JP2006214394A - 燃料噴射弁 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料噴射弁1のシール面の、特に高圧燃料流路22の周囲に、高いシール面圧を効果的に付与し、高圧燃料の確実なシール性を確保する。
【解決手段】弁ボディ20の先端のシール面2Aと後端面に、それぞれ絞り弁ボディ7とノズルボディ48が締結により圧接シールされている。シール面圧を大きくするために、従来の凹所を設けたメタルシール面に代え、両ボディより柔らかいが、内部は適度な弾性を有する材料のリング状ガスケット61,62を、特に高圧燃料通路46に限定し、その周囲に設けられた略矩形断面形状のリング状シール溝64に装填し、メタルタッチするまで圧縮した締切り形ガスケットを構成し、所定のシール圧をガスケット面上に確保し、軸力の変動や除圧に対して常に一定のシール圧を維持し、好ましくは燃料圧力をシール押付け圧に変換し、付加できるガスケット形状を構成することで、高圧燃料に対応した高いシール圧を維持し、確実なシールを実現する。
【選択図】図1

Description

本発明は、高圧供給ポンプによって加圧し、コモンレール内に蓄圧した高圧燃料を、内燃機関の燃焼室に噴射するための燃料噴射弁に関する。
〔従来の技術〕
燃料噴射弁は、ディーゼルエンジンなどの蓄圧(コモンレール)式燃料噴射装置に用いられ、コモンレールから供給される高圧燃料をエンジンの燃焼室に噴射する。
この燃料噴射弁は、先端側に噴射ノズルを備えた噴射弁本体と、該噴射弁本体の後端側に配された圧力制御手段と、電磁弁などの駆動手段とからなる。電磁弁などの駆動手段は、エンジン制御装置(ECU)から制御信号を受け、噴射弁本体に介装された圧力制御手段に作用し、噴射弁本体に内装された制御ピストン、および噴射ノズルに内装されたニードル弁を変位させ、噴射ノズルの燃料噴射孔を開閉させる。
この開閉制御によりエンジンの運転条件に応じて噴射ノズルから噴射される噴射燃料の量、タイミングなどが調整される。
噴射弁本体は、棒状を呈し、軸心に貫通したシリンダが設けられるとともに、シリンダに並行して高圧燃料流路、および低圧燃料流路が設けられた弁ボディを有する。弁ボディの先端には、噴射ノズルが、リテーニングナットにより同軸的に締結され、噴射弁本体を形成する。弁ボディの後部には、電磁弁などの駆動手段が、圧力制御手段を介して配置されている。
圧力制御手段は、圧力制御室、高圧絞り弁、および低圧絞り弁が設けられた絞り弁ボディを有し、弁ボディの後端面と同軸的に接合されている。
絞り弁ボディの下端面、および噴射ノズルの後端面は、それぞれ弁ボディの後端面と先端面とに圧接され、メタルシール面を構成し、高圧燃料流路を流れる高圧燃料がシールされている。
このメタルシールは、シール面を鏡面仕上げにすることで微視的な凹凸をなくし、さらに圧接により高い面圧を確保して、高圧燃料をシールするもので、新たにシール材など別物品を用いることもなく、簡便にシールを確保する手段として、広く使われている。
従来の燃料噴射弁は、図6(a)、(b)に示すように、弁ボディ20先端のシール面2Aと、ノズルボディ48後端のシール面4Aとの圧接により、メタルシールがなされている(以下、「ノズル部シール面」と略称する)。メタルシール面のシール圧は、リテーニングナットの締結軸力によって、確保されている。しかし、燃料圧力に対し、締結軸力が不足するときはシール圧が確保できず、高圧燃料は低圧側に漏れ、最悪は外部漏れを起こしてしまう恐れがある。また、図6(c)、(d)に示すように、弁ボディ20後端のシール面20Aと、絞り弁ボディ7下端のシール面7Aの圧接により、メタルシールがなされている(以下、「絞り弁部シール面」と略称する)。メタルシール面のシール圧は、可動子ホルダの締結軸力によって、確保されている。しかし、軸力が十分大きくとれずシール圧が不足するときは、高圧燃料は低圧側への内部漏れを起こし、最悪は高圧燃料圧が低下し、圧力制御手段の正常な作動ができなくなる恐れもある。
また、メタルシール面において、さらに高いシール圧を確保する場合、軸力アップをする代わりに、シール面の接合面積を少なくする方法がある。つまり、真実接触面積を減少させるための凹所6を、シール面に形成させることがある。凹所6とは、シール面より僅かな段差だけ座ぐり加工等で削り取った、凹んだ所のことで、これにより、当接する面積を減らして、所望の面圧を確保しようとするものである。しかし、凹所6の配置や大きさ、および数などを好適に設定することは難しく、コストアップの問題も懸念される。
十分なシール性を確保する上で、限られた軸力を大きな面圧に変えるシール面の形状設定は、高圧燃料下において重要なポイントとなる。
〔従来技術の不具合〕
従来の燃料噴射弁のシール性の不具合を、図6(a)、(b)に示す「ノズル部シール面」について説明する。弁ボディ20先端のシール面2Aとノズルボディ48後端のシール面4Aの当接するシール面を、それぞれ平面図にて示す。
シール面2Aには、中心にシリンダ21があり、そのシリンダ21を中心にした同心円上のほぼ対称位置に高圧燃料孔22Aと低圧燃料孔23Aが設けられ、これらはシリンダ21の中心から近からず、また遠からず十分なシール面積が確保される配置である。また、低圧燃料孔23Aは低圧燃料連通溝23Bによって、シリンダ21と連通されている。また、ノックピン91もしくはノック穴92の一対が、高圧燃料孔22Aと低圧燃料孔23Aとの同心円上に、ほぼ直行し、かつシリンダ21の中心線より少しオフセットされた位置に配設されている。これは回り止めと誤組付防止のためとなっている。よって高圧燃料孔22A、低圧燃料孔23A、ノックピン91もしくはノック穴92は、ほぼ等間隔に四方に配設され、十分なメタルシール面を有したシール面2Aを構成している。
