タンパク質やDNAなどの生化学物質間における相互作用の測定や、薬品のスクリーニングなどを行う際に、全反射減衰を利用して試料の反応を測定する測定装置が知られている。
このような全反射減衰を利用した測定装置の1つに、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance)現象を利用した測定装置(以下、SPR測定装置と称す)がある。なお、表面プラズモンとは、金属中の自由電子が集団的に振動することによって生じ、その金属の表面に沿って進む自由電子の粗密波である。
例えば、特許文献1などで知られるKretschmann配置を採用したSPR測定装置では、透明な誘電体(以下、プリズムと称す)上に形成された金属膜の表面をセンサ面として、このセンサ面上で試料を反応させた後、プリズムを介してセンサ面の裏面側から全反射条件を満たすように金属膜を照射し、その反射光を測定している。
全反射条件を満たすように金属膜に照射された光のうち、エバネッセント波と呼ばれるわずかな光は、反射せずに金属膜内を透過してセンサ面側に染み出す。この際、エバネッセント波の振動数と表面プラズモンの振動数とが一致するとSPRが発生し、反射光の強度を大きく減衰させる。SPR測定装置は、この反射光の減衰を捉えることにより、センサ面上の試料の反応状況を測定する。
タンパク質やDNAなどの生体試料は、乾燥による変性や失活を防ぐため、生理的食塩水や純水、または各種のバッファ液などの溶媒に溶かされた試料溶液として扱われることが多い。特許文献1記載のSPR測定装置は、こうした生体試料の相互作用などを調べるものであり、センサ面の上には試料溶液を送液するための流路が設けられる。また、センサ面にはリガンドとなる試料を固定させるためのリンカー膜が設けられており、流路にリガンド溶液を注入してリンカー膜にリガンドを固定(固定工程)させた後、アナライト溶液を注入してリガンドとアナライトとを接触(測定工程)させることにより、その相互作用を調べている。
特許文献1記載のSPR測定装置には、装置本体にプリズムと流路とが配置された測定ステージが設けられており、ガラス基板上に金属膜を形成したチップ型のセンサユニットを測定ステージに装着することで、前述の固定や測定が行われる。
通常、リガンドの固定が完了するまでには1時間程度を有し、数分程度で終了する測定と比べて非常に時間がかかる。特許文献1記載のSPR測定装置では、固定工程と測定工程とを同一の測定ステージ上で行うため、固定工程を行っている間は測定ステージが占有されてしまい、他のセンサユニットの固定や測定工程を行うことができないなど、作業が滞りがちになってしまうという問題があった。
また、作業効率を上げるために、複数のセンサユニットの固定工程を先に行っておき、測定工程をまとめて行うことも考えられるが、センサユニットは、センサ面を露出させており、固定工程を行ったものを保存しておくと、センサ面が乾燥して試料が変性や失活を起こしたり、センサ面に不純物が付着するなどして、正確な測定を行うことができなくなってしまうことがあった。
これらの問題を解決するため、本出願人は、流路が形成された流路部材と、上面に金属膜が形成されたプリズムと、流路部材の底面とプリズムの上面とを接合させた状態(流路と金属膜とを対面させた状態)で保持する保持部材とからなるセンサユニットを用いたSPR測定装置を提案している(例えば、特願2004−287615号明細書参照)。
このSPR測定装置では、センサユニット自体に流路とプリズムとが設けられているので、複数のセンサユニットの固定工程と測定工程とを並列に行うことが可能となり、作業効率を向上させることができる。また、流路が設けられたことにより、固定工程を行ったものを保存しておく際に、液体を注入した状態で保存することができ、センサ面の乾燥などを防ぐことができる。
また、このSPR測定装置には、ピペットを有する送液装置が組み込まれている。送液装置は、センサユニットに設けられた流路にピペットを挿し込むことで、センサ面に各種の液体を送液する。また、リガンドの固定化を行う際には、流路にピペットを挿し込んだ状態で未使用のリガンド溶液を連続的に流路に流し続けるか、あるいはリガンド溶液を所定量流路に注入してリガンド溶液を流路内に貯留させる方法が用いられている。
特許第3294605号公報
図1に示すように、SPRを利用した測定方法は、大きく分けて、固定工程と、測定処工程(データ読み取り工程)と、データ解析工程との3つの工程からなる。SPR測定装置は、固定工程を行う固定機10と、測定工程を行う測定機11と、測定機11によって得られたデータを解析するデータ解析機とからなる。
