JP2006233262A - 制振合金及び免震装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 環境に負荷を与えずに従来と同等以上の特性を有する制振合金及び免震装置を得る。
【解決手段】 一対の連結板12、14の間に円筒状に形成されて弾性変形し得るゴム体16が配置される。ゴム体16の中心に存在する円形の穴部16Aに、円筒状に形成された制振合金22が嵌まり込むように配置される。制振合金22は、それぞれ双晶の金属材料でファイバー状に形成される金属片24を複数集めた状態で、圧縮した構造とされる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、環境に負荷を与えずに従来と同等以上の制振特性を有する制振合金及び、このような制振合金を採用した免震装置に関する。
従来より、地震の揺れを低減する為に、建築物とこの建築物を支持する地盤との間に配置される免震装置が知られている。そして、この免震装置には、弾性体とされるゴム体だけでなく、揺れに伴う振動を抑える為の制振合金が内蔵されていて、これらの部材の複合的な作用で地震の揺れを低減し、建築物側に地震の揺れを伝達し難くしていた。
しかし、従来の免震装置の制振合金として、制振特性の面から一般に鉛材が使用されていたが、環境面への配慮が近年重要視されるのに伴い、他の材料に置き換えることが検討されるようになった。
この為、鉛材による制振合金の替わりに、例えば双晶合金を加工してコイルバネとしたものをゴム体に内蔵した免震装置も考えられるようになった。但し、単に双晶合金のコイルバネを用いただけの免震装置では、水平方向に大変位が与えられた場合、初回の大変位において、図6に示すように両端部付近でコイルバネ122が曲がって変位方向である矢印X方向に沿って潰れてしまう結果、安定した制振性能を維持できず、十分な制振効果が得られなかった。
この一方、コイルバネの潰れを防ぐ為にコイルバネの線材径を太くすることが考えられるが、この場合には線材径が太くなるのに伴って、大変位入力時においてコイルバネの線材表面の歪が過大となり、繰り返し変位によってコイルバネが破損する欠点を有していた。
特開平11−270621公報
以上より、免震装置に採用される制振合金として、環境に負荷を与えずに従来の制振合金と同等以上の制振特性を有するものを開発する必要が生じていた。しかし、コイルバネを用いた免震装置であっても、制振合金の替わりに用いられるコイルバネが変位に十分に追従できず、ゴム体内で回転力が発生してコイルバネが潰れてしまったり、或いは破損してしまったりする結果、やはり十分な制振特性が得られなかった。
本発明は上記事実を考慮し、環境に負荷を与えずに従来と同等以上の制振特性を有する制振合金及び、このような制振合金を採用した免震装置を提供することが目的である。
請求項1に係る制振合金は、双晶の金属材料でファイバー状に形成される金属片を複数集めた状態で圧縮された構造とされることを特徴とする。
請求項1に係る制振合金の作用を以下に説明する。
本請求項によれば、双晶の金属材料でファイバー状に形成される金属片を複数集めた状態で圧縮された構造とされているので、外力が加わった際に、制振合金に歪みが生じて双晶に単に変形が生じるだけでなく、空隙の存在によって、単純な双晶の合金と比較してバネ定数が低くなると共に減衰係数が高くなって、大きな制振特性を有するようになる。この結果として、従来技術の制振合金と同等以上の制振特性を有するようになる。
また、金属片を複数集めた状態で圧縮された構造とすることで、ファイバー状に形成された金属片の単位体積当たりの数が増えて、ファイバー状とすることに伴う金属片の細径化による変形時の発生力の低下を防ぐことが可能ともなった。
一方、本請求項では、ファイバー状の双晶の金属材料で形成される金属片を制振合金として採用したことで、鉛材を用いずとも上記のような制振特性を得られるようになる。この為、環境に負荷を与えることもない。
請求項2に係る制振合金の作用を以下に説明する。
本請求項では請求項1と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、内部の空隙にポリマーを充填したという構成を有している。