一方、ノズルボディ48後端のシール面4Aには、シール面2Aと対称配置で同様に、中心にニードル穴45と高圧燃料通路孔46Aとノックピン91もしくはノック穴92の一対が配設され、十分なメタルシール面を有したシール面4Aを構成する。
この構成は、図6(c)、(d)に示す「絞り弁部シール面」の場合についても同様であり、詳しい説明は省略する。
また、「ノズル部シール面」について、該部からの高圧燃料の漏れは、極端に嫌われることより、高いシール性が求められ、シール面2Aもしくはシール面4Aには、凹所6が構成され、シール性を確保する場合がある。図6(a)の例では、弁ボディ20のシール面2Aに凹所6を構成したものを示すが、高圧燃料孔22Aと低圧燃料孔23Aとノックピン91もしくはノック穴92のほぼ等間隔に四方に配設された位置の中間(ほぼ45度ずらした)位置に、半楕円形状で長辺側の一方は外周部まで到達することなくほぼ中央まで伸び、また長辺側の他方は、シリンダ21に連通する形状で、また、短辺側は互いに繋がることなくほぼ等間隔に4箇所配されるような形状の凹所6が設けられている。この凹所6は、当接面の少なくも一方に構成されていればこと足りて、通常は加工が容易な方に実施される場合が多い。
図6(c)、(d)に示す「絞り弁部シール面」については、凹所6を設けない場合もある。これは、シール圧が不足しても僅かの内部漏れが生じるだけで、外部漏れの心配がないことと、コストアップを懸念する理由などによる。よって、図示例では、凹所6を設けない場合であり、詳細な説明は省略する。
しかるに、従来のシール面2Aは、凹所6がシリンダ21の中心に花びらを配したように、シリンダ21中心部から高圧燃料孔22Aと低圧燃料孔23Aとノックピン91もしくはノック穴92の中心をつなぐ円周方向に設けてあり、これによりシリンダ21中心近傍の面圧がその外周方向と比較して高くなっている。このため、この外周部面圧では、高圧燃料に対して、十分なシール性を欠く。この場合、燃料漏れを生じることがある。またリテーニングナット25の締増しにより軸力アップを図り、面圧の増加によって漏れ防止を狙っても、増加するのは凹所6のある中心部近傍が主であって、外周部はその効果が少なく、漏れ防止ができない場合があり、さらに、燃料圧力が高くなると、漏れが生じてしまう場合もある。
このように、従来形状の凹所6は、十分な外周部面圧が確保しにくく、また、軸力アップが、外周漏れ防止に繋がる外周部の面圧増加に効果的に作用していない不満がある。従来のコモンレールのように、圧力が150MPA以下の高圧燃料の場合には燃料漏れは生じなかったが、200MPA以上と高くなって、高圧燃料孔22Aから外側に高圧燃料が漏れる問題が生じるようになった。
なお、先行技術文献は記載しない。
近年、燃料噴射制御の精密化、噴霧燃料の微粒化の要請により、高圧燃料の圧力は、200MPA以上と高くなっており、高圧燃料が燃料噴射弁の外側に漏れるという問題が生じている。従来のシール面2Aにおいて、従来形状の凹所6では、外周部シール面の面圧が十分確保できない場合があり、また、面圧確保のために軸力をアップしても、外周漏れ防止に繋がる外周部の面圧アップに、効果的に作用しないことが多く、さらに、軸力アップし過ぎると各部の応力が上がることによる変形歪等の不具合が発生し、十分なシール性が確保できないという不満がある。また、中心側に設けた凹所6に代わって、外周側に好適な凹所6を配置し、外周部面圧を十分確保することは、できないことではないが、簡単なことでなく、幾多の試行が必要であり、また、コストアップに繋がるという問題が懸念される。
この200MPA以上と高くなった燃料高圧化による高圧燃料の外側に漏れる問題は、今後さらに高圧燃料化が進むと考えるとき、高圧燃料流路そのものの確実なシール性確保が課題となる。
本発明の目的は、特に高圧燃料流路の外周近傍に、高いシール面圧を効果的に付与し、高圧燃料のシールが確実にできる燃料噴射弁を提供することにある。
〔請求項1の手段〕
先端に噴射ノズルを連結した噴射弁本体と、噴射弁本体の後部に配置した圧力制御手段、および駆動手段とからなり、噴射弁本体は、中心部にシリンダが設けられるとともに、シリンダに並行して高圧燃料流路、および低圧燃料流路が設けられた弁ボディを有し、圧力制御手段は、それぞれシリンダ、高圧燃料流路、および低圧燃料流路に連通する圧力制御室、高圧絞り弁、および低圧絞り弁が設けられた絞り弁ボディを有し、弁ボディの後部に圧接シールされており、噴射ノズルは、それぞれシリンダ、高圧燃料流路に連通するニードル穴、高圧燃料孔が設けられたノズルボディを有し、弁ボディと同軸的に連結されて、弁ボディの先端面に圧接シールされており、かつ、圧接シールのシール圧を締結軸力で生じさせる燃料噴射弁において、
高圧燃料流路の連通部近傍に、連通部を囲むリング状に繋がったシール溝を設け、シール溝内にリング状ガスケットを装填したことを特徴とする形状を採用している。
