JP2006213983A - マグネシウム合金軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】マグネシウムの材料強度を確保しつつ、高負荷、高回転の使用条件において、摺動面の摩耗を低減すると共に摺動面の耐焼付き性を向上することができるマグネシウム合金軸受を提供する。
【解決手段】 軸受の摺動面の少なくとも一部が、マグネシウムにアルミニウム又はスズのいずれか一方又は双方を含有したマグネシウム合金材料からなるマグネシウム合金軸受であって、このマグネシウム合金材料のアルミニウムの含有率が、0.5wt%から12wt%、スズの含有率が、0.5wt%から15wt%である。また、このマグネシウム合金材料は、好ましくは、ケイ素を0.01wt%から0.5wt%で含有してなる。さらに、このマグネシウム合金軸受は、その摺動面に、ポリアミドイミド樹脂に、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化珪素、及びこれらの混合物からなる群から選択される硬質粒子を、0.5wt%から20wt%含有した樹脂を、被覆してなる。
【選択図】 図1
【解決手段】 軸受の摺動面の少なくとも一部が、マグネシウムにアルミニウム又はスズのいずれか一方又は双方を含有したマグネシウム合金材料からなるマグネシウム合金軸受であって、このマグネシウム合金材料のアルミニウムの含有率が、0.5wt%から12wt%、スズの含有率が、0.5wt%から15wt%である。また、このマグネシウム合金材料は、好ましくは、ケイ素を0.01wt%から0.5wt%で含有してなる。さらに、このマグネシウム合金軸受は、その摺動面に、ポリアミドイミド樹脂に、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化珪素、及びこれらの混合物からなる群から選択される硬質粒子を、0.5wt%から20wt%含有した樹脂を、被覆してなる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、軸受の摺動面がマグネシウム合金材料からなる軸受に係り、特に、このマグネシウム合金材料に所定の元素を含有することにより、軸受の摺動性が向上し、摺動面の焼付き及び摩耗が抑制されるマグネシウム合金軸受に関する。
従来から、マグネシウムは、鉄、アルミニウムなどの他の金属に比べて比重が小さく、また、衝撃荷重などの荷重に対しても適度な材料強度を有するので、機械部材を軽量化するために利用されており、近年では自動車を軽量化する素材としても、注目を集めている。しかし、この金属材料は、初期馴染みに適度な表面硬度(60Hv程度)を有しているが、フリクションが高く凝着摩耗しやすいので、例えば軸受などの摺動面を有した機械部材に用いるには適していなかった。
そこで、このようなマグネシウムの凝着摩耗を低減するために、例えば、マグネシウム粉にグラファイト粉を添加して混合粉とし、この混合粉を圧粉成形し、さらに不活性雰囲気で焼結させた軸受材料の製造方法が提案されている(特許文献1)。
しかし、上述したような製造方法により製造した軸受材料は、マグネシウムの組織の粒界に介在したグラファイトが、軸受の摺動面に対して摺動時に固体潤滑剤として作用するので、軸受の摺動面の焼付きを低減し、軸受の摺動面の凝着摩耗を抑制することができるが、このグラファイトは、圧粉成形時にマグネシウム粉の結合に寄与しないので、従来のマグネシウム材料に比べてその材料強度を低下させてしまう。そして、このような軸受材料を、例えばエンジンのコンロッド軸受などの高荷重、高回転の条件下で使用する軸受材料として、適用することは、難しい。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、マグネシウムの材料強度を確保しつつ、高負荷、高回転の使用環境においても、摺動面の摩耗を低減すると共に摺動面の耐焼付き性を向上することができるマグネシウム合金軸受を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく多くの実験と研究を行うことにより、マグネシウムにアルミニウム又はスズを添加することにより得られたマグネシウム合金材料は、この金属添加前のマグネシウムの材料強度を確保しつつ、摺動性を向上させることができ、さらには、軸受に必要な表面硬度(40から60Hv)を有することから、高荷重、高回転の条件下で好適に使用可能な軸受の材料であるとの知見を得た。
