JP2006244874A - 発光素子の製造方法、発光素子、発光装置および電子機器 - Google Patents

発光素子の製造方法、発光素子、発光装置および電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】発光効率および耐久性(寿命)に優れる発光素子を容易に製造し得る発光素子の製造方法、かかる製造方法により製造された発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い発光装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】発光素子1は、陰極3と陽極6との間に、主として無機半導体材料で構成される電子輸送層4と、電子輸送層4に接触する発光層Lと、発光層Lに接触する正孔輸送層5とを介挿してなるものであり、電子輸送層4を形成する工程は、チューブ状または粒状の無機半導体材料を堆積させて、無機半導体材料の集合物を層状に形成する第1の工程と、前記集合物に所定の処理を施すことにより、前記無機半導体材料同士の接触界面を接合する第2の工程とを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、発光素子の製造方法、発光素子、発光装置および電子機器に関するものである。
少なくとも一層の発光性有機層(有機エレクトロルミネッセンス層)が、陰極と陽極とに挟まれた構造の有機エレクトロルミネッセンス素子(発光素子)は、無機EL素子に比べて印加電圧を大幅に低下させることができ、多彩な発光色の素子が作製可能である(例えば、非特許文献1〜3、特許文献1〜3参照)。
現在、より高性能な有機EL素子を得るため、材料の開発・改良をはじめ、様々なデバイス構造が提案されており、活発な研究が行われている。
また、この有機EL素子については既に様々な発光色の素子、また高輝度、高効率の素子が開発されており、発光素子の画素としての利用や光源としての利用など多種多様な実用化用途が検討されている。
そして、実用化に向けて、さらなる発光効率および耐久性(寿命)の向上を目指し、種々の研究がなされている。
Appl.Phys.Lett.51(12),21 September 1987,p.913 Appl.Phys.Lett.71(1),7 July 1997,p.34 Nature 357,477 1992 特開平10−153967号公報 特開平10−12377号公報 特開平11−40358号公報
本発明の目的は、発光効率および耐久性(寿命)に優れる発光素子を容易に製造し得る発光素子の製造方法、かかる製造方法により製造された発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い発光装置および電子機器を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光素子の製造方法は、陰極の一方の面側に、電子輸送層を形成する工程と、
該電子輸送層に接触するように発光層を形成する工程と、
該発光層の前記電子輸送層と反対側に陽極を形成する工程とを有する発光素子の製造方法であって、
前記電子輸送層を形成する工程は、チューブ状または粒状の無機半導体材料を堆積させて、前記無機半導体材料の集合物を層状に形成する第1の工程と、
前記集合物に所定の処理を施すことにより、前記無機半導体材料同士の接触界面を接合する第2の工程とを有することを特徴とする。
これにより、発光効率および耐久性(寿命)に優れる発光素子を容易に得ることができる。
本発明の発光素子の製造方法では、前記所定の処理は、前記無機半導体材料を溶解し得る溶剤を、前記無機半導体材料に接触させる処理であり、
前記接合は、前記無機半導体材料の溶解物によりなされることが好ましい。
これにより、電子輸送層の機械的強度に優れた発光素子を容易に得ることができる。
本発明の発光素子の製造方法では、前記溶剤は、酸またはアルカリ溶液であることが好ましい。
これにより、無機半導体材料を溶解し、溶解物を生成することにより、電子輸送層の機械的強度に優れた発光素子を容易に得ることができる。
本発明の発光素子の製造方法では、前記第2の工程において、前記溶解物の一部を、集合物の陰極側に偏在させることが好ましい。
これにより、発光素子の短絡を防止する新たな層を形成することができる。
本発明の発光素子の製造方法では、前記第2の工程の後、前記溶解物を酸化物に変化させる処理を施す第3の工程を有することが好ましい。
これにより、溶解物が化学的により安定なものとなるため、電子輸送層の機械的強度により優れた発光素子を容易に得ることができる。
本発明の発光素子の製造方法では、前記処理は、加熱により行われることが好ましい。
これにより、溶解物を容易かつ安価に酸化物とすることができる。
本発明の発光素子の製造方法では、前記所定の処理は、加熱処理、水熱処理、レーザ照射および電磁波照射のうちの少なくとも1つによる処理であり、
前記接合は、前記無機半導体材料を溶融または軟化することによりなされることが好ましい。
これにより、電子輸送層の機械的強度に優れた発光素子を容易に得ることができる。
本発明の発光素子の製造方法では、前記電子輸送層は、その少なくとも陽極側の部分が多孔質であることが好ましい。
これにより、発光層の形成領域を増大させること、すなわち、電子輸送層への発光材料の付着量(吸着量)を増大させることができる。また、正孔輸送層も、電子輸送層の空孔内に入り込むように形成することができる。
このようなことから、発光層と、電子輸送層および正孔輸送層との接触面積を増大させることができる。その結果、正孔と電子との再結合サイトが広がり、発光効率の高い発光素子を得ることができる。
また、発光サイトが広がることから、発光に寄与する発光材料(分子数)が増大し、各発光材料が変質・劣化する速度(程度)を緩和することができる。すなわち、耐久性(寿命)に優れた発光素子を得ることができる。
本発明の発光素子では、正孔輸送層と、該正孔輸送層が前記電子輸送層を介して前記陰極と接触するのを防止または抑制する機能を有するバリヤ層とを備えることが好ましい。
これにより、発光素子において、経時的に短絡が生じ、発光効率が低下するのを防止すること、すなわち、耐久性(寿命)の向上を図ることができる。
本発明の発光素子では、前記バリヤ層は、その空孔率が前記電子輸送層の空孔率より小さくなるように形成されたものであることが好ましい。
これにより、正孔輸送層が陰極と接触するのをより確実に防止または抑制することができる。また、このような構成のバリヤ層は、比較的容易に形成することができるという利点もある。
本発明の発光素子では、前記バリヤ層の空孔率をA[%]とし、前記電子輸送層の空孔率をB[%]としたとき、B/Aが1.1以上であることが好ましい。
これにより、バリヤ層は、正孔輸送層と陰極との接触をより確実に防止または抑制することができる。
本発明の発光素子では、前記バリヤ層は、その空孔率が20%以下であることが好ましい。
これにより、正孔輸送層と陰極との接触を防止または抑制する効果を、さらに向上させることができる。
本発明の発光素子では、前記バリヤ層と前記電子輸送層との厚さの比率は、1:99〜60:40であることが好ましい。
これにより、バリヤ層は、正孔輸送層と陰極との接触をより確実に防止または抑制することができる。
本発明の発光素子では、前記バリヤ層は、その平均厚さが1μm以下であることが好ましい。
これにより、正孔輸送層と陰極との接触を防止または抑制する効果を、さらに向上させることができる。
本発明の発光素子では、前記バリヤ層は、前記電子輸送層と同等の電気伝導性を有するものであることが好ましい。
これにより、バリヤ層と電子輸送層との間での電子の受け渡しが円滑に行われるようになる。
本発明の発光素子では、前記バリヤ層は、MOD法により形成されたものであることが好ましい。
MOD法によれば、バリヤ層形成用材料中において、バリヤ層の構成材料の前駆体の反応(例えば、加水分解、重縮合等)が防止されるため、バリヤ層をより容易かつ確実に(再現性よく)形成することができる。また、得られるバリヤ層を、緻密な(前記範囲内の空孔率の)ものとすることができる。
本発明の発光素子では、前記バリヤ層と前記電子輸送層との全体における厚さ方向の抵抗値が100Ω/cm以上であることが好ましい。
これにより、正孔輸送層と電極との間でのリーク(短絡)をより確実に防止または抑制することができ、発光素子の耐久性(寿命)のさらなる向上を図ることができる。
本発明の発光素子では、前記バリヤ層は、前記陰極と前記電子輸送層との間に位置することが好ましい。
これにより、バリヤ層は、正孔輸送層と陰極との接触をより確実に防止または抑制することができる。
本発明の発光素子では、前記バリヤ層と前記電子輸送層との界面は、不明確であることが好ましい。
これにより、バリヤ層と電子輸送層との間での電子の受け渡しがより確実に(効率よく)行われるようになる。
本発明の発光素子では、前記バリヤ層と前記電子輸送層とは、一体的に形成されていることが好ましい。
これにより、バリヤ層と電子輸送層との間での電子の受け渡しがより確実に(効率よく)行われるようになる。