つまり、ファイバー状に形成される双晶の金属片間に存在する空隙に、ポリマーを充填したことで、この制振合金に引張力や剪断力が加わった際における空隙の必要以上の収縮をポリマーの存在によって防止できるだけでなく、引張力や剪断力の消滅後における形状復元性が得られるようになる。この結果、ポリマーにより制振合金の必要以上に大きな変形が抑制されて、制振合金の耐久性が高まるようになった。
請求項3に係る制振合金の作用を以下に説明する。
本請求項では請求項1と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、Cu−Al−Mn合金、Mg−Zr合金、Mn−Cu合金、Mn−Cu−Ni−Fe合金、Cu−Al−Ni合金、Ti−Ni合金、Al−Zn合金、Cu−Zn−Al合金、Mg合金、Cu−Al−Co合金、Cu−Al−Mn−Ni合金、Cu−Al−Mn−Co合金、Cu−Si合金、Fe−Mn−Si合金、Fe−Ni−Co−Ti合金、Fe−Ni−C合金、Fe−Cr−Ni−Mn−Si−Co合金、Ni−Al合金、SUS304の内の何れかの材質を金属片に使用するという構成を有している。
つまり、これらの合金の内の何れかを制振合金を構成する金属片の材質として使用することで、環境に負荷を与えずに従来と同等以上の特性を有する制振合金がより確実に得られるようになる。
請求項4に係る免震装置は、双晶の金属材料でファイバー状に形成される金属片を複数集めた状態で圧縮された構造の制振合金と、
制振合金と並列的に配置されて弾性変形し得るゴム体と、
を有したことを特徴とする。
請求項4に係る免震装置の作用を以下に説明する。
本請求項によれば、双晶の金属材料でファイバー状に形成される金属片を複数集めた状態で圧縮された構造の制振合金を、弾性変形し得るゴム体に対して並列的に配置した構成になっている。つまり、本請求項では、双晶の金属材料でファイバー状に形成される金属片を複数集めた状態で圧縮した構造とされたものを制振合金として採用している。この為、この制振合金内の金属片間に空隙が存在することになる。
従って、本請求項の制振合金によれば、外力が加わった際に、制振合金に歪みが生じて双晶に単に変形が生じるだけでなく、空隙の存在によって、単純な双晶の合金と比較して制振合金のバネ定数が低くなると共に減衰係数が高くなり、従来の制振合金と同等以上の大きな制振特性を有するようになる。
また、金属片を複数集めた状態で圧縮された構造とすることで、ファイバー状に形成された金属片の単位体積当たりの数が増えて、ファイバー状とすることに伴う金属片の細径化による変形時の発生力の低下を防ぐことが可能ともなった。
一方、双晶の金属材料で細長いファイバー状に形成されて変形し易くされた金属片を採用していることから、免震装置に水平方向の大変位が入力された場合には、金属片の表面に生じる歪を小さくしつつ変位に合わせてこの金属片が変形するのに伴い、制振合金が潰れたり破損したりすることを防止できる。そしてこの結果として、繰り返し変位後でも、安定した制振性能を発揮して、制振性を安定的に保つことができる。
以上より、本請求項に係る免震装置によれば、地震が生じた場合でも、制振合金と並列的に配置されて弾性変形するゴム体とこの制振合金との間の複合的な作用で地震の揺れを低減し、建築物側に地震の揺れが伝達し難くなる。
他方、本請求項の免震装置に用いられる制振合金は、双晶の金属材料でファイバー状に形成される金属片を複数集めた状態で圧縮される構造とされたことで、鉛材を用いずとも上記のような良好な制振特性を得られる。この為、本請求項の免震装置によれば環境に負荷を与えることもない。
請求項5に係る免震装置の作用を以下に説明する。
本請求項では請求項4と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、制振合金の内部の空隙にポリマーを充填したという構成を有している。
つまり、ファイバー状に形成される双晶の金属片間に存在する空隙に、ポリマーを充填したことで、免震装置に引張力や剪断力が加わった際における空隙の必要以上の収縮をポリマーの存在によって防止できるだけでなく、引張力や剪断力の消滅後における制振合金の形状復元性が高まるようになる。この結果、ポリマーにより制振合金の必要以上に大きな変形が抑制されて、制振合金の耐久性が高まるのに伴い、免震装置の耐久性も高まるようになった。