本発明は、本発明者らが得た上記の新たな知見に基づくものであり、本発明によるマグネシウム合金軸受は、軸受の摺動面の少なくとも一部が、マグネシウムにアルミニウム又はスズのいずれか一方又は双方を含有したマグネシウム合金材料からなることを特徴とする。
前記の如く構成したマグネシウム合金軸受は、マグネシウムにアルミニウム又はスズのいずれか一方又は双方を含有したマグネシウム合金材料を摺動面に備えたので、軸受の摺動性が向上し、摺動面の焼付きの低減、及び、摺動面の摩耗の抑制を図ることができる。さらに、アルミニウム及びスズは、マグネシウムと混合してもマグネシウムの結合を阻害することはないので、このような金属の添加により、マグネシウム合金の材料強度が低下することはない。
そして、このマグネシウム合金軸受は、マグネシウム合金材料のみからなってもよく、軸受の摺動面にのみに、この合金材料をライニングしてもよく、また、荷重が負荷される負荷摺動面の一部に、この合金材料をライニングしてもよい。このように、軸受にマグネシウム合金材料を用いることにより、軸受の重量を軽量化することができる。
さらに、このマグネシウム合金軸受は、上に示す金属材料を溶融後、鋳型に流し込んで製造した鋳造品であってもよく、高温・高圧の条件下で、マグネシウム粉体とアルミニウム又はスズの粉体と、を混合した粉体を、焼き固めた焼結体からなってもよい。
好ましい態様としては、マグネシウム合金材料のアルミニウムの含有率が、0.5wt%から12wt%であり、この範囲内であれば、軸受の摺動性が確実に向上し、摺動面の焼付きの低減及び摺動面の摩耗の抑制を図ることができる。すなわち、この含有率が、0.5wt%よりも小さいと、添加したアルミニウムがマグネシウム合金の摺動性の向上にほとんど寄与せず、12wt%よりも大きいと、この合金材料の摺動性を低下させてしまう。さらに好ましい態様としては、マグネシウム合金材料のアルミニウムの含有率が、5wt%から10wt%であり、このような範囲においては、高荷重の条件下における摺動面の焼付き特性がさらに向上する。
また、好ましい態様としては、マグネシウム合金材料のスズの含有率が、0.5wt%から15wt%であり、この範囲内では、摺動面の焼付きの低減及び摺動面の摩耗の抑制を図ることができる。すなわち、含有率が、0.5wt%よりも小さいと、添加したスズがマグネシウム合金の摺動性の向上にほとんど寄与せず、15wt%よりも大きいと、この合金材料の摺動性を低下させてしまう。さらに好ましい態様としては、マグネシウム合金材料のスズの含有率が、5wt%から11wt%であり、このような範囲においては、高荷重の条件下における摺動面の焼付き特性がさらに向上する。さらに、前記マグネシウム合金材料のアルミニウムとスズとを合わせた含有率が、0.5wt%から15wt%であっても、上述したと同様の効果が得られる。
また、このマグネシウム合金材料は、さらにケイ素を0.01wt%から0.5wt%含有することが好ましく、この範囲においてケイ素を含有することにより、晶出物が分散強化され、軸受の摺動性を向上させることができる。すなわち、この含有率が、0.01wt%よりも小さいと、添加したケイ素がマグネシウム合金材料の摺動性の向上にほとんど寄与せず、0.5wt%よりも大きいと、ケイ素過多によりマグネシウム合金材料の鋳造性が悪くなり、軸受を製品化することが困難となる。
さらに、このようなマグネシウム合金材料からなる軸受の摺動面に、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化珪素、及びこれらの組合せからなる群から選択される硬質粒子を0.5wt%から20wt%含有したポリアミドイミド樹脂を、被覆することが好ましい。このような樹脂を被覆することにより、軸受の摺動性が向上するばかりでなく、初期馴染み性もさらに向上する。そして、硬質粒子の含有率が0.5wt%よりも少ないと、硬質粒子が摺動面の摩耗の抑制に寄与せず、硬質粒子の含有率が20wt%よりも多いと、硬質粒子が合金の耐摩耗性を低下させてしまう。
また、好ましくは、この被覆した樹脂の膜厚は、1μmから100μmの厚みが好ましい。1μmよりも小さいと、この被覆した樹脂膜がすぐに摩滅し、さらに、100μmよりも大きいと、マグネシウム合金材料と樹脂膜との密着性が低下して、この樹脂膜がマグネシウムから剥離する可能性がある。
