JP2006180745A - フェノール類2量体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 充分な収率をもってフェノール類2量体を与えることができ、酵素の反応系からの除去がいらず、同じ酵素を用いて繰り返し反応が行なえる製造方法を提供する。
【解決手段】 オキシダーゼを固定化した酵素充填層を有するカラム中に、炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルフェノール及び炭素数1〜4のアルコキシ基を有するジアルコキシフェノールからなる群から選ばれた少なくとも一種のジ置換フェノールを水性媒質中に含有させた溶液を流し、カラム中で酵素反応を行う第一工程と、還元剤を添加する第二工程を有することを特徴とするフェノール類2量体の製造方法
【選択図】 なし

Description

本発明は、酵素法によるフェノール類2量体の製造方法に関する。
置換基を有するフェノール(以下、置換フェノールあるいはフェノール類という)の2量体(以下、フェノール類2量体という。)は樹脂材料などとして広く用いられており、従来、各種フェノール類2量体を得るための方法が提案されている。
特許文献1では、水性媒体中において、ペルオキシダーゼ酵素、過酸化物及びラジカル伝達薬剤の存在下で、水酸基等の置換基を有する置換芳香族化合物を反応させる2量体化方法が記載されている。
特許文献2では、便利で安価な合成方法への要望に対応して、過酸化水素等の過酸化物が存在する水性媒質中で、炭素原子数1ないし6のアルキル基を持つ2,4−または2,6−ジアルキルフェノールを大豆ペルオキシダーゼ酵素等のペルオキシダーゼ酵素と反応させ、2,4−または2,6−ジアルキルフェノールの酸化的カップリングによりテトラアルキルビフェノールを生成する方法、あるいはテトラアルキルキノンを生成し、このテトラアルキルキノンを還元してテトラアルキルビフェノール(ジアルキルフェノール2量体に相当する)を生成する方法が記載されている。
特許文献3では、西洋ワサビに多く含まれている酵素であるペルオキシダーゼを固定化する方法が記載されている。
特表平11−503021号公報 特表平11−506903号公報 特開平8−71534号公報
特許文献1、2に記載の方法のいずれにおいても、フェノール類2量体を得る反応を生起させるには、原料であるフェノール類、反応のためのペルオキシダーゼ酵素の他に、過酸化物を使用する必要があった。また、目的とするフェノール類2量体の他に重合体が同時に得られ、目的とするフェノール類2量体を効率的に製造することが難しかった。
本発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたもので、充分な収率をもってフェノール類2量体を与えることができ、更に酵素を固定化することにより酵素の反応系からの除去がいらず、同じ酵素を用いて繰り返し反応が行なえる製造方法を提供するものである。
固定化酵素は特許文献3の記載のように既に知られている。しかしながら、本発明者らは、オキシダーゼを固定化させた固定化酵素を、水性媒質中に懸濁させて置換フェノールの反応を行なったが、酵素の固定化により反応性が低下し、フェノール類2量体の収率を著しく低下することを見出した。更にこの低下は、オキシダーゼを固定化した固定化酵素をカラムに充填し、水性媒質中に基質を含有させた反応溶液を流し酵素反応を行なった後、還元剤を添加することにより、フェノール類2量体の反応性を大きく向上させることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
オキシダーゼを固定化した酵素充填層を有するカラム中に、炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルフェノール及び炭素数1〜4のアルコキシ基を有するジアルコキシフェノールからなる群から選ばれた少なくとも一種のジ置換フェノールを水性媒質中に含有させた溶液を流し、カラム中で酵素反応を行う第一工程と、還元剤を添加する第二工程を有することを特徴とするフェノール類2量体の製造方法を提供する。
本発明の製造方法によれば、充分な収率をもってフェノール類2量体を提供することができる。
