JP2006193541A - ポリ乳酸系樹脂成形加工品 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度を効率的に向上させることにより、射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形などにおいて安定した加工性を発現しうるポリ乳酸系樹脂組成物からなるポリ乳酸系樹脂成形加工品を得ること。
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂と、懸濁重合により製造したガラス転移温度が60℃以上で体積平均粒子径が50〜500μmの範囲である重合体粒子100重量部を、乳化重合により製造した乳化重合体0.5〜30重量部で被覆したポリ乳酸系樹脂用増粘剤であって、前記懸濁重合により製造した重合体粒子がポリ乳酸系樹脂との反応性を有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂用増粘剤を配合したポリ乳酸系樹脂組成物を成形加工して得られるポリ乳酸系樹脂成形加工品。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂と、懸濁重合により製造したガラス転移温度が60℃以上で体積平均粒子径が50〜500μmの範囲である重合体粒子100重量部を、乳化重合により製造した乳化重合体0.5〜30重量部で被覆したポリ乳酸系樹脂用増粘剤であって、前記懸濁重合により製造した重合体粒子がポリ乳酸系樹脂との反応性を有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂用増粘剤を配合したポリ乳酸系樹脂組成物を成形加工して得られるポリ乳酸系樹脂成形加工品。
【選択図】 なし
Description
本発明は、射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形、特に異型、ボード、パイプなどの押出成形における成形加工性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物を成形加工して得られるポリ乳酸系樹脂成形加工品に関するものである。
ポリ乳酸系樹脂は生分解性を有し、土壌中や水中で微生物などの作用により分解され、最終的には無害な物質になることが知られており、最近注目されている。また、透明性、機械的特性、耐熱性などの物理的性質、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性などの化学的性質、経済性および再利用性の優れたポリマーであり、最近、シート、フィルム等の包装材料を中心に種々の分野で広く利用されている。
一方、ポリ乳酸系樹脂は、一般に溶融粘度の温度依存性が大きいため、融点以上の温度領域で実施される射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形において、また、とくに押出成形等の溶融加工においては、溶融粘度が低く不利である。
このため、ポリ乳酸系樹脂の成形加工性の向上を目的として、従来から、これらの樹脂と相溶性を有する共重合体を溶融粘度調整剤(増粘剤)として配合する検討がなされてきた。
例えば、ポリ乳酸系樹脂に対して、ポリテトラフルオロエチレンや(メタ)アクリル酸エステル系重合体を配合する方法(特許文献1、2参照)が開示されている。しかしながら、ボードや異型、パイプなどの押出成形において安定した成形性、表面性を確保するのに充分なレベルの溶融粘度の飛躍的な増大は認められるに至っていない。
そのため、押出成形において、引き取り不良、肉厚の不均一性等の寸法精度不良等に対する成形加工性改善、および成形品の収縮、光沢不足、表面荒れ等に対する表面性改善が強く望まれていた。
また、ポリ乳酸系樹脂は一般に加水分解して低分子量化しやすいことから溶融粘度がさらに低くなり、溶融加工が一層困難になる。このポリ乳酸系樹脂の加水分解反応は、乳化剤などのイオン性夾雑物の影響を受けて促進されやすいため、乳化剤が多く残存する乳化重合法を用いてポリ乳酸系樹脂組成物に用いる増粘剤を調製するのは不利である。
この問題を改善するための方法として、ポリ乳酸系樹脂組成物に用いる増粘剤の重合法としてイオン性夾雑物を殆んど使用しない重合法を選択することが考えられる。しかしながら、例えば、懸濁重合法などのイオン性夾雑物を殆んど使用しない重合法では、一般に得られる粒子の平均粒子径が大きくブロードになる傾向があるため、微粉が多く発生しやすく、脱水時における固液分離性が悪くなり、また脱水排水中へ微粉が流出するという問題がある。
更に、ポリ乳酸系樹脂への分散性をよくするために比較的低分子量の重合体を製造する場合、乾燥工程において重合体が熱融着したり、パウダーブロッキング性が悪化するという問題がある。
特開2002−129042号公報
特開2004−269720号公報
本発明はポリ乳酸系樹脂の溶融粘度を飛躍的に増大させ、射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形などにおいて、安定した成形加工を可能にし、かつ表面性が良好で耐衝撃性に優れた成形体を得るための増粘剤を含むポリ乳酸系樹脂組成物を成形加工して得られるポリ乳酸系樹脂成形加工品を得ることを課題とする。
また、低分子量の重合体を製造する場合における乾燥工程での熱融着の問題、例えば懸濁重合法においては微粉が多く発生し、脱水時にろ過性が悪いという問題、ポリ乳酸系樹脂を成形加工する場合の、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による溶融粘度の低下の問題を解決することを課題とする。
本発明者らは、前記のような実状に基づき鋭意検討を行なった結果、特定の種類および量の単量体混合物を例えば懸濁重合法により重合し、その重合体粒子の表面を特定の重合体粒子で被覆して得られる重合体をポリ乳酸系樹脂用の増粘剤として用いることにより、従来の技術には見られない飛躍的な増粘効果が得られ、前記課題が一挙に解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、ポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対して、ガラス転移温度が60℃以上かつ体積平均粒子径が50〜500μmの範囲であってポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)100重量部を、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(B−2)0.5〜30重量部で被覆した増粘剤(B)0.1〜50重量部を含有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂成形加工品に関する。
