JP2006204254A - アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ - Google Patents
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Abstract
【課題】新規基質特異性を有するアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを提供すること。
【解決手段】 シュードモナス スピーシーズ YN21株(FERM BP-08569)のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子をクローニングしてそのDNA塩基配列を決定し、組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ蛋白質の製造に利用する。
【選択図】 なし
【解決手段】 シュードモナス スピーシーズ YN21株(FERM BP-08569)のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子をクローニングしてそのDNA塩基配列を決定し、組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ蛋白質の製造に利用する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、DNA組換え技術によるアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼに関し、より詳しくは、シュードモナス属(Pseudomonads)由来のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ酵素および該酵素をコードする遺伝子、該遺伝子を有する発現ベクター、該発現ベクターにより形質転換された微生物、該形質転換体を培養することによる組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼの製造、そのようにして得られる組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ、該組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを用いる3−オキソアシル−CoAのアシル−CoAへの変換方法に関する。
アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼは、
3-oxoacyl-CoA + CoA → acyl-CoA + acetyl-CoA
なる化学反応を触媒するもので、酵素番号EC 2.3.1.16で表される酵素である。
なお、CoAとは補酵素A(coenzyme A)の略称であり、その化学構造は下記式の通りである。
3-oxoacyl-CoA + CoA → acyl-CoA + acetyl-CoA
なる化学反応を触媒するもので、酵素番号EC 2.3.1.16で表される酵素である。
なお、CoAとは補酵素A(coenzyme A)の略称であり、その化学構造は下記式の通りである。
この酵素を利用したものとして従来、ATPの新規定量法(特公平2-7640号公報)、酵素的増幅測定方法(特開平05-268997号公報)、リパ−ゼ活性測定用組成物(特公平2-31960号公報)などが知られており、アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼを生産できる微生物を培養し、培養物からアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを抽出、精製して製造されている。
特公平2-7640号公報
特開平05-268997号公報
特公平2-31960号
しかしながら、微生物を培養し、培養物からアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを抽出、精製して製造する方法は、多くの労力と時間を必要とし、非効率的である。また、該培養物には、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ以外に使用する菌株固有のタンパク質等夾雑物が混入しており、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ活性に悪影響を及ぼす物質が混在する可能性も否定できず、粗精製アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを用いた測定は、信頼性が十分に確保できない恐れがある。従って、生産菌に由来する不純物を伴わないアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを効率よく製造する方法の開発が求められていた。そのためには、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼをコードするDNAをクローニングし、該DNAを含有する適当な発現ベクターを構築し、該発現ベクターで宿主細胞を形質転換させ、効率よくアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを得ることが必要であった。また、従来アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼの基質は、下記式[17]で表される3−オキソアシルCoAであって、
(ただし、aは1から16の整数)
アシル基に様々な置換基の導入された、unusualな化合物は、従来知られていた酵素の基質にはならなかった。
アシル基に様々な置換基の導入された、unusualな化合物は、従来知られていた酵素の基質にはならなかった。
シュードモナス スピーシーズ YN21株(Pseudomonas sp. YN21)は、ポリ-3-ヒドロキシアルカノエート(PHA)を生産する微生物として発明者らにより単離された微生物で、アルキル基以外の置換基を側鎖に導入した様々なPHA「unusual PHA」を生産することができる。このような置換基の例としては、芳香環を含むもの(フェニル基、フェノキシ基、など)や、不飽和炭化水素、エステル基、アリル基、シアノ基、ハロゲン化炭化水素、エポキシド、チオエーテルなどが挙げられる。
YN21株は従来菌株であるPseudomonas cichorii YN2株(FERM BP-7375)と硝酸塩還元性、インドール生成、ブドウ糖酸性化、アルギニンジヒドロラーゼ活性、D-マンノース資化能などの生理学的性質及び基質資化能の違いを示すことができる。また同様に従来菌株であるPseudomonas cichorii H45 株(FERM BP-7374)とは硝酸塩の還元性、アルギニンジヒドロラーゼ活性、L-アラビノース資化能、D-マンニトール資化能において、Pseudomonas jessenii P161 株(FERM BP-7376)とはD-マンニトール資化能において、Pseudomonas putida P91 株(FERM BP-7373)とは硝酸塩還元性、L-アラビノース資化能、D−マンノース資化能においてそれぞれ特性を異にする。
本発明者らは、シュードモナス スピーシーズ YN21株が、培地中に添加された側鎖に様々な置換基を導入したアルカン酸を利用できる性質に着目し、この微生物由来のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼならば従来基質にならなかった様々な置換基を側鎖に有する3−オキソアシルCoAを基質として利用しうるであろうと考え鋭意研究を行った。すなわち、本発明者らは、シュードモナス スピーシーズ YN21株(Pseudomonas sp. YN21)由来のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼをコードするDNAのクローニングを行った。つづいて、該DNAを含有する発現ベクターを構築し、該発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換体を培養することにより、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ活性を有する組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを製造することに成功した。本発明によりアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼをコードするDNAがクローニングされたので、該DNAを含有する適当な発現ベクターを構築し、該発現ベクターで宿主細胞を形質転換させ、効率よくアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを得ることが可能になった。
また、通常の遺伝子組換え技術を用いて、アミノ酸の付加、欠失、挿入、置換等により、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ活性を保持している誘導体(変異体)を得ることもできた。また、本発明のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼは従来基質にならなかった様々な置換基を側鎖に有する3−オキソアシルCoAを基質として利用しうることを見出したことによって本発明を完成した。
従って、本発明のアセチル−CoA アシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質は、以下の(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、アセチル−CoA アシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質である。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列。
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の付加、欠失、置換されたアミノ酸配列。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列。
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の付加、欠失、置換されたアミノ酸配列。
また、本発明のアセチル−CoA アシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子は、以下の(i)〜(iv)のいずれか1つのDNAを有し、アセチル−CoA アシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子である。
(i)配列番号2に示す塩基配列からなるDNA。
(ii)配列番号2に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
(iii)配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするDNA。
(iv)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の付加、欠失、置換されたアミノ酸配列をコードするDNA。
(i)配列番号2に示す塩基配列からなるDNA。
(ii)配列番号2に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
(iii)配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするDNA。
(iv)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の付加、欠失、置換されたアミノ酸配列をコードするDNA。
上記の遺伝子を用いて組換えベクターを構築し、それを用いて宿主細胞の形質転換体を得ることができる。この組換えベクターとして、本発明にかかるアセチル−CoA アシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質を宿主中で発現可能な構成とすることで、その形質転換体を用いたこのタンパク質の生産が可能となる。
一方、本発明の3−オキソアシル−CoAから対応するアシル−CoAへの変換方法は、組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを用いた、3−オキソアシル−CoAのアシル−CoAへの変換方法である。
