JP2006242688A - 持続放出性製剤の薬物放出性の生体外評価方法 - Google Patents

持続放出性製剤の薬物放出性の生体外評価方法 Download PDF

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由季 高島
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Abstract

【課題】
持続放出性製剤の薬物放出性を簡便かつ正確に評価しうる生体外評価方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
持続放出性製剤の薬物放出の評価を行う際に、温度感受性ポリマーを用いてin vivoを反映しうる条件、即ち生体内に近い温度およびゲル状態で行えば、より生体内での試験結果を反映しうる薬物放出の評価が可能となる。具体的には温度感受性ポリマーを含む水溶液に評価すべき持続放出性薬剤を加え、ゲル状態を維持しうる適当な温度条件で必要時間加温し、加温後に温度を変化させてゾル状態にした該ポリマー含有水溶液に放出された薬物量を検出することで評価することができる。

Description

本発明は、持続放出性製剤の薬物放出性の生体外評価方法、即ち、持続放出性製剤を含む溶液中の薬物の薬物放出量および/または持続放出性医薬品中の薬物残存量の検出方法に関する。
徐放性製剤すなわち持続放出性製剤(「徐放性製剤」という場合もある。)は、薬物の効力持続、副作用の軽減、生物学的半減期の短い薬物の投与回数削減、総投与量の低減等のために設計開発された製剤であり、ドラッグデリバリーシステムとして多くの研究がなされている(特許文献1、2等)。例えば徐放性製剤をヒト、またはヒト以外の動物に用いる場合に、該徐放性製剤の薬物放出を評価する方法として、in vivoである動物試験を行うのがもっとも信頼性が高いと考えられる。
しかし、薬物放出期間が1ヶ月以上にわたる場合、1ヶ月以上の期間in vivoにおいて試験することが必要となり、一定条件下で長期にわたって動物の維持および管理を継続するのは極めて困難である。
また、持続放出性製剤のin vitroで評価する方法は各種試みられているが(特許文献3、4)、in vivoでの結果ヒト等の動物における薬物放出を反映しうる試験結果とは乖離する場合が多く、信頼性に問題がある。
特開2005-022975号公報 特開2004-269516号公報 特許第3032911号公報 特表2004-510993号公報
本発明は、持続放出性製剤の薬物放出性を簡便かつ正確に評価しうる生体外評価方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記問題点を解決するため鋭意研究を重ねた結果、持続放出性製剤の薬物放出の生体外評価を行う際に、in vivoを反映しうる条件、即ち生体内に近い温度およびゲル状態で行えば、より生体内での試験結果を反映しうる薬物放出の評価が可能となることを着目し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.温度感受性ポリマーを用いることを特徴とする、持続放出性薬剤の薬物放出性の生体外評価方法。
2.温度感受性ポリマーの転移温度が8〜50℃であり、転移温度以下でゾル状態、転移温度より高い温度でゲル状態の性状からなる温度感受性ポリマーを用いる前項1に記載の評価方法。
3.温度感受性ポリマーが、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)のN-ブチルメタクリレート(BMA)と、ポリエチレングリコールジメチルアクリレート(PEG)の共重合体である前項1または2に記載の評価方法。
4.以下の工程を含む前項1〜3のいずれか1に記載の評価方法:
1)温度感受性ポリマーが4〜20w/v%となるようにポリマー含有水溶液を調製する工程;
2)前記ポリマー含有水溶液に転移温度以下で持続放出性薬剤を加え分散する工程;
3)前記持続放出性医薬品を含むポリマー含有水溶液を20〜80℃で加温する工程;