本発明の発光素子では、前記電子輸送層の一部が、前記バリヤ層として機能することが好ましい。
これにより、バリヤ層と電子輸送層との間での電子の受け渡しがより確実に(効率よく)行われるようになる。
本発明の発光素子では、発光層と陰極との間に、正孔輸送層を有することが好ましい。
これにより、発光効率をより向上させることができる。
本発明の発光素子では、前記正孔輸送層の少なくとも前記発光層側の領域(以下、「第1の領域」と言う。)が、主として電解質組成物で構成されていることが好ましい。
これにより、発光効率をさらに向上させることができる。
本発明の発光素子では、前記電解質組成物は、液状またはゲル状をなしていることが好ましい。
これにより、正孔輸送層と発光層との接触面積をより増大させることができる。その結果、発光素子の発光効率をより向上させることができる。
本発明の発光素子では、前記電解質組成物は、電解質として、I/I系が好ましい。
この電解質は、酸化還元反応が効率よく行われるものであり、かかる電解質を含有する第1の領域は、正孔の輸送能に特に優れたものとなる。
本発明の発光素子では、前記正孔輸送層は、その前記陽極側に、主として高分子材料で構成される第2の領域を有することが好ましい。
これにより、第1の領域が直接陽極に接触するのを防止することや、正孔を第1の領域へ効率よく注入することができる。かかる第2の領域を設けることにより、発光素子の発光効率をより向上させることができる。
本発明の発光素子では、前記第2の領域は、前記陽極に接触していることが好ましい。
これにより、発光素子の大型化(特に、厚膜化)や、正孔の第1の領域への注入効率が低下するのを確実に防止することができる。
本発明の発光素子では、前記第2の領域は、前記電解質組成物を主材料として構成される領域に接触していることが好ましい。
これにより、発光素子の大型化(特に、厚膜化)や、正孔の第1の領域への注入効率が低下するのを確実に防止することができる。
本発明の発光素子では、前記高分子材料は、ポリチオフェン系化合物を含有することが好ましい。
これにより、第1の領域への正孔の注入効率をより向上させることができる。その結果、正孔輸送層全体における正孔の輸送効率がより向上する。
本発明の発光素子では、前記正孔輸送層は、その平均厚さが0.1〜100μmであることが好ましい。
これにより、発光素子が大型化(特に、厚膜化)するのを防止しつつ、十分な発光効率が得られる。
本発明の発光素子では、前記陰極が正、前記陽極が負となるようにして、0.5Vの電圧を印加したとき、抵抗値が100Ω/cm以上となる特性を有することが好ましい。
かかる特性は、発光素子において、陰極と陽極との間での短絡(リーク)が好適に防止または抑制されていることを示すものであり、このような特性を有する発光素子は、発光効率が特に高いものとなる。
本発明の発光素子の製造方法では、前記無機半導体材料は、金属酸化物を主成分とするものであることが好ましい。
金属酸化物は、電子輸送能に特に優れることから好ましい。
本発明の発光素子の製造方法では、前記無機半導体材料は、酸化チタンを主成分とするものであることが好ましい。
酸化チタンは、化学的に特に安定で、チューブ状のものが容易に得られ、また、電子輸送能に特に優れるものである。
本発明の発光素子は、本発明の発光素子の製造方法で製造されたことを特徴とする。
これにより、発光効率および耐久性(寿命)に優れる発光素子が得られる。
本発明の発光装置は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い発光装置が得られる。
本発明の電子機器は、本発明の発光装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
以下、本発明の発光素子の製造方法、発光素子、発光装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の発光素子の実施形態の縦断面を模式的に示す図、図2は、図1に示す発光素子における各部(各層)の界面付近を拡大して示す図、図3は、図1に示す発光素子における電子輸送層、発光層および正孔輸送層の界面付近を、さらに拡大して示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図3中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
図1に示す発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)1は、陰極3と、陽極6と、陰極3と陽極6との間に、電子輸送層4と発光層(発光部位)Lと正孔輸送層5とが介挿され、さらに、電子輸送層4と陰極3との間にバリヤ層8が設けられてなるものである。そして、発光素子1は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材7で封止されている。
基板2は、発光素子1の支持体となるものである。本実施形態の発光素子1は、基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)であるため、基板2および陰極3には、それぞれ、透明性は特に要求されない。
基板2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等で構成される透明基板や、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、不透明な樹脂材料で構成された基板のような不透明基板を用いることができる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
なお、発光素子1が基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)の場合、基板2および陰極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明、半透明)とされる。
陰極3は、後述する電子輸送層4に電子を注入する電極である。この陰極3の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極3の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
特に、陰極3の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極3の構成材料として用いることにより、陰極3の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極3の平均厚さは、特に限定されないが、100〜10000nm程度であるのが好ましく、200〜500nm程度であるのがより好ましい。
また、陰極3の表面抵抗は低い程好ましく、具体的には、50Ω/□以下であるのが好ましく、20Ω/□以下であるのがより好ましい。表面抵抗の下限値は、特に限定されないが、通常0.1Ω/□程度であるのが好ましい。
一方、陽極6は、後述する正孔輸送層5に正孔を注入する電極である。この陽極6の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
陽極6の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような陽極6の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
また、陽極6の表面抵抗も低い程好ましく、具体的には、100Ω/□以下であるのが好ましく、50Ω/□以下であるのがより好ましい。表面抵抗の下限値は、特に限定されないが、通常0.1Ω/□程度であるのが好ましい。
電子輸送層4は、陰極3から注入された電子を、発光層Lまで輸送する機能を有するものである。また、陰極3に、後述する正孔輸送層5が接触するのを防止する機能、すなわち、後述するバリヤ層8と同様の機能も有する。
この電子輸送層4は、緻密質であってもよいが、図2および図3に示すように、多孔質であるのが好ましい。
これにより、後述する発光層Lの形成領域を増大させること、すなわち、電子輸送層4への発光材料の付着量(吸着量)を増大させることができる。また、後述する正孔輸送層5も、電子輸送層4の空孔内に入り込むように形成することができる。
このようなことから、発光層Lと、電子輸送層4および正孔輸送層5との接触面積を増大させることができる。その結果、正孔と電子との再結合サイトが広がり、発光素子1の発光効率が向上する。
また、発光サイトが広がることから、発光に寄与する発光材料(分子数)が増大し、各発光材料が変質・劣化する速度(程度)を緩和することができる。すなわち、発光素子1の耐久性(寿命)の向上を図ることができる。
電子輸送層4は、その機械的強度(膜強度)が著しく低下しない範囲で、空孔率ができる限り大きいのが好ましく、具体的には、20〜75%程度であるのが好ましく、35〜60%程度であるのがより好ましい。これにより、電子輸送層4の機械的強度が低下するのを防止しつつ、電子輸送層4に、より多くの発光材料を付着させることができるとともに、正孔輸送層5を電子輸送層4のより内部深くまで入り込ませることができる。
