JP2006223198A - 転移酵素による化合物ライブラリーおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の化合物ライブラリーは、同一容器内で作製する化合物ライブラリーの製造方法であって、(1)1種またはそれ以上の供与体基質、受容体基質、および転移酵素を混合し;(2)インキュベートすることにより転移率が1%−99%になるように転移反応を行い;そして(3)転移反応を停止することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
固相または液相をベースとするコンビナトリアル化学合成法には、手法の違いによって、スプリット・コンバインライブラリー合成法(Split and Combine Library Synthesis)、化合物アレイの平行合成法(Parallel Synthesis of Compound arrays)、1ポットグリコシレーション法(One−Pot Glycosylation)が例示される。しかしながら、これらの方法は、主に有機化学合成を用いるものであり、糖残基の特定の位置に新たに糖残基を導入する場合には、予め糖供与体基質または糖受容体基質の各水酸基に適切な保護基を導入するため、各合成過程における保護基の導入/脱保護の工程が必要不可欠である。仮に、保護基を有さない受容体基質を用いた場合(ランダムグリコシド合成など)でも、生成物に立体異性体および位置異性体の混合物が多数混在することになり、それらの精製あるいは構造決定は容易ではない。
したがって、上述したように、多種の糖転移酵素や硫酸転移酵素を安定供給できる利点を生かし、さらに各転移酵素について基質特異性を明確にしたことにより、特定の構造を有する糖鎖ライブラリーを構築することができる。
本発明の一態様において、本発明の化合物ライブラリーの製造方法に使用する各転移酵素の順番は、限定されないが、当業者であれば、特定の構造を有する化合物ライブラリーを製造するために、転移酵素の基質特異性を考慮して、転移酵素の種類を選択し、これらの添加順序を選択することができる。これとは反対に、転移酵素の基質特異性を利用して、特定の構造を含まない化合物ライブラリーを製造することもできる。
本発明によれば、本発明の化合物ライブラリーを製造する方法によって製造される化合物ライブラリーが提供される。
本発明によれば、本発明の化合物ライブラリーを用いるチップが提供される。チップに使用される化合物は、本発明の化合物ライブラリーの製造方法によって得られる化合物である。本発明の一態様においては、化合物ライブラリーに含まれる各成分を分離・精製して使用することができる。また、本発明の一態様においては、化合物ライブラリーに含まれる各成分を分離・精製せずに使用することもできる。
1.転移酵素
(1)糖転移酵素
糖転移酵素は、糖受容体基質(例えば、糖ペプチド、ペプチド)に糖供与体基質(例えば、糖ヌクレオチド)から糖残基の転移を触媒するタンパク質である。触媒反応を反応式で記載すると、
糖受容体基質+糖1ヌクレオチド⇔糖1−糖受容体基質+ヌクレオチド・・・式(A)
になる。式(A)において糖1が転移された生成物「糖1−糖受容体基質」は、さらに次の反応の糖受容体基質となる。例えば、糖2を転移する糖転移酵素と糖2ヌクレオチドを用いて反応させた場合には、反応が100%進行した場合、糖2−糖1−糖受容体基質として得られる。
N−アセチルガラクトサミン転移酵素は、糖受容体基質にN−アセチルガラクトサミン残基の転移を触媒するタンパク質である。これまでに、糖を有しない受容体基質であるセリン/スレオニンの水酸基にN−アセチルガラクトサミンを転移するヒトのN−アセチルガラクトサミン転移酵素としては、18種類が知られている。本研究グループは、pp−GalNAc−T10、T12、T14、T15、T16、T17、およびT18をコードする遺伝子を単離し、それぞれの塩基配列および推定アミノ酸配列を決定している(特許文献1参照)。これらN−アセチルガラクトサミン転移酵素をコードする核酸の塩基配列、推定アミノ酸配列、基質特異性、および組織における発現分布に関しては、特許文献1に開示される。なお、pp−GalNAc−T10は、特許文献1において開示するGalNAc−T13に該当し、pp−GalNAc−T12はGalNAc−T14、pp−GalNAc−T14はGalNAc−T12、pp−GalNAc−T15はGalNAc−T17、pp−GalNAc−T16はGalNAc−T11、pp−GalNAc−T17はGalNAc−T16に該当し、およびpp−GalNAc−T18はGalNAc−T15に該当する(表1参照)。その他全てのN−アセチルガラクトサミン転移酵素については、表1に記載の先行技術文献に開示されている。