請求項6に係る免震装置の作用を以下に説明する。
本請求項では請求項4と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、制振合金を構成するファイバー状の金属片がゴム体の軸方向に沿って圧縮されるという構成を有している。
つまり、制振合金を構成する金属片がゴム体の軸方向に沿って圧縮されたことで、ゴム体の軸方向と直交する水平方向の大変位が免震装置に入力された場合に、制振合金が潰れたり破損したりすることを一層確実に防止できるようになる。
以上説明したように本発明の上記構成によれば、環境に負荷を与えずに従来と同等以上の制振特性を有する制振合金及び、このような制振合金を採用した免震装置を提供できるという優れた効果を有する。
本発明に係る制振合金及び免震装置の一実施の形態を、図1から図5に基づき説明する。図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る免震装置10の上下部分をそれぞれ円板状に形成された連結板12、14が構成している。この内の下側の連結板12が地盤と当接し、また上側の連結板14が建築物の下部に当接するような構造になっている。
また、これら一対の連結板12、14の間には、中心部分に円形の穴部16Aを有しつつ円筒状に形成されたゴム体16が配置されている。このゴム体16は、リング状に形成されて弾性変形し得るゴム製のゴムリング18と、リング状に形成されて剛性を維持する為の金属製の金属リング20とが、交互に複数枚ずつ配置された形の構造になっている。
一方、これら一対の連結板12、14は、ゴム体16の上下端にそれぞれ加硫接着されて取り付けられており、また、これら一対の連結板12、14の中心には、それぞれ途中に段部を有した円形の貫通穴12A、14Aが形成されている。但し、これら貫通穴12A、14Aに対応した大きさであって外周側にフランジを有した蓋材30が、ボルト32によるねじ止めによって、一対の連結板12、14にそれぞれ固定されることで、貫通穴12A、14Aがそれぞれ閉鎖されている。
このゴム体16の中心に存在する円形の穴部16Aには、円筒状に形成された制振合金22が嵌まり込むように配置されている。この制振合金22は、図2に示すようにそれぞれ双晶の金属材料とされる合金でファイバー状に形成される金属片24を複数集めた状態で、ゴム体16の軸方向(図2における矢印Y方向)に沿って圧縮された構造としたものである。そして、ファイバー状に形成される双晶の合金製の金属片24間に存在する空隙にポリマーが充填された構造に、この制振合金22はなっている。
つまり、本実施の形態では、弾性変形し得るゴム体16が、ファイバー状に形成される金属片24を複数集めた状態で圧縮された構造の制振合金22と、並列的に配置された構造になっている。但し、制振合金22を構成する個々の金属片24の大きさとしては、線径が20μm〜0.4mmの範囲の太さとされ、長さが30mm〜100mm程度の範囲の寸法とされている。
そして、図1に示す制振合金22の大きさとしては、直径Dが45mm程度とされ、高さHが100mm程度とされており、また、制振合金22の重さは200グラム程度であり、制振合金22内の金属片24の充填率は50%程度とされている。
次に、本実施の形態に係る免震装置10の製造を以下に説明する。
この免震装置10を作製する際には、まずそれぞれファイバー状に形成される複数の金属片24を、例えば金属材の塊を旋盤等により切削することで作製するが、この他に、集束伸線法や液中紡糸法を採用して、複数の金属片24を作製することも考えられる。
この金属片24の作製の際、個々の金属片24の線径を20μm〜0.4mmの範囲の太さとし、長さを30mm〜100mm程度の範囲の寸法とする。つまり、金属片24の線径をこのような範囲の太さとしたのは、金属片24の線径が20μmより細くなった場合、製造コスト高となる一方、金属片24の線径が0.4mmより太くなった場合、制振合金22を圧縮した時の密度が必要な高さまで達しないからである。
