JP2006213904A - 導電性材料、導電性材料用組成物、導電層、電子デバイスおよび電子機器 - Google Patents

導電性材料、導電性材料用組成物、導電層、電子デバイスおよび電子機器 Download PDF

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晴信 小松
Yuji Shinohara
祐治 篠原
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Abstract

【課題】キャリア輸送能の優れた導電性材料。
【解決手段】式(1)で表される化合物を、ホスゲンおよび/またはその誘導体とを重縮合反応させる。
Figure 2006213904

[Rは、炭素数2〜8の直鎖アルキル基を表し、Rは、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Xはヒドロキシアルキル基を表し、Yは置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
【選択図】なし

Description

本発明は、導電性材料、導電性材料用組成物、導電層、電子デバイスおよび電子機器に関するものである。
有機材料を使用したエレクトロルミネッセンス素子(以下、単に「有機EL素子」という。)は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子(発光素子)としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。
一般に、有機EL素子は、陰極と陽極との間に発光層を有する構成であり、陰極と陽極との間に電界を印加すると、発光層に陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。
そして、注入された電子と正孔とが発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際の励起エネルギーを光エネルギーとして放出することにより、発光層が発光する。
このような有機EL素子において、有機EL素子の高効率化、すなわち、高い発光を得るためには、電子または正孔のキャリア輸送性の異なる有機材料で構成される有機層を、発光層と、陰極および/または陽極との間に積層する素子構造が有効であることが判っている。
そこで、キャリア輸送特性の異なる発光層と有機層と(以下、これらを併せて「有機層」という。)を電極上に積層する必要があるが、従来の塗布法を用いる製造方法においては、有機層を積層する際に、隣接する有機層との間で相溶解が生じ、その結果として、有機EL素子としての発光効率、発色の色純度またはパターン精度が悪くなる等の特性が低下するという問題があった。
そのため、有機層を積層する場合には、有機材料として溶解性の異なるものを組み合わせて用いることにより、積層するのに限られていた。
このような問題点を解決する方法として、下層となる有機層を構成する有機材料同士を重合化させることにより、下層の耐久性すなわち耐溶剤性を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、下層となる有機層を構成する有機材料に硬化性樹脂を添加し、この硬化性樹脂と一緒に硬化させることによって、下層の耐溶剤性を向上させる方法も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、これらのような方法を用いた場合においても、有機EL素子の特性の向上は、期待するほど得られていないのが実情である。
また、このような問題は、有機材料を使用した薄膜トランジスタにおいても同様に生じている。
特開平9−255774号公報 特開2000−208254号公報
本発明の目的は、キャリア輸送能の優れた導電性材料、キャリア輸送能の優れた導電層を形成することができる導電性材料用組成物、キャリア輸送能の優れた導電層、信頼性の高い電子デバイスおよび電子機器を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の導電性材料は、下記一般式(1)で表される化合物同士を、それらが持つ置換基Xとホスゲンおよび/またはその誘導体とを重縮合反応させ、連結してなることを特徴とする。
Figure 2006213904
[式中、2つのRは、それぞれ独立して、炭素数2〜8の直鎖アルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、2つのXは、それぞれ独立して、下記一般式(2)で表される置換基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、Yは、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
Figure 2006213904
[式中、nは、2〜8の整数を表す。]
これにより、優れたキャリア輸送能を有する導電性材料とすることができる。
本発明の導電性材料では、前記ホスゲン誘導体は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2006213904
[式中、2つのZは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
かかる化合物を用いて、前記重縮合反応を行うことにより、生成された副生成物と未反応の前記一般式(3)で表される化合物とを、形成された導電層から確実に除去することができる。その結果、導電層のキャリア輸送能が低減するのを好適に防止することができる。
本発明の導電性材料では、2つの前記置換基Xは、同一であることが好ましい。
これにより、前記一般式(1)で表される化合物の置換基X以外の部分である主骨格同士による相互作用を好適に防止して、導電性材料のキャリア輸送能を向上させることができる。
本発明の導電性材料では、前記置換基Xは、ベンゼン環の3位、4位または5位のうちのいずれかに結合していることが好ましい。
これにより、主骨格同士をより確実に離間させることができる。
本発明の導電性材料では、2つの前記置換基Rは、同一であることが好ましい。
これにより、導電性材料を主材料とする導電層において、隣接する導電性材料同士の距離をほぼ一定の間隔に保つことができる。その結果、異なる導電性材料が有する主骨格同士の間での相互作用を確実に低減することができ、導電層のキャリア輸送能を優れたものにすることができる。
本発明の導電性材料では、前記置換基Rは、ベンゼン環の4位に結合していることが好ましい。
これにより、導電性材料を主材料とする導電層において、隣接する導電性材料同士が接近しすぎるのをより確実に阻止することができる。
本発明の導電性材料では、前記複素環は、窒素、酸素、硫黄、セレンおよびテルルのうちの少なくとも1種のヘテロ原子を含有することが好ましい。
これにより、導電性材料の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等がより容易に変化して、導電性材料のキャリア輸送能の特性を確実に変化させることができる。
本発明の導電性材料では、前記複素環は、芳香族系のものであることが好ましい。
これにより、主骨格の共役系の化学構造における電子密度の偏り、すなわち、π電子の局在化を好適に防止して、導電性材料のキャリア輸送能の低下を防止することができる。
本発明の導電性材料では、前記基Yは、複素環を1〜5つ含むものであることが好ましい。
基Yに、このような数の複素環が存在すれば、導電性材料の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等を十分に変化させることができる。
本発明の導電性材料では、前記基Yは、前記複素環以外に、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を少なくとも1つ含むことが好ましい。
基Yとして、複素環と芳香族炭化水素環とを含むものを選択することにより、目的とするキャリア輸送能の特性を導電性材料により確実に付与することができる。
本発明の導電性材料では、前記基Yは、前記一般式(1)中の各Nにそれぞれ、直接結合する前記芳香族炭化水素環と、これらの芳香族炭化水素環の間に存在する少なくとも1つの前記複素環とを含むことが好ましい。
これにより、導電性材料中における電子密度に偏りが生じるのを確実に防止することができ、導電性材料のキャリア輸送能が均一なものとなる。
本発明の導電性材料では、前記基Yの総炭素数は、2〜75であることが好ましい。
これにより、主骨格における平面性が保たれることから、導電性材料におけるキャリア輸送能が低下するのを確実に防止することができる。
本発明の導電性材料用組成物は、下記一般式(1)で表される化合物と、ホスゲン誘導体とを含有することを特徴とする。
Figure 2006213904
[式中、2つのRは、それぞれ独立して、炭素数2〜8の直鎖アルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、2つのXは、それぞれ独立して、下記一般式(2)で表される置換基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、Yは、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
Figure 2006213904
[式中、nは、2〜8の整数を表す。]
これにより、キャリア輸送能の優れた導電層を形成することができる導電性材料用組成物とすることができる。
本発明の導電性材料用組成物では、前記ホスゲン誘導体は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2006213904
[式中、2つのZは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
かかる化合物を用いて、前記重縮合反応を行うことにより、生成される副生成物と未反応の前記一般式(3)で表される化合物とを、形成される導電層から確実に除去することができる。その結果、導電層のキャリア輸送能が低減するのを好適に防止することができる。
本発明の導電性材料用組成物では、2つの前記置換基Xは、同一であることが好ましい。
これにより、前記重縮合反応させて得られる化学構造により連結される高分子(導電性材料)において、電子密度に隔たりが生じるのを好適に防止して、高分子のキャリア輸送能を向上させることができる。
本発明の導電性材料用組成物では、前記置換基Xは、ベンゼン環の3位、4位または5位のうちのいずれかに結合していることが好ましい。
これにより、形成される導電層において、主骨格同士をより確実に離間させることができる。
本発明の導電性材料用組成物では、2つの前記置換基Rは、同一であることが好ましい。
これにより、形成される導電層において、隣接する高分子同士の距離をほぼ一定の間隔に保つことができる。その結果、異なる導電性材料が有する主骨格同士の間での相互作用を確実に低減することができ、導電層のキャリア輸送能を優れたものにすることができる。
本発明の導電性材料用組成物では、前記置換基Rは、ベンゼン環の4位に結合していることが好ましい。
これにより、形成される導電層において、隣接する高分子同士が接近しすぎるのをより確実に阻止することができる。
本発明の導電性材料用組成物では、前記複素環は、窒素、酸素、硫黄、セレンおよびテルルのうちの少なくとも1種のヘテロ原子を含有することが好ましい。
これにより、形成される導電層において、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等がより容易に変化して、高分子のキャリア輸送能の特性を確実に変化させることができる。
本発明の導電性材料用組成物では、前記複素環は、芳香族系のものであることが好ましい。
これにより、形成される導電層において、主骨格の共役系の化学構造における電子密度の偏り、すなわち、π電子の局在化を好適に防止して、高分子のキャリア輸送能の低下を防止することができる。
本発明の導電性材料用組成物では、前記基Yは、複素環を1〜5つ含むものであることが好ましい。
基Yに、このような数の複素環が存在すれば、形成される導電層において、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等を十分に変化させることができる。
本発明の導電性材料用組成物では、前記基Yは、前記複素環以外に、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を少なくとも1つ含むことが好ましい。
基Yとして、複素環と芳香族炭化水素環とを含むものを選択することにより、形成される導電層において、目的とするキャリア輸送能の特性を高分子により確実に付与することができる。
本発明の導電性材料用組成物では、前記基Yは、前記一般式(1)中の各Nにそれぞれ、直接結合する前記芳香族炭化水素環と、これらの芳香族炭化水素環の間に存在する少なくとも1つの前記複素環とを含むことが好ましい。
これにより、形成される導電層において、高分子中における電子密度に偏りが生じるのを確実に防止することができ、高分子のキャリア輸送能が均一なものとなる。
本発明の導電性材料用組成物では、前記基Yの総炭素数は、2〜75であることが好ましい。
これにより、前記一般式(1)で表される化合物の溶媒に対する溶解度が高くなり、導電性材料用組成物を調整する際に、用いる溶媒の選択の幅が広がるという利点がある。
本発明の導電層は、本発明の導電性材料を主材料とすることを特徴とする。
これにより、キャリア輸送能に優れる導電層を形成することができる。
本発明の導電層は、本発明の導電性材料用組成物を用いて形成されたことを特徴とする。
これにより、キャリア輸送能に優れる導電層を形成することができる。
本発明の導電層は、正孔輸送層であることが好ましい。