本発明により、シュードモナス属(Pseudomonads)由来のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ酵素および該酵素をコードするDNA、該DNAを含有する発現ベクターが提供され、該発現ベクターにより形質転換された微生物、該形質転換体を培養することによる組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼの製造が可能になる。またそのようにして得られる組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを用いれば、様々な置換基を有する3−オキソアシル−CoAのアシル−CoAへの変換が可能になる。
これら、従来知られていたアルキル基以外の置換基を側鎖に導入した3−オキソアシルCoAの転移反応を触媒する活性を有する性質は、アルキル基以外の置換基を側鎖に導入したPHA「unusual PHA」を分解し再利用する酵素系を構築しようとする際に好適である。
これら、従来知られていたアルキル基以外の置換基を側鎖に導入した3−オキソアシルCoAの転移反応を触媒する活性を有する性質は、アルキル基以外の置換基を側鎖に導入したPHA「unusual PHA」を分解し再利用する酵素系を構築しようとする際に好適である。
本発明にかかるアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼは、配列番号1で表されるアミノ酸配列若しくは該配列に、所望の活性が維持される範囲内で1または数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されたアミノ酸配列を有するものである。
更に、本発明にかかる単離されたアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子は、
(1)配列番号2に示す塩基配列からなるDNA、
(2)配列番号2に示す塩基配列を含むDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアセチル−CoA アシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、
(3)配列番号1のアミノ酸配列をコードするDNA、または
(4)配列番号1のアミノ酸配列に、所望の活性が維持される範囲内で1または数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されたアミノ酸配列をコードするDNA
を有するものである。
(1)配列番号2に示す塩基配列からなるDNA、
(2)配列番号2に示す塩基配列を含むDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアセチル−CoA アシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、
(3)配列番号1のアミノ酸配列をコードするDNA、または
(4)配列番号1のアミノ酸配列に、所望の活性が維持される範囲内で1または数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されたアミノ酸配列をコードするDNA
を有するものである。
この遺伝子を適当なベクター、例えば、この遺伝子を宿主細胞中で発現させて対応する遺伝子産物としてのアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを生産するための構成を有するベクター中に発現可能に組み込むことで、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ生産用の組換えベクターを得ることができる。また、この組換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換することで、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ生産用の形質転換体を得ることができる。更に、この形質転換体を培養し、培養液からアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを回収することで、単離精製された組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを得ることができる。こうして得られた組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ調製物には、酵素活性に影響を及ぼす不純物の混入の可能性が極めて低く、酵素反応に好適に利用可能である。
本発明の3−オキソアシル−CoAのアシル−CoAへの変換方法は、上記の酵素調製物を用いるものである。本発明のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼは、従来知られていた基質に加えて、アルキル基に様々な置換基を導入した3−オキソアシルCoAの転移反応を触媒する活性を有する。具体的には、下記式[1]から式[16]に示す3−オキソアシルCoAを例示することができる;
[ただし式中R1およびaの組合せが下記(A)〜(C)のいずれかである3−オキソアシルCoAからなる群より選択される少なくとも一つである。
(A)R1が水素原子(H)であり、aが1から10の整数のいずれかである3−オキソアシルCoA、
(B)R1がハロゲン原子であり、aが1から10の整数のいずれかである3−オキソアシルCoA、
(C)R1が、
(A)R1が水素原子(H)であり、aが1から10の整数のいずれかである3−オキソアシルCoA、
(B)R1がハロゲン原子であり、aが1から10の整数のいずれかである3−オキソアシルCoA、
(C)R1が、
であり、aが1から8の整数のいずれかである。]
(式中R2は芳香環への置換基を示し、R2は水素原子(H)、ハロゲン原子、CN基、NO2基、COOR'(R' : H、Na、およびKのいずれかを表す)基、CH3基、C2H5基、C3H7基、CH=CH2基、CF3基、C2F5基、及びC3F7基からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、式中bは0から7の整数のいずれかを表す。)
(式中R3は芳香環への置換基を示し、R3は水素原子(H)、ハロゲン原子、CN基、NO2基、CH3基、C2H5基、C3H7基、SCH3基、CF3基、C2F5基、及びC3F7基からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、式中cは0から7の整数のいずれかを表す。)
(式中R4は芳香環への置換基を示し、R4は水素原子(H)、ハロゲン原子、CN基、NO2基、CH3基、C2H5基、C3H7基、CF3基、C2F5基、及びC3F7基からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、式中dは0から7の整数のいずれかを表す。)
(式中R5は芳香環への置換基を示し、R5は水素原子(H)、ハロゲン原子、CN基、NO2基、COOR'(R' : H、Na、K、CH3、及びC2H5のいずれかを表す)基、SO2R"(R" : OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、及びOC2H5のいずれかを表す)基、CH3基、C2H5基、C3H7基、CH(CH3)2基、及びC(CH3)3基からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、式中eは1から8の整数のいずれかを表す。)
(式中R6は芳香環への置換基を示し、R6は水素原子(H)、ハロゲン原子、CN基、NO2基、COOR'(R' : H、Na、K、CH3、及びC2H5のいずれかを表す)基、SO2R"(R" : OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、及びOC2H5のいずれかを表す)基、CH3基、C2H5基、C3H7基、CH(CH3)2基、及びC(CH3)3基からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、式中fは1から8の整数のいずれかを表す。)
(式中gは1から8の整数のいずれかを表す。)
(式中hは1から8の整数のいずれかを表す。)
(式中iは1から8の整数のいずれかを表す。)
(式中jは1から8の整数のいずれかを表す。)
(式中R7はシクロヘキシル基への置換基を示し、R7は水素原子(H)、ハロゲン原子、CN基、NO2基、CH3基、C2H5基、C3H7基、CF3基、C2F5基、及びC3F7基からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、式中kは0から8の整数のいずれかを表す。)
(式中R8はシクロヘキシルオキシ基への置換基を示し、R8は水素原子(H)、ハロゲン原子、CN基、NO2基、CH3基、C2H5基、C3H7基、CF3基、C2F5基、及びC3F7基からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、式中mは1から8の整数のいずれかを表す。)
(式中nは1から8の整数のいずれかを表す。)
(式中pは3または5のいずれかの整数を表す。)
(式中q1は1から8の整数のいずれかを表し、q2は0から8の整数のいずれかを表す。)
(式中R9は水素原子(H)、Na原子またはK原子であり、式中rは1から8の整数のいずれかを表す。)
本発明者らはフェニル吉草酸を基質として用いて、3−ヒドロキシフェニル吉草酸モノマーユニットを含むPHAを生産する能力を有する微生物の探索を行った。その結果、土壌より所望の能力を有する微生物株を分離することに成功し、YN21株とした。
本発明者らはフェニル吉草酸を基質として用いて、3−ヒドロキシフェニル吉草酸モノマーユニットを含むPHAを生産する能力を有する微生物の探索を行った。その結果、土壌より所望の能力を有する微生物株を分離することに成功し、YN21株とした。
以下に述べる菌学的性質から、バージェーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー・第1巻(Bergey‘s Manual of Systematic Bacteriology,Volume1)(1984年)、及び、バージェーズ・マニュアル・オブ・ディタミネーティブ・バクテリオロジー(Bergey‘s Manual of Determinative Bacteriology)第9版(1994年)に基づいて検索したところ、YN21株はシュードモナス属(Pseudomonas)に属すると判明した。従って、この菌株をシュードモナス・スピーシーズ・YN21株とそれぞれ命名した。
本発明にかかるアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ生産用の遺伝子は、シュードモナス スピーシーズ YN21株(Pseudomonas sp. YN21)から遺伝子工学的手法を用いて抽出単離することができる。この菌株は、unusualな置換基を有するポリヒドロキシアルカノエート生産菌として本発明者らが土壌より分離した微生物であり、寄託番号「FERM BP-08569」として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨木県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託されている。なお、YN21株の菌学的性質を列挙すれば以下の通りである。
<YN21株の菌学的性質>
1)形態学的性質
細胞の形と大きさ:桿菌、0.8μm×1.5〜2.0μm
細胞の多形性:なし
運動性:あり
胞子形成:なし
グラム染色性:−
コロニー形状:円形、全縁なめらか、低凸状、表層なめらか、光沢、半透明
2)生理学的性質
カタラーゼ活性:+
オキシダーゼ活性:+
O/F試験:酸化型
硝酸還元:+
インドール産生:−
アルギニンジヒドロラーゼ:+
エスクリン加水分解:−
ゼラチン加水分解:−
King's B寒天での蛍光色素産生:+
ポリ-β-ヒドロキシ酪酸の蓄積: −
Tween 80 の加水分解:+
41℃生育:−
グルコン酸還元:−
レバン産生:−
ジャガイモ腐敗:−
タバコ過敏感反応:−
スクロース:−
カゼイン:−
チロシナーゼ:+
硫化水素:−
ペクチン:−
レシチナーゼ:−
リトマスミルク:B
デンプン:−
3)基質資化能
ブドウ糖: +
L-アラビノース:+
D-マンノース:+
D-マンニトール:−
マルトース:−
グルコン酸:+
D-キシロース:(+)
ラフィノース:−
サリシン:−
グリセリン:+
D-セロビオース:−
D-メレチトース:−
ラクトース:−
ガラクトース:+
D-ソルビトール:−
α-メチル-D-グルコシド:−
D-リボース:(+)
スクロース:−
イノシトール:−
D-フルクトース:+
L-ラムノース:−
