JP2006178327A - 光学素子及びその製造方法、並びに投影露光装置 - Google Patents
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Abstract
【目的】 投影レンズの侵食を回避して長期間安定して使用できる高性能の液浸型レンズ系及びこれを備える投影露光装置を提供すること。
【構成】 本体部材44aの表面が研磨された研磨面PSとなっており、この研磨面PS上に純水等の液浸に対して極めて溶解度が低い溶解防止膜PFが薄く形成されている。この結果、側面43dの浸液に対する耐性を高めることができ、低い応力によって光学素子43の光学特性を高く維持することができる。しかも、光学素子43の先端が溶解防止膜PFによって保護されており、蛍石やフツ化バリウム等が純水等の浸液ILに浸食されることを防止できるので、蛍石やフツ化バリウム等の溶解成分がウェハW表面に付着・浸透して半導体製造に致命的な影響を与えてしまうことを防止できる。
【選択図】 図1
【構成】 本体部材44aの表面が研磨された研磨面PSとなっており、この研磨面PS上に純水等の液浸に対して極めて溶解度が低い溶解防止膜PFが薄く形成されている。この結果、側面43dの浸液に対する耐性を高めることができ、低い応力によって光学素子43の光学特性を高く維持することができる。しかも、光学素子43の先端が溶解防止膜PFによって保護されており、蛍石やフツ化バリウム等が純水等の浸液ILに浸食されることを防止できるので、蛍石やフツ化バリウム等の溶解成分がウェハW表面に付着・浸透して半導体製造に致命的な影響を与えてしまうことを防止できる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、半導体素子等のデバイスを製造するリソグラフィ工程においてマスクパターンを感光性の基板上に転写するための投影露光装置等に組み込まれる光学素子に関し、より詳しくは、液浸型の光学系に組み込まれる光学素子及びその製造方法、並びに、このような光学素子を組み込んだ投影光学系を備える投影露光装置に関するものである。
半導体素子等を製造する際に、レチクルのパターン像を投影光学系を介してレジストが塗布されたウェハ上に転写する投影露光装置が使用されている。このような投影露光装置として、ウェハを逐次移動させながらウェハ上の各ショット領域に縮小投影型の露光を繰返すステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置がこれまで多用されていたが、最近ではレチクルとウェハとを同期走査して露光を行うステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置も注目されている。
以上のような投影露光装置において、露光の高解像度化を目的として、可視光よりも短波長の紫外レーザ光が露光光として用いられている。この種の投影露光装置としては、現在主流となっているKrFエキシマレーザの波長248nmで使用する装置のほかに、ArFエキシマレーザの波長193nmで使用する装置が実用化されている。
また、露光光の短波長化を実質的に行う別の方法として、液浸法が提案されている(特許文献1,2,3等参照)。これは、投影光学系の下面とウェハとの間を液体で満たした場合、液体中での露光光の波長が空気中の1/n倍(nは液体の屈折率1.2〜1.5)になることを利用して、解像度を1/n倍に向上させることができ、或いは、焦点深度(DOF)を約n倍にするという技術である。
なお、非液浸型の投影光学系において、解像度R及び焦点深度δは、それぞれ以下の式で表される。
R=k1・λ/NA … (1)
δ=k2・λ/NA2 … (2)
ここで、λは露光波長、NAは投影光学系の開口数、k1,k2はプロセス係数である。式(1)、(2)より、解像度Rを高めるために、露光波長λを短くして、開口数NAを大きくすると、焦点深度δが狭くなることが分かる。一方、液浸法では、実効的に露光波長を短くすることができ、解像度を維持したままで露光光の収束角を小さくすることができるので、非液浸型の投影光学系と同じNAに設定した場合、焦点深度を理論上n倍にすることができる。
特開平10−303114号公報
特開平10−340846号公報
特開平11−176272号公報
R=k1・λ/NA … (1)
δ=k2・λ/NA2 … (2)
ここで、λは露光波長、NAは投影光学系の開口数、k1,k2はプロセス係数である。式(1)、(2)より、解像度Rを高めるために、露光波長λを短くして、開口数NAを大きくすると、焦点深度δが狭くなることが分かる。一方、液浸法では、実効的に露光波長を短くすることができ、解像度を維持したままで露光光の収束角を小さくすることができるので、非液浸型の投影光学系と同じNAに設定した場合、焦点深度を理論上n倍にすることができる。