好ましい実施態様は、前記ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)が、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、イソシアナート基、酸無水物基、酸塩化物基から選ばれる1種または2種以上の反応性基を含有することを特徴とする、請求項1記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品に関する。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)が、(a)エポキシ基含有(メタ)アクリレート15〜100重量%、(b)これと共重合可能なビニルモノマー0〜85重量%[(a)と(b)を合わせて100重量%]を重合することにより得られ、重量平均分子量が1000〜40万であることを特徴とする、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品に関する。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)が、(a)エポキシ基含有(メタ)アクリレート15〜95重量%、(b)(a)以外の(メタ)アクリレート5〜85重量%、及び(c)これらと共重合可能なビニルモノマー0〜80重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合することにより得られ、重量平均分子量が4万〜15万であることを特徴とする、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品に関する。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)が、(a)エポキシ基含有(メタ)アクリレート15〜95重量%、(b)芳香族ビニルモノマー5〜85重量%、及び(c)これらと共重合可能な他のモノマー0〜80重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合することにより得られ、重量平均分子量が4万〜15万であることを特徴とする、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品に関する。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品が、射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形により得られることを特徴とする前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品に関する。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品が繊維状成形加工品である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品がシート状成形加工品である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品がフィルム状成形加工品である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品がパイプ状成形加工品である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品が異型成形加工品である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品がカード状成形加工品である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品が建築用部材である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品が農業用部材である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品が機械部材である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品が光学部材である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品が日用品部材である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品が電気機器である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品が電子機器である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品がOA機器である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品が自動車用部材である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂成形加工品が包装用材料である、前記のポリ乳酸系樹脂成形加工品に関する。
本発明のポリ乳酸系樹脂成形加工品を得るためのポリ乳酸系樹脂組成物は、溶融粘度が飛躍的に増大されており、射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形などにおいて安定した加工を可能とし、得られる成形加工品の表面性も改善される。
また本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂用の増粘剤は、例えば懸濁重合法により製造した場合は、低分子量であるためにガラス転移温度が低く、そのままでは製造時の乾燥工程における熱融着の問題や、パウダーブロッキング性の悪化等の問題が生じやすいが、その表面を例えば乳化重合法により得られた重合体粒子で被覆することにより、熱融着性を大幅に改善することができる。
また一般的にイオン性夾雑物が残存しやすい乳化重合法で増粘剤を製造した場合に比較し、本発明における増粘剤を用いた場合は、イオン性夾雑物のトータル量を抑制できることより、得られる樹脂成形加工品の諸物性が改善される。
本発明においては、ガラス転移温度が60℃以上かつ体積平均粒子径50〜500μmであってポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)100重量部を、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(B−2)0.5〜30重量部で被覆した増粘剤(B)を用いることに特徴を有する。
本発明のポリ乳酸系樹脂成形加工品を得るために用いられる増粘剤(B)は、たとえば、ポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜50重量部を配合することにより、ポリ乳酸系樹脂が本来有する、優れた物理的、化学的特性を損なうことなく、射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形などにおける溶融加工時の溶融粘度を飛躍的に向上させることができ、期待される効果を顕著に発現させることができる。
本発明における増粘剤(B)の調製に用いられるポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)は、ポリ乳酸系樹脂との反応性の観点から、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、イソシアナート基、酸無水物基、酸塩化物基から選ばれる1種または2種以上の反応性基を含有することが好ましい。中でもエポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基がより好ましく、エポキシ基が特に好ましい。
ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)の調製については特に限定されるものではないが、重合体粒子(B−1)を構成する単量体成分として、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有(メタ)アクリレート、アルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートなどの官能基を有する(メタ)アクリレートや、イソシアナート基、酸無水物基、酸塩化物基などの官能基を有する単量体などに例示されるポリ乳酸系樹脂と反応性を有する単量体を含有することが好ましい。中でも反応性が良好である点から、エポキシ基含有(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。なお、本発明において、特に断らない限り、例えば(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、たとえばグリシジルアクリレートなどのエポキシ基含有アクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリレートなどが例示されうる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは反応性を有する重合体粒子(B−1)中に、15〜100重量%、好ましくは15〜95重量%、さらに好ましくは20〜95重量%含まれることが、安定した射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形などが可能なレベルまでポリ乳酸系樹脂組成物の溶融粘度を向上させることが可能で優れたポリ乳酸系樹脂成形加工品が得られる点から好ましい。
前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートなどが例示されうる。前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸などが例示されうる。前記アルコキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、エトキシメタクリレート、エトキシアクリレート、メトキシメタクリレート、メトキシアクリレートなどが例示されうる。
本発明においては、ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)が、(a)エポキシ基含有(メタ)アクリレート15〜95重量%、(b)(a)以外の(メタ)アクリレート5〜85重量%、及び(c)これらと共重合可能なビニルモノマー0〜80重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合することにより得られることが好ましい。
前記(b)成分となる(a)以外の(メタ)アクリレートとしては特に制限はないが、たとえば2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレートなどのアルキル基の炭素数1〜8のアルキルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数1〜8のアルキルメタクリレートが好ましく例示されうる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらはポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)中に、0〜85重量%、好ましくは5〜85重量%、さらに好ましくは5〜80重量%含まれることが、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度を、安定した射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形が可能なレベルまで向上させることが可能で優れたポリ乳酸系樹脂成形加工品が得られる点から好ましい。
前記の(c)これらと共重合可能なビニルモノマーとしては、(a)エポキシ基含有(メタ)アクリレート、(b)(a)以外の(メタ)アクリレート等と共重合可能であれば特に制限はされないが、例えば、芳香族ビニルモノマーあるいはシアン化ビニルモノマーなどが例示されうる。前記芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレンなどが例示されうる。また前記シアン化ビニルモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが例示されうる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらはポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)中に、好ましくは0〜80重量%、より好ましくは0〜75重量%含まれることが、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度を、安定した射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形等が可能なレベルまで向上でき、優れたポリ乳酸系樹脂成形加工品が得られる点から好ましい。
本発明における反応性を有する重合体粒子(B−1)の屈折率については特に限定はないが、ポリ乳酸系樹脂成形加工品においてポリ乳酸系樹脂の優れた透明性を維持することを目的とする場合は、1.4〜1.5の範囲に調整することが好ましい。ポリ乳酸系樹脂がポリ乳酸の場合は屈折率を1.43程度にあわせることが、より好ましい。なお、本発明における屈折率とは23℃における値であり、例えば、文献値(ポリマーハンドブック第4版、JOHN WILEY&SONS社、等)をもとに計算して求めることができる。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)の重量平均分子量は特に限定はないが、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度を、安定した射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形等が可能なレベルまで向上できる点から、1000〜40万であることが好ましい。より好ましくは4万〜30万であり、さらに好ましくは4万〜20万であり、とくに好ましくは4万〜15万である。なお、前記重量平均分子量は、例えば、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、その可溶分を、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(WATERS社製、510型ポンプ410RI486UV)を使用して求めることができる(試料溶液:試料20mg/THF10mL、測定温度:25℃、検出器:示差屈折系、注入量:1mL)。