JP2006205194A - 成形後外観に優れるアルミニウム板材 - Google Patents

成形後外観に優れるアルミニウム板材 Download PDF

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Abstract

【課題】成形、塗装後の圧延方向に沿った線状の模様(ルーパーライン)を防止し、成形後外観に優れるアルミニウム板材を得る。
【解決手段】飲料用DI缶成形後の缶側面を、圧延方向に対して垂直な直線上にて、炭素の面分析を行ったとき、Cのカウント数が全50カ所の平均の1.5倍以上の面積が、5%以上である部分が、10カ所以下とする。 また、板表面近傍断面において、平均結晶粒径が表面からの距離が10μmを超えて20μm以下部分にある結晶の平均粒径の1/5以下である部分(異常部)の厚さを10μm以下とする。 異常部の線密度や表面粗度を一定の範囲におさめるとより好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、成形加工後の外観に優れるアルミニウム板に関し、特に飲料缶ボディ用として有用なアルミニウム板に関するものである。
以前から飲料缶ボディ用アルミニウム板材の外観には高い品質が要求されていた。例えば、特許文献1に外観に優れる缶ボディ材(リューダースや肌荒れ抑制)が開示されている。
特開平05−195971号公報
近年、缶ボディ材の外観への品質要求は非常に高いものとなっており、従来問題にされなかったような、外観上の欠陥が問題になることがある。一方、環境負荷低減の観点から成形後の脱脂工程で使用される脱脂液の低温化、薬剤の低濃度化にともない、塗装後に圧延方向に沿った線状の模様(以後、ルーパーラインと呼ぶ。)が目立ち、缶の外観を損なうという問題が発生している。
本発明者らは鋭意研究の結果、ルーパーラインの発生メカニズムをつきとめ、それを防止・除去するための手段に到達することができた。
すなわち、請求項1記載の発明は、 飲料用DI缶成形後の缶側面を中性洗剤で洗浄後、圧延方向に対して垂直な直線上にて、EPMAを用いてC(炭素)の面分析(100×80μm、50カ所)を行ったとき、Cのカウント数が全50カ所の平均の1.5倍以上の面積が、5%以上である部分が、10カ所以下であることを特徴とする成形後外観に優れるアルミニウム板材である。
請求項2記載の発明は、飲料用DI缶成形、酸又はアルカリによる脱脂後、缶側面の粗度Rmaxが0.2μm以下であることを特徴とする請求項1記載の成形後外観に優れるアルミニウム板材である。
請求項3記載の発明は、飲料用DI缶成形後の缶側面を、圧延方向に対して垂直な直線上にて、EPMAを用いてCの面分析(100×80μm、50カ所)を行ったとき、Cカウント数が全50カ所の平均の1.5倍以上の部分の断面組織において、結晶粒径が表面から10μm以上深い部分の組織の1/5以下である部分の厚さが表面から5μm以下であることを特徴とする請求項1、2記載の成形後外観に優れるアルミニウム板材。
請求項4記載の発明は、板表面近傍断面(圧延方向に垂直に切断)において、平均結晶粒径が表面からの距離が10μmを超えて20μm以下部分にある結晶の平均粒径の1/5以下である部分(以後「異常部」と呼ぶ。)の厚さが10μm以下であることを特徴とする成形後外観に優れるアルミニウム板材。
請求項5記載の発明は、圧延方向と垂直な長さ100μmの直線における異常部の線密度が50%以下であることを特徴とする請求項4記載の成形後外観に優れるアルミニウム板材。
本発明によればルーパーラインの防止が可能となり缶ボディ材の外観への非常に高い品質要求に充分応えられる。
(1)ルーパーライン部缶表面炭素
1.ルーパーライン発生メカニズム
ルーパーラインは、板表面に正常部より延性の小さい部分が存在し、製缶時に正常部と伸びが異なることによって、正常部より凹凸が大きい部分(異常部と呼ぶ。)が形成され、塗装後(特に非隠蔽色の白い塗料での塗装)、この部分が黒い筋に見えることによって生じる。また、この部分は、缶成形後に脱脂を行うと、正常部よりエッチングが進みやすく、正常部との凹凸の差が大きくなる。
2.評価方法およびその規定
異常部は正常部より凹凸が大きく成形油の残留が多いため、該筋部をEPMAで面分析を行ったとき、Cの強度が平均の1.5倍以上になるので、Cの面分析により、その部分が特定できる。そして、最もルーパーラインが出やすい圧延方向と垂直な位置で、EPMAを用いて100×80μmの範囲で50カ所、Cカウント数測定を行った場合、Cのカウント数が全50カ所の平均の1.5倍以上である部分の面積が10%以上である部分が、10カ所以下であれば、ルーパーラインは目立たず、外観が良好である。一方、10カ所を超えると、ルーパーラインが目立たち、外観が劣る。同様の理由でより好ましくは、5カ所以下である。(図1参照)
(2)缶表面異常部の粗度の規定
ルーパーラインの元になりうる缶表面上の凹凸が存在しても、Rmaxが0.2μm以下であれば、ルーパーラインは目立たず、外観が良好である。一方、0.2μmを超えると、ルーパーラインが目立たち、外観が劣る。さらに好ましくは、0.1μm以下。なお、この測定を行う際は成形後、市販缶用の酸又はアルカリ脱脂液を用い、液メーカー推奨条件にて脱脂を行ってから測定を行う。
(3)缶表面異常部の組織