D-アラビノース:−
ズルシトール:−
メリビオース:−
アドニトール:−
デンプン:−
エリスリトール:−
トレハロース:−
ベタイン:+
DL-乳酸:+
D-酒石酸:−
L-酒石酸:(+)
メソ酒石酸:+
n-カプリン酸:+
L-リンゴ酸:(+)
クエン酸:+
D-サッカラート:+
レブリン酸:+
メサコン酸:−
マロン酸:+
コハク酸:+
酢酸:+
プロピオン酸:+
n-酪酸:+
ギ酸:−
グルタル酸:+
D-キナ酸:+
セバシン酸:+
p-ヒドロキシ安息香酸:+
アントラニル酸:−
ペラルゴン酸:+
グリセリン酸:+
γ-アミノ酪酸:+
L-ロイシン:+
L-セリン:+
ヒスチジン:+
L-イソロイシン:+
L-アルギニン:+
β-アラニン:+
L-チロシン:+
L-バリン:+
ホモセリン:−
サルコシン:+
トリアセチン:+
トリゴネリン:+
5-フェニル吉草酸:+
3-ヒドロキシ酪酸:+
L-アスパラギン:+
本発明のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼをコードするDNAのクローニングは、当該技術分野で既知の方法に従って行うことができる。まず、Pseudomonas sp. YN21の培養物からアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを精製し、それよりN末端アミノ酸配列を決定する。次いで精製アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを限定分解することにより得られたペプチド断片より、部分アミノ酸配列を決定し、該アミノ酸配列に基づいてオリゴヌクレオチドプライマーを設計する。ゲノムDNAを鋳型とし、これらのプライマーを用いてPCR(ポリメラーゼチェーン反応)を行い、アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子の一部(または全部)を含むPCR断片を得る。次に、該断片をプローブにサザンハイブリダイゼーションを行って、アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子の全配列を含むDNA断片を得る。さらに、この断片をサブクローニングして、コロニーハイブリダイゼーションを行い、陽性コロニーを取得する。これらのコロニーからプラスミドを抽出し塩基配列を決定する。
<YN21株の菌学的性質>
1)形態学的性質
細胞の形と大きさ:桿菌、0.8μm×1.5〜2.0μm
細胞の多形性:なし
運動性:あり
胞子形成:なし
グラム染色性:−
コロニー形状:円形、全縁なめらか、低凸状、表層なめらか、光沢、半透明
2)生理学的性質
カタラーゼ活性:+
オキシダーゼ活性:+
O/F試験:酸化型
硝酸還元:+
インドール産生:−
アルギニンジヒドロラーゼ:+
エスクリン加水分解:−
ゼラチン加水分解:−
King's B寒天での蛍光色素産生:+
ポリ-β-ヒドロキシ酪酸の蓄積: −
Tween 80 の加水分解:+
41℃生育:−
グルコン酸還元:−
レバン産生:−
ジャガイモ腐敗:−
タバコ過敏感反応:−
スクロース:−
カゼイン:−
チロシナーゼ:+
硫化水素:−
ペクチン:−
レシチナーゼ:−
リトマスミルク:B
デンプン:−
3)基質資化能
ブドウ糖: +
L-アラビノース:+
D-マンノース:+
D-マンニトール:−
マルトース:−
グルコン酸:+
D-キシロース:(+)
ラフィノース:−
サリシン:−
グリセリン:+
D-セロビオース:−
D-メレチトース:−
ラクトース:−
ガラクトース:+
D-ソルビトール:−
α-メチル-D-グルコシド:−
D-リボース:(+)
スクロース:−
イノシトール:−
D-フルクトース:+
L-ラムノース:−
D-アラビノース:−
ズルシトール:−
メリビオース:−
アドニトール:−
デンプン:−
エリスリトール:−
トレハロース:−
ベタイン:+
DL-乳酸:+
D-酒石酸:−
L-酒石酸:(+)
メソ酒石酸:+
n-カプリン酸:+
L-リンゴ酸:(+)
クエン酸:+
D-サッカラート:+
レブリン酸:+
メサコン酸:−
マロン酸:+
コハク酸:+
酢酸:+
プロピオン酸:+
n-酪酸:+
ギ酸:−
グルタル酸:+
D-キナ酸:+
セバシン酸:+
p-ヒドロキシ安息香酸:+
アントラニル酸:−
ペラルゴン酸:+
グリセリン酸:+
γ-アミノ酪酸:+
L-ロイシン:+
L-セリン:+
ヒスチジン:+
L-イソロイシン:+
L-アルギニン:+
β-アラニン:+
L-チロシン:+
L-バリン:+
ホモセリン:−
サルコシン:+
トリアセチン:+
トリゴネリン:+
5-フェニル吉草酸:+
3-ヒドロキシ酪酸:+
L-アスパラギン:+
本発明のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼをコードするDNAのクローニングは、当該技術分野で既知の方法に従って行うことができる。まず、Pseudomonas sp. YN21の培養物からアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを精製し、それよりN末端アミノ酸配列を決定する。次いで精製アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを限定分解することにより得られたペプチド断片より、部分アミノ酸配列を決定し、該アミノ酸配列に基づいてオリゴヌクレオチドプライマーを設計する。ゲノムDNAを鋳型とし、これらのプライマーを用いてPCR(ポリメラーゼチェーン反応)を行い、アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子の一部(または全部)を含むPCR断片を得る。次に、該断片をプローブにサザンハイブリダイゼーションを行って、アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子の全配列を含むDNA断片を得る。さらに、この断片をサブクローニングして、コロニーハイブリダイゼーションを行い、陽性コロニーを取得する。これらのコロニーからプラスミドを抽出し塩基配列を決定する。
このようにして取得されたアセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子をコードする塩基配列を、配列番号2に、また塩基配列から推定されたアセチル-CoAアシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列を、配列番号1にそれぞれ示す。
配列番号1に開示された内容に基づいて、通常の遺伝子組換え技術を用いて、アミノ酸の付加、欠失、挿入、置換等によりアセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ活性を保持している誘導体を得ることは当業者にとって容易である。ゆえにそのような常套手段で得られるアセチル-CoAアシルトランスフェラーゼの活性な誘導体も本発明の範囲に包含されるものである。
また、配列番号2に示す塩基配列を含むDNAのみならず、配列番号2に示す塩基配列を含むDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアセチル−CoA アシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAも、本発明の範囲に包含されるものである。
ここで、上記の「ストリンジェントな条件下にハイブリダイズ」するDNAとは、以下に示すDNAをいう。すなわち、(1)高イオン濃度下[例えば、6xSSC(900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム)等が挙げられる。]に、65℃の温度条件でハイブリダイズさせることにより配列番号1で示される塩基配列を含むDNAとDNA−DNAハイブリッドを形成し、(2)低イオン濃度下[例えば、0.1xSSC(15mMの塩化ナトリウム、1.5mMのクエン酸ナトリウム)等が挙げられる。]に、65℃の温度条件で30分間洗浄したあとでも該ハイブリッドが維持されるDNAをいう。具体的には、例えば、配列番号2で示される塩基配列において、その一部が、その遺伝子産物が所望とする酵素活性を有する範囲内で、欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなるDNAなどが挙げられる。かかるDNAは自然界からクローニングされたDNAであってもよいし、自然界からクローニングされたDNAに塩基の欠失、置換または付加が人為的に導入されたDNAであってもよく、また、人為的に合成されたDNAであってもよい。
本発明のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼをコードするDNAを、適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、様々な宿主内で発現可能なアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ発現ベクターを構築することができる。よって、以下の実施例で示す発現ベクター及び宿主細胞は、本発明のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼをコードするDNAの発現に適した多くのベクター及び宿主細胞の1例にすぎず、当業者ならば、当該技術分野での常法に従い、任意の宿主細胞内で機能的なアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ発現ベクターを構築することができる。プロモーターは既知のものから適宜選択するか、あるいは各種の遺伝子から利用可能なものを選択して、新たに調製、あるいは合成したものでもよい。このように、本発明の発現ベクターは本明細書記載の例示のプラスミドに限定されず、通常の技術を用いて修飾(例えば、プロモーターを交換する)することによって、異なる種類の微生物、また他の細胞内で機能的であり、及び/又はアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを高レベルに産生させることができる発現ベクターを構築することができる。
本発明のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼをコードするDNAを担持する発現ベクターで形質転換するために用いられる宿主細胞は、大腸菌等の原核細胞、酵母等の真核細胞のいずれでもよく、さらには一般的に利用されている高等生物の細胞でもよい。宿主細胞としては、微生物[原核生物(細菌、例えば大腸菌や枯草菌等)、真核生物(例えば酵母)]、動物細胞又は培養植物細胞が挙げられる。微生物の好ましい例は、原核生物、特にEscherichia属に属する菌株(例えば、E.coli等)、酵母、特にSaccharomyces属に属する株(例えば、S.cerevisiae)やCandida属に属する株(例えば、C.boidinii)である。好ましい動物細胞株は例えば、マウスL929細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などである。
宿主細胞として細菌、特に大腸菌を使用するのに適した、発現ベクターは既知であり、例えば、lacプロモーターやtacプロモーター等の慣用のプロモーターを有するものを挙げることができる。酵母でのアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼの発現のための発現ベクターとしては、GALプロモーターやAODプロモーター等のプロモーターを含有するものが好ましい。又、哺乳動物細胞でのアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ発現のための発現ベクターとしては、SV40プロモーター等のプロモーターを有するものが挙げられる。しかしながら、操作及び入手の容易さを考慮して、宿主細胞としては原核性宿主が好ましく、特に大腸菌が好ましい。原核性宿主−ベクター系については、多くの成書(例えばMolecular Cloning:A LABOLATORY MANUAL, Cold SpringHarbor Laboratory Press)があり、当該技術分野で既知であるが、以下に簡単に説明する。
例えば、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼをコードするDNAを大腸菌で発現させるには、大腸菌を用いた形質転換に適するプラスミドのプロモーターの下流に該DNAを挿入する。