なお、上記のN−アセチルガラクトサミン転移酵素は、セリン/スレオニン、グルクロン酸、またはN−アセチルグルコサミンを有するものを糖受容体基質とするが、本発明の糖鎖ライブラリーの製造方法においては、N−アセチルガラクトサミンを転移するN−アセチルガラクトサミン転移酵素である限り、特に限定されない。
本研究グループは、N−アセチルグルコサミンにガラクトースの転移を触媒するガラクトース転移酵素として、β3GalT5を同定している(非特許文献23参照)。なお、これらのガラクトース転移酵素は、N−アセチルグルコサミンを有するものを糖受容体基質とするが、本発明の糖鎖ライブラリーの製造方法においては、ガラクトースを転移するガラクトース転移酵素である限り、特に限定されてない。
本研究グループは、ガラクトースへのN−アセチルグルコサミンの転移を触媒するN−アセチルグルコサミン転移酵素として、β3GnT2、T3、T4(非特許文献24参照)、β3GnT5(非特許文献25参照)を同定している。なお、これらのN−アセチルグルコサミン転移酵素は、N−アセチルグルコサミンを有するものを受容体基質とするが、本発明の化合物ライブラリーの製造方法においては、N−アセチルグルコサミンを転移するN−アセチルグルコサミン転移酵素である限り、特に限定されない。
本発明の化合物ライブラリーの製造方法に使用される糖転移酵素としては、上記の糖転移酵素以外に、限定されないが、N−アセチルノイラミン酸転移酵素、フコース転移酵素、グルクロン酸転移酵素、グルコース転移酵素、マンノース転移酵素、キシロース転移酵素が例示される。これらの糖転移酵素の一部には市販されているものもあり入手可能なものもある。
本発明の化合物ライブラリーの製造方法に使用される転移酵素としては、上記の糖転移酵素以外に、限定されず、供与体基質から受容体基質へ置換基を転移できる任意の転移酵素が含まれる。このような転移酵素には、硫酸転移酵素、リン酸転移酵素、アシル基転移酵素が例示される。
硫酸転移酵素は、硫酸基の供与体基質である活性硫酸(3’−ホスホアデノシン5’−ホスホ硫酸:PAPS)から受容体基質の水酸基、アミノ基、チオール基に硫酸基を転移する反応を触媒する。タンパク質の翻訳後修飾においては、アミノ酸残基のチロシンの側鎖の水酸基に硫酸基が導入され、タンパク質の活性を制御している。また、糖鎖における硫酸化は、特に、グリコサミノグリカンにおいて多様である。硫酸化グリコサミノグリカンは二糖の繰り返し構造であり、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸が例示される。例えば、コンドロイチン硫酸は、グルクロン酸残基とN−アセチルガラクトサミン残基を基本とし、硫酸転移酵素の種類に応じて硫酸化される部位が異なる。
リン酸転移酵素(ホスホトランスフェラーゼ、キナーゼ)は、リン酸供与体(例えば、アデノシン5’−三リン酸)から受容体基質の水酸基にリン酸基を転移する反応を触媒する。タンパク質の翻訳後修飾においては、アミノ酸残基のチロシン、セリン、スレオニンの側鎖の水酸基にリン酸基が導入され、タンパク質の活性を制御している。また、糖鎖におけるリン酸化は、各種の代謝経路において顕著に見られる。例えば、グルコースからグルコース6−リン酸を合成する経路では、ヘキソキナーゼが関与する。
アシル基転移酵素は、アシル基の供与体基質であるアセチル−CoAから受容体基質のカルボキシル基、水酸基、アミノ基、チオール基にアシル基を転移する反応を触媒する。特に、アシル基転移酵素は、ステロイド、脂肪酸の代謝に関与している。また、タンパク質の翻訳後修飾においては、アミノ酸残基のアスパラギン酸、グルタミン酸の側鎖のカルボキシル基にアシル基が導入され、タンパク質の活性を制御している。また、糖鎖におけるアシル化は、さまざまな生物学的過程を調節するための枢軸的な役割を果たすことが知られている。例えば、非還元末端側に結合したシアル酸の4位の水酸基にアセチル基を転移する反応ではシアル酸4−O−アセチル転移酵素が関与する。