本発明のフェノール類2量体の製造方法の第一工程は、水性媒質中に溶解又は懸濁させた、炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルフェノール及び炭素数1〜4のアルコキシ基を有するジアルコキシフェノールからなる群から選ばれた少なくとも一種のジ置換フェノールを、カラム中に固定化されたオキシダーゼと反応させる。
第一工程は、例えば、前記ジ置換フェノールを、水性媒質中に溶解あるいは分散させた反応液を調製し、反応液及びオキシダーゼが固定化されたカラムを所望の反応温度に制御することにより行うことができる。
なお、前記ジ置換フェノールの溶解度をあげるため、前記水性媒質中に有機溶媒を添加してもよい。この場合、後述の水性媒質における有機溶媒含有率が10体積%以下となるようにすればよい。
(水性媒質)
水性媒質としては、水、pH緩衝液、または、水もしくはpH緩衝液と有機溶媒との混合溶液が用いられる。
pH緩衝液としては、例えば、マロン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、等が挙げられる。
水性媒質が水と有機溶媒の混合溶液である場合、有機溶媒の割合は10体積%以下、好ましくは5体積%以下である。ここで、利用しうる有機溶媒の代表的な例としては、ヘキサン、トリクロロメタン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ブタノール、エタノール、メタノール、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。
(ジ置換フェノール)
本発明の製造方法において、基質たるジ置換フェノールは、炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルフェノール及び炭素数1〜4のアルコキシ基を有するジアルコキシフェノールからなる群から選ばれた少なくとも一種のジ置換フェノールである。
前記ジ置換フェノールは、反応性および得られるフェノール類2量体の実用性の点から、2,6‐ジ置換フェノールが好ましい。
また、前記ジ置換フェノールにおいて、アルキル基、アルコキシ基の炭素数は1であることが好ましい。
前記ジ置換フェノールとしては、前記ジアルキルフェノール、前記ジアルコキシフェノールをそれぞれ単独で用いてもよいし、前記ジアルキルフェノール及び前記ジアルコキシフェノールを併用してもよい。得られるフェノール類2量体を各種用途に適用する際の利便性という観点からは、前記ジアルキルフェノール、前記ジアルコキシフェノールをそれぞれ単独で用いることが好ましい。
本発明において、ジ置換フェノールに用いられるジアルキルフェノールは、炭素数1〜4のアルキル基を有する。本発明に使用可能なジアルキルフェノールとしては、2,4‐ジアルキルフェノール、2,6‐ジアルキルフェノール、3,5‐ジアルキルフェノール、2,3‐ジアルキルフェノール、2,5‐ジアルキルフェノール等の、各種置換位置のジアルキルフェノールが挙げられる。これらの中でも、2,4‐ジ置換体、2,6‐ジ置換体が好ましく、特に、下記一般式(1)に示す2,6‐ジアルキルフェノールを用いることが、フェノール類2量体の収率の観点から好ましい。
Figure 2006180745
(式中R及びRは独立して炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
ジアルキルフェノールのアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。このような炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられるが、メチル基であることが好ましい。式(1)におけるRとRは、同じでも異なっていてもよい。
また、2,6−ジアルキルフェノールの中でも、下式(2)に示す2,6−ジメチルフェノールが特に好ましく用いられる。これは、得られるフェノール類2量体の実用性の点で有利なためである。
Figure 2006180745
前記ジ置換フェノールにおいて、異なる2種以上のジアルキルフェノールを用いても構わない。
