JP2006226135A - マニホルド圧力センサの故障診断方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 フェールセーフのために2系統のマニホルド圧力検出系を有する制御装置において故障しているマニホルド圧力センサを特定する。
【解決手段】 第1比較部29は、二つのセンサ5A,5Bでそれぞれ検出されたマニホルド圧力PMaとPMbとの差ΔPがしきい値DPより大きい場合に異常信号を出力する。マニホルド圧推定部30は、エンジン回転数Ne、スロットル開度PLP、および大気圧PAaからマニホルド圧力を推定する。算出部31は、検出マニホルド圧力PMbと推定マニホルド圧力PMcalとの差ΔPMbを算出する。差算出部31は、検出マニホルド圧力PMaと推定マニホルド圧力PMcalとの差ΔPMaを算出する。第2比較部33は、前記異常信号に応答して差ΔPMaと差ΔPMbとを比較する。差ΔPMaおよび差ΔPMbのいずれが大きいかで異常を生じているマニホルド圧力センサを特定する。
【選択図】 図1
【解決手段】 第1比較部29は、二つのセンサ5A,5Bでそれぞれ検出されたマニホルド圧力PMaとPMbとの差ΔPがしきい値DPより大きい場合に異常信号を出力する。マニホルド圧推定部30は、エンジン回転数Ne、スロットル開度PLP、および大気圧PAaからマニホルド圧力を推定する。算出部31は、検出マニホルド圧力PMbと推定マニホルド圧力PMcalとの差ΔPMbを算出する。差算出部31は、検出マニホルド圧力PMaと推定マニホルド圧力PMcalとの差ΔPMaを算出する。第2比較部33は、前記異常信号に応答して差ΔPMaと差ΔPMbとを比較する。差ΔPMaおよび差ΔPMbのいずれが大きいかで異常を生じているマニホルド圧力センサを特定する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、エンジン制御システムに使用されるマニホルド圧力センサの故障診断装置に関し、特に、第1のマニホルド圧力センサと第1のマニホルド圧力センサをバックアップする第2のマニホルド圧力センサとを備えるシステムにおけるこれらマニホルド圧力センサの故障診断方法および装置に関する。
従来、エンジン制御システムにおいては、多数のセンサが使用されており、これらセンサが正常かどうかを診断する故障診断システムが知られている。例えば、特開2003−307152号公報には、吸気マニホルド内の圧力を感知するセンサの出力信号が、設定された範囲内であるか否かを判断する段階と、エンジン作動条件に基づいて吸気マニホルド内圧力を計算する段階と、センサの出力信号が前記範囲内である場合、該センサの出力信号が示す吸気マニホルド内圧力と計算された吸気マニホルド内圧力との差が設定値より小さいか否かを判断する段階とからなり、センサの出力信号が前記範囲内でない場合、または前記差が前記設定値より小さくない場合に、前記計算された圧力を吸気マニホルド内圧力として設定する方法が開示されている。
また、特開平10−176582号公報に記載された電子制御スロットル装置では、フェールセーフ等を目的としてアクセルセンサやスロットルセンサ等が2系統設けられ、2系統のセンサ出力の比較による故障診断が行われる。例えば、メインスロットルセンサとサブスロットルセンサとの偏差と所定の閾値とを比較することにより、スロットルセンサが異常であるか否かを判定する。
特開2003−307152号公報
特開平10−176582号公報
センサ系の故障のうち、断線やショートなどの故障は、センサ出力値が規定値もしくは規定範囲より高すぎたり低くすぎたりしたときに、異常と判断して予定の対応を行うようにすることができる。しかし、センサ出力値が規定範囲内にある場合でも、正常な制御に支障を与えるような、出力特性の変化や劣化等に対しては異常の判断が行えないことがある。
また、特許文献2に記載された診断方法では、2系統のセンサのいずれかが故障したことを検出することはできるが、2系統のセンサのうち、いずれが故障したかを判断するのは困難である。
本発明の目的は、2系統のマニホルド圧力センサを有するシステムにおいて、いずれのマニホルド圧力センサが異常であるかを確実に検出することができるマニホルド圧力センサの故障診断方法および装置を提供することにある。