(1)受容体基質
受容体基質への転移反応、即ち、糖鎖付加、硫酸化、リン酸化、アシル化等は、置換基の種類に応じた各転移酵素が触媒となって各種の置換基を受容体基質に転移することによって行われる。例えば、転移酵素がN−アセチルガラクトサミン転移酵素である場合には、N−アセチルガラクトサミン残基は、受容体基質として、少なくともタンパク質やペプチド中のセリン/スレオニンの水酸基、グルクロン酸、およびN−アセチルグルコサミンに基質特異的に転移されることが知られている。
転移反応は、転移酵素が触媒となって供与体基質を構成する置換基を受容体基質に転移することである。例えば、β4Gal−コア2構造を有する受容体基質にシアル酸残基(例えば、Neu5Ac)を転移させる場合には、供与体基質としてCMP−Neu5Acを用いることができる。
本発明の化合物ライブラリーの製造方法は、同一容器内で受容体基質に供与体基質の置換基を転移させる反応を行うものであって、各転移酵素による転移率が100%に達する前に反応を停止させまたは反応を停止させないで、置換基が転移した化合物と置換基が転移していない未反応の化合物との混合物に、さらに転移酵素を逐次添加することにより、バリエーションのある化合物ライブラリーを構築することを特徴とする。本発明の方法により、従来の酵素合成法とは異なり、各反応工程において生成物を回収および精製せずに連続して転移反応を行うことができ、多種の置換基を有する化合物ライブラリーを構築することができる。
また、各転移反応の転移率の測定は、限定されないが、溶液中の未反応物質、反応生成物の濃度、組成比、または重量比などを測定する方法が例示される。好ましくは、反応溶液の一部を採取し、質量分析計によって反応溶液中に存在する各成分の量(または組成比)を測定することができる質量分析法である。この質量分析法による転移率の測定は、質量分析後のスペクトルに示される各々のマススペクトル(m/z)が1つの化合物の構造に相当することに基づいている。各反応工程において生成物を分離・精製する必要はなく、質量分析計による1回の測定により、未反応物、生成物、これらの存在量(若しくは組成比)、または反応溶液中に含まれる各成分の構造を迅速かつ容易に同定することができる。したがって、本発明の化合物ライブラリーの製造方法によって、各成分の構造が明らかな化合物ライブラリーを製造することが可能である。
本発明によれば、上述した製造方法によって製造される化合物ライブラリーが提供される。本発明の化合物ライブラリーの製造方法により、従来の方法とは異なり、迅速かつ容易に構造の明らかな多種の構造を含む化合物ライブラリーを構築することができる。
より具体的には、後述する実施例1に記載したように、糖受容体基質(出発物質)としてβ4Gal−コア2−Muc1a(Ala−His−Gly−Val−Thr−Ser−Ala−Pro−Asp−Thr−Arg(配列番号1))を用いた場合に、N−アセチルノイラミン酸転移酵素(ST3Gal IV)、フコース転移酵素(FUT6)、N−アセチルグルコサミン(β3GnT2)、およびガラクトース転移酵素(β4GalT1)をこの順番で使用し、各糖転移酵素の糖転移率を50%とすることにより、計6種類の糖鎖、すなわち、(i)Galβ1−4GlcNAcβ1−6(Galβ1−3)GalNAcα1−Muc1a、(ii)Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcβ1−6(Galβ1−3)GalNAcα1−Muc1a、(iii)GlcNAcβ1−3Galβ1−4GlcNAcβ1−6(Galβ1−3)GalNAcα1−Muc1a、(iv)Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4GlcNAcβ1−6(Galβ1−3)GalNAcα1−Muc1a、(v)Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−3(Galβ1−3)GalNAcα1−Muc1a、および(vi)Neu5Acα2−3Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcβ1−6(Galβ1−3)GalNAcα1−Muc1aを含む糖鎖ライブラリーを構築することができた(図1参照)。