そして、このような樹脂を被覆することにより、このマグネシウム合金軸受は、さらに、軸受の摺動性が向上し、たとえ長時間の使用により樹脂が摩滅したとしても、下地層であるマグネシウム合金材料が、軸受の摺動面の焼付きを防止することができ、フェールセイフを考慮した軸受を製造することができる。
本発明によれば、マグネシウムの材料強度を確保しつつ、軸受の軽量化を図ることができる。さらに、高負荷、高回転の使用環境においても、摺動面の摩耗を抑制すると共に摺動面の焼付き特性を向上することができ、その結果として、軸受の破損防止及び軸受寿命の長寿命化を図ることができる。
以下に、本発明を実施例により説明する。
(実施例1)
鋼(S45C)を母材とした円筒すべり軸受の摺動面に、マグネシウムを主材として、アルミニウム6wt%、スズ7wt%、ケイ素0.1wt%を含有したマグネシウム合金材料を溶融鋳造により、厚さ0.5mmのライニングを施し、直径60mm×肉厚3mmのマグネシウム合金軸受を製作した。
(実施例1)
鋼(S45C)を母材とした円筒すべり軸受の摺動面に、マグネシウムを主材として、アルミニウム6wt%、スズ7wt%、ケイ素0.1wt%を含有したマグネシウム合金材料を溶融鋳造により、厚さ0.5mmのライニングを施し、直径60mm×肉厚3mmのマグネシウム合金軸受を製作した。
(実施例2)
実施例1の軸受のマグネシウム合金材料をライニングした摺動面に、さらに、ポリアミドイミド(PAI)樹脂に、窒化珪素(Si3N4)からなる硬質粒子を1wt%含有した樹脂を、膜厚10μmに被覆し、鋼を下地層、マグネシウム合金をライニング層、樹脂をオーバーレイ層とした、3層構造のマグネシウム合金軸受を製作した。
実施例1の軸受のマグネシウム合金材料をライニングした摺動面に、さらに、ポリアミドイミド(PAI)樹脂に、窒化珪素(Si3N4)からなる硬質粒子を1wt%含有した樹脂を、膜厚10μmに被覆し、鋼を下地層、マグネシウム合金をライニング層、樹脂をオーバーレイ層とした、3層構造のマグネシウム合金軸受を製作した。
そして、実施例1及び2のマグネシウム合金軸受を、エンジンのコンロッド軸受としてエンジン内に組込み、相手部材の材質:FC230、潤滑油:トヨタ キャッスル SL 5W−20を使用して、回転速度:8000rpmの速度条件でエンジンをモータリングさせて摩耗試験を行い、実施例1及び2の摺動面の摩耗量(摩耗深さ)を測定した。この他にも、実施例1の軸受の初期重量を測定した。
さらに、実施例1及び2のマグネシウム合金軸受を、図7に示すジャーナル型焼付き試験機1を用いて、焼付き試験を行った。このジャーナル型焼付き試験機1は、主に、軸受箱2、ジャーナル3、錘4、軸受5、テスト用軸受6、及び駆動機器(図示せず)からなっており、ジャーナル3は、2つの軸受5,6を介して軸受箱内に配置されおり、この軸受箱2は、2つの軸受5,6とジャーナル3との間に油が流れるような構造となっている。そして、テスト用軸受6に近いジャーナルの一端には、錘4が連結しており、他端には、ジャーナル3が回転可能なように駆動機器が配置されている。
そして、本焼付き試験においては、ジャーナル型焼付き試験機1に、テスト用軸受6として、実施例1及び2のマグネシウム合金軸受を配置して、ジャーナルの回転速度:1000rpm、油温:180℃の条件下で、錘4を加えていくことにより、実施例1及び2の軸受の摺動面に面圧を増加させて、この摺動面が焼付いたときの焼付き荷重を測定した。
図1は、摩耗試験の結果であり、図2は、焼付き試験の結果を示している。図1に示すように、実施例1(■)及び実施例2(◆)のいずれの軸受も、テスト時間が、200時間を越えてからは、摩耗量は殆ど増加せず、軸受の摺動面に焼付きは見られなかった。また、実施例1(■)の軸受に比べて実施例2(◆)のポリアミドイミド樹脂の樹脂膜を有した軸受の方が、摩耗量が少なかった。さらに、図2に示すように、実施例1(■)の軸受の摺動面の焼付き荷重は30MPa程度、実施例2(◆)の焼付き荷重は40MPa程度であった。尚、実施例1の軸受の初期重量は、27gであった。
(比較例1)
実施例1と同形状の円筒すべり軸受であり、実施例1と異なる点は、軸受のライニング材料の成分が異なり、マグネシウムを主材として、アルミニウムを0.2wt%含有した点である。
実施例1と同形状の円筒すべり軸受であり、実施例1と異なる点は、軸受のライニング材料の成分が異なり、マグネシウムを主材として、アルミニウムを0.2wt%含有した点である。
(比較例2)