測定は、SPRセンサであるセンサユニット12を用いて行われる。センサユニット12は、一方の面がSPRが発生するセンサ面13aとなる金属膜13と、このセンサ面13aの裏面の光入射面13bと接合されるプリズム14と、前記センサ面13aと対向して配置され、リガンドやアナライトが送液される流路50が形成された流路部材41とを備えている。
金属膜13としては、例えば、金や銀が使用され、その膜厚は、例えば、50nmである。この膜厚は、金属膜13の素材、照射される光の発光波長などに応じて適宜選択される。プリズム14は、光入射面13bに向けて、全反射条件を満たすように照射された光を集光する。流路50は、略U字形に屈曲された送液管であり、液体を注入する注入口50aと、それを排出する排出口50bとを有している。流路50の管径は、例えば、約1mm程度であり、注入口50aと排出口50bの間隔は、例えば、約10mm程度である。
また、流路50の底部は、開放されており、この開放部位はセンサ面13aによって覆われて密閉される。これら流路50とセンサ面13aによってセンサセル17が構成される。後述するように、センサユニット12は、こうしたセンサセル17を複数個備えている(図2参照)。
固定工程は、センサ面13aにリガンドを固定する工程である。固定工程は、センサユニット12を固定機10にセットして行われる。固定機10には、送液ヘッド18が配されている。この送液ヘッド18は、センサユニット12に着脱自在に取り付けられ、内部に形成された管路を介して各種の液体を流路50に供給する。
センサ面13aのほぼ中央部には、リガンドと結合するリンカー膜22が形成されている。このリンカー膜22は、センサユニット12の製造段階において予め形成される。リンカー膜22は、リガンドを固定するための固定基となるので、固定するリガンドの種類に応じて適宜選択される。
リガンド溶液21を注入するリガンド固定化処理を行う前に、前処理として、まず、リンカー膜22に対して、固定用バッファ液を送液してリンカー膜22を湿らせた後、リンカー膜22へリガンドが結合しやすくするためにリンカー膜22の活性化処理が施される。例えば、アミンカップリング法では、リンカー膜22としてカルボキシメチルデキストランが使用され、リガンド内のアミノ基をこのデキストランに直接共有結合させる。この場合の活性化液としては、N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)とN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)との混合液が使用される。この活性化処理の後、固定用バッファによって流路50が洗浄される。
固定用バッファや、リガンド溶液21の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水が使用される。これらの各液の種類、pH値、混合物の種類及びその濃度等は、リガンドの種類に応じて適宜決められる。例えば、リガンドとして生体物質を使用する場合には、pHを中性付近に調整した生理的食塩水が使用される場合が多い。しかし、上記アミンカップリング法では、リンカー膜22は、カルボキシメチルデキストランにより負(マイナス)に帯電するので、このリンカー膜22と結合しやすいようにタンパク質を陽(プラス)に帯電させるため、生理的とはいえない高濃度のリン酸塩を含む緩衝作用の強いリン酸緩衝溶液(PBS:phosphatic−buffered,saline)などが使用される場合もある。
こうした活性化処理及び洗浄が行われた後、センサセル17へリガンド溶液21が注入されてリガンド固定化処理が行われる。リガンド溶液21が流路50へ注入されると、溶液中で拡散しているリガンド21aが徐々にリンカー膜22へ近づいて、結合する。こうしてセンサ面13aにリガンド21aが固定される。固定化には、通常、約1時間数程度かかり、この間、センサユニット12は、温度を含む環境条件が所定の条件に設定された状態で保管される。
センサ面13aへのリガンド21aの固定化が完了すると、流路50からリガンド溶液21が排出される。固定化が完了したセンサ面13aは、流路50へ洗浄液が注入されて洗浄処理が行われる。この洗浄後、必要に応じて、ブロッキング液を流路50へ注入して、リンカー膜22のうち、リガンドが結合しなかった反応基を失活させるブロッキング処理が行われる。ブロッキング液としては、例えば、エタノールアミン−ヒドロクロライドが使用される。このブロッキング処理の後、再び流路50が洗浄される。この後、流路50には、乾燥防止液が注入される。これにより、センサユニット12は、センサ面13aの乾燥が防止された状態で、測定までの間保管される。
