JP2006199514A - 耐熱性被覆部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】真空、不活性雰囲気又は還元性雰囲気下において金属又はセラミックスを保持し、溶解、焼結又は熱処理するための耐熱性被覆部材であり、軽量且つ耐熱性が優れ、該金属やセラミックスと反応や溶着を起こし難く、使用可能回数の多い耐熱性被覆部材を提供することである。
【解決手段】熱膨張係数が2×10−6〜7.3×10−6/℃の炭素質材の表面に、少なくともWを含有する下地膜と、Yを主とする酸化物からなる上層皮膜を被覆してなることを特徴とする耐熱性被覆部材である。
【選択図】 なし

Description

本願発明は、真空、不活性雰囲気又は還元性雰囲気下において金属又はセラミックスを溶解、焼結又は熱処理を行う際に使用する耐熱性被覆部材に関するものである。
超硬合金やサーメット等を真空焼結する際に用いる敷板には、軽量で高温強度の高い炭素質材が多く使用されており、超硬合金等との反応と溶着を防ぐために、該炭素質材の表面にカーボンブラックや窒化アルミニウム等の粉末を塗布して、一般に用いられている。しかし、この方法では、焼結に使用するたびに、先に使用した塗布膜を清掃除去し、再塗布を行う必要があり、作業性と信頼性が著しく低くなると言う欠点がある。このため、敷板の表面に被焼結材と反応や溶着を起こし難い皮膜を被覆した耐熱性被覆部材が従来から提案されている。これらの具体的な例として、特許文献1は、炭素基板の上にスピネル構造を有する金属酸化物と酸化ジルコニウムとの複合酸化物、もしくは、この複合酸化物に酸化イットリウム又は酸化カルシウムを含む複合酸化物からなる皮膜の例が、特許文献2は、20〜50wt%のZrOを含むY−ZrO複合物の溶射皮膜を形成した例が、特許文献3は、20wt%以下のZrOを含有するY又は相当体積量の他の耐熱酸化物例えばAl又はそれらを組み合わせた例が、特許文献4は、非酸化物系セラミックスや炭化物系材料からなる基材が希土類元素含有酸化物を主成分とする膜で被覆された例が、特許文献5は、炭素質素材の表面にランタン系希土類金属酸化物を主成分とする皮膜の例が各々記載されている。
特公昭61−43318号公報 特開2002―179485号公報 特表2000―509102号公報 特開2003―73794号公報 特開2003―82402号公報
しかし、これらの特許文献1、2に開示されている従来技術では、皮膜中にクラックが入りやすく、焼結に数回用いると皮膜が剥がれてしまい、特許文献3は、Yを主とする皮膜の緻密性が劣るため、焼結に数回用いると皮膜が変質し、皮膜中にクラックが入り皮膜が剥がれてしまうとともに、焼結合金中のCやCoがYを主とする皮膜中に拡散し、焼結合金が溶着し易くなってしまい、特許文献4、5は、狭義の希土類元素、即ち、原子番号57〜71までのランタン系希土類元素のみを用いており、Yを希土類元素として発明の範囲内に扱っていない。
本発明が解決しようとする課題は、真空、不活性雰囲気又は還元性雰囲気下において金属又はセラミックスを保持し、溶解、焼結又は熱処理するための耐熱性被覆部材であり、軽量且つ耐熱性が優れ、該金属やセラミックスと反応や溶着を起こし難く、使用可能回数の多い耐熱性被覆部材を提供することである。
本願発明は、熱膨張係数が2×10−6〜7.3×10−6/℃の炭素質材の表面に、少なくともWを含有する下地膜と、Yを主とする酸化物からなる上層皮膜を被覆してなることを特徴とする耐熱性被覆部材である。このような皮膜構成を採用することによって、軽量で且つ耐熱性が優れる炭素質材の表面に、耐熱性と緻密性が優れ、金属又はセラミックスとの反応や溶着が起こり難い皮膜を密着性良く被覆することができ、真空、不活性雰囲気又は還元性雰囲気下において繰り返し使用出来る耐熱性被覆部材を実現できることを見いだした。