これにより、正孔輸送能に優れる正孔輸送層を形成することができる。
本発明の導電層では、前記正孔輸送層の平均厚さは、10〜150nmであることが好ましい。
これにより、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。
本発明の導電層は、電子輸送層であることが好ましい。
これにより、電子輸送能に優れる電子輸送層を形成することができる。
本発明の導電層では、前記電子輸送層の平均厚さは、1〜100nmであることが好ましい。
これにより、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。
本発明の導電層は、有機半導体層であることが好ましい。
これにより、優れた半導体特性を示す有機半導体層を形成することができる。
本発明の導電層では、前記有機半導体層の平均厚さは、0.1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、信頼性の高い有機薄膜トランジスタを得ることができる。
本発明の電子デバイスは、本発明の導電層を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子デバイスが得られる。
本発明の電子デバイスは、本発明の導電層を有する積層体を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子デバイスが得られる。
本発明の電子デバイスは、発光素子または光電変換素子であることが好ましい。
これにより、信頼性の高い発光素子および光電変換素子が得られる。
本発明の電子デバイスでは、前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
これにより、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子が得られる。
本発明の電子デバイスは、本発明の導電層を有する積層体を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子デバイスが得られる。
本発明の電子デバイスは、スイッチング素子であることが好ましい。
これにより、信頼性の高いスイッチング素子が得られる。
本発明の電子デバイスでは、前記スイッチング素子は、有機薄膜トランジスタであることが好ましい。
これにより、信頼性の高い有機薄膜トランジスタが得られる。
本発明の電子機器は、本発明の電子デバイスを備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
以下、本発明の導電性材料、導電性材料用組成物、導電層、電子デバイスおよび電子機器を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<導電層>
まず、本発明の導電性材料を主材料として構成される導電層(本発明の導電層)について説明する。
本発明の導電性材料は、下記一般式(1)で表される化合物(ヘテロアリールアミン誘導体)同士を、それらが持つ置換基Xと、ホスゲンおよび/またはその誘導体とを重縮合反応させ、連結してなるものである。
Figure 2006213904
[式中、2つのRは、それぞれ独立して、炭素数2〜8の直鎖アルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、2つのXは、それぞれ独立して、下記一般式(2)で表される置換基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、Yは、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
Figure 2006213904
[式中、nは、2〜8の整数を表す。]
具体的には、本発明の導電性材料は、前記一般式(1)で表される化合物における置換基X以外の主骨格(ヘテロアリールアミン骨格)同士を、置換基Xと、化学式COClで表されるホスゲンおよび/またはその誘導体とが重縮合反応して生成した下記一般式(4)で表される化学構造(以下、この化学構造を単に「連結構造」ということもある。)により連結してなる高分子(ポリマー)を主成分とするものである。
Figure 2006213904
[式中、2つのnは、それぞれ独立して、2〜8の整数を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
ここで、このような高分子は、前記一般式(4)で表される化学構造、すなわち2つの直鎖状の炭素−炭素結合(アルキレン基)がカーボネート結合により連結する化学構造を介して前記主骨格が繰り返して存在する構成となっている。この化学構造の存在により、主骨格同士は、所定の距離離間して存在することとなる。このため、隣接する主骨格同士の相互作用を低減することができる。
また、前記主骨格は、共役系の化学構造を有し、その特有な電子雲の広がりにより、高分子における円滑なキャリア(正孔または電子)の輸送に寄与する。
このようなことから、この高分子は、優れたキャリア輸送能を発揮し、かかる高分子を主材料とする導電層は、キャリア輸送能に優れたものとなる。
なお、このような高分子において、主骨格同士の離間距離が短くなり過ぎると、隣接する主骨格同士の相互作用が大きくなる傾向を示し、主骨格の離間距離が長くなり過ぎると、主骨格同士間におけるキャリアの受け渡しが困難となり、高分子のキャリア輸送能が低減する傾向を示す。
かかる観点から、前記連結構造を次のように設定するのが好ましい。
すなわち、置換基Xの構造(前記一般式(2)で表される置換基)、ホスゲンおよび/またはその誘導体として、次のようなものを選択するのが好ましい。
置換基Xは、前記一般式(2)中、nが2〜8、特に3〜6の直鎖状の炭素−炭素結合で構成されているのが好ましい。これにより、主骨格同士の距離を適度に保つことが可能となり、高分子中において、隣接する主骨格同士の相互作用をより確実に低減することができるとともに、主骨格同士間におけるキャリアの受け渡しがより確実に行われることから、高分子のキャリア輸送能が優れたものとなる。
また、2つの置換基Xは、ほぼ同一の炭素数のものであるのが好ましく、同一の炭素数のものであるのがより好ましい。これにより、隣接する主骨格同士の離間距離をほぼ一定とすることができる。その結果、この高分子中において電子密度に偏りが生じるのを好適に防止することができる。これにより、高分子のキャリア輸送能を向上させることができる。
また、置換基Xは、ベンゼン環の2位から6位のいずれの位置に結合してもよいが、特に、3位、4位または5位のうちのいずれかに結合しているのが好ましい。これにより、隣接する主骨格同士の結合を連結構造を介して行うことの効果をより顕著に発揮させることができる。すなわち、隣接する主骨格同士をより確実に離間させることができる。
また、ホスゲンおよび/またはその誘導体としては、置換基X(水酸化アルキル基)と重縮合反応することにより、前記一般式(4)で表される化学構造が形成されるものであれば、特に限定されないが、特に、ホスゲンおよび/または下記一般式(3)で表される化合物(以下、単に「化合物(3)」ということもある。)を主成分とするものを用いるのが好ましい。
Figure 2006213904
[式中、2つのZは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
ここで、置換基Xとホスゲンおよび/またはその誘導体とが重縮合反応すると、副生成物が生成することとなる。このような重縮合反応において、ホスゲンおよび/または前記化合物(3)を用いることにより、後述する有機EL素子の製造方法における工程[A2]で説明するように、前記副生成物を導電層(正孔輸送層41)から比較的容易に除去することができる。これにより、導電層中において前記副生成物によりキャリアが捕捉されるのを確実に阻止することができる。その結果、導電層のキャリア輸送能が低減することを好適に防止することができる。
なお、前記一般式(4)で表される化学構造中には、カーボネート結合を構成する二重結合(π結合)が存在することとなる。これにより、主骨格同士の距離が比較的長くなった場合においても、このπ結合を介して、主骨格同士間におけるキャリアの受け渡しを確実に行うことができる。
さらに、このカーボネート結合と主骨格の間には、アルキレン基が存在することとなる。このため、主骨格における電子密度が連結構造側に偏るのを防止できるので、主骨格同士の距離が比較的短くなった場合においても、主骨格同士の相互作用が増強するのを好適に防止または抑制することができる。
なお、例えば、ベンゼン環のように、π結合の中でも共役系の結合が多い構造が前記一般式(4)で表される化学構造中に存在すると、この構造を介して隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼすようになり、主骨格同士を離間することによる効果が相殺されてしまう。
次に、高分子において、キャリア輸送に寄与する主骨格について説明をする。
この主骨格において、基(結合基)Yの化学構造を適宜設定することにより、高分子のキャリア輸送能の特性を変化させることができる。
これは、キャリア輸送に寄与する主骨格における電子雲の広がり(電子の分布状態)が変化することに伴って、高分子において、例えば、その価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等が変化することに起因すると考えられる。
本発明の導電性材料では、基Yに置換もしくは無置換の複素環が少なくとも1つ含まれており、この複素環の種類を選択することにより、高分子におけるキャリア輸送能の特性を比較的容易に調整することができる。
この複素環は、高分子に所望のキャリア輸送能が得られるように選択すればよいが、特に、窒素、酸素、硫黄、セレンおよびテルルのうちの少なくとも1種のヘテロ原子を含有するものを選択するのが好ましい。かかる種類のヘテロ原子を含有する複素環を選択することにより、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等を変化させることがより容易となる。
また、複素環は、芳香族系および非芳香族系のいずれであってもよいが、芳香族系のものであるのが好ましい。これにより、主骨格の共役系の化学構造における電子密度の偏り、すなわち、π電子の局在化を好適に防止して、高分子のキャリア輸送能の低下を防止することができる。
基Yは、同一または異なる複素環を1〜5つ含むものが好ましく、1〜3つ含むものがより好ましい。基Yにこのような数の複素環が存在すれば、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等を十分に変化させることができる。
さらに、基Yは、複素環以外に、芳香族炭化水素環を少なくとも1つ含むものを選択することもできる。基Yとして、複素環と芳香族炭化水素環とを含むものを選択することにより、目的とするキャリア輸送能の特性を高分子により確実に付与することができる。
このような基Yは、前記一般式(1)中の各Nにそれぞれ、直接結合する芳香族炭化水素環と、これらの芳香族炭化水素環の間に存在する少なくとも1つの複素環とを含むものであるのが、特に好ましい。これにより、高分子中における電子密度に偏りが生じるのを確実に防止することができる。その結果、高分子のキャリア輸送能が均一なものとなる。
また、基Yの総炭素数は、2〜75であるのが好ましく、2〜50であるのがより好ましい。基Yの総炭素数が多すぎると、置換基Xの種類によっては、前記一般式(1)で表される化合物の溶媒に対する溶解度が低下する傾向を示し、本発明の導電性材料用組成物を調整する際の溶媒の選択の幅が狭くなるおそれがある。
また、基Yの総炭素数をかかる範囲内とすることにより、主骨格における平面性が保たれることから、高分子におけるキャリア輸送能が低下するのを確実に防止することができる。
これらのことを考慮すると、前記一般式(1)で表される化合物において、基Yとしては、例えば、下記化学式(5)〜(24)で表されるものが特に好ましい構造である。
Figure 2006213904
[式中、2つのQは、それぞれ独立して、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
Figure 2006213904
[式中、2つのQは、それぞれ独立して、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
Figure 2006213904
[式中、2つのQは、それぞれ独立して、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表し、同一であっても、異なっていてもよく、4つのQは、それぞれ独立して、SまたはOを表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
Figure 2006213904
[式中、2つのQは、それぞれ独立して、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表し、同一であっても、異なっていてもよく、4つのQは、それぞれ独立して、SまたはOを表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
Figure 2006213904
[式中、2つのQは、それぞれ独立して、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表し、同一であっても、異なっていてもよく、4つのQは、それぞれ独立して、SまたはOを表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
Figure 2006213904
[式中、Qは、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表す。]