測定工程は、センサユニット12を測定機11にセットして行われる。測定機11には、一対のピペット26a,26bからなるピペット対26が設けられている。このピペット対26は、注入口16aから流路16へ各種の液体を注入し、排出口16bから排出する。各ピペット26a,26bは、それぞれが流路50への液体の注入と、流路50からの吸い出しを行う機能を備えており、一方が注入動作を行っているときには、他方が吸い出し動作を行うというように、互いに連動する。
測定工程では、まず、流路50へ測定用バッファが注入される。この後、アナライトを溶媒に溶かしたアナライト溶液27を注入し、その後、再び測定用バッファが注入される。なお、最初に測定用バッファを注入する前に、いったん流路50の洗浄を行ってもよい。データの読み取りは、基準となる信号レベルを検出するために、最初に測定用バッファを注入した直後から開始され、アナライト溶液27の注入後、再び測定用バッファが注入されるまでの間行われる。これにより、基準レベルの検出、アナライトとリガンドの反応状況(結合状況)、測定バッファ注入による結合したアナライトとリガンドの脱離までの信号を測定することができる。
また、図示しないが、リンカー膜22上には、リガンドが固定されアナライトとリガンドとの反応が生じる測定領域(act領域)と、リガンドが固定されず、前記測定領域の信号測定に際しての参照信号を得るためのリファレンス領域(ref領域)とが形成される。このリファレンス領域は、上述したリンカー膜22を製膜する際に形成される。形成方法としては、例えば、リンカー膜22に対して表面処理を施して、リンカー膜22の半分程度の領域について、リガンドと結合する結合基を失活させる。これにより、リンカー膜22の半分が測定領域となり、残りの半分がリファレンス領域となる。
これら各領域のact信号とref信号は、基準レベルの検出から結合反応を経て脱離に至るまで、同時に計測される。データ解析は、こうして得られたact信号とref信号の差や比を求めて行われる。データ解析機は、act信号とref信号との差分データを求め、この差分データを測定データとし、これに基づいて解析を行う。こうすることで、センサユニット12や各センサセル17の個体差や、装置の機械的な変動や、液体の温度変化など、外乱に起因するノイズをキャンセルすることが可能となり、S/N比の良好な信号が得られる。
測定用バッファや、アナライト溶液27の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水が使用される。これらの各液の種類、pH値、混合物の種類及びその濃度等は、リガンドの種類に応じて適宜決められる。例えば、アナライトを溶けやすくするために、生理的食塩水にDMSO(ジメチル−スルホ−オキシド)を含ませてもよい。このDMSOは、信号レベルに大きく影響する。上述したとおり測定用バッファは基準レベルの検出に用いられるので、アナライトの溶媒中にDMSOが含まれる場合には、そのDMSO濃度と同程度のDMSO濃度を持つ測定用バッファを使用することが好ましい。
なお、アナライト溶液27は、長期間(例えば、1年)保管されることも多く、そうした場合には、経時変化によって、初期のDMSO濃度と測定時のDMSO濃度との間に濃度差が生じてしまう場合がある。厳密な測定を行う必要がある場合には、こうした濃度差をアナライト溶液27を注入したときのref信号レベルから推定し、測定データに対して補正(DMSO濃度補正)が行われる。このDMSO濃度補正のための補正データは、アナライト溶液27を注入する前に、DMSO濃度が異なる複数種類の測定用バッファをセンサセル17に注入して、このときのDMSO濃度変化に応じた、ref信号レベルとact信号レベルのそれぞれの変化量を調べることにより求められる。
測定部31は、照明器32と検出器33からなる。上述したとおり、リガンドとアナライトの反応状況は、共鳴角(光入射面に対して照射された光の入射角)の変化として顕れるので、照明器32は、全反射条件を満足する様々な入射角の光を光入射面13bに対して照射する。照明器32は、例えば、光源34と、集光レンズ、拡散板、偏光板を含む光学系36とからなり、配置位置および設置角度は、照明光の入射角が、上記全反射条件を満足するように調整される。