本発明において、ジ置換フェノールに用いられるジアルコキシフェノールは、炭素数1〜4のアルコキシ基を有する。本発明に使用可能なジアルコキシフェノールとしては、2,4‐ジアルコキシフェノール、2,6‐ジアルコキシフェノール、3,5‐ジアルコキシフェノール、2,3‐ジアルコキシフェノール、2,5‐ジアルコキシフェノール等の、各種置換位置のジアルコキシフェノールが挙げられる。これらの中でも、2,4‐ジ置換体、2,6‐ジ置換体が好ましく、特に、下記一般式(3)に示す2,6‐ジアルコキシフェノールを用いることが、フェノール類2量体の収率の観点から好ましい。
Figure 2006180745
(式中R及びRは独立して炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
ジアルコキシフェノールのアルコキシ基を構成するアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。このような炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられるが、メチル基であることが好ましい。式(3)におけるRとRは、同じでも異なっていてもよい。
また、2,6−ジアルコキシフェノールの中でも、下式(4)に示す2,6−ジメトキシフェノールが特に好ましく用いられる。これは、得られるフェノール類2量体の実用性の点で有利なためである。
Figure 2006180745
前記ジ置換フェノールにおいて、異なる2種以上のジアルコキシフェノールを用いても構わない。
(オキシダーゼ)
本発明で使用するオキシダーゼには、例えばカテコールオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ等があり、その中で、フェノール類2量体の収率の点でラッカーゼが好ましい。本発明において、オキシダーゼは1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラッカーゼは、植物、動物、微生物に広く存在することが知られており、植物由来、微生物由来のラッカーゼが好ましい。
植物由来では漆の木由来のラッカーゼが好ましい。また、微生物由来のラッカーゼとしては、例えば細菌、真菌(糸状菌及び酵母を含む)に由来するものが挙げられるが、真菌のうち白色腐朽菌などの担子菌類や子のう菌類に由来するラッカーゼが、特に好ましいものとして挙げられる。
このような、特に好ましいラッカーゼとしては、アスペルギルス(Aspergillus)属;ニューロスポラ(Neurospora)属;ピリキュラリア・オリザエ(P.pryzae)などのピリキュラリア(Pyricularia)属;トラメテス・ビローサ(T.villosa)、トラメテス・バーシカラー(T.versicolor)等のホウロクタケ(Trametes)属;リゾクトニア・ソラニ(R.solani)等のリゾクトニア(Rhizoctonia)属;コプリヌス・シネレウス(C.cinereus)等のコプリヌス(Coprinus)属;コリオルス・ヒルスツス(C.hirsutus)、コリオルス・バーシカラー(C.versicolor)等のコリオルス(Coriolus)属に由来するものが例示できる。
また、市販されているラッカーゼとして、「ラッカーゼダイワ EC−Y120」(商品名;大和化成(株)製)等が例示される。
オキシダーゼとしてラッカーゼを用いる場合、使用されるラッカーゼは特に制限されないが、ホウロクタケ(Trametes)属由来のラッカーゼ、コリオルス(Coriolus)属由来のラッカーゼから選ばれる少なくとも1種を用いることが、フェノール類2量体合成のために好ましい。
これらのラッカーゼは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
(固定化酵素)
酵素の固定化方法等は、市販の物や公知の方法を使えばよく、特に限定はない。
化学的又は物理的に酵素を固定化したものを挙げることができる。
担体としては、カオリナイトやガラスなどの無機物やポリアクリルアミドやポリスチレンなどの有機物を使用することができる。担体の形状としては、単位体積当りの酵素量が増えることによって反応性を高めることができることから、多孔質体であることが望ましい。