前記目的を達成するための本発明は、主制御用の第1のマニホルド圧力センサと、該第1のマニホルド圧力センサをバックアップする第2のマニホルド圧力センサと、大気圧センサと、エンジン回転数検出手段と、スロットルセンサとを有するエンジン制御システムで使用されるマニホルド圧力センサの故障診断方法において、エンジン回転数、スロットル開度、および大気圧値に基づいて推定マニホルド圧力を算出する段階と、前記第1のマニホルド圧力センサの出力と前記第2のマニホルド圧力センサの出力との違いが所定の範囲を超えているときに異常と判断する段階と、異常と判断されたときに、前記第1および第2のマニホルド圧力センサのうち、その出力と前記推定マニホルド圧力との違いが大きい方を異常センサと特定する段階とからなる点に第1の特徴がある。
また、本発明は、主制御用の第1のマニホルド圧力センサと、該第1のマニホルド圧力センサをバックアップする第2のマニホルド圧力センサと、大気圧センサと、エンジン回転数検出手段と、スロットルセンサとを有するエンジン制御システムで使用されるマニホルド圧力センサの故障診断装置において、前記第1のマニホルド圧力センサで検出された第1検出マニホルド圧力値および前記第2のマニホルド圧力センサで検出された第2検出マニホルド圧力値の差がしきい値以上であるときに異常信号を出力する異常認識手段と、予め設定したエンジン回転数、スロットル開度、マニホルド圧、および大気圧の相互関係に従い、エンジン回転数、スロットル開度、および大気圧値を入力されて推定マニホルド圧力値を出力するマニホルド圧力推定手段と、前記推定マニホルド圧力値に対する前記第1検出マニホルド圧力値および第2検出マニホルド圧力値の差をそれぞれ算出し、算出された差のうち大きい方に対応するマニホルド圧力値を検出したマニホルド圧力センサを故障センサとして特定する異常特定手段とを具備するとともに、前記異常特定手段による故障センサの特定が、前記異常信号の出力に応答して行われるように構成された点に第2の特徴がある。
また、本発明は、前記異常認識手段および前記異常特定手段による差の判別が、該差の絶対値を用いて行われる点に第3の特徴がある。
また、本発明は、第1のマニホルド圧力センサで検出された第1検出マニホルド圧力値および第2のマニホルド圧力センサで検出された第2検出マニホルド圧力値の比の値が所定範囲から外れているときに異常信号を出力する異常認識手段と、予め設定したエンジン回転数、スロットル開度、マニホルド圧、および大気圧の相互関係に従い、エンジン回転数、スロットル開度、および大気圧値を入力されて推定マニホルド圧力値を出力するマニホルド圧力推定手段と、前記推定マニホルド圧力値と前記第1検出マニホルド圧力値との比の値、および前記推定マニホルド圧力値と前記第2検出マニホルド圧力値との比の値を算出し、それぞれ算出された比の値のうち所定値から大きく外れている方に対応するマニホルド圧力値を検出したマニホルド圧力センサを故障センサとして特定する異常特定手段とを具備するとともに、前記異常特定手段による故障センサの特定が、前記異常信号の出力に応答して行われるように構成された点に第4の特徴がある。
第1〜第4の特徴を有する本発明によれば、第1および第2のマニホルド圧力センサの出力の違いが大きい場合に、第1および第2のマニホルド圧力センサの少なくとも一方に異常が生じていることが認識される。そして、この異常判断がなされたときには、第1および第2のマニホルド圧力センサで検出されたそれぞれの圧力と、エンジン回転数、スロットル開度、大気圧値に基づいて計算された推定マニホルド圧力値との違いを算出して、その違いが大きい方(第3の特徴によれば、比の値が所定値からより離れている方)に対応する圧力を検出したマニホルド圧力センサに異常が発生したことを検出することができる。
したがって、センサの出力が単に所定範囲から外れたことのみをもってセンサの異常を判断する従来の故障検出手段では検出されない異常、例えば劣化による機能低下をきたしたセンサを検出することができる。
