JP2006206508A - ラミニン結合型αDG合成促進剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
(a)特定のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または(b)特定のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、細胞内に導入されることにより、α−ジストログリカンのグリコシル化および/またはラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌を生じ得るポリペプチド、を含有するポリペプチドを含む、ラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤、該因子を含有するラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤ならびに医薬組成物。
【選択図】 なし
Description
DG前駆体ポリペプチド(GenBank登録番号NP_004384、配列番号15)は、N末端から順にシグナル配列、ムチン様領域および1つの膜貫通領域を有している。DG前駆体ポリペプチドは、翻訳された後、α−ジストログリカン(αDG)とβ−ジストログリカン(βDG)に切断される。αDGは、糖鎖が付加された表在性膜ポリペプチドであり、ウェスタンブロッティングにより、骨格筋においては156kDa、心筋においては140kDa、脳および抹消神経においては120kDaの見かけ上の分子量を有するスメアバンド(smear band)として検出される。αDGについては、非共有結合により細胞表面上でβDGに結合していること、また、細胞外マトリクスの構成成分であるラミニンとも直接結合していることが知られている。βDGは、膜貫通ポリペプチドであり、細胞内領域でジストロフィンを介してアクチン骨格に連結することが知られている。すなわち、細胞外マトリクスとアクチン骨格とは、DG等を介して連結していると考えられている。
(a)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(b)配列番号1に示されたアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、細胞内に導入されることにより、α−ジストログリカンのグリコシル化および/またはラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌を生じ得るポリペプチド
を含有するポリペプチドを含む、ラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤に関する。
本発明はまた、配列番号1に示されたアミノ酸配列に80%〜100%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、かつ、細胞内に導入されることにより、α−ジストログリカンのグリコシル化および/またはラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌を生じ得るポリペプチドを含有するポリペプチドを含む、ラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤に関する。
さらに、本発明は、
(a)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(b)配列番号1に示されたアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、かつ、細胞内に導入されることにより、α−ジストログリカンのグリコシル化および/またはラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌を生じ得るポリペプチド
をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドを含む、ラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤に関する。
そのうえさらに、本発明は、配列番号1に示されたアミノ酸配列に80%〜100%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、かつ、細胞内に導入されることにより、α−ジストログリカンのグリコシル化および/またはラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌を生じ得るポリペプチドをコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドを含む、ラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤に関する。