4)前記ポリマー含有水溶液を転移温度以下に冷却する工程;
5)前記ポリマー含有水溶液中の薬物放出量および/または持続放出性医薬品中の薬物残存量を検出する工程。
5.以下の工程を含む前項1〜3のいずれか1に記載の評価方法:
1)温度感受性ポリマーが4〜20w/v%となるようにポリマー含有水溶液を調製する工程;
2)前記ポリマー含有水溶液に持続放出性医薬品を加え分散する工程;
3)前記持続放出性医薬品を含むポリマー含有水溶液をマイクロプレートのウェルに分注する工程;
4)前記マイクロプレートを20〜80℃で24時間〜3ヶ月間一定の温度であるいは一定の速度で昇温させながら、加湿、加温する工程;
5)前記マイクロプレートから持続放出性医薬品を含むポリマー含有水溶液を測定用容器に移す工程;
6)測定用容器中の前記ポリマー含有水溶液を転移温度以下に冷却する工程;
7)前記ポリマー含有水溶液中の薬物放出量および/または持続放出性医薬品中の薬物残存量を検出する工程。
6.以下の工程を含む前項1〜3のいずれか1に記載の評価方法:
1)温度感受性ポリマーが4〜20w/v%となるようにポリマー含有水溶液を調製する工程;
2)前記ポリマー含有水溶液をマイクロプレートのウェルに分注する工程;
3)分注された前記ポリマー含有水溶液に、持続放出性医薬品を分散した溶液を注入する工程;
4)前記マイクロプレートを20〜80℃で24時間〜3ヶ月間一定の温度であるいは一定の速度で昇温させながら、加湿、加温する工程;
5)前記マイクロプレートから持続放出性医薬品を含むポリマー含有水溶液を測定用容器に移す工程;
6)測定用容器中の前記ポリマー含有水溶液を転移温度以下に冷却する工程;
7)前記ポリマー含有水溶液中の薬物放出量および/または持続放出性医薬品中の薬物残存量を検出する工程。
7.持続放出性薬剤の薬物放出性の生体外評価用材料としての温度感受性ポリマーの用途。
8.温度感受性ポリマーが、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)のN-ブチルメタクリレート(BMA)と、ポリエチレングリコールジメチルアクリレート(PEG)の共重合体である前項7に記載の用途。
本発明の持続放出性薬剤の薬物放出性評価は、生体内の温度条件である37℃付近ではゲル化する温度感受性ポリマーを用いて試験を行うため、温度およびゲル状態が生体内を反映しうる条件での試験が可能となる。これにより、本発明の生体外評価方法によれば、生体内での薬物放出を反映しうる評価を行うことができる。
本発明において、持続放出性薬剤とは、薬物の溶出を制御することで薬理効果を持続可能な作用を有する徐放性組成物をいい、徐放性を有する薬剤であれば経口用薬剤、注射用薬剤、経皮用薬剤等とくに限定されない。これらの持続放出性薬剤は、薬学的に許容しうる公知の添加物を含むことができる。また、持続放出性薬剤は、公知の方法にしたがって製造することができる。本発明において、持続放出性薬剤を便宜上「マイクロスフェア」という場合もある。
経口用の持続放出性薬剤の例として、経口可能な医薬活性成分を、例えば水にカラギーナン及びジェランガムからなる群より選ばれる1種又は2種とローカストビーンガムを溶解させてなる溶液と、キサンタンガム及び有機酸カルシウム等を溶解させてなる溶液とを加温して混合させた後、経口可能な大きさ及び形状となるように適当な容器中に充填して冷却固化することで得ることができる。経口可能な医薬活性成分として、例えばアセトアミノフェン、塩酸ロペラミド、ピコスルファートナトリウム、イブプロフェン、塩酸ブロムヘキシン、テオフィリン、マレイン酸クロルフェニラミン、インドメタシン、ビタミン類、生薬エキス、シメチジン、塩酸ラニチジン、クラリスロマイシン等が挙げられる。
注射用の持続放出性薬剤の例として、医薬活性成分、乳酸−グリコール酸重合体および/またはゼラチンを含む注射用徐放性製剤が挙げられる。医薬活性成分として、公知の注射可能な低分子の医薬品の他、例えばインターロイキン、インターフェロン、ヒトあるいは動物の成長因子、肝細胞増殖因子、神経成長因子、血管新生因子等のタンパク質や、ホルモン、タンパク質断片、例えば、ソマトスタチン、LHRH、あるいはそれらの活性誘導体などのペプチド、さらに遺伝子治療に用いるDNA、RNA、プラスミドDNA、アンチセンスやsiRNAなどのオリゴ核酸等の医薬品があげられる。
