JP2006233012A - リビングラジカル重合開始剤、その製造方法、及びそれを用いたリビングラジカル重合方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 単独でリビングラジカル重合を行い得るリビングラジカル重合開始剤、その製造方法、及びそれを用いたリビングラジカル重合方法を提供する。
【解決手段】 本発明のリビングラジカル重合開始剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。R1、R2及びR3として特に好ましい基は、n−ブチル基、エチル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基である。R4及びR5は、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルから生じるラジカルに対応する一価の基であることがが好ましい。また本発明のリビングラジカル重合方法は、下記一般式(1)で表される化合物を含有するリビングラジカル重合開始剤を用いることを特徴とする。
【化1】
【選択図】なし
【解決手段】 本発明のリビングラジカル重合開始剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。R1、R2及びR3として特に好ましい基は、n−ブチル基、エチル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基である。R4及びR5は、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルから生じるラジカルに対応する一価の基であることがが好ましい。また本発明のリビングラジカル重合方法は、下記一般式(1)で表される化合物を含有するリビングラジカル重合開始剤を用いることを特徴とする。
【化1】
【選択図】なし
Description
本発明は、新規なリビングラジカル重合開始剤、その製造方法、及びそれを用いたリビングラジカル重合方法に関するものである。
従来、種々のラジカル重合開始剤が提案されている。例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリルや2,2’−アゾビスイソブタン等のアゾ化合物系重合開始剤、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化2−クロロベンゾイル等の過酸化物系等が知られている。
しかし、ラジカルは極めて高活性な化学種であるので、生長反応におけるポリマー末端ラジカルを、副反応を抑制しつつコントロールすることは難しいという問題があった。そこで、最近は種々のリビングラジカル重合法が提案されてきている。例えば、分子量及び分子量分布を制御し易い重合方法として、ハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリアリールホスフィン)ルテニウム等の遷移金属錯体と、2−クロロ2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル、2−ブロモ−2−メチルプロパン酸エチル等のハロゲン化合物と、ルイス酸又はアミン化合物とからなる重合開始剤系を用いたリビングラジカル重合法が提案されている(特許文献1参照)。また、特定のホスフィン化合物と、特定の有機ハロゲン化合物と、遷移金属錯体として特定のルテニウム錯体とを組み合わせたリビングラジカル重合開始剤が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、遷移金属を用いるリビングラジカル重合開始剤は、金属不純物が残存するおそれがあるとして、一般的に電子材料に用いるポリマーの重合には不向きなものと考えられている。また該リビングラジカル重合開始剤は水分を嫌うので、取り扱いに注意を要するものである。その他のリビングラジカル重合開始剤も、(イ)極性モノマーには使用できない、(ロ)重合温度が高すぎる、(ハ)長時間の反応時間が必要、(ニ)使用できるモノマーが限定される、(ホ)反応系が複雑、(ヘ)開始剤のハンドリングが面倒、(ト)モノマー・開始剤の他に第三成分を添加剤として加える必要がある等、一長一短があるものであった。
従って本発明の目的は、化学的に安定な単一化合物として得られるリビングラジカル重合開始剤を提供することにある。
本発明は、下記一般式(1)
で表される化合物を含有することを特徴とするリビングラジカル重合開始剤を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は、前記一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)
で表されるホスフィンと、二硫化炭素と、下記一般式(3)
で表されるラジカル重合開始剤とを反応させるか、又は
前記一般式(2)で表されるホスフィンと二硫化炭素とを反応させ、次いで得られた反応生成物を、前記一般式(3)で表されるラジカル重合開始剤と反応させることを特徴とする化合物の製造方法を提供するものである。