本発明はまた、前記因子を含むラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤およびラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤を有効成分として含有する筋ジストロフィー疾患治療のための医薬組成物に関する。
(1)配列番号1に示されたアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、細胞内に導入されることにより、ラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌および/またはα−ジストログリカンのグリコシル化を生じ得る因子、
(2)配列番号1に示されたアミノ酸配列に80%〜100%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、かつ、細胞内に導入されることにより、ラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌および/またはα−ジストログリカンのグリコシル化を生じ得るポリペプチド、
(3)配列番号2に示されたDNA配列において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または付加されたDNA配列がコードするポリペプチドであって、かつ、細胞内に導入されることにより、ラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌および/またはα−ジストログリカンのグリコシル化を生じ得るポリペプチド、または
(4)配列番号2に示されたDNA配列に80%〜100%の同一性を有するDNA配列がコードするポリペプチドであって、かつ、細胞内に導入されることにより、ラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌および/またはα−ジストログリカンのグリコシル化を生じ得るポリペプチド
を意味する。
あるいはまた、本発明のラミニン結合型αDG合成促進剤は、LARGE2、公知の細胞膜透過シグナル配列およびタグからなる融合ポリペプチドの発現ベクターを作製し、同ベクターを哺乳類細胞(たとえば、HEK293T細胞)にトランスフェクションし、ついで、発現された目的ポリペプチドをタグに対する抗体を用いて分離することによって製造することができる。
あるいは、ラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤は、アデノウイルス等のウイルス遺伝子にLARGE2の遺伝子をサイトメガロウイルスプロモータ等と共に組み込み、その組替えアデノウイルス等を培養し精製後、生理食塩水に溶かして使用することもできる。また、LARGE2の遺伝子をRNAとしてレトロウイルスベクター等を利用して使用することもできる。
抗αDGモノクローナル抗体IIH6C4およびVIA4−1:アップステート セル シグナリング ソリューションズ、アメリカ合衆国、ニューヨーク州
抗ラミニン抗体:シグマーアルドリッチ、アメリカ合衆国、ミズーリ州
抗Hisタグ抗体とホースラディッシュペルオキシダーゼとのコンジュゲート(抗His−6−HRP):ベクトン、ディッキンソン アンド カンパニー、アメリカ合衆国、ニュージャージー州
抗Flagタグ抗体とホースラディッシュペルオキシダーゼとのコンジュゲート(抗Flag−HRP):シグマ−アルドリッチ、アメリカ合衆国、ミズーリ州
ヒト胎児腎細胞293T(HEK293T):ATCC CRL−1573
<LARGE2のcDNAクローニングおよび発現ベクターの構築>
ヒトLARGE2(配列番号1)をコードするDNA配列(配列番号2)を、以下のように作製した。
腎臓の全RNA(クロンテック社、アメリカ合衆国、カルフォルニア州)1μgを基にSuperScript First-Strand Synthesis for RT-PCR(インビトロジェン社、オランダ、フローニンゲン)を用いて合成したcDNAを鋳型として用い、プライマー1とプライマー2とのペア(large2の5′末端側DNA配列増幅用)またはプライマー3とプライマー4とのペア(large2の3′末端側DNA配列増幅用)を用いて、PCRを行った。なお、PCRのキットとしてはPyrobest DNA Polymerase(タカラ、日本)を使用した。反応液において、cDNA1μl、プライマー各25pmolを用いた。dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP、ならびに緩衝液は、キットに添付の物を使用し添付の手順書に従い計50μlの反応溶液を調製した。同PCRは、始めに95℃で5分間インキュベーションした後、98℃で1分間、55℃で1分間および72℃で1分間のインキュベーションを1サイクルとして合計35サイクル、ついで72℃で10分間インキュベーションすることにより実施した。プライマー配列は以下のとおりである。