これにより、例えば、二つのマニホルド圧力検出系を有してフェールセーフを確保し、一方の検出系が故障の際に他方の検出系でバックアップするエンジン制御システムにおいて、二つのマニホルド圧力検出系の双方に関して、正常か異常かを判断することができ、この判断に基づいて制御システムに必要な補償動作が可能になる。補償動作には、代替値の使用、バックアップ系列への切り替えなどが含まれる。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図2は故障診断装置を含むエンジンの要部構成図である。図2において、エンジン1は航空機用レシプロ型内燃エンジンであり、始動用にスタータモータ2が設けられる。なお、図2では、2気筒分の要素を図示しているが、エンジン1の気筒数は限定されない。エンジン1の吸気マニホルド3に燃料噴射弁4が設けられ、燃料噴射弁4の上流には吸気マニホルド3内の圧力を検出するためのマニホルド圧力センサ5が設けられる。マニホルド圧力センサ5は、すべての気筒にメインのものとバックアップ用のものとが設けられる。両者を区別する場合、メインのものを第1のマニホルド圧力センサ5Aと呼び、バックアップ用のものを第2のマニホルド圧力センサ5Bと呼ぶ。
マニホルド圧力センサ5の上流側には、スロットルボディ6が設けられ、スロットルボディ6にはスロットル弁7が組み込まれる。スロットル弁7はモータ8によって駆動される。スロットルボディ6には、スロットル開度を検出するためのスロットルセンサ6Aが設けられる。エンジン1の制御用として、さらに大気圧センサ9、カムパルサ10、クランプパルサ11、冷却水温センサ12、および空気温度センサ13等、エンジン制御に必要な周知のセンサが設けられる。
上記各センサの出力信号を入力されて、プログラムに従って燃料噴射や点火制御を行う電子制御ユニット(ECU)14が設けられる。ECU14には、マニホルド圧力センサ5の故障診断機能が含まれる。
図3は、上記エンジンの制御系の概要を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態の制御系はフェールセーフの見地から、センサによる検出回路およびECU14を2系統備える。系統はそれぞれAレーン100およびBレーン200と呼ぶ。Aレーン100には、図2に関して説明したセンサを含むAセンサ群101並びにA電源102およびAレーン用のECU14Aが含まれる。同様に、Bレーン200には、Bセンサ群201並びにB電源202およびBレーン用のECU14Bが含まれる。第1のマニホルド圧力センサ5AはAセンサ群101に含まれ、第2のマニホルド圧力センサ5BはBセンサ群201に含まれる。この実施形態では、ECU14AおよびECU14Bを構成する回路基板上もしくはECU14Aおよび14Bのハウジング(図示しない)内に前記大気圧センサ9(9aおよび9b)を設けるが、設置位置はこれに限定されない。
ECU14Aと14Bとは、図示しない互いの通信インタフェースを介して双方向通信可能である。各気筒毎に設けられる燃料噴射弁4の駆動コイル(一つだけ図示する)15の一端(マイナス側)は、切り替えスイッチ16,17を介してそれぞれECU14Aおよび14Bの噴射信号出力端子OAおよびOBに接続される。駆動コイル15の他端(プラス側)はパワースイッチ18を介して、例えば電圧14ボルトを出力する電源19に接続される。パワースイッチ18は電流制限機能を備える。電源19およびパワースイッチ18はECU14Aおよび14B内にそれぞれ設けられる。
ECU14Aから出力される切り替え信号SAはNAND回路20の一方の入力側に接続され、ECU14Bから出力される切り替え信号SBはNOT回路21を介してNAND回路20の他方の入力側に接続される。NAND回路20の出力は、切り替えスイッチ16に入力されるとともに、もう一つのNOT回路22を介して切り替えスイッチ17に入力される。
切り替えスイッチ16および17のうち、切り替え信号SAおよびSBで選択された側に接続されるレーンの噴射信号出力端子の状態に応じて駆動コイル15に電源19から通電される。この通電時間によって燃料噴射弁4の開弁時間すなわち燃料噴射量が決定される。