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)は、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による溶融粘度の低下を抑制する効果が向上する観点から、懸濁重合法で製造することが特に好ましい。また、得られた重合体粒子(B−1)を、例えば乳化重合等により別途製造した重合体粒子(B−2)で被覆することが、本発明における増粘剤(B)のパウダーブロッキング性を改善するための必須条件である。前記重合体粒子(B−2)のビカット軟化温度は、パウダーブロッキング性の改善の観点から、80℃以上、更には85℃以上、特には90℃以上であることが好ましい。なお、ビカット軟化温度とはプラスチック試験片に荷重をかけて一定の速度で昇温させ、試験片が変形し始めるときの温度を意味し、例えば、JIS K−7206、A50法(試験荷重10N、初期温度50℃、昇温速度50℃/hr)により求めることができる。
例えば、前記ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)を懸濁重合法で製造する場合、公知の方法に従って、単量体混合物を適当な媒体、分散安定剤、重合開始剤および必要に応じて連鎖移動剤等の存在下で行うことができる。懸濁重合法において使用される前記媒体は、通常、水である。
前記分散安定剤としては、公知の無機系分散剤や有機系分散剤が使用できる。無機系分散剤としては、炭酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム等が例示され、また、有機系分散剤としては、デンプン、ゼラチン、アクリルアミド、部分ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸およびその塩、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、スルホン化ポリスチレン等の天然物および合成高分子分散剤、さらには、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩等の低分子分散剤あるいは乳化剤などが例示される。
前記重合開始剤としては特に限定はないが、公知の油溶性の重合開始剤などが使用されうる。例えば、通常の有機過酸化物、アゾ化合物などを単独で用いてもよい。好ましい有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドなどがあげられる。また、好ましいアゾ化合物としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどがあげられる。
前記連鎖移動剤としては特に限定はないが、例えばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−デシルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのアルキルエステルメルカプタンなどが使用され得る。中でも、成形加工時に臭気が発生しない点から2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのアルキルエステルメルカプタンが好ましい。
前記重合反応時の温度や時間なども特に限定はなく、目的に応じて所望の値になるように適宜調整すればよい。
懸濁重合法による製造方法としては、単量体または単量体混合物を水に懸濁させた後、重合反応を開始する方法、あるいは単量体または単量体混合物の一部を水に懸濁させ重合反応を開始し、重合反応の進行に伴い、残りの単量体あるいは単量体混合物の水懸濁液を1段あるいは数段に分けて、若しくは連続的に重合反応槽へ追加して重合反応を実施する方法等、公知の手法を用いることができる。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)は、体積平均粒子径が50〜500μmの範囲であることが好ましい。体積平均粒子径が50μmより小さい場合には、被覆するための(B−1)の単位体積当たりの(B−2)量が増加し過ぎて、イオン性夾雑物の観点から不利になる、重合後の脱水時にろ過性が悪化する、脱水後の樹脂中の含水率が高くなり乾燥効率が低下する等の傾向がある。逆に体積平均粒子径が500μmより大きい場合には、重合体粒子の重量平均分子量の制御が困難になる傾向がある。例えば懸濁重合により得られた重合体粒子の体積平均粒子径は、例えば、日機装株式会社製粒度分析計マイクロトラックFRA等を用いて測定することができる。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)は、乾燥工程等での熱融着性、パウダーブロッキング性の点から、ガラス転移温度が60℃以上であることが好ましく、さらには70℃以上であることがより好ましい。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)の製造法は特に限定されるものではないが、懸濁重合法により製造することが特に好ましい。懸濁重合法により製造した重合体粒子は乳化重合法により製造した重合体粒子と比較し、得られる重合体中に残存するイオン性夾雑物等を減少することができるため、本発明に係る増粘剤(B)中に残存するトータルのイオン性夾雑物量を減少できる。イオン性夾雑物量の減少により、ポリ乳酸系樹脂の加水分解が抑制され、溶融粘度の低下を抑制することが可能となる。
次に、本発明で用いられる増粘剤(B)における、重合体粒子(B−1)を被覆するための重合体粒子(B−2)について説明する。重合体粒子(B−2)については体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの範囲であれば特に制限はないが、中でもポリ乳酸系樹脂の品質改良剤として広範に用いられているものが、本発明の増粘剤(B)として回収した場合においても、それらの有する様々な品質向上効果を発現させることが可能となり、生産性を向上できるという点から、好ましい。具体的には、ビニル系単量体を乳化重合することにより得られる乳化重合体であることが好ましい。