後述する実施例では、大腸菌での1つの態様の発現が記載されているが、他の態様での発現は、例えば、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼをコードするDNAを適当な酵素(例えば制限酵素、アルカリホスファターゼ、ポリヌクレオチドキナーゼ、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼなど)で処理することによりアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼの酵素活性をコードするDNA断片を得、これを適当なベクターに組み込むことにより様々な宿主でアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ活性を有するペプチドを発現させることができ、これらのアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼも本発明の範囲に含まれる。
発現ベクターによる宿主細胞の形質転換方法は既知であり、Molecular Cloning:A LABOLATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載の方法で行うことができる。例えば、原核性宿主の場合は、コンピテントセル作製法、真核性宿主の場合は、コンピテントセル作製法、哺乳動物細胞の場合はトランスフェクション法、エレクトロポレーション法により行うことができる。次いで、得られた形質転換体を適当な培地に培養する。培地は、炭素源(例えばグルコース、メタノール、ガラクトース、フルクトース等)及び無機また有機窒素源(例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、ペプトン、カザミノ酸等)を含有していてよい。所望により、培地に他の栄養源(例えば無機塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム)、ビタミン類(例えばビタミンB1)、抗生物質(例えばアンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン等))を加えてもよい。哺乳動物細胞の培養には、イーグル培地が適当である。
形質転換体の培養は、通常、pH6.0〜8.0、好ましくはpH7.0、25〜40℃、好ましくは30〜37℃で8〜48時間行えばよい。生産されたアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼが培養液中に存在しているときは、培養物を濾過又は遠心分離する。精製は、回収した培養液上清から、天然又は合成のタンパク質の精製、単離に用いられる常法(例えば透析、ゲル濾過、対応する抗アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼモノクロナール抗体を用いてのアフィニティカラムクロマトグラフィー、適当な吸着剤を用いてのカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等)を用いて行うことができる。生産されたアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼが培養形質転換体のペリプラズム及び細胞質中に存在するときは、濾過や遠心分離によって細胞を集め、それらの細胞壁及び/又は細胞膜を、たとえば超音波及び/又はリゾチーム処理によって破壊して細胞破砕物を得る。この細胞破砕物に適当な水溶液(例えば緩衝液)を混合し、常法によって、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを精製することができる。
大腸菌中で生産されたアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを再生(リフォールディング)する必要があるときは、これを常法によって行うことができる。
尚、用途に応じてアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼは完全に精製されていなくとも良く、次の(1)〜(7)のいずれかであっても良い。
(1)生細胞:ろ過又は遠心分離等の通常の方法で培養物から分離された細胞。
(2)乾燥細胞:(1)の生細胞を凍結乾燥又は真空乾燥したもの。
(3)細胞抽出物:(1)又は(2)の細胞を通常の方法(例えば有機溶媒中での自己溶菌、アルミナや海砂と混合しての摩砕、又は超音波処理)して得られる。
(4)酵素溶液:細胞抽出物を常法通り精製するか部分精製することにより得られる。
(5)精製酵素:(4)に記載の酵素溶液をさらに精製し、不純物を含まないもの。
(6)酵素活性を有するフラグメント;精製酵素等を適当な方法で断片化処理することにより得られるペプチドフラグメント。
(7)固定化細胞又は酵素:細胞又は酵素を通常の方法で固定化(例えばポリアクリルアミド、ガラスビーズ、イオン交換樹脂等に固定化)したもの。
(1)生細胞:ろ過又は遠心分離等の通常の方法で培養物から分離された細胞。
(2)乾燥細胞:(1)の生細胞を凍結乾燥又は真空乾燥したもの。
(3)細胞抽出物:(1)又は(2)の細胞を通常の方法(例えば有機溶媒中での自己溶菌、アルミナや海砂と混合しての摩砕、又は超音波処理)して得られる。
(4)酵素溶液:細胞抽出物を常法通り精製するか部分精製することにより得られる。
(5)精製酵素:(4)に記載の酵素溶液をさらに精製し、不純物を含まないもの。
(6)酵素活性を有するフラグメント;精製酵素等を適当な方法で断片化処理することにより得られるペプチドフラグメント。
(7)固定化細胞又は酵素:細胞又は酵素を通常の方法で固定化(例えばポリアクリルアミド、ガラスビーズ、イオン交換樹脂等に固定化)したもの。
培地に分泌される場合(適当な分泌用シグナルをコードする領域をアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼをコードする領域に配置して、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを培養液中に分泌する場合も含む)は、培養物そのもの及びそれから精製される酵素(溶液、凍結乾燥品、断片化したフラグメント等)及び固定化酵素が培養物又は処理物の例として挙げられる。また、「酵素活性を有するフラグメント」は、(6)に記載のごとく、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ活性を有し、本発明の目的に有用なペプチドフラグメントを指す。そのようなフラグメントは、例えば、上記(5)の精製酵素を、適当な方法で断片化処理することにより得ることができる。
上記の培養物、その処理物(精製酵素標品及び酵素活性を有するフラグメントを含む)は、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ酵素活性を有し、例えば先に記載した構造式[1]から[16]で示される3−オキソアシル−CoAの転移反応の触媒活性を有する。
本発明方法に従って3−オキソアシル−CoAの転移反応を行うには、本発明のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼの基質である3−オキソアシル−CoAを含有する試料と、本発明のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを発現する形質転換体の培養物又はその処理物を、適当な反応用の媒体を必要に応じて用いて接触させる。培養物又はその処理物は水又は緩衝液中懸濁液(溶液)として用いる。pH、温度及び反応時間等の反応条件は特に限定されるものでなく、同様の酵素反応に通常用いられる条件から適宜選択するとよい。しかしながら、好ましくはpH6.0〜9.0、より好ましくはpH約7.0から8.0であり、反応温度は25〜50℃、好ましくは30〜40℃、より好ましくは約35℃である。反応系には、基質に対して1から10等量の、より好ましくは3等量以上の補酵素Aが必要である。
本発明のアセチル-CoAアシルトランスフェラーゼは、適当な固体支持体に固定化することができる。酵素の固定化は当該技術分野で既知の方法により行うことができる。例えば、担体結合法、架橋化法、包括法、複合法等によって行う。担体としては、高分子ゲル、マイクロカプセル、アガロース、アルギン酸、カラゲーナン、などがある。結合は共有結合、イオン結合、物理吸着法、生化学的親和力を利用し、当業者既知の方法で行う。このようにして得られた固定化酵素は、例えばポリ-3-ヒドロキシアルカノエート(PHA)の分解再利用プラントに有用である。
次下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、これらは本発明を制限するものではない。以下の実施例において用いたプラスミド類、様々な制限酵素やT4DNAリガーゼ、その他の酵素類は、市販品から入手し、供給者の指示に従って使用した。また、DNAのクローニング、各プラスミドの構築、宿主の形質転換、形質転換体の培養及び培養物からの酵素の回収は、当業者既知の方法、あるいは文献記載の方法に準じて行った。
(実施例1)
[シュードモナス スピーシーズ YN21株(Pseudomonas sp. YN21)由来のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子のクローニング]
1)YN21株の取得
ポリペプトン0.5%、フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%、粉末寒天1.2%を含むM9培地をオートクレーブ滅菌し、50℃に冷却後、ナイルレッドを0.05%含有するDMSO溶液を0.1%添加し、滅菌シャーレに15mlずつ分注し、寒天を固化させて寒天培地を作製した。
(実施例1)
[シュードモナス スピーシーズ YN21株(Pseudomonas sp. YN21)由来のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子のクローニング]
1)YN21株の取得
ポリペプトン0.5%、フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%、粉末寒天1.2%を含むM9培地をオートクレーブ滅菌し、50℃に冷却後、ナイルレッドを0.05%含有するDMSO溶液を0.1%添加し、滅菌シャーレに15mlずつ分注し、寒天を固化させて寒天培地を作製した。
なお、M9培地及びミネラル溶液の組成は以下に示す。
[M9培地]
Na2HPO4:6.2g、KH2PO4:3.0g、NaCl:0.5g、NH4Cl:1.0g(培地1リットル中、pH7.0)
[ミネラル溶液]
ニトリロ三酢酸:1.5 g、MgSO4:3.0 g、MnSO4:0.5 g、NaCl:1.0 g、FeSO4:0.1 g、CaCl2:0.1 g、CoCl2:0.1 g、ZnSO4:0.1 g、CuSO4:0.1 g、AlK(SO4)2:0.1 g、H3BO3:0.1 g、Na2MoO4:0.1 g、NiCl2:0.1 g(1リットル中、pH7.0)
次に野外から採取した土壌試料5gを10mlの滅菌蒸留水に添加し、1分間攪拌した。この土壌懸濁液0.5mlを4.5mlの滅菌水に添加・攪拌し、10倍希釈液を作製した。同様の操作を繰り返し、100倍希釈液、1000倍希釈液、10000倍希釈液を作製した。10倍〜10000倍希釈液を先に作製した寒天培地に各0.1mlずつ分注し、寒天表面に均一になるように広げた。これを培養器に移し、30℃で5日間培養した。培養後、PHAを合成したと思われる赤色のコロニーのうち、形態の異なる株を分離した。こうして野生株を十数株取得した。次に、ポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地(pH7.0)50mlに上記野生株を保存寒天培地のコロニーから植菌し、500ml容坂口フラスコにて30℃、125ストローク/分で振盪培養した。また上記培地をpH5.0、pH8.5にそれぞれ調整した培地に関しても同様に培養を行った。72時間後、菌体を遠心分離により回収し、冷メタノールにて洗浄した後、真空乾燥した。この乾燥菌体ペレットを酢酸エチル10mlに懸濁し、35℃で15時間攪拌してPHAを抽出した。抽出液を孔径0.45μmのメンブラン・フィルターで濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。この濃縮液を冷メタノール中に加えて、PHAを再沈澱させ、沈澱物のみを回収して真空乾燥し、得られたPHAを秤量してポリマー乾燥重量(PDW)を求めた。得られたPHAのモノマーユニット比を、1H−NMR(FT−NMR:BrukerDPX400;共鳴周波数:400MHz;測定核種:1H;使用溶媒:CDCl3;reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3;測定温度:室温)によって求めた。以上により得られたポリマー乾燥重量(PDW)及びモノマーユニット比を各野生株及び従来菌株に関して比較することで、PHA生産性を有するYN21株を取得した。