電子輸送層4は、無機半導体材料を主材料として構成されている。無機半導体材料は、化学的に安定であることから、電子輸送層4を無機半導体材料を主材料として構成することにより、発光素子1の耐久性をより向上させることができる。
このような電子輸送層4は、図3に示すように、チューブ状の無機半導体材料41(以下、単に「チューブ41」と言う。)および/または粒状の無機半導体材料42(以下、単に「粒子42」と言う。)を主材料として構成されている。そして、このチューブ41の外周面や内周面、および粒子42の表面には、後述するような発光材料が結合(吸着)している。
チューブ41は、その長手方向の電子移動度が高い。したがって、電子輸送層4がチューブ41を含有することにより、電子輸送層4全体の電子輸送能をより向上させることができる。
また、チューブ41は、その比表面積が大きいため、チューブ41の表面への発光材料の結合量を増大させることができ、また、発光材料と後述する正孔輸送層5との接触面積を十分に確保することができる。その結果、発光素子1の発光効率をより向上させることができる。
ここで、電子輸送層4が含有するチューブ41は、その外径が3〜70nm程度であるのが好ましく、5〜50nm程度であるのがより好ましい。チューブ41の外径が前記範囲内にあることにより、チューブ41の機械的強度が高くなり、安定した電子輸送を行うことができる。
また、チューブ41の長さは、5〜300nm程度であるのが好ましく、10〜200nm程度であるのがより好ましい。チューブ41の長さが前記下限値より短い場合、電子輸送能が低下するおそれがある。また、チューブ41の長さが前記上限値より長い場合、チューブ41同士の間隙が大きくなり易く、チューブ41と発光材料との結合量が低下するおそれがある。
また、チューブ41の比表面積は、50〜2000m/g程度であるのが好ましく、100〜1500m/g程度であるのがより好ましい。チューブ41の比表面積が前記範囲内にあることにより、チューブ41と発光材料との結合量がより大きなものとなる。
なお、チューブ41は、その外径がほぼ一定な略円筒形の他、その外径が一方の端に向かって徐々に拡大または縮小する略円錐形(ホーン状)をなすもの、長手方向の途中で分岐するようなY字状をなすもの、または、これらが同心的に重なり合ったもの等であってもよい。
また、電子輸送層4が粒子42を含有することにより、チューブ41同士の間隙を充填することができ、チューブ41同士の間における電荷(電子)のホッピング(飛び移り)を助長することができる。このため、電子輸送層4全体としての電子輸送能をさらに向上させることができる。
粒子42の平均粒径は、10〜150nm程度であるのが好ましく、20〜100nm程度であるのがより好ましい。粒子42の平均粒径が前記範囲内にあることにより、チューブ41同士の間隙をより効果的に充填し、電子輸送層4全体としての電子輸送能をより向上させることができる。
電子輸送層4において、チューブ41と、粒子42との比率は、重量比で95:5〜60:40程度であるのが好ましく、90:10〜70:30程度であるのがより好ましい。これにより、電子輸送層4における前記効果をより顕著なものとすることができる。
また、これらのチューブ41同士、粒子42同士およびチューブ41と粒子42の間の各接触界面(以下、単に「接触界面」と言う。)は、例えば、チューブ41および粒子42を構成する無機半導体材料の溶解物、該溶解物の酸化物、無機半導体材料が一旦溶融または軟化した後、固化した固化物等で接合されている。
この接合により、接触界面おける強度が向上し、電子輸送層4全体としての機械的強度を向上させることができる。また、接触界面における電子の移動が起こり易くなるという利点もある。
このようなチューブ41および粒子42を構成する無機半導体材料としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化スズ(SnO)、ScVO、YVO、LaVO、NdVO、EuVO、GdVO、ScNbO、ScTaO、YNbO、YTaO、ScPO、ScAsO、ScSbO、ScBiO、YPO、YSbO、BVO、AlVO、GaVO、InVO、TlVO、InNbO、InTaOのような金属酸化物、ZnS、CdSのような金属硫化物、CdSeのような金属セレン化物、TiC、SiCのような金属または半導体炭化物、BN、BNのような半導体窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、無機半導体材料としては、金属酸化物を主成分とするものが好ましい。金属酸化物は、電子輸送能に特に優れることから好ましい。
また、金属酸化物の中でも、無機半導体材料としては、酸化チタン(TiO)を主成分とするものがより好ましい。酸化チタンは、化学的に特に安定で、チューブ状のものが容易に得られ、また、電子輸送能に特に優れるものである。
以下、酸化チタンを主材料とするチューブ41の製造方法を代表に説明する。
まず、酸化チタンを合成する。
この酸化チタンの合成には、例えば、ゾル・ゲル法、気相法、液相法等の方法を用いることができる。
例えば、ゾル・ゲル法では、まず、酸化チタンの前駆体であるチタンイソプロポキシド等のチタンアルコキシドと溶媒を混合した溶液を調製し、この溶液に酸を添加する。
溶媒は、少なくとも水を含有しないもの、例えば、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)が好適に用いられる。
また、酸としては、例えば、硝酸、塩酸、酢酸等を用いることができる。
次いで、この溶液に水を添加することにより、前駆体を加水分解させるとともに、溶媒および水を除去して、ゲル化物を得る。そして、このゲル化物を高温で焼成することにより、酸化チタンを得る。
ここで、前駆体を加水分解させる際は、溶液を加熱するのが好ましい。これにより、得られる酸化チタンの結晶性を高めたり、粒子の成長を促進させ、得られるチューブ41の電子移動度の向上を図ることができる。
気相法は、含水酸化チタンを高温で焼成することにより、酸化チタンを得る方法である。
まず、イルメナイト鉱等のチタンを含有する鉱石を硝酸、硫酸等の強酸と反応させ、硝酸チタン、硫酸チタン等の塩を含有する溶液を得る。
次いで、この溶液中の塩を加水分解して、不溶性の含水酸化チタンを沈殿させ、溶液中の溶媒を除去することにより、含水酸化チタンを得る。そして、この含水酸化チタンを高温で焼成することにより、酸化チタンを得る。
この焼成における焼成温度は、通常800〜900℃程度とするのが好ましい。
液相法は、四塩化チタンを酸素および水素とともに加熱することにより、酸化チタンを得る方法である。これにより、四塩化チタンは、チタン単体に変化するとともに酸化され、酸化チタンとなる。
次に、得られた酸化チタンからチューブ41を得る。
まず、酸化チタンを、アルカリ性溶液中に添加し、アルカリ処理を行う。
アルカリ性溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物水溶液の他、水酸化マグネシウムや水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物水溶液、アンモニア水溶液等が挙げられる。
また、アルカリ処理では、加熱を伴うのが好ましく、その加熱条件は、通常、加熱温度が60〜150℃程度、加熱時間が10〜20時間程度である。
次に、酸化チタンを添加したアルカリ性溶液に、塩酸および純水を添加し、溶液の水素イオン濃度(pH)が、6.5〜7.5程度になるように中和処理を行う。
次に、溶液中の溶媒を除去し、沈殿物を1〜10時間程度、混練することにより、チューブ41を得ることができる。
混練方法としては、特に限定されないが、例えば乳鉢を用いた混練等が挙げられる。
なお、本実施形態では、酸化チタンを主材料とするチューブ41の製造方法を代表に説明したが、他の無機半導体材料を主材料とするチューブ41も酸化チタンと同様の製造方法を用いて製造することができる。
このような電子輸送層4の平均厚さは、特に限定されないが、1〜50μm程度であるのが好ましく、5〜30μm程度であるのがより好ましい。これにより、電子輸送層4の機械的強度(膜強度)が低下するのを防止しつつ、発光素子1の薄型化を図ることができる。
電子輸送層4には、図3に示すように、その外面および空孔の内面に沿って、発光層(発光部位)Lが形成されている。
この発光層Lでは、電子輸送層4を介して輸送された電子と、後述する正孔輸送層5を介して輸送された正孔とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)が放出される。すなわち、発光層Lが発光する。
このような発光層Lの構成材料(発光材料)としては、各種高分子の発光材料、各種低分子の発光材料を単独または任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。
高分子の発光材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物、ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物、ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物等が挙げられる。