実施例1と同形状の円筒すべり軸受であり、実施例2と異なる点は、軸受のライニング材料の成分が異なり、アルミニウムを主材として、スズ10wt%、ケイ素2wt%含有した点である。
実施例1と同形状の円筒すべり軸受であり、実施例2と異なる点は、軸受のライニング材料の成分が異なり、アルミニウムを主材として、スズ10wt%、ケイ素2wt%含有した点である。
そして、比較例1及び比較例2の軸受も実施例1と同様の摩耗試験を行った。さらに、比較例2のアルミニウム軸受については、実施例1と同様の焼付き試験も行った。図1に示すように、比較例1(△)の軸受は、テスト時間の経過に伴い摩耗量が増加し、400時間になるまでにその摺動面が焼付いた。また、比較例2(○)の軸受は、テスト時間が200時間を越えたあたりから摩耗量が増加し、600時間になるまでにその摺動面が焼付いた。さらに図2に示すように、比較例2(○)の焼付き荷重は20MPa程度であり、実施例1及び2の軸受の焼付き荷重に比べ小さかった。尚、比較例2の軸受の初期重量は34gであり、実施例1の軸受よりも、その初期重量は、およそ30%重かった。
(評価1)
上記結果から、実施例1の如くマグネシウムにアルミニウム、スズ、及びケイ素を含有することにより、軸受の摺動性が向上し、摩耗量が低減したと考えられ、比較例1の如くマグネシウム合金材料に含有するアルミニウムがわずかであると、このアルミニウムが軸受の摺動性に寄与し難いと考えられる。また、比較例2の如くアルミニウムにスズ及びケイ素を含有させたとしても、実施例1の軸受の如く、軸受の摺動性が画期的に向上するとは言い難い。さらに、実施例2の如き樹脂膜を被覆することで、さらに軸受の摺動性は向上したと考えられる。また、実施例1の如くマグネシウムを用いることにより、軸受重量の軽量化を図ることができる。尚、実施例1及び2の軸受が、テスト時間200時間程度まで、摩耗量が増加したのは、軸受の摺動面が初期馴染みにより摩耗した結果であると考えられ、実施例2の軸受は、樹脂膜により摺動性が向上したため、初期馴染み性が良いと考えられる。
上記結果から、実施例1の如くマグネシウムにアルミニウム、スズ、及びケイ素を含有することにより、軸受の摺動性が向上し、摩耗量が低減したと考えられ、比較例1の如くマグネシウム合金材料に含有するアルミニウムがわずかであると、このアルミニウムが軸受の摺動性に寄与し難いと考えられる。また、比較例2の如くアルミニウムにスズ及びケイ素を含有させたとしても、実施例1の軸受の如く、軸受の摺動性が画期的に向上するとは言い難い。さらに、実施例2の如き樹脂膜を被覆することで、さらに軸受の摺動性は向上したと考えられる。また、実施例1の如くマグネシウムを用いることにより、軸受重量の軽量化を図ることができる。尚、実施例1及び2の軸受が、テスト時間200時間程度まで、摩耗量が増加したのは、軸受の摺動面が初期馴染みにより摩耗した結果であると考えられ、実施例2の軸受は、樹脂膜により摺動性が向上したため、初期馴染み性が良いと考えられる。
(実施例3)
実施例1と同形状の円筒すべり軸受であり、実施例1と異なる点は、軸受のライニング材質のマグネシウムに、アルミニウムのみを添加した点である。
実施例1と同形状の円筒すべり軸受であり、実施例1と異なる点は、軸受のライニング材質のマグネシウムに、アルミニウムのみを添加した点である。
(実施例4)
実施例1と同形状の円筒すべり軸受であり、実施例1と異なる点は、軸受のライニング材質のマグネシウムに、スズのみを添加した点である。
実施例1と同形状の円筒すべり軸受であり、実施例1と異なる点は、軸受のライニング材質のマグネシウムに、スズのみを添加した点である。
実施例3の軸受として、アルミニウムの含有率を0wt%から15wt%の範囲内で、その含有率を変えた軸受を製作し、実施例4の軸受として、スズの含有率を0wt%から17wt%の範囲内で、その含有率を変えた軸受を製作し、実施例1と同様の焼付き試験を行った。
図3は、この焼付き試験の結果であり、実施例3(○)の軸受は、マグネシウム合金材料のアルミニウムの含有率の増加に伴い、軸受の焼付き荷重が増加するが、その含有率が7wt%を超えたあたりから、その荷重が減少し始めた。そして、焼付き荷重を20MPa以上確保するためのマグネシウム合金材料のアルミニウムの含有率は、0.5wt%から12wt%であり、さらに、焼付き荷重を35MPa以上確保するためのマグネシウム合金材料のアルミニウムの含有率は、5wt%から10wt%であった。