本明細書においては、Galはガラクトース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、GalNAcはN−アセチルガラクトサミン、Fucはフコース、Neu5AcはN−アセチルノイラミン酸を示す。この製造方法では、添加する糖転移酵素の種類により、この他に2種の糖鎖(後述するスキーム3の×印)が理論的には合成される可能性はあるが、上記の反応順番では得られなかった。そこで、2番目のフコース転移酵素と3番目のN−アセチルグルコサミン転移酵素の添加順序を変えることにより、前記の方法では得られなかったGlcNAcβ1−3Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcβ1−6(Galβ1−3)GalNAcα1−Muc1a、およびGalβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcβ1−6(Galβ1−3)GalNAcα1−Muc1aを得ることができた。これらの糖鎖構造は、質量分析計によって容易に決定することができた。
本発明によれば、本発明の化合物ライブラリーを疾患の診断等に使用可能なチップが提供される。本明細書において「チップ」というときは、固相基板、例えば、チップ、メンブラン、フィルター、ガラス上に、本発明の化合物ライブラリーを配列したものをいう。具体的には、本発明のチップを使用することにより、チップに配列した化合物ライブラリーのうち特定の化合物に反応する分子等を迅速に検出することが可能となる。例えば、糖鎖ライブラリーをチップに使用した場合は、糖鎖認識分子、例えば、レクチン、ウイルス、細菌、毒素、バクテリアなどがチップに固定した糖鎖を認識し結合等することによって、各糖鎖からのシグナルを検出し、得られたデータを解析するものである。なお、化合物ライブラリー中の化合物を固相基板に固定する方法としては、限定されないが、基板表面への疎水結合、または化学修飾したプレート表面へのアミド結合、スルフィド結合などがある。
下記の表2Aに記載した各容量のシアル酸転移酵素(ST3Gal IV)、糖受容体基質(β4Gal−コア2−Muc1a)、糖供与体基質(CMP−Neu5Ac)、2価カチオン、緩衝液等を含む溶液を37℃で20時間インキュベートした。この反応溶液の0.1μlをサンプリングし、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)の0.5μlと混合したものを質量分析計(Reflex IV(ブルーカー社製))を用いて反応経過をモニタリングした。反応がほぼ50%進行した時点で、反応溶液を100℃で5分間熱処理を行うことにより、酵素を失活させ反応を停止させた。この反応溶液を「反応溶液1」とする(反応1)。次に、反応溶液1に、表2Bに記載した各容量のフコース転移酵素(FUT6)と糖供与体基質(GDP−Fuc)を添加し、25℃で30分反応させた。この酵素反応溶液をReflex IVでモニターし、反応がほぼ50%進行したことを確認し、100℃で5分間熱処理することによって酵素を失活させた。この反応溶液を「反応溶液2」とする(反応2)。さらに、反応溶液2に、表2Cに記載した各容量のN−アセチルグルコサミン転移酵素(β3GnT2)と糖供与体基質(UDP−GlcNAc)を添加し、37℃で2時間反応を行った。Reflex IVでモニターし、反応がほぼ50%進行したことを確認した後、100℃で5分間熱処理を行い、反応を停止させた。この反応溶液を「反応溶液3」とする(反応3)。さらに次いで、反応溶液3を表2Dに記載した各容量のガラクトース転移酵素(β4GalT1)と糖供与体基質(UDP−Gal)を添加し、25℃で1時間反応させ、Reflex IVでモニターした。反応がほぼ50%進行したところで、100℃で5分間熱処理を行い、反応を停止させた。この反応溶液を「反応溶液4」とする(反応4)。
これらの結果より、添加する糖転移酵素の順番を変えることによって、所望する糖鎖構造を有する糖鎖ライブラリーを構築することができる。それとは反対に、特定の糖鎖構造については、糖鎖ライブラリーに含まないようにすることもできる。