本願発明によって、真空、不活性雰囲気又は還元性雰囲気下において金属又はセラミックスを保持し、溶解、焼結又は熱処理するための耐熱性被覆部材であり、軽量で且つ耐熱性が優れ、該金属やセラミックスと反応や溶着を起こし難く、使用可能回数の多い耐熱性被覆部材を提供することができた。
本願発明は、基材として熱膨張係数が2×10−6〜7.3×10−6/℃の黒鉛質或いはカーボン質の炭素質材を用いることにより軽量且つ高温強度の高い基材が実現でき、少なくともWを含有する下地膜を介して、Yを主とする酸化物からなる上層皮膜を炭素質材の表面に被覆することにより、耐熱性と緻密性が高く金属又はセラミックスが溶着し難い上層皮膜を密着性良く被覆出来、金属又はセラミックスが溶着し難くしかも高温で繰り返し使用することの出来る、優れた特性を有する耐熱性被覆部材が実現できる。更に、炭素質材の熱膨張係数が4×10−6〜7.3×10−6/℃であることにより、熱膨張係数が8.9×10−6/℃と熱膨張係数が比較的大きいYを主とする皮膜の熱膨張係数と基材の熱膨張係数の差異が小さくなり、皮膜中にクラックや膜剥離が発生し難くなり、より繰り返し使用回数の多い耐熱性被覆部材が実現でき、好ましい。該下地膜のWの含有量が1質量%以上であることにより、皮膜の熱膨張係数と炭素質材の熱膨張係数の差異が小さくなるとともに、該炭素質材と下地膜との間により高い密着性が得られ、より繰り返し使用回数の多い耐熱性被覆部材が実現でき、好ましい。該上層皮膜のY含有量が50質量%以上であることにより、皮膜の耐熱性と耐溶着性が高まり、より繰り返し使用回数の多い耐熱性被覆部材が実現でき、好ましい。
本願発明の該下地膜の厚さは、5〜150μmであることにより、炭素質材と下地膜間に更に優れた密着性が得られ、更に寿命の長い耐熱性被覆部材を実現でき、好ましい。該下地膜部分の平均厚さが5μm未満の時は炭素質材と下地膜間の密着強度が低下し、150μmを越えて厚いと下地膜の応力が高くなり過ぎ、いずれも炭素質材と下地膜との界面部から被膜が剥離し易くなり、耐熱性被覆部材として繰り返し使用可能な回数が低下する欠点が現れる。
本願発明の上層皮膜部分の厚さは、20〜200μmであることにより、炭素質材の表面に、金属又はセラミックスとの反応や溶着が起こり難く、耐熱性と緻密性が優れ、寿命の長い該上層皮膜を安定して被覆することができ、好ましい。該上層皮膜部分の厚さが20μm未満になると、炭素質材の表面から炭素が上層皮膜中を拡散する等の理由で、金属又はセラミックスと反応し、金属又はセラミックスと敷板の間に溶着が発生し易くなる欠点が現れ、200μmを越えて厚いと、上層皮膜中にクラックが入りやすくなり、寿命が短くなる欠点が現れる。
本願発明の耐熱性被覆部材は、該下地膜のWの含有量が、上層皮膜との界面近傍よりも炭素質材との界面近傍の方が多いことにより、炭素質材から下地膜、上層皮膜間の熱膨張係数のマッチングが取り易くなり、各界面にクラックや剥離が発生し難く、優れた密着性が得られ、更に寿命の長い耐熱性被覆部材を実現でき、好ましい。ここで、下地膜の各箇所のW含有量は、各測定個所で検出された金属成分の総和を100質量%として測定するものとする。基板に用いる炭素質材の熱膨張係数が2×10−6〜7.3×10−6/℃であるのに対して、WCの特長は熱膨張係数が3.8×10−6/℃と小さく、炭素質材に近いことである。因みに、Yの熱膨張係数は8.9×10−6/℃と大きく、WC以外の炭化物TaC、MoC、NbC、HfC、ZrC、TiCの熱膨張係数は夫々5.5、5.7、6.2、6.6、9.1、10.2×10−6/℃と炭素質材に比べて大きい。