Figure 2006213904
[式中、Qは、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CH、CまたはPhを表す。)を表す。]
Figure 2006213904
[式中、Qは、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表す。]
Figure 2006213904
[式中、Qは、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表す。]
Figure 2006213904
Figure 2006213904
Figure 2006213904
Figure 2006213904
Figure 2006213904
Figure 2006213904
Figure 2006213904
[式中、3つのQは、それぞれ独立して、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
Figure 2006213904
[式中、3つのQは、それぞれ独立して、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
Figure 2006213904
[式中、Qは、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表す。]
Figure 2006213904
[式中、Qは、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表す。]
Figure 2006213904
[式中、3つのQは、それぞれ独立して、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
また、基Yに含まれる複素環や芳香族炭化水素環には、主骨格における平面性が大きく阻害されないような置換基が導入されていてもよい。このような置換基としては、例えば、比較的炭素数の少ないアルキル基やハロゲン基等が挙げられる。
さて、上記一般式(1)で表される化合物において、置換基Rは、炭素数2〜8の直鎖アルキル基であるが、特に、炭素数3〜6の直鎖アルキル基であるのが好ましい。その結果、この置換基Rによる立体障害により、隣接する高分子同士が接近しすぎるのを阻止して、これらの距離を適度に保つことができる。その結果、形成される導電層において、異なる高分子が有する主骨格同士の間での相互作用を確実に低減することができ、導電層のキャリア輸送能を優れたものにすることができる。
また、2つの置換基Rは、ほぼ同一の炭素数のものであるのが好ましく、同一の炭素数のものであるのがより好ましい。これにより、形成される導電層において、隣接する高分子同士の距離をほぼ一定の間隔に保つことができる。その結果、導電層中の高分子の密度が一定なものとなる。
また、置換基Rは、ベンゼン環の2位から6位のいずれの位置に結合してもよいが、特に、4位に結合しているのが好ましい。これにより、置換基Rを導入することの効果をより顕著に発揮させることができる。すなわち、隣接する高分子同士が接近しすぎるのをより確実に阻止することができる。
置換基Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であり、置換基Rは、置換基Rの炭素数に応じて選択するようにすればよい。例えば、置換基Rの炭素数が大きい場合には、置換基Rとしては、水素原子を選択し、置換基Rの炭素数が小さい場合には、置換基Rとしては、メチル基もしくはエチル基を選択するようにすればよい。
このような導電層は、重縮合反応により得られた高分子を主材料とすることから、耐溶剤性に優れたものとなる。その結果、この導電層上に接触して上層を形成する場合に、この上層を形成するための材料に含まれる溶媒または分散媒により、導電層が膨潤または溶解するのを確実に防止することができる。
また、このような導電層を有する積層体を用いて、後述するような電子デバイスを構築した場合、この導電層が高分子を主材料として構成されていることから、この導電層と接触する層(接触層)の界面付近において、導電層の構成材料と接触層の構成材料とが経時的に混ざり合うのを確実に防止することができる。その結果、電子デバイスの特性が経時的に劣化するのを防止することができる。
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
次に、本発明の電子デバイスを、発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に「有機EL素子」という。)に適用した場合の実施形態について説明する。
図1は、有機EL素子の一例を示した縦断面図である。
図1に示す有機EL素子1は、透明な基板2と、基板2上に設けられた陽極3と、陽極3上に設けられた有機EL層4と、有機EL層4上に設けられた陰極5と、各前記層3、4、5を覆うように設けられた保護層6とを備えている。
基板2は、有機EL素子1の支持体となるものであり、この基板2上に各前記層が形成されている。
基板2の構成材料としては、透光性を有し、光学特性が良好な材料を用いることができる。
このような材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような各種樹脂材料や、各種ガラス材料等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
基板2の厚さ(平均)は、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
陽極3は、有機EL層4(後述する正孔輸送層41)に正孔を注入する電極である。また、この陽極3は、有機EL層4(後述する発光層42)からの発光を視認し得るように、実質的に透明(無色透明、有色透明、半透明)とされている。
かかる観点から、陽極3の構成材料(陽極材料)としては、仕事関数が大きく、導電性に優れ、また、透光性を有する材料を用いるのが好ましい。
このような陽極材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
陽極3の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。陽極3の厚さが薄すぎると、陽極3としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陽極3が厚過ぎると、陽極材料の種類等によっては、光の透過率が著しく低下し、実用に適さなくなるおそれがある。
なお、陽極材料には、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂材料を用いることもできる。
一方、陰極5は、有機EL層4(後述する電子輸送層43)に電子を注入する電極である。
陰極5の構成材料(陰極材料)としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
このような陰極材料としては、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
特に、陰極材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極材料として用いることにより、陰極5の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
陰極5の厚さ(平均)は、1nm〜1μm程度であるのが好ましく、100〜400nm程度であるのがより好ましい。陰極5の厚さが薄すぎると、陰極5としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陰極5が厚過ぎると、有機EL素子1の発光効率が低下するおそれがある。
陽極3と陰極5との間には、有機EL層4が設けられている。有機EL層4は、正孔輸送層41と、発光層42と、電子輸送層43とを備え、これらがこの順で陽極3上に形成されている。
正孔輸送層41は、陽極3から注入された正孔を発光層42まで輸送する機能を有するものであり、電子輸送層43は、陰極5から注入された電子を発光層42まで輸送する機能を有するものである。
これら正孔輸送層41および電子輸送層43の構成材料としてそれぞれ、本発明の導電性材料を用いることができる。
ここで、正孔輸送層41と電子輸送層43との双方を本発明の導電性材料を主材料として構成する場合、導電性材料の正孔輸送能および電子輸送能を考慮して、これらの構成材料を選択すればよい。
すなわち、正孔輸送層41が電子輸送層43に対して相対的に正孔輸送能が高くかつ電子輸送能が低くなるように、換言すれば、電子輸送層43が正孔輸送層41に対して相対的に電子輸送能が高くかつ正孔輸送能が低くなるように、これらの構成材料を選択すればよい。
例えば、正孔輸送層41に用いる導電性材料として、基Yの化学構造が前記化学式(22)または(24)のものを選択した場合には、電子輸送層43を構成する導電性材料として、基Yの化学構造が前記化学式(11)または(23)のものを選択するのが好ましく、前記化学式(21)のものを選択することもできる。また、電子輸送層43を構成する導電性材料として、上記のものを用いた場合には、正孔輸送層41を構成する導電性材料として、基Yの化学構造が前記化学式(6)または、(20)のものを選択することもできる。
また、正孔輸送層41は、その体積抵抗率が10Ω・cm以上であるのが好ましく、10Ω・cm以上であるのがより好ましい。これにより、発光効率のより高い有機EL素子1を得ることができる。
正孔輸送層41の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。正孔輸送層41の厚さが薄すぎると、ピンホールが生じるおそれがあり、一方、正孔輸送層41が厚過ぎると、正孔輸送層41の透過率が悪くなる原因となり、有機EL素子1の発光色の色度(色相)が変化してしまうおそれがある。
さらに、電子輸送層43の厚さ(平均)は、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、20〜50nm程度であるのがより好ましい。電子輸送層43の厚さが薄すぎると、ピンホールが生じショートするおそれがあり、一方、電子輸送層43が厚過ぎると、抵抗値が高くなるおそれがある。
また、本発明の導電性材料は、かかる比較的薄い正孔輸送層41および電子輸送層43を形成する場合に、特に有用である。
さて、陽極3と陰極5との間に通電(電圧を印加)すると、正孔輸送層41中を正孔が、また、電子輸送層43中を電子が移動し、発光層42において正孔と電子とが再結合する。そして、発光層42では、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、このエキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。
この発光層42の構成材料(発光材料)としては、電圧印加時に陽極3側から正孔を、また、陰極5側から電子を注入することができ、正孔と電子が再結合する場を提供できるものであれば、いかなるものであってもよい。
このような発光材料には、以下に示すような、各種低分子の発光材料、各種高分子の発光材料があり、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
なお、低分子の発光材料を用いることにより、緻密な発光層42が得られるため、発光層42の発光効率が向上する。また、高分子の発光材料を用いることにより、比較的容易に溶剤へ溶解させることができるため、インクジェット印刷法等の各種塗布法による発光層42の形成を容易に行うことができる。さらに、低分子の発光材料と高分子の発光材料とを組み合わせて用いることにより、低分子の発光材料および高分子の発光材料を用いる効果を併有すること、すなわち、緻密かつ発光効率に優れる発光層42を、インクジェット印刷法等の各種塗布法により、容易に形成することができるという効果が得られる。
低分子の発光材料としては、例えば、ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、(2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン)プラチナム(II)のような各種金属錯体等が挙げられる。
高分子の発光材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物、ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物、ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物等が挙げられる。
また、正孔輸送層41と電子輸送層43とに用いる構成材料の組み合わせによっては、発光材料として本発明の導電性材料を用いることもできる。
例えば、正孔輸送層41の構成材料として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)のようなポリ(チオフェン/スチレンスルホン酸)、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(α−NPD)のようなアリールアミン化合物等を用い、電子輸送層43の構成材料として3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、2−(4−t−ブチルフェニル)−5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,5−オキサジアゾール(PBD)のようなオキサジアゾール化合物等を用いた場合には、発光層42を構成する導電性材料として、基Yの化学構造が前記化学式(16)および(18)等のものを用いることができる。