これら担体への第一の結合方法としては、担体表面の静電特性や表面形状と酵素との親和性を利用した物理的結合方式である非共有結合方法が挙げられる。この方式により酵素を担体へ結合させることが困難である場合には、第二の結合方法として、官能基どうしの化学反応を利用した共有結合方法が挙げられる。共有結合方法を利用する上では、酵素の持つNH2基やCOOH基と結合することが可能な官能基を、担体の表面に導入する必要がある。例えばガラス由来の担体に対しては、各種のシランカップリング剤を用いることにより、担体表面に様々な官能基を導入することが可能である。また、有機物由来の担体であれば、表面の官能基を修飾する方法や、担体を合成する際に官能基を持った化合物との共重合により、担体表面に様々な官能基を導入することが可能となる。
(カラム充填)
また、固定化酵素カラムは、得られた固定化酵素を緩衝液等で洗浄し、カラムに充填液とともに充填して製造することができる。
(固定化酵素カラムによる二量化反応)
固定化酵素カラムを用いてフェノール類2量体を合成する方法としては、基質を溶解させた展開液をカラムに通す方法が挙げられる。酵素が担体に固定されていること以外は、一般的な酵素反応と同様である。そのため展開液としては、一般的な酵素反応において用いられる緩衝液等に基質を溶解させた溶液を用いることが好ましい。反応時間は、カラム体積と展開液流速によって制御することが可能である。基質濃度と酵素濃度については、フェノール類2量体を効率よく合成する上では、基質濃度/酵素濃度比は小さい方が一般的には好ましく、これは、固定化酵素カラムを用いる上でも同様である。このため、2量体を優先的に得るためには、基質濃度を小さくする必要があり、多くの2量体生成物を得ることが難しい。
通常の酵素反応では、基質濃度を上げていくと、高分子体が得られやすくなるため2量化の比率が低くなる。フェノール類2量体を効率よく合成する上では、基質濃度/酵素濃度比は小さい方が望ましい。固定化酵素をバッチ式で使用する場合、展開液中に固定化酵素が分散しなくてはならい。しかしながら担体の分散性は非常に低くなりがちであり、その結果、酵素の拡散効率が低くなり見かけの酵素量は大きく減少する。すなわち、基質濃度/酵素濃度比が大きくなる。
一方、固定化酵素をカラム式で使用する場合には、展開液がカラム中を通過することになる。そのため先ず、固定化酵素を分散させる必要がない。さらに、分散している酵素をカラム部分に集めて使用するため、局所的にみれば酵素が非常に高濃度で存在することとなる。この二つの優位性のために、バッチ式で行うよりも見かけの酵素量が大きくなり、その結果、基質濃度/酵素濃度比が小さくなっていると考えられる。
以上のことから、本発明の方法では高い基質濃度に対しても2量体を多く得ることができる。
基質としてジアルキルフェノールを用いる場合、酵素濃度は好ましくは2μM以上、さらに好ましくは4μM以上である。また、ジアルコキシフェノールを用いる場合、酵素濃度は、好ましくは1μM以上、さらに好ましくは2μM以上である。
本発明においては、前記第一工程の後、還元剤を添加する第二工程を行う。
この第二工程を行うことで、フェノール類2量体を主として含む生成物が得られる。
(還元剤)
還元剤は特に限定されず、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム等があげられる。
還元剤の添加量は、後述の第一生成物中に含まれるキノン類2量体、具体的にはジアルコキシキノン2量体及び/又はジアルキルキノン2量体の濃度の当量とすることが好ましい。
本発明の製造方法においては、第一工程として、例えば上記反応液を調製し、所望の反応温度で保持することにより、ジ置換フェノールからジ置換キノンの二量体(キノン類2量体)及びジ置換フェノールの2量体(フェノール類2量体)が生成する反応が進行すると推定される。したがって、第一工程による反応生成物(第一生成物)は、キノン類2量体及びフェノール類2量体を含み、また、反応時間に応じて未反応のジ置換フェノールを含むと推定される。
