JP2006208405A - パッシブ型放散フラックスサンプラ - Google Patents
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Abstract
床面、天井、壁面、家具など、測定しようとする部位から放散された化学物質の流量(放散フラックス)を外気(室内空気)の影響を受けることなく、簡単且つ正確に測定できるようにする。
【解決手段】
底面(2a)を検査対象物(3)に密着した状態に固定する中空ケース(2)が、前記底面(2a)の略中央に形成された化学物質を取り込む開口部(4)を除き気密に形成されると共に、その内面に、前記開口部(4)に対向して前記化学物質と湿潤環境下で変色反応を呈する試験片(5)が設けられ、ケース(2)内に前記試験片(5)を湿潤環境に維持する保水材(6)を配した。
【選択図】図2
Description
このシックハウス症候群の発症メカニズムは未解明なところもあるが、主として、住宅内で使用される建材、家具、調度品、カーペット、カーテンなどに含まれるホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)やなどの有害化学物質が放散されることによる室内空気汚染であると考えられている。
このため、最近では、このような濃度測定装置にアタッチメントを取り付けて、壁、天井、床など任意の場所から放散される化学物質放散量測定装置が提案されている。
そして、アタッチメント42の開口部43を壁面、天井面、床面等の検査対象部位に当接させた状態で、濃度測定装置47により空気を吸引させれば、壁面などから放散された有害化学物質が前記濃度測定装置47により計測される。
したがって、屋内において多数点での測定が必須となる発生源の特定には長時間の調査を要する。
例えば、一つの部屋の中で化学物質の発生源を特定しようとすると、少なくとも、壁、天井、床、室内ドア、クローゼット内など複数箇所について測定しなければならない。この場合に、一台の測定装置41で測定するには、順次測定していかなければならず、1箇所の測定に最低30分程度を要するため、一軒の新築家屋についてその全部屋を隈なく測定しようとすると、時間と手間がかかるという問題があった。
すなわち通常の使用状態に比べて、検査対象部位表面の空気の流速が早くなるので、有害化学物質の拡散機構は検査対象物表面近傍のガス拡散支配から検査対象部位内部の拡散支配に変化する。
したがって、このようなアクティブ法で測定した場合、その測定結果は、通常使用状態での放散フラックスと異なることがあるので、最近では、検査対象部位表面の空気流動状態を通常の状態に維持したまま測定できるパッシブ法が推奨されている。
したがって、所定時間経過したときの試験片の色を、予め放散フラックスに応じて作成したカラーチャートと比較することにより、その検査部位からの有害物質の放散フラックスを測定することができ、開口部の開口面積と建材全体の面積の比に基づいて、その建材全体から排出される総放散量を算出することもできる。
この場合において、試験片の変色反応を利用して、その色変化を観察することにより放散フラックスを測定しているので、測定に際し一切の動力、電源を必要としない。
また、中空ケース内には保水材が配されているので、測定時間中、試験片が湿潤環境に維持されるので、一定の環境で測定することができ、測定精度のバラツキを抑えることができる。
また、サンプラの大きさは任意であるが、縦横5mm〜1cm程度の方形試験片を使用する場合、中空ケース外形の大きさは、せいぜい縦×横×厚さ=2cm×2cm×3mm程度で足り、どんな狭いところでも簡単に貼付固定することができる。
さらに、個々のサンプラの構造は極めて簡単で、その製造コストも安価であるので、複数のサンプラを夫々の測定箇所に貼付固定することにより、同時に放散フラックスを測定することができる。
この場合、所定時間反応させたフラックスサンプラを測定装置の遮光室に形成されたセッティングステージにセットすれば、光源から照射された測定光が観察部に照射され、その反射光強度が光センサで検出される。
反射光強度は試験片の色に対応し、試験片の色は放散フラックスに対応する。
したがって、予め放散フラックスと反射光強度の関係を求めておけば、検出された反射光強度から放散フラックスを正確に算出できる。
図1は、本発明に係るパッシブ型放散フラックスサンプラの一例を示す断面図、図2はその分解組立図である。
また、ケース2の内面には、湿潤環境下でホルムアルデヒドと変色反応を呈する試験片5が前記開口部4に対向して設けられると共に、試験片5を湿潤環境に維持する保水材6が配されている。
これにより、水に濡らした試験片5にホルムアルデヒドが接すると、デヒドロゲナーゼによりホルムアルデヒドの水素が脱離されて、蟻酸とNADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に分解され、そのNADHとINTがジアフォラーゼにより反応してINTが減ることにより発色する。
なお本例では、中空ケース2は、検査対象物3に貼り付けたままの状態で試験片5の色変化を外部から観察できるように全体が透明に形成されており、底面2aの反対面側が試験片5を裏面から観察する観察部2bとなっており、その外周縁には貼付け・取外しを容易に行い得るようにフランジ2cが形成されている。
そして、試験片5は、前記観察部2bの内面側に貼り付けられているので開口部4からの距離が一定に維持され、したがって、フラックスサンプラ1の底面2aを検査対象物3に貼り付けるだけで試験片5を検査対象物3の表面から一定の距離に配することができ、常に同一の条件で測定することができる。