発光層42の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。発光層の厚さを前記範囲とすることにより、正孔と電子との再結合が効率よくなされ、発光層42の発光効率をより向上させることができる。
なお、有機EL素子1は、正孔輸送層41、発光層42および電子輸送層43のうちのいずれか1つが本発明の導電性材料で構成されるようなものであってもよく、これらの全てが本発明の導電性材料で構成されるようなものであってもよい。
また、発光層42は、正孔輸送層41および電子輸送層43と別個に設けられているが、正孔輸送層41と発光層42とを兼ねた正孔輸送性発光層や、電子輸送層43と発光層42とを兼ねた電子輸送性発光層とすることもできる。この場合、正孔輸送性発光層の電子輸送層43との界面付近が、また、電子輸送性発光層の正孔輸送層41との界面付近が、それぞれ、発光層42として機能する。
さらに、正孔輸送性発光層を用いた場合には、陽極から正孔輸送性発光層に注入された正孔が電子輸送層によって閉じこめられ、また、電子輸送性発光層を用いた場合には、陰極から電子輸送性発光層に注入された電子が電子輸送性発光層に閉じこめられるため、いずれも、正孔と電子との再結合効率を向上させることができるという利点がある。
なお、各層3、4、5同士の間には、任意の目的の層が設けられていてもよい。例えば、正孔輸送層41と陽極3との間には、陽極3からの正孔の注入効率を向上させる正孔注入層を設けることができる。また、電子輸送層43と陰極5との間には、陰極5からの電子の注入効率を向上させる電子注入層等を設けることができる。このように、有機EL素子1に正孔注入層および電子注入層を設ける場合には、この正孔注入層および電子注入層の構成材料として、本発明の導電性材料を用いることができる。
また、正孔注入層の構成材料としては、本発明の導電性材料の他、例えば、銅フタロシアニンや4,4’,4’’−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(M−MTDATA)等を用いることもできる。
保護層6は、有機EL素子1を構成する各層3、4、5を覆うように設けられている。この保護層6は、有機EL素子1を構成する各層3、4、5を気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。保護層6を設けることにより、有機EL素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止等の効果が得られる。
保護層6の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、保護層6の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、保護層6と各層3、4、5との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
この有機EL素子1は、例えばディスプレイ用として用いることができるが、その他にも光源等としても使用可能であり、種々の光学的用途等に用いることが可能である。
また、有機EL素子1をディスプレイに適用する場合、その駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
このような有機EL素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
[A1]陽極形成工程
まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
[A2]正孔輸送層形成工程
次に、陽極3を備える基板2をチャンバー内に設置し、陽極3上に本発明の導電性材料を主材料とする正孔輸送層(本発明の導電層)41を形成する。
正孔輸送層41を形成する方法としては、前記一般式(1)で表される化合物(以下、単に「化合物(1)」ということもある。)が備える置換基Xと、ホスゲンおよび/またはその誘導体とを重縮合反応し得るものであればよく、各種の方法を用いることができるが、A2−I:置換基Xとホスゲンとを重縮合反応させる方法(ホスゲン法)またはA2−II:置換基Xとホスゲン誘導体とをエステル交換反応させる方法(エステル交換法)を用いるのが好ましい。かかる方法によれば、前記重縮合反応の程度を、各種処理条件を適宜設定することにより、比較的容易に制御することができるため、形成される高分子(導電性材料)の鎖長の制御を容易かつ確実に行うことができる。
以下、これらの方法について、それぞれ説明する。
[A2−I]ホスゲン法
[A2−Ia] まず、有機溶媒に化合物(1)と塩基とを溶解させた正孔輸送材料を陽極3上に塗布(供給)する。
この塗布には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。かかる塗布法によれば、正孔輸送材料を比較的容易に陽極3上に供給することができる。
有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、ペンタクロロエタンのようなハロゲン化合物系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼンのような芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)のようなエーテル系溶媒等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、塩基は、ホスゲンから供給されるカルボニル基を安定化させるために使用され、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ホルミルジメチルアミン、トリフェニルアミンのような塩基性有機溶媒や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムのようなアルカリ金属の水酸化物等が挙げられ、これらの中でも、塩基性有機溶媒を主成分とするものを用いるのが好ましい。塩基性有機溶媒は、形成される正孔輸送層41から比較的容易に除去(脱溶媒)することができるものである。そのため、このものが不純物として正孔輸送層41中に残存するのを好適に防止することができる。
さらに、塩基性有機溶媒の中でも、次工程[A2−Ib]において、置換基Xとホスゲンとの重縮合反応を促進させる触媒として機能するピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミンおよびジメチルアニリン等を用いるのが特に好ましい。これにより、前記重縮合反応をより効率良く進行させることができる。
なお、前記触媒としては、上述したものの他、例えば、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリブチルベンジルアンモニウムクロリドのような四級アンモニウム塩等が挙げられ、これらのものを正孔輸送材料に添加するようにしてもよい。
有機溶媒と塩基との混合比は、容積比で10:1〜2:1であるのが好ましく、5:1〜3:1であるのがより好ましい。
[A2−Ib] 次に、陽極3上に塗布した正孔輸送材料に、ホスゲンを供給する。
これにより、置換基Xとホスゲンとが重縮合反応して、化合物(1)同士が連結構造により連結された高分子(本発明の導電性材料)が生成し、陽極3上に正孔輸送層41が形成される。
この重縮合反応を進行させる際の混合物の温度は、−20〜20℃程度であるのが好ましく、−20〜0℃程度であるのがより好ましい。混合物の温度をかかる範囲内にすることにより、陽極3上に供給された混合物における重縮合反応の進行を比較的容易に制御することができる。
また、反応時間は、混合物の温度によっても若干異なるが、1分〜4時間程度であるのが好ましく、15分〜2時間程度であるのがより好ましい。
さらに、得られた正孔輸送層41には、必要に応じて、例えば大気中、不活性雰囲気中、減圧(または真空)下等において熱処理を施すようにしてもよい。これにより、例えば、正孔輸送層41の乾燥(脱溶媒または脱分散媒)、固化等を行うことができる。なお、正孔輸送層41は、熱処理によらず乾燥してもよい。
なお、このようなホスゲン法において、化合物(1)との反応には、好ましくはホスゲンが用いられるが、この他、例えば、トリホスゲン、ブロモホスゲン、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、クロロギ酸トリクロロメチル等を用いることができ、以上のものは、単独または任意の2種以上とを混合して用いることもできる。
[A2−II]エステル交換法
[A2−IIa] まず、前記化合物(1)と前述したようなホスゲン誘導体とを含有する本発明の導電性材料用組成物(正孔輸送材料)を陽極3上に塗布(供給)する。
この塗布には、前記工程[A2−Ia]で説明したのと同様の方法を用いることができる。
導電性材料用組成物の調製に用いる溶媒または分散媒としては、前記工程[A2−Ia]で説明した有機溶媒の他、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
導電性材料用組成物中における化合物(1)とホスゲン誘導体との配合比は、モル比で、1:1〜1:12であるのが好ましく、1:2〜1:6であるのがより好ましい。これにより、置換基Xとホスゲン誘導体との重縮合反応が効率良く進行し、未反応の化合物(1)が形成される正孔輸送層41に残存するのを好適に防止することができる。また、かかる範囲のように、ホスゲン誘導体を化合物(1)よりも多く配合させることにより、ホスゲン誘導体に反応溶媒としての機能も発揮させることができる。
なお、導電性材料用組成物には、エステル交換反応を促進させるための触媒を添加するようにしてもよい。この触媒には、例えば、前記工程[A2−Ia]で説明したのと同様のものを用いることができる。
[A2−IIb] 次に、陽極3上に塗布した導電性材料用組成物を加熱する。
これにより、置換基Xとホスゲン誘導体とのエステル交換反応(重縮合反応)が進行して、連結構造により連結された高分子(本発明の導電性材料)を得ることができるとともに、前述した副生成物と未反応のホスゲン誘導体とを形成される正孔輸送層41から確実に除去することができる。その結果、本発明の導電性材料を主材料とする正孔輸送層41が陽極3上に形成される。
導電性材料用組成物を加熱する温度は、120〜200℃程度であるのが好ましく、150〜180℃程度であるのがより好ましい。加熱する温度を、前記下限値よりも低くすると、用いるホスゲン誘導体の種類によっては、高分子の形成が十分に進行しないおそれがある。また、加熱する温度を、前記上限値を超えて高くすると、形成される高分子が変質・劣化するおそれがあり、好ましくない。また、加熱する温度をかかる範囲内とすることにより、副生成物と未反応のホスゲン誘導体とを形成される正孔輸送層41から確実に除去することができる。
また、反応時間は、加熱する温度によっても若干異なるが、1分〜4時間程度であるのが好ましく、15分〜2時間程度であるのがより好ましい。
また、導電性材料用組成物の加熱は、減圧状態で行うのが好ましい。
ここで、前述したように、置換基Xとホスゲン誘導体とが重縮合反応すると、副生成物が生成するが、ホスゲン誘導体として前記一般式(3)で表される化合物を用いた場合、副生成物として化学式Z−OHで表されるものが生成する。このような副生成物(不純物)と未反応のホスゲン誘導体とは、加熱により形成される正孔輸送層41から除去することができるが、この加熱の際に、減圧状態としておけば、副生成物と未反応のホスゲン誘導体とをより確実に除去することができる。これにより、正孔輸送層41中において前記副生成物またはホスゲン誘導体により正孔が捕捉されるのをより確実に阻止することができる。その結果、正孔輸送層41の正孔輸送能が低減することを好適に防止することができる。
なお、化学式Z−OHで表される副生成物としては、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、sec−イソアミルアルコール、ジエチルカルビノール、tert−ブチルカルビノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、フェノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
また、この減圧の程度(真空度)は、10Pa以下であるのが好ましく、10Pa以下であるのがより好ましい。これにより、前記副生成物と未反応のホスゲン誘導体とを正孔輸送層41からより確実に除去することができる。
なお、加熱する際の雰囲気は、特に限定されないが、窒素ガスやアルゴン、ヘリウム、キセノンのような希ガス等の不活性ガス雰囲気とするのが好ましい。これにより、雰囲気中のガスにより、置換基Xとホスゲン誘導体とのエステル交換反応が阻害されるのを好適に防止することができる。その結果、このエステル交換反応をより確実に進行させることができる。
前述したような方法を用いて、正孔輸送層41を本発明の導電性材料を主材料として形成(構成)することにより、次工程[3A]において、発光層材料を供給した際に、この発光層材料に含まれる溶媒または分散媒により、正孔輸送層41が膨潤および溶解するのを防止することができる。その結果、正孔輸送層41と発光層42との相溶解を確実に防止することができる。
また、正孔輸送層41を本発明の導電性材料(高分子)を主材料として構成することにより、得られた有機EL素子1において、正孔輸送層41と発光層42との界面付近において、これらの構成材料同士が経時的に混ざり合うのを確実に防止することができる。
この高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、2000〜1000000程度であるのが好ましく、5000〜300000程度であるのがより好ましい。これにより、高分子の膨潤および溶解をより確実に防止することができる。