光源34としては、例えば、LED(Light Emitting Diode),LD(Laser Diode),SLD(Super Luminescent Diode)などの発光素子が使用される。こうした発光素子を1個使用し、この単一光源から1つのセンサセル17に向けて光が照射される。なお、複数のセンサセル17を同時に測定するような場合には、各センサセル17に対して発光素子が1つずつ割り当てられるように、発光素子が複数個並べられて使用される。拡散板は、光源34からの光を拡散して、発光面内の光量ムラを抑える。偏光板は、照射光のうち、SPRを生じさせるp偏光のみを通過させる。なお、LDを使用する場合など、光源が発する光線自体の偏光の向きが揃っている場合には、偏光板は不要である。また、偏光が揃っている光源を使用した場合でも、拡散板を通過することにより、偏光の向きが不揃いになってしまう場合には、偏光板を使用して偏光の向きが揃えられる。こうして拡散および偏光された光は、集光レンズによって集光されてプリズム14に照射される。これにより、光強度にバラツキがなく様々な入射角を持つ光線を光入射面13bに入射させることができる。
検出器33は、光入射面13bで反射する光を受光して、その光強度を検出する。光入射面13bには、様々な角度で光線が入射するので、光入射面13bでは、それらの光線が、それぞれの入射角に応じて様々な反射角で反射する。アナライトとリガンドの反応状況に応じて共鳴角が変化すると、光強度が減衰する反射角も変化する。検出器33は、例えば、CCDエリアセンサが使用され、この反射角の変化を、受光面内における反射光の減衰位置の推移として捉える。検出器33は、こうして得た、反応状況を表す測定データを、データ解析機に出力する。データ解析工程では、測定機11で得た測定データを解析して、アナライトの特性を分析する。
なお、測定部31の構成が明確になるように、図1では便宜的に、光入射面13bへの入射光線およびそこで反射する反射光線の向きが、流路50内の液体の流れ方向と平行になるように、照明器32および検出器33を配置した形態で示しているが、本実施形態では、入射光線および反射光線の向きが、前記流れ方向と直交する方向に照射されるように、照明器32および検出器33が配置される。もちろん、測定部31をこの図1に示しているように配置して測定してもよい。
図2は、センサユニット12の概略構成を示す分解斜視図である。センサユニット12は、上面に金属膜13が形成されたプリズム14と、金属膜13に液体を送液する流路50、52、54が形成された流路部材41と、プリズム14の上面と流路部材41の底面とを圧接させた状態で保持する保持部材42とから構成されている。
流路部材41は、長尺状に成形されており、その長手方向に沿って3つの流路50、52、54が設けられている。各流路50、52、54は、略U字型に屈曲された送液管であり、液体を注入する注入口50a、52a、54aと、それを排出する排出口50b、52b、54bとを有している。
流路部材41は、金属膜13との密着性を高めるため、例えば、ゴムやPDMS(ポリジメチルシロキサン)などの弾性材料で成形されている。これにより、流路部材41は、プリズム14の上面と圧接された際に、弾性変形して金属膜13との接触面の隙間を埋め、各流路50、52、54の開放された底部をプリズム14とともに水密に覆う。なお、本例では、3つの流路50、52、54を有する例を説明したが、流路の数は、3つに限らず、1つ又は2つであってもよいし、4つ以上でもよい。
プリズム14の上面には、各流路50、52、54と対面する短冊状の金属膜13が、例えば、蒸着によって形成される。この金属膜13には、例えば、金や銀が用いられ、その膜厚は、例えば、50nmである。なお、この膜厚は、金属膜13の素材や、照射される光の波長などに応じて適宜選択される。
プリズム14の長辺側の両側面には、保持部材42の係合部42aと係合する係合爪14aが設けられている。これらの係合により、流路部材41が保持部材42とプリズム14とによって挟み込まれ、その底面とプリズム14の上面とが圧接した状態で保持される。さらに、プリズム14の両端部には、突部14bが設けられている。センサユニット12は、図示せぬホルダに収納される。突部14bは、ホルダに形成されたスリットに入り込み、センサユニット12をホルダ内の所定の収納位置に位置決めする。
なお、プリズム14には、例えば、ホウケイクラウン(BK7)やバリウムクラウン(Bak4)などに代表される光学ガラスや、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネイト(PC)、非晶性ポリオレフィン(APO)などに代表される光学プラスチックなどを用いることができる。