実施例4(▲)の軸受は、マグネシウム合金材料のスズの含有率の増加に伴い、実施例3(○)のアルミニウムよりもさらに焼付き荷重が増加するが、その含有率が7wt%を超えたあたりから、その荷重が減少し始めた。そして、焼付き荷重を20MPa以上確保するためのマグネシウム合金材料のスズの含有率は、0.5wt%から15wt%であり、さらに、焼付き荷重を40MPa以上確保するためのマグネシウム合金材料のスズの含有率は、5wt%から11wt%であった。
(評価2)
上記結果から、軸受の摺動面に、マグネシウムにアルミニウム又はスズを添加したマグネシウム合金材料を用いたことにより、軸受の摺動性が向上し、軸受の摺動面が焼付き難くなったと考えられる。また、この軸受の摺動性の向上に伴い、摺動面の摩耗も低減すると考えられる。
上記結果から、軸受の摺動面に、マグネシウムにアルミニウム又はスズを添加したマグネシウム合金材料を用いたことにより、軸受の摺動性が向上し、軸受の摺動面が焼付き難くなったと考えられる。また、この軸受の摺動性の向上に伴い、摺動面の摩耗も低減すると考えられる。
そして、実施例3の如くアルミニウムを添加した場合において、マグネシウム合金材料のアルミニウムの含有率が、0.5wt%よりも小さいと、添加したアルミニウムがマグネシウム合金材料の摺動性の向上にほとんど寄与せず、12wt%よりも大きいと、添加したアルミニウムがマグネシウム合金材料の摺動性をかえって阻害してしまうと考えられる。さらに、マグネシウム合金材料のアルミニウムの含有率を5wt%から10wt%の範囲にすると、高荷重の条件下においても、焼付くことなく、使用可能であると考える。
また、同様に、実施例4の如く、スズを添加した場合においても、マグネシウム合金材料のスズの含有率が0.5wt%よりも小さいと、添加したスズがマグネシウム合金材料の摺動性の向上にほとんど寄与せず、15wt%よりも大きいと、添加したスズがマグネシウム合金材料の摺動性をかえって阻害してしまうと考えられる。さらに、マグネシウム合金材料のスズの含有率を5wt%から11wt%の範囲にすると、高荷重の条件下においても、焼付くことなく、使用可能であると考える。
さらに、先に示した実施例1のアルミニウム及びスズを含有した軸受の焼付き試験の結果からもわかるように、マグネシウムにアルミニウムとスズを添加しても軸受の摺動性が向上しており、実施例3及び4の焼付き試験の結果から、マグネシウム合金材料のアルミニウムとスズとを合わせた含有率が、0.5wt%から15wt%の範囲である場合には、上記実施例3及び4と同様の結果が得られると考えられ、高荷重の使用環境においては、5wt%から11wt%の範囲がより好ましいと考えられる。
(実施例5)
実施例5は、実施例3と同じ円筒すべり軸受であり、実施例3の軸受と異なる点は、実施例3のマグネシウム合金材料に、所定量のケイ素を添加した点であり、実施例5−1から実施例5−5の軸受は、下記の表1に示す割合で、実施例3のマグネシウム合金材料にケイ素を含有させたものである。
実施例5は、実施例3と同じ円筒すべり軸受であり、実施例3の軸受と異なる点は、実施例3のマグネシウム合金材料に、所定量のケイ素を添加した点であり、実施例5−1から実施例5−5の軸受は、下記の表1に示す割合で、実施例3のマグネシウム合金材料にケイ素を含有させたものである。
そして、実施例3の軸受の焼付き試験と同様の試験を行った。その結果を図4に示す。図4に示すように、実施例5−1から実施例5−5の軸受は、アルミニウムの含有率を増加させても、焼付き荷重は、低下しなかった。また、この合金材料に含有するケイ素(ケイ素含有率)の増加に合わせて、焼付き荷重も増加した。
(比較例3)
実施例3の軸受と同じマグネシウム合金軸受であり、図4に示す結果は、実施例3と同様の結果である。
実施例3の軸受と同じマグネシウム合金軸受であり、図4に示す結果は、実施例3と同様の結果である。
(評価3)
上記結果から、マグネシウムにアルミニウムを添加したマグネシウム合金材料に、さらにケイ素を添加することで、摺動面の焼付き特性が向上することがわかった。そして、焼付き特性が向上していることから、摺動面の耐摩耗性も向上すると考えられる。さらに、マグネシウムにアルミニウム添加を過ぎた(7wt%以上添加した)としても、ケイ素を含有させることで、晶出物が分散強化されて、焼付き特性が向上すると考えられる。