なお、正孔輸送層41は、この正孔輸送層41と発光層42との相溶解が防止される範囲において、前記化合物(1)やホスゲン誘導体を含んでいてもよい。
[A3]発光層形成工程
次に、正孔輸送層41上に発光層42を形成する。
発光層42は、例えば、前述したような発光材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる発光層材料(発光層形成用材料)を、正孔輸送層41上に塗布して形成することができる。
発光材料を溶解または分散させる溶媒または分散媒としては、正孔輸送層41を形成する際に用いた溶媒または分散媒と同様のものを用いることができる。
また、発光層材料を、正孔輸送層41上に塗布する方法としても、正孔輸送層41を形成する際に用いた塗布方法と同様の方法を用いることができる。
[A4]電子輸送層形成工程
次に、発光層42上に電子輸送層43を形成する。
電子輸送層43は、前記正孔輸送層形成工程[A2]で説明したのと同様の方法を用いて形成することができる。
なお、発光層42が本発明の導電性材料のような高分子により構成されない場合、電子輸送層43を形成するために用いる導電性材料用組成物を、溶解または分散するための溶媒または分散媒としては、発光層42が膨潤および溶解しないものを選択するようにすればよい。これにより、発光層42と電子輸送層43との相溶解を確実に防止することができる。
[A5]陰極形成工程
次に、電子輸送層43上に陰極5を形成する。
陰極5は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
[A6]保護層形成工程
次に、陽極3、有機EL層4および陰極5を覆うように、保護層6を形成する。
保護層6は、例えば、前述したような材料で構成される箱状の保護カバーを、各種硬化性樹脂(接着剤)で接合すること等により形成する(設ける)ことができる。
硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、反応性硬化樹脂、嫌気性硬化樹脂のいずれも使用可能である。
以上のような工程を経て、有機EL素子1が製造される。
<有機薄膜トランジスタ>
次に、本発明の電子デバイスを、スイッチング素子である有機薄膜トランジスタ(以下、単に「有機TFT」という。)に適用した場合の実施形態について説明する。
図2は、有機TFT10を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。なお、以下の説明では、図2(a)中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図2に示す有機TFT10は、基板20上に設けられており、ソース電極30およびドレイン電極40と、有機半導体層(本発明の導電層)50と、ゲート絶縁層60と、ゲート電極70とが、この順で基板20側から積層されて構成されている。
具体的には、有機TFT10は、基板20上に、ソース電極30およびドレイン電極40が分離して設けられ、これら電極30、40を覆うように有機半導体層50が設けられている。さらに有機半導体層50上には、ゲート絶縁層60が設けられ、さらにこの上に、少なくともソース電極30とドレイン電極40の間の領域に重なるようにゲート電極70が設けられている。
この有機TFT10では、有機半導体層50のうち、ソース電極30とドレイン電極40との間の領域が、キャリアが移動するチャネル領域510となっている。以下、このチャネル領域510において、キャリアの移動方向の長さ、すなわちソース電極30とドレイン電極40との間の距離をチャネル長L、チャネル長L方向と直交する方向の長さをチャネル幅Wと言う。
このような有機TFT10は、ソース電極30およびドレイン電極40が、ゲート絶縁層60を介してゲート電極70よりも基板20側に設けられた構成の有機TFT、すなわち、トップゲート構造の有機TFTである。
以下、有機TFT10を構成する各部について、順次説明する。
基板20は、有機TFT10を構成する各層(各部)を支持するものである。基板20には、例えば、前述した有機EL素子1で説明した基板2と同様のものを用いることができる他、シリコン基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。
基板20上には、ソース電極30およびドレイン電極40が、チャネル長L方向に沿って、所定距離離間して並設されている。
これらのソース電極30およびドレイン電極40の構成材料としては、導電性を有するものであればいかなるものであってもよく、例えば、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金等の金属材料、ITO、FTO、ATO、SnO等の導電性酸化物材料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素材料、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等の導電性高分子材料等が挙げられ、これらのうち導電性高分子材料は、通常塩化鉄、ヨウ素、強酸、有機酸、ポリスチレンサルフォニック酸などの高分子でドープされ導電性を付与された状態で用いられる。さらに、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ソース電極30およびドレイン電極40の厚さ(平均)は、特に限定されないが、それぞれ、30〜300nm程度であるのが好ましく、50〜200nm程度であるのがより好ましい。
ソース電極30とドレイン電極40との間の距離(離間距離)、すなわち、チャネル長Lは、2〜30μm程度であるのが好ましく、2〜20μm程度であるのがより好ましい。
チャネル幅Wは、0.1〜5mm程度であるのが好ましく、0.3〜3mm程度であるのがより好ましい。
また、基板20上には、ソース電極30およびドレイン電極40を覆うように、有機半導体層50が設けられている。
この有機半導体層50の構成材料として、本発明の導電性材料を用いることができる。
前述したように、本発明の導電性材料は、基Yの化学構造を適宜設定することにより、形成される高分子に、目的とするキャリア輸送能の特性を付与することができるものである。
そこで、基Yの化学構造を適宜設定することにより、高分子に優れた半導体特性を付与することができることから、本発明の導電性材料を有機半導体層50に用いるのは、特に有効である。
このような有機半導体層50を構成する導電性材料としては、例えば、基Yの化学構造が前記化学式(6)、(7)、(20)、(21)および(24)のものが好適に選択される。
有機半導体層50の厚さ(平均)は、0.1〜1000nm程度であるのが好ましく、1〜500nm程度であるのがより好ましく、10〜100nm程度であるのがさらに好ましい。これにより、優れたキャリア輸送能を維持しつつ、有機TFT10が大型化すること(特に、厚さが増大すること)を防止することができる。
なお、有機半導体層50として、本発明の導電性材料のような高分子を主材料として構成されるものを用いることにより、得られる有機TFT10は、薄型化・軽量化が可能であるとともに、可撓性にも優れたものとなる。このような有機TFT10は、前述した有機EL素子を備えるフレキシブルディスプレイのスイッチング素子への適用に適している。
なお、有機半導体層50は、ソース電極30およびドレイン電極40を覆うように設けられる構成のものに限定されず、少なくともソース電極30とドレイン電極40との間の領域(チャネル領域510)に設けられていればよい。
有機半導体層50上には、ゲート絶縁層60が設けられている。
このゲート絶縁層60は、ソース電極30およびドレイン電極40に対してゲート電極70を絶縁するものである。
ゲート絶縁層60は、主として有機材料(特に有機高分子材料)で構成されているのが好ましい。有機高分子材料を主材料とするゲート絶縁層60は、その形成が容易であるとともに、有機半導体層50との密着性の向上を図ることもできる。
このような有機高分子材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルフェニレン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂、ポリビニルフェノールあるいはノボラック樹脂のようなフェノール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどのオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ゲート絶縁層60の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜5000nm程度であるのが好ましく、100〜1000nm程度であるのがより好ましい。ゲート絶縁層60の厚さを前記範囲とすることにより、ソース電極30およびドレイン電極40とゲート電極70とを確実に絶縁しつつ、有機TFT10が大型化すること(特に、厚さが増大すること)を防止することができる。
なお、ゲート絶縁層60は、単層構成のものに限定されず、複数層の積層構成のものであってもよい。
ゲート絶縁層60上には、ゲート電極70が設けられている。
ゲート電極70の構成材料としては、前述したソース電極30およびドレイン電極40の構成材料と同様のものを用いることができる。
ゲート電極70の厚さ(平均)は、特に限定されないが、0.1〜5000nm程度であるのが好ましく、1〜5000nm程度であるのがより好ましく、10〜5000nm程度であるのがさらに好ましい。
以上のような有機TFT10は、ゲート電極70に印加する電圧を変化させることにより、ソース電極30とドレイン電極40との間に流れる電流量が制御される。
すなわち、ゲート電極70に電圧が印加されていないOFF状態では、ソース電極30とドレイン電極40との間に電圧を印加しても、有機半導体層50中にほとんどキャリアが存在しないため、微少な電流しか流れない。一方、ゲート電極70に電圧が印加されているON状態では、有機半導体層50のゲート絶縁層60に面した部分に電荷が誘起され、チャネル領域510にキャリアの流路が形成される。この状態でソース電極30とドレイン電極40との間に電圧を印加すると、チャネル領域510を通ってキャリア(正孔または電子)が流れる。
このような有機TFT10は、例えば、次のようにして製造することができる。
図3〜図4は、それぞれ、図2に示す有機TFT10の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図3〜図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[B1]ソース電極およびドレイン電極形成工程
[B1−I] まず、図3(a)に示すような基板20を用意し、この基板20を、例えば、水(純水等)、有機溶媒等を単独または適宜組み合わせて洗浄する。
次に、基板20上に、フォトレジストを供給し、被膜80’を形成する(図3(b)参照。)。
基板20上に供給するフォトレジストとしては、光が照射(露光)された領域が硬化し、この露光された領域以外の領域が現像によって溶解し、除去されるネガ型フォトレジスト、および、露光された領域が現像によって溶解し、除去されるポジ型フォトレジストのいずれを用いてもよい。
ネガ型フォトレジストとしては、ロジン−重クロム酸塩、ポリビニルアルコール(PVA)−重クロム酸塩、セラック−重クロム酸塩、カゼイン−重クロム酸塩、PVA−ジアゾ、アクリル系フォトレジスト等のような水溶性フォトレジスト、ポリケイ皮酸ビニル、環化ゴム−アジド、ポリビニルシンナミリデンアセタート、ポリケイ皮酸β−ビニロキシエチルエステル等のような油溶性フォトレジスト等が挙げられる。
また、ポジ型フォトレジストとしては、o−ナフトキノンジアジド等のような油溶性フォトレジスト等が挙げられる。
フォトレジストを、基板20上に、供給する方法としては、いかなる方法であってもよいが、塗布法が好適に用いられる。
塗布法としては有機EL素子1の製造方法の正孔輸送層形成工程[A2]で説明したものと同様の方法を用いることができる。
次に、被膜80’を、フォトマスクを介して露光および現像し、ソース電極30およびドレイン電極40を形成する領域に開口部820を有するレジスト層80を形成する(図3(c)参照。)。
[B1−II] 次に、図3(d)に示すように、前述したような処理が施された基板20の開口部820内に、形成すべきソース電極30およびドレイン電極40に応じて、これら電極の構成材料またはその前駆体を含有する所定量の液状材料90を供給する。
この液状材料90において、ソース電極30およびドレイン電極40の構成材料またはその前駆体を、溶解または分散する溶液または分散媒としては、前記正孔輸送層形成工程[A2]で説明したものと同様のものを用いることができる。
また、この液状材料90を開口部820内に供給する方法には、前述したものと同様の塗布法を用いることができるが、これらの中でも、インクジェット法(液滴吐出法)を用いるのが好ましい。インクジェット法によれば、液状材料90を、液滴吐出ヘッドのノズルから液滴として吐出して、開口部820内に確実に供給することができる。その結果、レジスト層80に液状材料90が付着するのを確実に阻止することができる。
[B1−III] 次に、開口部820に供給された液状材料90から溶媒または分散媒を除去して、ソース電極30およびドレイン電極40を形成する。
前記溶媒または分散媒を除去する際の温度(除去温度)は、特に限定されず、溶媒または分散媒の種類によって若干異なるが、20〜200℃程度であるのが好ましく、50〜100℃程度であるのがより好ましい。これにより、液状材料90中に含まれる溶媒または分散媒を、確実に除去することができる。
なお、この溶媒または分散媒の除去を、減圧下で加熱するようにしてもよい。これにより、液状材料90中に含まれる溶媒または分散媒を、より確実に除去することができる。
