JP2006249550A - 自動車ボディ用アルミニウム合金板 - Google Patents

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Kaoru Ueda
薫 上田
Hidemiki Goto
英幹 後藤
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Abstract

【課題】原料として廉価な回収アルミニウム合金屑を用いることを可能とし、コスト低減を図った塗装後耐食性に優れた自動車ボディ用アルミニウム合金板を提供すること。
【解決手段】連続鋳造工程と、熱処理のみ、あるいは圧延と熱処理の組み合わせを施す下工程とにより得られた自動車ボディ用アルミニウム合金板である。Si:0.2〜2.0%、Mg:0.2〜2.0%、Fe:1.5%以下を含有する成分組成を有し、表層領域におけるFe、Si、Mgの各元素の平均濃度が、成分組成における含有量よりも高く、それぞれ、Fe:3%以下、Si:4%以下、Mg:4%以下であり、表層領域における最大濃度がFe:4%以下、Si:5%以下、Mg:5%以下であり、内部領域におけるAl−Fe系金属間化合物のセル境界被覆率が60%以下であると共に、Al−Fe系金属間化合物の個々の長さが40μm以下であり、酸化皮膜厚さが200nm以下である。
【選択図】図3

Description

本発明は、自動車ボディ用アルミニウム合金板(自動車ボディパネル材及びその補強材に用いられる板を含む)に関し、塗装後耐食性に優れたアルミニウム合金板に関する。
近年、自動車ボディ用の内外パネルやその補強材としては、軽量化による燃費向上を目的として、アルミニウム合金板の使用が年々増加している。自動車ボディ材には、多くの特性、たとえば、成形性、形状凍結性、耐デント性、耐食性やプレス成形性、また、プレスにおいて肌荒れ、リジングマークが生じない製品面質などが要求されており、これらの要求は次第に厳しくなっている。このような諸特性を満足させるため、自動車ボディ用アルミニウム合金として、Al−Mg系(5000系)合金およびAl−Mg−Si系(6000系)合金が主に使用されている。
特に、自動車用ボディパネル材やその補強材は塗装焼付け工程があるため、熱処理型合金であるAl−Mg−Si系(6000系)合金を使用することにより、焼付け硬化性が期待できることから、ゲージダウンでさらなる軽量化、薄肉化が可能となる。しかし、Al−Mg−Si系(6000系)合金は、Al−Mg系(5000系)合金よりも、塗装下地処理としての化成処理性が悪く、塗装後耐食性への影響が懸念される。
さらに、アルミニウム合金板は、冷延鋼板に比べてコストが高いという問題があるため使用の限界がある。しかし、Al−Mg−Si系(6000系)合金は、Al−Mg系(5000系)合金と比較してリサイクル性の面も優れていることから、リサイクル材の使用により、上記のコスト高を低減することが可能である。特に、Al−Mg−Si系合金は、市場に多く出回っているアルミサッシなどと同じ合金系であり、廃棄自動車から回収されるアルミニウム屑とともに再利用が可能である。
しかし、リサイクル材を使用する場合、不純物元素、特にFe量が多くなることが避けられない。自動車用アルミニウム合金板には非常に良好な耐食性が求められるが、一般に不純物元素が多くなることによって耐食性は劣化すると言われており、不純物を低減させることで耐食性を確保している。
一方、こうしたAl−Mg−Si系合金板を、自動車ボディ用材料として使用するためには、現行の鉄鋼材料に対する材料特性の優位性を示すと共に、その製造コストを鉄鋼材料の場合と同程度以下にする必要がある。そのため、従来のIM法(DC鋳造−熱間圧延−冷間圧延)に比べ工程が簡略化でき、製造コストの低減化が期待できる連続鋳造法の適用が注目されている(特許文献1〜4)。この連続鋳造法で得られたアルミニウム合金連続鋳造板を、さらに熱処理、あるいは圧延と熱処理の組み合わせによって自動車ボディ用材料とすることが考えられる。