このため、下地膜の基板側部分はWの含有量を多くすることにより熱膨張係数が低い炭素質材とマッチングさせ、上層皮膜側部分のW含有量を小さくし、Y等の含有量を高めることにより、熱膨張係数が高いYを主とする酸化物からなる上層皮膜に熱膨張係数をマッチングさせることが出来る。しかも、下地膜の基板側部分から上層皮膜側部分へとW含有量を減少させることによって熱膨張係数を徐々に大きくすることが出来るため、局所的な熱膨張係数のギャップを小さくすることが出来、繰り返し昇降温させても、各界面にクラックや剥離が生じにくくなり、より使用可能回数が多く、優れた特性を有する耐熱性被覆部材が実現できる。本願発明の耐熱性被覆部材は、基板に用いる炭素質材の熱膨張係数が4×10−6〜7.3×10−6/℃であることが、炭素質材、下地膜、上層皮膜間の熱膨張係数の差異を小さくでき、各箇所にクラックや剥離が発生し難くなり、更に優れた密着性が得られ、寿命の長い耐熱性被覆部材を実現でき、好ましい。本願発明の耐熱性被覆部材は、少なくとも炭素質材と下地膜との界面近傍に、Wの炭化物が形成されていることによって、より優れた密着性が得られ、より繰り返し使用可能回数が多くなり、好ましい。この理由は、炭素質材と下地膜との界面近傍に、Wの炭化物が形成されているため、炭素質材と下地膜との間に、夫々に共通の元素が存在し、相互により高い密着性が得られるためである。本願発明の耐熱性被覆部材は、少なくとも下地膜と上層皮膜の界面近傍にYとWの化合物が形成されていることによって、より優れた密着性が得られ、より繰り返し使用可能回数が多くなり、好ましい。この理由は、下地膜と上層皮膜の界面近傍にYとWの化合物が形成されているため、下地膜と上層皮膜との間に、夫々に共通の元素が存在し、相互により高い密着性が得られるためである。
本願発明の耐熱性被覆部材は、少なくとも1500℃以上の真空雰囲気中で45時間以上保持する熱処理により、該炭素質材と該下地膜との界面近傍にWの炭化物が形成されること、及び/又は該下地膜と該上層皮膜との界面近傍にYとWの化合物が形成されることによって、より優れた密着性が得られ、より繰り返し使用可能回数が多くなり、好ましい。この理由は、少なくとも1500℃以上の真空雰囲気中で45時間以上保持する熱処理により、該炭素質材と該下地膜との界面近傍にWの炭化物が形成される、及び/又は該下地膜と該上層皮膜との界面近傍にYとWの化合物が形成されるため、夫々の界面近傍に、該界面上下部に共通の元素が存在し、相互により高い密着性が得られるためである。本願発明の耐熱性被覆部材は、超硬合金又はサーメットを焼結するためのセッター、トレー、サヤ等の焼結用冶具に適用する場合、焼結時の炭素雰囲気を制御し易く、しかも超硬合金やサーメット中のCoに起因する溶着を防止する効果が得られ、好ましい。
本願発明の耐熱性被覆部材は、上層皮膜中にAl及び/又はZrをトータル10質量%以下含有していても良い。Alを含有することにより、上層皮膜の緻密性が高まる長所が現れるが、耐熱性が低下する欠点が現れる。また、Zrを含有することにより、2680℃のZrOの融点が、2400℃のYの融点より高いために、該皮膜の耐熱性が高まる長所が現れるが、クラックが入りやすくなる欠点が現れる。本願発明の耐熱性被覆部材は、上層皮膜の表面側に、更に、Yb等の希土類やZr、Al等の酸化物からなる皮膜を被覆しても良い。これらの皮膜を更に被覆することにより、本願発明の耐熱性被覆部材を用いて処理する金属やセラミックスにあわせて更に耐反応性や耐溶着性を高めるように皮膜構成を設計出来る。本願発明の耐熱性被覆部材における皮膜の形成方法として、溶射法、CVD法、塗布粉末やアルコキシド膜の焼成法などを挙げることができる。特に、より高温で、膜の厚い上層皮膜を密着性良く形成できるため、プラズマ溶射法を上層皮膜の形成方法に用いるのが好ましい。次に、本願発明の耐熱性被覆部材を実施例により具体的に説明するが、それら実施例により本願発明が限定されるものではない。