プライマー1:5′−AGCTGATATCACCATGCTGCCCCGAGGGCGCCC−3′(配列番号3)
プライマー2:5′−TGGGGATCCAGGAGACCTGGGGCT−3′(配列番号4)
プライマー3:5′−CCTGGATCCCCAACAAGCACTACTCCGG−3′(配列番号5)
プライマー4:5′−ACTGGCGGCCGCTCAGCCTCGGGCAGGGCTCT−3′(配列番号6)
プライマー3とプライマー4とのペアを用いて得られたDNA配列をBamHIおよびNotIで処理し、ついで得られたDNA断片をpBluescript SK−Large2NのBamHI/NotI部位に挿入することにより、LARGE2全長をコードするDNA配列を含有するベクター(以下、「pBluescript SK−Large2」とする)を構築した。
つぎに、pBluescript SK−Large2をEcoRVおよびNotIで処理し、得られたDNA断片をpcDNA3.1(インビトロジェン社、オランダ、フローニンゲン)にサブクローニングすることにより、LARGE2全長を発現するための発現ベクター(以下、「pcDNA3.1−Large2」とする)を構築した。
<LARGE1のcDNAクローニングおよび発現ベクターの構築>
ヒトLARGE1(配列番号13)をコードするDNA配列(配列番号14)を、以下のように作製した。
腎臓の全RNA(クロンテック社、アメリカ合衆国、カルフォルニア州)1μgを基にSuperScript First-Strand Synthesis for RT-PCR(インビトロジェン社、オランダ、フローニンゲン)を用いて合成したcDNAを鋳型として用い、プライマー5とプライマー6とのペア(large1の5′末端側DNA配列増幅用)またはプライマー7とプライマー8とのペア(large1の3′末端側DNA配列増幅用)を用いて、PCRを行った。なお、PCRのキットとしてはPyrobest DNA Polymerase(タカラ、日本)を使用した。反応液において、cDNA1μl、プライマー各25pmolを使用した。dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP、ならびに緩衝液はキットに添付の物を使用し添付の手順書に従い計50μlの反応溶液を調製した。また、同PCRは、始めに95℃で5分間インキュベーションした後、98℃で1分間、55℃で1分間および72℃で1分間のインキュベーションを1サイクルとして合計35サイクル、ついで72℃で10分間インキュベーションすることにより実施した。
プライマー5:5′−ATGCGGTACCACCATGCTGGGAATCTGCAGGGG−3′(配列番号7)
プライマー6:5′−TGGGGATCCAGGAAACTTCAGACTTGA−3′(配列番号8)
プライマー7:5′−CCTGGATCCCCAATAAACATTACTCTG−3′(配列番号9)
プライマー8:5′−AGTCTCTAGACTAGCTGTTGTTCTCGGCTGT−3′(配列番号10)
プライマー7とプライマー8とのペアを用いて得られたDNA配列は、BamHIおよびXbaIで処理し、ついで得られたDNA断片をpcDNA3.1−Large1NのBamHI/XbaI部位にクローニングすることにより、LARGE1全長を発現するための発現ベクター(以下、「pcDNA3.1−Large1」とする)を構築した。
<αDGのcDNAクローニングおよび発現ベクターの構築>
αDGのアミノ酸残基30〜653(αDGのアミノ酸残基1〜29(分泌シグナル配列)およびアミノ酸残基654〜895(βDG)を除く領域)の発現ベクターを作製するために、以下の操作を行った。
腎臓の全RNA(クロンテック社、アメリカ合衆国、カルフォルニア州)1μgを基にSuperScript First-Strand Synthesis for RT-PCR(インビトロジェン社、オランダ、フローニンゲン)を用いて合成したcDNAを鋳型として用い、プライマー9とプライマー10とのペアを用いて、PCRを行った。なお、PCRのキットとしてはPyrobest DNA Polymerase(タカラ、日本)を使用した。反応液において、cDNA1μl、プライマー各25pmolを使用した。dATP、dTTP、dGTPおよびdCTPならびに緩衝液は、キットに添付の物を使用し添付の手順書に従い計50μlの溶液を調製した。また、同PCRは、始めに95℃で5分間インキュベーションした後、98℃で1分間、55℃で1分間および72℃で1分間のインキュベーションを1サイクルとして合計35サイクル、ついで72℃で10分間インキュベーションすることにより実施した。