次に、第1のマニホルド圧力センサ5Aおよび第2のマニホルド圧力センサ5Bの故障診断機能を説明する。本実施形態では、Aレーン100が主制御用であり、Bレーン200はそのバックアップの役割を果たす。図4は、マニホルド圧力センサ5Aおよび5Bの故障診断処理のフローチャートである。ステップS1では、ECU14Aおよび14Bを初期化する。ステップS2では、Aレーン100の、第1のマニホルド圧力センサ5Aの出力電圧VPmaと、Bレーン200の、第2のマニホルド圧力センサ5Bの出力電圧VPmbと、Aレーン100の大気圧センサ9aの出力電圧VPaaと、スロットルセンサ6Aの出力PLPと、Aレーン100のクランプパルサ11から出力されるクランクパルスPLSを読み込む。
ステップS3では、前記出力電圧VPma、VPmb、およびVPaaに基づいてそれぞれ圧力の物理値PMa、PMb、およびPAa(いずれも単位はmmHg)を算出する。例えば、予め設けた換算テーブルを使用して出力電圧を物理値にそれぞれ換算する。ステップS4では、スロットルセンサ6Aの出力を読み込み、スロットル開度PLPを算出するとともに、クランクパルスPLSに基づいてエンジン回転数Ne(rpm)を計算する。エンジン回転数Neは、クランクパルスPLSの間隔により算出することができる。
ステップS5では、電圧VPmaが予定の上限値(ここでは4.5ボルトとする)以上であるか否かを判断する。この判断が肯定であれば、ショートなどによる第1のマニホルド圧力センサ5Aの異常と判断されるので、ステップS6に進んで、異常時の処理として警報表示やレーンをAレーン100からBレーン200に切り替える処理を行う。ステップS5が否定の場合はステップS7に進む。
ステップS7においては、電圧VPmaが予定の下限値(例えば0.5ボルト)未満であるか否かを判断する。この判断が肯定であれば、断線などによる第1のマニホルド圧力センサ5Aの異常と判断されるので、ステップS6に進んで異常時の処理を行う。ステップS6での警報表示では、例えば、システムフェイル警報灯を点灯して「飛行継続には問題ないが、早期に点検修理をすべし」との情報を操縦者に知らせる。
ステップS7が否定であれば、第1のマニホルド圧力センサ5Aにはショートや断線などの故障はないと判断される。しかし、劣化などによって第1のマニホルド圧力センサ5Aに機能異常が発生していて正常な圧力値を出力していない場合でも、出力電圧VPmaが上限値および下限値で規定される範囲内に収まることがある。したがって、劣化などによる機能異常に関してはステップS5,S7の処理では判断できない。
そこで、次の処理によって第1マニホルド圧力センサ5Aに劣化がないかを判断する。エンジン1に関して、エンジン運転環境の大気圧PAと、エンジン回転数Neと、スロットル開度PLPと、マニホルド圧力PMaとの間には一定の関係を有することが知られている。したがって、この関係を利用して、エンジン回転数Neと、スロットル開度PLPと、大気圧PAとから計算によってマニホルド圧を推定することが可能であることが分かる。以下、計算によって求められるマニホルド圧を推定マニホルド圧力PMcalと呼ぶ。大気圧PAと、エンジン回転数Neと、スロットル開度PLPと、マニホルド圧力PMaとの間にある関係を実験的に求めておき、この関係をECU14内の記憶手段に記憶しておけば、このデータを参照して、エンジン回転数Ne、スロットル開度PLP、および大気圧PAに基づいて推定マニホルド圧力PMcalを容易に算出することができる。
ステップS8では、マニホルド圧力PMaとPMbとの差ΔPを算出する。差ΔPは絶対値として求める。ステップS9では、差ΔPがしきい値DPより大きいか否かを判断する。しきい値DPは、例えば44.8mmHgとする。第1のマニホルド圧力センサ5Aおよび第2のマニホルド圧力センサ5Bが同時期に同量劣化することは考えられないので、差ΔPがしきい値DPより小さい場合は、第1のマニホルド圧力センサ5Aと第2のマニホルド圧力センサ5Bはいずれも正常に動作していると判断され、通常の制御ループを持続する。
差ΔPがしきい値DPより大きい場合は、第1のマニホルド圧力センサ5Aおよび第2のマニホルド圧力センサ5Bの双方、またはいずれか一方に機能異常をきたしていると判断されるので、ステップS10に進んで異常を知らせる警報表示を行う。ここでは、前記システムフェイル警報灯とは指示する意味が異なるサービスリクエスト灯を点灯して「離陸前なら離陸操作中止、離陸後ならば飛行中止して点検修理すべし」旨を表示する。