さらに、塗装後耐食性を向上させるための手段としては、下地処理である化成処理性を向上させ、塗膜の密着性をあげることが、非常に有効であるとも言われている。この手段として、板面に網目状の凹凸を設ける方法(特許文献5)や、酸化皮膜中の水酸基を抑制する方法(特許文献6)、さらに表層部から80Åの深さにおけるCu量を合金成分以下とする方法(特許文献7)などの方法が公開されている。
しかし、これらの方法は、いずれも洗浄条件を合金の種類によって選定する必要があることや、製造工程での加熱後には急冷の管理が必要となることなど、工業的には容易ではない。
特開平7−252616号公報 特開平7−252570号公報 特開平10−130766号公報 特開平10−259564号公報 特開2000−17366号公報 特開2000−239778号公報 特開2000−345364号公報
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、自動車ボディパネル材あるいはその補強材用のアルミニウム合金板として、充分な塗装後耐食性を備えると共に、不純物としてのFe量の許容範囲を広げることで、原料として廉価な回収アルミニウム合金屑を用いることを可能とし、コスト低減を図った塗装後耐食性に優れたAl−Mg−Si系の自動車ボディ用アルミニウム合金板を提供しようとするものである。
本発明は、アルミニウム合金よりなる溶湯を、直接板状に連続的に鋳造することにより、板厚が0.8〜10mmの連続鋳造板を作製する連続鋳造工程と、上記連続鋳造板に熱処理のみ、あるいは圧延と熱処理の組み合わせを施す下工程とを行うことにより得られた板厚が0.5〜3.0mmの自動車ボディ用アルミニウム合金板であって、
該自動車ボディ用アルミニウム合金板は、Si:0.2〜2.0%(mass%、以下同じ)、Mg:0.2〜2.0%、Fe:1.5%以下を含有する成分組成を有し、
表面から3μm深さまでの表層領域におけるFe、Si、Mgの各元素の平均濃度が、上記成分組成における含有量よりも高く、かつ、それぞれ、Fe:3%以下、Si:4%以下、Mg:4%以下であり、
上記表層領域における各元素の最大濃度がFe:4%以下、Si:5%以下、Mg:5%以下であり、
表面からの深さが100〜250μmの内部領域におけるAl−Fe系金属間化合物のセル境界被覆率が60%以下であると共に、上記Al−Fe系金属間化合物の個々の長さが40μm以下であり、
表面からの酸化皮膜厚さが200nm以下であることを特徴とする自動車ボディ用アルミニウム合金板にある(請求項1)。
本発明の自動車ボディ用アルミニウム合金板は、上記特定の連続鋳造板を作製する上記連続鋳造工程を行った上で上記下工程を行うことにより作製している。そして、これにより、上記自動車ボディ用アルミニウム合金板は、最終的に上記特性を有するものとなり、原料として廉価な回収アルミニウム合金屑を用いることが可能であり、コスト低減を図ることができると共に、優れた塗装後耐食性を発揮する。
まず、上記自動車ボディ用アルミニウム合金板は、Si:0.2〜2.0%、Mg:0.2〜2.0%、Fe:1.5%以下を含有するAl−Mg−Si系の成分組成よりなる。もちろん、上記連続鋳造板の状態においても同じである。
Siは、単体SiまたはMgと共存してMg2Si化合物を析出してアルミニウム合金の強度を向上させる機能を有する。Siの含有量は0.2%未満では、熱処理を行ってT4調質した際に充分な強度が得られなくなる。上限については塗装後耐食性が低下するという理由により2%とする。Siの好ましい含有範囲は0.4〜1.8%であり、さらに好ましい含有範囲は0.7〜1.5%である。
