JP2006248454A - 着火素子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】信頼性が高く、製造が容易な着火素子を得る。
【解決手段】
相互に離間して2個の電極端子26,27を配置した絶縁基体25上に絶縁基体よりも熱伝導性の低い有機絶縁層29を形成し、この有機絶縁層上に薄膜発熱抵抗体30を配置し電極端子26a,27aに接続した着火素子。
【選択図】図3
【解決手段】
相互に離間して2個の電極端子26,27を配置した絶縁基体25上に絶縁基体よりも熱伝導性の低い有機絶縁層29を形成し、この有機絶縁層上に薄膜発熱抵抗体30を配置し電極端子26a,27aに接続した着火素子。
【選択図】図3
Description
本発明は例えば自動車のエアバッグのガス発生装置を点火する着火剤に着火するための着火素子およびこの着火素子の製造方法に関する。
自動車の衝突時の衝撃防止用に備えられるエアバッグやプリテンショナーは瞬時に応答する高速応答性が要求され、そのためのトリガーとして火薬を使用した着火装置が用いられる。通常、着火装置に充填される火薬の点火にワイヤ状のニクロム金属抵抗体やフィルム状のニクロム金属抵抗箔が利用され、電流を通電して得られる発熱によって火薬に着火する。
所望の応答性を得るためにはワイヤや箔の抵抗体を微細で熱容量の小さな構造にしなければならず、このため、抵抗体の径や長さの寸法の厳密さや正確に電極に接続するための高度な溶接技術が要求され、さらに低コストで製作できることが必要条件となっている。
抵抗体としてのニクロムワイヤは線径寸法の均一性、低コストに優れており、1対の電極間をワイヤ状発熱抵抗体で橋絡する着火素子構造が一般的に使用されている。この着火素子は、着火剤を詰めた外部ケースに圧入して発熱抵抗体と着火剤とを接触されて着火装置を構成する。しかし、発熱抵抗体は載置するステムベースのステム面上に浮いた状態で電極端子と溶接されるので、抵抗体が着火剤の圧接により曲げられて切断される恐れがあり、またニクロムワイヤの溶接位置が電極端部の所定位置からずれると、着火剤との圧接時にワイヤがまたがっている電極端部の一部と不所望に接触し、抵抗値が変わる。これを防ぐために電極との溶接に高精度の技術が要求され、高コストの原因になっている。
このニクロムワイヤの問題点を解消するためにニクロム箔抵抗体の利用が提案されている。箔抵抗体を使用する場合は、フォトエッチングにより任意の形状のパターンを形成することができ、微細な抵抗体とその両端に広い面積の電極端子を形成した一体構造の箔状発熱抵抗体パターンにすることが可能で、ワイヤ状抵抗体の欠点である溶接の困難さが解消する。とくに箔を樹脂フィルムで支持した構造(特許文献1参照)にすることにより、取扱いが著しく向上する。しかし、微細抵抗体の形成はエッチングによるので、エッチング条件によって抵抗値がばらつき易いという欠点がある。また、発熱抵抗体を印刷により塗布した厚膜で形成することも提案されているが(特許文献2参照)、微細な抵抗を正確に設定するためにレーザなどによるトリミングが欠かせず、製造コストの低減化を阻んでいる。
また、抵抗体を着火装置に組込むときに抵抗体と着火剤の密着が着火特性に影響することから密着の信頼性をさらに高めることが要望されている。
発熱抵抗体に薄膜を使用する(特許文献3参照)ことは、広い面積が容易に得られて着火剤との密着性が高い。しかし基板への放熱が大きく、熱容量が増えてしまう。
特開平11‐301402号公報
特開平8−210639号公報
特開平5‐133699号公報
この発明は上記に鑑みてなされたもので、製造が容易で着火信頼性を向上させた着火素子および着火素子の製造方法を得るものである。
この発明の一態様は、互いに離れて配置された2個の電極端子と、これらの電極端子を同一面上に配置した絶縁基体と、前記前記絶縁基体上に塗布され前記絶縁基体よりも熱伝導性の低い有機絶縁層と、前記有機絶縁層上に蒸着またはスパッタにより堆積され、前記電極端子間に接続された薄膜発熱抵抗体層とを具備することを特徴とする着火素子にある。
他の態様は、互いに離れて配置された2個の電極端子を同一面上に配置した絶縁基体の前記面を覆って前記絶縁基体よりも熱伝導性の低い有機絶縁層を塗布する工程と、前記電極端子上の前記絶縁層を開口し、前記電極端子の面を露出する工程と、前記絶縁層および前記露出した電極端子面上に発熱抵抗導電層を蒸着またはスパッタにより堆積する工程と、前記発熱抵抗導電層をパターンエッチングして前記2個の電極端子間に発熱抵抗体層を形成する工程とを具備することを特徴とする着火素子の製造方法にある。