そして、以下の処理では、上記大気圧PAと、エンジン回転数Neと、スロットル開度PLPと、大気圧PAとの関係を利用して第1のマニホルド圧力センサ5Aおよび第2のマニホルド圧力センサ5Bのいずれが異常であるかを特定する。まず、ステップS11では、エンジン回転数Neと、スロットル開度PLPと、大気圧PAとに基づいて推定マニホルド圧力センサPMcalを算出する。推定マニホルド圧力PMcalを求めるために使用される大気圧PAと、エンジン回転数Neと、スロットル開度PLPと、マニホルド圧力PMaとの関係の具体例は後述する。
ステップS12では、第1のマニホルド圧力センサ5Aによって検出されたマニホルド圧力PMaと推定マニホルド圧力PMcalとの差の絶対値ΔPMaと、第2のマニホルド圧力センサ5Bによって検出されたマニホルド圧力PMbと推定マニホルド圧力PMcalとの差の絶対値ΔPMbとを比較する。
ステップS12が否定であれば、第1のマニホルド圧力センサ5Aに関して劣化等による異常が生じていると判断されるので、ステップS13に進んでレーン切り替えを行い、Bレーン200の出力を採用してエンジン制御を行う。この場合も、システムフェイル警報灯を点灯させるのがよい。
ステップS12が肯定であれば、第2のマニホルド圧力センサ5Bに関して劣化などによる異常が生じていると判断される。この場合は、通常制御レーンつまり制御主体であるAレーン100に異常が発生しているのではないので、この通常制御レーンであるAレーン100による制御を維持する。
図5は、エンジン回転数Neと、大気圧PAと、マニホルド圧力PMaと、スロットル開度PLPとの関係を示すデータテーブルである。このデータは、大気圧PAを種々設定できる試験装置内で、大気圧PAを550mmHgに設定し、種々の回転数Neでエンジン1を運転したときものであり、縦軸にマニホルド圧力PMaをとり、横軸にスロットル開度PLPをとってある。エンジン1を搭載した航空機が高度8000フィートの上空を航行しているときの大気圧PA550mmHgを代表大気圧とする。
このデータを利用して、エンジン回転数Neが2300rpm、スロットル開度PLP35%のときのマニホルド圧力PMaを求める。図5において、スロットル開度PLPが35%のライン(縦の点線)とエンジン回転数Ne2300rpmの曲線との交点を点Xとすると、その交点Xに対応するマニホルド圧力PMaを読み取ることができる。つまり推定マニホルド圧力PMcalを求めることができる。ここで得られた推定マニホルド圧力PMcalは420mmHgである。
図5に示したデータは、ECU14A,14B内のメモリ手段に記憶され、このデータに関数演算や直線補間等を実施して推定マニホルド圧力PMcalが算出される。
図6は、エンジン回転数Neが2300rpmののときの、種々の大気圧(750mmHg、550mmHg、350mmHg)におけるマニホルド圧力PMaと、スロットル開度PLPとの関係を示す図である。
前記代表大気圧を使用しないで、このような特性曲線のデータを使用して、この特性曲線上にない中間大気圧での推定マニホルド圧力PMcalを求める手順を説明する。例えば、高度9500フィートでの飛行を想定し、大気圧PAが520mmHg、エンジン回転数Neが2300rpm、スロットル開度PLPが35%の場合の例を説明する。まず、スロットル開度PLPが35%のライン(縦の点線)と大気圧PAが350mmHgおよび550mmHgの特性曲線とのそれぞれの交点を点Aおよび点Cとする。そして、仮想される大気圧520mmHgの特性曲線とスロットル開度PLPが35%のラインとの交点Bは、点Aと点Cとの中間に想定される。
点Bで示されるマニホルド圧力PMaは点A、点Bおよび点Cの座標に基づいて補間計算によって求められる。すなわち、各点A,B,Cの座標(PLP,PMa,PA)は、A(35,250,350)、B(35,PMa,520)、C(35,415,550)であり、マニホルド圧力PMaは次式で算出される。PMa=250+(415−250)/(550−350)×(520−350)。この式によれば、マニホルド圧力PMaは390mmHg、つまり推定マニホルド圧力PMcalが390mmHgとして求められる。
例えば500rpmから使用上限3000rpmまで、500rpm毎に図6のようなデータテーブルを作成しておき、これをECU14A,14Bに記憶しておくことにより、種々のエンジン回転数に応じた推定マニホルド圧力PMcalを算出することができる。