同一容器内でTn−Muc1aを出発物質としてポリラクトサミン鎖の伸長を行った。下記の表4に記載した各容量のN−アセチルグルコサミン転移酵素(β3GnT6およびβ3GnT2)とガラクトース転移酵素(β4GalT1)、糖受容体基質(Tn−Muc1a)、糖供与体基質(UDP−GlcNAcとUDP−Gal)を使用した。β3GnT6は、Tn抗原のGalNAc残基にN−アセチルグルコサミンをβ1−3で転移する酵素であり、β3GnT2は、ラクトサミン鎖のガラクトース残基にN−アセチルグルコサミンをβ1−3で転移する酵素である。これらと2価カチオン、緩衝液等を含む溶液を37℃で30時間反応させ、実施例1および2と同様にReflex IVでモニタリングしたところ、MALDI TOF MSでモニターしたところ、Galβ1−4−コア3構造にラクトサミン構造(Galβ1−4GlcNAcβ1−3)が主として4〜11ユニット伸長した糖鎖構造を含む混合物を1反応で得ることができた(図3)。
下記の表5Aに記載した各容量のN−アセチルグルコサミン転移酵素(β3GnT2)、ガラクトース転移酵素(β4GalT1)、糖受容体基質(コア3−Muc1a)、糖供与体基質(UDP−GlcNAcとUDP−Gal)、2価カチオン、緩衝液等を含む溶液を37℃で12時間反応させた。Reflex IVでモニタリングしたところ、コア3構造にラクトサミン構造が主として1〜5ユニット伸長した糖鎖構造を含む糖鎖ライブラリーを1反応にて得ることができた。その後、熱処理によって反応を停止させた。この反応溶液を「反応溶液A」とする(反応A)。
コア3構造を出発物質として、各糖転移酵素の組み合わせにより、下記のスキーム4に示すように、シアリルルイスA、シアリルルイスX、A抗原、またはB抗原を含む各種の糖鎖ライブラリーを構築することができる。
ガラクトースをN−アセチルグルコサミン残基にβ1−3で転移させるガラクトース転移酵素(β3GalT5)、糖受容体基質(コア3:GlcNAcβ1−3GalNAcα1−)、糖供与体基質(UDP−Gal)を用いて所定時間反応させ、反応率がほぼ100%の時点で反応を停止させる(反応1)。この反応によって、Galβ1−3GlcNAcβ1−3GalNAcα1−を得ることができる。この反応溶液を「反応溶液a」とする。次に、反応溶液aに、シアル酸転移酵素(ST3Gal I)とフコース転移酵素(FUT3)、糖供与体基質(CMP−Neu5AcとGDP−Fuc)を添加し、所定時間反応させることにより、シアリルルイスA(Neu5Acα2−3Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−3GalNAcα1−)と他3種類の糖鎖(Galβ1−3GlcNAcβ1−3GalNAcα1−、Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−3GalNAcα1−、Neu5Acα2−3Galβ1−3GlcNAcβ1−3GalNAcα1−)からなる4種類の糖鎖構造を有する糖鎖ライブラリーを構築することができる(スキーム4)。
ガラクトースをN−アセチルグルコサミン残基にβ1−4で転移させるガラクトース転移酵素(β4GalT1)、糖受容体基質(コア3:GlcNAcβ1−3GalNAcα1−)、糖供与体基質(UDP−Gal)を用いて所定時間反応させ、反応率がほぼ100%の時点で反応を停止させる。この反応によって、Galβ1−4GlcNAcβ1−3GalNAcα1−を得ることができる。この反応溶液を「反応溶液b」とする。次に、反応溶液bに、シアル酸転移酵素(ST3Gal III)、N−アセチルグルコサミン転移酵素(β3GnT2)、フコース転移酵素(FUT6)、ガラクトース転移酵素(β4GalT1)、糖供与体基質(CMP−Neu5Ac、UDP−GlcNAc、GDP−Fuc、UDP−Gal)を添加し、所定時間反応させることにより、シアリルルイスX(Neu5Acα2−3Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcβ1−3GalNAcα1−)と他7種類の糖鎖からなる8種類の糖鎖構造を有する糖鎖ライブラリーを構築することができる(スキーム4)。