重合体粒子(B−2)としては、例えば、(1)メチルメタクリレート50〜95重量%、炭素数2〜8のアルキル基を有するアルキルメタクリレート5〜50重量%、およびこれらと共重合可能なビニルモノマー0〜20重量%との混合物60〜95重量部を重合し、その生成重合体ラテックスの存在下にアルキルアクリレートおよびメチルメタクリレートを除くアルキルメタクリレートより選ばれた1種以上の単量体20〜80重量%、メチルメタクリレート20〜80重量%、およびこれらと共重合可能なビニルモノマー0〜20重量%との混合物5〜40重量部を合計量が100重量部になるように添加、重合することにより得られる乳化重合体、(2)メチルメタクリレート、共重合可能なモノマーおよび架橋性モノマーからなる混合物を重合してなる重合体の存在下に、アルキルアクリレート、共重合可能なモノマーおよび架橋性モノマーからなる混合物を重合して得られる2層重合体の存在下に、さらにアルキル(メタ)アクリレートおよび共重合可能なモノマーからなるモノマー混合物を重合してなる少なくとも3層構造を有する乳化重合体、(3)(a)ブタジエンモノマー30〜100重量%、芳香族ビニルモノマー0〜70重量%、共重合可能なビニルモノマー0〜10重量%、及び架橋性モノマー0〜5重量%を含むモノマー混合物を重合して得られるブタジエン系共重合体のコア40〜90重量部、(b)芳香族ビニルモノマー60〜98重量%、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を含有するアルキル(メタ)アクリレート2〜40重量%、及びこれらと共重合可能なビニルモノマー0〜20重量%を含むモノマー混合物を重合してなる内層シェル5〜40重量部、(c)芳香族ビニルモノマー10〜100重量%、アルキル基の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート0〜90重量%、及びこれらと共重合可能なビニルモノマー0〜50重量%を含むモノマー混合物を重合してなる外層シェル5〜20重量部[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量部]からなるコア−シェル型グラフト共重合体である乳化重合体、等が好ましく使用されうる。上記(1)〜(3)に記載した乳化重合体の一般的な製造方法は、例えば、特開平2−269755号公報等に詳細に記載されているが、これに限定されるものではない。
前記重合体粒子(B−2)の体積平均粒子径は、被覆効率の点から、体積平均粒子径0.01〜0.5μmの範囲が好ましく、0.05〜0.5μmの範囲がより好ましい。なお、粒子径が0.01〜0.5μmの範囲の重合体粒子(B−2)の体積平均粒子径は、例えば、日立製作所製のU−2000スペクトロフォトメーターを使用して546nmの波長の光散乱を用いて測定することができる。
本発明で用いられる増粘剤(B)の製造方法については特に制限はないが、例えば、懸濁重合により製造した体積平均粒子径が50〜500μmの重合体粒子(B−1)の懸濁液と、乳化重合により製造した体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(B−2)のラテックスを混合し、その混合物に電解質水溶液を接触させることにより、重合体粒子(B−1)を重合体粒子(B−2)で被覆することができる。ここで被覆とは、重合体粒子の表面を別の重合体粒子で覆うことであり、例えばより軟質の重合体粒子をより硬質の重合体粒子で被覆することによって、乾燥機内での付着やパウダー同士の融着を防止することができる。
体積平均粒子径が50〜500μmの重合体粒子(B−1)の懸濁液と体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(B−2)のラテックスの混合方法については特に制限はないが、重合体粒子(B−1)の懸濁液の攪拌下に、重合体粒子(B−2)のラテックスを添加、あるいは重合体粒子(B−2)のラテックスの攪拌下に重合体粒子(B−1)の懸濁液を添加することにより実施するのが好ましい。上記混合時における重合体粒子(B−2)のラテックスおよび重合体粒子(B−1)の懸濁液の固形分濃度についてはとくに制限はないが、通常の重合操作で得られる重合体ラテックスまたは重合体懸濁液をそのまま用いるのが製造上最も簡便である。通常は、乳化重合法による重合体ラテックスでは25〜45重量%、懸濁重合法による重合体懸濁液では33〜45重量%であるのが好ましい。混合時の温度は、その後の熱処理操作のユーティリティー使用量を考慮すると、5℃以上であることが好ましい。
次に、本発明で用いられる増粘剤(B)を製造するにあたり、上記の如く、重合体粒子(B−1)の懸濁液と重合体粒子(B−2)のラテックスの混合物に電解質水溶液を接触させることについて説明する。前記電解質水溶液との接触は、攪拌下に、重合体懸濁液と重合体ラテックスの混合物へ電解質水溶液を添加することにより実施するのが好ましい。この操作により、例えば重合体粒子(B−1)を懸濁重合法により製造する時に生成した重合体微粒子が、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(B−2)とともに体積平均粒子径が50〜500μmの重合体粒子(B−1)表面に凝析し、重合体粒子(B−1)の表面を被覆することができる。これにより、例えば懸濁重合法等において発生した重合体微粒子(微粉)を除去できるため、脱水時における固液分離性の悪化や、脱水排水中への重合体微粒子(微粉)の流出に関する問題を改善することができる。
前記電解質水溶液としては特に制限はなく、例えば、高分子ラテックスを凝析若しくは凝固しうる性質を有する有機酸(若しくはその塩)または無機酸(若しくはその塩)の水溶液であれば良いが、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、塩化バリウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、鉄ミョウバン等の無機塩類の水溶液、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸類の水溶液、酢酸、ギ酸等の有機酸類およびそれらの水溶液、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウム等の有機酸塩類の水溶液を単独または2種以上を混合して用いることができる。特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウム、塩化第一鉄、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、鉄ミョウバン、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸の水溶液を好適に用いることができる。
前記電解質水溶液の濃度は、0.001重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。電解質水溶液の濃度が0.001重量%以下の場合は、乳化重合体粒子を凝析させるために多量の電解質水溶液を添加する必要があり、その後の熱処理操作時のユーティリティー使用量が多くなるため好ましくない。
前記重合体粒子(B−1)の懸濁液と重合体粒子(B−2)のラテックスの混合物に対する電解質水溶液の添加は、重合体粒子(B−2)のビカット軟化温度以下の温度で実施するのが好ましい。電解質水溶液を添加する際の混合物の温度が重合体粒子(B−2)のビカット軟化温度を超える場合には、例えば、生成する増粘剤(B)の形状が歪になり脱水後含水率が高くなる、未凝固の重合体粒子(B−2)が残存し固液分離性の悪化を招く、若しくは増粘剤(B)間の凝集が頻発するなどの問題が発生することがあるため、好ましくない。
前記重合体粒子(B−1)の懸濁液と重合体粒子(B−2)のラテックスの混合物へ電解質水溶液を添加する際は、混合物の固形分濃度を20〜50重量%に調整した後、実施するのが好ましい。前記固形分濃度が20重量%未満の場合は、電解質水溶液添加後も系中に重合体微粒子が残存する場合があり、一方、前記固形分濃度が50重量%より高い場合は、重合体粒子(B−2)を介した二次凝集粒子が生成する場合があり、脱水後の含水率が高くなる傾向があるため好ましくない。