本発明の温度感受性ポリマーは、持続放出性薬剤の薬物放出性の生体外評価方法に使用される。本発明の温度感受性ポリマーは、転移温度を境として、ゲル状またはゾル状の性状を示し、可逆的にゾル−ゲル変化を起こすポリマーが好適である。評価試験中、例えば薬物放出時には生体内と同様にゲル状態であり、放出した薬物を検出する際には取り扱いが簡便なように、ゾル状態のものが好適である。このような性状の温度感受性ポリマーとして、転移温度が8〜50℃、好ましくは10〜45℃のものであり、転移温度以下でゾル状態、転移温度より高い温度でゲル状態を示すポリマーであれば良い。
かかる性状を有する温度感受性ポリマーとして、具体的にはN-イソプロピルアクリルアミド(N-isopropylacrylamide(NIPAAm))のN-ブチルメタクリレート(n-butylmethacrylate(BMA))と、ポリエチレングリコールジメチルアクリレート(polyethylene glycol dimethacrylate(PEG))の共重合体が挙げられる。より具体的には、化学式(I)に示す共重合体があげられる。
式中xはN-イソプロピルアクリルアミド単位、yはN-ブチルメタクリレート単位、zはポリエチレングリコール単位を示す。温度感受性ポリマー中、x=94±3%、y=5±3%およびz=1±0.5%の割合で各々含有される。該ポリマーは、転移温度が約20℃であり、0〜15℃でゾル状態であり、20℃以上でゲル状態となる。該ポリマーは、可逆的に繰返しゾル−ゲル状態を繰り返すことができる。
その他、同様の温度感受性ポリマーであればいずれでもよく、例えば、N-イソプロピルアクリルアミドとブチルメタアクリレートの共重合体、N-イソプロピルアクリルアミド、ブチルメタアクリレートとアクリル酸の共重合体(85/5/10)、N-イソプロピルアクリルアミドとDL乳酸の共重合体などが挙げられる。
本発明の持続放出性薬剤の薬物放出性は、具体的には温度感受性ポリマーを含む水溶液に評価すべき持続放出性薬剤を加え分散し、適当な温度条件で必要時間加温し、加温後に温度感受性ポリマーを含む水溶液に放出された薬物量を検出することで評価することができる。
この場合において、温度感受性ポリマー濃度は、薬剤が沈降してケーキングなどの物理的変化をしない濃度であればいずれでもよいが、使用するポリマーに応じて適宜選択することができる。例えば化学式(I)に示すポリマーの場合には、4〜20w/w%、好ましくは8〜16w/w%となるように溶媒に混入することで、ポリマー含有水溶液を調製することができる。この場合において、温度感受性ポリマーの濃度が4w/w%より低ければ、評価試験において、必要な温度条件の場合にゲル化することがないため不適切である。また、20w/w%より高ければ、粘性が高く薬剤の分散が困難となり、マイクロプレートを用いる場合にはウェルへ均等に分注することが困難となるため不適切である。
溶媒として、水、あるいは適当な塩類、界面活性剤、保存剤などを加えた緩衝液が用いられる。ここで、生体での放出性に適合させるには、pH6〜7.6、0.02〜0.5 M濃度の塩(例えば、リン酸、クエン酸、酢酸、ホウ酸など)が好適である。例えば、0.02% ポリソルベート80含有、pH7.0、0.03 Mリン酸緩衝液が挙げられる。長期加温して保存する場合は、保存剤を加えることが好ましく、たとえば、0.05%アジ化ナトリウムなどを用いる。ただし、品質試験のために加速して薬物を放出させたい時は、これらの溶出液を、より酸性やアルカリ性にすることが選択され、たとえば、pH 1〜12などの水または緩衝液を選択する。
上記により得られた温度感受性ポリマー含有水溶液に持続放出性薬剤を加えて分散させるか、あるいは、持続放出性薬剤を上記溶媒に分散した溶液を温度感受性ポリマー含有水溶液に注入して分散させることができる。持続放出性薬剤の添加濃度は、持続放出性薬剤の種類に応じて選択することができ、例えば投与量、製剤の経時的変化による温度感受性ポリマー含有水溶液の、例えば、pH変化、塩濃度の変化、ゲル構造の変化などの許容力により適宜決定することができる。