Mgは、Siと共存してMg2Si化合物を析出してアルミニウム合金の強度を向上させる機能を有する。Mgの含有量が0.2%未満では、T4調質によっても充分な強度が得られなくなる。上限については熱処理によって酸化皮膜厚が厚くなり、りん酸亜鉛処理を阻害するため、塗装後耐食性を低下させる原因となるという理由により2%とする。Mgの好ましい含有範囲は0.3〜1.2%であり、さらに好ましい含有範囲は0.4〜1.0%である。
Feについては、特にリサイクル材を利用した場合不純物として混入するが、1.5%を超えるとFe系の化合物が多くなり、成形性が低下する原因となるとともに、耐食性が低下する原因となる。従って、Feの含有量は1.5%以下とする。Feの好ましい含有量は1.0%以下であり、さらに好ましい範囲は0.5%以下である。
次に、上記自動車ボディ用アルミニウム合金板における、濃度と領域の意義およびその限定理由について説明する。Fe、Si、Mgは、塗装下地処理としての化成処理時におけるカソードポイントとしての機能を有する。塗装下地処理としての化成処理は、塗膜の密着性を向上させ、塗装後耐食性に大きな効果をもたらすことが知られている。ここにおけるFe、Si、Mgは、酸化物である場合には化成処理時のカソードポイントとして作用しないため、固溶体あるいは化合物として、表面近傍において合金成分以上の濃度で存在させる必要がある。
また、本発明では、上記のごとく、表面から3μm深さまでの表層領域におけるFe、Si、Mgの各元素の平均濃度が、上記自動車ボディ用アルミニウム合金板の成分組成における含有量よりも高く、かつ、それぞれ、Fe:3%以下、Si:4%以下、Mg:4%以下である。板表面から離れた内部の領域では、、Fe、Si、Mgのカソードポイントとしての機能が発揮されなくなるので、上記Fe、Si、Mgの濃縮層は、上記特定の深さの表層領域のみに設ける。
また、上記表層領域における平均濃度が、Fe:3%超え、Si:4%超え、又はMg:4%超えの濃度になると、カソードポイントが多くなりすぎるため、塗装後耐食性に悪影響を及ぼしてしまう。なお、合金成分によってはMn、Cu、Zn、Tiなども濃化する場合があるが、この発明の成分範囲であれは本発明の効果を阻害しない。従って、Fe、Si、Mgの平均濃度は、それぞれFe≦3%、Si≦4%、Mg≦4%、さらに好ましくはFe≦2.5%、Si≦3%、Mg≦3%、最も好ましくはFe≦2%、Si≦2.5%、Mg≦2:5%の範囲がよい。
また、上記自動車ボディ用アルミニウム合金板における上記表層領域における各元素の最大濃度は、Fe:4%以下、Si:5%以下、Mg:5%以下とする。Fe、Si、Mgの最大濃度の限定理由も、上記の平均濃度の上限の限定理由と同様に、これらの量を超えるとカソードポイントが多くなりすぎるという問題が生じる。そのため、より好ましくは、上記表層領域における最大濃度は、Fe≦3.5%、Si≦4.5%、Mg≦4.5%、最も好ましくはFe≦3%、Si≦4%、Mg≦4%の範囲がよい。
また、上記自動車ボディ用アルミニウム合金板は、表面からの深さが100〜250μmの内部領域におけるAl−Fe系金属間化合物のセル境界被覆率が60%以下であると共に、上記Al−Fe系金属間化合物の個々の長さが40μm以下である。
上記セル境界被覆率を簡単に説明すると、図1に示すごとく、上記内部領域において、上記Al−Fe系金属間化合物81が並んで形成されるセル境界82の周長をA、各Al−Fe系金属間化合物81の個々の長さLの合計をBとした場合の、B/A×100(%)で示すものである。なお、このセル境界は、上記連続鋳造工程直後の連続鋳造板において生じるものであり、本発明の自動車ボディ用アルミニウム合金板では、その状態が最終板においても維持あるいはある程度変更された状態で残存している。