本発明で用いられる増粘剤(B)における重合体粒子(B−1)と重合体粒子(B−2)の固形分重量比は、好ましくは重合体粒子(B−1)100重量部に対して、重合体粒子(B−2)が0.5〜30重量部であり、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは2〜15重量部、とくに好ましくは3〜10重量部である。重合体粒子(B−1)100重量部に対して、重合体粒子(B−2)が0.5重量部未満の場合は、電解質水溶液添加後も系中に重合体微粒子が残存し、そのため固液分離性が悪化する傾向があり、得られた増粘剤(B)を乾燥する際に、乾燥機内壁面への付着が多くなる傾向があるため好ましくない。また、重合体粒子(B−1)100重量部に対して、重合体粒子(B−2)が30重量部を超える場合は、重合体粒子(B−2)を介した二次凝集粒子が生成しやすくなる傾向があり、また、残存する乳化剤量も多くなる傾向があるため、ポリ乳酸系樹脂の加水分解を促進しやすくなり、増粘効果が低下する傾向がある。
本発明で用いられる増粘剤(B)を製造するにあたり、重合体粒子(B−1)の懸濁液と重合体粒子(B−2)のラテックスの混合物における重合体粒子(B−2)のラテックスの比率が高い場合、電解質水溶液の添加速度が極端に速い場合、または電解質水溶液の濃度が極端に高い場合には、電解質水溶液を添加する際に著しい粘度上昇が見られる場合がある。このような場合は、系中に適宜水を加えるなど、通常の攪拌状態が維持できる程度に系の粘度を低下させる操作を実施すればよい。電解質水溶液の量は、重合体粒子(B−1)の懸濁液と重合体粒子(B−2)のラテックスとの混合物中における重合体粒子(B−2)の比率により異なるが、熱処理後に未凝固の重合体粒子(B−2)が存在しなくなる量以上を添加すればよい。
例えば、前記電解質水溶液が酸性水溶液であって造粒後の懸濁液が酸性を示す場合は、水酸化ナトリウムなどのアルカリで中和した後、また前記電解質水溶液が中性水溶液の場合はそのまま、50〜120℃で熱処理を行うのが好ましい。これにより、重合体粒子(B−1)の表面を被覆した重合体粒子(B−2)の凝集体が緻密化し、得られる増粘剤(B)の含水率を低下することができる。
その後、通常の方法で脱水および乾燥を行うことにより、本発明増粘剤(B)を得ることができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物におけるポリ乳酸系樹脂(A)と増粘剤(B)との配合割合は必要に応じて幅広く採用できるが、好ましくはポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対して増粘剤(B)0.1〜50重量部であり、好ましくは増粘剤(B)が0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜7重量部である。前記増粘剤(B)の配合量が0.1重量部未満では溶融粘度を充分に増大できず、安定した加工性を実現できない場合があり、一方、50重量部を超える範囲では、溶融粘度が高すぎ、得られる成形体が収縮したり、その光沢や透明性が失われる場合がある。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂(A)としては、ポリ乳酸または乳酸を主成分とする他のヒドロキシカルボン酸との共重合体であれば制限無く使用できる。ここで主成分とは、全酸成分中50重量%を越えることを意味する。乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸が挙げられる。ポリ乳酸は従来公知の方法で合成することができる。すなわち、乳酸からの脱水縮合、または乳酸環状二量体ラクチドの開環重合によって合成することができる。脱水縮合を実施する場合、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、またはこれらの混合物のいずれの乳酸を用いてもよい。
ポリ乳酸におけるL−乳酸単位、D−乳酸単位の構成モル比(L−乳酸/D−乳酸)は100/0〜0/100のいずれであってもよいが、L/D比が100/0〜60/40であることが好ましく、さらに好ましいL/D比は100/0〜80/20である。
本発明においては、ポリ乳酸系樹脂(A)と増粘剤(B)を含有する組成物に対し、更にコア−シェル型グラフト共重合体(C)を含有することができる。本発明で用いられるコア−シェル型グラフト共重合体(C)は、特定の単量体混合物を重合することにより得られる重合体からなり、前記増粘剤(B)と併用することにより、ポリ乳酸系樹脂の物理的、化学的特性を低下させることなく、射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形などの溶融加工時の溶融粘度および耐衝撃強度を向上させることができ、優れたポリ乳酸系樹脂成形加工品を得ることができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂成形加工品を得るためのポリ乳酸系樹脂組成物を製造する方法としては特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、ポリ乳酸系樹脂(A)、増粘剤(B)、および必要に応じてコア−シェル型グラフト共重合体(C)を予めヘンシェルミキサー、タンブラーなどを用いて混合した後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロールなどを用いて溶融混練することにより樹脂組成物を得る方法などを採用することができる。
更に、例えば、ポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対して、増粘剤(B)を50重量部を超えた範囲で混合した高濃度のマスターバッチを予め製造しておき、実際の成形加工時に、0.1〜50重量部の範囲で所望の添加量になるように前記マスターバッチをポリ乳酸系樹脂と混合、希釈して使用してもよい。
本発明においてポリ乳酸系樹脂成形加工品を得るためのポリ乳酸系樹脂組成物には、必要に応じて、展着剤、滑剤、可塑剤、着色剤、充填剤、耐衝撃強化剤、抗菌・抗カビ剤などの他の添加剤を単独または2種以上を組合せて添加してもよい。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂組成物からポリ乳酸系樹脂成形加工品を得る方法は特に限定されるものではなく、一般に用いられている成形法を適用できるが、例えば射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形が好ましく、押出成形法、カレンダー成形法、ブロー成形法、射出成形法などにより好ましく適用できる。本発明によれば、溶融加工時において、より高い溶融粘度が要求される射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、発泡成形においても安定した加工性を発現し、かつ、表面性が良好で耐衝撃性に優れる成形加工品を得ることができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂成形加工品を得るために用いられるポリ乳酸系樹脂組成物においては、前記ポリ乳酸系樹脂(A)、増粘剤(B)に対し、必要に応じて更に発泡剤を配合することにより、発泡性ポリ乳酸系樹脂組成物を得ることができ、これから発泡性ポリ乳酸系樹脂成形加工品を得ることができる。