炭素質材の熱膨張係数の効果を明らかにするために、表1に示すような本発明例、比較例を作成した。
Figure 2006199514
表1に示す様に、熱膨張係数が夫々2、3.1、4、5、6、7.3×10−6/℃で、嵩比重が1.68〜1.99である炭素質材を基材に用いた。その表面をSiCと粒を用いてグリットブラスト処理した後、平均粒径が2μmのW金属粉末と平均粒径30μmのY粉末とを別々の入り口から送給する異粒子同時溶射法を用いて、膜厚方向にW/Y比の異なる下地膜及びYを主とする酸化物からなる上層皮膜を所定膜厚だけプラズマ溶射し、発明例1〜6を作製した。下地膜の溶射条件は、まずW金属粉末のみを20μm厚溶射した後、徐々にY粉末を加えてY/W比を増加させ、下地膜厚が約50μmの付近でW金属粉末とY粉末の質量比を50:50にさせ、その後は、W金属量を徐々に減少させ、下地膜厚が100μmに達した所で、W金属粉末の溶射を止めた。その後は、そのまま連続して、上層皮膜としてY粉末のみを100μm厚溶射した。溶射は、主プラズマガスにAr、第2ガスにHeを用い、作動電流650A、作動電圧40V、大気雰囲気中で行い、夫々の膜厚は溶射時間によって制御した。
下地膜の厚さの効果を明らかにするために発明例7〜14を作製した。発明例7〜9は熱膨張係数が4×10−6/℃の炭素質材の表面に、W金属粉末のみを夫々3、5、10μm厚溶射し下層皮膜を形成した後、Y粉末のみを100μm厚溶射することにより上層皮膜を被覆することにより作製した。発明例10〜14は、同様の炭素質材の表面に、まずW金属粉末のみを20μm厚溶射した後、徐々にY粉末を加えて予定下地膜厚の1/2厚付近でW金属粉末とY粉末の質量比を50:50にさせた後は、W金属粉末量を徐々に減少させ、下層皮膜厚が夫々の膜厚に達した所で、W金属粉末の溶射を止めることにより下層皮膜を被覆した後、その表面に、そのまま連続してY粉末のみを100μm厚溶射することにより上層皮膜を被覆し、作製した。
上層皮膜の厚さの効果を明らかにするために発明例15〜22を、熱膨張係数が4×10−6/℃の炭素質材の表面に、W金属粉末を約20μm厚溶射した後、徐々にY粉末を加えて下層皮膜厚が約50μmの所でW金属粉末とY粉末の質量比を50:50にさせた後は、W金属粉末量を徐々に減少させ、下層皮膜厚が100μmに達した所でW金属粉末の溶射を止めることにより下層皮膜を形成した後、その表面にそのまま連続してY粉末のみを夫々の膜厚に溶射することにより上層皮膜を被覆し作製した。下層皮膜中のW量に勾配をつける効果を明らかにするために、発明例23〜26を作製した。発明例23、24、25は、熱膨張係数が4×10−6/℃の炭素質材の表面に、W金属粉末/Y粉末を夫々100/0、50/50、1/99質量%の比率で混合した粉末を50μm厚溶射することにより下層皮膜を形成した後、Y粉末のみを100μm厚溶射することにより上層皮膜を被覆し、作製した。また、発明例26は、同様の炭素質材の表面に、1/99質量%の比率のW金属粉末/Y粉末混合粉末を約20μm厚溶射した後、徐々にY粉末の比率を高め、50μm厚で混合比が50/50質量%になった所でW金属粉末を止めて下層皮膜の被覆を終え、その後はY粉末のみを100μm厚溶射することにより上層皮膜を被覆し、作製した。