上記セル境界被覆率が60%を超える場合には、連続的なカソードポイントとなるため、腐食の伝播経路となり、腐食の成長を促進し、塗装後耐食性を低下させる要因となる。上記Al−Fe系金属間化合物の個々の長さが40μmを超える場合も同様の問題がある。
従って、上記自動車ボディ用アルミニウム合金板の上記内部領域におけるAl−Fe系金属間化合物のセル境界被覆率を60%以下とし、好ましくは50%以下、最も好ましくは45%以下とする。また、セル境界上における上記Al−Fe系金属間化合物の長さは40μm以下とし、好ましくは35μm以下、最も好ましくは30μm以下とする。
また、上記自動車ボディ用アルミニウム合金板における酸化皮膜厚さは200nm以下でなければならない。酸化皮膜が厚い場合は、塗装下地処理としての化成処理性に悪影響を及ぼす。塗装後耐食性には、塗膜と素材の密着性を高めるために化成処理が重要となるが、これが不十分な場合には、塗装後耐食性を低下させる大きな要因となる。従って、これを超す場合には、硫酸、硝酸などの酸溶液または苛性ソーダ等のアルカリ溶液、また、必要に応じてこれらを組み合わせて洗浄することにより除去しても構わない。いずれにしても、この範囲内であれば、Fe、Si、Mg元素の大部分は固溶体や化合物として存在可能となり、塗装前処理としての化成処理性を阻害しなくなる。
また、上記の優れた自動車ボディ用アルミニウム合金板は、上記連続鋳造工程によって得られた連続鋳造板を用いて上記の下工程を行うことにより得られたものである。
上記連続鋳造工程は、上記成分を有するアルミニウム合金を常法に従い溶解し、これをいわゆるロールキャスト、ベルトキャスト等により鋳造することにより行う。溶解する原料地金としては回収アルミニウム合金屑の使用が可能であり、この使用率が高いほど、原料コストを低減することができる。板厚は0.8〜10mmとする。0.8mm未満は現在の連続鋳造技術では実現が困難であり、一方、10mmを超える場合には、下工程での圧延回数が増加して製造コスト低減が困難となる。
また、上記連続鋳造工程の後に行う上記下工程は、上記連続鋳造板に熱処理のみ、あるいは圧延と熱処理の組み合わせを施す工程である。最終板厚は、0.5〜3.0mmとする。0.5mm未満は自動車ボディ用としての剛性が不足し、3.0mmを超える場合には、自動車ボディ用プレス成形が困難となる。
圧延は、最終板厚が連続鋳造板の板厚と異なる場合に実施する。
熱処理は、Al−Mg−Si系合金の優れた強度特性を得るために必ず実施する。冷間圧延を繰り返す場合に中間焼鈍としての熱処理を行ってもよい。最終的には、溶体化処理及び焼き入れ処理を行ってT4に調質する。
また、塗装焼付け時のBH性をさらに高めるために、50℃以上150℃以下の予備時効処理や、180℃以上250℃以下の復元処理などの付加熱処理を行っても良い。
特に、上記下工程における上記熱処理は、昇温速度2℃/sec以上、保持温度500〜600℃、保持時間5分以下(0分も含む)、冷却速度が2℃/sec以上の溶体化処理を行った後、自然時効によりT4調質とするT4熱処理を含むことが好ましい(請求項2)。T4調質は、急速加熱で保持時間を短くし、冷却速度を早くすることが望ましいので上記条件とすることが好ましい。
昇温速度が2℃/sec未満になると、酸化皮膜が厚くなり、化成処理性を阻害する。また、6000系合金のT4材として必要な強度を得るには、保持温度は500℃以上600℃以下でなければならない。保持温度が500℃未満となると強度不足の原因となり、600℃を超えると材料が溶融する原因となる。さらに、保持時間が5分を超えると酸化皮膜が厚くなるため、化成処理性を阻害する要因となる。また、焼入れ速度が2℃/sec未満となると、強度や伸びが低下し、Al−Mg−Si系アルミニウム合金としての材料特性が得られなくなる。