図1は、図4のフローチャートに関して説明した処理を行うECU14Aの要部機能を示すブロック図である。第1マニホルド圧算出部23は、第1のマニホルド圧力センサ5Aの検出値VPMaに基づいてマニホルド圧力PMaを算出する。第2マニホルド圧算出部24は、マニホルド圧力センサ5Bの検出値VPMbに基づいてマニホルド圧力PMbを算出する。大気圧算出部25は、大気圧センサ9aの検出値VPaaに基づいて大気圧PAaを算出する。エンジン回転数算出部26は、クランクパルスPLSに基づいてエンジン回転数Neを算出する。
出力正常判別部27は、第1のマニホルド圧力センサ5Aの検出値VPMaが所定範囲つまり上限値および下限値の間に存在しているかどうかを判別し、検出値VPMaが所定範囲内ならば、出力正常信号を出力する。
マニホルド圧差算出部28は、マニホルド圧力PMaとマニホルド圧力PMbとの差ΔPを算出する。第1比較部29は、差ΔPとしきい値DPとを比較し、差ΔPの方が小さい場合には正常、大きい場合には異常信号を出力する。マニホルド圧差算出部28と第1比較部29は異常認識手段を形成する。
マニホルド圧推定部30は、エンジン回転数Ne、スロットル開度PLP、および大気圧PAaから推定マニホルド圧力PMcalを算出する。例えば、マニホルド圧推定部30は、図5または図6に示したようなデータテーブルを利用してマニホルド圧力を推定する。推定圧・第2マニホルド圧差算出部31は、マニホルド圧力PMbと推定マニホルド圧力PMcalとの差ΔPMbを算出する。推定圧・第1マニホルド圧差算出部32は、マニホルド圧力PMaと推定マニホルド圧力PMcalとの差ΔPMaを算出する。第2比較部33は、第1比較部29からの異常信号および出力正常判別部27からの出力正常信号が入力されると、これに応答して差ΔPMaと差ΔPMbとを比較する。差ΔPMaおよび差ΔPMbのいずれが大きいかによって、差ΔPMaの方が大きい場合は第1のマニホルド圧力センサ5Aが異常と判断し、差ΔPMbの方が大きい場合は第2のマニホルド圧力センサ5Bが異常と判断する。推定圧・第2マニホルド圧差算出部31、推定圧・第1マニホルド圧差算出部32、および第2比較部33は異常特定手段を形成する。
上述のように、本実施形態によれば、複数系統設けられたマニホルド圧力センサを有するシステムにおいて、劣化等によって機能が低下したマニホルド圧力センサを特定するために、エンジン回転数Ne、スロットル開度PLP、および大気圧からマニホルド圧力を推定し、この推定マニホルド圧力PMcalと第1および第2のマニホルド圧力センサでそれぞれ検出された圧力の差に基づいて故障したマニホルドセンサを特定することができる。
上記実施形態では、第1のマニホルド圧力センサ5Aおよび第2のマニホルド圧力センサ5Bで検出された圧力値相互間、ならびにこれら第1のマニホルド圧力センサ5Aおよび第2のマニホルド圧力センサ5Bで検出された圧力値と推定されたマニホルド圧力値との差に基づいて異常の判断および異常センサの特定を行った。
しかし、本発明はこれに限定されない。前記各圧力値間の差に代えて、比の値に基づいて異常の判断および異常センサの特定を行ってもよい。例えば、マニホルド圧差算出部28を圧力PMaとPMbとの比の値を計算する手段に変更する。そして、第1比較部29では、算出された比の値が所定値つまり「1」から予定の範囲内にあるかどうかによって、第1のマニホルド圧力センサ5Aおよび第2のマニホルド圧力センサ5Bがいずれも正常か少なくとも一方が異常であるかを判断するようにする。例えば、圧力PMa/PMbが0.95〜1.05の範囲内であれば第1および第2のマニホルド圧力センサ5Aおよび5Bはいずれも正常であると判断し、この範囲から外れれば、第1および第2のマニホルド圧力センサ5Aおよび5Bの少なくとも一方が異常であると判断する。
同様に、推定圧・第2マニホルド圧差算出部31を、検出マニホルド圧力PMaと推定マニホルド圧力PMcalとの比の値を算出する手段に変更し、推定圧・第2マニホルド圧差算出部32を、検出マニホルド圧PMbと推定マニホルド圧力PMcalとの比の値を算出する手段に変更する。そして、第2比較部33では、算出された比の値が、所定値つまり「1」から大きく外れている方に対応する圧力値に対応するマニホルド圧力センサが異常を生じているセンサであると特定するように構成する。