一方、低分子の発光材料としては、例えば、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸が3配位したイリジウム錯体、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート) アルミニウム(III)(Almq)、8−ヒドロキシキノリン 亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン プラチナム(II)のような各種金属錯体、ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物等が挙げられる。
これらの中でも、発光層Lの構成材料としては、金属錯体を主成分とするものが好ましい。金属錯体を主成分とする発光材料は、無機半導体材料へ比較的容易かつ多量に付着させ易く、また、発光特性に優れる点でも好ましい。
また、このような発光材料の電子輸送層4への付着量は、特に限定されないが、電子輸送層4の1cm当り、1×10−9〜1×10−6mol程度であるのが好ましく、1×10−9〜1×10−7mol程度であるのがより好ましい。かかる量の発光材料を電子輸送層4に付着させることにより、発光素子1の発光効率をより向上させることができる。
なお、発光材料は、層を構成せず、電子輸送層4の外面および空孔の内面に、散点状に付着(吸着)していてもよい。かかる構成の場合、電子輸送層4と発光材料とを合わせた全体を、発光層と呼ぶこともできる。
このような発光層Lに接触して、正孔輸送層5が設けられている。
正孔輸送層5は、陽極6から注入された正孔を、発光層Lまで輸送する機能を有するものである。
本実施形態の正孔輸送層5は、発光層L(電子輸送層4)側の第1の領域51と、陽極6側の第2の領域52とで構成されている。
第1の領域51は、電解質組成物を主材料として構成されている。電解質組成物は、正孔の輸送能に優れるため、正孔輸送層5の一部を電解質組成物を主材料として構成することにより、発光素子1の発光効率を向上させることができる。
また、電解質組成物は、固体状のものであってもよいが、液状またはゲル状をなすものが好ましい。これにより、電子輸送層4のより内部深くにまで、電解質組成物を充填することができ、正孔輸送層5と発光層Lとの接触面積をより増大させることができる。その結果、発光素子1の発光効率をより向上させることができる。
この電解質組成物に用いる電解質としては、特に限定されないが、例えば、I/I系、Br/Br系、Cl/Cl系、F/F系のようなハロゲン系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられ、これらを単独または混合系として用いることができる。
これらの中でも、電解質としては、I/I系が好ましい。この電解質は、酸化還元反応が効率よく行われるものであり、かかる電解質を含有する第1の領域51は、特に、正孔の輸送能に特に優れたものとなる。
I/I系の電解質の具体例としては、例えば、Iと、LiI、NaI、KI、CsI、CaIのような金属ヨウ化物や、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドのような4級アンモニウム化合物ヨウ素塩等との組み合わせ等が挙げられる。
また、電解質組成物に用いる溶媒としては、例えば、各種水、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートのようなカーボネート類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンのような多価アルコール類、炭酸プロピレン等が挙げられ、これらを単独または混合溶媒として用いることができる。これらの溶媒を用いることにより、イオン伝導性に優れた電解質組成物が得られる。
電解質組成物中の電解質全体の濃度は、特に限定されないが、0.1〜25wt%程度であるのが好ましく、0.5〜15wt%程度であるのがより好ましい。
また、電解質組成物には、t−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジンのような塩基性化合物を添加するのが好ましい。
さらに、電解質組成物中に、I:ポリマーを添加する方法、II:オイルゲル化剤を添加する方法、III:ポリマー前駆体を添加しておき、これを重合する方法、IV:ポリマーを添加しておき、これに架橋反応を生じさせる方法等により、電解質組成物をゲル化することができる。
Iの場合、ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のような熱可塑性樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ポリマーとしては、特に、ポリアクリロニトリルおよびポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも一方を主成分とするものが好ましい。
IIの場合、オイルゲル化剤としては、アミド構造を有する化合物が好適に用いられる。
IIIの場合、ポリマー前駆体としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、嫌気硬化性樹脂のような各種硬化性樹脂の前駆体等が挙げられる。
IVの場合、反応性基を含有するポリマーと、この反応性基と架橋反応する架橋剤とを併用するのが好ましい。
反応性基としては、例えば、アミノ基、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、ハロゲン化アルキル類、ハロゲン化アラルキル類、スルホン酸エステル類、酸無水物、酸クロライド類、イソシアネート化合物、α,β−不飽和スルホニル化合物、α,β−不飽和カルボニル化合物、α,β−不飽和ニトリル化合物等が挙げられる。
第2の領域52は、固体状の層(または膜)であり、第1の領域51が直接陽極6に接触するのを防止する機能を有している。かかる第2の領域52を設けることにより、正孔輸送層5と陽極6との界面抵抗を低減させることができ、正孔を第1の領域51へ効率よく注入することができる。その結果、発光素子1の発光効率をより向上させることができる。
この第2の領域52の構成材料には、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
また、前記化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
一方、p型の低分子材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、m−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられる。
これらの中でも、第2の領域52の構成材料としては、高分子材料を主とするものが好ましい。第2の領域52を、高分子材料を主材料として構成することにより、第1の領域51の陽極6への接触を防止する機能や、正孔の第1の領域51への注入効率を向上する機能により優れたものとすることができる。
特に、第2の領域52の構成材料としては、ポリチオフェン化合物を含有するもの、特に、前述のPEDOT/PSSが好適である。これにより、第1の領域51への正孔の注入効率をより向上させることができる。
第2の領域52は、第1の領域51と陽極6との間に設けるようにすれば、前記効果が十分に発揮されるが、第1の領域51と陽極6との少なくとも一方と接触しているのが好ましく、双方と接触しているのがより好ましい。これにより、発光素子1の大型化(特に、厚膜化)や、正孔の第1の領域51への注入効率が低下するのを確実に防止することができる。
このような正孔輸送層5の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜100μm程度であるのが好ましく、1〜30μm程度であるのがより好ましい。これにより、発光素子1が大型化(特に、厚膜化)するのを防止しつつ、十分な発光効率が得られる。
なお、第1の領域51および第2の領域52のいずれか一方は、必要に応じて、省略することができる。
第1の領域51を省略する場合、すなわち、正孔輸送層5全体を固形状とする場合、前述したようなp型の有機半導体材料の他、例えば、CuI、AgIのようなヨウ化金属化合物、AgBrのような臭化金属化合物等のハロゲン化金属化合物、CuSCNのようなチオシアン酸金属塩(ロダン化金属化合物)等のp型の無機半導体材料を用いることができる。
また、正孔輸送層5自体を、必要に応じて、省略することができる。この場合、後述するバリヤ層8も省略することができる。
封止部材7は、陰極3、発光層Lが形成された電子輸送層4、正孔輸送層5および陽極6を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材7を設けることにより、発光素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