下記一般式(2)
前記一般式(2)で表されるホスフィンと二硫化炭素とを反応させ、次いで得られた反応生成物を、前記一般式(3)で表されるラジカル重合開始剤と反応させることを特徴とする化合物の製造方法を提供するものである。
更に本発明は、請求項1に記載のリビングラジカル重合開始剤を用いることを特徴とするリビングラジカル重合方法を提供するものである。
本発明のリビングラジカル重合開始剤は、遷移金属を含まないので金属汚染の心配がない。また、安定なので空気中で容易に扱うことができる。更に、モノマーの極性によらず、極性モノマーでも非極性モノマーでも重合させることができるので、種々のリビングラジカル重合に使用することができる。その上、得られるポリマーの分子量分布は転化率によらずほぼ1であり、分子量分布のそろったポリマーを得ることができる。しかも、ポリマー生長末端が非常に安定化されているので、ブロックコポリマーを自由に設計することができる。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。本発明のリビングラジカル重合開始剤は、前記一般式(1)で表される。式(1)式中、R1、R2及びR3は、置換されていてもよい直鎖状又は分岐状のアルキル基またはフェニル基を示す。R1、R2及びR3は、同一な基であっても異なる基であってもよい。
アルキル基としては、炭素数1〜18、特に炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、tert−オクチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。アルキル基中の1つ又は2つ以上のメチレン基は−CH=CH−によって置き換えられていてもよい。そのような基としてはビニル基、アリル基、イソプロペニル基等が挙げられる。
R1、R2及びR3は置換されていてもよい。置換基としては例えばフェニル基、アルコキシ基、シアノ基、水酸基等が挙げられる。置換されているR1、R2及びR3としては、ベンジル基等のアラルキル基、シアノアルキル基、シアノアルケニル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基等が挙げられる。
R1、R2及びR3として特に好ましい基は、n−ブチル基、エチル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基である。
式(1)中、R4及びR5は、ラジカル重合開始剤から生じるラジカルに対応する一価の基を示す。例えば、ラジカル重合開始剤が2,2’−アゾビスイソブチロニトリル〔(CH3)2(CN)C−N=N−C(CN)(CH3)2〕である場合、これを加熱することによって生じるラジカルは・C(CN)(CH3)2なので、そのラジカルに対応する一価の基は−C(CN)(CH3)2となる。この基がR4及びR5に該当する。
R4及びR5として用いられる一価の基としては、公知の各種ラジカル重合開始剤から発生するラジカルに対応する一価の基であればその種類に特に制限はない。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系ラジカル重合開始剤や過酸化物系ラジカル重合開始剤が典型的なものとして挙げられる。
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビスプロパン、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスプロパン、1,1’−アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)硝酸塩、2,2’−アゾビスイソブタン、2,2’−アゾビスイソブチルアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスブタン、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、2−(4−メチルフェニルアゾ)−2−メチルマロノジニトリル4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2−アリルマロノジニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1’−アゾビス−1−クロロフェニルエタン、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘプタンニトリル、1,1’−アゾビス−1−フェニルエタン、1,1’−アゾビスクメン、4−ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フェニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4−ニトロフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’−アゾビス−1,2−ジフェニルエタン、ポリ(ビスフェノールA−4,4’−アゾビス−4−シアノペンタノエート)、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2’−アゾビスイソブチレート)等が挙げられる。