炭素質材と下層皮膜との界面近傍にWの炭化物が形成されている効果、及び、下層皮膜と上層皮膜との界面近傍にYとWの化合物が形成されている効果を明らかにするために、本発明例23と同じ炭素質材の上に、本発明例23と同じ組成と膜厚の下層皮膜と上層皮膜とを溶射したものの、溶射に異粒子同時溶射法を用いずに、通常の一種類の原料粉末のみを溶射出来る装置を用いて、下層皮膜と上層皮膜とを個別に溶射することにより、本発明例27を作製した。この時用いた溶射方法では、平均粒径が2μmのW金属粉末を溶射し下層皮膜を形成した後に、上層皮膜を溶射する前に、原料粉末を平均粒径30μmのY粉末と入れ替える必要があり、既に溶射された下層皮膜の表面温度は常温に戻っていた。この時の、溶射条件は主プラズマガスにAr、第2ガスにHeを用い、作動電流450A、作動電圧30Vと低電力側に設定し、大気雰囲気中で行った。
少なくとも1500℃以上の真空雰囲気中で45時間以上保持する熱処理により、炭素質材と下層皮膜との界面近傍にWの炭化物が形成されること、及び/又は下層皮膜と上層皮膜との界面近傍にYとWの化合物が形成される効果を明らかにするために、本発明例27と同じ炭素質材、下層皮膜、上層皮膜を同じ組成、膜厚、同じ溶射方法、条件で被覆した本発明例28を、更に、真空中、1500℃で45時間保持する熱処理を行った。
比較例として、炭素質材の熱膨張係数が本発明の範囲外である場合との差異を明らかにするため、熱膨張係数が1.5×10−6/℃である炭素質材を用いた以外は、全てが本発明例3と同じである比較例29を作製した。
下層皮膜を形成しない場合との差異を明らかにするため、下層皮膜を形成せずに直接、本発明例3と同じ上層皮膜を200μm厚形成した比較例30を作製した。また、本発明以外の元素を下層皮膜に用いた場合との差異を明らかにするため、下層皮膜としてTiを20μm厚溶射した後、本発明例3と同じ上層皮膜を被覆した比較例31を作製した。
本発明以外の元素を上層皮膜に用いた場合との差異を明らかにするため、本発明例23と同じ下層皮膜を有するものの、上層皮膜として平均粒径30μmのZrO粉末を100μm厚溶射した比較例32を作製した。
作製した耐熱性被覆部材の構成を評価するため、耐熱性被覆部材を基板に略垂直に破断して、その破断面を走査電子顕微鏡(日立製作所製、S−4200、以下、SEMと記す。)によって下地膜と上層皮膜の厚さを観察し、同時に、エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製S−792X1、以下、EDXと記す。)により各皮膜、及びそれらの組成を分析した。各皮膜の厚さと含有金属成分の分析結果を表1にまとめて示す。皮膜の組成は、分析された金属成分の総和を100%にして、各金属成分を質量%で表した。SEM観察とEDX分析の結果、本発明例1〜6は、下地膜が夫々100μm厚であり、その含有元素は、炭素質材との界面近傍(以下、下部側と表示)はWが100質量%、中央部がW50質量%、Yが50質量%であった。下地膜と上層皮膜との界面近傍(以下、上部側と表示)は、Wが1質量%、Yが99質量%であった。非金属成分としては炭素と酸素が極微量検出された。上層皮膜からは全体にYと酸素元素が検出された。本発明例7〜9は、下地膜が夫々3、5、10μm厚であり、その含有元素は、中央部でWが100質量%であり、非金属成分として炭素と酸素元素が検出された。上層皮膜は本発明例1〜6と同様にYの酸化物層が100μm厚形成されていた。本発明例10〜14は、下地膜の厚さは表1に示す通りであり、その含有元素は下部側でWが100質量%、中央部がW50質量%、Yが50質量%であり、上部側でWが1質量%、Yが99質量%であった。非金属成分は、下部側は炭素、中央部〜上部側は酸素が主に検出された。上層皮膜は本発明例1〜6と同様にYの酸化物層が100μm厚形成されていた。本発明例15〜22は、本発明例1〜6と同じ下地膜が100μm厚形成されており、上層皮膜は本発明例1〜6と同じYの酸化物層が夫々表1に示す膜厚に形成されていた。本発明例23〜26は、下地膜が50μmであり、その含有属元素は夫々の下部側、中央部、上部側でのW量が、本発明例23は全て100質量%、本発明例24は全て50質量%、本発明例25は全て1質量%であった。本発明例26は、下部側、中央部、上部側の順に1、3、50質量%であり、残の金属成分はYであり、非金属成分として、下部側は炭素、中央部〜上部側は酸素が検出された。上層皮膜は本発明例1〜6と同じYの酸化物層が100μm厚形成されていた。本発明例27と28とは、本発明例23と同様の組成と膜厚を有する下地膜と上層皮膜が形成されていた。
