JP2006264933A - 静電吸着方法、静電吸着機構、及び、液滴吐出装置 - Google Patents

静電吸着方法、静電吸着機構、及び、液滴吐出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 記録媒体に作用する静電吸着力を充分に安定させた静電吸着方法、静電吸着機構、及び、液滴吐出装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 電荷キャリアとなる液体に電荷を誘起させ、この液体を記録媒体Pに塗布して搬送ベルト4に静電吸着させる。これにより、静電吸着させる際の電荷量は、記録媒体Pの電気的性質の影響を受けることがない。
【選択図】 図2

Description

本発明は、記録媒体を静電吸着させる静電吸着方法、静電吸着機構、及び、液滴吐出装置に関する。
静電吸着用の搬送部材(ベルト・ドラム)を用いた記録装置では、記録媒体を搬送部材で搬送する際、絶縁性又は抵抗性の材料で構成された搬送部材表面を予め帯電させておき記録媒体を密着させ、ロール・ブレード・ブラシ等を記録用紙側に接触させて吸着させる方式が知られている(例えば特許文献1参照)。この方式では、予め帯電させる機構と記録媒体を密着させる為の機構が別々であり装置構成の複雑さを招いている。
一方、静電吸着用の搬送部材(ベルト・ドラム)上に記録媒体を密着させ、電圧を印加したロール・ブレード・ブラシ等を記録用紙側に接触させて吸着させる方式が知られている。
この方式における吸引力は、記録装置に設けられた電圧印加手段によって発生している。すなわち、搬送部材と記録媒体とを積層した状態で電圧を印加することによって、記録媒体に接触しない搬送部材面(搬送部材背面)と搬送部材に接触しない記録媒体面(記録媒体表面)とにそれぞれ電荷が供給される。そして、電圧印加手段が非接触状態になった後でも、この電荷によって搬送部材と記録媒体との積層構造の内部に電界が生じており、この電界による静電力が吸引力(静電吸着力)となっている。
かかる静電力を確実に作用させる為には、電圧印加時に搬送部材と記録媒体との積層構造への電荷供給を確実にする事が重要であり、搬送部材背面の一部を低抵抗層又は導電層として電位を一定化することが図られている。他方、記録媒体表面側については、電圧印加されるロール・ブレード・ブラシ等の抵抗率や形状・弾性率等の最適な設計で電荷供給の安定化を図る事が考えられる。以下、添付図面を参照し、従来技術について例を挙げて説明する。
従来の記録装置には、記録媒体に記録を行う記録部が設けられている。
記録装置がインクジェット記録装置である場合には、記録部としてインクジェット記録ヘッドが設けられている。そして、インクジェット記録ヘッドは、印字幅に亘り、搬送部材によって搬送されてきた記録媒体にインク噴射によって画像を形成する。なお、記録装置が電子写真記録である場合には、感光体上に形成された静電潜像がトナーで現像され、図示しない転写器によって記録媒体に転写される。
記録媒体の表面が絶縁性でかつ平滑な場合(例えば透明Filmや高抵抗性樹脂がコートされた平滑な用紙)には、図19に示すように、記録媒体P及び搬送部材108の積層構成体110と電極(帯電ロール)116とが近接する上流域Z1や、電極116と積層構成体110とが離間する下流域Z2で、空隙の絶縁破壊によって電離気体が発生する。そして、この電離気体が記録媒体P上に付着して、記録媒体Pと搬送部材下面との間の静電力によって吸引力が発生する。印加電圧をVとし、記録媒体P及び搬送部材108の誘電率をそれぞれε1、ε2とし、記録媒体P及び搬送部材108の厚みをそれぞれd1、d2とすると、表面電荷密度Qは
Q=(V-Vt)/(d1/ε1+d2/ε2)
で与えられる。ここで、Vtは空隙の絶縁破壊を発生させる閾値である。実際には空気の湿度や気圧のみならず電極116や記録媒体Pの表面特性にも依存し、通常500〜1000V程度の範囲内でばらつきを示す。
一方、記録媒体Pが普通紙などの抵抗性で平滑ではない場合には、図20に示すように、電極116の直下で記録媒体Pへの電荷の注入が生じ、電荷は記録媒体Pと搬送部材108との界面にまで移動する。注入電荷密度Q'は
Q'=V・ε2/d2
で与えられる。
P2897960号公報
しかしながら、記録媒体の表面粗さ・空孔率等の機械的特性、体積抵抗率・表面抵抗等の電気的性質は基材やコーティングの有無などで大きく変化する。また更には、記録媒体が紙を基材にする記録用紙である場合には、記録用紙の水分含水量などでも電気的特性は大きく変化する。このため、従来提案されていた方法では、電荷供給を充分に安定させること、すなわち静電吸引力を充分に安定させることは難しい。また、少しでも安定させるために高い電圧を印加する構成にしており、このことは装置の高価格化を招いている。
なお、この問題は、インクジェット記録装置に限らず、記録媒体に電荷供給して搬送部材に吸着させる吸着搬送機構を備えた装置で一般的に生じていた。
本発明は、上記事実を考慮して、記録媒体に作用する静電吸着力を充分に安定させた静電吸着方法、静電吸着機構、及び、液滴吐出装置を提供することを課題とする。
本発明者は、静電吸着力を安定させる機構について検討し、空隙の絶縁破壊を利用する事無く記録媒体に静電吸着力を作用させることを考え付いた。そして、これを実現させる機構を鋭意検討し、実験を重ね、本発明を完成するに至った。
請求項1に記載の発明は、電荷キャリアとして液体を用いて記録媒体を静電吸着させる、ことを特徴とする。
これにより、静電吸着させる際の電荷量は、記録媒体の電気的性質の影響を受けることがない。従って、電荷量のばらつきを制御でき、静電吸着力を充分に安定させることができる。
本発明によれば、記録媒体に作用する静電吸着力を充分に安定させることができる。