本発明において使用できる発泡剤としては、とくに限定されるものではなく、窒素ガス、炭酸ガス、ヘリウム等の不活性ガス、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の飽和炭化水素、テトラフルオロメタン、フロン等のハロゲン化炭化水素、などの物理発泡剤や、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の熱分解型無機発泡剤、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル− N,N’−ジニトロソテレフタルアミドなどのニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物等の熱分解型有機発泡剤、などの熱分解型発泡剤が用いられうる。これらは単独または2種以上を混合して使用できる。中でも、発泡効率や防爆構造を付与した発泡成形設備を使用しなくてもよい点から熱分解型発泡剤を用いるのが好ましく、熱分解型無機発泡剤では、重炭酸ナトリウムが発泡効率、コストの面から特に好ましい。また熱分解型有機発泡剤では、アゾジカルボンアミドが発泡効率、コストの面から特に好ましい。
前記発泡剤の添加量は、その目的に応じ、とくに限定されるものではないが、通常、前記ポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部である。発泡剤の添加量が0.1重量部未満の場合、充分な発泡倍率の成形体が得られにくく、一方、20重量部をこえると、発泡セルの破れが多く発生し、発泡成形体が収縮して表面性が悪化する傾向がある。
本発明において、発泡性ポリ乳酸系樹脂成形加工品を得るための発泡性ポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法はとくに限定されない。たとえば、前記ポリ乳酸系樹脂(A)、増粘剤(B)、発泡剤、およびその他の添加剤などを混合後、樹脂組成物に適した温度で単軸、若しくは二軸押出機などのような溶融混練機により溶融混練する方法などにより製造することができる。
本発明における発泡性ポリ乳酸系樹脂成形加工品を得るための成形加工法はとくに限定されるものではなく、一般に用いられている発泡成形法、たとえば押出発泡成形法などが適用できる。
本発明のポリ乳酸系樹脂成形加工品としては、具体的には、繊維状成形加工品、シート状成形加工品、フィルム状成形加工品、パイプ状成形加工品、異型成形加工品、カード状成形加工品、建築用部材、農業用部材、機械部材、光学部材、日用品部材、電気機器、電子機器、OA機器、自動車用部材、包装用材料などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
繊維状成形加工品としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
シート状成形加工品としては、圧縮成形トレイ、サイディング材、成形板などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
フィルム状成形加工品としては、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、ウェットラミネート、ホットメルトラミネート、ドライラミネートなどのラミネートフィルム、マルチフィルムなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
パイプ状成形加工品としては、上下水道用パイプ、電線用パイプなどの各種パイプ、各種配管などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
異型成形加工品としては、内外装家具、窓枠などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
カード状成形加工品としては、IDカード、キャッシュカードなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
建築用部材としては、緩衝材、断熱材、防音材、クッション材、壁材、天井材、床材などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
農業用部材としては、農業用カバーシート、植栽ポット、植物ネット、芝止め用杭、肥料用袋、魚網、保水シート、土嚢などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
機械部材としては、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライター、ポンプ部品などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
光学部材としては、顕微鏡、双眼鏡、望遠鏡、カメラ、時計、光ピックアップ、照明部品などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
日用品部材としては、ショッピングバック、ゴミ袋、コンポストバッグ、弁当箱、食器、飲料用容器、カップ、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、保冷容器などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
電気機器・電子機器・OA機器としては、ハウジング、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、発振子、各種端子板、変性器、ブレーカー、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、CDトレイ、DVDトレイ、カートリッジ、カセット、ソーター、ACアダプター、充電台、配電盤、コンセントカバー、VTR部品、テレビ部品、ラジオ部品、アイロン、ヘアドライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、冷蔵庫部品、音響部品、オーディオ、レーザーディスク、コンパクトディスク、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、電話機関連部品、携帯電話部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、パソコンなどのコンピュータの筐体、パソコン用ダミーカード、IRマスク、小型オーディオ商品の筐体、包装材料などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