この構成によれば、高圧燃料孔近傍のみに高圧燃料孔を囲むリング状の所定面圧のガスケットシールを形成できる。また、リング状のシール溝内にリング状ガスケットを装填し、締結軸力によりメタルタッチする限度まで圧接し、軸力を締切っているので、シール圧は、常に所定値を保持することができ、過度の軸力が掛かった場合でも、ガスケットはこれ以上圧縮したり、変形することはない。また、燃料圧の拡張力によるシール圧の除圧の影響もメタルタッチで締切られているので非常に小さい。これにより、簡単にかつ効果的に高圧燃料外部漏れを防止することができる。
〔請求項2の手段〕
請求項1に記載の燃料噴射弁において、ガスケットが、弁ボディまたは絞り弁ボディまたはノズルボディに比べて柔らかい材料で構成されていることを特徴とする形状を採用している。
この構成によれば、所定の締結軸力に対し、ガスケットは、ボディ側シール面に微視的な凹凸があったとしても、柔らかいことによりこの凹凸になじんで(塑性)変形し易く、隙間の全くないシール面を構成でき、所定の高さまで圧縮されて、所定のシール圧を発生する。これにより、簡単にかつ効果的に高圧燃料外部漏れを防止することができる。
〔請求項3の手段〕
請求項1または2に記載の燃料噴射弁において、リング状ガスケットは、外側に凸、内側に凹となる断面形状を有することを特徴とする燃料噴射弁。
この構成によれば、高圧燃料孔近傍のみに高圧燃料孔を囲むリング状の所定面圧のガスケットシールを形成でき、材料の圧縮弾性に加え、形状による弾性がプラスでき、締結軸力によるシール圧はアップできる。また、高圧燃料圧力が、ガスケット内面に作用すると、その内圧がガスケットをシール面に密着させるように押し付けるので、シール圧は増加する。燃料が高圧化になればなるほどその効果は増大し、シール性を向上することができる。これにより、簡単にかつ効果的に高圧燃料外部漏れを防止することができる。
〔請求項4の手段〕
請求項1または2に記載の燃料噴射弁において、高圧燃料流路の連通部と軸対称部分に、同形状のガスケットを設けたことを特徴とする形状を採用している。
この構成によれば、当接するシール面は、軸力により均等に圧縮力が作用し、ガスケットのシール面には均等に面圧が配分され、偏った歪が発生することもないので、所定の軸力を最も効果的に変え、確実なシールを実現できるという特徴を有する。これにより、効果的に高圧燃料の外部漏れを防止することができる。
〔請求項5の手段〕
請求項2に記載の燃料噴射弁において、ガスケットが、弁ボディまたは絞り弁ボディまたはノズルボディに比べて、表面は柔らかく、内部は略同等以下の弾性を有し、かつ、圧縮永久歪も弁ボディまたは絞り弁ボディまたはノズルボディと略同等の材料で構成されていることを特徴とする形状を採用している。
この構成によれば、所定の締結軸力に対し、ガスケットは、シール面に微視的な凹凸があったとしても、表面が柔らかいことによりこの凹凸になじんで(塑性)変形し、隙間の全くないシール面を構成する。かつ内部は弁ボディまたは絞り弁ボディまたはノズルボディと略同等で、適度な弾性を持つことにより、締結軸力で押し潰れることなく圧縮復元力を有し、確実にシール圧を形成することができる。また、高圧燃料圧は締結軸力を除圧する方向に作用するが、除圧が生じても、圧縮永久歪が小さいので十分シール圧は確保でき、これにより、効果的に高圧燃料の外部漏れを防止することができる。
この発明の最良の実施形態を、図に示す実施例1とともに説明する。
〔実施例1の構成〕
図1(a)は、エンジンの燃焼室内へ間欠的に燃料を噴射する電磁制御式(ピエゾ式も含む)の燃料噴射弁1を示し、図1(b)は燃料噴射弁1の要部である弁ボディと圧力制御手段とのシール部(絞り弁部シール面)を示し、図1(c)は燃料噴射弁1の要部である弁ボディとノズルボディとのシール部(ノズル部シール面)を示す。
燃料噴射弁1は、ディーゼルエンジン用の蓄圧(コモンレール)式燃料噴射装置に用いられ、図示しないコモンレールから供給される高圧燃料をエンジンの燃焼室に噴射する。
燃料噴射弁1は噴射弁本体2と、該噴射弁本体2の上端部に装着した電磁弁(駆動手段に相当)3と、下端に締結した燃料の噴射ノズル4とからなる。
電磁弁3は、図示しないエンジン制御装置(ECU)からのワイヤーハーネスに接続されるコネクタCが設けられており、ECUから送出される制御信号により制御される。
噴射弁本体2は、棒状を呈し、軸心に貫通したシリンダ21が設けられるとともに、シリンダ21に並行して高圧燃料流路22、および低圧燃料流路23が設けられた弁ボディ20を有する。
弁ボディ20の上端には、円筒状の電磁弁設置室10が設けられ、電磁弁設置室10には電磁弁3が装着されてリテーニングナット24により固定されている。弁ボディ20の下端には、噴射ノズル4が、リテーニングナット25により同軸的に締結されている。弁ボディ20の上部には斜め上方に傾斜して、いずれも筒状のインレット部26、およびアウトレット部27が設けられている。
電磁弁3は、電磁弁設置室10の上部に設置された電磁ソレノイド30、および電磁弁設置室10の下部に設置された開閉弁機構50からなる。開閉弁機構50は、可動子5と、可動子5を保持する可動子ホルダ8とを有する。
可動子ホルダ8の下側(電磁弁設置室10の下端部)はやや小径のプレート室70となっており、略円盤状の絞り弁ボディ7が収容されている。
開閉弁機構50の開閉弁動作と絞り弁ボディ7の圧力調整動作を併せて、圧力制御手段と称する。
電磁ソレノイド30は、強磁性材製で上端鍔状円筒32の外周に、複合磁性材を積層した磁気コア33を配し、磁気コア33の外周を強磁性材製外筒34で包囲し、磁気コア33内に電磁コイル35を配設した構造を有する。電磁ソレノイド30の下面は、可動子5の吸引面となっており、円筒32の下端面は、可動子5が衝突(当接)するストッパー面となっている。