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。また、以下の実施形態では、記録媒体は記録用紙に限らず、記録用紙以外の記録媒体(OHPシートなど)であっても実施可能である。なお、第2実施形態以下では、既に説明した構成要素と同様のものには同じ符号を付してその説明を省略する。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1−1に示すように、本実施形態では、記録媒体Pを吸着体2に静電吸着させる。その際、電荷キャリアとして機能する液体Lに電荷を誘起させ、この液体Lを記録媒体Pに供給する。
液体Lとしては、水のような導電性の液体であってもよいし、記録媒体Pの記録面等を処理する処理液であってもよい。あるいはアルキルナフタレン等の炭化水素油ベースの液体やパーフルオロポリエーテルなどのフッ素油ベースの絶縁性の液体であっても良い。
液体Lを記録媒体Pに供給する際、吸着体2と接触する面とは反対側の面PUに供給してもよいし、吸着体2と接触する側の面PLに供給してもよい。吸着体2と接触する側の面PLに供給した場合、液体Lは、記録媒体Pに主として付着していもよいし、吸着体2に主として付着してもよい。
なお、吸着体2と接触する面とは反対側の面PUに供給すると、静電力は記録媒体Pを挟んで作用するので強い静電吸着力を得易い。液体を吸着体2と接触する側の面PLに供給した場合には、静電力は液体に作用し、液体は記録媒体への浸透の際に生ずる毛管力で記録媒体を吸着体側へ吸着させていると解される。
本実施形態では、このように、電荷を誘起させた液体Lを記録媒体Pに供給している。これにより、静電吸着させる際の電荷量は、記録媒体Pの電気的性質の影響を受けることがない。従って、電荷量のばらつきを制御でき、静電吸着力を充分に安定させることができる。
本実施形態での液体への電荷付与、あるいはこの液体への電荷付与の際に発生する吸着体への電荷付与は図1−2の如きコロナ放電器5あるいは図1−3の如き近接電極6による空隙の絶縁破壊などの方法で行われる。水のような導電性の液体の場合には第2実施形態の如く電圧発生手段と液体を電気的に接触させて静電誘導で電荷を与える方が装置構成は簡単である。しかし、本実施形態では、通常液体供給手段と電荷付与手段とが独立するという不利はあるが電気的抵抗の制約無く静電吸着を安定化させる液体を選択できるという利点がある。そのために液体付着による記録媒体への悪影響(例えば記録媒体が水を吸収する事による変形)なく任意の液体が選択できる利点を有する。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態に比べ、図2に示すように、第1実施形態で説明した吸着体として搬送部材4を用いる。搬送部材4は搬送ベルトであることが多いが、特に搬送ベルトには限定しない。本実施形態では、搬送部材4の背面側が所定の電位に保たれる。通常は搬送部材背面側に金属層や低抵抗に調整された層を設けて電圧源と電気的に接続して定電位面として働かせる。この定電位とは通常は基準となる接地電位であるが、接地電位以外のある一定の電位であっても構わない。
本実施形態では電荷を有する液体の対抗電荷が常に搬送部材4の背面に存在する事により、記録媒体Pに作用する静電吸着力を充分に安定させた状態にして、搬送部材4で記録媒体Pを搬送することができる。導電性や抵抗性の液体を使う場合には、液体への電荷付与が第3実施形態以下で説明する静電誘導方式が採用できる為に装置構成が単純になる。もちろんアルキルナフタレン等の炭化水素油ベースの液体やパーフルオロポリエーテルなどのフッ素油ベースの絶縁性の液体でも導電性微粒子の分散によって低抵抗化できる事は言うまでもないことである。
なお、抵抗性とは、搬送部材と用紙等の間で発生する摩擦帯電電荷や搬送部材と用紙等を静電吸着させるために与えた搬送部材上の電荷が回収部材と対向する場所に移動するまでの間に背面側に逃がす程度には導電性であり、一方で静電吸着のために電圧を印加する際に与えられる電荷が即座に背面側に逸散(リーク)しない程度に抵抗が高い事を意味する。低抵抗性とはこの抵抗がさほど高くなく、高抵抗性とはこの抵抗が高めであることを意味する。
[実施例1(第2実施形態の実施例)]
記録媒体Pに塗布される液体が運ぶ電荷量については、必要な静電吸着力を発生するに足る量が確保されることが好ましい。
(1)記録媒体内部で電荷あるいは液体の移動が無いと考えられる場合(記録媒体Pがフィルムなどである場合)には、図2に示すように、記録媒体Pの誘電率及び厚さをそれぞれε1及びd1、搬送部材4のそれらをε2及びd2とするとき、記録媒体Pに塗布した液体における電荷密度Qは、移動した液体側から見た表面電位Vとの間に
Q=V/(d1/ε1+d2/ε2)
の関係がある。従って、記録媒体Pへの静電吸着圧力(単位面積当たりに作用する力)は、真空の誘電率をε0としたとき
F=-V2/{2×ε0 ×(d1/ε1+d2/ε2)2
と見積もる事ができる。
必要な静電吸着圧力は、用途あるいは装置構成によって異なるものの記録媒体Pの自重の10倍程度を確保する必要がある。例えば、ε1=8.85×10-11[F/m],d1=70×10-6[m],ε2=2.66×10-11,d2=50×10-6の材料で構成する場合、V=100[v]の場合にFは79[N/m2]となる。記録媒体の坪量が0.07[kg/m2]であれば自重の100倍以上の圧力を確保できる。このときの電荷密度は3.74X10-5[s・A/m2]である。
電荷密度の上限は静電吸着の観点からは特になく、大きければ大きいほうが良い。しかしながら、電荷を与える電源の装置コスト、配線時の絶縁、露出部での放電発生等の観点からの上限が存在する。
ここで述べた液体が運ぶ電荷量は、実用的には記録媒体へ移動する時の表面電荷密度で見積もる事ができ、かつ表面電荷密度は移動後の記録媒体表面電位で見積もる事ができる。本実施例の場合には、移動後の表面電位は記録媒体Pと液体(液膜)Lとの間に与える電位差と略等しい。