過酸化物系ラジカル重合開始剤としては、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化2−クロロベンゾイル、過酸化3−クロロベンゾイル、過酸化4−クロロベンゾイル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化4−ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ブチル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過ギ酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過4−メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)カルバミン酸tert−ブチル等が挙げられる。
R4及びR5は、式(1)で表される化合物を調製するときに用いられるラジカル重合開始剤の種類に応じて定まり、同一な基である場合も異なる基である場合もある。好ましいラジカル重合開始剤としては、アゾ系ラジカル重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンニトリル等が挙げられる。過酸化物系ラジカル重合開始剤として、過酸化ベンゾイル、過酸化tert−ブチル等が挙げられる。
式(1)で表される具体的な化合物を例示すると、R1、R2及びR3が、同一の又は異なるエチル基、n−ブチル基又はシクロヘキシル基であり、R4及びR5が2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル又は2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩から生じるラジカルに対応する一価の基である化合物等が挙げられる。これらの化合物のうち、特に取り扱いの容易さ、溶媒に対する溶解性,使用温度等の点から、R1、R2及びR3がn−ブチル基であり、R4及びR5が2,2’−アゾビスイソブチロニトリルから生じるラジカルに対応する一価の基である化合物が好ましい。
次に、式(1)で表される化合物の好ましい製造方法について説明する。本製造方法の一実施形態においては、前記一般式(2)で表されるホスフィンと、二硫化炭素と、前記一般式(3)で表されるラジカル重合開始剤とを一括して反応容器に仕込み反応を行う。
式(2)で表されるホスフィンとしては、市販のものを用いることができる。また、公知の方法に従い調製することもできる。例えば、ホスフィンガス(PH3)と不飽和アルキルとの反応や、三塩化リンとグリニヤール試薬との反応を用いて調製することができる。一方、式(3)で表されるラジカル重合開始剤は、アゾ系ラジカル重合開始剤や過酸化物系ラジカル重合開始剤であり、その具体例は、先に述べた通りである。
これら三者の反応は、不活性溶媒中で行うことができる。或いは、不活性溶媒を用いずに、二硫化炭素を溶媒として行うこともできる。不活性溶媒中で反応を行う場合、当該溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、ジアルキルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム等のハロアルカン類等が挙げられる。これらの溶媒は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応温度は、反応原料の種類にもよるが、一般に20〜120℃、特に50〜80℃であることが好ましい。同様に、反応時間も反応原料の種類によるが、一般に6〜72時間、特に24〜48時間であることが好ましい。ラジカル重合開始剤が光の照射によってラジカルを発生するものである場合には、所定波長の光を照射する。反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
反応原料の添加割合は、次の通りであることが好ましい。二硫化炭素を溶媒として用いる場合には、ホスフィン1モルに対するラジカル重合開始剤の添加割合は0.2〜5モル、特に1〜2モルであることが好ましい。一方、二硫化炭素を溶媒として用いず、他の不活性溶媒を用いる場合には、ホスフィン1モルに対する二硫化炭素の添加割合は0.5〜10モル、特に1〜5モルであることが好ましい。ホスフィン1モルに対するラジカル重合開始剤の添加割合は、二硫化炭素を溶媒として用いる場合と同様である。
以上の条件下に反応を行うことで、式(1)で表される化合物が得られる。反応スキームは次の通りであると考えられる。先ず、ホスフィンと二硫化炭素とが反応し、式(4)で表される二硫化炭素−ホスフィン電荷移動錯体が生成する。
本発明者らの検討の結果、式(4)で表される電荷移動錯体は、ラジカルトラップ能を有することが判明した。従って、反応系に存在するラジカル重合開始剤から生じたラジカルは、式(4)で表される電荷移動錯体にトラップされる。その結果、式(1)で表される化合物が得られる。