プライマー9:5′−CTTGCGGCCGCGCACTGGCCCAGTGAACCCT−3′(配列番号11)
プライマー10:5′−GATGAATTCGCGCCCCGGGTGATATTCTGCAGGG−3′(配列番号12)
pFLAG−CMV3(シグマ社、アメリカ合衆国、ミズーリ州)のXbaI/BamHI部位にヒスチジンタグをコードするDNA配列を導入した(以下、本ベクターを「pFLAG−CMV3−His」とする)。ついで、NotIおよびEcoRIで処理した前記αDG(アミノ酸残基30〜653)をコードするDNA断片を、pFLAG−CMV3−HisのNotI/EcoRI部位に挿入し、αDG(アミノ酸残基30〜653)の発現ベクター(以下、「pFLAG−CMV3−αDG−His」とする)を構築した。このpFLAG−CMV3−αDG−Hisにより、αDG(アミノ酸残基30〜653)は、N末端側にプレプロトリプシンリーダー(分泌シグナル)およびFlag、C末端側にHis−6tagが融合されたポリペプチドとして発現される。そのように発現された融合ポリペプチドを、以下、αDG30-653と称する。
直径10cmの培養皿にHEK293T細胞(1×106細胞/枚)を播種し、10%ウシ胎仔血清、25.0mMグルコース、2mMグルタミンを含有するダルベッコ改変イーグル培地15mlにおいて、37℃で1日間培養した。ついで、Lipofectamine(商品名)2000(インビトロジェン社、オランダ、フローニンゲン)を用いて、その添付文書に記載の手順にしたがってトランスフェクションを実施した。発現ベクターは、表1に示した濃度および組み合わせで使用した。
遠心式フィルターユニットのAmicon Ultra(ミリポア、アメリカ合衆国、マサチューセッツ州)を用い、回収した培地10mlを濃縮し、ついでHis-Tag結合用緩衝液(50mM NaH2PO4、pH8.0、300mM NaCl、10mM イミダゾールおよび0.05% Tween20)で3回洗浄した。
得られた試料の濃縮液にHisタグ結合用緩衝液(50mM NaH2PO4、pH8.0、300mM NaCl、10mM イミダゾールおよび0.05% Tween20)を添加して500μlとし、Hisタグ標識ポリペプチド精製用ビーズNi−NTA Agarose(キアゲン、アメリカ合衆国、カルフォルニア州)100μlと混合し、4℃にて1時間穏やかに撹拌した。つぎに、ポリペプチド(αDG30-653)が結合したビーズを洗浄用緩衝液(50mM NaH2PO4、pH8.0、300mM NaCl、30mM イミダゾールおよび0.05% Tween20)を用いて3回洗浄した。ついで、溶出用緩衝液(50mM NaH2PO4、pH8.0、300mM NaCl、250mM イミダゾールおよび0.05% Tween20)50μlを用い、αDG30-653の溶出を3回実施した。3回の溶出で得られた溶出液は、1つのチューブにまとめた。
精製したαDG30-653を、7.5%SDS−PAGEによってゲル上に展開し、ニトロセルロース膜(シュライヒャー&シュル社、アメリカ合衆国)に移し、ついで、抗His−6−HRP抗体、抗αDGモノクローナル抗体IIH6C4またはVIA4−1で処理した。IIH6C4およびVIA4−1に対しては、それぞれ、抗マウスIgM−HRP(ジャクソン イムノ リサーチ社、アメリカ合衆国)および抗マウスIgG(H+L)−HRP(バイオ−ラッド ラボラトリーズ社、アメリカ合衆国、カルフォルニア州)を用いて、ニトロセルロース膜をさらに処理した。なお、IIH6C4およびVIA4−1は、αDGの糖鎖部分を認識するモノクローナル抗体である。
αDG30-653は、ECLウェスタンブロッティング検出システムおよびHyperfilm ECL(アマシャム バイオサイエンシーズ、英国)を用いて検出した。結果を図1に示す。なお、本実施例においては、マウス骨格筋より精製した天然のαDGを陽性コントロールとして用いた。
図1BはVIA4−1を用いて得られた結果であり、レーン1はコントロール1、レーン2は比較例1、レーン3は実施例2およびレーン4は陽性コントロールの結果を示す。
図1Cは抗His−6−HRP抗体を用いて得られた結果であり、レーン1はコントロール2、レーン2はコントロール1、レーン3は比較例1およびレーン4は実施例2の結果を示す。
抗His抗体を用いて調べてみると、αDG30-653のみを単独に発現した場合とLARGE1と共発現したαDG30-653では、ポリペプチドのみの73kD付近に強く染まるスメアなバンドが認められた。銀染色でも同様のバンドが認められる(データは示さず)。LARGE2と共発現したαDG30-653では、このバンドが認められず、糖鎖付加不良のαDG30-653ができていなかった。