封止部材7の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材7の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材7と陰極3、発光層Lが形成された電子輸送層4、正孔輸送層5および陽極6との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
また、封止部材7は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
このような発光素子1において、電子輸送層4と陰極3との間には、正孔輸送層5(第1の領域51)が電子輸送層4を介して陰極3と接触するのを防止または抑制する機能を有するバリヤ層(下地層)8が設けられている。
バリヤ層8を設けることにより、発光素子1において、経時的に短絡が生じ、発光効率が低下するのを防止すること、すなわち、耐久性(寿命)の向上を図ることができる。
このバリヤ層(短絡防止手段)8は、正孔輸送層5が陰極3と接触するのを防止することができれば、その構成は任意であるが、図2に示すように、その空孔率が電子輸送層4の空孔率より小さくなるように形成されたものであるのが好ましい。このような構成とすることにより、正孔輸送層5が陰極3と接触するのをより確実に防止または抑制することができる。また、このような構成のバリヤ層8は、比較的容易に形成することができる。
バリヤ層8の空孔率をA[%]とし、電子輸送層4の空孔率をB[%]としたとき、B/Aは、1.1以上であるのが好ましく、5以上であるのがより好ましく、10以上であるのがさらに好ましい。これにより、バリヤ層8は、正孔輸送層5と陰極3との接触をより確実に防止または抑制することができる。
具体的には、バリヤ層8の空孔率Aは、20%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましく、2%以下であるのがさらに好ましい。すなわち、バリヤ層8は、緻密層であるのが好ましい。これにより、前記効果をさらに向上させることができる。
また、バリヤ層8と電子輸送層4との厚さの比率は、特に限定されないが、1:99〜60:40程度であるのが好ましく、10:90〜40:60程度であるのがより好ましい。換言すれば、バリヤ層8と電子輸送層4との全体におけるバリヤ層8の占める厚さの割合は、1〜60%程度であるのが好ましく、10〜40%程度であるのがより好ましい。これにより、バリヤ層8は、正孔輸送層5と陰極3との接触をより確実に防止または抑制することができる。
具体的には、バリヤ層8の平均厚さは、3μm以下であるのが好ましく、0.1〜1μm程度であるのがより好ましい。これにより、前記効果をさらに向上させることができる。
バリヤ層8の構成材料としては、特に限定されず、例えば、前記電子輸送層4で挙げた各種無機半導体材料の他、各種有機半導体材料、SiOのような各種無機絶縁体材料、各種有機絶縁体材料等を用いることができるが、これらの中でも、電子輸送層4と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、電子輸送層4を構成する無機半導体材料と同一組成の材料を用いるのがより好ましい。これにより、バリヤ層8と電子輸送層4との間での電子の受け渡しが円滑に行われるようになる。
また、バリヤ層8および電子輸送層4の厚さ方向の抵抗値は、それぞれ、特に限定されないが、バリヤ層8と電子輸送層4との全体における厚さ方向の抵抗値、すなわち、バリヤ層8と電子輸送層4との積層体の厚さ方向の抵抗値は、100Ω/cm以上であるのが好ましく、1kΩ/cm以上であるのがより好ましい。これにより、正孔輸送層5と陰極3との間でのリーク(短絡)をより確実に防止または抑制することができ、発光素子1の耐久性(寿命)のさらなる向上を図ることができる。
また、バリヤ層8と電子輸送層4との界面は、明確でなくても、明確であってもよいが、明確でない(不明確である)こと、すなわち、バリヤ層8と電子輸送層4とが互いに部分的に重なっていること好ましい。
さらに、バリヤ層8と電子輸送層4とは、図2に示すように一体化していること、すなわち、バリヤ層8と電子輸送層4とが一体的に形成されていることが好ましい。これにより、バリヤ層8と電子輸送層4との間での電子の受け渡しがより確実に(効率よく)行われるようになる。
また、バリヤ層8は、陰極3と電子輸送層4との間に設けるようにすれば、前記効果が十分に発揮されるが、陰極3と電子輸送層4との少なくとも一方と接触しているのが好ましく、双方と接触しているのがより好ましい。これにより、発光素子1の大型化(特に、厚膜化)や、電子の発光層Lへの注入効率が低下するのを防止することができる。
なお、バリヤ層8の設置位置は、図示のものに限定されず、例えば、電子輸送層4と発光層Lとの間等に設けるようにしてもよい。
また、電子輸送層4の厚さ方向に、密な部分と粗な部分とを設け、密な部分をバリヤ層8として機能させることもできる。
この場合、密な部分は、電子輸送層4の厚さ方向の任意の位置に、任意の数設けることができる。具体的には、電子輸送層4は、陰極3側に密な部分を一箇所設ける構成、発光層L側に密な部分を一箇所設ける構成、密な部分で粗な部分を挟んだ部分を有する構成や、粗な部分で密な部分を挟んだ部分を有する構成等とすることもできる。
このような発光素子1は、陰極3が正、陽極6が負となるようにして、0.5Vの電圧を印加したとき、その抵抗値が、100Ω/cm以上となる特性を有するのが好ましく、1kΩ/cm以上となる特性を有するのがより好ましい。かかる特性は、発光素子1において、陰極3と陽極6との間での短絡(リーク)が好適に防止または抑制されていることを示すものであり、このような特性を有する発光素子1は、発光効率が特に高いものとなる。
このような発光素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
[1] まず、基板2を用意し、基板2上に陰極3を形成する。
この陰極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射法のような気相成膜法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、ゾル・ゲル法、MOD法のような液相成膜法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
[2] 次に、陰極3上にバリヤ層8を形成する。
このバリヤ層8は、例えば、ゾル・ゲル法、蒸着(真空蒸着)法、スパッタリング法(高周波スパッタリング、DCスパッタリング)、スプレー熱分解法、ジェットモールド(プラズマ溶射)法、CVD法等により形成することができるが、これらの中でも、ゾル・ゲル法により形成するのが好ましい。
このゾル・ゲル法は、その操作が極めて簡単である。また、ゾル・ゲル法を用いることにより、バリヤ層8を形成するためのバリヤ層形成用材料を、例えば、ディッピング法、滴下、ドクターブレード法、スピンコート法、刷毛塗り、スプレーコート法、ロールコート法等の各種塗布法により供給することが可能であり、大掛かりな装置も必要とせず、所望の膜厚のバリヤ層8を比較的容易に形成することができる。
特に、バリヤ層8の形成には、ゾル・ゲル法の一種であるMetal Organic Deposition(またはDecomposition)法(以下、「MOD法」と略す。)を用いるのが好ましい。
このMOD法によれば、バリヤ層形成用材料中において、バリヤ層8の構成材料の前駆体の反応(例えば、加水分解、重縮合等)が防止されるため、バリヤ層8をより容易かつ確実に(再現性よく)形成することができる。また、得られるバリヤ層8を、緻密な(前記範囲内の空孔率の)ものとすることができる。
バリヤ層8を酸化チタンを主材料として構成する場合、その前駆体としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド(TPT)、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラブトキシド等の有機チタン化合物を用いることができる。
[3] 次に、バリヤ層8上に、電子輸送層4を形成する。
以下、各工程について順次説明する。
[3−1] まず、チューブ41および粒子42を含有する分散液を調製する。
分散液の調製に用いる分散媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n−またはi−プロパノール、n−、s−またはt−ブタノールのような単価アルコール類、エチレングリコール、トリメチレングリコールのようなグリコール類(多価アルコール類)、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセチルアセトン、イソホロンのようなケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、メトキシエタノール、エトキシエタノールのようなエーテルアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル類、酸アミド類、芳香族炭化水素類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、分散媒としては、水、アルコール類、グリコール類等を用いるのが好ましい。これらの液体を用いることにより、分散液中にチューブ41および粒子42を良好に分散させることができ、バリヤ層8上への分散液の供給を容易かつ確実に行うことができる。