[M9培地]
Na2HPO4:6.2g、KH2PO4:3.0g、NaCl:0.5g、NH4Cl:1.0g(培地1リットル中、pH7.0)
[ミネラル溶液]
ニトリロ三酢酸:1.5 g、MgSO4:3.0 g、MnSO4:0.5 g、NaCl:1.0 g、FeSO4:0.1 g、CaCl2:0.1 g、CoCl2:0.1 g、ZnSO4:0.1 g、CuSO4:0.1 g、AlK(SO4)2:0.1 g、H3BO3:0.1 g、Na2MoO4:0.1 g、NiCl2:0.1 g(1リットル中、pH7.0)
次に野外から採取した土壌試料5gを10mlの滅菌蒸留水に添加し、1分間攪拌した。この土壌懸濁液0.5mlを4.5mlの滅菌水に添加・攪拌し、10倍希釈液を作製した。同様の操作を繰り返し、100倍希釈液、1000倍希釈液、10000倍希釈液を作製した。10倍〜10000倍希釈液を先に作製した寒天培地に各0.1mlずつ分注し、寒天表面に均一になるように広げた。これを培養器に移し、30℃で5日間培養した。培養後、PHAを合成したと思われる赤色のコロニーのうち、形態の異なる株を分離した。こうして野生株を十数株取得した。次に、ポリペプトン0.5%、グルコース0.5%、フェニル吉草酸0.1%、ミネラル溶液0.3%を含むM9培地(pH7.0)50mlに上記野生株を保存寒天培地のコロニーから植菌し、500ml容坂口フラスコにて30℃、125ストローク/分で振盪培養した。また上記培地をpH5.0、pH8.5にそれぞれ調整した培地に関しても同様に培養を行った。72時間後、菌体を遠心分離により回収し、冷メタノールにて洗浄した後、真空乾燥した。この乾燥菌体ペレットを酢酸エチル10mlに懸濁し、35℃で15時間攪拌してPHAを抽出した。抽出液を孔径0.45μmのメンブラン・フィルターで濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。この濃縮液を冷メタノール中に加えて、PHAを再沈澱させ、沈澱物のみを回収して真空乾燥し、得られたPHAを秤量してポリマー乾燥重量(PDW)を求めた。得られたPHAのモノマーユニット比を、1H−NMR(FT−NMR:BrukerDPX400;共鳴周波数:400MHz;測定核種:1H;使用溶媒:CDCl3;reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3;測定温度:室温)によって求めた。以上により得られたポリマー乾燥重量(PDW)及びモノマーユニット比を各野生株及び従来菌株に関して比較することで、PHA生産性を有するYN21株を取得した。
2)培養及び粗酵素液の調製
0.1%(v/v)ノナン酸、0.5%(w/v)ポリペプトンおよび0.5%(w/v)グルコースを加えたM9培地を用いて、Pseudomonas sp. YN21株を30℃で36時間前培養を行った。本培養には0.1%(v/v)ノナン酸 、0.5%ポリペプトン(w/v)および0.5%(w/v)グルコースを加えたM9培地を用い、前培養液を添加して30℃で24時間振とう培養した。
M9培地の組成は以下の通りである。
0.1%(v/v)ノナン酸、0.5%(w/v)ポリペプトンおよび0.5%(w/v)グルコースを加えたM9培地を用いて、Pseudomonas sp. YN21株を30℃で36時間前培養を行った。本培養には0.1%(v/v)ノナン酸 、0.5%ポリペプトン(w/v)および0.5%(w/v)グルコースを加えたM9培地を用い、前培養液を添加して30℃で24時間振とう培養した。
M9培地の組成は以下の通りである。
Na2HPO4: 6.2g
KH2PO4: 3.0g
NaCl : 0.5g
NH4Cl : 1.0g
微量成分溶液 : 0.3%(v/v)
(培地1リットル中、pH 7.0)
上記の微量成分溶液の組成は以下の通りである。
KH2PO4: 3.0g
NaCl : 0.5g
NH4Cl : 1.0g
微量成分溶液 : 0.3%(v/v)
(培地1リットル中、pH 7.0)
上記の微量成分溶液の組成は以下の通りである。
ニトリロ三酢酸: 1.5g
MgSO4 : 3.0g
MnSO4 : 0.5g
NaCl : 1.0g
FeSO4 : 0.1g
CaCl2 : 0.1g
CoCl2 : 0.1g
ZnSO4 : 0.1g
CuSO4 : 0.1g
AlK(SO4)2 : 0.1g
H3BO3 : 0.1g
Na2MoO4 : 0.1g
NiCl2 : 0.1g
(1リットル中)
その後、遠心分離(4℃,9500rpm,40分)して菌体を回収し、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で菌体を懸濁し再度遠心分離して回収することによって菌体を洗浄した。ついで100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で菌体を懸濁し、フレンチプレス処理によって菌体を破砕した。破砕液を遠心分離して、未破砕の細胞を沈殿として除き、上清を粗酵素液として調整した。
MgSO4 : 3.0g
MnSO4 : 0.5g
NaCl : 1.0g
FeSO4 : 0.1g
CaCl2 : 0.1g
CoCl2 : 0.1g
ZnSO4 : 0.1g
CuSO4 : 0.1g
AlK(SO4)2 : 0.1g
H3BO3 : 0.1g
Na2MoO4 : 0.1g
NiCl2 : 0.1g
(1リットル中)
その後、遠心分離(4℃,9500rpm,40分)して菌体を回収し、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で菌体を懸濁し再度遠心分離して回収することによって菌体を洗浄した。ついで100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で菌体を懸濁し、フレンチプレス処理によって菌体を破砕した。破砕液を遠心分離して、未破砕の細胞を沈殿として除き、上清を粗酵素液として調整した。
酵素活性は以下の力価の測定法に従って測定した。
力価の測定:
力価の測定:
上記の組成を有する反応液を1.0ml容石英セルに加えて37℃とし、これに酵素液20μlを加えて37℃にて反応せしめ、反応によつて消費される3−オキソオクタノイル−CoAの減少を波長303nmにて経時的に吸光度(OD303)測定する。測定において、1分間に1μmoleの3−オキソオクタノイル−CoAを消費する酵素量を1単位(1U)とする。また酵素活性は、次式に従う。
酵素活性(U/ml)=(1分間当りOD303)×1/13.5×1000/20
3)酵素の精製
調製した粗酵素液に、体積比で1/20量の50mM Tris-HCl(pH7.5)緩衝液で十分に平衡化したDEAE-cellulose樹脂を加え、15分間撹拌、10分間静置を2回繰り返し、バッチ法による吸着をおこなった。20分間静置してデカンテーションで上清を取り除き、50mM Tris-HCl(pH7.5)緩衝液で洗浄してからカラムにつめた。溶出はNaCl(0〜1M)のリニアグラジエントで行った。
酵素活性(U/ml)=(1分間当りOD303)×1/13.5×1000/20
3)酵素の精製
調製した粗酵素液に、体積比で1/20量の50mM Tris-HCl(pH7.5)緩衝液で十分に平衡化したDEAE-cellulose樹脂を加え、15分間撹拌、10分間静置を2回繰り返し、バッチ法による吸着をおこなった。20分間静置してデカンテーションで上清を取り除き、50mM Tris-HCl(pH7.5)緩衝液で洗浄してからカラムにつめた。溶出はNaCl(0〜1M)のリニアグラジエントで行った。
集めた活性画分は、10mMのNaClを含む50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)で平衝化したPhenyl-Sepharose CL-4Bにアプライした。同緩衝液で洗浄後、塩濃度とエチレングリコールの直線濃度勾配により溶出させた。活性画分はエチレングリコールを除去するため、回収後、50mMTris-HCl緩衝液(pH7.5)で一晩透析した。最後にDEAE−Toyopearlカラムクロマトグラフィーをおこなった。予め50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)で平衝化したカラムに、透析した活性画分をアプライした。同緩衝液で洗浄後、NaClによる塩濃度勾配により目的タンパクを溶出させた。これらのステップでアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを粗酵素液から回収率15%で、22倍に精製した。
得られた酵素標品を用いてSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を行い分子量の決定をした。SDS−PAGEは7.5重量%ゲルを用いてデービスの方法に従った。20mAの一定電流で2時間泳動後、染色はクマシーブリリアントブルーで行った。分子量既知の数種のタンパク(ミオシン、β−ガラクトシダーゼ、ホスホリラーゼB、牛血清アルブミン、オボアルブミン)を同様に泳動し、分子量マーカーを作成した。この結果より、生成酵素は分子量約41kDaのタンパク質であることがわかった。また等電点電気泳動の結果、本酵素の等電点は6.5であった。
得られた酵素標品を用いてSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を行い分子量の決定をした。SDS−PAGEは7.5重量%ゲルを用いてデービスの方法に従った。20mAの一定電流で2時間泳動後、染色はクマシーブリリアントブルーで行った。分子量既知の数種のタンパク(ミオシン、β−ガラクトシダーゼ、ホスホリラーゼB、牛血清アルブミン、オボアルブミン)を同様に泳動し、分子量マーカーを作成した。この結果より、生成酵素は分子量約41kDaのタンパク質であることがわかった。また等電点電気泳動の結果、本酵素の等電点は6.5であった。
4)部分アミノ酸配列の決定
上記の方法で精製した酵素標品を用いて、該酵素の部分アミノ酸配列を決定した。N末端アミノ酸の配列決定には、微量透析やゲル濾過により精製酵素標品を完全に脱塩したものをサンプルとし、プロテインシークエンサーに用いた。また、内部アミノ酸配列を解析する際には、精製タンパクを還元カルボキシメチル化して変性した後、Staphylococcal peptidase Iを作用させて断片化を行った。それぞれのペプチド断片はC18を用いた逆相カラムクロマトグラフィーにより分取し、プロテインシークエンサーで解析した。その結果、N末端からの27残基(配列番号3)と3つの内部領域(配列番号4、5、6)のアミノ酸配列が決定された。
上記の方法で精製した酵素標品を用いて、該酵素の部分アミノ酸配列を決定した。N末端アミノ酸の配列決定には、微量透析やゲル濾過により精製酵素標品を完全に脱塩したものをサンプルとし、プロテインシークエンサーに用いた。また、内部アミノ酸配列を解析する際には、精製タンパクを還元カルボキシメチル化して変性した後、Staphylococcal peptidase Iを作用させて断片化を行った。それぞれのペプチド断片はC18を用いた逆相カラムクロマトグラフィーにより分取し、プロテインシークエンサーで解析した。その結果、N末端からの27残基(配列番号3)と3つの内部領域(配列番号4、5、6)のアミノ酸配列が決定された。
5)オリゴヌクレオチドプライマーの設計
上記4)で得たアミノ酸配列から推定される塩基配列を基に、PCR(ポリメラーゼチェーン反応)に用いるためのプライマーを設計した(図1)。N末端領域及び配列番号4の内部領域の配列に基づいて、それぞれプライマーfadA-1F-1(配列番号7)及びfadA-1R-1(配列番号8)を合成した。なお、プライマーfadA-1R-1は、配列番号4のアミノ酸配列から推定される塩基配列のDNAに対する相補鎖として合成された。
上記4)で得たアミノ酸配列から推定される塩基配列を基に、PCR(ポリメラーゼチェーン反応)に用いるためのプライマーを設計した(図1)。N末端領域及び配列番号4の内部領域の配列に基づいて、それぞれプライマーfadA-1F-1(配列番号7)及びfadA-1R-1(配列番号8)を合成した。なお、プライマーfadA-1R-1は、配列番号4のアミノ酸配列から推定される塩基配列のDNAに対する相補鎖として合成された。
6)ゲノムDNAの調製
上記2)に記載したように、0.5%(w/v)ポリペプトンおよび0.5%(w/v)グルコースを加えたM9培地でPseudomonas sp. YN21株を30℃で36時間培養し、遠心分離(4℃、12,000rpm、20min)して生菌体を調製した。つぎにWizard Genomic DNA Purification System(プロメガ(株)製)を用いて、YN21株のゲノムDNAを調製した。