(2)記録媒体内部で電荷あるいは液体の移動があると考えられる場合(記録媒体P普通紙などである場合)には、移動した液体自体が図3に示すように記録媒体Pの内部へ浸透する。また液体が運ぶ電荷は記録媒体内を伝わり伝導できるため(例えば記録媒体が用紙である場合、用紙を構成する繊維中を伝わる)、例えば図4で「+」で示すような位置へ移動し得ると考えられる。このような場合での最も安定した状態は、電荷が記録媒体Pと搬送部材4との境界面まで移動した場合であり、液体の電荷密度Qは移動した液体側から見た表面電位Vとの間に
Q=V/(d2/ε2)
の関係となる。
記録媒体Pへの静電吸着圧力(単位面積当たりに作用する力)は、真空の誘電率をε0としたとき、
F=-V2/{2×ε0 ×(d2/ε2)2
と見積もる事ができる。(1)の場合と同様、必要な静電吸着圧力は、用途あるいは装置構成によって異なるものの記録媒体Pの自重の10倍程度を確保する必要がある。例えば、ε2=2.66×10-11,d2=50×10-6の材料で構成する場合、V=100[v]の場合にFは159[N/m2]となる。記録媒体Pの坪量が0.07[kg/m2]であれば、同様に自重の100倍以上の圧力を確保できる。このときの電荷密度は5.31×10-5[s・A/m2]である。
電荷量の最大値に関しては上記の(1)と同じ事が言えるが、特に注意すべきことは、電荷量が多すぎる、言い換えれば液体と記録媒体Pとの間に与える電位差が大きすぎると、図4に示した電荷(+)の一部が記録媒体Pと搬送部材4との界面を移動し記録媒体Pから抜け出してしまう事がある。通常は印加電圧の増大に対する静電吸着力の飽和現象となり、記録媒体Pによっては印加電位差を上昇させる事が無意味になる場合がある。
以上の理由から、液体の運ぶ電荷量としては、記録媒体Pの表面での電荷密度として3.74×10-5[s・A/m2]が必要である。本実施例の場合には、印加電位差で換算して100[V]以上である。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、液滴吐出装置としてインクジェット記録装置を例に挙げて説明する。インクジェット記録装置は、FWA方式、PWA方式の何れの方式の装置であってもよい。
(全体構成)
図5には、本実施形態のインクジェット記録装置12が示されている。インクジェット記録装置12の筐体14内の下部には給紙トレイ16が備えられており、給紙トレイ16内に積層された記録媒体(例えば記録用紙)Pをピックアップロール18で1枚ずつ取り出すことができる。取り出された記録媒体Pは、所定の搬送経路22を構成する複数の搬送ローラ対20で搬送される。以下、単に「搬送方向」というときは、記録媒体Pの搬送方向をいう。
給紙トレイ16の上方には、駆動ロール24及び従動ロール26に張架された無端ベルト状の搬送ベルト28が配置されている。本実施形態では、静電吸着によって記録媒体Pを保持できるように、少なくとも記録媒体接触側(すなわち外周面側)の材質は絶縁性又は高抵抗性にされている。なお、搬送ベルト28の裏面側(内周面側)に導電層が形成されていない場合には、駆動ロール24は後述の液体保持部材36の対抗電極としての役割を兼ねる場合がある。
搬送ベルト28の上方には記録ヘッドアレイ30が配置されており、搬送ベルト28の平坦部分28Fに対向している。この対向した領域が、記録ヘッドアレイ30からインク滴が吐出される吐出領域SEとなっている。搬送経路22を搬送された記録媒体Pは、搬送ベルト28で保持されてこの吐出領域SEに至り、記録ヘッドアレイ30に対向した状態で、記録ヘッドアレイ30から画像情報に応じたインク滴が付着される。
そして、記録媒体Pを搬送ベルト28で保持した状態で周回させることで、吐出領域SE内に複数回通過させて、いわゆるマルチパスによる画像記録を行うことができる。したがって、搬送ベルト28の表面が、本発明における記録媒体Pの周回経路となっている。
記録ヘッドアレイ30は、本実施形態では、有効な記録領域が記録媒体Pの幅(搬送方向と直交する方向の長さ)以上とされた長尺状とされ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、サイアン(C)、及びブラック(K)の4色それぞれに対応した4つのインクジェット記録ヘッドユニット32(以下、単にヘッドユニット32という)が搬送方向に沿って配置されており、フルカラーの画像を記録可能になっている。それぞれのヘッドユニット32においてインク滴を吐出する方法は特に限定されず、いわゆるサーマル方式や圧電方式等、公知のものを適用できる。なお、ヘッドユニット32に代えて、インク液以外の処理液(T)を吐出するインクジェット記録ヘッドを更に設けたヘッドユニットとしても良い。
各ヘッドユニット32を構成するインクジェット記録ヘッド33は、ヘッドコントローラ60(図8参照)によって制御されるようになっている。ヘッドコントローラ60は、たとえば、画像情報に応じてインク滴の吐出タイミングや使用するインク吐出口(ノズル)を決め、駆動信号をインクジェット記録ヘッド33に送る。
また、記録ヘッドアレイ30は、搬送方向と直交する方向に不動とされていてもよいが、必要に応じて移動するように構成しておくと、マルチパスによる画像記録で、より解像度の高い画像を記録したり、インクジェット記録ヘッド33の不具合を記録結果に反映させないようにしたりできる。
記録ヘッドアレイ30の近傍(本実施形態では搬送方向の両側)には、それぞれのヘッドユニット32に対応した4つのメンテナンスユニット34が配置されている。ヘッドユニット32に対してメンテナンスを行う場合には、図6に示すように、記録ヘッドアレイ30が上方へ移動し、搬送ベルト28との間に構成された間隙にメンテナンスユニット34が移動して入り込む。そして、吐出ノズル78が配列されたノズル面33N(図7、図9参照)に対向した状態で、所定のメンテナンス動作(バキューム、ワイピング、キャッピング等)を行う。なお、本実施形態では、4つのメンテナンスユニット34を2つずつの2組に分割し、記録ヘッドアレイ30、画像記録時には記録ヘッドアレイ30の搬送方向上流側及び搬送方向下流側にそれぞれ配置されるようにしている。