ルーパーラインの元になりうる缶表面上の異常部断面を透過型電子顕微鏡にて観察すると、表面近傍にバルクより結晶粒径が細かい層があり、この層が厚いほど凹凸が大きくなり、ルーパーラインが目立つ。この層の厚さが5μm以下であればルーパーラインは目立たず、外観が良好である。一方、5μmを超えると、ルーパーラインが目立たち、外観が劣る。同様の理由でより好ましくは、2μm以下である。
(4)板表面の異常部の厚さ
ルーパーラインの元になりうる缶表面上の異常部は成形前の板の状態ですでに存在しており、その部分はバルクに比較して結晶粒径が非常に細かい。その厚さが10μm以下であれば、たとえ存在しても製缶/塗装後にはルーパーラインは目立たず、外観が良好である。一方、10μmを超えると、ルーパーラインが目立たち、外観が劣る。同様の理由でより好ましくは、5μm以下である。
(5)板表面異常部の線密度
ルーパーラインの元になりうる缶表面上の異常部は成形前の板の状態ですでに存在しているが、100μmの長さで線密度(図2参照)を測定したときに50%以下であれば、たとえ存在してもルーパーラインは目立たず、外観が良好である。一方、50%を超えると、ルーパーラインが目立たち、外観が劣る。同様の理由でより好ましい範囲は、20%以下である。
(8)異常部除去方法
1.板製造工程での除去
冷延板に異常部が高線密度であるいは厚く存在する場合、冷延前あるいは冷延後にエッチングや機械的表面処理によって、異常部を少なくあるいは薄くすることができる。エッチングには市販のアルミ用脱脂剤の他、水酸化ナトリウム水溶液のようなアルカリ性水溶液や、それに界面活性剤やキレート剤を添加したものが使用できる。また、硫酸、硝酸、フッ酸といった酸性水溶液やそれらに界面活性剤やキレート剤を添加したものを使用することもできる。アルカリ性水溶液にてエッチングを行った場合、酸性水溶液によるデスマットを行うことも可能である。機械的表面処理としては、ブラスト加工、バフ研磨、ヘアライン加工などが使用できる。
2.製缶工程での除去
冷延板に異常部が高線密度であるいは厚く存在する場合、製缶後にエッチングによって、異常部を少なくあるいは薄くすることができる。エッチングには、市販の飲料缶用脱脂液の他、水酸化ナトリウム水溶液のようなアルカリ性水溶液やそれらに界面活性剤やキレート剤を添加したものが使用できる。また、酸性水溶液に界面活性剤やキレート剤を添加したものを使用することもできる。
表1に示す純アルミニウムおよび各種アルミニウム合金を鋳造し、均熱処理後圧延して、厚さ0.3mmの板を製造した。この板に水酸化ナトリウム水溶液(5%、60℃)を用いて表2に示す時間でエッチングを行った。合金Cを用いるときは、冷延後、焼き鈍しを行い、加熱時間にて酸化皮膜厚さを調整した。
Figure 2006205194
(評価方法)
(1)缶の評価
1.Cカウント数が大きいエリアの数
上記のアルミ板を350mlの飲料用間ボディにDI成形し、中性洗剤にて成形油を除去し、缶側面の圧延方向に対して垂直な直線上にて、EPMAを用いてCの面分析(100×80μm、50カ所)を行ったとき、Cのカウント数が50カ所の平均の1.5倍以上の面積が、5%以上であるエリアの数を測定した。
2.異常部粗度測定
1の缶の残りを市販の飲料缶用酸脱脂液にて脱脂し、5カ所で圧延方向にて粗度Rmaxを測定して、平均した。
3.異常部厚さ
1でCのカウント数が50カ所の平均の1.5倍以上の部分をFIB(収束イオンビーム装置)にて断面TEM(透過型電子顕微鏡)観察用サンプルを作製し、TEMにて表面近傍とバルク(表面より10μmを越えて、20μm以下の深さ)の結晶粒径を比べ、結晶粒径がバルクの1/5である層の厚さを測定した。
(2)板の評価
1.異常部の厚さ
上記板において、長さ100μm(圧延方向と垂直)分、FIBにて表面近傍の断面TEM観察用サンプルを作製した。TEMにて表面近傍とバルク(表面より10μmを越えて、20μm以下)の結晶粒径を各10個ずつ測定して平均値を求め、平均結晶粒径がバルクの1/5である層を規定し、その厚さを測定した。
2.異常部の線密度
上記板の長さ100μm(圧延方向と垂直)分、FIBにて表面近くの断面TEM観察用サンプルを作製した。(2)1と同様に平均結晶粒径を測定し、平均結晶粒径がバルクの1/5である層を規定し、その表面における長さを測定し、線密度を計算した。
(3)製缶後外観
上記板を350ml飲料缶ボディにDI加工後、飲料缶用市販脱脂液にて脱脂を行い、白い溶剤系塗料を膜厚14μm塗装し、ルーパーラインの発生程度を目視評価した。○以上の評価であれば、実用上問題ない。
◎:ルーパーラインがまったくない
◎○:ルーパーラインが5本未満
○:ルーパーラインが10本未満
△:ルーパーラインが10本以上20本以下
×:ルーパーラインが20本以上
上記、各種測定結果を表2に示す。
Figure 2006205194
表2からわかるように、本発明例1〜15は若干、程度の差はあるものの、いずれも外観は良好で、飲料缶として問題ないものである。一方、比較例16、17はルーパーラインが多数発生し、外観が劣るので、飲料缶としては不適当なものである。
缶のルーパーラインの例とCカウント数の測定方法を示した説明図である。 板表面の異常部線密度測定方法を示した説明図である。
符号の説明
1 Cカウント数が平均の1.5倍以上である部分が10%未満のエリア
2 Cカウント数が平均の1.5倍以上である部分が10%以上のエリア