可動子5は、平板部51およびシャフト部52とを有し、平板部51は、その上面が略平面であり、電磁ソレノイド30の下面に吸着される吸着面となっており、可動室80に配されている。シャフト部52は円柱状を呈し、可動子ホルダ8の中心穴に摺動自在に嵌め込まれている。可動子ホルダ8は、電磁弁設置室10の内周に螺合され、締結軸力を生じ、絞り弁ボディ7をプレート室70の端面に接合させている。
シャフト部52の下端面の中心には、円筒部および円錐部からなる弁体室77が設けられ、弁体室77には窒化珪素製のボール弁78が収容されている。ボール弁78は上面が球状であるが、下面は絞り弁ボディ7の上面の出口オリフィス73を塞ぐシール平面状となっている。
可動子5は、上端鍔状円筒32内に配されたスプリング36で下方(閉弁方向)に付勢され、電磁ソレノイド30で生じた磁力により上方(開弁方向)に吸引されて上下に変位する。
電磁ソレノイド30、および開閉弁機構50が収容されている電磁弁設置室10は、低圧燃料流路23に連結した流出路13に連通しており、低圧燃料油で満たされている。このため、可動子5の上下方向の変位には、主に平板部51に低圧燃料油の抵抗が生じ、電磁弁3の応答性に影響を与える。
また、可動子5は、上下動に伴い衝撃が加わるため、耐久性の観点から重要な構成部分でもある。このことを考慮した好適な形状、寸法が採用されている。
絞り弁ボディ7は、その円周端面の一部が切り欠いてある略円形の円盤であり、その下端のシール面7Aには、その中心に円錐形状の凹所が形成され、圧力制御室40を構成し、この中心の上面側に出口オリフィス73が形成されている。また、圧力制御室40の円錐斜面に傾斜した連通孔40Aが開けられており、入口オリフィス74を介して、シール面7Aにてインレット部26の入口流路12と連通する高圧燃料連通孔74Aを構成している。
図2は、本発明の実施例1の「絞り弁部のシール面」(図1(b)のA−A断面)を示す。図2(a)は、絞り弁ボディ7下端のシール面7Aを示す平面図であるが、シール面7Aには高圧燃料連通孔74Aの、軸心に対する対称位置に低圧燃料連通孔23Dと、略直交してノックピン91もしくはノック穴92の一対が、弁ボディ20の高圧燃料孔12Aと低圧燃料孔23C、およびノックピン91もしくはノック穴92とそれぞれ中心を維持して、同軸に接合可能な如く配置され、均一なシール面7Aを構成する。
また、図2(b)は、絞り弁ボディ7下端のシール面7Aと当接する弁ボディ20後端のシール面20Aの平面図であるが、中心にシリンダ21が開口し、その回りに高圧燃料の入口流路となる高圧燃料孔12Aとその対称位置に低圧燃料孔23C、およびノックピン91もしくはノック穴92の一対が、シール面7Aの高圧燃料連通孔74Aと低圧燃料連通孔23D、およびノックピン91もしくはノック穴92の一対と、それぞれ中心を維持して、同軸に接合可能な如く配設され、均一なシール面20Aを構成する。
また、高圧燃料孔12Aの周囲近傍において、入口流路12を囲むリング状のシール溝63が所定の深さと幅を有した略矩形断面形状にて配設され、この中に所定の高さと幅を有したリング状ガスケット61が装填されている。
然るに、これら接合面は互いに当接され、螺合する可動子ホルダ8の締結軸力によって、所定の高さと幅を有するリング状ガスケット61は、シール溝63に押し込まれ、絞り弁ボディ7のシール面7Aが弁ボディ20のシール面20Aにメタルタッチするまで変形されて、リング状に連続したシール面を構成し、所定のシール圧を発生させ、これを保持している。
これら接合面は、互いに当接されシール面を構成し、シール圧を発生させるので、リング状シール溝63は、弁ボディ20に限定することなく、絞り弁ボディ7に設けられていてもよく、また、弁ボディ20と絞り弁ボディ7とのそれぞれに跨って必要な深さと幅を設けて構成されていても良い。
図1において、インレット部26の内部には、高圧燃料流路22に連通した高圧燃料流入路11、および高圧燃料流入路11とプレート室70とを連通する入口流路12が形成されている。コモンレールから供給された高圧燃料の燃料圧は、高圧燃料流入路11、入口流路12、入口オリフィス74を介して、圧力制御室40に導かれている。
アウトレット部27にはプレート室70を経て低圧燃料流路23に連通した流出路13が設けられており、燃料噴射弁1内の電磁弁設置室10やプレート室70の余剰燃料を外部に排出する排出流路を形成している。
弁ボディ20の中心には、シリンダ21が貫通している。シリンダ21は、内径のわずかに異なる摺動部21Aと受圧部21Bとばね受部21Cとからなり、制御ピストン41を収容している。
制御ピストン41は、シリンダ21の構成に対応して、摺動部41Aと受圧部41Bとばね部41Cとからなる円筒形の上下動ピストンである。制御ピストン41の上端は円錐台形状を有し、絞り弁ボディ7に形成された圧力制御室40に適切な隙間(空間)を形成して配設されている。圧力制御室40の圧力に応じ、制御ピストン41は下方に押され、摺動部41Aを摺動して移動する。一方、制御ピストン41の下端は、噴射ノズル4内に収容されるニードル弁42の上端部に当接している。
また、弁ボディ20にはインレット部26の高圧燃料流入路11と連通する高圧燃料流路22が、シリンダ21と並行に独立して設けられ、弁ボディ20先端のシール面2Aに開口し、高圧燃料孔22Aを形成する。