また、開口部4には、その端縁からケース2の内側に延びる環状リブ10が形成されており、開口部4から滴下された水滴が表面張力で滞ることなく保水紙6に案内されると共に、検査対象物3から放散される化学物質を開口部4に対向して設けられた試験片5に真っ直ぐに導いてその放散量に応じた変色反応をより正確に生じさせるようになっている。
この程度の厚さのプラスチック製ケース2を用いた場合、ホルムアルデヒドはそのプラスチックを透過してしまうので、対ホルムアルデヒドのガスバリア性を高めるために、ケース2の外面又は内面の少なくとも一方に透明のDLC膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)、シリカ蒸着膜などのガスバリア膜8が蒸着され、本例ではDLC膜が形成されている。
DLC膜はホルムアルデヒドに対するガスバリア性が極めて高いので、室内空気に含まれるホルムアルデヒドがケース2を透過して試験片5を変色させることがなく、検査対象物3から放散されたホルムアルデヒドの放散フラックスのみを正確に測定できる。
なお、中空ケース2はプラスチック製に限らずガラスその他任意の材料を使用することができ、ガラスを使用した場合はもともとガスバリア性が高いので、ガスバリア膜を形成する必要はない。
このフラックスサンプラ1を用いて測定する場合、アルミシート11を剥がして開口部4からケース2内に水滴を滴下し、試験片5を湿潤させると共に、測定中に試験片5を湿潤環境に維持するように保水紙16を湿らしておく。
このとき、開口部4には環状リブ10が形成されているので、水滴がその表面張力により開口部4の端縁に滞ることがなく、スムースにケース2内に流入する。
この場合において、開口部4が下向きになるように貼り付けても、ケース2内の水滴が開口部4に形成された環状リブ10に堰き止められるので、開口部4から流れ出すことがない。
そして、予め設定された所定時間(30分〜2時間)経過すると、検査対象物3から放散されたホルムアルデヒドが開口部4を透過してケース2内に分子拡散し、試験片5に到達する。
これにより、放散フラックスが多いところは試験片5が濃赤色に変化し、少ないところは淡赤色に変化し、0に近いところはほとんど変化しない。
したがって、試験片5の色に応じて放散フラックスを測定することができる。
また、検査対象物3が同一材料であれば、その他の部位の放散フラックスも同量と予想できるので、開口部4の面積と検査対象物3の表面積との比に基づいて総放散量を算出することもできる。
さらにまた、対象有害物質を分子拡散によって試験片5まで輸送しているので、測定部位の表面の流動状態を測定によって乱すことがなく、通常の使用状態での放散フラックスを正確に測定することができる。
ケース2は、その外面又は内面の片方又は双方にDLC膜8が形成されてホルムアルデヒドに対するガスバリア性が高いので、室内空気に含まれるホルムアルデヒドがケース2を透過して試験片5を変色させることがなく、検査対象物3から放散されたホルムアルデヒドの放散フラックスを正確に測定できる。
また、個々のサンプラ1の構造は極めて簡単で、その製造コストも安価であるので、複数のサンプラ1を夫々の測定箇所に貼付固定することにより、多数の測定点における放散フラックスを同時に測定することもできる。
本例の測定装置21は、上述したフラックスサンプラ1を用いて放散フラックスを測定するもので、遮光蓋22の内側に試験片5の色変化を光学的に測定する遮光室23が形成されると共に、検出された色変化に基づき放散フラックスを算出する演算処理装置24と、その値を表示する液晶ディスプレ25を備えている。
試験片5はホルムアルデヒドと反応して赤〜赤紫系に変色するので、光源27はその補色関係にある緑系の光を測定光として出力するLEDが用いられ、本例では測定光の中心波長が555nmに選定されている。
まず、吸光度Pは次式により算出する。
P=[1−V1/V0]×100(%)
V0:反応前の試験片5若しくは基準白色の反射光強度
V1:反応後の試験片5についての反射光強度
ここで、吸光度−放散量変換テーブル29は、Fn=f(Pn)の関数で表わされる場合であっても、その変換値を数表化して記憶している場合であっても良い。
2 中空ケース
2a 底面
2b 観察部
2c フランジ
3 検査対象物
4 開口部
5 試験片
6 保水紙(保水材)
7 接着層
8 ガスバリア膜
Claims (7)
- 検査対象物から空気中に放散する特定の化学物質の放散フラックスを測定するパッシブ型放散フラックスサンプラであって、
底面略中央に形成された化学物質を取り込む開口部を除き気密に形成された中空ケース内に、前記開口部に対向して前記化学物質と湿潤環境下で変色反応を呈する試験片が設けられると共に、前記試験片を湿潤環境に維持する保水材が配されたことを特徴とするパッシブ型放散フラックスサンプラ。 - 前記中空ケースには、前記試験片の色変化を外部から観察する透明の観察部が形成されている請求項1記載のパッシブ型放散フラックスサンプラ。
- 前記中空ケースがガスバリア性を有する請求項1又は2記載のパッシブ型放散フラックスサンプラ。
- 前記中空ケースの外面又は内面の少なくとも一方にガスバリア膜が形成されて中空ケースがガスバリア性を有する請求項1乃至3記載のパッシブ型放散フラックスサンプラ。
- 前記開口部の端縁からケース内側に延びる環状リブが形成された請求項1乃至4記載のパッシブ型放散フラックスサンプラ。
- 前記中空ケースの上面部の外周縁にフランジが形成されてなる請求項1記載のパッシブ型放散フラックスサンプラ。
- 使用前の状態で前記開口部を気密に封止するアルミシートが、前記接着層に貼り付けられてなる請求項1記載のパッシブ型放散フラックスサンプラ。
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