また、このような範囲の大きさとすることで、免震装置10の大変位時における金属片24の表面に生じる歪みが低減されるのに伴い、制振合金22の早期の破損を防ぐことが可能となる。他方、上記のような範囲の大きさとすることで、一本当たりの金属片24の歪みが小さくなるが、多数の金属片24を集めて圧縮し、制振合金22内における充填率を高めることにより、歪みが小さくなることに対応できるようになる。
さらに、このような多数の金属片24を基にして制振合金22を製造する際には、パイプを半割形状とした図示しない一対の金型内に、ファイバー状に形成された多数の金属片24の長手方向をこれら金型の長手方向に合わせて配向した形で、これら多数の金属片24を集めてから、一対の金型を合わせて圧縮成形することで、円筒形状に成形された制振合金22を作り出すようにする。
そして、制振合金22の内部に存在する空隙に、ポリマーである硬質ウレタン樹脂或いはエポキシ樹脂を含浸させることで、ポリマーを制振合金22内に充填する。つまり、この制振合金22を真空中に置いて、硬質ウレタン樹脂或いはエポキシ樹脂等のポリマーをこの制振合金22に注入するように、内部の空隙に充填する。
この際、本実施の形態の制振合金22におけるポリマーの体積充填率を、40%〜80%の範囲とすることが考えられる。つまり、体積充填率が40%未満の場合には、振動の減衰が十分に得られないと考えられるからであり、また、体積充填率が80%を越えた場合には、制振合金22が金属剛体のような性質を示して、クラックの発生により制振合金22の変位時における耐久性が低下すると考えられるからである。
この一方、上記とは別に、ゴムリング18と金属リング20とが積層されて形成されるゴム体16を作製するが、この際に、ゴム体16の上下に一対の連結板12、14を加硫接着してそれぞれ取り付けておくことにする。
この後、連結板12、14の貫通穴12A、14Aを通過させて、ゴム体16の穴部16A内にこの制振合金22を挿入すると共に、これら連結板12、14に蓋材30をそれぞれ取り付けてねじ止めすることにより、免震装置10が完成される。
次に、本実施の形態に係る制振合金22及び免震装置10の作用を以下に説明する。
本実施の形態の免震装置10によれば、双晶の合金でファイバー状に形成される金属片24を複数集めた状態で、ゴム体16の軸方向(図2における矢印Y方向)に沿って圧縮された構造に制振合金22がされ、弾性変形し得るこのゴム体16に対してこの制振合金22が並列的に配置された構造になっている。さらに、本実施の形態に係る制振合金22の内部に存在する金属片24間の空隙に、ポリマーが充填された構造ともされている。
つまり、本実施の形態では、双晶の合金でファイバー状に形成される金属片24を複数集めた状態で圧縮した構造とされたものを制振合金22として採用している。この為、この制振合金22内の金属片24間に空隙が存在していることになる。
従って、本実施の形態の制振合金22によれば、外力が加わった際に、制振合金22に歪みが生じて双晶の合金とされる金属片24に単に変形が生じるだけでなく、空隙の存在によって、単純な双晶の合金と比較して制振合金22のバネ定数が低くなると共に減衰係数が高くなり、従来の制振合金と同等以上の大きな制振特性を有するようになる。
また、金属片24を複数集めた状態で圧縮された構造とすることで、ファイバー状に形成された金属片24の単位体積当たりの数が増えて、ファイバー状とすることに伴う金属片24の細径化による変形時の発生力の低下を防ぐことが可能ともなった。
一方、双晶の合金で細長いファイバー状に形成されて変形し易くされた金属片24を採用していることから、免震装置10に水平方向(図2における矢印X方向)の大変位が入力された場合には、金属片24の表面に生じる歪を小さくしつつ変位に合わせてこの金属片24が変形するのに伴い、制振合金22が潰れたり破損したりすることを防止できる。そしてこの結果として、繰り返し変位後でも、安定した制振性能を発揮して、制振性を安定的に保つことができる。