持続放出性薬剤を含む温度感受性ポリマー含有水溶液を容器に移して加温する。密封できない容器を用いる場合は、細胞培養用インキュベーターなどの加湿下での保温が必要になる。保温容器に、温度感受性ポリマー含有水溶液に持続放出性薬剤を加えて分散させたものを封入しても良いし、まず温度感受性ポリマー含有水溶液を容器に加え、次に持続放出性薬剤を適当な分散媒に分散した溶液を封入してもよい。保温容器として、例えばマイクロプレートや、スクリューキャップ付きガラスチューブ、アンプル、バイアルなどの密封できる適当な容器を使用することができる。マイクロプレートの場合は、ゲル溶液の乾燥を防ぐため加湿する必要がある。温度は、持続放出性薬剤の種類や用途、評価試験の目的により適宜選択することができ、具体的には20〜80℃、好ましくは25〜60℃の範囲で加温することができる。例えば生体内の温度を反映しうる温度とする場合は、35〜39℃が好ましい。加速試験の場合には、前記示した範囲内で生体内の温度を反映しうる温度よりは高い温度、例えば50〜60℃で加温することができる。加速試験により、薬物放出性を短期間で評価することも可能である。
加温時間についても、持続放出性薬剤の種類や用途、評価試験の目的により適宜選択することができる。例えば、3ヶ月間の持続放出性薬剤であれば、3ヶ月以内の必要な時間を選択することができる。ただし、加速試験で温度を上昇させる場合は、24時間から数日で完了するように設定することができる。
次に、温度感受性ポリマー含有水溶液中に放出された薬物量と必要に応じて持続放出性薬剤に残存する薬物量を検出する。薬物検出のために、上記加温した温度感受性ポリマー含有水溶液を、別の容器に移してもよい。加温した温度感受性ポリマー含有水溶液は、冷却により転移温度以下に下げ、ゾル状態にすることができる。冷却方法は特に限定されないが、例えば容器を氷冷することにより達成することができる。
持続放出性薬剤を含む温度感受性ポリマー含有水溶液は、放出された薬物を検出するのに必要な処理を加えることができる。例えば、該温度感受性ポリマー含有水溶液を検出に必要な濃度に希釈することができる。また、持続放出性薬剤と放出された薬物は、適当な方法により分離することができる。分離の方法は自体公知の方法を適用することができ、例えば、適当な水および緩衝液を加えて希釈した後、遠心分離、ゲルカラム、透析等から適切な方法を選択することができる。
温度感受性ポリマー含有水溶液中に放出された薬物量および持続放出性薬剤に残存する薬物量は、各々公知の方法により検出することができる。検出方法は、持続放出性薬剤および放出された薬物の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、HPLC分析、紫外吸光度分析、LC/MS分析等から適切な方法を選択することができる。
以下に、本発明の理解をより確実にするために、実施例を示して説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではないことはいうまでもない。
(実施例1)温度感受性ポリマーの使用濃度の確認
本実施例は、温度感受性ポリマー濃度を変化させた場合のゲル形成状態を確認することを目的として実験を行った。
1)材料
温度感受性ポリマー:化学式(I)に示す温度感受性ポリマー(メビオール株式会社製造)を用いた。該ポリマーは、凍結乾燥品で市販されており、水溶液としたときの転移温度は約20℃である。つまり、0〜15℃ではゾル状態であり、20℃以上でゲル状態である。
マイクロスフェア:酢酸リュープロレリンを、ポリ乳酸/グリコール酸(PLGA)(WAKO製、分子量10,000)を用い、公知のw/o/w液中乾燥法により調製した。具体的には、酢酸リュープロレリン450mgを水0.5mLに溶解し、これを5 mLジクロロメタンに溶解したPLGA溶液に加えてw/oエマルションを作り、これを冷却した後、0.1%ポリビニールアルコール水溶液に加えて、w/o/wエマルションを調製した。該w/o/wエマルションを3時間攪拌し有機溶媒を蒸発させた後、マイクロスフェアを分取して凍結乾燥した。これにより、酢酸リュープロレリン含量10%、平均粒子径約20μm、薬物封入率約97%のマイクロスフェア(Lot. 2および3)を調製した。