上記結果から、マグネシウムにアルミニウムを添加したマグネシウム合金材料に、さらにケイ素を添加することで、摺動面の焼付き特性が向上することがわかった。そして、焼付き特性が向上していることから、摺動面の耐摩耗性も向上すると考えられる。さらに、マグネシウムにアルミニウム添加を過ぎた(7wt%以上添加した)としても、ケイ素を含有させることで、晶出物が分散強化されて、焼付き特性が向上すると考えられる。
また、マグネシウム合金材料に含有するケイ素の含有率としては、0.01wt%から0.5wt%の範囲が好ましく、この含有率が、0.01wt%よりも小さいと、添加したケイ素がマグネシウム合金材料の摺動性の向上にほとんど寄与せず、0.5wt%よりも大きいと、ケイ素過多により鋳造性が悪くなり、製品化することが困難になると考えられる。さらに、スズを添加した場合も同様に、ケイ素を含有することにより、晶出物が分散強化されるので、同じ効果が得られると考えられる。
(実施例6)
実施例2の軸受と同じマグネシウム合金軸受であり、実施例2と異なる点は、ポリアミドイミド(PAI)樹脂に、窒化珪素(Si3N4)からなる硬質粒子を5wt%含有させた点である。
実施例2の軸受と同じマグネシウム合金軸受であり、実施例2と異なる点は、ポリアミドイミド(PAI)樹脂に、窒化珪素(Si3N4)からなる硬質粒子を5wt%含有させた点である。
そして、実施例6の軸受として、窒化珪素(Si3N4)の硬質粒子を含有した樹脂膜の膜厚を0μmから150μmの範囲で被覆した軸受を製作し、これらの軸受に対して、実施例1と同様の摩耗試験を行った。また、上記樹脂膜と同じ成分、同じ膜厚を有する平板の試験体を製作し、下記に示す樹脂の密着試験を行った。
密着試験は、油圧式密着性試験機を用いて、被覆面に対してオイルジェットを垂直に当て、油圧を徐々に大きくするとともにオイルジェットを一定の速度で移動させた。試験後に、各摺動部材の被覆した樹脂膜の剥離の有無を目視観察し、剥離の開始時及び終了における油圧を比較評価した。試験条件は、油圧:0から250MPa,温度:室温である。
本摩耗試験及び本密着試験の結果を図5に示す。図5に示すように、樹脂膜を被覆した場合には、軸受の摺動面の摩耗量が抑制され、膜厚が100μmを超えると、樹脂膜とマグネシウム合金材料との密着強度が低下し、さらに摩耗量も増加し始めた。
(評価4)
上記の結果から、硬質粒子を含有した樹脂膜を軸受の摺動面に被覆することにより、軸受の摺動面の摩耗を抑制することができる。そして、摩耗抑制、密着性の確保ができる樹脂膜の膜厚は、1μmから100μmであると考えられる。
上記の結果から、硬質粒子を含有した樹脂膜を軸受の摺動面に被覆することにより、軸受の摺動面の摩耗を抑制することができる。そして、摩耗抑制、密着性の確保ができる樹脂膜の膜厚は、1μmから100μmであると考えられる。
(実施例7)
実施例6の軸受と同材質の軸受であり、ポリアミドイミド樹脂を膜厚10μmに被覆したものである。
実施例6の軸受と同材質の軸受であり、ポリアミドイミド樹脂を膜厚10μmに被覆したものである。
(実施例8)
実施例7の軸受と比べ、樹脂膜の硬質粒子として、窒化珪素(Si3N4)の代わりにアルミナ(Al2O3)を含有した点のみ異なる。
実施例7の軸受と比べ、樹脂膜の硬質粒子として、窒化珪素(Si3N4)の代わりにアルミナ(Al2O3)を含有した点のみ異なる。
(実施例9)
実施例7の軸受と比べ、樹脂膜の硬質粒子として、窒化珪素(Si3N4)の代わりに二酸化珪素(SiO2)を含有した点のみ異なる。
実施例7の軸受と比べ、樹脂膜の硬質粒子として、窒化珪素(Si3N4)の代わりに二酸化珪素(SiO2)を含有した点のみ異なる。
そして、実施例7から実施例9の軸受として、各硬質粒子の含有率を0wt%から30wt%の範囲で軸受を製作し、これらの軸受に対して実施例6と同様の摩耗試験を行った。その結果を図6に示す。
図6に示すように、実施例7から実施例9のいずれも、硬質粒子をポリアミドイミド樹脂に添加することにより、摩耗量は低減しており、さらに、20wt%を超えると摩耗量が増加した。
(評価5)
このような結果から、軸受の摺動面に被覆する樹脂膜に、硬質粒子を0.5wt%から20wt%含有することで、摺動面の耐摩耗性が向上し、さらに、含有率がこの割合の範囲を満たしているならば、窒化珪素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)の組合せから選択した硬質粒子をポリアミドイミド樹脂に含有させれば、同様の効果が得られると考えられる。