Claims (5)

  1. 飲料用DI缶成形後の缶側面を中性洗剤で洗浄後、圧延方向に対して垂直な直線上にて、EPMAを用いてC(炭素)の面分析(100×80μm、50カ所)を行ったとき、Cのカウント数が全50カ所の平均の1.5倍以上の面積が、5%以上である部分が、10カ所以下であることを特徴とする成形後外観に優れるアルミニウム板材。
  2. 飲料用DI缶成形、酸又はアルカリによる脱脂後、缶側面の粗度Rmaxが0.2μm以下であることを特徴とする請求項1記載の成形後外観に優れるアルミニウム板材。
  3. 飲料用DI缶成形後の缶側面を、圧延方向に対して垂直な直線上にて、EPMAを用いてCの面分析(100×80μm、50カ所)を行ったとき、Cカウント数が全50カ所の平均の1.5倍以上の部分の断面組織において、結晶粒径が表面から10μm以上深い部分の組織の1/5以下である部分の厚さが表面から5μm以下であることを特徴とする請求項1、2記載の成形後外観に優れるアルミニウム板材。
  4. 板表面近傍断面(圧延方向に垂直に切断)において、平均結晶粒径が表面からの距離が10μmを超えて20μm以下部分にある結晶の平均粒径の1/5以下である部分(以後「異常部」と呼ぶ。)の厚さが10μm以下であることを特徴とする成形後外観に優れるアルミニウム板材。
  5. 圧延方向と垂直な長さ100μmの直線における異常部の線密度が50%以下であることを特徴とする請求項4記載の成形後外観に優れるアルミニウム板材。
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