[B1−IV] 次に、基板20からレジスト層80を除去して、基板20上に形成されたソース電極30およびドレイン電極40を得る(図4(f)参照。)。
レジスト層80の除去方法は、レジスト層80の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、プラズマ処理やオゾン処理のようなアッシング、紫外線の照射、Ne−Heレーザー、Arレーザー、COレーザー、ルビーレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、ガラスレーザー、YVOレーザー、エキシマレーザー等の各種レーザーの照射、レジスト層80を溶解または分解し得る溶剤との接触(例えば浸漬)等により行うことができる。
[B2]有機半導体層形成工程
次に、図4(h)に示すように、ソース電極30およびドレイン電極40が形成された基板20上に、ソース電極30およびドレイン電極40を覆うように、有機半導体層50を形成する。
このとき、ソース電極30とドレイン電極40との間(ゲート電極70に対応する領域)には、チャネル領域510が形成される。
この有機半導体層50は、有機EL素子1の製造方法の正孔輸送層形成工程[A2]で説明したのと同様の方法を用いて形成することができる。
ここで、有機半導体層50は、本発明の導電性材料(高分子)を主材料として構成されるものである。これにより、次工程[B3]において、ゲート絶縁層材料を有機半導体層50上に供給した際に、このゲート絶縁層材料に含まれる溶媒または分散媒により、高分子が膨潤および溶解することを好適に抑制または防止することができる。その結果、有機半導体層50とゲート絶縁層60との相溶解を確実に防止することができる。
また、有機半導体層50を本発明の導電性材料のように高分子を主材料として構成することにより、得られた有機TFT10において、有機半導体層50とゲート絶縁層60との界面付近において、これらの構成材料同士が経時的に混ざり合うのを確実に防止することができる。
[B3]ゲート絶縁層形成工程
次に、図4(i)に示すように、有機半導体層50上に、ゲート絶縁層60を塗布法を用いて形成する。
具体的には、ゲート絶縁層60は、絶縁材料またはその前駆体を含む溶液を、前述した塗布法を用いて、有機半導体層50上に塗布(供給)した後、必要に応じて、この供給された溶液に対して後処理(例えば加熱、赤外線の照射、超音波の付与等)を施すことにより形成することができる。
[B4]ゲート電極形成工程
次に、図4(j)に示すように、ゲート絶縁層60上に、ゲート電極70を塗布法を用いて形成する。
具体的には、ゲート電極70は、電極材料またはその前駆体を含む溶液を、塗布法を用いて、ゲート絶縁層60上に塗布(供給)した後、必要に応じて、この供給された溶液に対して後処理(例えば加熱、赤外線の照射、超音波の付与等)を施すことにより形成することができる。
また、塗布法には、前述したのと同様の方法を用いることができるが、特に、インクジェット法を用いるのが好ましい。インクジェット法によれば、電極材料またはその前駆体を含む溶液を、液滴吐出ヘッドのノズルから液滴を吐出してパターニングすることができる。その結果、ゲート絶縁層60上に、所定形状のゲート電極70を、容易かつ確実に形成することができる。
以上のような工程を経て、有機TFT10が製造される。
<電子機器>
また、前述したような、有機EL素子(発光素子)1や有機TFT(スイッチング素子)10のような本発明の電子デバイスは、各種電子機器に用いることができる。
図5は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、例えば、表示ユニット1106が前述の有機EL素子(発光素子)1と有機TFT(スイッチング素子)10とを備えている。
図6は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、例えば、この表示部が前述の有機EL素子(発光素子)1と有機TFT(スイッチング素子)10とを備えている。
図7は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、例えば、この表示部が前述の有機EL素子(発光素子)1と有機TFT(スイッチング素子)10とを備えている。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
なお、本発明の電子機器は、図5のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図6の携帯電話機、図7のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
以上、本発明の導電性材料、導電性材料用組成物、導電層、電子デバイスおよび電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、本発明の電子デバイスは、導電層を正孔輸送層として用いる場合、前述した表示素子(発光素子)の一例である有機EL素子に適用することができる他、例えば、受光素子(光電変換素子)の一例である太陽電池等に適用することができる。
また、本発明の電子デバイスは、導電層を有機半導体層として用いる場合、前述したスイッチング素子の一例である有機TFTに適用することができる他、例えば、半導体素子等に適用することができる。
さらに、本発明の導電層は、上述した正孔輸送層として用いる他、例えば、配線および電極等に適用することができる。そして、この場合、本発明の電子デバイスは、例えば、配線基板等に適用することができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.化合物の合成
まず、以下に示すような化合物(A)〜(S)を用意した。
<化合物(A)>
6−(p−アミノフェニル)ヘキサノールを無水ジメチルホルムアミド中で、ベンジルブロミドと水素化ナトリウムで処理し、ヒドロキシル基をベンジルエーテル基に変換し保護した。
次に、その得られた化合物1molを酢酸150mLに溶解し、室温で無水酢酸を滴下後、撹拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、水洗後、乾燥した。
次に、その得られた物質0.37mol、1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼン0.66mol、炭酸カリウム1.1mol、銅粉、ヨウ素を混合し、200℃で加熱した。放冷後、イソアミルアルコール130mL、純水50mL、水酸化カリウム0.73molを加え撹拌後、乾燥した。
さらに、そこで得られた化合物130mmol、2,5−ビス(4−ヨードフェニル)−チオフェン62mmol、酢酸パラジウム1.3mmol、t−ブチルホスフィン5.2mmol、t−ブトキシナトリム260mmol、キシレン700mLを混合して、120℃で撹拌した。
その後、放冷し、結晶化した。
その得られた化合物を、Pd−C触媒下水素ガスで還元し、ベンジルエーテル基からヒドロキシル基へ変換し脱保護した後、放冷し結晶化して化合物を得た。
そして、質量スペクトル(MS)法、1H−核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル法、13C−核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトル法、およびフーリエ変換赤外吸収(FT−IR)スペクトル法により、得られた化合物が下記化合物(A)であることを確認した。
Figure 2006213904
<化合物(B)>
1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼンに代えて1−ブロモ−3,5−ジメチル−4−ヘキシルベンゼンを用いた以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(B)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(C)>
6−(p−アミノフェニル)ヘキサノールに代えて2−(p−アミノフェニル)エタノールを用い、1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼンに代えて1−ブロモ−4−エチルベンゼンを用いた以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(C)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(D)>
2,5−ビス(4−ヨードフェニル)−チオフェンに代えて2,5−ビス(2−メチル−4−ヨードフェニル)−チオフェンを用いた以外は、前記化合物(C)と同様にして、化合物(D)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(E)>
6−(p−アミノフェニル)ヘキサノールに代えて8−(p−アミノフェニル)オクタノールを用い、1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼンに代えて1−ブロモ−4−オクチルベンゼンを用いた以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(E)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(F)>
6−(p−アミノフェニル)ヘキサノールに代えて1−(p−アミノフェニル)メタノールを用い、1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼンに代えて4−ブロモトルエンを用いた以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(F)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(G)>
2,5−ビス(4−ヨードフェニル)−チオフェンに代えて5,5’’−ビス(4−ヨードフェニル)−2,2’:5’,2’’−ターチオフェンを用いた以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(G)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(H)>
2,5−ビス(4−ヨードフェニル)−チオフェンに代えて3,5−ジヨード−1,2,4−トリアゾールを用いた以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(H)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(I)>
2,5−ビス(4−ヨードフェニル)−チオフェンに代えて2,5−(4−ヨードフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールを用いた以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(I)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(J)>
2,5−ビス(4−ヨードフェニル)−チオフェンに代えて3,3’−ジヨード−1,1’−ビイソベンゾチオフェンを用いた以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(J)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(K)>
6−(p−アミノフェニル)ヘキサノールに代えて2−(p−アミノフェニル)エタノールを用い、1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼンに代えて1−ブロモ−4−エチルベンゼンを用いた以外は、前記化合物(J)と同様にして、化合物(K)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(L)>
6−(p−アミノフェニル)ヘキサノールに代えて8−(p−アミノフェニル)オクタノールを用い、1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼンに代えて1−ブロモ−4−オクチルベンゼンを用いた以外は、前記化合物(J)と同様にして、化合物(L)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(M)>
6−(p−アミノフェニル)ヘキサノールに代えて1−(p−アミノフェニル)メタノールを用い、1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼンに代えて4−ブロモトルエンを用いた以外は、前記化合物(J)と同様にして、化合物(M)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(N)>
2,5−ビス(4−ヨードフェニル)−チオフェンに代えて5,5’−ジヨード−2,2’−ビ(3,4−ジオキシエチレンセレノフェン)を用いた以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(N)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(O)>
2,5−ビス(4−ヨードフェニル)−チオフェンに代えて5,5’’−ジヨード−2,2’:5’,2’’−ターセレノフェンを用いた以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(O)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(P)>