上記(1)で調製した反応溶液aに、シアル酸転移酵素(ST6GalNAc I)、フコース転移酵素(FUT2)、N−アセチルガラクトサミン転移酵素(H−α3GalNAcT)、糖供与体基質(CMP−Neu5Ac、GDP−Fuc、UDP−GalNAc)を用いて所定時間反応させ、反応率がほぼ50%の時点で反応を停止させる。これによりA抗原(GalNAcα1−3(Fucα1−2)Galβ1−3GlcNAcβ1−3GalNAcα1−)を含む計6種類の糖鎖ライブラリーを構築することができる(スキーム4)。
上記(1)で調製した反応溶液aに、シアル酸転移酵素(ST6GalNAc I)、フコース転移酵素(FUT2)、ガラクトース転移酵素(H−α3GalT)、糖供与体基質(CMP−Neu5Ac、GDP−Fuc、UDP−Gal)を用いて所定時間反応させ、反応率がほぼ50%の時点で反応を停止させる。これによりB抗原(Galα1−3(Fucα1−2)Galβ1−3GlcNAcβ1−3GalNAcα1−)を含む計6種類の糖鎖ライブラリーを構築することができる(スキーム4)。
Claims (14)
- 同一容器内で作製する化合物ライブラリーの製造方法であって、
(1)1種またはそれ以上の供与体基質、受容体基質、および転移酵素を混合し;
(2)インキュベートすることにより転移率が1%−99%になるように転移反応を行い;そして
(3)転移反応を停止する
ことを含む、前記化合物ライブラリーの製造方法。 - 転移率を質量分析計によって測定することを特徴とする、請求項1に記載の化合物ライブラリーの製造方法。
- 工程(1)が、受容体基質に、供与体基質および転移酵素を添加する、請求項1または2に記載の化合物ライブラリーの製造方法。
- 転移反応の生成物に、さらに同種又は異種の供与体基質および転移酵素を添加し、工程(1)−(3)を1回以上繰り返す工程を含む、請求項3に記載の化合物ライブラリーの製造方法。
- 工程(1)−(3)の繰り返しが1−10回である、請求項4に記載の化合物ライブラリーの製造方法。
- 転移率が50%に達したときに反応を停止させる、請求項5に記載の化合物ライブラリーの製造方法。
- 転移酵素が、N−アセチルノイラミン酸転移酵素、フコース転移酵素、N−アセチルグルコサミン転移酵素、N−アセチルガラクトサミン転移酵素、ガラクトース転移酵素、グルコース転移酵素、グルクロン酸転移酵素、マンノース転移酵素、キシロース転移酵素、硫酸転移酵素、リン酸転移酵素、またはアシル基転移酵素である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の化合物ライブラリーの製造方法。
- 受容体基質が、糖受容体基質、ペプチド、タンパク質、若しくは脂質、若しくはそれらの修飾体、またはこれらの混合物である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化合物ライブラリーの製造方法。
- 糖受容体基質が、単糖、糖鎖、糖ペプチド、糖タンパク質、または糖脂質である、請求項8に記載の化合物ライブラリーの製造方法。
- 糖鎖、糖ペプチド、糖タンパク質、または糖脂質が、Tn抗原、コア2構造、コア3構造、コア4構造、コア5構造、コア7構造、およびコア8構造からなる群から選択される糖鎖構造を有する、請求項9に記載の化合物ライブラリーの製造方法。
- 供与体基質が、糖ヌクレオチド、ドリコールリン酸−糖、3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸(PAPS)、アデノシン三リン酸(ATP)、およびアセチル−CoAからなる群から選択される、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の化合物ライブラリーの製造方法。
- 請求項1ないし11のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される化合物ライブラリー。
- 化合物ライブラリーの各成分の構造がそれらの分子量から特定されることを特徴とする、請求項12に記載の化合物ライブラリー。
- 請求項12又は13に記載の化合物ライブラリーを用いるチップ。
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