また、上記自動車ボディ用アルミニウム合金板には、りん酸亜鉛処理を施すことが好ましい。りん酸亜鉛処理を施すことにより、塗膜との密着性が非常に良くなり、塗装後耐食性をより向上させることができる。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。なお、これらの実施例は、本発明の1実施態様を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
本例では、双ロール式連続鋳造圧延法(板連続鋳造法)により、表1に示す組成を有する厚さ3mmの連続鋳造板を作製した。
図2に示すごとく、本例で用いた装置は、溶解炉1から樋2に移されたアルミニウム合金の溶湯5を、ノズル3を介して上下に配置された鋳造ロール4A、4Bからなる双ロール4の間に導入するよう構成されている。鋳造ロール4A、4Bは水冷されているので、これに接触した溶湯5が凝固し、その後、鋳造ロール4A、4B間で圧延されて連続鋳造板6として双ロール4から搬出される。
本例では、図3に示すごとく、上側に配置された鋳造ロール4Aとノズル3を通じて導入された溶湯5とが最初に接する点Sと上側に配置された鋳造ロール4Aの中心点Oとを結んだ線L1と、該中心点Oからの垂線L2とのなす角(鋳造板と鋳造ロールの接触角度)θを8〜15°として鋳造圧延した。Lはメニスカス長さである。
上記θが8°未満では、鋳造板とロールとの接触面積が小さくなるため、ロールの抜熱によって鋳造板を十分に冷却するには、鋳造速度を低くする必要があるが、鋳造速度が低いと、ノズルから出た溶湯がメニスカス内で凝固し始めるため、リップルマークが発生する原因となる。一方上記θが15°を超えると、鋳造板とロールとの接触面積が大きくなるため、鋳造板の冷却速度は高くなり、鋳造速度を高くすることが可能となるが、鋳造速度が高いほど、板厚中心部における溶湯サンプが深く、溶質原子が板厚中心方向に移動しやすくなるため、中心線偏析が発生する原因となる。
Figure 2006249550
次に、上記の連続鋳造工程によって得られた連続鋳造板に対し、下工程として、圧延を行わずにT4調質を得る熱処理のみを行った。
具体的には、上記連続鋳造板を、平均昇温速度20℃/secで560℃に加熱し、10秒保持した後、平均冷却速度20℃/secで常温まで急冷する焼入れを行った。さらに200℃で30秒の復元処理を行い、常温まで冷却してT4調質材とした。その後、硫酸系酸洗浄剤による洗浄を行った。
表2に、得られたアルミニウム合金板(自動車ボディ用アルミニウム合金板)における表面から3μm深さまでの表層領域におけるFe、Si、Mgの濃化状態(濃化領域、平均濃度及び最大濃度)と、表面からの深さが100μmの内部におけるAl−Fe系金属間化合物のセル境界被覆率(以下、単に被覆率という)及びAl−Fe系金属間化合物(以下、単に金属間化合物という)の最大長さと、酸化皮膜厚さの測定結果を示す。
濃化領域および平均濃度、最大濃度、酸化皮膜厚さはいずれもGD−OES(Glow Discharge Optical Emission Spectrometer、グロー放電発光分析装置)により、分析直径2.5mmφで、表面からの深さ方向分析結果から算出した。
濃化領域は、検出元素を重量%に換算し、合金成分の1倍を超える領域とし、平均濃度は表面から3μmまでの濃度の平均値、最大濃度は濃度が量も高い部分の濃度とした。
表面から100μm内部における、金属間化合物による鋳造時のセル境界の被覆率およびセル境界の連続存在領域は、EPMA(Electron Probe Micro Analyser、X線プローブマイクロアナライザー)により、200倍でFe元素を面分析した写真から、500μm×500μmの視野における、被覆率及び金属間化合物の最大長さを測定した。
被覆率は、500μm×500μmの視野における平均とし、金属間化合物の最大長さは、500μm×500μm内での量大のものを測定した。