アウトレット部27の流出路13と連通する低圧燃料流路23が、シリンダ21に対向するほぼ反対位置に並行して設けられ、弁ボディ20の下端面に開口し、低圧燃料孔23Aを形成する。また、低圧燃料孔23Aにはさらに前記シリンダ21の中心に向かう低圧燃料連通溝23Bが設けられ、シリンダ21内と連通している。
そして、これら高圧燃料孔22Aと低圧燃料孔23Aと低圧燃料連通溝23Bを含む弁ボディ20の先端は均一なシール面2Aを構成し、噴射ノズル4後端のシール面4Aと当接する。
弁ボディ20の下端面に開口するシリンダ21のばね受部21Cには、ばね受座44Aと軸受座44Bとともに、スプリング44が介装されている。
噴射ノズル4は大径部のノズルボディ48および小径部のノズル49を有する二段筒型形状であり、該段差部にリテーニングナット25を掛け、弁ボディ20の下端外形部に構成されたねじに締結し、軸力すなわちシール圧を発生する構成となっている。ノズルボディ48の中心に、ニードル弁42を収容するニードル穴45が、内径がわずかに異なる摺動部45Aと燃料通路45Bとから構成される。また、燃料通路45Bの上流側のニードル穴の中間位置には径大の大容積を有する袋穴部45Cが、傾斜する高圧燃料通路46に貫通交差する構成で設けられている。
また、燃料通路45Bの下流側にはニードル穴45の下端を塞ぐ、適度に薄肉のテーパ構造を有するノズル先端室49Aが構成され、ノズル先端室49Aには1個もしくは複数個適切な数の噴射孔43が適切な位置に設けられ、高圧燃料を噴霧する。
傾斜する高圧燃料通路46は、ノズルボディ48の後端面に開口し、高圧燃料通路孔46Aを形成する。そして、この高圧燃料通路孔46Aを含むノズルボディ48の後端面は均一なシール面4Aを構成し、弁ボディ20先端のシール面2Aと当接する。
図3は、本発明の実施例1の「ノズル部シール面」(図1(c)のB-B断面)を示す。図3(a)は弁ボディ20先端のシール面2Aの平面図であり、図3(b)はノズルボディ48後端のシール面4Aの平面図である。シール面2Aは、中心にシリンダ21、および高圧燃料孔22Aと低圧燃料孔23Aとノックピン91もしくはノック穴92のほぼ等間隔に四方に配設された、均一なシール面2Aを構成している。また、シール面4Aは、シール面2Aの各連通孔と同心を維持し、同軸で当接するために、ニードル穴45、および高圧燃料通路孔46Aとノックピン91もしくはノック穴92が配設されている。
シール面4Aには、凹所6を配設する代わりに、高い面圧確保が必要となる高圧燃料通路孔46Aの周囲近傍に、リング状シール溝64を高圧燃料通路孔46Aを囲むように、所定の深さと幅を有した略矩形断面形状にて配設し、そのシール溝64内に所定の高さと幅を有するリング状ガスケット62が装填されている。そして、シール面2A,4Aが当接され、所定の軸力によって、シール溝64内に装填されたリング状ガスケット62は、シール溝64内に押し込まれ、それぞれのシール面2A、4Aがメタルタッチするまで圧縮変形を起こす。このリング状ガスケット62は、ノズルボディ48に比べ、その表面は柔らかく、内部は略同等な弾性を有しているので、シール面での微視的な凹凸になじんで(塑性)変形し、微小な隙間までも完全に封止し、また十分な圧縮復元力を発生することができるので、確実なシール圧を有するシール面を構成している。また、リング状ガスケット62は、所定の圧縮代を有してシール溝64内に密閉されているので、これ以上軸力がアップしても、リング状ガスケット62はこれ以上変形されることもなく、メタルタッチ部の面圧だけが上昇する構成となっている。つまり、リング状ガスケット62は所定のシール圧を保持して、軸力によって締切られた一つの独立したシール構造を構成している。
リング状シール溝64は、シール面4Aに限定することなく、弁ボディ20のシール面2Aに設けられていてもよく、また、シール面4Aとシール面2Aそれぞれに跨って必要な深さと幅を有して設けられていても良い。
図1において、ニードル弁42は概ね円筒形状で、ニードル穴45の構成に対応し、摺動自在に保持する摺動部42Aと受圧段差を構成する僅かに径小であるニードル部42Bとから構成され、ニードル部42Bの先端は適切な円錐面を有するニードル弁構造を持ち、その上下動によって、テーパ構造を有するノズル先端室49Aの噴射孔43を塞いだり、開放したりする構成となっている。また、ニードル弁42の上端は、摺動部42Aより径小である当接凸部42Cが軸受座44Bに装着され、スプリング44を同心に保持するとともに、スプリング44よりニードル弁42は下方(噴射孔43を塞ぐ方向)に付勢される。
ニードル弁42は、圧力制御室40の燃料圧およびスプリング44のバネ荷重による下方への付勢力と、噴射ノズル4内の燃料圧によりニードル弁42に加わる上方への付勢力とのバランスで上下動し、噴射孔43を開閉する。すなわち、圧力制御室40が低圧になったとき、制御ピストン41とニードル弁42とが上方に移動し、噴射孔43が開いて、高圧燃料流路22から噴射ノズル4に供給された高圧燃料が燃焼室に噴射される。
〔実施例1の作用〕
実施例1の燃料噴射弁1の作用を、図1〜3を用いて説明する。