IIH6C4BおよびVIA4−1で検出された高分子量のαDG30-653は、抗His抗体でも銀染色でも検出されなかった。これは、高分子量のαDG30-653が量的に少なく、抗His抗体の感度では検出できなかったためと推定される。
なお、αDG、LARGE1およびLARGE2のmRNAの発現については、各遺伝子の転写をリアルタイムPCRによりモニタリングすることにより確認した。
<ラミニン オーバーレイ アッセイ>
直径10cmの培養皿にHEK293T細胞(1×106細胞/枚)を播種し、10%ウシ胎仔血清、25.0mMグルコース、2mMグルタミンを含有するダルベッコ改変イーグル培地15mlにおいて、37℃で1日間培養した。ついで、Lipofectamine(商品名)2000(インビトロジェン社、オランダ、フローニンゲン)を用いて、その添付文書に記載の手順にしたがってトランスフェクションを実施した。発現ベクターは、表2に示した濃度および組み合わせで使用した。
精製したαDG30-653を、7.5%SDS−PAGEによってゲル上に展開し、ニトロセルロース膜(シュライヒャー&シュル社、アメリカ合衆国)に移した。同膜を、Block Ace(雪印、東京)を用いて4℃で一晩ブロッキングし、ついでラミニン−1(シグマ−アルドリッチ社、アメリカ合衆国、ミズーリ州)を1μg/ml含有するオーバーレイ緩衝液(10mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2および3% BSA)中、室温で2時間インキュベーションを行った。つぎに、同膜を、洗浄緩衝液(0.1% Tween20、1mM CaCl2および1mM MgCl2を含有するPBS)で洗浄し、洗浄緩衝液で希釈した抗ラミニン抗体ともに室温で2時間インキュベーションを行った。膜を洗浄緩衝液で洗浄し、更に洗浄緩衝液で希釈した抗ウサギIgとホースラディッシュパーオキシダ−ゼのコンジュゲート(アマシャムバイオサイエンス、英国)と室温で2時間インキュベーションを行った。
ラミニンを、ECLウェスタンブロッティング検出システムおよびHyperfilm ECL(アマシャム バイオサイエンシーズ、英国)を用いて検出した。結果を図2に示す。なお、本実施例における陽性コントロールとして、マウス骨格筋より精製した天然のαDGを用いた。
ラミニンとの結合性もLARGE1またはLARGE2と共発現したαDG30-653で各々250kD、350kDのスメアなバンドとして確認できた。αDG30-653単独で発現した場合は150kD付近に薄いながらもバンドが認められ、またマウスの骨格筋より精製したαDGも150kD付近にスメアなバンドが認められた。LARGE1またはLARGE2をαDG30-653と共発現した場合、ラミニンと結合するαDG30-653の量が大きく増えた。またαDG30-653に結合する糖鎖の量はLARGE2と共発現した場合が最も多かった。
<ツニカマイシン添加>
直径10cmの培養皿にHEK293T細胞(1×106細胞/枚)を播種し、10%ウシ胎仔血清、25.0mMグルコース、2mMグルタミンを含有するダルベッコ改変イーグル培地15mlにおいて、37℃で1日間培養した。ついで、Lipofectamine(商品名)2000(インビトロジェン社、オランダ、フローニンゲン)を用いて、その添付文書に記載の手順にしたがってトランスフェクションを実施した。発現ベクターは、表1に示した濃度および組み合わせで使用した。
精製したαDG30-653を、7.5%SDS−PAGEによってゲル上に展開し、ニトロセルロース膜(シュライヒャー&シュル社、アメリカ合衆国)に移し、ついで、抗His−6−HRP抗体、抗αDGモノクローナル抗体IIH6およびVIA4−1で処理した。IIH6C4およびVIA4−1に対しては、それぞれ、抗マウスIgM−HRP(ジャクソン イムノ リサーチ社、アメリカ合衆国)および抗マウスIgG(H+L)−HRP(バイオ−ラッド ラボラトリーズ社、アメリカ合衆国、カルフォルニア州)を用いて、ニトロセルロース膜をさらに処理した。
αDGはECLウェスタンブロッティング検出システムおよびHyperfilm ECL(アマシャム バイオサイエンシーズ、英国)を用いて検出した。結果を図3に示す。図3AはIIH6C4を用い得られた結果であり、図3Cは抗His−6−HRP抗体を用いて得られた結果である。図3のAおよびCにおいて、レーン1および5はコントロール1、レーン2および6はコントロール2、レーン3および7は比較例3およびレーン4およびレーン8は実施例4の結果を示す。VIA4−1を用いて得られた結果は、IIH6C4を用いて得られた結果と同様であった(データは示さず)。
