴とする木製扉。
  17. 扉形状を有する3枚の木製板を積層した構造を有し、内側の木製板の厚さを外側の木製板の厚さよりも厚くして、扉内部の骨組、又は反り止めのための框組を不要とした木製扉用芯材。
  18. 扉形状を有する3枚の木製板の木目を交差させて当該3枚の木製板を積層した3層クロス張り構造を有し、内側の木製板の厚さを外側の木製板の厚さよりも厚くしたことを特徴とする木製扉用芯材。
  19. 扉形状を有する3枚の桐板の木目を交差させて当該3枚の桐板を積層した3層クロス張り構造を有し、内側の桐板の厚さを外側の桐板の厚さよりも厚くしたことを特徴とする木製扉用芯材。
  20. 請求項17〜19の何れかに記載の木製扉用芯材の両面に表面材を接合したものであることを特徴とする木製扉。
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