本実施形態では、ホスフィンと、二硫化炭素と、ラジカル重合開始剤とを一括して反応容器に仕込み反応を行ったが、別の実施形態として、逐次に反応を行う方法もある。この方法においては、先ず前記一般式(2)で表されるホスフィンと二硫化炭素とを反応させる。反応は、不活性溶媒中で行うことができる。或いは、不活性溶媒を用いずに、二硫化炭素を溶媒として行うこともできる。不活性溶媒の例は、先に述べた通りである。
二硫化炭素を溶媒として用いず、他の不活性溶媒を用いる場合、ホスフィンに対する二硫化炭素の添加量は、ホスフィン1モルに対して0.5〜10モル、特に1〜5モルであることが好ましい。
反応温度は、反応原料の種類にもよるが、一般に0〜50℃、特に20〜40℃であることが好ましい。同様に、反応時間も反応原料の種類によるが、一般に1〜24時間、特に1〜3時間であることが好ましい。反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
ホスフィンと二硫化炭素との反応によって、先に述べた式(4)で表される二硫化炭素−ホスフィン電荷移動錯体が生成する。次に、この電荷移動錯体が生成した反応系にラジカル重合開始剤を添加して両者を反応させる。ラジカル重合開始剤の添加割合は、電荷移動錯体1モルに対して0.1〜5モル、特に0.2〜1モルであることが好ましい。
電荷移動錯体とラジカル重合開始剤との反応は、ラジカル重合開始剤が開裂してラジカルが発生する条件下に行う。ラジカル重合開始剤が熱によって開裂するものである場合には、反応系を所定温度に加熱する。ラジカル重合開始剤が光の照射によって開裂するものである場合には、所定波長の光を照射する。反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。このような逐次反応によっても、目的とする化合物が得られる。
以上の一括反応及び逐次反応の何れの場合においても、反応終了後、反応生成物を濾過、乾燥する。更に必要に応じ、常法の精製手段を用いて精製を行ってもよい。
このようにして得られた式(1)で表される化合物は、空気中で安定して存在する。従って、従来リビングラジカル重合法で用いられてきた多元系の重合開始剤と異なり、式(1)で表される化合物は取り扱い性が良好である。また、それ単独でリビングラジカル重合の開始剤となり得るので、従来リビングラジカル重合法で用いられてきた遷移金属を含む重合開始剤と異なり、金属汚染の心配がない。
式(1)で表される化合物は、それ単独でリビングラジカル重合開始剤として用いることができる。
次に、式(1)で表される化合物を用いたリビングラジカル重合方法について説明する。本発明のリビングラジカル重合方法は、公知のリビングラジカル重合開始剤を使用する従来のリビングラジカル重合方法において、該重合開始剤に代えて、式(1)で表される化合物を含有するリビングラジカル重合開始剤を用いるものである。
本発明のリビングラジカル重合反応で使用し得るラジカル重合性モノマーは、その種類に特に制限はない。例えばメタクリル酸のような極性モノマー及びスチレンのような非極性モノマーの何れも用いることができる。これに対して、従来公知のリビングラジカル重合開始剤は、モノマーの極性によっては、使用できるものが制限されていた。従って、本発明のリビングラジカル重合開始剤が、モノマーの極性によらずリビングラジカル重合を行い得ることは驚くべきことであり、それ故、本発明のリビングラジカル重合開始剤の工業的価値は極めて高いものである。
本発明で使用し得るラジカル重合性モノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−アミノエチル、γ−(アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(アクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチル等のアクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル等の不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系化合物;メタクリル酸アミド、メタクリル酸置換アミド、アクリル酸アミド、アクリル酸置換アミド等の各種ビニル系単量体を挙げることができる。
本発明の重合方法において、重合反応系内のリビングラジカル重合開始剤の初期濃度に特に制限はないが、0.003〜1mol/l、特に0.01〜0.3mol/lであることが、適切な反応速度を確保すると共に、分子量分布のシャープなポリマーを得る点から好ましい。
本発明の重合方法においては、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、反応容器にモノマー及び溶媒を計りいれ、そこに本発明のリビングラジカル重合開始剤を所定量添加して重合反応を開始する。重合温度はモノマー等の種類にもよるが、一般に40〜80℃の範囲であることが好ましい。