2,5−ビス(4−ヨードフェニル)−チオフェンに代えて5,5’’−ジヨード−3,3’:5’,3’’−ター(4−フェニル−1,2,4−トリアゾール)を用いた以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(P)を得た。
Figure 2006213904
<化合物(Q)>
1−アミノ−4−メチルベンゼン1molを酢酸150mLに溶解し、室温で無水酢酸を滴下後、撹拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、水洗後、乾燥した。
次に、その得られた物質0.37mol、1−ブロモ−4−メチルベンゼン0.66mol、炭酸カリウム1.1mol、銅粉、ヨウ素を混合し、200℃で加熱した。放冷後、イソアミルアルコール130mL、純水50mL、水酸化カリウム0.73molを加え撹拌後、乾燥した。
さらに、そこで得られた化合物130mmol、2,5−ビス(4−ヨードフェニル)−チオフェン62mmol、酢酸パラジウム1.3mmol、t−ブチルホスフィン5.2mmol、t−ブトキシナトリム260mmol、キシレン700mLを混合して、120℃で撹拌した。
その後、放冷し、結晶化して化合物を得た。
そして、質量スペクトル(MS)法、1H−核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル法、13C−核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトル法、およびフーリエ変換赤外吸収(FT−IR)スペクトル法により、得られた化合物が下記化合物(Q)であることを確認した。
Figure 2006213904
<化合物(R)>
下記化合物(R)として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(バイエル社製、「バイトロンP」)を用意した。
Figure 2006213904
<化合物(S)>
2,5−ビス(4−ヨードフェニル)−チオフェンに代えて3,5−ジヨード−1,2,4−トリアゾールを用いた以外は、前記化合物(Q)と同様にして、化合物(S)を得た。
Figure 2006213904
2.有機EL素子の製造
以下の各実施例および各比較例において、有機EL素子を5個ずつ製造した。
(実施例1A)
[正孔輸送材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(A)を、塩基としてピリジンを、有機溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)をそれぞれ用い、化合物(A)をピリジン水溶液とTHFとの容積比が5:1の混合液に溶解させて、正孔輸送材料を調製した。
[電子輸送材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(H)を用いた以外は、前記正孔輸送材料と同様にして、電子輸送材料を得た。
[有機EL素子の作製]
−1A− まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板上に、真空蒸着法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
−2A− 次に、ITO電極が設けられたガラス基板をチャンバー内に設置し、ITO電極上に、前記正孔輸送材料を、スピンコート法により塗布した。
そして、0℃に保ったチャンバー内の前記正孔輸送材料に、ホスゲンを10Pa(0℃)になるように導入し、1時間保持することにより、化合物(A)が備える水酸化アルキル基とホスゲンとを重縮合反応させた後、乾燥して、平均厚さ50nmの正孔輸送層を形成した。
−3A− 次に、正孔輸送層上に、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)(重量平均分子量200000)の1.7wt%キシレン溶液を、スピンコート法により塗布した後、乾燥して、平均厚さ50nmの発光層を形成した。
−4A− 次に、前記正孔輸送材料に代えて前記電子輸送材料を用いた以外は、前記工程−2A−と同様にすることにより、化合物(H)が備える水酸化アルキル基とホスゲンとを重縮合反応させて、平均厚さ20nmの電子輸送層を形成した。
−5A− 次に、電子輸送層上に、真空蒸着法により、平均厚さ300nmのAlLi電極(陰極)を形成した。
−6A− 次に、形成した各層を覆うように、ポリカーボネート製の保護カバーを被せ、紫外線硬化性樹脂により固定、封止して、有機EL素子を完成した。
(実施例2A〜13A)
正孔輸送材料および電子輸送材料に用いるヘテロアリールアミン誘導体として表1に示すものをそれぞれ用いた以外は、前記実施例1Aと同様にして、ホスゲン法を用いて正孔輸送層と電子輸送層とを形成することにより、有機EL素子を製造した。
(実施例14A)
[正孔輸送材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(A)を、ホスゲン誘導体としてジエチルカーボネートをそれぞれ用い、化合物(A)とジエチルカーボネートとをテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて、正孔輸送材料(導電性材料用組成物)を調製した。
なお、化合物(A)とジエチルカーボネートとの混合比をモル比で、1:4とした。
[電子輸送材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(H)を用いた以外は、前記正孔輸送材料と同様にして、電子輸送材料(導電性材料用組成物)を得た。
[有機EL素子の作製]
前記工程−2A−において、ITO電極上に塗布(供給)された前記正孔輸送材料を、窒素ガス雰囲気下、150℃、10Paの処理条件で30分間加熱処理を施して、化合物(A)が備える水酸化アルキル基とジエチルカーボネートとをエステル交換反応させることにより、平均厚さ50nmの正孔輸送層を形成した。そして、前記工程−4A−において、発光層上に塗布(供給)された前記電子輸送材料を、窒素ガス雰囲気下、150℃、10Paの処理条件で30分間加熱処理を施して、化合物(H)が備える水酸化アルキル基とジエチルカーボネートとをエステル交換反応させることにより、平均厚さ20nmの電子輸送層を形成した以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
(実施例15A〜26A)
正孔輸送材料および電子輸送材料に用いるヘテロアリールアミン誘導体として表1に示すものをそれぞれ用いた以外は、前記実施例14Aと同様にして、エステル交換法を用いて正孔輸送層と電子輸送層とを形成することにより、有機EL素子を製造した。
(比較例1A)
[正孔輸送材料の調製]
化合物(Q)をジクロロエタンに溶解させて、正孔輸送材料を得た。
[有機EL素子の作製]
前記工程−2A−において、ITO電極上に塗布(供給)された前記正孔輸送材料を乾燥させることにより正孔輸送層を形成し、前記工程−4A−において、化合物(S)を真空蒸着して電子輸送層を形成した以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
(比較例2A)
[正孔輸送材料の調製]
化合物(R)を水に分散させることにより、2.0wt%水分散液を調製して、正孔輸送材料を得た。
なお、化合物(R)としては、3,4−エチレンジオキシチオフェンとスチレンスルホン酸との比率が、重量比で1:20のものを用いた。
[有機EL素子の作製]
正孔輸送材料として、前記正孔輸送材料を用いた以外は、前記比較例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
(比較例3A)
[正孔輸送材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(A)を用い、化合物(A)とポリカーボネート樹脂(帝人化成社製:パンライトL−1250)とを重量比で3:7の混合比でジクロロエタンに混合させて、正孔輸送材料を得た。
[電子輸送材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(H)を用いた以外は、前記正孔輸送材料と同様にして、電子輸送材料(導電性材料用組成物)を得た。
[有機EL素子の作製]
前記工程−2A−において、ITO電極上に塗布(供給)された前記正孔輸送材料を乾燥させることにより正孔輸送層を形成し、前記工程−4A−において、発光層上に塗布(供給)された前記電子輸送材料を乾燥させることにより電子輸送層を形成した以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
(比較例4A)
[正孔輸送材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(Q)を用い、光架橋剤としてビスフェノールA型エポキシ化合物(旭電化工業社製、「アデカレジンEP」)を用いて、化合物(Q)と、ビスフェノールA型エポキシ化合物と、光カチオン重合開始剤(住友スリーエム社製:FC−508)とを重量比で85:14:1の比率でジクロロエタンに混合させて、正孔輸送材料を得た。
[電子輸送材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(S)を用いた以外は、前記正孔輸送材料と同様にして、電子輸送材料を得た。
[有機EL素子の作製]
前記工程−2A−において、ITO電極上に塗布(供給)された前記正孔輸送材料を乾燥した後、このものに対して、水銀ランプ(ウシオ電機社製、「UM−452型式」)にフィルターを用いて、大気中で波長365nm、照射強度400mW/cmの紫外線を10秒間照射し、その後、110℃で60分間加熱することにより正孔輸送層を形成した。そして、前記工程−4A−において、発光層上に塗布された前記電子輸送材料を乾燥した後、前記と同様の水銀ランプを用いて、大気中で波長365nm、照射強度400mW/cmの紫外線を10秒間照射し、その後、110℃で60分間加熱することにより電子輸送層を形成した以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
(比較例5A)
[正孔輸送材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(F)を用いた以外は、前記実施例1Aと同様にして、正孔輸送材料を得た。
[有機EL素子の作製]
正孔輸送材料として、前記正孔輸送材料を用いて正孔輸送層を形成し、前記工程−4A−において、化合物(S)を真空蒸着して電子輸送層を形成した以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
(比較例6A)
[正孔輸送材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(F)を用いた以外は、前記実施例14Aと同様にして、正孔輸送材料を得た。
[有機EL素子の作製]
正孔輸送材料として、前記正孔輸送材料を用いて正孔輸送層を形成し、前記工程−4A−において、化合物(S)を真空蒸着して電子輸送層を形成した以外は、前記実施例14Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
3.有機EL素子の評価
各実施例および各比較例の有機EL素子について、それぞれ、発光輝度(cd/m)、最大発光効率(lm/W)を測定すると共に、発光輝度が初期値の半分になる時間(半減期)を測定した。
また、各測定値は、いずれも、5個の有機EL素子の平均値を求めた。
なお、発光輝度の測定は、ITO電極とAlLi電極との間に6Vの電圧を印加することで行った。
そして、比較例1Aで測定された各測定値(発光輝度、最大発光効率、半減期)を基準値として、各実施例および各比較例で測定された各測定値を、それぞれ、以下の4段階の基準に従って評価した。
◎:比較例1Aの測定値に対し、1.50倍以上である
○:比較例1Aの測定値に対し、1.25倍以上、1.50倍未満である
△:比較例1Aの測定値に対し、1.00倍以上、1.25倍未満である
×:比較例1Aの測定値に対し、0.75倍以上、1.00倍未満である
これらの評価結果を、それぞれ、以下の表1に示す。
Figure 2006213904
表1に示すように、各実施例の有機EL素子(本発明の導電性材料を主材料とする正孔輸送層と電子輸送層とを備える有機EL素子)は、いずれも、各比較例の有機EL素子と比較して、発光輝度、最大発光効率および半減期ともに、優れた結果が得られた。
これにより、本発明の有機EL素子は、主骨格同士の相互作用が好適に低減されていることが明らかとなった。また、正孔輸送層と発光層との相溶解が好適に防止されていることが明らかとなった。
また、置換基Xを適宜選択することにより、各実施例において、主骨格の離間距離が適切な大きさに保たれているものほど、優れた発光輝度の向上、最大発光効率の向上および半減期の延長を示す結果が得られた。
さらに、正孔輸送層および電子輸送層を構成する導電性材料をそれぞれ適宜選択すること、すなわち、前記一般式(1)で表される化合物の基Yを適宜選択することにより、各実施例において、正孔輸送層と電子輸送層との組み合わせが適切なものほど、優れた発光輝度の向上、最大発光効率の向上および半減期の延長を示す結果が得られた。
4.有機TFTの製造
以下の各実施例および各比較例において、有機TFTを5個ずつ製造した。
(実施例1B)
[有機半導体材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(J)を用いた以外は、前記実施例1Aの正孔輸送材料と同様にして、有機半導体材料を得た。
[有機TFTの製造]
−1B− まず、平均厚さ1mmのガラス基板を用意し、水(洗浄液)を用いて洗浄した。
次に、ガラス基板上に、スピンコート法によってフォトレジストを塗布した後、プレベーク処理を行うことによって被膜を形成した。