1…エンジン、 3…吸気マニホルド、 4…燃料噴射弁、 5(5A,5B)…マニホルド圧力センサ、 9(9a,9b)…大気圧センサ、 14(14A,14B)…ECU、 28…マニホルド圧差算出部、 29…第1比較部、 30…マニホルド圧推定部、 31…推定圧・第2マニホルド圧差算出部、 32…推定圧・第1マニホルド圧差算出部、 33…第2比較部
Claims (4)
- 主制御用の第1のマニホルド圧力センサと、該第1のマニホルド圧力センサをバックアップする第2のマニホルド圧力センサと、大気圧センサと、エンジン回転数検出手段と、スロットルセンサとを有するエンジン制御システムで使用されるマニホルド圧力センサの故障診断方法において、
エンジン回転数、スロットル開度、および大気圧値に基づいて推定マニホルド圧力を算出する段階と、
前記第1のマニホルド圧力センサの出力と前記第2のマニホルド圧力センサの出力との違いが所定の範囲を超えているときに異常と判断する段階と、
異常と判断されたときに、前記第1および第2のマニホルド圧力センサのうち、その出力と前記推定マニホルド圧力との違いが大きい方を異常センサと特定する段階とからなるマニホルド圧力センサの故障診断方法。 - 主制御用の第1のマニホルド圧力センサと、該第1のマニホルド圧力センサをバックアップする第2のマニホルド圧力センサと、大気圧センサと、エンジン回転数検出手段と、スロットルセンサとを有するエンジン制御システムで使用されるマニホルド圧力センサの故障診断装置において、
前記第1のマニホルド圧力センサで検出された第1検出マニホルド圧力値および前記第2のマニホルド圧力センサで検出された第2検出マニホルド圧力値の差がしきい値以上であるときに異常信号を出力する異常認識手段と、
予め設定したエンジン回転数、スロットル開度、マニホルド圧、および大気圧の相互関係に従い、エンジン回転数、スロットル開度、および大気圧値を入力されて推定マニホルド圧力値を出力するマニホルド圧力推定手段と、
前記推定マニホルド圧力値に対する前記第1検出マニホルド圧力値および第2検出マニホルド圧力値の差をそれぞれ算出し、算出された差のうち大きい方に対応するマニホルド圧力値を検出したマニホルド圧力センサを故障センサとして特定する異常特定手段とを具備するとともに、
前記異常特定手段による故障センサの特定が、前記異常信号の出力に応答して行われるように構成されたことを特徴とするマニホルド圧力センサの故障診断装置。 - 前記異常認識手段および前記異常特定手段による差の判別が、該差の絶対値を用いて行われるように構成されたことを特徴とする請求項2記載のマニホルド圧力センサの故障診断装置。
- 主制御用の第1のマニホルド圧力センサと、該第1のマニホルド圧力センサをバックアップする第2のマニホルド圧力センサと、大気圧センサと、エンジン回転数検出手段と、スロットルセンサとを有するエンジン制御システムで使用されるマニホルド圧力センサの故障診断装置において、
前記第1のマニホルド圧力センサで検出された第1検出マニホルド圧力値および前記第2のマニホルド圧力センサで検出された第2検出マニホルド圧力値の比の値が所定範囲から外れているときに異常信号を出力する異常認識手段と、
予め設定したエンジン回転数、スロットル開度、マニホルド圧、および大気圧の相互関係に従い、エンジン回転数、スロットル開度、および大気圧値を入力されて推定マニホルド圧力値を出力するマニホルド圧力推定手段と、
前記推定マニホルド圧力値と前記第1検出マニホルド圧力値との比の値、および前記推定マニホルド圧力値と前記第2検出マニホルド圧力値との比の値を算出し、それぞれ算出された比の値のうち所定値から大きく外れている方に対応するマニホルド圧力値を検出したマニホルド圧力センサを故障センサとして特定する異常特定手段とを具備するとともに、
前記異常特定手段による故障センサの特定が、前記異常信号の出力に応答して行われるように構成されたことを特徴とするマニホルド圧力センサの故障診断装置。
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