2)実験方法
温度感受性ポリマー0.5, 0.7, 1.0, 1.1, 1.2, 1.5gを各々pH7.0のリン酸緩衝液10mLで溶解し、4℃で2日間放置し、4.8、6.5、9.1、9.9、10.7、13.0w/w%のゾル状のポリマー溶液を調製した。
マイクロスフェアを10mgずつ秤量し、上記各濃度のポリマー溶液2 mLに各々分散した。
該マイクロスフェア分散ポリマー溶液を、96穴のプレートに200μLずつ分注した。
次に37℃加湿インキュベーター中に24時間静置して保存し、その後プレート内でのゲル形成状態を観察した。
3)結果
図1に示すように、9〜13w/w%のポリマー溶液でゲル状を示すことが確認された。
(実施例2)マイクロスフェア量を変化させた場合の薬物放出の生体外評価
本実施例は、マイクロスフェア量を変化させた場合の薬物放出状態を観察することを目的として実験を行った。
マイクロスフェア(Lot. 3)を10、20、50mg秤量し、13w/w%濃度のゾル状の温度感受性ポリマー溶液2 mLに分散した。マイクロスフェアおよびポリマー溶液は、実施例1に記載の方法により調製した。
各濃度のマイクロスフェアを分散したポリマー溶液を、96穴のプレートに200μLずつ分注し、37℃インキュベーター内で1日、1週間、2週間、3週間および4週間保存した。各時間保存後のマイクロスフェアの分散状態を図2に示した。該各時間保存後のプレートからゲル状のポリマー溶液を取り出し、試験管に移した。ゲル溶液200μLに対して2 mLのpH6.0の0.03Mリン酸緩衝液を加え、氷冷してゲルを溶解した。
次に、溶解したマイクロスフェアを含むポリマー溶液を1000rpmで5分間遠心分離し、上清および沈殿物に分離した。
遠心分離後の上清を分析用試料とし、次のHPLC条件にて分析し、マイクロスフェアからの薬物放出量を算出した。
遠心分離後の沈殿物をpH6.0のリン酸緩衝液を用いて2回洗浄し、該洗浄した沈殿物に対してアセトニトリル1 mLを加えマイクロスフェアを溶解し、pH6.0のリン酸緩衝液2 mLを加えて30分間振とうした。その後、1000rpmで5分間遠心分離し、上清を同様にHPLC分析し、試料中の総薬物量を求め真の放出率を計算し図3に示した。
HPLC分析条件は次のとおりであった。
機器 :SHIMADZU SCL-10Avp一式
カラム :LiChrosorb RP8 5μm, 4×250mm
移動相 :0.25M酢酸アンモニウム/メタノール(1/1.5)
流速 :0.8mL/分
検出器 :分光光度計
波長 :280nm
分析用試料 :50μL
(実施例3)マイクロスフェアを用いた薬物放出の生体外評価
マイクロスフェア(Lot. 2)について、50mgを秤量し、13w/w%濃度の同ポリマー溶液2 mLに分散した他は、実施例2に記載の条件と同様の薬物放出評価を行った。その結果を図4に示した。
(実施例4)マイクロスフェアを用いた薬物放出の生体外評価
実施例1で用いた温度感受性ポリマー1.5gをpH7.0の0.03Mリン酸緩衝液で溶解し10mLとしたものを、4℃で2日間放置し13w/w%のゾル状のポリマー溶液を調製した。これを96穴のマイクロプレートに200μLずつ分注し、-20℃に急冷凍結して凍結乾燥した。このプレート中にて凍結乾燥したものは、適当なポリフイルムで包装し低湿度で保存することによって、用時、いつでも蒸留水を加えてゲルを形成し徐放性製剤の放出性評価に使用することができる。例えば、上記の乾燥したプレート中のゲルに、蒸留水200μLを加えて4℃で2日間放置しゲルとした後に、実施例1で用いたマイクロスフェア5mg/50μLの濃度になるように適当な分散媒に分散させ、その50μLをマイクロピペットを用いて、再生したゲル溶液の中央付近に注入する。これを、37℃で加湿、保存することによって、ゲルへ薬物を放出させ、実施例2の操作と同様にしてその量を測定することによって徐放性製剤からの薬物放出性を評価することができる。