この燃料噴射弁1は、電磁ソレノイド30へ通電されると、可動子5は電磁力により吸引されて上方に移動し、平板部51が円筒32の下面(ストッパー面)に衝突して停止する。可動子5に連動してボール弁78は上位に変位し、出口オリフィス73が開放されて低圧燃料の流出路13に連通するため、圧力制御室40内の圧力は瞬時低圧となって、シリンダ21内の制御ピストン41に作用する圧力バランスが崩れ、制御ピストン41は上方へ移動し、これに伴いニードル穴45内のニードル弁42は、袋穴部45Cの高圧燃料圧によって、上方へ移動し、噴射孔43を開放するとともに、袋穴部45Cからの高圧燃料が噴射孔43から噴霧する。このときシール面4A、およびシール面7Aは確実なシール性が保持されているので、高圧燃料による漏れを生じることなく、必要量の高圧燃料を噴射孔43に供給する。そして、電磁ソレノイド30の通電がオフされると、可動子5がスプリング36の付勢力で下方に移動し、ボール弁78が出口オリフィス73を塞ぎ、入口オリフィス74から高圧燃料圧が圧力制御室40に作用し、制御ピストン41は下方に移動し、同様にニードル弁42も下方に移動し、噴射孔43を塞いで、燃料の噴射は終了する。
〔実施例1の効果〕
本実施例では、先端に噴射ノズル4を連結した噴射弁本体2と、噴射弁本体2の後部に配置した圧力制御手段と駆動手段である電磁弁3とからなり、噴射弁本体2は、中心部にシリンダ21が設けられるとともに、シリンダ21に並行して高圧燃料流路22、および低圧燃料流路23が設けられた弁ボディ20を有し、噴射ノズル4は、それぞれシリンダ21、高圧燃料流路22、および低圧燃料流路23に中心を維持して連通するニードル穴45、高圧燃料通路孔46Aが設けられたノズルボディ48を有し、また、圧力制御手段は、それぞれシリンダ21、高圧燃料流路22、および低圧燃料流路23に中心を維持して連通する圧力制御室40、高圧燃料連通孔74A、および低圧燃料連通孔23Dが設けられた絞り弁ボディ7を有し、かつ、高圧燃料通路孔46Aの回りに高圧燃料通路孔46Aを囲むリング状ガスケット62が配設され、また、高圧燃料連通孔74Aの回りに高圧燃料連通孔74Aを囲むリング状ガスケット61が配設され、それぞれ当接されて、リング状に連続したシール溝63内に密閉された締切り形ガスケットシールを構成しているので、(比較的少ない)所定の軸力で、高圧燃料に対し、十分なシール圧を発生させることができ、簡単に、効果的に、かつ確実に漏れの防止が可能となる。
また、締結軸力の変動、例えば軸力がアップしても、軸力はメタルタッチのシール面の面圧を高めるのみで、締切り形のガスケットには圧縮力は負荷されず、よって、へたることもなく所定のシール圧を維持し、耐久性に優れたシール性を持つ。また、軸力がダウンしても、圧縮永久歪は小さいので、シール圧は所定の面圧を下回ることなく維持できて、常にシール性は確保できる。さらに、高圧の燃料圧力による拡張力は、軸力と反対向きに軸力を除圧するように作用して、漏れを誘起することもあるが、本発明では締切り形ガスケットシールを構成しているので、メタルタッチのシール面圧より高圧な燃料圧力であっても、除圧の影響は極めて少なく、常にシール性は確保できるという特徴がある。
〔実施例2の構成〕
図4は、本発明の実施例2の「ノズル部シール面」の断面図を示す。第2実施例において、実施例1と異なるのは、リング状ガスケットの断面形状が、外側に凸で、内側に凹となる形状である。シール面4Aとシール面2Aには、凹所6を配設する代わりに、高い面圧確保が必要となる高圧燃料通路孔46Aの周囲近傍に、リング状シール溝66および67を高圧燃料通路孔46Aを囲むように、それぞれ対向して、所定の深さと幅を有する略矩形断面形状で配設し、その溝66,67内に所定の断面形状を有するリング状ガスケット65が装填されている。そして、シール面2A,4Aが当接され、適度な軸力によって、シール溝66、67内に装填されたリング状ガスケット65は、シール溝66,67内に押し込まれて、それぞれのシール面2A,4Aがメタルタッチするまで圧縮変形を起こす。このリング状ガスケット65は、ノズルボディ48や弁ボディ20に比べ、その表面は柔らかく、内部は略同等な弾性を有しているので、シール面での微視的な凹凸になじんで(塑性)変形し、微小な隙間までも完全に封止し、また十分な圧縮復元力を発生することができので、確実なシール圧を有するシール面を、図示例ではシール溝底に構成している。
また、リング状ガスケット65は、所定の圧縮代を有してシール溝66,67内に配設されているので、これ以上軸力がアップしても、リング状ガスケット65は、これ以上変形されることもなく、メタルタッチ部の面圧だけが上昇する構成となっている。また、逆に軸力がダウンしてメタルタッチ部の面圧が下がって、高圧燃料圧力がそのメタルシール面圧を上回れば、高圧燃料はシール溝66,67まで漏れることになるが、漏れてもこの内側に凹形状のリング状ガスケット65の内面に燃料圧が作用し、リング状ガスケット65は軸方向に押圧が作用し、シール圧は増加する構成である。つまり、リング状ガスケット65は所定のシール圧を保持して、軸力によって締切られた一つの独立したシール溝66,67内に、シール構造を構成しているが、高圧燃料が所定の軸力以上に大きくなっても、高圧燃料圧力がリング状ガスケット65内面に作用し、シール圧を増加させる自緊形のシール構成となっている。然るに、この構成のシール面に、高圧燃料の内圧による拡張力が作用し、軸力を除圧することが起こっても、メタルシール面のシール圧が、除圧された軸力による面圧よりも大きければ影響は少ないし、高圧燃料圧が非常に高くなって、大きな除圧が生じ、シール圧が破れて漏れが生じても、自緊作用で高圧燃料圧がシール圧に付加されるので、高いシール性が確保できる。