比較例29は、用いた炭素質材の熱膨張係数が1.5×10−6/℃と小さいものの、下地膜や上層皮膜を構成する元素と膜厚等は本発明例3と同じであった。比較例30は、下地膜を介することなく、炭素質材の表面に直接、本発明例3と同じ上層皮膜が200μm厚形成されていた。比較例31は、下地膜としてTi100質量%からなる皮膜が100μm厚形成され、その表面に、本発明例3と同じ上層皮膜が100μm厚形成されていた。比較例32は、本発明例23と同じ下地膜が50μm厚形成された表面に、Zrの酸化物層が100μm厚形成されていた。
各皮膜を構成する化合物と、炭素質材と下地膜との界面近傍及び下地膜と上層皮膜近傍に形成されている化合物をX線回折装置(理学電気(株)製、RTB−300)を用いて2θ−θ法により評価した。X線源にはCuのKα線、波長λ=0.154nmを用い、装置に内蔵されたソフトによりKα線とノイズとを除去して測定した。このX線解析は、上層皮膜表面側から炭素質板表面側へと徐々に機械的に研磨しながら、測定する箇所が現出する度にX線回折し、評価した。
上記のEDXとX線解析の結果を表1に示す。本発明例1〜23と比較例29には、上層皮膜がY(JCPDSファイル番号25−1200)等のYの酸化物から形成されており、上層皮膜と下地膜間の界面近傍にY12(同、15−447)等のYとWの化合物が形成され、下地膜と炭素質材の界面近傍にはWC(同、25−1047)、WC(同、35−776)等のWの炭化物が形成されていた。本発明例24〜26には、上層皮膜と下地膜間の界面近傍にY12等のYとWの化合物が形成され、下地膜と炭素質材の界面近傍にはWC、WC等のWの炭化物とともに少量のYC2(同、11−602)等のYの炭化物が形成されていた。これに対して、本発明例27には、いずれの界面にもWC、WC、YC、Y12等の生成物が検出されなかった。一方、熱処理を行った後の本発明例28には、上層皮膜と下地膜間の界面近傍にY12等のYとWの化合物が形成され、下地膜と炭素質材の界面近傍にはWC、WC等のWの炭化物が形成されていた。比較例30の皮膜と炭素質材の界面近傍にはYとともに、YCが生成されていた。比較例31の上層皮膜はY等のYの酸化物から形成されており、上層皮膜と下地膜間の界面近傍にYTiO(同、27−1481)等のYとTiの化合物が形成され、下地膜と炭素質材の界面近傍にはTiC(同、32−1383)等のTiの炭化物が形成されていた。比較例32の上層皮膜はZrO(同、37−1484)等のZrの酸化物が形成されており、上層皮膜と下地膜間の界面近傍にはW2Zr(同、14−387)、WZr(同、24−748)等のZrとWの化合物が生成され、下地膜と炭素質材の界面近傍にはWC、W2C等のWの炭化物が形成されていた。
本発明例1〜28と比較例29〜32との差異を評価するため、下地膜と上層皮膜を溶射したままの本発明例1〜27と比較例29〜32、及び、真空中、1500℃で45時間熱処理した後の本発明例28を敷板に用いて、WC−8質量%Co−0.3質量%V−0.6質量%Crの組成で、直径が3.75mm、長さ125mmの超硬合金からなる成形体100本を、真空中で1450℃に一時間保持する焼結テストを行った。この焼結テストを多数回行い、100本中1本以上の超硬合金材が各耐熱性被覆部材と溶着を起こすまでの回数を求め、これを耐熱性被覆部材の使用可能回数とした。