また、酸化皮膜厚さは、酸素の濃度が最も高い部分から半減した深さまでとした。なお、このときのスパッタ速度は一定と仮定した。
Figure 2006249550
また、本例では、上記各試料のアルミニウム合金板を、市販のりん酸亜鉛処理剤により浸漬処理した後、さらにその上に市販の自動車外板用塗料によりカチオン電着塗装を行い、170℃で20分焼付けて約20μmの塗膜を形成した。
りん酸亜鉛処理性は、りん酸亜鉛処理を行った処理板表面の皮膜の溶解による重量法での皮膜量測定によって評価した。
塗装後耐食性は、電着塗装板に中塗り・上塗り塗装を行い、それぞれ約40μmの塗膜を形成した。この塗装板に素地に達するクロスカットを施し、JASO 609−91に従って、塩水噴霧、湿潤、乾燥のサイクルを90サイクル実施した後、クロスカットからの最大糸錆長さで評価した。
これらのりん酸亜鉛処理性および塗装後耐食性試験結果を表3に示す。
表3に示すように、本発明の実施例である試料No.1〜7のアルミニウム合金板は、いずれもりん酸亜鉛処理性は、皮膜量が1.3g/m2以上得られており(評価:○)、塗装後の耐食性については、最大の糸錆長さが1mm未満であった(評価:○)。
なお、上記りん酸亜鉛処理性のうち、皮膜重量は、1.3g/m2以上の場合を良好(評価:○)とし、1.3g/m2未満の場合を不良(評価:×)とした。
また、上記塗装後耐食性は、最大糸錆長さが1mm未満の場合を良好(評価:○)とし、1mm以上の場合を不良(評価:×)とした。以下、同様である。
Figure 2006249550
(実施例2)
本例では、板連続鋳造法により、表1に示す組成を有する連続鋳造板を作製し、さらに、冷間圧延して厚さ1mmの板材とした。
次いで、冷間圧延後のアルミニウム合金板材を、平均昇温速度20℃/secで500℃に加熱し、60秒保持した後、平均冷却速度20℃/secで常温まで焼入れを行った。その後、5分以内に100℃まで再加熱し、100分間保持した後、常温まで冷却してT4調質材として本例の自動車ボディ用アルミニウム合金板を得た。
表4に、本例の自動車ボディ用アルミニウム合金板における表面からの濃化の領域およびFe、Si、Mgの濃化量、表面から100μm内部における、Fe−SiあるいはMgを含有する金属間化合物による、セル境界の被覆率、さらにセル境界上におけるFe、SiまたはMgを含有する化合物の連続存在領域および酸化皮膜厚さを示す。なお、測定方法は実施例1と同様とした。
Figure 2006249550
また、本例で得られた上記自動車ボディ用アルミニウム合金板に対しても、実施例1と同様のりん酸亜鉛処理および塗装を実施し、りん酸亜鉛処理性および塗装後耐食性の調査を行った。
表5に示すように、本発明の用件を具備するアルミニウム合金板材は、いずれもりん酸亜鉛処理性は、皮膜量が1.3g/m2以上得られており(評価:○)、塗装後の耐食性については、最大の糸錆長さが1mm未満であった(評価:○)。
Figure 2006249550
(比較例1)
本比較例では、板連続鋳造法により、表6に示す組成を有するアルミニウム合金板材を製造し、冷間圧延して厚さ1mmの板材とした。
Figure 2006249550
冷間圧延後のアルミニウム合金板材を、平均昇温速度20℃/secで500℃に加熱し、60秒保持した後、平均冷却速度20℃/sec常温まで焼入れを行った。その後、5分以内に100℃まで再加熱し、100分間保持した後、常温まで冷却してT4調質材とした。
表7に、案施例1と同様にして得られたアルミニウム合金板材における表面からの濃化の領域およびFe、Si、Mgの濃化量、表面から100μm内部における、Fe−SiあるいはMgを含有する金属間化合物による、鋳造時のセル境界の被覆率、さらにセル境界上におけるFe、SiまたはMgを含有する化合物の個々の最大長さおよび酸化皮膜厚さを示す。