重合反応系内のモノマーがすべて消費され、反応系内にモノマーが存在しない状態となっても、ポリマー末端が非常に安定化された状態でラジカルは生きている。このことは、(イ)その後にモノマーの再添加を行うと分子量分布がほぼ変わらずに再び分子量が増加すること、及び(ロ)生成したポリマーを単離精製した後、これをマクロ開始剤として用いて再びモノマーの重合が可能内ことによって証明される。従って、本発明のリビングラジカル重合開始剤を用いれば、先に述べた2種以上のモノマーを用いて、ブロック共重合体を容易に得ることができる。
以上の重合方法においては、一旦単離された式(1)で表される化合物を重合反応系に添加してリビングラジカル重合を行ったが、これに代えて、式(1)で表される化合物を単離せず、該化合物を調製するための反応系にモノマーも添加して、該化合物の生成とモノマーのリビングラジカル重合とを一括して行ってもよい。例えば、式(2)で表されるホスフィンと、二硫化炭素と、式(3)で表されるラジカル重合開始剤と、モノマーとを一括して反応容器に仕込んで反応を行わせることができる。或いは、式(4)で表される二硫化炭素−ホスフィン電荷移動錯体と、式(3)で表されるラジカル重合開始剤と、モノマーとを一括して反応容器に仕込んで反応を行わせることができる。尤も、式(1)で表される化合物が、空気中で安定に存在し得るという利点に鑑みると、該加工物を一旦単離しておき、別途モノマーに添加して重合を行うことが、製造工程の自由度の高さの点から好ましい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
アルゴン置換した反応容器に、二硫化炭素(関東化学社製)3.79g(4.98×10-2mol)を計り入れた。ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(東京化成社製)を0.029g(1.77×10-4mol)、続いてトリn−ブチルホスフィン(関東化学社製)を0.176g(8.71 × 10-4 mol)を仕込んだ。反応系を60℃に加熱して48時間反応させた。得られた反応生成物を濃縮し、アセトン/nヘキサン混合溶媒によるカラム精製によって生成し、以下の式(5)で表される化合物を得た。得られた化合物は元素分析、1H−NMR、質量分析(LC−MS(M+H):415)により同定した。
アルゴン置換した反応容器に、二硫化炭素(関東化学社製)3.79g(4.98×10-2mol)を計り入れた。ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(東京化成社製)を0.029g(1.77×10-4mol)、続いてトリn−ブチルホスフィン(関東化学社製)を0.176g(8.71 × 10-4 mol)を仕込んだ。反応系を60℃に加熱して48時間反応させた。得られた反応生成物を濃縮し、アセトン/nヘキサン混合溶媒によるカラム精製によって生成し、以下の式(5)で表される化合物を得た。得られた化合物は元素分析、1H−NMR、質量分析(LC−MS(M+H):415)により同定した。
〔実施例2〕
実施例1において、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルに代えて、過酸化ベンゾイルをラジカル重合開始剤として用いた以外は実施例1と同様にして反応を行い、以下の式(6)で表される化合物を得た。得られた化合物は元素分析、1H−NMR、質量分析(LC−MS(M+H):521)により同定した。
実施例1において、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルに代えて、過酸化ベンゾイルをラジカル重合開始剤として用いた以外は実施例1と同様にして反応を行い、以下の式(6)で表される化合物を得た。得られた化合物は元素分析、1H−NMR、質量分析(LC−MS(M+H):521)により同定した。
〔実施例3〕
アルゴン置換した重合管に、スチレンモノマー2.73g(2.62×10-2mol)、実施例1で得られた化合物2.16×10-2g(5.24×10-5mol)を加え、60℃で重合を行った。所定時間反応させた後、反応系を冷却して重合反応を停止させた。反応生成物をメタノールで再沈殿精製してポリスチレンを得た。重合結果を以下の表1に示す。表1に示す結果から明らかな通り、ポリスチレンの分子量はスチレンモノマーの転化率と共に増加し、またポリスチレンの分子量分布はスチレンモノマーの転化率によらずほぼ一定の値であった。このことから、本反応はリビング的に進行し、単分散のポリスチレンが得られることが確認された。
アルゴン置換した重合管に、スチレンモノマー2.73g(2.62×10-2mol)、実施例1で得られた化合物2.16×10-2g(5.24×10-5mol)を加え、60℃で重合を行った。所定時間反応させた後、反応系を冷却して重合反応を停止させた。反応生成物をメタノールで再沈殿精製してポリスチレンを得た。重合結果を以下の表1に示す。表1に示す結果から明らかな通り、ポリスチレンの分子量はスチレンモノマーの転化率と共に増加し、またポリスチレンの分子量分布はスチレンモノマーの転化率によらずほぼ一定の値であった。このことから、本反応はリビング的に進行し、単分散のポリスチレンが得られることが確認された。