その評価結果を表1と表2の両者にあわせて示す。用いた敷板の寸法は縦300mm、横300mm、厚さ7mmである。表1において、本発明例1〜6と比較例29とを比較する。ともに同じ下地膜と上層皮膜を有しているものの、炭素質材の熱膨張係数が1.5×10−6/℃と小さい比較例29は焼結テスト時の使用可能回数が50回であるのに対して、炭素質材の熱膨張係数が2×10−6〜7.3×10−6/℃である本発明例1〜6の使用可能回数は125回以上と、比較例29に比べて使用可能回数が2.5倍以上多く、耐熱性被覆部材として格段に優れていた。略同じ上層皮膜を有する本発明例3及び7〜14と比較例30、31とを比較する。ともに同じ組成と膜厚の上層皮膜が形成されているものの、下地膜が形成されていない比較例30と、下地膜がTiにより形成されている比較例31の焼結テスト使用可能回数が夫々40回と35回であるのに対して、少なくともWを含有する下地膜を有している本発明例3及び7〜14の使用可能回数は125回以上と、比較例30、31の3.1倍以上多く、耐熱性被覆部材として格段に優れていた。本発明例23と比較例32とを比較する。ともに同じ炭素質材と下地膜とを有しているものの、上層皮膜がYを主とせず、Zrを主とする酸化物からなっている比較例32の使用可能回数が45回であるのに対して、上層皮膜がYを主とする酸化物からなっている本発明例23の使用可能回数は105回と、比較例32の2.3倍多く、耐熱性被覆部材として格段に優れていた。
表1において、本発明例1〜6内を比較すると、炭素質材の熱膨張係数が4×10−6未満である本発明例1、2の使用可能回数が130回以下であるのに対して、4×10−6〜7.3×10−6/℃の範囲内にある本発明例3〜6の使用可能回数は200回以上と、1.5倍以上多く、優れていた。即ち、本発明は炭素質材の熱膨張係数が4×10−6〜7.3×10−6/℃の範囲内にあることが好ましい。本発明例3及び7〜14内を比較すると、下地膜の厚さが3μmである本発明例7の焼結テストに使用可能な回数が130回であるのに対して、下地膜の厚さが5μmである本発明例8は使用可能回数が170回と1.3倍多く、優れていた。また、下地膜の厚さが180μmである本発明例14の焼結テストに使用可能な回数が125回であるのに対して、下地膜の厚さが150μmである本発明例13は使用可能回数が165回と1.3倍以上多く、優れていた。即ち、本発明は下地膜の厚さが5〜150μmであることが好ましい。炭素質板の熱膨張係数、下地膜に含有される元素と膜厚、及び上層皮膜に含有される元素とが夫々同じであるものの、上層皮膜の厚さのみが異なる本発明例15〜22内を比較する。上層皮膜の厚さが15μmである本発明例15の焼結テストに使用可能な回数が105回であるのに対して、上層皮膜の厚さが20μmである本発明例16は使用可能回数が165回と1.5倍以上多く、優れていた。また、上層皮膜の厚さが220μmである本発明例22の焼結テストに使用可能な回数が105回であるのに対して、上層皮膜の厚さが200μmである本発明例21は使用可能回数が170回と1.6倍以上多く、優れていた。即ち、本発明は上層皮膜の厚さが20〜200μmであることが好ましい。炭素質材の熱膨張係数、下地膜を構成する元素と膜厚、上層皮膜を構成する元素と膜厚とが同じであるものの、下地膜中に含有されるW量分布が異なっている発明例11及び23〜26内を比較する。下地膜の下部側、中央部、上部側のWの比率が同じである本発明例23〜25と、Wの比率が上部側で大きくなっている本発明例26の焼結テストに使用可能な回数が140回以下であるのに対して、下地膜内に含有されているWの質量%が上層皮膜との界面近傍、即ち下地膜の上部側よりも、炭素質材との界面近傍、即ち下地膜の下部側の方が多い本発明例11は、焼結テストに使用可能な回数が190回と1.3倍以上多く、優れていた。