次に、この被膜に対して、フォトマスクを介して紫外線を照射(露光)した後に、現像を行った。これにより、ソース電極およびドレイン電極を形成する領域に開口部を有するレジスト層を形成した。
−2B− 次に、この開口部内に、金コロイド水溶液を、インクジェット法により供給した。その後、金コロイド水溶液が供給されたガラス基板を加熱乾燥して、ソース電極およびドレイン電極を得た。
−3B− 次に、レジスト層を、酸素プラズマ処理によって除去した後、ソース電極およびドレイン電極が形成されたガラス基板を、水およびメタノールで順次洗浄した。
−4B− 次に、ソース電極およびドレイン電極が設けられたガラス基板をチャンバー内に設置し、ガラス基板上に、前記有機半導体材料を、スピンコート法により塗布した。
そして、0℃に保ったチャンバー内の前記有機半導体材料に、ホスゲンを10Pa(0℃)になるように導入し、1時間保持することにより、化合物(J)が備える水酸化アルキル基とホスゲンとを重縮合反応させた後、乾燥して、平均厚さ50nmの有機半導体層を形成した。
−5B− 次に、有機半導体層上に、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)の酢酸ブチル溶液を、スピンコート法により塗布した後、乾燥させることにより、平均厚さ500nmのゲート絶縁層を形成した。
−6B− 次に、ゲート絶縁層上の、ソース電極とドレイン電極との間の領域に対応する部分に、ポリエチレンジオキシチオフェンの水分散液を、インクジェット法により塗布した後乾燥した。これにより、平均厚さ100nmのゲート電極を形成した。
以上の工程により、有機TFTを製造した。
(実施例2B〜7B)
有機半導体材料に用いるヘテロアリールアミン誘導体として表2に示すものを用いた以外は、前記実施例1Bと同様にして、ホスゲン法を用いて有機半導体層を形成することにより、有機TFTを製造した。
(実施例8B)
[有機半導体材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(J)を用いた以外は、前記実施例14Aの正孔輸送材料と同様にして、有機半導体材料(導電性材料用組成物)を得た。
[有機TFTの製造]
前記工程−4B−において、ガラス基板上に塗布された前記有機半導体材料を、窒素ガス雰囲気下、150℃、10Paの処理条件で30分間加熱処理を施して、化合物(J)が備える水酸化アルキル基とジエチルカーボネートとをエステル交換反応させることにより、平均厚さ50nmの有機半導体層を形成した以外は、前記実施例1Bと同様にして、有機EL素子を製造した。
(実施例9B〜14B)
有機半導体材料に用いるヘテロアリールアミン誘導体として表2に示すものを用いた以外は、前記実施例8Bと同様にして、エステル交換法を用いて有機半導体層を形成することにより、有機TFTを製造した。
(比較例1B)
[有機半導体材料の調製]
化合物(Q)をジクロロエタンに溶解させて、有機半導体材料を得た。
[有機TFTの作製]
前記工程−4B−において、ソース電極およびドレイン電極が形成されたガラス基板上に塗布された前記有機半導体材料を乾燥させることにより有機半導体層を形成した以外は、前記実施例1Bと同様にして、有機TFTを製造した。
(比較例2B)
[有機半導体材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(J)を用い、化合物(J)とポリカーボネート樹脂(帝人化成社製:パンライトL−1250)とを重量比で3:7の混合比でジクロロエタンに混合させて、有機半導体材料を得た。
[有機TFTの作製]
有機半導体材料として、前記有機半導体材料を用いた以外は、前記比較例1Bと同様にして、有機TFTを製造した。
(比較例3B)
[有機半導体材料の調製]
ヘテロアリールアミン誘導体として化合物(Q)を用い、光架橋剤としてビスフェノールA型エポキシ化合物(旭電化工業社製、「アデカレジンEP」)を用いて、化合物(Q)と、ビスフェノールA型エポキシ化合物と、光カチオン重合開始剤(住友スリーエム社製:FC−508)とを重量比で85:14:1の混合比でジクロロエタンに混合させて、有機半導体材料を得た。
[有機TFTの作製]
前記工程−4B−において、ソース電極およびドレイン電極が形成されたガラス基板上に塗布された前記有機半導体材料を乾燥した後、このものに対して、水銀ランプ(ウシオ電機社製、「UM−452型式」)にフィルターを用いて、大気中で波長365nm、照射強度400mW/cmの紫外線を10秒間照射し、その後、110℃で60分間加熱することにより有機半導体層を形成した以外は、前記実施例1Bと同様にして、有機TFTを製造した。
(比較例4B)
有機半導体材料に用いるヘテロアリールアミン誘導体として化合物(M)を用いた以外は、前記実施例1Bと同様にして、有機半導体材料の調製を行った後、有機TFTを製造した。
(比較例5B)
有機半導体材料に用いるヘテロアリールアミン誘導体として化合物(M)を用いた以外は、前記実施例8Bと同様にして、有機半導体材料の調製を行った後、有機TFTを製造した。
5.有機TFTの評価
各実施例および各比較例で製造した有機TFTについて、それぞれ、OFF電流、ON電流の値を測定した。
ここで、OFF電流とは、ゲート電圧を印加しないときに、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流の値のことであり、ON電流とは、ゲート電圧を印加したときに、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流の値のことである。
したがって、OFF電流の絶対値と、ON電流の絶対値との比(ON/OFF比)の値が大きいもの程、良好な特性を有する有機TFTであることを意味する。
OFF電流は、ソース電極とドレイン電極との電位差を30Vとして測定し、ON電流は、ソース電極とドレイン電極との電位差を30Vとし、ゲート電圧の絶対値を40Vとして測定した。
そして、各実施例および各比較例で測定されたON/OFF比の値を、それぞれ、以下の4段階の基準に従って評価した。
◎:ON/OFF比の値が、10以上である
○:ON/OFF比の値が、10以上、10未満である
△:ON/OFF比の値が、10以上、10未満である
×:ON/OFF比の値が、10未満である
これらの評価結果を、それぞれ、以下の表2に示す。
Figure 2006213904
表2に示すように、各実施例の有機TFTは、いずれも、各比較例の有機TFTと比較して、ON/OFF比の値が大きく、特性に優れた結果が得られた。
これにより、主骨格同士の相互作用が好適に低減されていることが明らかとなった。また、有機半導体層とゲート絶縁層との相溶解が好適に防止されていることが明らかとなった。
また、置換基Xを適宜選択することにより、各実施例において、主骨格の離間距離が適切な大きさに保たれているものほど、ON/OFF比の値が大きく、良好な特性を示す結果が得られた。
有機EL素子の一例を示した縦断面図である。 有機TFTの実施形態を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。 図2に示す有機TFTの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 図2に示す有機TFTの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。 本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。 本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
符号の説明
1……有機EL素子 2……基板 3……陽極 4……有機EL層 41……正孔輸送層 42……発光層 43……電子輸送層 5……陰極 6……保護層 10‥‥有機薄膜トランジスタ 20‥‥基板 30‥‥ソース電極 40‥‥ドレイン電極 50‥‥有機半導体層 510‥‥チャネル領域 60‥‥ゲート絶縁層 70‥‥ゲート電極 80‥‥レジスト層 80’‥‥被膜 820‥‥開口部 90‥‥液状材料 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300‥‥ディジタルスチルカメラ 1302‥‥ケース(ボディー) 1304‥‥受光ユニット 1306‥‥シャッタボタン 1308‥‥回路基板 1312‥‥ビデオ信号出力端子 1314‥‥データ通信用の入出力端子 1430‥‥テレビモニタ 1440‥‥パーソナルコンピュータ


Claims (29)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物同士を、それらが持つ置換基Xとホスゲンおよび/またはその誘導体とを重縮合反応させ、連結してなることを特徴とする導電性材料。
    Figure 2006213904
    [式中、2つのRは、それぞれ独立して、炭素数2〜8の直鎖アルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、2つのXは、それぞれ独立して、下記一般式(2)で表される置換基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、Yは、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
    Figure 2006213904
    [式中、nは、2〜8の整数を表す。]
  2. 前記ホスゲン誘導体は、下記一般式(3)で表される化合物である請求項1に記載の導電性材料。
    Figure 2006213904
    [式中、2つのZは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
  3. 2つの前記置換基Xは、同一である請求項1または2に記載の導電性材料。
  4. 前記置換基Xは、ベンゼン環の3位、4位または5位のうちのいずれかに結合している請求項1ないし3のいずれかに記載の導電性材料。
  5. 2つの前記置換基Rは、同一である請求項1ないし4のいずれかに記載の導電性材料。
  6. 前記置換基Rは、ベンゼン環の4位に結合している請求項1ないし5のいずれかに記載の導電性材料。
  7. 前記複素環は、窒素、酸素、硫黄、セレンおよびテルルのうちの少なくとも1種のヘテロ原子を含有する請求項1ないし6のいずれかに記載の導電性材料。
  8. 前記複素環は、芳香族系のものである請求項1ないし7のいずれかに記載の導電性材料。
  9. 前記基Yは、複素環を1〜5つ含むものである請求項1ないし8のいずれかに記載の導電性材料。
  10. 前記基Yは、前記複素環以外に、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を少なくとも1つ含む請求項1ないし9のいずれかに記載の導電性材料。
  11. 前記基Yは、前記一般式(1)中の各Nにそれぞれ、直接結合する前記芳香族炭化水素環と、これらの芳香族炭化水素環の間に存在する少なくとも1つの前記複素環とを含む請求項10に記載の導電性材料。
  12. 前記基Yの総炭素数は、2〜75である請求項1ないし11のいずれかに記載の導電性材料。
  13. 下記一般式(1)で表される化合物と、ホスゲン誘導体とを含有することを特徴とする導電性材料用組成物。
    Figure 2006213904
    [式中、2つのRは、それぞれ独立して、炭素数2〜8の直鎖アルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、2つのXは、それぞれ独立して、下記一般式(2)で表される置換基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、Yは、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
    Figure 2006213904
    [式中、nは、2〜8の整数を表す。]
  14. 請求項1ないし12のいずれかに記載の導電性材料を主材料とすることを特徴とする導電層。
  15. 請求項13に記載の導電性材料用組成物を用いて形成されたことを特徴とする導電層。
  16. 前記導電層は、正孔輸送層である請求項14または15に記載の導電層。
  17. 前記正孔輸送層の平均厚さは、10〜150nmである請求項16に記載の導電層。
  18. 前記導電層は、電子輸送層である請求項14または15に記載の導電層。
  19. 前記電子輸送層の平均厚さは、1〜100nmである請求項18に記載の導電層。
  20. 前記導電層は、有機半導体層である請求項14または15に記載の導電層。
  21. 前記有機半導体層の平均厚さは、0.1〜1000nmである請求項20に記載の導電層。
  22. 請求項14ないし21のいずれかに記載の導電層を備えることを特徴とする電子デバイス。
  23. 請求項16ないし19のいずれかに記載の導電層を有する積層体を備えることを特徴とする電子デバイス。
  24. 前記電子デバイスは、発光素子または光電変換素子である請求項23に記載の電子デバイス。
  25. 前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項24に記載の電子デバイス。
  26. 請求項20または21に記載の導電層を有する積層体を備えることを特徴とする電子デバイス。
  27. 前記電子デバイスは、スイッチング素子である請求項22に記載の電子デバイス。
  28. 前記スイッチング素子は、有機薄膜トランジスタである請求項27に記載の電子デバイス。
  29. 請求項22ないし28のいずれかに記載の電子デバイスを備えることを特徴とする電子機器。

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