図7にも詳細に示すように、記録ヘッドアレイ30の搬送方向上流側には、電源38が接続された液体保持部材36が配置されている。本実施形態では液体保持部材36はロール状にされており、電源38により、液体保持部材36と従動ロール26との間に所定の電圧を印加できるようになっている。液体保持部材36は、ローラ、ブレードまたはブラシ等によって電圧が印加され、記録媒体Pの記録面側に接触する。液体保持部材36の少なくとも外周面側は、電荷キャリアとして機能する液体を保持できる材質で構成される。また、この液体を多量に保持し、液体保持部材36の外周面側に当接して液体を液体保持部材36に供給する液体貯め部材39がインクジェット記録装置12には設けられている。本実施形態では、液体貯め部材39はローラ状にされている。
液体保持部材36は、従動ロール26との間で搬送ベルト28及び記録媒体Pを挟みつつ従動し、記録媒体Pを搬送ベルト28に押圧する押圧位置と、搬送ベルト28から離間した離間位置との間を移動可能とされている。押圧位置では、従動ロール26との間に所定の電位差が生じるため、記録媒体Pの記録面側に付着させる液体(液膜)に電荷を与えて記録媒体Pを搬送ベルト28に静電吸着させることができる。
また、電源38としては、図7では直流電源を挙げているが、記録媒体Pを所定電位に帯電させることが可能であれば、交流電源でもよい。この場合、帯電電位は記録媒体の場所で変化し静電吸着力も記録媒体の場所で変化する事になるが、平均的に見た記録媒体の静電吸着は実現できる。
なお、液体保持部材36よりもさらに搬送方向上流側には、図示しないレジロールが設けられており、記録媒体Pが搬送ベルト28と液体保持部材36との間に至る前に位置合わせされる。
更に、インクジェット記録装置12には、搬送ベルト28の表面の電荷を除去する際に用いられる除電部材37が設けられている。除電部材37は、例えばロール状であり、接地電位に維持されることが多い。
また、インクジェット記録装置12は、記録媒体Pの搬送経路以外の位置で、すなわち、従動ロール26や駆動ロール24よりも下方位置で、搬送ベルト28の外周面側に当接し、主として記録媒体Pから発生する塵埃や、意図されて或いは意図されずに付着したインク、トナー等を除去する清掃部材72を備えている
剥離された記録媒体Pは、剥離プレート40の搬送方向下流側で排出経路44を構成する複数の回動可能な排出ローラ対42で搬送され、筐体14の上部に設けられた排紙トレイ46に排出される。
給紙トレイ16と搬送ベルト28の間には、反転手段として、複数の反転用ローラ対50で構成された反転経路52が設けられており、片面に画像記録された記録媒体Pを反転させて搬送ベルト28に保持させることで、記録媒体Pの両面への画像記録を容易に行えるようになっている。
搬送ベルト28と排紙トレイ46の間には、4色の各インクをそれぞれ貯留するインクタンク54と、インクタンク54の下流側に接続されたリザーバタンク64と、が設けられている。リザーバタンク64には大気開放部が設けられており、リザーバタンク64内の液面は大気圧となっている。また、リザーバタンク64のインクは各ヘッドユニット32に供給されるようになっている。インクとしては、水性インク、油性インク、溶剤系インク等、公知の各種インクを使用できる。
図8に示すように、インクジェット記録装置12の全体は、コントローラ56によって制御され、記録媒体Pの取出しから画像記録、排出、さらにはメンテナンスを含む動作が制御されるようになっている。また、記録画像に関する各種のデータ等は、画像コントローラ58からコントローラ56に送られる。たとえば、後述するように、第1帯電モードや第2帯電モードでの印加電圧等は、記録画像のデータなどに応じて、コントローラ56で制御される。また、インクジェット記録ヘッド33はヘッドコントローラ60によって制御されており、コントローラ56からヘッドコントローラ60へ信号が送信されるようになっている。なお、コントローラ56、ヘッドコントローラ60、液体保持部材36等は、電源38から電力供給を受けるようになっている。
(作用)
このような全体構成とされた本実施形態のインクジェット記録装置12では、図10に示すように、液体保持部材36の外周面側が液体貯め部材39に当接することにより、液体貯め部材39に保持され電荷キャリアとして機能する液体が液体保持部材36に移動している。液体保持部材36と従動ロール26との間には電源38によって所定の電圧が印加されているので、液体保持部材36の外周面側に位置する表面側液体Lには電荷が誘起されている。
また、上記したように、給紙トレイ16から取り出された記録媒体Pが搬送され、搬送ベルト28に至る。そして、液体保持部材36によって搬送ベルト28に押し付けられる。このため、電荷を帯びた表面側液体Lが、記録媒体Pの記録面側(液体保持部材側)に塗布される。
従って、記録媒体の静電吸着に必要な電荷が、液体保持部材36に電気的に接続された電源38から表面側液体Lに伝導され、表面側液体L自身が物理的に記録媒体Pへ移動する事によって記録媒体Pが搬送ベルト28に静電吸着される。
この状態で、搬送ベルトの循環によって記録媒体Pが吐出領域SEを通過しつつ、記録ヘッドアレイ30からインク滴が吐出されて、記録媒体P上に画像が記録される。1パスのみで画像記録する場合には、剥離プレート40で記録媒体Pを搬送ベルト28から剥離し、排出ローラ対42で搬送して排紙トレイ46に排出する。これに対し、マルチパスで画像記録を行う場合には、必要な回数に達するまで記録媒体Pを周回させて吐出領域SEを通過させた後、剥離プレート40で記録媒体Pを搬送ベルト28から剥離し、排出ローラ対42で搬送して排紙トレイ46に排出する。