Figure 2006249550
また、本比較例で得られた上記自動車ボディ用アルミニウム合金板に対しても、実施例1と同様の化成処理および化成処理性の調査を行った。化成処理性の結果を表8に示す。
表8に示すように、比較例1で得られた試験材のうち、No.15、16は化成処理性、塗装後耐食性ともに劣っていた。No.15はりん酸亜鉛皮膜量は1.3g/m2得られず、最大糸錆長さは1mm以上であった。
No.16は1.39/m2以上のりん酸亜鉛皮膜量は得られたが、最大糸錆長さが1mm以上であった。No.17は、りん酸亜鉛皮膜量は1.3g/m2以上で、りん酸亜鉛処理性は良好であったが、最大糸錆長さが1mm以上であった。
Figure 2006249550
(比較例2)
本比較例では、実施例1の合金A(表1)を用いて、通常のIM法(DC鋳造−熱間圧延−冷間圧延)により冷間圧延板を作製し、平均昇温速度20℃/secで580℃に加熱し、500秒保持した後、平均冷却速度20℃/secで常温まで焼入れを行った。その後、5分以内に100℃まで再加熱し、100分間保持した後、常温まで冷却してT4調質材とした。
表9に、実施例1と同様にして得られたアルミニウム合金板材Fおける表面からの濃化の領域およびFe、Si、Mgの濃化量、表面から100μm内部における、Fe−SiあるいはMgを含有する金属間化合物による、鋳造時のセル境界の被覆率、さらにセル境界上におけるFe、SiまたはMgを含有する化合物の個々の最大長さおよび酸化皮膜厚さを示す。
Figure 2006249550
Figure 2006249550
表10に示すように、比較例2で得られた試験材(No.18)は、りん酸亜鉛皮膜量が1.39/m2以上得られなかった。また、最大糸錆長さも1mm以上となり、りん酸亜鉛処理性、塗装後耐食性ともに、悪かった。
セル境界被覆率について説明する説明図。 実施例1において使用する双ロール式連続鋳造圧延装置の概念図。 実施例1において使用する双ロール式連続鋳造圧延装置の主要部分を示す概念図。
符号の説明
1 溶解炉
2 樋
3 ノズル
4 双ロール
4A、4B 鋳造ロール
5 溶湯
6 連続鋳造板

Claims (2)

  1. アルミニウム合金よりなる溶湯を、直接板状に連続的に鋳造することにより、板厚が0.8〜10mmの連続鋳造板を作製する連続鋳造工程と、上記連続鋳造板に熱処理のみ、あるいは圧延と熱処理の組み合わせを施す下工程とを行うことにより得られた板厚が0.5〜3.0mmの自動車ボディ用アルミニウム合金板であって、
    該自動車ボディ用アルミニウム合金板は、Si:0.2〜2.0%(mass%、以下同じ)、Mg:0.2〜2.0%、Fe:1.5%以下を含有する成分組成を有し、
    表面から3μm深さまでの表層領域におけるFe、Si、Mgの各元素の平均濃度が、上記成分組成における含有量よりも高く、かつ、それぞれ、Fe:3%以下、Si:4%以下、Mg:4%以下であり、
    上記表層領域における各元素の最大濃度がFe:4%以下、Si:5%以下、Mg:5%以下であり、
    表面からの深さが100〜250μmの内部領域におけるAl−Fe系金属間化合物のセル境界被覆率が60%以下であると共に、上記Al−Fe系金属間化合物の個々の長さが40μm以下であり、
    表面からの酸化皮膜厚さが200nm以下であることを特徴とする自動車ボディ用アルミニウム合金板。
  2. 請求項1において、上記下工程における上記熱処理は、昇温速度2℃/sec以上、保持温度500〜600℃、保持時間5分以下(0分も含む)、冷却速度が2℃/sec以上の溶体化処理を行った後、自然時効によりT4調質とするT4熱処理を含むことを特徴とする自動車ボディ用アルミニウム合金板。
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