例えば、ジ置換フェノールとして2,6−ジアルキルフェノールを用いた場合、第一工程によって、下式(I)に示すように、2,6−ジアルキルフェノール(A)から2,6‐ジアルキルフェノール2量体(B)及び2,6−ジアルキルキノン2量体(2,2’,6,6’−テトラアルキルキノン)(C)が生成する反応が起こると推定される。
Figure 2006180745
(式中R及びRは独立して炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
さらに第二工程として還元剤を添加することで、キノン類2量体が還元されてフェノール類2量体が生成する反応が進行するものと推定される。例えば、下式(II)に示すように、2,6‐ジアルキルキノン2量体(C)が還元されて、2,6‐ジアルキルフェノール2量体(B)が生成すると推定される。
Figure 2006180745
(式中R及びRは独立して炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
第一工程の反応温度は、前記ジ置換フェノールの種類、基質濃度、オキシダーゼの種類、酵素濃度等に応じて調整されうるが、比較的低温に設定することができ、5〜60℃とすることが好ましく、10〜40℃とすることがさらに好ましい。また、反応温度は室温であってもよい。
第一工程において、その他pH等の反応条件は、オキシダーゼの種類等に応じて適宜調整されうるが、好ましくはpH 3.5〜5.5、特に好ましくはpH 4.0〜5.0とすることが好ましい。
本発明において、第一工程の反応時間は、オキシダーゼと前記ジ置換フェノールとを水性媒質中で共存させた時点から、還元剤が添加される時点までとなる。ここで、第一工程の反応時間は、前記ジ置換フェノールが充分に消費される時間とすることが好ましい。ジ置換フェノールの消費は、例えば、還元剤が未添加の生成物を分取して高速液体クロマトグラフィーに供し、検出波長を前記ジ置換フェノールの特異吸収波長(270nm付近)としてジ置換フェノールの残存量を測定することによって確認可能である。
第一工程において、上記反応液を調製した後、固定化酵素を反応系で懸濁して使用したり、反応を長時間行わせすぎると、下式(III)に例示するような、ジ置換フェノール(例では2,6−ジアルキルフェノール)(A)からのポリフェニレンアルコキシド(D)の生成が進行する場合がある。ここで、ポリフェニレンアルコキシドが生成する機構は、ジ置換フェノールからいったんキノン類2量体が生成し、このキノン類2量体が重合してポリフェニレンアルコキシドが生成するものと推定される。
Figure 2006180745

(式中R及びRは独立して炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
第一工程の好適な反応時間は、酵素濃度、ジ置換フェノール(基質)の種類、基質濃度等により異なり得るが、例えばジ置換フェノールとしてジアルキルフェノールを用い、基質濃度1mmol/L、酵素濃度を1mg/ml(1mg−酵素/g−担体質量かつ、1g−担体質量/ml−担体体積)とする場合、反応時間は好ましくは0.1〜24時間、さらに好ましくは0.5〜20時間である。
また、例えばジ置換フェノールとしてジアルコキシフェノールを用い、基質濃度1mmol/L、酵素濃度を1mg/ml(1mg−酵素/g−担体質量かつ、1g−担体質量/ml−担体体積)とする場合、反応時間は好ましくは0.05〜24時間、さらに好ましくは0.1〜20時間である。
第二工程の反応温度は、フェノール類2量体を安定に得るためには0℃以上とすることが好ましい。製造効率、副生物の生成抑制の面では反応温度が低い方が好ましく、25℃以下とすることが好ましい。本発明では、第二工程の反応温度を室温としつつ充分な収率をあげることができるため、室温とすることが、収率と製造効率とのバランス面で好ましい。
本発明において、第二工程の反応時間は、還元剤の添加時点を起点とする。
第二工程の反応時間は、好ましくは30秒以下、さらに好ましくは5〜10秒である。本発明の製造方法では、第二工程の反応時間が上記の通り非常に短くとも、充分な収率のフェノール類2量体を得ることができる。