保持部材42の上面には、各流路50、52、54の注入口50a、52a、54a及び排出口50b、52b、54bに対応する位置に、ピペット26a、26bなどの先端部を進入させる受け入れ口42bが形成されている。これらの受け入れ口42bは、ピペット26a、26bなどから吐出された液体が各注入口50a、52a、54aに導かれるように漏斗状に形成されている。また、各受け入れ口42bは、保持部材42が流路部材41を挟み込んでプリズム14と係合した際に、それぞれの注入口50a、52a、54a及び排出口50b、52b、54bと当接して、各流路50、52、54と連結する。
図3に示すように、固定機10には、複数(本例では4つ)のセンサユニット12がセットされる。各センサユニット12のそれぞれには、送液ヘッド18が取り付けられる。送液ヘッド18は、内部に形成された管路を介して各センサユニット12のそれぞれが有する3つのセンサセル17に各種の液体を送り込む。なお、送液ヘッド18の取り付けは、手動で行うようにしてもよいし、周知の移動機構などを用いて自動で行うようにしてもよい。また、セットするセンサユニット12の数は、4つに限ることなく、2つ又は3つでもよいし、5つ以上でもよい。
各送液ヘッド18には、供給路60と、排出路62と、2つの連結路64、66とが形成されている。連結路64は、流路50の排出口50bと流路52の注入口52aとを接続する。連結路66は、流路52の排出口52bと流路54の注入口54aとを接続する。供給路60と排出路62とは、送液ヘッド18の上下面を貫通させるように形成されており、センサユニット12に取り付けられた際に、それぞれ流路50の注入口50aと、流路54の排出口54bとに接続される。これにより、センサユニット12に設けられた3つの流路50、52、54が直列に接続される。
また、隣り合う送液ヘッド18同士は、連結用配管70によって、一方の排出路62から排出される液体が、他方の供給路60へと向かうように接続されている。これにより、固定機10にセットされた各センサユニット12は、各連結路64、66によってそれぞれの各流路50、52、54が接続されるとともに、各連結用配管70によって各センサユニット12間が接続され、各センサユニット12に含まれる全てのセンサセル17が直列に接続される。すなわち、連結路64、66によって生じる経路が、請求項記載のセル間連結経路に相当し、排出路62から連結用配管70を介して隣り合う送液ヘッド18の供給路60へと至る経路が、請求項記載のユニット間連結経路に相当する。
各送液ヘッド18を直列に接続した際に、最初に位置する送液ヘッド18の供給路60には、例えば、図示せぬ容器などに保管された液体を、各センサユニット12に供給するための供給用配管72が接続されている。また、最後に位置する送液ヘッド18の排出路62には、各センサセル17を通過した液体を廃液タンク76に排出するための排出用配管74が接続されている。
この排出用配管74と供給用配管72とは、帰還用配管80を介して接続されている。排出用配管74と帰還用配管80との接合部には、排出用配管74を開閉するバルブ90と、帰還用配管80を開閉するバルブ91とが設けられており、帰還用配管80と供給用配管72との接合部には、帰還用配管80を開閉するバルブ92と、供給用配管72を開閉するバルブ93とが設けられている。これにより、バルブ90、93を閉栓し、バルブ91、92を開栓することで、閉塞したループが形成される。
供給用配管72の経路上には、矢線A方向に液体を送るポンプ82が設けられている。このポンプ82は、供給用配管72を介して各センサユニット12に液体を供給するとともに、帰還用配管80によって形成されるループ内に閉じ込められた液体を、このループ内で循環させる。このポンプ82としては、例えば、プランジャーポンプや遠心ポンプなどの一般的な送液用のポンプを用いればよい。すなわち、配管経路を切り替えるバルブ90〜93と、これらのバルブ90〜93によって形成されるループ内で液体を循環させるポンプ82とによって、請求項記載の循環手段が構成される。
なお、各連絡用配管70、供給用配管72、排出用配管74、及び帰還用配管80は、金属やプラスチックなどで成形されたリジットなパイプでもよいし、ゴムチューブなどであってもよい。また、これらの各配管の内壁面には、リガンド溶液中に溶解したリガンドなどの吸着を防止するため、非特異吸着の少ない材料を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、非晶質ポリオレフィンエラストマーや、ポリプロピレンなどの晶質ポリオレフィンが知られている。