図示例では、リング状シール溝66,67は、ノズルボディ48後端のシール面4Aおよび弁ボディ20先端のシール面2Aそれぞれに配設され、所定の溝深さと幅を構成しているが、特にこれに限定することなく、弁ボディ20先端のシール面2Aだけに設けられていてもよく、また、ノズルボディ48後端のシール面4Aだけに設けられていても良い。
〔実施例2の効果〕
第2実施例の燃料噴射弁1は、高圧燃料通路46の連通部近傍に、連通部を囲むリング状に繋がったシール溝66,67を設け、その断面形状が、外側に凸、内側に凹となる形状を有するリング状ガスケット65を装填したことを特徴とする形状を採用している。
この構成によれば、高圧燃料流路の連通部近傍のみに連通部を囲むリング状の高面圧シール面を簡単に形成することができ、かつリング状ガスケット65の断面形状を外側に凸、内側に凹となる形状に構成しているので、材料による弾性に加え、形状による弾性がプラスでき、シール圧はアップできる。また、高圧燃料の内圧がこの外側に凸、内側に凹となる形状のガスケット内面に作用した場合、その圧力が、リング状ガスケット65をシール面に密着させるように押し付けるので、シール圧が増加される。燃料が高圧化すればするほどそのシール圧が増加し、シール性を向上することができる。これにより、効果的に高圧燃料外部漏れを防止することができる。
〔実施例1〜2の効果〕
以上、実施例1〜2に示したシール面構成を有することにより、軸力を極端に大きくすることなく確実にシール性が確保でき、また、軸力が変動しても、除圧が生じても常に所定のシール圧が維持できること、また、高圧燃料の圧力が高くなってもその圧力に対抗してシール圧が高められ、シール性が常に確保できるという構成上の特徴と、高圧燃料の流れる通路近傍だけを、それを囲むリング状のガスケットの面圧のみでシールするという単純な構成をしているので、所望のシール圧に対して、ガスケットの寸法等形状決定が、幾多の試行を必要とせずに、簡単に、また、自由度をもって設計計算できるという管理上の優れた特徴もある。
〔実施例3の構成〕
図5は、実施例3の「ノズル部シール面」を示し、図5(a)は弁ボディ20先端のシール面2Aの平面図を、図5(b)はノズルボディ48後端のシール面4Aの平面図を示す。シール面2Aは、中心にシリンダ21、および高圧燃料孔22Aと低圧燃料孔23Aとノック穴92もしくはノックピン91のほぼ等間隔に四方に配設された、均一なシール面2Aを構成している。また、シール面4Aは、シール面2Aの各連通孔と同心を維持し、同軸で当接するために、ニードル穴45、および高圧燃料通路孔46Aとノックピン91もしくはノック穴92が配設され、均一なシール面4Aを構成している。
シール面4Aには、凹所6を配設する代わりに、高い面圧確保が必要となる高圧燃料通路孔46Aの周囲近傍に、リング状シール溝64を高圧燃料通路孔46Aを囲むように、所定の深さと幅を有する略矩形断面形状で配設し、そのシール溝64内に所定の高さと幅を有するリング状ガスケット62が装填されている。そして、シール面が当接され、所定の軸力によって、シール溝64内に装填されたリング状ガスケット62は、シール溝64内に押し込まれて、それぞれのシール面がメタルタッチするまで圧縮変形を起こす。このリング状ガスケット62は、ノズルボディ48に比べ、その表面は柔らかく、内部は略同等な弾性を有しているので、シール面での微視的な凹凸になじんで(塑性)変形し、微小な隙間までも完全に封止し、また十分な圧縮復元力を発生することができるので、確実なシール圧を有するシール面を構成している。また、リング状ガスケット62は、所定の圧縮代を有してシール溝64内に密閉されているので、これ以上軸力がアップしても、リング状ガスケット62はこれ以上変形されることもなく、メタルタッチ部の面圧だけが上昇する構成となっている。つまり、ガスケットは所定のシール圧を保持して、軸力によって締切られた一つの独立したシール構造を構成している。
また、シール面4Aには、高圧燃料通路孔46Aのニードル穴45を中心とした対称位置(シール面2Aにおいて、低圧燃料孔23Aの中心位置に相当)に、高圧燃料通路孔46Aの周囲近傍に配設したリング状シール溝64とリング状ガスケット62と同じ構成をもって、ダミー用のリング状ガスケット68が配設されている。このシール溝64内に装填されたリング状ガスケット68は、高圧燃料通路孔46Aの周囲近傍のガスケット同様、適度な軸力によって、シール溝64内に押し込まれ、つぶされてそれぞれのシール面がメタルタッチするまで圧縮変形を起こす構成となっている。
当該実施例においても、ダミー用のガスケットを含むリング状シール溝の配設は、シール面4Aに限定することなく、弁ボディ20先端のシール面2Aに設けられていてもよく、また、シール面4Aとシール面2Aそれぞれに跨って必要な深さに設けられていても良い。要は高圧燃料通路孔46Aと対をなして同じ構成のリング状シール溝であれば、どちらのシール面に配設されていても構わないし、また、ダミー用のシール溝やガスケット形状が、略同じであれば、厳密に一致していなくても構わない。
〔実施例3の効果〕
この構成により、当接するシール面は、軸力により均等に圧縮力が作用し、ガスケットのシール面には均等に面圧が配分され、偏った歪が発生することもないので、所定の軸力を最も効果的なシール圧に変え、確実なシールを実現できるという特徴を有する。
〔変形例〕
本実施例1〜3では、「ノズル部シール面」を主体に説明したが、「絞り弁部シール面」においても同様実施可能な構成である。好ましくは、両シール面共実施することが、よりよいことであるが、凹所設定法ほどではないにせよ、何がしかのコストアップが懸念されるので、燃料圧の高圧化の高まりに応じて、選択することが好ましい。