第二工程において、pH等のその他反応条件は、オキシダーゼの種類等に応じて適宜調整されうるが、pH 2.5〜6.5、特に好ましくはpH 4.0〜5.0とすることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、前記ジアルキルフェノール及び前記ジアルコキシフェノールからなる群から選ばれる少なくとも一種のジ置換フェノールと、オキシダーゼとを用い、さらに還元剤を添加することにより、基質および固定化した酵素以外の試薬等を用いることなく、十分な収率をもってフェノール類2量体を得ることができる。したがって、製造効率を損なうことなく、かつ簡便に、フェノール類2量体を提供することができる。
しかも、製造工程全体を通して、反応温度等の反応条件を緩やかに設定しつつ、充分な収率を達成することができる。また、固定化酵素をカラムに充填して使用するため、反応後に酵素を分離する必要もない。
なお、特許文献2に記載されている、大豆ペルオキシダーゼを用いたフェノール類2量体の合成では、得られるフェノール類2量体の収率が安定しない。また、フェノール類2量体を得るまでの製造工程において、絶えず加熱等の温度制御が必要であり、効率よく生産を行うには問題となる。
これに対し、本発明の製造方法では、収率の安定性を維持しつつ、室温で反応を行うことが可能であり、達成される収率(ジ置換フェノールに対するフェノール類2量体の収率)も、大豆ぺルオキシダーゼを用いる場合より高い水準となる。
本発明の方法により得られるフェノール類2量体は、種々の分野、例えば、エポキシ樹脂、難燃剤、酸化防止剤、ポリエステル、ポリカーボネート等の製造、および芳香族ジオールが使用される他の用途に広く使用することができる。
本発明の製造方法により得られるフェノール類2量体は、上記の第二工程の生成物中に高含有率で含まれる形態で得られる。したがって、本発明の方法により得られるフェノール類2量体を各種用途に使用する場合、当該生成物をそのまま用いてもよいし、あるいは公知の方法でフェノール類2量体を精製して使用してもよい。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下、単位「M」は「mol/L」を示す。
以下実施例、比較例においては、酵素としてラッカーゼ(「ラッカーゼダイワ EC−Y120」(商品名;大和化成(株)製))を使用し、固定化担体には多孔質セラミック球状担体であるトヨナイト(「Toyonite−200」(商品名;東洋電化工業(株)製))を使用した。基質としては、ジアルキルフェノールとして2,6‐ジメチルフェノール(以下、2,6−DMPと言う。)(和光純薬社製「2,6‐ジメチルフェノール」)を用いた。また、以下、還元剤として亜ジチオン酸ナトリウム(和光純薬社製「ハイドロサルファイトナトリウム」)を用いた。
(固定化担体の調製)
ラッカーゼ10gをMcllvain氏緩衝液(pH4.6)に溶解させ200mg/mlの固定用酵素溶液を50ml調製した。この固定用酵素溶液にトヨナイト5gを加え、振とう機(「ダブルシェーカーNR−30」(商品名;タイテック(株)製))を用いて120〜140min−1の速さで一昼夜、振とうを行った。振とう後の溶液を、1500rpmにて5分間遠心し、固定用酵素溶液をピペットにて分取した。分取した溶液を固定化後酵素溶液とする。
溶液を分取し得られたトヨナイトに、10mlのMcllvain氏緩衝液(pH4.6)を加え懸濁した後、1500rpmにて5分間遠心し、遠心後の上清を固定化後酵素溶液に加えた。この作業を計3回行い、ラッカーゼがトヨナイト上に固定化されている固定化酵素(A)を得た。
(固定化担体の評価)
固定用酵素溶液ならびに固定化後酵素溶液中の酵素量をタンパク定量キット(「Protein Assay」(商品名;日本バイオ・ラッドラボラトリーズ(株)製))にて測定し、その差分がトヨナイトに結合したものとした。前述の方法により得られた各試料についてこの測定を行った結果、固定化酵素(A)にはトヨナイト1g当り2.76mgのラッカーゼが結合していることを確認した。
(固定化酵素カラムの作製)
調製した固定化酵素(A)3.62gをMcllvain氏緩衝液(pH4.6)に懸濁し、懸濁液を低圧クロマトグラフィー用ガラスカラム(「エコノカラム」(底面積0.79cm2)(商品名;日本バイオ・ラッドラボラトリーズ(株)製))に充填して固定化酵素カラム(B)を得た。充填後、固定化担体の占める高さは約2cmとなり、体積にして約1.6cmであった。