分散液中におけるチューブ41および粒子42の含有量は、5〜90wt%程度であるのが好ましく、10〜30wt%程度であるのがより好ましい。チューブ41および粒子42の含有量が少な過ぎると、目的とする厚さの電子輸送層4を形成するのに必要以上に時間と手間を要するおそれがある。一方、チューブ41および粒子42の含有量が多過ぎると、チューブ41および粒子42の分散液中での分散性が低下し、分散液の調製やバリヤ層8上への供給が困難になるおそれがある。
また、分散液中には、必要に応じて、分散媒へのチューブ41および粒子42の分散性を向上させる分散剤を添加する。
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールのようなノニオン性の有機系分散剤等の揮発性の分散剤、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)のようなアニオン性の有機系分散剤、4級アンモニウム塩のようなカチオン性の有機系分散剤、燐酸三カルシウムのような無機系分散剤等の不揮発性の分散剤等が挙げられる。また、これらの分散剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
これらの中でも、分散剤としては、特に、揮発性の分散剤が好ましい。揮発性の分散剤は、電子輸送層4の形成後(完成後)には、残留することがないので、電子輸送層4の特性に悪影響を与えるおそれが少ないためである。
分散液が分散剤を含有する場合、分散液中における分散剤の含有量は、特に限定されないが、1.0wt%以下であるのが好ましく、0.01〜0.5wt%程度であるのがより好ましい。
また、分散液の調製に際しては、分散液中において、チューブ41と粒子42とを均一に分散させるようにするのが好ましい。これにより、得られる電子輸送層4中において、チューブ41と粒子42とをより均一に分布(存在)させることができる。その結果、電子輸送層4の各部における電子移動度等の特性のバラツキをより確実に抑制することができる。
このチューブ41と粒子42とを均一に分散させる方法としては、例えば、分散液を十分に攪拌する方法、分散液に超音波を与える方法等が挙げられる。
[3−2] 次に、図4(a)に示すように、調製した分散液をバリヤ層8上に供給して、液状被膜43を形成し、その後、液状被膜43中の分散媒の少なくとも一部を除去することにより、図4(b)に示すように、チューブ41と粒子42の集合物44を層状に形成する(第1の工程)。
分散液の供給方法としては、特に限定されないが、例えば、ディップコート法、スピンコート法、スリットコート法、キャップコート法、ディスペンサー法、スプレーコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いるのが好適である。塗布法によれば、容易かつ確実に液状被膜43をバリヤ層8上に形成することができる。
また、分散媒を除去する方法としては、例えば、加熱、大気圧または減圧雰囲気下での放置、不活性ガス(例えば、窒素ガス等)の噴射等の方法が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、加熱による方法が特に好ましい。これにより、容易かつ均一に分散媒の除去を行うことができる。
[3−3] 次に、図4(c)に示すように、集合物44に所定の処理を施すことにより、接触界面を接合する(第2の工程)。
ここで、前記所定の処理には、チューブ41および粒子42の一部を溶解する方法と、チューブ41および粒子42の接触界面付近を溶融または軟化させる方法とが挙げられる。
以下、これらの場合についてそれぞれ説明する。
[3−3A] チューブ41および粒子42を溶解する場合
まず、集合物44に、チューブ41および粒子42(無機半導体材料)を溶解し得る溶剤を接触させる。これにより、チューブ41および粒子42の表面を溶解するとともに、溶解物が生成する。
溶剤としては、特に限定されないが、酸またはアルカリ溶液を用いることが好ましい。かかる溶液を用いることにより、チューブ41および粒子42を構成する無機半導体材料を容易にイオン等に変化させて、溶剤中に溶解(溶出)させることができる。
具体的には、酸溶液としては、塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、ホウ酸、ホウフッ化水素酸のような無機酸や、酢酸、クエン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸のような有機酸のうちの1種または2種以上を組み合わせたものを含有する溶液が挙げられる。
また、アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアのような無機アルカリや、ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミンのような有機アルカリのうちの1種または2種以上を組み合わせたものを含有する溶液が挙げられる。
溶剤中における酸またはアルカリの含有量は、用いる酸またはアルカリの種類によっても若干異なるが、1〜8mol/L程度であるのが好ましく、3〜6mol/L程度であるのがより好ましい。酸またはアルカリの含有量を前記範囲内とすることにより、チューブ41および粒子42の表面を確実に溶解させることができる。
また、溶剤を調製する際に用いる溶媒としては、前記工程[3−1]で説明した分散液を調製する際に用いる分散媒と同様のものを用いることができる。
これらの中でも、溶媒としても、水、アルコール類、グリコール類等を用いるのが好ましい。これらの液体を用いることにより、溶媒中に酸またはアルカリを良好に溶解させることができ、集合物44への供給を容易かつ確実に行うことができる。
溶剤を集合物44に接触させる方法としては、特に限定されず、例えば、前記工程[3−2]で説明した各種塗布法を用いて溶剤を供給し、毛細管現象によって集合物44中に浸透させる方法を用いることができる。
また、所定の処理として、チューブ41および粒子42を溶解する場合、溶解物の一部を集合物44の陰極側に偏在させるようにするのが好ましい。
これにより、溶解物が集合物44中の間隙を閉塞して、新たな層が形成される。この新たな層は、その空孔率が電子輸送層4より低くなるため、正孔輸送層5が陰極3と接触するのを防止するバリヤ層として機能させることができる。
したがって、前述したバリヤ層8を省略することができる。
ここで、溶解物を陰極3側に偏在させる方法としては、例えば、自重による移動、遠心分離、加圧等の方法が挙げられる。
また、接触界面を溶解物で接合した後、溶解物を酸化物に変化させる処理を施すようにしてもよい(第3の工程)。溶解物としては、例えば、無機半導体材料が溶解して生成した塩等が挙げられる。
このような溶解物は、酸化物に変化することにより、化学的により安定なものなり、電子輸送層4の特性の向上を図ることができる。
溶解物を酸化物に変化させる方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱処理、光照射、レーザ照射または電磁波照射等の方法を用いることができるが、これらの中でも加熱処理を用いるのが好ましい。加熱によれば、溶解物を容易かつ安価に酸化物とすることができる。
例えば、溶解物が無機物塩である場合には、加熱により無機物塩が分解した後、雰囲気中の酸素原子が無機物と結合することにより、無機酸化物が生成する。
また、溶解物を酸化物に変化させる上記の方法は、酸化雰囲気下で行うのが好ましい。これにより、溶解物をより確実に酸化物に変化させることができる。
加熱温度は、50〜500℃程度であるのが好ましく、150〜350℃程度であるのがより好ましい。加熱温度が低過ぎると、溶解物の酸化物への変化が十分に進行しないおそれがある。一方、熱処理の温度を前記上限値を超えて高くしても、それ以上の効果が見込めない。
加熱時間は、1〜50分程度であるのが好ましく、5〜30分程度であるのがより好ましい。前記範囲の加熱時間で、溶解物の酸化物への変化を十分に進行させることができる。
また、前記工程[3−2]と本工程とをともに加熱処理を選択して行うこと、すなわち、液状被膜43からの分散媒の除去と、溶解物の酸化とをともに加熱により行うことにより、これらの工程を連続的に行うことができる。その結果、手間とコストの低減を図ることができるという利点もある。
なお、この第3の工程の前において得られた、接触界面を接合した集合物において、目的とする特性が得られている場合には、第3の工程を省略するようにしてもよい。
[3−3B] チューブ41および粒子42を溶融または軟化させる場合