以上より、本実施の形態に係る免震装置10によれば、地震が生じた場合でも、制振合金22と並列的に配置されて弾性変形するゴム体16とこの制振合金22との間の複合的な作用で地震の揺れを低減し、建築物側に地震の揺れが伝達し難くなる。
他方、本実施の形態の免震装置10に用いられる制振合金22は、双晶の合金でファイバー状に形成される金属片24を複数集めた状態で圧縮される構造とされたことで、鉛材を用いずとも上記のような良好な制振特性を得られる。この為、本実施の形態の免震装置10によれば環境に負荷を与えることもない。
さらに、本実施の形態では、制振合金22の内部に存在することになるファイバー状に形成される双晶の合金製の金属片24間の空隙にポリマーを充填したことで、免震装置10に引張力や剪断力が加わった際における空隙の必要以上の収縮をポリマーの存在によって防止できるだけでなく、引張力や剪断力の消滅後における制振合金22の形状復元性が高まるようになる。この結果、ポリマーにより制振合金22の必要以上に大きな変形が抑制されて、制振合金22の耐久性が高まるのに伴い、免震装置10の耐久性も高まるようになる。
また、本実施の形態では、制振合金22を構成するファイバー状の金属片24がゴム体16の軸方向に沿って圧縮されたことで、ゴム体16の軸方向と直交する水平方向の大変位が免震装置10に入力された場合でも、制振合金22が潰れたり破損したりすることを一層確実に防止できるようになる。
さらに、上記の本実施の形態に係る免震装置10によれば、上記のように従来例のコイルバネを用いた免震装置と比較して、大変位に対する追従性に優れると共に、繰り返し耐久性に優れるだけでなく、バイリニア特性に優れ、免震装置を用いた建築物の建築設計がし易くなる。
そして、ファイバー状に形成された同じ大きさの金属片24を用い、このファイバー状に形成される金属片24を複数集めて圧縮した制振合金22を所望の大きさや形状にするだけで、小型の免震装置から大型の免震装置にまで対応できることから、スケールアップ性においても優れていることになる。
次に、水平方向である図2の矢印X方向の外力が免震装置に繰り返し付与されて、この矢印X方向に変位が生じた場合における制振特性を実験により確認した結果を、図3のグラフに基づき説明する。
この実験から、本実施の形態に係る免震装置10の繰り返し変位による図3の応力歪み曲線であるヒステリシス線F1で囲まれた範囲の面積が、従来の鉛材を用いた免震装置のヒステリシス線F2で囲まれた範囲の面積と同等以上の広さになる結果が図3のグラフから得られた。つまり、鉛材を用いずに環境に負荷を与えないような本実施の形態の免震装置10によっても、図3のヒステリシス線F1のように良好な制振特性を得られることが確認された。
一方、本実施の形態では、制振合金22を構成する金属片24の材質として、例えば、Cu−Al−Mn合金、Mg−Zr合金、Mn−Cu合金、Mn−Cu−Ni−Fe合金、Cu−Al−Ni合金、Ti−Ni合金、Al−Zn合金、Cu−Zn−Al合金、Mg合金、Cu−Al−Co合金、Cu−Al−Mn−Ni合金、Cu−Al−Mn−Co合金、Cu−Si合金、Fe−Mn−Si合金、Fe−Ni−Co−Ti合金、Fe−Ni−C合金、Fe−Cr−Ni−Mn−Si−Co合金、Ni−Al合金、SUS304の内の何れかの合金を使用することが考えられる。
つまり、これらの合金の内の何れかを制振合金22を構成する金属片24の材質として使用することで、環境に負荷を与えずに従来と同等以上の特性を有する制振合金22がより確実に得られるようになる。
例えば、Mn−Cu合金、Mn−Cu−Ni−Fe合金等のマンガン系の合金を使用した場合、800℃〜930℃の温度で0.5時間から2時間程度の時間保持して、10時間から20時間程度の時間をかけて徐冷することで、双晶の金属片が得られる。
また、Cu−Al−Mn合金、Cu−Al−Ni合金、Cu−Zn−Al合金、Cu−Al−Co合金、Cu−Al−Mn−Ni合金、Cu−Al−Mn−Co合金、Cu−Si合金等の銅系の合金を使用した場合、約900℃の温度で15分から1時間程度の時間保持し、急冷した後、約200℃の温度に再加熱して15分から30分程度の時間保持することで、双晶の金属片が得られる。
次に、金属片を双晶とすることによる制振合金の変形のメカニズムを以下に説明する。