精製したαDG30-653を、7.5%SDS−PAGEによってゲル上に展開し、ニトロセルロース膜(シュライヒャー&シュル社、アメリカ合衆国)に移した。同膜を、Block Ace(雪印、東京)を用いて4℃で一晩ブロッキングし、ついでラミニン−1(シグマ−アルドリッチ社、アメリカ合衆国、ミズーリ州)を1μg/ml含有するオーバーレイ緩衝液(10mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2および3% BSA)中、室温で2時間インキュベーションを行った。つぎに、同膜を、洗浄緩衝液(0.1% Tween20、1mM CaCl2および1mM MgCl2を含有するPBS)で洗浄し、洗浄緩衝液で希釈した抗ラミニン抗体ともに室温で2時間インキュベーションを行った。膜を洗浄緩衝液で洗浄し、更に洗浄緩衝液で希釈した抗ウサギIgとホースラディッシュパーオキシダ−ゼのコンジュゲート(アマシャムバイオサイエンス、英国)と室温で2時間インキュベーションを行った。
ラミニンを、ECLウェスタンブロッティング検出システムおよびHyperfilm ECL(アマシャム バイオサイエンシーズ、英国)を用いて検出した。結果を図3Bに示す。図3Bにおいて、レーン1はコントロール1、レーン2はコントロール2、レーン3は比較例3およびレーン4は実施例4の結果を示す。
LARGE1またはLARGE2と共発現したとき、培地中に分泌されるαDG30-653は、ツニカマイシン処理(Nグリカンの付加を阻害)をしても、抗体IIH6C4、VIA4−1(データは示さず)、ラミニンと反応するそれぞれ分子量250kD、350kDの高度にグリコシル化されたスメアなバンドが認められ、ツニカマイシンの効果がなかった。一方、抗His抗体を用いて調べたところ、単独であるいはLARGE1と共発現し培地中に分泌されるαDG30-653で認められる糖鎖付加不良の73kD(タンパク質部分の分子量)付近のバンドがツニカマイシン処理で消失した。LARGE2と共発現し培地中に分泌されるαDG30-653では、ツニカマイシン処理に関りなくこのバンドが認められず、糖鎖付加不良のαDG30-653ができていなかった。すなわち、ツニカマイシンはLARGE2と同様に、糖鎖付加不良のαDG30-653の培地中への分泌をほぼ阻害することが判明した。
<ラクタシスチン(Lactacystin)添加>
直径10cmの培養皿にHEK293T細胞(1×106細胞/枚)を播種し、10%ウシ胎仔血清、25.0mMグルコース、2mMグルタミンを含有するダルベッコ改変イーグル培地15mlにおいて、37℃で1日間培養した。ついで、Lipofectamine(商品名)2000(インビトロジェン社、オランダ、フローニンゲン)を用いて、その添付文書に記載の手順にしたがってトランスフェクションを実施した。発現ベクターは、表4に示した濃度および組み合わせで使用した。
回収した細胞を、500μlのHisタグ結合用緩衝液(50mM NaH2PO4、pH8.0、300mM NaCl、10mM イミダゾールおよび0.05% Tween20)に懸濁し、同懸濁液を4℃で30分間超音波処理することにより細胞を溶解させた。得られた細胞溶解液を遠心し(4℃、10分間、10000×g)、上清を回収した。
上清を100μlのNi−NTA Agarose(キアゲン、アメリカ合衆国、カルフォルニア州)と混合し、4℃にて1時間穏やかに撹拌した。ついで、前述の方法と同様にしてαDG30-653を溶出した。
精製したαDG30-653は、7.5%SDS−PAGEによってゲル上に展開し、ニトロセルロース膜(シュライヒャー & シュル社、アメリカ合衆国)に移し、ついで、抗Flag−HRP抗体で処理した。ECLウェスタンブロッティング検出システムおよびHyperfilm ECL(アマシャム バイオサイエンシーズ、英国)を用いて、αDG30-653を検出した。結果を図4に示す。図4において、レーン1および5はコントロール1、レーン2および6はコントロール2、レーン3および7は比較例4、ならびにレーン4および8は実施例5の結果を示す。
ラクタシスチンは、ゴルジ体において、ゴルジ体からプロテアソーム(変性ポリペプチドの分解系)への輸送を阻害するものである。ラクタシスチン未添加の場合、細胞内に分泌されるαDG30-653は、αDG30-653単独またはLARGE1と共発現したときだけ、抗Flag抗体と反応する分子量約90kDのバンドとして認められた。一方、LARGE2との共発現の場合は、細胞内におけるαDG30-653の蓄積が認められなかった。この細胞内に蓄積したαDG30-653は、ポリペプチド部分の分子量73kDに短い糖鎖などが付加して90kDとなっており、抗体IIH6C4とVIA4−1と反応しなかった(データは示さず)。
ラクタシスチン添加により、αDG30-653は、αDG30-653単独かLARGE1と共発現した場合とともに、LARGE2と共発現した場合にも、抗FLAG抗体と反応する分子量90kDのバンドとして認められた。これにより、αDG30-653とLARGE2との共発現により変性ポリペプチドの分解が促進されていることがわかった。