以上説明したように、本実施形態では、電荷を帯びた表面側液体Lが、記録媒体Pの記録面側(液体保持部材側)に塗布されることにより、記録媒体Pが搬送ベルト28に静電吸着されており、空隙の絶縁破壊よりも優先して電荷の移動を起こさせて静電吸着させることができる。これにより、静電吸着させる際の電荷量は、記録媒体Pの電気的性質の影響を受けることがないので、電荷量のばらつきを制御でき、静電吸着力を充分に安定させることができる。また、液体保持部材36で液体を塗布しているので、記録媒体Pへ液体を均一に塗布することができるので、静電吸着力を記録媒体に均一に作用させることができる。
なお、本実施形態では、従動ロール26と液体保持部材36との間に電圧の印加によって静電誘導により電荷を誘起させているが、搬送ベルト28、記録媒体P、及び液体を相対峙する位置に配置して、少なくとも記録媒体Pと表面側液体Lとの間に電界を形成する構成にしてもよい。いずれの場合も、搬送ベルト28、記録媒体P、及び液体が互いに物理的に近接する構成体へ電源によって電界を形成し、静電誘導によって液体に電荷を誘起すると共に液体に生ずる静電引力で記録媒体Pへの移動を単一の過程(プロセス)で行うことができるため、装置構成が簡易になる利点がある。
また、液体として、(1)印字記録に用いられる画像形成材料との相互作用(例えば酸化・還元)によって記録画像の高濃度化・滲み防止・耐水耐候性改善・定着度改善を図るための処理剤を記録媒体に塗布してもよいし、(2)記録媒体の光沢感制御や色調の制御の為の前処理剤を記録媒体に塗布してもよいし、(3)記録媒体搬送中の記録媒体からの塵埃発生防止のための前処理液などを塗布してもよい。
また、記録媒体として、電気特性的には抵抗性から絶縁性、機械特性的には紙の如き多孔質表面からアート紙やフィルムの如き平滑表面を有する多種多様の記録媒体に、安定した静電吸着用の電荷を供給することができる。
[実施例2(第3実施形態の実施例)]
図11に示すように、本実施例では、液体保持部材36は表面に凹凸パターンを有する導電性金属ロールである。
記録媒体Pに塗布する液体は、多項質ポリウレタンからなる液体貯め部材39に保持されている。本実施例では、液体貯め部材39はロール状にされている。この液体貯め部材39は0.1MPa程度の低圧で液体保持部材36に接触している。そして、このように接触しながら液体保持部材36が記録媒体Pの搬送方向と同じ方向に回転することによって、液体貯め部材39に保持された液体は、図12に示すように、液体保持部材36の凹凸パターンを構成する凹部35に液溜りLとして保持される。
液体保持部材36と搬送ベルト28の背面との間には電位差Vが生じるように印加されている。液体保持部材36と記録媒体Pとの接触領域で液体の移動が起こる原理を図13(A)から(C)に示す。電圧印加状態で表面側液体Lに誘導されている電荷には静電力が働き、凹部35に液体を保持する力(表面張力や液体の搬送ベルト表面への濡れの力)に打ち勝って凹部35から液溜りLが滑り出し、ついには記録媒体Pの表面に転移する。このとき、液体の移動(液溜りLの移動)と同時に、液体に誘起されていた電荷も同時に移動する。この結果、あたかも記録媒体Pが印加電圧Vによって充電された如き状態になる。
本実施例に於いて、(1)液体に電荷を与える事、(2)電荷が与えられた液体を記録媒体Pへ移動させる事、の2つの要件は、液体を表面凹凸のある電気抵抗性のロール(液体保持部材)面上に配置して記録媒体Pと近接させ、搬送ベルト28と液体保持部材36との間に電位差を与えることで具現化されている。
記録媒体としては、坪量0.07[kg/m2]、厚さ70μmの上質普通紙、及び、厚さ75μmのPET製フィルムを使用した、搬送ベルト28としては背面にアルミニウム製の金属層が付着した厚み50μmのPETフィルムを用いた。
本実施例では、液体保持部材36としては、外径60mmφのアルミ製中空ロールの表面を研磨によって中心粗さ(Ra)1.6程度に仕上げたものを用いた。凹凸の形状としては、図14に示すように、最大深さD=6.3μm 程度で、ピッチBが25〜75μmとなる凹凸が存在する形状にした。
液体としては、水、保湿剤(ジエチレングリコール)、導電制御剤(尿素)、及び界面活性剤(サーフィノール)からなる無色透明な液体を用いた。
図10に示した装置構成にて、液体保持部材36を0.5MPa程度の圧力になるように記録媒体Pの記録面側へ押し当てた。
本実施例では、記録媒体Pが上質普通紙の場合、搬送ベルト28の背面側(内周面側)に付けられたアルミニウム層とロール状の液体保持部材36との間に印加電圧100Vにて静電吸着が行えることを、普通紙に浮きが無い事から確認した。更に、500Vを超えれば搬送ベルト28を1m/secで移動しても普通紙に浮きのない良好な搬送が行えることを確認した。また、図10に示すように、吸着開始位置Sから搬送方向UへX=50cm離れた位置で、市販の表面電位計(Trek社製)で記録媒体Pの表面電位を計測すると、上記の印加電圧にほぼ等しい表面電位が計測された。
記録媒体PとしてPETフィルムを用いた場合であっても、150Vを超えると静電吸着が始まり、550Vを超えれば搬送ベルト28を1m/secで移動してもPETフィルムに浮きのない良好な搬送が行えることを確認した。同様にして表面電位計測を行い、略印加電圧に等しい表面電位が計測された。比較の為、液体を塗布せずに同様の実験を行うと、550V印加では表面電位は計測されず(すなわち表面電位が0V)、1300V程度の印加の場合で約550Vの表面電位となった。
以上、普通紙、PETフィルムのいずれの場合であっても、塗布した液体は略全量記録媒体Pと一緒に移動している事を確認したが、記録媒体Pの特異な濡れた感じや着色は認められなかった。
[実施例3(実施例2の変形例)]
実施例2では液体保持部材36として表面に凹凸形状を有する部材の例を説明しており、凹凸形状は記録媒体Pを静電吸着する上で必要となる液体の記録媒体Pへの転移量をおおよそ定めている。更に、実施例2は、液体を吸収し得る記録媒体及び液体を吸収しない記録媒体の両者に対して良好な静電吸着を行う事を主目的に、液体の転移量をできるかぎり少なく抑えた例である。