〔実施例4〕
実施例3において、実施例1で得られた化合物の添加量を4.32×10-2g(1.05×10-2mol)とし、また重合時間を48時間とする以外は、実施例3と同様にしてポリスチレン2.05g(転化率75%)を得た(分子量Mn=39,000、分子量分布(Mw/Mn)=1.28)。
実施例3において、実施例1で得られた化合物の添加量を4.32×10-2g(1.05×10-2mol)とし、また重合時間を48時間とする以外は、実施例3と同様にしてポリスチレン2.05g(転化率75%)を得た(分子量Mn=39,000、分子量分布(Mw/Mn)=1.28)。
〔実施例5〕
実施例3において、実施例1で得られた化合物に代えて、実施例2で得られた化合物を2.73×10-2g(5.24×10-5mol)添加し、また反応温度を80℃とし、更に反応時間を以下の表2に示す通りとする以外は、実施例3と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を表2に示す。表2に示す結果から、重合反応がリビング的に進行し、単分散のポリスチレンが得られることが確認された。
実施例3において、実施例1で得られた化合物に代えて、実施例2で得られた化合物を2.73×10-2g(5.24×10-5mol)添加し、また反応温度を80℃とし、更に反応時間を以下の表2に示す通りとする以外は、実施例3と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を表2に示す。表2に示す結果から、重合反応がリビング的に進行し、単分散のポリスチレンが得られることが確認された。
〔実施例6〕
実施例5において、実施例2で得られた化合物の添加量を5.46×10-2 g(1.05×10-2 mol)とし、また重合時間を24時間とする以外は、実施例5と同様にしてポリスチレン2.29g(転化率84%)を得た(分子量Mn=30,000、分子量分布(Mw/Mn)=1.29)。
実施例5において、実施例2で得られた化合物の添加量を5.46×10-2 g(1.05×10-2 mol)とし、また重合時間を24時間とする以外は、実施例5と同様にしてポリスチレン2.29g(転化率84%)を得た(分子量Mn=30,000、分子量分布(Mw/Mn)=1.29)。
〔実施例7〜10〕
重合開始剤の種類及び添加量、モノマーの種類、重合温度、及び重合時間を表3に示す通りとする以外は、実施例3と同様にして重合を行い、ポリマーを得た。得られたポリマーの分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnを表4に示す。
重合開始剤の種類及び添加量、モノマーの種類、重合温度、及び重合時間を表3に示す通りとする以外は、実施例3と同様にして重合を行い、ポリマーを得た。得られたポリマーの分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnを表4に示す。
表3及び表4に示す結果から明らかなように、極性を有するモノマーであるメタクリル酸メチルを用いた場合にも、重合反応がリビング的に進行し、単分散のポリメタクリル酸メチルが得られることが確認された。
Claims (3)
- 下記一般式(1)
- 前記一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)
前記一般式(2)で表されるホスフィンと二硫化炭素とを反応させ、次いで得られた反応生成物を、前記一般式(3)で表されるラジカル重合開始剤と反応させることを特徴とする化合物の製造方法。 - 請求項1に記載のリビングラジカル重合開始剤を用いることを特徴とするリビングラジカル重合方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005049710A JP2006233012A (ja) | 2005-02-24 | 2005-02-24 | リビングラジカル重合開始剤、その製造方法、及びそれを用いたリビングラジカル重合方法 |
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JP (1) | JP2006233012A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103958552A (zh) * | 2011-11-16 | 2014-07-30 | 东曹有机化学株式会社 | 高纯度对苯乙烯磺酸(盐)、使用了其的聚苯乙烯磺酸(盐)及使用了聚苯乙烯磺酸(盐)的分散剂、导电性聚合物掺杂剂、纳米碳材料水性分散体、导电性聚合物水性分散体以及聚苯乙烯磺酸(盐)的制造方法 |
-
2005
- 2005-02-24 JP JP2005049710A patent/JP2006233012A/ja active Pending
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