このような結果から、軸受の摺動面に被覆する樹脂膜に、硬質粒子を0.5wt%から20wt%含有することで、摺動面の耐摩耗性が向上し、さらに、含有率がこの割合の範囲を満たしているならば、窒化珪素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)の組合せから選択した硬質粒子をポリアミドイミド樹脂に含有させれば、同様の効果が得られると考えられる。
以上、本発明のいくつかの実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
例えば、本実施例では、円筒すべり軸受を用いて評価を行ったが、転がり軸受であってもよく、摺動する部位に、このようなマグネシウム合金材料及び樹脂膜を用いることにより、実施例と同様の結果が得られる。
本実施例に示したマグネシウム合金軸受は、マグネシウムがアルミニウムに比べてその比重がおよそ2/3程度と軽量であるため、例えば回転物と共に高速で回転する軸受(コンロッド軸受等)に、特に好適である。
Claims (7)
- 軸受の摺動面の少なくとも一部が、マグネシウムにアルミニウム又はスズのいずれか一方又は双方を含有したマグネシウム合金材料からなることを特徴とするマグネシウム合金軸受。
- 前記マグネシウム合金材料のアルミニウムの含有率が、0.5wt%から12wt%であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合金軸受。
- 前記マグネシウム合金材料のスズの含有率が、0.5wt%から15wt%であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合金軸受。
- 前記マグネシウム合金材料のアルミニウムとスズとを合わせた含有率が、0.5wt%から15wt%であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合金軸受。
- 前記マグネシウム合金材料に、さらにケイ素を0.01wt%から0.5wt%含有したこと特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のマグネシウム合金軸受。
- ポリアミドイミド樹脂に、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化珪素、及びこれらの組合せからなる群から選択される硬質粒子を0.5wt%から20wt%含有した樹脂を、前記摺動面に被覆したことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のマグネシウム合金軸受。
- 前記摺動面に被覆した樹脂の膜厚は、1μmから100μmの膜厚であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のマグネシウム合金軸受。
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CN101985714A (zh) * | 2010-12-07 | 2011-03-16 | 吉林大学 | 一种高塑性镁合金及其制备方法 |
JP2014535005A (ja) * | 2011-10-20 | 2014-12-25 | ポステク アカデミー−インダストリー ファウンデイションPostech Academy−Industry Foundation | 偏析現象を最小化した、常温成形性に優れた非熱処理型マグネシウム合金板材 |
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2005
- 2005-02-07 JP JP2005030003A patent/JP2006213983A/ja not_active Withdrawn
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CN101985714B (zh) * | 2010-12-07 | 2012-09-26 | 吉林大学 | 一种高塑性镁合金及其制备方法 |
JP2014535005A (ja) * | 2011-10-20 | 2014-12-25 | ポステク アカデミー−インダストリー ファウンデイションPostech Academy−Industry Foundation | 偏析現象を最小化した、常温成形性に優れた非熱処理型マグネシウム合金板材 |
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