自動車用部材としては、スペアタイヤカバー、フロアマット、オルタネータターミナル、オルタネータコネクター、精密機械関連部品、ICレギュレータ、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係、排気系、吸気系各種パイプ、エアーインテイクンズルスノーケル、インテイクマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレター、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエターモーター用ブラッシュホルダー、ウオーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関連部品、ディストリビューター、スタータスイッチ、スタータリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基盤、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電送部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、天井材などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
包装用材料としては、ブリスターパック、PTP容器、各種カバー、各種ケース、食料品容器・トレイなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
Claims (22)
- ポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対して、ガラス転移温度が60℃以上かつ体積平均粒子径が50〜500μmの範囲であってポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)100重量部を体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(B−2)0.5〜30重量部で被覆した増粘剤(B)0.1〜50重量部を含有することを特徴とする、ポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- 前記ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)が、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、イソシアナート基、酸無水物基、酸塩化物基から選ばれる1種または2種以上の反応性基を含有することを特徴とする、請求項1記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)が、(a)エポキシ基含有(メタ)アクリレート15〜100重量%、(b)これと共重合可能なビニルモノマー0〜85重量%[(a)と(b)を合わせて100重量%]を重合することにより得られ、重量平均分子量が1000〜40万であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)が、(a)エポキシ基含有(メタ)アクリレート15〜95重量%、(b)(a)以外の(メタ)アクリレート5〜85重量%、及び(c)これらと共重合可能なビニルモノマー0〜80重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合することにより得られ、重量平均分子量が4万〜15万であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂と反応性を有する重合体粒子(B−1)が、(a)エポキシ基含有(メタ)アクリレート15〜95重量%、(b)芳香族ビニルモノマー5〜85重量%、及び(c)これらと共重合可能な他のモノマー0〜80重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合することにより得られ、重量平均分子量が4万〜15万であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品が、射出成形、カレンダー成形、フィルム成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、熱成形、流動成形、積層成形、若しくは発泡成形により得られることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品が繊維状成形加工品である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品がシート状成形加工品である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品がフィルム状成形加工品である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品がパイプ状成形加工品である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品が異型成形加工品である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品がカード状成形加工品である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品が建築用部材である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品が農業用部材である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品が機械部材である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品が光学部材である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品が日用品部材である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品が電気機器である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品が電子機器である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品がOA機器である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品が自動車用部材である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
- ポリ乳酸系樹脂成形加工品が包装用材料である、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形加工品。
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2005
- 2005-01-11 JP JP2005003363A patent/JP2006193541A/ja active Pending
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