かかる目的を達成し得る液体保持部材36としては、前述した静電吸着に必要となる電荷量を担いかつ記録媒体Pに液体を移動させることができる部材であれば良い。
必要な電荷密度は、液体吸収性のない記録媒体の場合には3.74×10-5[s・A/m2]、液体吸収性のある記録媒体の場合は5.31×10-5[s・A/m2]程度である。
液体保持部材36に求められる液体保持能力は、使用する液体が静電吸着のために印加される電界強度下でどの程度の静電誘導による電荷を担えるかによって定められる。
本発明が適用される通常の電界強度は、印加電圧で100乃至3000[V]で、記録媒体P及びこれを搬送する搬送ベルト28の厚みの和は100μmから1000μm程度である。従って0.1×106[V/m]から30×106[V/m]程度の電界強度下である。
使用する液体の分子量をM[kg]とし上記の電界下ではnヶの分子に1個の電荷が誘起されるものとする。この時nは必ずしも1以上ではなく、複数の分子の集合体(クラスター)に1ヶの電荷が誘起される場合には1より小さい。
液体保持部材36の液体吸着量をW[kg/m2]とすると、アボガドロ数及び電荷量から、
W/nM×6.03×1023×1.60×10-9 > 3.74×10-5
を満足すれば良い。
水を例に挙げると、外部電界下での異常伝導モデル(例えば、外島忍著「基礎電気化学」、昭和40年に朝倉書店から発行)から、
OH-+H2O→H2O+OH-
の様に、水1分子が一個の電荷を運ぶことができると考えると(なお、この場合n=1である)、液体保持部材36の液体吸着量の条件は、M=18×10-3から
W>6.97×10-12 [kg/m2]
となる。これは比重10+3[kg/m3]の液体の場合に6.97×10-9mの厚さに相当する。
この量の制御は現実に難しく、むしろ場所によって液体が移動できたりできなかったりするのを防止できる程度にする必要がある。
このような条件を満たすものとしては、以下のような例が挙げられる。
(1)微細な表面凹凸による液体吸着性を有する部材(例えば、高分子樹脂や金属等をプラズマ処理して得られる部材)
(2)微細な多孔構造による液体吸着性を有する部材(例えば、アルミニウムを酸化して得られる多孔質アルミナ)
(3)それ自身が構造的に微小な液体含有能力を持つ部材(カーボンナノチューブ等)
(4)複合体として微細な構造を有する部材(例えば、酸化チタンや酸化ケイ素あるいは酸化アルミなどの微細な粒子をバインダー樹脂と混合して塗布乾燥させて得られる液体吸収性を有する部材)
なお、これらの実施例では、静電吸着のために塗布された液体を他の目的には使用しない場合には、必ずしも記録媒体表面に渡って均一に塗布する必要は無く、塗布されている場所と塗布されていない場所とが混在していても構わない。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。図15に示すように、本実施形態では、液体保持部材86は、導電性金属からなるロール状の中空基材88と、表面側(ロール外周面側)に凹凸パターンを有する電気抵抗性材料からなる表面層90と、で構成される。
液体Lは、表面層90の凸部91(図16参照)と接触するブレード状の掻きとめ板92で堰きとめられている。ロール状の液体保持部材86が搬送ベルト28の移動方向と同じ方向に回転することによって、掻きとめ板92の下流側では、図16に示すように、凹凸パターンを構成する凹部95に液体が液溜りLとなって保持される。また、中空基材88と搬送ベルト28の背面との間には電位差Vが発生するように印加されている。
液体保持部材86と記録媒体Pとの接触領域で液体の移動が起こる原理を図17(A)から(C)に示す。電圧印加状態で液体に誘導されている電荷には静電力が働き、凹部95への液溜りLを保持する力(表面張力や表面層90と液溜りLとの間の濡れの力)に打ち勝って凹部95から液溜りLが滑り出し、ついには記録媒体Pの表面側に転移する。このとき、液体の移動(液溜りLの移動)と同時に、液溜りLに誘起されていた電荷も同時に移動する。この結果、あたかも記録媒体Pが印加電圧Vによって充電された如き状態になる。
本実施形態では、(1)液体に電荷を与える事、(2)電荷が与えられた液体を記録媒体Pへ移動させる事、の2つの要件は、液体を表面凹凸のある電気抵抗性のロール(液体保持部材)面上に配置して記録媒体Pと近接させ、搬送ベルト28と液体保持部材86との間に電位差を与えることで具現化されている。
本実施形態では、(1)液体に電荷を与える事、(2)電荷が与えられた液体を記録媒体Pへ移動させる事、の2つの要件は、液体を表面凹凸のある電気抵抗性のロール(液体保持部材)面上に配置して記録媒体Pと近接させ、搬送ベルト28と液体保持部材86との間に電位差を与えることで具現化されている。
本実施形態によれば、1)電気抵抗性のロールを弾性にする事で記録媒体との接触時に変形させて静電誘導による液体の転移量を十分に確保する事、2)同じく記録媒体による磨耗などへの耐性が高まる事、3)ブレード92の当接力を調整して転移させる液体の量を制御できる事、等の効果がある。
[実施例4(第4実施形態の実施例)]
本実施例では、外径60mmφのアルミ製中空ロールを中空基材88として用いた。そして、この表面に体積抵抗率106Ω-mで調整された導電化処理(CB分散)ポリイミド樹脂層をコートし、レーザ加工で図18に図示する如き凹凸パターン94を形成したものを表面層90とした。
凹凸パターン94としては、表面開口が一辺略50μの四角形状である四角錐状の凹部95を72.5μmのピッチで2次元的に配列した。凹部95の深さは約15μmであった。
また、実施例2と同様、記録媒体Pとしては坪量0.07[kg/m2]で厚さ70μmの上質普通紙、搬送ベルト28としては背面にアルミニウム製の金属層がついた厚み50μmのPETフィルムを用いた。
液体は、弾性の掻きとめ板92(図15参照)を通過した後、略3μmほど表面からもぐった深さにレべリング(掻きとり)された。