チューブ41および粒子42の表面を構成する無機半導体材料を溶融または軟化させ、無機半導体材料が一旦溶融または軟化した後、固化した固化物等により接触界面を接合する。
この溶融物または軟化物は、集合物44中の接触界面の接合を補強するため、電子輸送層4全体としての機械的強度を向上させることができる。
この無機半導体材料を溶融または軟化させる方法としては、例えば、加熱処理、水熱処理、レーザ照射、電磁波照射、電子ビーム照射、イオンビーム照射、アーク、プラズマ等を用いることができるが、これらの中でも、加熱処理、水熱処理、レーザ照射および電磁波照射のうちの少なくとも1つにより行われるのが好ましい。これらの処理によれば、無機半導体材料を容易かつ安価に溶融または軟化させることができる。
加熱処理を行う場合、その加熱温度は、無機半導体材料の融点に応じて適宜設定され、特に限定されないが、500〜1000℃程度であるのが好ましく、600〜900℃程度であるのがより好ましい。
加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定され、特に限定されないが、30秒〜30分程度であるのが好ましく、1分〜20分程度であるのがより好ましい。
加熱雰囲気は、無機半導体材料の組成に応じて適宜設定されるが、アルゴン等の不活性雰囲気であるのが好ましい。
水熱処理は、集合物44を高圧水蒸気(飽和水蒸気)で処理する方法である。水熱処理を用いることにより、水が蒸発する程度の比較的低い温度(例えば、100〜200℃程度)で、集合物44に処理を施すことができる。
水熱処理における圧力は、0.1〜10MPa程度であるのが好ましく、0.2〜5MPa程度であるのがより好ましい。
加熱時間は、特に限定されないが、5〜60分程度であるのが好ましく、10〜50分程度であるのがより好ましい。
レーザ照射は、集合物44にレーザ光を照射し、処理する方法である。
レーザの種類としては、例えば、ルビーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、フェムト秒レーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、Ne−Heレーザ、Arレーザ、COレーザ等が挙げられる。この中でも、室温で連続発振を容易に行うことができ、低い照射エネルギー領域における制御性の良さ等から、YAGレーザまたはフェムト秒レーザが好ましく用いられる。
このようなレーザ の照射条件については、無機半導体材料の組成等により若干異なるが、例えば、YAGレーザの場合、エネルギー強度は0.5〜5W程度、フェムト秒レーザの場合、0.05〜1W程度であるのが好ましい。
また、レーザのビーム径は、1〜100μm程度であるのが好ましく、2〜20μm程度であるのがより好ましい。
電磁波照射は、集合物44に電磁波を照射し、処理する方法である。
このような電磁波の照射条件については、無機半導体材料の組成等により若干異なるが、例えば、電磁波の周波数は、1〜100GHz程度が好ましく、2〜30GHz程度がより好ましい。また、電磁波の出力は、5〜50kW程度が好ましく、照射時間は、3〜60分程度が好ましい。
以上のようにして、少なくとも陽極側の部分が多孔質な電子輸送層4が得られる。
なお、前述したような接合時の各接合方法の選択や、接合方法における各種条件を設定することにより、電子輸送層4の空孔率(多孔質の程度)を調整することができる。
[4] 次に、電子輸送層4に接触するように、発光層Lを形成する。
この発光層Lは、例えば、電子輸送層4に発光材料を含む液を接触させた後、脱溶媒(または脱分散媒)すること等により形成することができる。
これにより、発光材料が電子輸送層4の外面および空孔の内面に、例えば吸着、結合等して、これらの面に沿って発光層Lが形成される。
電子輸送層4に発光材料を含む液を接触させる方法としては、例えば、発光材料を含む液中に、基板2、陰極3、バリヤ層8および電子輸送層4の積層体を浸漬する方法(浸漬法)、電子輸送層4に発光材料を含む液を塗布する方法(塗布法)、電子輸送層4に発光材料を含む液をシャワー状に供給する方法等が挙げられる。
発光材料を含む液を調製する溶媒(または分散媒)としては、例えば、各種水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、酢酸エチル、エーテル、塩化メチレン、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、脱溶媒の方法としては、例えば、大気圧または減圧下に放置する方法や、空気、窒素ガス等の気体を吹き付ける方法等が挙げられる。
なお、必要に応じて、前記積層体に対して、例えば60〜100℃程度の温度で、0.5〜2時間程度、熱処理を施してもよい。これにより、発光材料をより強固に電子輸送層4に吸着(結合)させることができる。
[5] 一方、封止部材7の内側上面に陽極6を形成する。
この陽極6は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
[6] 次に、陽極6の下面に、第2の領域52を形成する。
この第2の領域52は、発光層Lと同様にして形成することができる。
[7] 次に、この封止部材7を、陰極3および発光層Lが形成された電子輸送層4に覆うように被せ、基板2に接合する。
[8] 次に、封止部材7に設けられた注入口(図示せず)から、電解質組成物を、発光層Lが形成された電子輸送層4と、第2の領域52との間の空間に注入する。
次いで、注入口を、例えば接着剤等の封止材により封止する。
以上のような工程を経て、本発明の発光素子1が製造される。
このような発光素子1は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の発光素子1をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置(本発明の発光装置)を構成することができる。
なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
次に、本発明の発光装置を適用したディスプレイ装置の一例について説明する。
図5は、本発明の発光装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
図5に示すディスプレイ装置10は、基体20と、この基体20上に設けられた複数の発光素子1とで構成されている。
基体20は、基板21と、この基板21上に形成された回路部22とを有している。
回路部22は、基板21上に形成された、例えば酸化シリコン層からなる保護層23と、保護層23上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)24と、第1層間絶縁層25と、第2層間絶縁層26とを有している。
駆動用TFT24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
このような回路部22上に、各駆動用TFT24に対応して、それぞれ、発光素子1が設けられている。また、隣接する発光素子1同士は、第1隔壁部31および第2隔壁部32により区画されている。
本実施形態では、各発光素子1の陰極3は、画素電極を構成し、各駆動用TFT24のドレイン電極245に配線27により電気的に接続されている。また、各発光素子1の陽極6は、共通電極とされている。
そして、各発光素子1を覆うように封止部材(図示せず)が基体20に接合され、各発光素子1が封止されている。
ディスプレイ装置10は、単色表示であってもよく、各発光素子1に用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
このようなディスプレイ装置10(本発明の発光装置)は、各種の電子機器に組み込むことができる。
図6は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
図7は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
図8は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
なお、本発明の電子機器は、図6のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図7の携帯電話機、図8のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
以上、本発明の発光素子、発光装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.発光素子の製造
(実施例1)
[1] まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を2枚用意した。
[2] 次に、一方のガラス基板上に、真空蒸着法によりAlLiを被着させ、平均厚さ300nmの陰極を形成した。
なお、陰極の表面抵抗は、約5Ω/□であった。
[3] 次に、この陰極上に、真空蒸着法により酸化チタン(TiO)を被着させ、平均厚さ0.5μmのバリヤ層を形成した。
なお、このバリヤ層の空孔率は、2%であった。