(実施例5)マイクロスフェアを用いた薬物放出の生体外評価(加速試験)
実施例1で用いた13w/w%の温度感受性ポリマー溶液に氷冷下、5mg/200μLの濃度で薬物含有マイクロスフェア(Lot. 3)を分散させ、その200μLをスクリューキャップのついたガラス製試験管にとり、密栓をして60℃の恒温器にて保存した。一定時間後に試料を取り出し氷冷した後、あらかじめ冷却しておいたpH6.0、0.03Mリン酸緩衝液2 mLを加えて、ボルテックスミキサーでよく攪拌溶解した後、2000rpmで5分間遠心分離を行い、マイクロスフェアを沈殿させた。上清1 mLを採取し実施例1と同様にして放出された薬物量をHPLCで測定した。残存する溶液およびマイクロスフェア層に、アセトニトリル1 mLを加え攪拌してマイクロスフェアを溶解した後、1 mLのpH6.0リン酸緩衝液を加え、この溶液中の薬物含量を同様にHPLCで測定しガラス試験に採取したマイクロスフェア中の全薬物量を求めた。先の上清中の放出された薬物量を全試料中の薬物量で補正して真の放出量を算出し、薬剤放出率を求めた。
60℃におけるマイクロスフェアからの薬剤放出率を表1に示した。37℃で得られた放出性では、全量が放出されるのに4週間を要していたが、この条件ではほぼ3日で放出されており、短期間でも放出性を評価できることが示された。
(比較例1)従来法(in vivo, in vitro)
以下に従来法による薬物放出の評価方法を示す。
1)従来法(in vitro法)
実施例1で得られたマイクロスフェア(Lot. 2、3)50mgを0.05%ポリソルベート80を含有するpH7.0の1/30Mリン酸緩衝液10mL中に懸濁した。この懸濁液を37℃の恒温室でローテーターを用いて25サイクル/分で回転し、マイクロスフェアから緩衝液中への薬物の放出を測定した。初期の薬物の含量をイニシャル値として、1日、1週間、2週間、3週間および4週間保存したマイクロスフェアを1μmのミリポアフィルターでろ取し、マイクロスフェア中に残存している薬物量をHPLCで測定し、イニシャル値に対する残存率を求め、残存率から放出率を算出した。
2)従来法(in vivo法)
実施例1で得られたマイクロスフェア(Lot. 2)を、酢酸リュープロレリンとして約0.9mgとなる量を0.5 mLの溶媒(0.5%カルボキシメチルセルロースおよび0.1%ポリソルベート80を含有する5%マンニトール溶液)に分散して6週齢雄性SDラットの背部皮下に23G注射針で投与した。投与から1日、1週間、2週間、3週間および4週間後にラットを屠殺して投与部位に残存するマイクロスフェアを取り出し、残存している薬物量をHPLCで測定し、イニシャル値に対する残存率を求め、残存率から放出率を算出した。
その結果、従来のin vitro法ではin vivo法に比べて薬剤の放出速度が低かった。一方、本発明の温度感受性ポリマーを用いた生体外評価系では、従来のin vitro法に比べて多くの薬剤を放出していた。特に、温度感受性ポリマー中に含有するマイクロスフェアが1〜5 mgの場合では、マイクロスフェアの含有量に応じて薬剤の放出度が上がり(図3)、5 mg含有する場合にin vivo法による測定結果とほぼ同様の薬物放出の挙動を示すことが確認された(図4)。
以上説明したように、本発明の持続放出性製剤(マイクロスフェア)の薬物放出性の生体外評価方法では生体内の放出特性をシミュレート可能であることが確認された。したがって、本発明の生体外評価方法により、簡便に持続放出性製剤の薬物放出試験を行うことが可能となった。また、加温時の温度を37℃より高い温度に設定することにより、加速放出試験が可能となり、工場での品質試験などに有用である。さらに、本発明の生体外評価方法は、マイクロプレートを用いて行うことも可能であり、ハイスループット評価法が設定でき多種類の試料についての迅速な試験が可能で、操作が簡便な優れた薬物放出評価方法を提供することができる。本発明の生体外評価方法を採用することにより、動物愛護の視点に立った非動物実験による生体内放出性の予測が可能になり、持続放出性製剤の開発が容易となる。