また、リング状ガスケットは、その特性要求から、金属材料として銅や銅合金を想定しているが、これら単一材料に限らず、二層もしくは多層クラッド材であっても構わないし、複合材料や非金属材料であっても構わない。
また、リング状シール溝は、弁ボディ20側にあっても、反対に当接する相手のノズルボディ48や絞り弁ボディ7にあっても構わないし、また、両方に跨ってシール溝が構成されていてもよく、加工が容易で、シール性が確実に確保できるならばどちらにあっても構わない。
また、ガスケットの断面形状は、略矩形状が好ましいが、円形や楕円形であっても、シール溝と対応して十分なシール圧が構成できる形であれば、特に形を限定するものではなく、また、リング状の外側に凸、内側に凹となる形状は、必ずしも厳密なものでなく、「C字形」や「くの字形」であってもよく、最低限自緊作用を呈する形状であればこれに拘らない。
また、ノック穴およびノックピンは対を成す構成で、ノズルボディ48側にノックピンがあって、弁ボディ20側にノック穴があっても、その逆でもよく、またノック穴とノックピン一対が互いに逆な構成でもよく、回り止めと誤組付防止を図るものなら、これに限定されることはない。
また、本実施例は、電磁ソレノイド30の駆動源を採用した構成を記載したが、他の駆動源、例えば、ピエゾ式による駆動源でも可能で、要は電気入力信号に応じ、ニードル弁42を適正に上下作動させるものならこれに限定するものでない。
(a)は燃料噴射弁の断面図であり、(b)は「絞り弁シール面」の拡大断面図であり、(c)は「ノズル部シール面」の拡大断面図である(実施例1)。 (a)は絞り弁ボディのシール面の平面図であり、(b)は弁ボディのシール面の平面図である(実施例1)。 (a)は弁ボディのシール面の平面図であり、(b)はノズルボディのシール面の平面図である(実施例1)。 ノズルボディと弁ボディとのシール面の拡大断面図である(実施例2)。 (a)は弁ボディのシール面の平面図であり、(b)はノズルボディのシール面の平面図である(実施例3)。 (a)は、ノズルボディと弁ボディとのシール面の平面図であり、(b)は絞り弁ボディと弁ボディとのシール面の平面図である(従来例)。
符号の説明
1 燃料噴射弁
2 噴射弁本体
2A 弁ボディ先端のシール面
20 弁ボディ
20A 弁ボディ後端のシール面
21 シリンダ
22 高圧燃料流路
22A 高圧燃料孔
23 低圧燃料流路
23A 低圧燃料孔
24 リテーニングナット
25 リテーニングナット
3 電磁弁(駆動手段)
30 電磁ソレノイド
35 電磁コイル
36 スプリング
4 噴射ノズル
4A ノズルボディ後端のシール面
41 制御ピストン
42 ニードル弁
43 噴射孔
44 スプリング
45 ニードル穴
46 高圧燃料通路
46A 高圧燃料通路孔
48 ノズルボディ
49 ノズル
5 可動子
6 凹所
61 リング状ガスケット
62 リング状ガスケット
63 リング状シール溝
64 リング状シール溝
65 リング状ガスケット
66 リング状シール溝
67 リング状シール溝
68 リング状ガスケット
7 絞り弁ボディ
7A 絞り弁ボディ下端のシール面
70 プレート室
73 出口オリフィス(低圧絞り弁)
74 入口オリフィス(高圧絞り弁)
74A 高圧燃料連通孔
8 可動子ホルダ

Claims (5)

  1. 先端に噴射ノズルを連結した噴射弁本体と、該噴射弁本体の後部に配置した圧力制御手段、および駆動手段とからなり、
    前記噴射弁本体は、中心部にシリンダが設けられるとともに、該シリンダに並行して高圧燃料流路、および低圧燃料流路が設けられた弁ボディを有し、
    前記圧力制御手段は、それぞれ前記シリンダ、高圧燃料流路、および低圧燃料流路に連通する圧力制御室、高圧絞り弁、および低圧絞り弁が設けられた絞り弁ボディを有し、前記弁ボディの後部に圧接シールされており、
    前記噴射ノズルは、それぞれ前記シリンダ、高圧燃料流路に連通するニードル穴、高圧燃料孔が設けられたノズルボディを有し、前記弁ボディと同軸的に連結されて、前記弁ボディの先端面に圧接シールされており、
    かつ、該圧接シールのシール圧を締結軸力で生じさせる燃料噴射弁において、
    前記高圧燃料流路の連通部近傍に、該連通部を囲むリング状に繋がったシール溝を設け、該シール溝内にリング状ガスケットを装填したことを特徴とする燃料噴射弁。
  2. 請求項1に記載の燃料噴射弁において、前記ガスケットが、前記弁ボディまたは前記絞り弁ボディまたは前記ノズルボディに比べて柔らかい材料で構成されていることを特徴とする燃料噴射弁。
  3. 請求項1または2に記載の燃料噴射弁において、前記リング状ガスケットは、外側に凸、内側に凹となる断面形状を有することを特徴とする燃料噴射弁。
  4. 請求項1または2に記載の燃料噴射弁において、前記高圧燃料流路の連通部と軸対称部分に、同形状のガスケットを設けたことを特徴とする燃料噴射弁。
  5. 請求項2に記載の燃料噴射弁において、前記ガスケットが、前記弁ボディまたは前記絞り弁ボディまたは前記ノズルボディに比べて、表面は柔らかく、内部は略同等以下の弾性を有し、かつ、圧縮永久歪も前記弁ボディまたは前記絞り弁ボディまたは前記ノズルボディと略同等の材料で構成されていることを特徴とする燃料噴射弁。
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