[4] 次に、このバリヤ層上に、平均厚さ10μmの電子輸送層を形成した。
[4−1] まず、ゾル・ゲル法により合成した酸化チタンを乳鉢で混練し、チューブ状の酸化チタン(外径:5nm、長さ:30nm、比表面積:500m/g)を得た。
次に、酸化チタン粒子(平均粒径:10nm)を用意した。
次いで、これらのチューブ状および粒状の酸化チタンとポリエチレングリコールとを含有するエタノール水溶液を調製した。
[4−2] 次に、このエタノール水溶液を、バリヤ層上にスピンコート法(2000rpm)により塗布し、液状被膜を形成した。
次いで、この液状被膜に対して、150℃×30分で加熱処理を行い、液状被膜中の溶媒および分散媒を除去した。これによりチューブ状および粒状の酸化チタンの集合物を得た。なお、チューブ状の酸化チタンと粒状の酸化チタンとの比率は、重量比で80:20となるようにした。
[4−3] 次に、3mol/Lの塩化水素水溶液を、集合物上にスピンコート法(2000rpm)により塗布した。
次いで、塩化水素水溶液を塗布した集合物に対して、250℃×20分で加熱処理を行い、電子輸送層を得た。
なお、この電子輸送層の空孔率は、50%であった。
[5] 次に、焼成後の基板を、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸が3配位したイリジウム錯体(発光材料)と、コール酸とを含有する発光材料含有液(40℃)に8時間浸漬した後、エタノール、アセトニトリルで順次洗浄した。
なお、イリジウム錯体の電子輸送層の1cm当りでの付着量が、1×10−8molとなるようにした。
[6] また、他方のガラス基板上に、スパッタ法によりITOを被着させ、平均厚さ100nmの陽極を形成した。
なお、ITO電極の表面抵抗は、約40Ω/□であった。
[7] 次に、この陽極上に、PEDOT/PSS(正孔輸送材料)を含有する水分散液をスピンコート法(2000rpm)により塗布した後、乾燥した。
これにより、平均厚さ20μmの正孔輸送層の第2の領域を形成した。
[8] 次に、2枚のガラス基板を対向させ、その周囲をエポキシ樹脂により封止した。なお、このとき、電解質組成物を注入する注入口が残るように封止した。
また、形成される空間の平均厚さが、40μmとなるようにした。
[9] まず、電解質としてIとLiIとを、エチレングリコールに溶解して、液状の電解質組成物を調製した。なお、電解質の濃度は、10wt%とした。
次いで、この電解質組成物を、注入口から注入した後、この注入口をエポキシ樹脂接着剤で封止した。
これにより、正孔輸送層の第1の領域を形成して、発光素子を完成させた。
(実施例2)
前記工程[4−3]において、塩化水素水溶液に代えて、6mol/Lのフッ化水素水溶液を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
なお、この電子輸送層の空孔率は、40%であった。
(実施例3)
前記工程[4−3]において、塩化水素水溶液に代えて、3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
なお、この電子輸送層の空孔率は、35%であった。
(実施例4)
前記工程[4−3]において、水熱処理により接触界面の接合を行った以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
水熱処理は、集合物を150℃の高圧水蒸気に40分曝すことにより行った。
なお、この電子輸送層の空孔率は、55%であった。
(実施例5)
前記工程[4−3]において、マイクロ波照射により接触界面の接合を行った以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
マイクロ波照射は、周波数28GHz、出力20kWのマイクロ波を集合物に30分照射することにより行った。
なお、この電子輸送層の空孔率は、60%であった。
2.評価
各実施例で製造した発光素子について、それぞれ、発光効率および耐久性(寿命)の評価を行った。
この発光効率の評価は、直流電源により、0Vから6Vに電圧を印加し、電流値を測定し、輝度を輝度計により測定することで行った。また、耐久性(寿命)の評価は、初期輝度400cd/mの定電流駆動を行うことで行った。
その結果、各実施例の発光素子では、いずれも、高い発光効率および優れた耐久性が確認された。
本発明の発光素子の実施形態の縦断面を模式的に示す図である。 図1に示す発光素子における各部(各層)の界面付近を拡大して示す図である。 図1に示す発光素子における電子輸送層、発光層および正孔輸送層の界面付近を、さらに拡大して示す図である。 図1に示す発光素子の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の発光装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。 本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。 本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。 本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
符号の説明
1……発光素子 2……基板 3……陰極 4……電子輸送層 41……チューブ 42……粒子 43……液状被膜 44……集合物 L……発光層 5……正孔輸送層 51……第1の領域 52……第2の領域 6……陽極 7……封止部材 8……バリヤ層 10……ディスプレイ装置 20……基体 21……基板 22……回路部 23……保護層 24……駆動用TFT 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 25……第1層間絶縁層 26……第2層間絶縁層 27……配線 31……第1隔壁部 32……第2隔壁部 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300‥‥ディジタルスチルカメラ 1302‥‥ケース(ボディー) 1304‥‥受光ユニット 1306‥‥シャッタボタン 1308‥‥回路基板 1312‥‥ビデオ信号出力端子 1314‥‥データ通信用の入出力端子 1430‥‥テレビモニタ 1440‥‥パーソナルコンピュータ

Claims (13)

  1. 陰極の一方の面側に、電子輸送層を形成する工程と、
    該電子輸送層に接触するように発光層を形成する工程と、
    該発光層の前記電子輸送層と反対側に陽極を形成する工程とを有する発光素子の製造方法であって、
    前記電子輸送層を形成する工程は、チューブ状または粒状の無機半導体材料を堆積させて、前記無機半導体材料の集合物を層状に形成する第1の工程と、
    前記集合物に所定の処理を施すことにより、前記無機半導体材料同士の接触界面を接合する第2の工程とを有することを特徴とする発光素子の製造方法。
  2. 前記所定の処理は、前記無機半導体材料を溶解し得る溶剤を、前記無機半導体材料に接触させる処理であり、
    前記接合は、前記無機半導体材料の溶解物によりなされる請求項1に記載の発光素子の製造方法。
  3. 前記溶剤は、酸またはアルカリ溶液である請求項2に記載の発光素子の製造方法。
  4. 前記第2の工程において、前記溶解物の一部を、集合物の陰極側に偏在させる請求項2または3に記載の発光素子の製造方法。
  5. 前記第2の工程の後、前記溶解物を酸化物に変化させる処理を施す第3の工程を有する請求項2ないし4のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
  6. 前記処理は、加熱により行われる請求項5に記載の発光素子の製造方法。
  7. 前記所定の処理は、加熱処理、水熱処理、レーザ照射および電磁波照射のうちの少なくとも1つによる処理であり、
    前記接合は、前記無機半導体材料を溶融または軟化することによりなされる請求項1に記載の発光素子の製造方法。
  8. 前記電子輸送層は、その少なくとも陽極側の部分が多孔質である請求項1ないし7のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
  9. 前記無機半導体材料は、金属酸化物を主成分とするものである請求項1ないし8のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
  10. 前記無機半導体材料は、酸化チタンを主成分とするものである請求項1ないし9のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
  11. 請求項1ないし10のいずれかに記載の発光素子の製造方法で製造されたことを特徴とする発光素子。
  12. 請求項11に記載の発光素子を備えることを特徴とする発光装置。
  13. 請求項12に記載の発光装置を備えることを特徴とする電子機器。
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