(展開液の調整)
アセトン中に調製した1Mの2,6−DMP溶液100μlをMcllvain氏緩衝液(pH4.6)にて100倍に希釈した溶液を、展開液として調整した。
(高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと言う。)評価サンプルの調製)
第一工程を終了した展開液10mlに対して、1gの還元剤を加え室温にて5分間放置した。これにより、第二工程の反応を行った。反応終了後の展開液にアセトニトリルを10ml加えて激しく撹拌した後、10分間静置した。静置後の上澄み液を分取した。
分取した溶液500μlと内部標準としてアセトニトリルに溶解した1mMの2,6−ジメトキシフェノール(以下2,6−DMOPと言う。)(和光純薬社製「2,6‐ジメトキシフェノール」)500μlとを混合し、0.45μmのフィルター(「PTFE0.45μm」(商品名;アドバンテック東洋(株)製))を通過させたものを、HPLCに供した。
(評価方法)
本実施例においては、生成物について、下記条件でHPLCによる測定を行った。
検出装置:HPLC
カラム:STR ODS−II(島津ジーエルシー)
溶出条件:0.59 g/L リン酸水溶液(20% アセトニトリル)/100% アセトニトリル
0−5分:20 %(アセトニトリル%)
5−21分:20−100 % グラジェント
21−31分:100 %
送液速度:1.0 mL/min
検出波長:270 nm
フェノール類2量体の収率:上記条件によるHPLC測定において検出される吸収ピークを内部標準により換算した強度から、生成物に含まれるフェノール類2量体の生成量を比較した。
(実施例1)
(固定化酵素カラムによる二量化反応)
10mlの展開液を、ペリスタルティックポンプを用いて、流速1.0ml/分にて固定化酵素カラム(B)中を通過させた。さらに通過後の展開液に還元剤を1g加えて、2量化反応を行った。
(比較例1)
(固定化酵素を用いたバッチ懸濁による二量化反応)
10mlの展開液中に、固定化酵素(A)3.62gを加えて、2分間振とうさせた。さらに反応後の展開液に還元剤を1g加えて、2量化反応を行った。
(比較例2)
(固定化しない酵素を用いたバッチ懸濁による二量化反応)
10mlの展開液中に、固定化に供したラッカーゼ10.00mgを加えて、2分間振とうさせた。さらに反応後の展開液に還元剤を1g加えて、2量化反応を行った。
実施例1及び比較例1で得られた結果を上記に従いHPLCにより評価した結果を表1にまとめた。
Figure 2006180745
比較例1と比較例2の比較により、酵素を固定化することのより、2量体生成比が低下していることがわかる。この固定化酵素をカラム充填してカラム中で反応を行なうことにより、2量体生成比が大きく向上していることがわかる。
本発明で用いるカラム酵素反応では、固定化酵素を用いたバッチ合成に比べ、目的とするフェノール2量体を優位に得ることができた。
本発明の製造方法で得られるフェノール類2量体は、塗料などに用いられる樹脂材料として好適に用いられる。

Claims (4)

  1. オキシダーゼを固定化した酵素充填層を有するカラム中に、炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルフェノール及び炭素数1〜4のアルコキシ基を有するジアルコキシフェノールからなる群から選ばれた少なくとも一種のジ置換フェノールを水性媒質中に含有させた溶液を流し、カラム中で酵素反応を行う第一工程と、還元剤を添加する第二工程を有することを特徴とするフェノール類2量体の製造方法。
  2. 前記オキシダーゼが、ラッカーゼである請求項1に記載のフェノール類2量体の製造方法。
  3. 前記ジ置換フェノールが、2,6−ジ置換フェノールである請求項1に記載のフェノール類2量体の製造方法。
  4. 前記酵素充填層が、オキシダーゼを多孔質体に固定化した固定化酵素を充填したものである請求項1に記載のフェノール類2量体の製造方法。
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