図4(A)に示す金属の原子が均一に整列したマルテンサイト相に横方向から応力を加えることで、図4(B)に示すように変形が始まる。さらに、応力が加わり続けると図4(C)に示すような形に変形する。そして、この図4(C)に示す状態では寸法Sの変形量が生じたことになる。
これに対して、図5(A)に示す一般的な金属では原子が均一に整列しているものの、横方向から応力を加えた場合、図5(B)に示すように原子の配列にずれが生じて、欠陥が発生する。つまり、一般的な金属において原子の配列にずれが生じると、塑性変形することになるので、図5(B)に示す状態に一旦成ると、図5(A)に示す状態に戻ることはない。
以上より、一般的な金属と異なり、双晶の金属片では、比較的小さな応力で変形が開始するものの、図5(C)に示す状態まで変形しても塑性変形することが無いので、応力を逆にかければ図5(A)に示す状態に戻るようになる。更に、制振合金の断面積を小さくして全体へかかる応力が低い段階から変形が発生するようにすることで、全体へかかる応力歪み曲線におけるヒステリシスのバネ定数が上昇しないようになる。
尚、上記実施の形態では、双晶の合金でファイバー状に形成される金属片24を複数集めた状態で圧縮された構造の制振合金22内に存在する空隙に、ポリマーを充填したが、ポリマーとしては硬質ウレタン樹脂或いはエポキシ樹脂だけでなく、アクリル樹脂等の他の種類の樹脂材料であっても良く、また、スズ−インジウム等の低融点金属をポリマーの替わりに採用しても良い。さらに、必要な特性が得られれば、制振合金22の内部にポリマー等を充填しなくとも良い。
本発明の実施の形態に係る免震装置の分解斜視図である。 本発明の実施の形態に係る免震装置の断面図である。 本発明の実施の形態に係る免震装置に適用される制振合金の応力歪み曲線及び鉛材の応力歪み曲線を表すグラフを示す図である。 本発明の実施の形態に係る制振合金を構成する金属片の原子配列を表す説明図であって、(A)はマルテンサイト相を表す図であり、(B)はマルテンサイト相に変形が始まった状態を表す図であり、(C)はマルテンサイト相の変形が終わった状態を表す図である。 一般的な金属の原子配列を表す説明図であって、(A)は原子が均一に整列した状態を表す図であり、(B)は原子の配列の一部にずれが生じた状態を表す図である。 従来技術に係る免震装置に適用されるコイルバネの変形を示す図である。
符号の説明
10 免震装置
16 ゴム体
22 制振合金
24 金属片

Claims (6)

  1. 双晶の金属材料でファイバー状に形成される金属片を複数集めた状態で圧縮された構造とされることを特徴とする制振合金。
  2. 内部の空隙にポリマーを充填したことを特徴とする請求項1記載の制振合金。
  3. Cu−Al−Mn合金、Mg−Zr合金、Mn−Cu合金、Mn−Cu−Ni−Fe合金、Cu−Al−Ni合金、Ti−Ni合金、Al−Zn合金、Cu−Zn−Al合金、Mg合金、Cu−Al−Co合金、Cu−Al−Mn−Ni合金、Cu−Al−Mn−Co合金、Cu−Si合金、Fe−Mn−Si合金、Fe−Ni−Co−Ti合金、Fe−Ni−C合金、Fe−Cr−Ni−Mn−Si−Co合金、Ni−Al合金、SUS304の内の何れかの材質を金属片に使用したことを特徴とする請求項1記載の制振合金。
  4. 双晶の金属材料でファイバー状に形成される金属片を複数集めた状態で圧縮された構造の制振合金と、
    制振合金と並列的に配置されて弾性変形し得るゴム体と、
    を有したことを特徴とする免震装置。
  5. 制振合金の内部の空隙にポリマーを充填したことを特徴とする請求項4記載の免震装置。
  6. 制振合金を構成するファイバー状の金属片がゴム体の軸方向に沿って圧縮されたことを特徴とする請求項4記載の免震装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007182853A (ja) * 2006-01-10 2007-07-19 Hitachi Plant Technologies Ltd 空気圧縮機
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