上記2)に記載したように、0.5%(w/v)ポリペプトンおよび0.5%(w/v)グルコースを加えたM9培地でPseudomonas sp. YN21株を30℃で36時間培養し、遠心分離(4℃、12,000rpm、20min)して生菌体を調製した。つぎにWizard Genomic DNA Purification System(プロメガ(株)製)を用いて、YN21株のゲノムDNAを調製した。
7)PCRによる部分配列の増幅
上記6)で調製したゲノムDNAをテンプレートに、5)で設計したプライマーを用いてPCR(ポリメラーゼチェーン反応)を行った。すなわち以下の反応混合液を調製した。
上記6)で調製したゲノムDNAをテンプレートに、5)で設計したプライマーを用いてPCR(ポリメラーゼチェーン反応)を行った。すなわち以下の反応混合液を調製した。
PCRは、変性[94℃で1分(1サイクル目だけ10分間)]、アニーリング(55℃で2分間)、伸長反応(72℃で3分間)からなる一連の処理を35サイクル繰り返して行った。PCR産物の確認はアガロース電気泳動(ゲル濃度1重量%)により行った。その結果、プライマーfadA-1F-1(配列番号7)とfadA-1R-1(配列番号8)により約700bの断片が増幅された。
8)PCR増幅断片のサブクローニング
上記7)で得た約700bのPCR産物をアガロース電気泳動(ゲル濃度1重量%)して精製した。目的物を含むゲルを切り出し、MinElute Gel Extraction Kit [(株)キアゲン製]を用いてDNA断片を回収した。次に回収したDNA断片を用いてpGEM-T Easy Vector Systems[プロメガ(株)製]によりTAクローニングを行った。
以下にライゲーション反応液の組成を示す。
上記7)で得た約700bのPCR産物をアガロース電気泳動(ゲル濃度1重量%)して精製した。目的物を含むゲルを切り出し、MinElute Gel Extraction Kit [(株)キアゲン製]を用いてDNA断片を回収した。次に回収したDNA断片を用いてpGEM-T Easy Vector Systems[プロメガ(株)製]によりTAクローニングを行った。
以下にライゲーション反応液の組成を示す。
上記の混合物を25℃で1時間インキュベートし、E.coli JM109コンピテントセルに形質転換した。アンピシリン50μg/ml、X-gal 50μg/ml、IPTG 0.1mMを含むLBアガロースプレートでホワイトコロニーを形質転換体として選択した。形質転換体より単離したプラスミドpGEM-fadAを各種制限酵素で消化し、アガロースゲル電気泳動で消化断片の解析を行ったところ、約700bのPCR断片がpGEM-T Easy VectorのEroRI、SpeIサイトに挿入されていることが判明した。pGEM-fadAの制限酵素切断地図を図2に示す。得られたプラスミドpGEM-fadA中の挿入部分(図2、PCR Product)の塩基配列をジデオキシ法により決定したところ、配列番号5の内部領域のアミノ酸配列をコードするDNA塩基配列が見出され、約700bのPCR増幅断片がアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼをコードするDNAの一部であることが確認できた。
9)サザンハイブリダイゼーション
上記6)で得たゲノムDNAを各種制限酵素で切断し、アガロースゲル電気泳動で分離し、これをナイロン膜に転写した。次いで、上記7)で増幅したPCR断片をジゴキシゲニンで標識してプローブとして用い、サザンハイブリダイゼーションを行った。その結果、EcoRIにより切断された約3.2kbの断片に陽性シグナルを得た。この約3.2kbのDNA断片をアガロースから切り出し、DNA回収用フィルター付遠心チューブ(孔径0.22μm、宝酒造(株)製)を用いて、10.000rpm、4℃、10分の遠心の後、エタノール沈澱を行うことで精製した。
上記6)で得たゲノムDNAを各種制限酵素で切断し、アガロースゲル電気泳動で分離し、これをナイロン膜に転写した。次いで、上記7)で増幅したPCR断片をジゴキシゲニンで標識してプローブとして用い、サザンハイブリダイゼーションを行った。その結果、EcoRIにより切断された約3.2kbの断片に陽性シグナルを得た。この約3.2kbのDNA断片をアガロースから切り出し、DNA回収用フィルター付遠心チューブ(孔径0.22μm、宝酒造(株)製)を用いて、10.000rpm、4℃、10分の遠心の後、エタノール沈澱を行うことで精製した。
10)コロニーハイブリダイゼーション
上記9)で精製された得られた約3.2kbのDNA断片を、同じくEcoRIで消化したpUC18(宝酒造社製:lacプロモーターを有する大腸菌用発現ベクター)にライゲーション(16℃、16時間)し、得られたライゲーション混合物を用いて大腸菌JM109株を形質転換した。次いで、上記7)で増幅したPCR断片をジゴキシゲニンで標識してプローブとして用い、コロニーハイブリダイゼーションを行った。ライゲーション、形質転換及びコロニーハイブリダイゼーションは、Maniatisらの方法(Molecular Cloning, a laboratory manual(2nd ed.),pp.1.62-1.104(1989) Sambrook,J.,Fritch,E.and Maniatis,T.(eds)Cold Spring Harbor Laboratory)に従った。その結果、800個のコロニーから10個の陽性コロニーを得た。得られた陽性コロニーからプラスミドを抽出し、塩基配列を決定した。その結果、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼの全長に相当する塩基配列を含有するプラスミドpUC-fAを保有するクローンを1株得た(大腸菌形質転換体(E.coli JM109/pUC-fA))。このプラスミドpUC-fAの制限酵素切断地図を図3に示す。このプラスミドのアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子をコードする部分の塩基配列を決定し、推定のアミノ酸配列を決定した。結果を配列番号9及び図4及び5に示す。図4及び5における下線は、プロテインシーケンサーにより決定したN末端および内部アミノ酸配列を表す。
上記9)で精製された得られた約3.2kbのDNA断片を、同じくEcoRIで消化したpUC18(宝酒造社製:lacプロモーターを有する大腸菌用発現ベクター)にライゲーション(16℃、16時間)し、得られたライゲーション混合物を用いて大腸菌JM109株を形質転換した。次いで、上記7)で増幅したPCR断片をジゴキシゲニンで標識してプローブとして用い、コロニーハイブリダイゼーションを行った。ライゲーション、形質転換及びコロニーハイブリダイゼーションは、Maniatisらの方法(Molecular Cloning, a laboratory manual(2nd ed.),pp.1.62-1.104(1989) Sambrook,J.,Fritch,E.and Maniatis,T.(eds)Cold Spring Harbor Laboratory)に従った。その結果、800個のコロニーから10個の陽性コロニーを得た。得られた陽性コロニーからプラスミドを抽出し、塩基配列を決定した。その結果、アセチル−CoAアシルトランスフェラーゼの全長に相当する塩基配列を含有するプラスミドpUC-fAを保有するクローンを1株得た(大腸菌形質転換体(E.coli JM109/pUC-fA))。このプラスミドpUC-fAの制限酵素切断地図を図3に示す。このプラスミドのアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子をコードする部分の塩基配列を決定し、推定のアミノ酸配列を決定した。結果を配列番号9及び図4及び5に示す。図4及び5における下線は、プロテインシーケンサーにより決定したN末端および内部アミノ酸配列を表す。
(実施例2)
[組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子発現ベクターの構築、組換えタンパク質の発現、精製および活性測定]
実施例1で決定されたPseudomonas sp. YN21株のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子の塩基配列(配列番号2)に基づいて、アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子を遺伝子発現ベクターpGEX-6P-1(アマシャム バイオサイエンス(株)製)にリクローニングするため、PCRプライマーfadA-for(配列番号10)およびfadA-rev(配列番号11)を設計・合成した。
[組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子発現ベクターの構築、組換えタンパク質の発現、精製および活性測定]
実施例1で決定されたPseudomonas sp. YN21株のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子の塩基配列(配列番号2)に基づいて、アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子を遺伝子発現ベクターpGEX-6P-1(アマシャム バイオサイエンス(株)製)にリクローニングするため、PCRプライマーfadA-for(配列番号10)およびfadA-rev(配列番号11)を設計・合成した。
実施例1で調製したプラスミドpUC-fAをテンプレートに、設計したプライマーfadA-for(配列番号10)およびfadA-rev(配列番号11)を用いてPCR(ポリメラーゼチェーン反応)を行った。以下の反応混合液を調製した。
PCRは、変性[94℃で1分(1サイクル目だけ10分間)]、アニーリング(55℃で2分間)、伸長反応(72℃で3分間)からなる一連の処理を35サイクル繰り返して行った。PCR産物の確認はアガロース電気泳動(ゲル濃度1重量%)により行った。その結果、プライマーfadA-for(配列番号10)とfadA-rev(配列番号11)により約1.3kbの断片が増幅された。
上記PCRに用いたプライマー;fadA-for(配列番号10)およびfadA-rev(配列番号11)中には予めそれぞれ制限酵素BamHIの認識部位と制限酵素EcoRIの認識部位が含まれている。そこで約1.3kbのPCR増幅産物を制限酵素BamHIとEcoRIで消化した。消化断片をプラスミドpGEX-6P-1(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)の対応する部位に挿入した。このベクター(pGEX-fadA)を用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。得られた菌株をLB-Amp培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その1mLを、100mLのLB-Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加 (終濃度 1mM) し、37℃で4~12時間培養を続けた。IPTG 誘導した大腸菌を集菌 (8000×g、 2分、4℃) し、1/10 量の 4℃ PBSに再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心 (8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS-PAGEで確認した後、誘導発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion Sepharose 4B beads: アマシャムファルマシア・バイオテク社製)を用いて精製した。
使用したグルタチオンセファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオンセファロースを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、1分、4℃) した後、4重量%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオンセファロース 40μLを、無細胞抽出液1mL に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST-FadAをグルタチオンセファロースに吸着させた。