本実施例では、液体として、記録媒体Pの表面を処理する下記組成の液体(以下、反応液と称する)を用いた。
ジエチレングリコール :30質量%
コハク酸 :7質量%
水酸化ナトリウム :3質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
イオン交換水 :残部
この反応液(処理液)のpHは3.9、表面張力は30mN/m、粘度は3.1mPa・s、体積抵抗率は0.7Ωmであった。
そして、本実施例では、図15に示す如き装置構成にて、液体保持部材86を0.5MPa程度の圧力で押圧するように記録媒体Pへ押し当てた。
本実施例では、搬送ベルト28の背面側に設けられたアルミニウム層と、液体保持部材のアルミ製中空ロールと、の間に印加電圧100Vにて静電吸着が行えることを確認した。また、500Vを超えれば搬送ベルト28を1m/secで移動しても記録媒体に浮きのない良好な搬送が行えた。更に、反応液は略全量記録媒体Pにと共に移動している事を確認したが、記録媒体Pの特異な濡れた感じや着色は認められなかった。
また、800V印加時に、反応液の消費量から算出した平均的な塗布量は約1.6cc/m2と見積もられた。
本実施例では、反応液を塗布されて静電吸着された記録媒体Pに、インクジェット記録ヘッドによってインク滴による記録を行った。
インクジェット記録ヘッドとしては、一色当たり800dpiで832ノズルからなるサーマルインクジェット方式のもの(商品名 富士ゼロックス社WorkCentreR B900)を8ヶ千鳥構成に並べたものを黒、シアン、マゼンタ、イエローの4色分並べた。もちろん、印字原理としてサーマル方式に限られるわけではなく、ピエゾ方式や他の方式のインクジェット記録ヘッドを用いる事もできる。
使用したインクの組成を各色について以下に示す。

・Cabojet-300(キャボット社製):4質量%
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム共重合体:1質量%
・ジエチレングリコール:20質量%
・グリセリン:5質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.5質量%
・イオン交換水:残部
シアン
・C.I.Pigment Blue 15:3:4質量%
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム共重合体:0.6質量%
・ジエチレングリコール:20質量%
・グリセリン:5質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
・イオン交換水:残部
マゼンタ
・C.I.Pigment Red 122:4質量%
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム共重合体:0.75質量%
・ジエチレングリコール:20質量%
・グリセリン:5質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
・イオン交換水:残部
イエロー
・C.I.Pigment Yellow 128:4質量%
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム共重合体:0.6質量%
・ジエチレングリコール:20質量%
・グリセリン:5質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
・イオン交換水:残部
印字記録をする際、噴射の密度即ち単位面積あたりどのくらいの占有率でインクを噴射するかを変化させながら行った。印字記録の結果を表1に示す。
表1から判るように、記録媒体Pの静電吸着用に塗布された反応液とインクとが接触してインク中の色材を凝集させる事によって、記録濃度の向上や記録媒体Pへの裏移りの防止等の高画質化が行えた事が判る。
一方、表1から判るように、反応液とインクの付着総量とは多すぎてはいけないことが判る。付着総量の最大値は、使用する記録媒体が吸収し得る最大の液体量によって決まると考えられるが、本実施例の場合には、記録媒体Pの重量に対して20%程度以下に抑える必要があることが判った。
[実施例5(実施例4の変形例)]
実施例4では液体保持部材86として表面に凹凸形状を有する部材の例を説明しており、凹凸形状は記録媒体Pを静電吸着する上で必要となる液体の記録媒体Pへの転移量をおおよそ定めている。更に、実施例4では静電吸着の為に用いられる液体が印字記録材料であるインクと化学反応を起こし、着色顔料の凝集によって印字画像の高濃度化や裏移り防止の効果をもつ場合を説明した。
かかる目的を達成し得る液体保持部材86としては、反応液(処理液)としての効果を呈する範囲でかつ記録媒体Pの最大吸収量または最大表面吸着能を超えた量の反応液が移動しないように制御される事が必要である。
液体吸収性のある普通紙等では、印字に用いられる記録材料(インク)の付着総量が記録媒体自身の重量の20%を超えない範囲にする必要がある。
インクの具体的な転移量は、目的に応じてそれぞれ異なる。実施例4においては、インク中の色材を凝集させる必要量として1cc/m2以上であった為に液体保持部材86の表面開口を実施例4で示した図18の如く設定した。引き続きインクによる印字を行う場合には、実施例4の如くインクの総量が約19cc/m2を超えないように画像データを設定する事が好ましい。
また、均一塗布とは必ずしも記録媒体上に一様である事を意味するものではない。通常、画像記録はドット状に行われる事が多いが、一つ一つの画素単位での反応の効果が顕著であれば、少なくとも画素を単位とする均一な繰り返しを有する塗布状態であれば良く、実施例4の如く72.5μm程度の繰り返しを有する塗布状態であって構わない。
凹凸形状の形成方法は、レーザー加工以外にも、
(1)印刷用のグラビアロールを用いる
(2)凹凸形状を有する型を使って成型で作成する
(3)感光性樹脂層を用いてフォトリソグラフィで作成する