熱伝導性の低い有機絶縁層上に薄膜発熱抵抗体を配置することにより、抵抗体を広い面積パターンに形成しても熱容量の増加を抑えることができ、加熱昇温の急速性を維持しつつ粉末状の着火薬との圧接時によくなじみ、密着性を高め、抵抗体の発熱による点火の信頼性を高めることができる。
図1乃至図5は本発明を自動車用エアバッグ装置に適用した実施の形態を示すもので、図1において、エアバッグ装置10は自動車運転席や助手席前に取付けられた筐体11内に折り畳まれた風船状に膨らむエアバッグ12と、筐体11に取付けられてエアバッグ内にガスを注入するインフレータ13とからなる。インフレータ13はガスを爆発的に発生してエアバッグ12内に送込むガス発生装置14とガス発生装置14に着火する着火装置15を具備し、着火装置15は制御回路17に配線18を介して接続され、衝突などの衝撃を感知するセンサー16の出力に応じて制御回路17から発生する電流を受けて起爆しガス発生装置14に着火する。
すなわち車両が衝突するとセンサー16が衝撃を検知し、制御回路17から電流が着火装置15に流れ着火装置内の電気抵抗による発熱体を発熱溶断して、発熱体に接触している着火剤を発火させてインフレータ13のガス発生剤を点火して急速にガスを発生させる。発生したガスにより、エアバッグ12が膨張して車両搭乗者を衝撃から保護するように構成されている。
図2は着火装置15を示しており、内部に着火剤23が収容されている有底円筒状の外部ケース21の開口部21aに着火素子20が嵌め込まれて封着される。着火剤はトリシネートなどの粉末すなわち微粒子状の火薬材料であり、ケース内に押圧により詰込まれる。この着火剤23の表面に着火素子の発熱抵抗体30が圧接密着される。
図3に示すように、着火素子20は、金属環24内側にセラミックなどてできた絶縁基体25を埋めこんだステムベース22を有し、この絶縁基体に2本のリード線がステム電極26、27として並行に貫通し絶縁されて気密封着されている。ステム電極端部の電極端子26a、27aの端面は円形の平面となっており、絶縁基体の表面25aと同一面上に形成される。これらの電極端面26a、27aを除いて例えばポリイミドの有機絶縁層29が塗布されている。ポリイミドの熱伝導率は約0.15であり、絶縁基体に用いる無機材のガラスやセラミクスに比べ熱伝導率は約6分の1以下と低い。
露出した電極端子26a,27aにその間の有機絶縁層29上をまたがって蒸着またはスパッタで堆積された薄膜発熱抵抗体30のパターンが形成される。
図5は発熱抵抗体30のパターンを示す平面図である。発熱抵抗体パターンは、ステム電極端面26a、27aに接続される電極パッド31、32を両端に形成し、中間部の発熱抵抗領域35で橋絡されている。
発熱抵抗体は蒸着またはスパッタで形成される薄膜であるため、膜厚を薄くかつ正確に制御可能で、したがって発熱抵抗領域35の幅を厚みの10倍以上に設定することができる。発熱抵抗体層が薄いのでエッチングによりパターン化するときに抵抗体のエッジはエッチングだれによる変形が少なく抵抗値のばらつきを最小限に抑えることができる。
発熱抵抗体30にニクロム合金を用いる場合、膜厚を約5μmとしたときの発熱抵抗領域35の幅は40μm、長さ44 mmで抵抗値は約750Ωになる。幅広にした分、表面積が増え、発熱の一部が接触する他部に逃げ易く熱容量が増えるが、基体25上に有機絶縁層29を形成することで蓄熱効果があり、実用上支障がない。例えば上記条件の発熱抵抗体では、実装シミュレーションで電流を1.2A流したときに0.1ms後の昇温は常温から300℃になり、例えば着火薬に用いるトリシネートやZn/KClO4の発火温度280℃を超えることを確認している。
薄膜構造はパターン選択が自由であり、電極パッドや発熱抵抗領域の形状配置を任意に設計することができるので、電極端子26a,27a間の距離を発熱抵抗領域の長さに関係なく離すことができる。したがって電極端子間距離をその間に配置する発熱抵抗領域のパターンに応じて設定することができる。
図4で本実施の形態の発熱抵抗体の製造工程を説明する。工程(a)でステムリードを兼ね端部を電極端子26a,27aとする2個の電極26,27をガラスやセラミクスの絶縁基体25に離間して埋め込み、端子面を基体面25aと同一面に配置形成したステムベース22を用意する。絶縁基体25は金属筒体24で外囲されている。本工程において、表面すなわち絶縁基体および電極端子上にポリイミドからなる有機絶縁層29を5μm〜 20μm厚例えば10μm厚に均一に塗布し固化する。