吸着後、遠心 (8000×g、 1分、4℃)してグルタチオンセファロースを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心 (8000×g、2分、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS-PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。精製されたGST融合タンパク質の分子量は約68kDaであった。次にGST融合タンパク質500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、発現タンパク質FadAの最終精製物を得た。発現精製タンパク質FadAのタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。精製タンパク質のアセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ活性の測定は前述の方法にて行った。
その結果、精製された組換え酵素の比活性は野生型酵素と同等であることがわかった。また、SDS-PAGEにより精製タンパク質は分子量約41kDaであることがわかった。さらに等電点電気泳動の結果、精製タンパク質の等電点は6.5であった。
(実施例3)
[7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAの5−フェニルバレリル−CoAへの変換]
7−フェニルヘプタノイル-CoAを合成するために次の組成の反応液を調製した。
50 mM Tris-HCl Buffer, pH7.5,
2 mM ATP,
5 mM MgCl2,
2 mM CoA,
2 mM 7−フェニルヘプタン酸,(Lancaster)、
0.1 units/ml acyl-CoA synthetase(Sigma社製)
上記反応液を37℃で恒温保持し、適時サンプリングし反応の進行をHPLCで分析した。サンプリングした反応溶液に硫酸を0.02 Nになるように添加して酵素反応を止めた後、n-heptaneで未反応の基質である7−フェニルヘプタン酸を抽出して除去した。HPLCによる分析には、RP18カラム(nucleosil C18、 7mm、 Knauser)を用い、25 mMリン酸緩衝液(pH 5.3)を移動相として、アセトニトリルの直線濃度勾配をかけて溶出し、ダイオードアレイ検出器で200から500 nmの吸光スペクトルをモニターすることによって、酵素反応によって生成したチオエステル化合物を検出した。
[7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAの5−フェニルバレリル−CoAへの変換]
7−フェニルヘプタノイル-CoAを合成するために次の組成の反応液を調製した。
50 mM Tris-HCl Buffer, pH7.5,
2 mM ATP,
5 mM MgCl2,
2 mM CoA,
2 mM 7−フェニルヘプタン酸,(Lancaster)、
0.1 units/ml acyl-CoA synthetase(Sigma社製)
上記反応液を37℃で恒温保持し、適時サンプリングし反応の進行をHPLCで分析した。サンプリングした反応溶液に硫酸を0.02 Nになるように添加して酵素反応を止めた後、n-heptaneで未反応の基質である7−フェニルヘプタン酸を抽出して除去した。HPLCによる分析には、RP18カラム(nucleosil C18、 7mm、 Knauser)を用い、25 mMリン酸緩衝液(pH 5.3)を移動相として、アセトニトリルの直線濃度勾配をかけて溶出し、ダイオードアレイ検出器で200から500 nmの吸光スペクトルをモニターすることによって、酵素反応によって生成したチオエステル化合物を検出した。
次に、得られた7−フェニルヘプタノイル-CoAを用いて、7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAを、次の様にして合成した。乳酸デヒドロゲナーゼによるピルビン酸からのNAD+再生系と共役させることで、7−フェニルヘプタノイル-CoAから順次酵素反応にて7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAを合成するために、次の組成の反応液を調製した;
50mM Tris-HCl Buffer, pH8.0,
1mM ピルビン酸,
0.5mM NAD+,
1unit/ml 乳酸デヒドロゲナーゼ(Sigma-Aldrich),
0.02units/ml, アシル-CoAオキシダーゼ(from Arthrobacter sp., Sigma-Aldrich),
0.5units/mlクロトナーゼ(from bovine liver, Sigma-Aldrich),
0.5units/ml, 3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ(from Porcine heart, Sigma-Aldrich),
0.01重量%ウシ血清アルブミン,
60μM 7−フェニルヘプタノイル-CoA
上記反応液を30℃で恒温保持した。Mg2+−enolate複合体の形成を303nmの吸光度の増大でモニターしながら、70%以上の変換が成されたところで1M KH2PO4を加えてpHを5.5にすることで反応を終結させた。続いて基質と生産物を、Amicon Centriprep membrane(molecular mass cutoff of 10,000)を用いて酵素と分離した。次にC18カートリッジ(C18 silica Bondelut 500mg, 3ml, Valian Benelux)を用いて7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAをメタノールで溶出して粗精製した。窒素気流下にメタノールを留去した後、残留物を50mM リン酸カリウム, pH5.5(BufferA)に溶解し、Econosphere C18カラム(150 x 4.6mm, 80Å, 5μm, Alltech)/Waters gradient HPLC systemにかけた。7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAはBufferA中アセトニトリルの直線濃度勾配で溶出し精製した。7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAの検出はCoA誘導体中のアデニン量を259nmの吸光度(ε, 16,400M-1 cm-1)で測定することで行った。また7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAの定量は、試料に25mMヒドロキシアミンを加えることによってチオエステル結合の選択的切断を惹起し、遊離したCoAをDTNB(ε, 14,100M-1 cm-1)で検出する(hydroxylamine/DTNB試験)ことによって行った。
50mM Tris-HCl Buffer, pH8.0,
1mM ピルビン酸,
0.5mM NAD+,
1unit/ml 乳酸デヒドロゲナーゼ(Sigma-Aldrich),
0.02units/ml, アシル-CoAオキシダーゼ(from Arthrobacter sp., Sigma-Aldrich),
0.5units/mlクロトナーゼ(from bovine liver, Sigma-Aldrich),
0.5units/ml, 3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ(from Porcine heart, Sigma-Aldrich),
0.01重量%ウシ血清アルブミン,
60μM 7−フェニルヘプタノイル-CoA
上記反応液を30℃で恒温保持した。Mg2+−enolate複合体の形成を303nmの吸光度の増大でモニターしながら、70%以上の変換が成されたところで1M KH2PO4を加えてpHを5.5にすることで反応を終結させた。続いて基質と生産物を、Amicon Centriprep membrane(molecular mass cutoff of 10,000)を用いて酵素と分離した。次にC18カートリッジ(C18 silica Bondelut 500mg, 3ml, Valian Benelux)を用いて7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAをメタノールで溶出して粗精製した。窒素気流下にメタノールを留去した後、残留物を50mM リン酸カリウム, pH5.5(BufferA)に溶解し、Econosphere C18カラム(150 x 4.6mm, 80Å, 5μm, Alltech)/Waters gradient HPLC systemにかけた。7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAはBufferA中アセトニトリルの直線濃度勾配で溶出し精製した。7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAの検出はCoA誘導体中のアデニン量を259nmの吸光度(ε, 16,400M-1 cm-1)で測定することで行った。また7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAの定量は、試料に25mMヒドロキシアミンを加えることによってチオエステル結合の選択的切断を惹起し、遊離したCoAをDTNB(ε, 14,100M-1 cm-1)で検出する(hydroxylamine/DTNB試験)ことによって行った。
合成した7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAを用いて、実施例1および実施例2で精製したアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼによる5−フェニルバレリル−CoAへの変換反応を行った。すなわち、まず、次の組成の反応液を調製した。
50mM Tris-HCl Buffer, pH8.0,
60μM CoA,
10-60μM 7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoA
反応液を30℃で恒温保持し、新たなチオエステル結合の形成を233nmでの吸光度測定によりモニターした(ε, 4,500M-1 cm-1)。
50mM Tris-HCl Buffer, pH8.0,
60μM CoA,
10-60μM 7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoA
反応液を30℃で恒温保持し、新たなチオエステル結合の形成を233nmでの吸光度測定によりモニターした(ε, 4,500M-1 cm-1)。
また、次の組成の反応液を調製した。
50mM Tris-HCl, pH8.0,
5mM MgCl2,
0.01重量% ウシ血清アルブミン,
60μM CoA,
10-60μM 7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoA
反応液を30℃で恒温保持し、チオール開裂に伴うMg2+−enolate複合体の消失を303nmの吸光度測定によりモニターした(吸光係数はhydroxylamine/DTNB試験により決定した)。酵素活性の単位は1分間に1μモルの基質の利用若しくは生成物の産生を1単位(Unit)としたとき、実施例1および実施例2で精製された酵素は同等の比活性を示し、7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAに対するKm は 9.1μM, CoA に対するKmは 9.0μM, Vmax は145μmol/min・mg proteinであった。
50mM Tris-HCl, pH8.0,
5mM MgCl2,
0.01重量% ウシ血清アルブミン,
60μM CoA,
10-60μM 7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoA
反応液を30℃で恒温保持し、チオール開裂に伴うMg2+−enolate複合体の消失を303nmの吸光度測定によりモニターした(吸光係数はhydroxylamine/DTNB試験により決定した)。酵素活性の単位は1分間に1μモルの基質の利用若しくは生成物の産生を1単位(Unit)としたとき、実施例1および実施例2で精製された酵素は同等の比活性を示し、7−フェニル−3−オキソヘプタノイル−CoAに対するKm は 9.1μM, CoA に対するKmは 9.0μM, Vmax は145μmol/min・mg proteinであった。
(実施例4)
[7−フェノキシ−3−オキソヘプタノイル−CoAの5−フェノキシバレリル−CoAへの変換]