次に、図4に示すフローチャートを参照しながら、上記構成による固定機10の作用について説明する。各センサユニット12のリンカー膜22にリガンドを固定する際には、まず、4つのセンサユニット12を固定機10にセットする。この際、各センサユニット12は、ホルダなどに収納した状態で固定機10にセットしてもよいし、固定機10に専用の載置台などを設けてセットするようにしてもよい。
各センサユニット12をセットした後、それぞれのセンサユニット12に対して送液ヘッド18を取り付ける。これにより、各送液ヘッド18に設けられた連結路64、66によって、各センサユニット12のそれぞれに含まれる3つのセンサセル17が直列に接続されるとともに、隣り合う送液ヘッド18同士を接続する連結用配管70によって、各センサユニット12が直列に接続される。送液ヘッド18の取り付けが完了すると、バルブ90、93を開栓し、バルブ91、92を閉栓した状態でポンプ82が駆動され、各センサセル17のリンカー膜22に向けて各種の液体の送液が開始される。前述したように、リガンドの固定化を行う際には、リガンド溶液21に先立って固定用バッファ液、活性化液、固定用バッファ液の順に送液され、リンカー膜22の洗浄、及び活性化処理が行われる。これらの液体は、直列に接続された各センサセル17を通過してそれぞれのリンカー膜22に接触した後、開栓されたバルブ90と閉栓されたバルブ91とを介して廃液タンク76に排出される。
各リンカー膜22の活性化処理がなされ、固定用バッファ液によって送液経路上の活性化液が洗浄されると、続いてリガンド溶液21の送液が開始される。この際、バルブ90が閉栓状態に、バルブ91が開栓状態にそれぞれ切り替えられ、各リンカー膜22を通過したリガンド溶液21は、帰還用配管80を介して供給用配管72へと向かう。連結用配管70を介して直列に接続された各センサユニット12と帰還用配管80とによって形成されるループを満たすに量のリガンド溶液21が送液されると、バルブ93が閉栓され、ループ内をリガンド溶液21が循環する。
所定の時間(例えば、1時間)が経過するなどして、各リンカー膜22に十分なリガンドを固定させた後、バルブ90が開栓、バルブ91が閉栓にそれぞれ切り替えられ、ループ内を循環していたリガンド溶液21が廃液タンク76に排出される。リガンド溶液21が排出されると、固定用バッファ液などによって再び各リンカー膜22が洗浄される。この後、ブロッキング液や乾燥防止液などが必要に応じて送液され、固定工程が終了する。
このように、本実施形態の固定機10によれば、各送液ヘッド18と各連結用配管70とによって4つのセンサユニット12と、各センサユニット12のそれぞれに含まれる3つのセンサセル17とを直列に接続するようにしたので、一度の送液で計12個のリンカー膜22にリガンドを接触させることができる。これにより、各センサセル17のそれぞれに対して連続的にリガンド溶液21を送液する方法と比較して、必要となるリガンド溶液21の量を減らすことができるとともに、同じ時間で複数のリンカー膜22にリガンドを固定させて処理効率を向上させることができる。
また、リガンド溶液21を各流路50、52、54内に貯留させる方法と比較すると、各リンカー膜22に対して連続的に流しながら固定化させ、リガンドの拡散が自然まかせとなることはないので、高濃度のリガンド溶液21を用意したり、固定化の時間を長引かせたりすることなく、より少ない試料かつ短時間で効率よく固定工程を行うことができる。
さらに、連結用配管70を介して直列に接続された各センサユニット12と帰還用配管80とによって閉塞したループを形成し、このループ内でリガンド溶液21を循環させるようにしたので、連続送液しながらより長い時間固定化させようとした際にも、ループ内を充填する分のリガンド溶液21を用意すればよい。もちろん、バルブ90を開栓状態にしておいて、リガンド溶液21を廃液タンク76に排出しながら固定化を行うようにしてもよい。また、リガンド溶液21のみに限らず、固定用バッファ液や活性化液などの、その他の液体をループ内で循環させるようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、全反射減衰を利用した測定装置の一例として、SPR測定装置を示したが、全反射減衰を利用した測定装置としては、この他に、例えば、漏洩モードセンサが知られている。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、SPRの共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射角の減衰を検出することにより、前記センサ面上の化学反応が測定される。