(4)金属等の平滑性を持つ基材上に球形樹脂を吹き付けて加熱などで付着させる
等の方法で形成しても良い。
また、液体保持部材86上の液体量を、掻きとめ板92(図15参照)の接触圧力や、掻きとめ板92への電圧の印加によって、装置上で制御する事もできる。
本実施例により、
(1)液体を使わない場合に比べて静電吸着用の印加電圧を下げることができる。すなわち、約2kVを約1kVにまで下げることができる。
(2)液体の塗布量のコントロールが容易である。また、非浸透性の記録媒体へも液体を移動させる事ができる。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
第1実施形態で、電荷を誘起させた液体で記録媒体を静電吸着させたことを示す側面断面図である。 第1実施形態で、吸着体へ電荷を付与する例を示す側面断面図である。 第1実施形態で、吸着体へ電荷を付与する例を示す側面断面図である。 第2実施形態で、電荷を誘起させた液体で記録媒体を搬送部材に静電吸着させたことを示す側面断面図である。 実施例1(第2実施形態の実施例)で、記録媒体内部で電荷が搬送部材に向けて移動したことを示す側面断面図である。 実施例1(第2実施形態の実施例)で、図3に示した状態から、記録媒体内部で電荷が更に搬送部材に向けて移動したことを示す側面断面図である。 第3実施形態のインクジェット記録装置の構成を画像記録状態で示す正面断面図である。 第3実施形態のインクジェット記録装置の構成をメンテナンス状態で示す正面断面図である。 第3実施形態のインクジェット記録装置の搬送ベルト及びその近傍の構成を示す概念図である。 第3実施形態のインクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図である。 第3実施形態で、インクジェット記録ヘッドの構成を示す背面図である。 第3実施形態で、液体が記録媒体に塗布されて記録媒体が搬送ベルトに静電吸着することを示す模式的な側面断面図である。 実施例2(第3実施形態の実施例)で液体保持部材を示す斜視図である。 実施例2(第3実施形態の実施例)のインクジェット記録装置の液体保持部材の表面構造を示す部分拡大断面図である。 図13(A)から(C)は、それぞれ、実施例2(第3実施形態の実施例)で、インクが液体保持部材から飛翔して移動することを示す部分拡大断面図である。 液体保持部材の表面の凹凸状態を示す模式的な断面図である。 第4実施形態で、液体が記録媒体に塗布されて記録媒体が搬送ベルトに静電吸着することを示す模式的な側面断面図である。 第4実施形態のインクジェット記録装置の液体保持部材の表面構造を示す部分拡大断面図である。 図17(A)から(C)は、それぞれ、第4実施形態で、インクが液体保持部材から飛翔して移動することを示す部分拡大断面図である。 実施例4(第4実施形態の実施例)で、液体保持部材の表面の凹凸状態を示す模式的な斜視図である。 従来のインクジェット記録装置で、記録媒体が帯電されることを示す模式的な断面図である。 従来のインクジェット記録装置で、記録媒体が帯電されることを示す模式的な断面図である。
符号の説明
4 搬送部材
12 インクジェット記録装置
28 搬送ベルト(搬送部材)
33 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
35 凹部
36 液体保持部材
86 液体保持部材
95 凹部
94 凹凸パターン
108 搬送部材

Claims (12)

  1. 電荷キャリアとして液体を用いて記録媒体を静電吸着させる、ことを特徴とする静電吸着方法。
  2. 前記記録媒体を搬送部材に静電吸着させて搬送する、ことを特徴とする請求項1に記載の静電吸着方法。
  3. 前記液体として、前記記録媒体の表面処理を行う処理液を用いる、ことを特徴とする請求項2に記載の静電吸着方法。
  4. 前記処理液として無色透明の液を用いる、ことを特徴とする請求項3に記載の静電吸着方法。
  5. 前記処理液として、着色材を凝縮させる成分を含有する液を用いる、ことを特徴とする請求項3に記載の静電吸着方法。
  6. 液体を用いて記録媒体を静電吸着させる静電吸着機構であって、
    前記液体を帯電状態にする帯電手段と、
    前記記録媒体に前記液体を供給する液体供給手段と、
    を備えた、ことを特徴とする静電吸着機構。
  7. 前記記録媒体を搬送する搬送部材を備え、前記搬送部材に前記記録媒体を静電吸着させて搬送する、ことを特徴とする請求項6に記載の静電吸着機構。
  8. 前記搬送部材、前記記録媒体、及び、前記液体を相対峙する位置に配置させ、
    前記帯電手段は、少なくとも前記記録媒体と前記液体との間に電界を形成し静電誘導により前記液体に電荷を誘起させ、前記液体を前記記録媒体の表面へ移動させて前記記録媒体の静電吸着と前記記録媒体への液体塗布とを行う、ことを特徴とする請求項7に記載の静電吸着機構。
  9. 前記液体供給手段が、前記記録媒体の表面に前記液体を供給する液体保持部材を備え、
    前記帯電手段は、前記液体保持部材と前記搬送部材の一部との間に電圧を印加して電界を形成する、ことを特徴とする請求項8に記載の静電吸着機構。
  10. 前記液体保持部材の表面に凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンを構成する凹部に前記液体が保持される、ことを特徴とする請求項9に記載の静電吸着機構。
  11. 請求項6〜請求項10のうち何れか1項に記載の静電吸着機構と、前記搬送部材の搬送面側に液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
  12. 前記液滴吐出ヘッドが前記液滴としてインク滴を吐出する、ことを特徴とする請求項11に記載の液滴吐出装置。
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