実施例3に示した一連の手順と同様にして、7−フェノキシヘプタン酸から7−フェノキシ−3−オキソヘプタノイル−CoAを合成した。合成した7−フェノキシ−3−オキソヘプタノイル−CoAを基質として用い、実施例3と同様にしてアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼの活性測定を行った。その結果、実施例1および実施例2で精製された酵素は同等の比活性を示し、7−フェノキシ−3−オキソヘプタノイル−CoAに対するKm は 13.1μM, Vmax は112μmol/min・mg proteinであった。
[7−フェノキシ−3−オキソヘプタノイル−CoAの5−フェノキシバレリル−CoAへの変換]
実施例3に示した一連の手順と同様にして、7−フェノキシヘプタン酸から7−フェノキシ−3−オキソヘプタノイル−CoAを合成した。合成した7−フェノキシ−3−オキソヘプタノイル−CoAを基質として用い、実施例3と同様にしてアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼの活性測定を行った。その結果、実施例1および実施例2で精製された酵素は同等の比活性を示し、7−フェノキシ−3−オキソヘプタノイル−CoAに対するKm は 13.1μM, Vmax は112μmol/min・mg proteinであった。
(実施例5)
[変異型アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼの作製]
配列番号1のアミノ酸配列において、88番目のグリシンをアラニンに、143番目のチロシンをヒスチジンに、また207番目のスレオニンをバリンにそれぞれ置換した変異型アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼを作製した。それぞれのアミノ酸の置換は、遺伝子DNAのそれぞれ対応するコドンを、88番目のグリシンであればGGCをGCCに、143番目のチロシンであればTACをCATに、207番目のスレオニンであればACCをGTCにそれぞれ塩基を置換することによって行った。それぞれの変異型アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼは、実施例2で作製した組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子発現ベクター(pGEX-fadA)をテンプレートプラスミドとして、QuickChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用いて行った。アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼの野生型(FadA[wt])に対して、88番目のグリシンをアラニンに置換したもの(FadA[G88A])、143番目のチロシンをヒスチジンに置換したもの(FadA[Y143H])、207番目のスレオニンをバリンに置換したもの(FadA[T207V])、さらにこれらの組合せとして、FadA[G88A, Y143H]、FadA[G88A, T207V]、FadA[Y143H, T207V]、FadA[G88A, Y143H, T207V] の計7種類の変異型アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼを発現する遺伝子発現ベクターを構築し、実施例2に述べた方法によって、各種アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼを精製した。精製した各種アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼの酵素活性を実施例1に述べた方法によって測定した。
[変異型アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼの作製]
配列番号1のアミノ酸配列において、88番目のグリシンをアラニンに、143番目のチロシンをヒスチジンに、また207番目のスレオニンをバリンにそれぞれ置換した変異型アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼを作製した。それぞれのアミノ酸の置換は、遺伝子DNAのそれぞれ対応するコドンを、88番目のグリシンであればGGCをGCCに、143番目のチロシンであればTACをCATに、207番目のスレオニンであればACCをGTCにそれぞれ塩基を置換することによって行った。それぞれの変異型アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼは、実施例2で作製した組換えアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼ遺伝子発現ベクター(pGEX-fadA)をテンプレートプラスミドとして、QuickChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用いて行った。アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼの野生型(FadA[wt])に対して、88番目のグリシンをアラニンに置換したもの(FadA[G88A])、143番目のチロシンをヒスチジンに置換したもの(FadA[Y143H])、207番目のスレオニンをバリンに置換したもの(FadA[T207V])、さらにこれらの組合せとして、FadA[G88A, Y143H]、FadA[G88A, T207V]、FadA[Y143H, T207V]、FadA[G88A, Y143H, T207V] の計7種類の変異型アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼを発現する遺伝子発現ベクターを構築し、実施例2に述べた方法によって、各種アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼを精製した。精製した各種アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼの酵素活性を実施例1に述べた方法によって測定した。
その結果、精製された変異型アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼの比活性は野生型酵素と同等であることがわかった。また、各変異型アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼをコードするDNAは、(1)高イオン濃度下[6xSSC(900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム) に、65℃の温度条件でハイブリダイズさせることにより配列番号2で示される塩基配列を含むDNAとDNA−DNAハイブリッドを形成し、(2)低イオン濃度下[0.1xSSC(15mMの塩化ナトリウム、1.5mMのクエン酸ナトリウム)] に、65℃の温度条件で30分間洗浄したあとでも該ハイブリッドが維持され、ストリンジェントな条件下にハイブリダイズするDNAであることが確認された。DNA−DNAハイブリッドの検出はAlkPhos Direct Labelling and Detection System(アマシャム バイオサイエンス社製)を用いて行った。
(実施例6)
[3−オキソアシル−CoAのアシル−CoAへの変換]
実施例3に示した一連の手順と同様にして、
1)7,8−エポキシオクタン酸から7,8−エポキシ−3−オキソオクタノイル−CoAを、
2)5−(4−フルオロベンゾイル)吉草酸から5−(4−フルオロベンゾイル)−3−オキソバレリル−CoAを、
3)5−{[(4−フルオロフェニル)メチル]スルファニル}吉草酸から5−{[(4−フルオロフェニル)メチル]スルファニル}−3−オキソバレリル−CoAを、
4)4−(フェニルスルファニル)酪酸から4−(フェニルスルファニル)−3−オキソブチリル−CoAを、
5)5−フェニルメチルオキシ吉草酸から5−フェニルメチルオキシ−3−オキソバレリル−CoAを、
6)5−(2−チエニル)吉草酸から5−(2−チエニル)−3−オキソバレリル−CoAを、
7)5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸から5−(2−チエニルスルファニル)−3−オキソバレリル−CoAを、
8)5−(2−チエノイル)吉草酸から5−(2−チエノイル)−3−オキソバレリル−CoAを、
9)4−シクロヘキシル酪酸から4−シクロヘキシル−3−オキソブチリル−CoAを、10)4−シクロヘキシルオキシ酪酸から4−シクロヘキシルオキシ−3−オキソブチリル−CoAを、
11)5-(メチルチオ)吉草酸から5-(メチルチオ) −3−オキソバレリル−CoAを、
それぞれ合成した。
[3−オキソアシル−CoAのアシル−CoAへの変換]
実施例3に示した一連の手順と同様にして、
1)7,8−エポキシオクタン酸から7,8−エポキシ−3−オキソオクタノイル−CoAを、
2)5−(4−フルオロベンゾイル)吉草酸から5−(4−フルオロベンゾイル)−3−オキソバレリル−CoAを、
3)5−{[(4−フルオロフェニル)メチル]スルファニル}吉草酸から5−{[(4−フルオロフェニル)メチル]スルファニル}−3−オキソバレリル−CoAを、
4)4−(フェニルスルファニル)酪酸から4−(フェニルスルファニル)−3−オキソブチリル−CoAを、
5)5−フェニルメチルオキシ吉草酸から5−フェニルメチルオキシ−3−オキソバレリル−CoAを、
6)5−(2−チエニル)吉草酸から5−(2−チエニル)−3−オキソバレリル−CoAを、
7)5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸から5−(2−チエニルスルファニル)−3−オキソバレリル−CoAを、
8)5−(2−チエノイル)吉草酸から5−(2−チエノイル)−3−オキソバレリル−CoAを、
9)4−シクロヘキシル酪酸から4−シクロヘキシル−3−オキソブチリル−CoAを、10)4−シクロヘキシルオキシ酪酸から4−シクロヘキシルオキシ−3−オキソブチリル−CoAを、
11)5-(メチルチオ)吉草酸から5-(メチルチオ) −3−オキソバレリル−CoAを、
それぞれ合成した。
合成した各種3−オキソアシル−CoAを基質として用い、実施例3と同様にしてアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼの活性測定を行った。その結果、実施例1および実施例2で精製された酵素は同等の比活性を示した。
Claims (8)
- 以下の(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、アセチル−CoA アシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列。
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の付加、欠失、置換されたアミノ酸配列。 - 以下の(i)〜(iv)のいずれか1つのDNAを有し、アセチル−CoA アシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子:
(i)配列番号2に示す塩基配列からなるDNA。
(ii)配列番号2に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
(iii)配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするDNA。
(iv)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の付加、欠失、置換されたアミノ酸配列をコードするDNA。 - 請求項2に記載の遺伝子を有している組換えベクター。
- 請求項3に記載の組換えベクターを有する形質転換体。
- 大腸菌である請求項4に記載の形質転換体。
- 請求項4または5に記載の形質転換体を培養し、培養液からアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを回収することを特徴とするアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼの製造方法。
- 請求項6記載のアセチル−CoAアシルトランスフェラーゼを用いた、3−オキソアシル−CoAのアシル−CoAへの変換方法。
- 3−オキソアシル−CoAが式[1]から式[16]に示す群より選択されるものであることを特徴とする請求項7記載の変換方法;
(A)R1が水素原子(H)であり、aが1から10の整数のいずれかである3−オキソアシルCoA、
(B)R1がハロゲン原子であり、aが1から10の整数のいずれかである3−オキソアシルCoA、
(C)R1が、
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