即ち、本発明は含有されているWの質量%が、上層皮膜との界面直下よりも炭素質材との界面直上の方が多いことが好ましい。表1において、本発明例23〜27を比較する。これらは、炭素質材の熱膨張係数、下地膜を構成する元素と膜厚、上層皮膜を構成する元素と膜厚とが同じであるものの、各界面に炭素質材や皮膜との化合物が生成されているか否かが異なっている。炭素質材と下地膜との界面近傍、及び下地膜と上層皮膜との界面近傍に、炭素質材や両皮膜との化合物が生成されていない本発明例27の焼結テストに使用可能な回数が100回であるのに対して、下地膜と上層皮膜を溶射により形成した時に、炭素質材と下地膜との界面近傍にWC、WC等のWの炭化物が形成され、下地膜と上層皮膜との界面近傍にY12等のYとWの化合物が形成されている本発明例23は使用可能回数が135回と1.3倍以上多く、優れていた。即ち、本発明は、少なくとも炭素質材と下地膜との界面近傍にWの炭化物が形成されていること又は下地膜と上層皮膜との界面近傍にYとWの化合物が形成されていることが好ましい。
本発明例27と28間を比較する。これらは、炭素質材の熱膨張係数、下地膜を構成する元素と膜厚、上層皮膜を構成する元素と膜厚とが同じであるものの、炭素質材と下地膜との界面近傍、及び下地膜と上層皮膜との界面近傍に、炭素質材や両皮膜との化合物が生成されていない本発明例27の焼結テストに使用可能な回数が100回であるのに対して、1500℃の真空雰囲気中で45時間上保持する熱処理により、炭素質材と下地膜との界面近傍にWC、WC等のWの炭化物が形成され、下地膜と上層皮膜との界面近傍にY12等のYとWの化合物が形成されている本発明例28は使用可能回数が130回と1.3倍以上多く、優れていた。即ち、本発明は少なくとも1500℃以上の真空雰囲気中で45時間以上保持する熱処理により、該炭素質材と該下地膜との界面近傍にWの炭化物が形成されること又は該下地膜と該上層皮膜との界面近傍にYとWの化合物が形成されることが好ましい。

Claims (8)

  1. 熱膨張係数が2×10−6〜7.3×10−6/℃の炭素質材の表面に、少なくともWを含有する下地膜と、Yを主とする酸化物からなる上層皮膜が被覆されていることを特徴とする耐熱性被覆部材。
  2. 請求項1記載の耐熱性被覆部材において、該下地膜の厚さが5〜150μmであることを特徴とする耐熱性被覆部材。
  3. 請求項1又は2記載の耐熱性被覆部材において、該上層皮膜部分の厚さが20〜200μmであることを特徴とする耐熱性被覆部材。
  4. 請求項1乃至3いずれかに記載の耐熱性被覆部材において、該下地膜のWの含有量が質量%で、該上層皮膜との界面近傍よりも該炭素質材との界面近傍の方が多いことを特徴とする耐熱性被覆部材。
  5. 請求項1乃至4いずれかに記載の耐熱性被覆部材において、少なくとも該炭素質材と該下地膜との界面近傍にWの炭化物が形成されていることを特徴とする耐熱性被覆部材。
  6. 請求項1乃至5いずれかに記載の耐熱性被覆部材において、少なくとも該下地膜と該上層皮膜との界面近傍にYとWの化合物が形成されていることを特徴とする耐熱性被覆部材。
  7. 請求項1乃至4いずれかに記載の耐熱性被覆部材において、該炭素質材と該下地膜との界面近傍にWの炭化物が形成され又は該下地膜と該上層皮膜との界面近傍にYとWの化合物が形成されることを特徴とする耐熱性被覆部材。
  8. 請求項1乃至7いずれかに記載の耐熱性被覆部材において、該耐熱性被覆部材が超硬合金又はサーメットを焼結するための焼結用冶具であることを特徴とする耐熱性被覆部材。
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