温度感受性ポリマー溶液によるゲル形成状態を示す図である。(実施例1) ゲル状の温度感受性ポリマー溶液中のマイクロスフェアの分散状態の経日的な変化を示す図である。(実施例2) 温度感受性ポリマー溶液中における37℃でのマイクロスフェアからの薬剤の放出率を示す図である。(実施例2) 温度感受性ポリマー溶液中における37℃でのマイクロスフェアからの薬剤の放出率と従来法(in vitro、in vivo)による放出率を示す図である。(実施例3)(比較例1)

Claims (8)

  1. 温度感受性ポリマーを用いることを特徴とする、持続放出性薬剤の薬物放出性の生体外評価方法。
  2. 温度感受性ポリマーの転移温度が8〜50℃であり、転移温度以下でゾル状態、転移温度より高い温度でゲル状態の性状からなる温度感受性ポリマーを用いる請求項1に記載の評価方法。
  3. 温度感受性ポリマーが、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)のN-ブチルメタクリレート(BMA)と、ポリエチレングリコールジメチルアクリレート(PEG)の共重合体である請求項1または2に記載の評価方法。
  4. 以下の工程を含む請求項1〜3のいずれか1に記載の評価方法:
    1)温度感受性ポリマーが4〜20w/v%となるようにポリマー含有水溶液を調製する工程;
    2)前記ポリマー含有水溶液に転移温度以下で持続放出性薬剤を加え分散する工程;
    3)前記持続放出性医薬品を含むポリマー含有水溶液を20〜80℃で加温する工程;
    4)前記ポリマー含有水溶液を転移温度以下に冷却する工程;
    5)前記ポリマー含有水溶液中の薬物放出量および/または持続放出性医薬品中の薬物残存量を検出する工程。
  5. 以下の工程を含む請求項1〜3のいずれか1に記載の評価方法:
    1)温度感受性ポリマーが4〜20w/v%となるようにポリマー含有水溶液を調製する工程;
    2)前記ポリマー含有水溶液に持続放出性医薬品を加え分散する工程;
    3)前記持続放出性医薬品を含むポリマー含有水溶液をマイクロプレートのウェルに分注する工程;
    4)前記マイクロプレートを20〜80℃で24時間〜3ヶ月間一定の温度であるいは一定の速度で昇温させながら、加湿、加温する工程;
    5)前記マイクロプレートから持続放出性医薬品を含むポリマー含有水溶液を測定用容器に移す工程;
    6)測定用容器中の前記ポリマー含有水溶液を転移温度以下に冷却する工程;
    7)前記ポリマー含有水溶液中の薬物放出量および/または持続放出性医薬品中の薬物残存量を検出する工程。
  6. 以下の工程を含む請求項1〜3のいずれか1に記載の評価方法:
    1)温度感受性ポリマーが4〜20w/v%となるようにポリマー含有水溶液を調製する工程;
    2)前記ポリマー含有水溶液をマイクロプレートのウェルに分注する工程;
    3)分注された前記ポリマー含有水溶液に、持続放出性医薬品を分散した溶液を注入する工程;
    4)前記マイクロプレートを20〜80℃で24時間〜3ヶ月間一定の温度であるいは一定の速度で昇温させながら、加湿、加温する工程;
    5)前記マイクロプレートから持続放出性医薬品を含むポリマー含有水溶液を測定用容器に移す工程;
    6)測定用容器中の前記ポリマー含有水溶液を転移温度以下に冷却する工程;
    7)前記ポリマー含有水溶液中の薬物放出量および/または持続放出性医薬品中の薬物残存量を検出する工程。
  7. 持続放出性薬剤の薬物放出性の生体外評価用材料としての温度感受性ポリマーの用途。
  8. 温度感受性ポリマーが、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)のN-ブチルメタクリレート(BMA)と、ポリエチレングリコールジメチルアクリレート(PEG)の共重合体である請求項7に記載の用途。
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