工程(b)において有機絶縁層29上にフォトレジストを塗布し、このレジストをマスクとして、電極端子26a,27a上に位置する有機絶縁層のみを剥離除去した後、フォトレジストを除去する。
工程(c)において有機絶縁層29および露出した電極端子26a,27a面上に、例えばニクロム合金からなる抵抗発熱金属層30aを1μm〜5μm厚例えば5μm厚に均一にスパッタリングにより堆積する。
工程(d)においてフォトレジストをマスクとして用い、抵抗発熱金属層30aをパターンエッチングし、両電極端子26a,27a上及びその近傍の電極パッド部31,32と電極パッド間を橋絡する発熱抵抗領域35からなる発熱抵抗体30のパターンを形成する。
かくして図5に示すように発熱抵抗体30が形成される。
有機絶縁層29は柔軟性があるものがよく、発熱抵抗体と着火剤との圧接をさらに高めることができ、また、発熱抵抗体が薄膜で柔軟性に富み、しかも広面積なので切断等の不具合がない。
図6は他の実施形態を示すもので、ステムの絶縁基体25の表面25aから電極端子26b,27bが突出している場合の着火素子構造を示している。有機絶縁層29を電極端子26b,27bの突出高さと同等またはそれ以上の厚みにすることによって、薄膜発熱抵抗体30のパターン形成を円滑に行うことができる。しかも、絶縁基体表面と電極端子端面とを同一平面にする必要がないので、ステムベースの研磨工程を省略することができる利点がある。
図7の実施形態はステムをディスク状金属ベース35で形成し、このベースに形成した貫通孔36に一方のピン電極26を挿入しガラスなどの絶縁材37で絶縁して封着し、ベース35の底面に他のピン電極38を溶接してベース35自体を電極の一つとした構造である。なお、他の図と同一の符号は同様の部分を示している。金属ベースの一表面35a上に有機絶縁層29を塗布し、その一部を開口して、表面35aの一部35bを露出し、この露出面35bを電極端子の一つとする。この構造は2個の電極端子の離間距離および金属ベース側の電極端子サイズが任意に選択できるので、薄膜発熱抵抗体の設計の自由度を増すことができる。
なお、上記実施形態では有機絶縁層としてポリイミドを挙げたがこれに限定されるものではなく、高分子液晶等の熱可塑性樹脂、エポキシ等の熱硬化性樹脂を適用することができるものである。
10:エアバック装置
13:インフレータ
15:着火装置
20:着火素子
21:外部ケース
22:ステムベース
23:着火剤
25:絶縁基体
26,27:ステム電極
26a、27a:電極端子
29:有機絶縁層
30:発熱抵抗体
31、32:電極パッド
35:発熱抵抗領域
13:インフレータ
15:着火装置
20:着火素子
21:外部ケース
22:ステムベース
23:着火剤
25:絶縁基体
26,27:ステム電極
26a、27a:電極端子
29:有機絶縁層
30:発熱抵抗体
31、32:電極パッド
35:発熱抵抗領域
Claims (3)
- 互いに離れかつ絶縁して一つの平面上に配置された2個の電極端子と、前記平面上に塗布された熱伝導性の低い有機絶縁層と、前記有機絶縁層上に蒸着またはスパッタにより堆積され、前記電極端子間に接続された発熱抵抗体層とを具備することを特徴とする着火素子。
- 互いに離れて配置された2個の電極端子と、これらの電極端子を同一面上に配置した絶縁基体と、前記前記絶縁基体上に塗布され前記絶縁基体よりも熱伝導性の低い有機絶縁層と、前記有機絶縁層上に蒸着またはスパッタにより堆積され、前記電極端子間に接続された発熱抵抗体層とを具備することを特徴とする着火素子。
- 互いに離れて配置された2個の電極端子を同一面上に配置した絶縁基体の前記面を覆って前記絶縁基体よりも熱伝導性の低い有機絶縁層を塗布する工程と、前記電極端子上の前記絶縁層を開口し、前記電極端子の面を露出する工程と、前記絶縁層および前記露出した電極端子面上に発熱抵抗導電層を蒸着またはスパッタにより堆積する工程と、前記発熱抵抗導電層をパターンエッチングして前記2個の電極端子間に発熱抵抗体層を形成する工程とを具備することを特徴とする着火素子の製造方法。
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