配列番号4:プライマー配列
配列番号5:プライマー配列
配列番号6:プライマー配列
配列番号7:プライマー配列
配列番号8:プライマー配列
配列番号9:プライマー配列
配列番号10:プライマー配列
配列番号11:プライマー配列
配列番号12:プライマー配列
Claims (8)
- (a)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(b)配列番号1に示されたアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、細胞内に導入されることにより、α−ジストログリカンのグリコシル化および/またはラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌を生じ得るポリペプチド
を含有するポリペプチドを含む、ラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤。 - 配列番号1に示されたアミノ酸配列に80%〜100%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、かつ、細胞内に導入されることにより、α−ジストログリカンのグリコシル化および/またはラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌を生じ得るポリペプチド
を含有するポリペプチドを含む、ラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤。 - (a)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(b)配列番号1に示されたアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、かつ、細胞内に導入されることにより、α−ジストログリカンのグリコシル化および/またはラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌を生じ得るポリペプチド
をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドを含む、ラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤。 - 配列番号1に示されたアミノ酸配列に80%〜100%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、かつ、細胞内に導入されることにより、α−ジストログリカンのグリコシル化および/またはラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌を生じ得るポリペプチド
をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドを含む、ラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤。 - 配列番号1の381番〜430番のアミノ酸配列に50%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有するポリペプチドであって、かつ、細胞内に導入されることにより、α−ジストログリカンのグリコシル化および/またはラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌を生じ得るポリペプチド
を含有するポリペプチドを含む、ラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤。 - 配列番号1の381番〜430番のアミノ酸配列に50%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有するポリペプチドであって、かつ、細胞内に導入されることにより、α−ジストログリカンのグリコシル化および/またはラミニン結合型α−ジストログリカンの細胞外分泌を生じ得るポリペプチド
をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドを含む、ラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤。 - 請求項1、2、3、4、5または6記載のラミニン結合型α−ジストログリカン合成促進剤を有効成分として含有する筋ジストロフィー治療のための医薬組成物。
- 請求項1、2、3、4、5または6記載の因子を有効成分として含有する筋ジストロフィー治療のための医薬組成物。
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