しかしながら、上記の液浸法を、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置に単に適用するものとすると、1つのショット領域の露光を終了した後、次のショット領域にウェハをステップ移動する際に、投影光学系とウェハとの間から浸液を一旦除去することになるため、再び浸液を供給しなければならず、また、浸液の回収も困難になる。
また、液浸法を仮にステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置に適用する場合、ウェハを移動させながら露光を行うため、ウェハを移動させている間も投影光学系とウェハとの間には浸液が満たされている必要がある。この場合、投影光学系と浸液とが継続的に接するため、浸液と接した投影光学系の先端部が浸液によって徐々に浸食される可能性がある。特に、紫外波長で使用可能な蛍石(CaF2)やフッ化バリウム(BaF2)等については、水を浸液とした場合、その溶解度のため浸食される可能性があり、経時的劣化によって所望の光学性能が得られなくなる場合がある。なお、投影光学系の先端部が浸食される問題は、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置においても、浸液の供給・回収方法にもよるが、無視できないものとなり得る。
また、液浸法では、投影光学系とウェハとが浸液を介して間接的ながら接触している。このため前述の紫外波長で使用可能な蛍石やフッ化バリウムが浸液に溶け出した場合、これらの成分がウェハ上に不純物として到達し、半導体デバイスに致命的な影響を与える可能性もある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、液浸法を適用した場合に、投影光学系において先端部が浸液によって浸食されにくい光学素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、そのような光学素子が搭載された投影露光装置を提供することをも目的とする。
上記課題を解決するため、第1の発明に係る光学素子は、物体との間に所定の液体を満たした状態で使用される光学系に用いられるものであって、光学素子の表面のうち、光学面領域を除いた非光学面領域の少なくとも一部に、研磨加工が施された表面改質領域を有することを特徴とする。
上記光学素子によれば、非光学面領域の少なくとも一部に研磨加工が施された表面改質領域を有するので、この表面改質領域において、上記所定の液体に対する光学素子の耐性を高めることができる。つまり、光学素子の表面改質領域では、滑らかに平坦化された表面が露出しており、研削面に比較して上記所定の液体に接する表面積が少なくなる。結果的に、光学素子のうち特に非光学面領域において、上記所定の液体から受けるダメージを低減して、上記所定の液体による浸食を抑制することができる。また、本発明の光学素子の表面改質領域では、滑らかに平坦化された表面が露出しており、薄い膜のコーティングが容易である。なお、研削面にコーティングを施す場合、コート材料による被覆を完全にするために膜厚が大きくならざるを得ず、膜応力によって光学素子の光学特性に影響を与える可能性がある。
また、第2の発明に係る光学素子は、第1の発明に係る光学素子であって、所定の液体に接するように光学系の物体側に配置される。この場合、光学系のうち所定の液体に接し浸食されやすい環境にある光学素子が、非光学面領域の少なくとも一部に研磨加工が施された表面改質領域を有する。よって、当該光学素子ひいては光学系の耐久性を高め、その光学特性を長期間に亘って維持することができる。
また、第3の発明に係る光学素子は、第1,2の発明に係る光学素子において、光学系が、露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介してマスクのパターンを基板上に転写する際に、当該基板の表面と投影光学系との間に所定の液体を満たす投影露光装置に組み込まれる投影光学系である。この場合、液浸型の投影光学系を高精度に保持しつつ耐久性を高めることができるので、長期間に亘って高い露光精度を維持することができる。
また、第4の発明に係る光学素子は、第1〜3の発明に係る光学素子において、表面改質領域が、非光学面領域のうち、所定の液体と触れる可能性がある部分領域に設けられている。この場合、表面改質領域が最小限の場所に形成されるので、光学素子の作製に際して工程や材料の無駄を省くことができ作業を効率化することができる。
また、第5の発明に係る光学素子は、第1〜4の発明に係る光学素子であって、対向する一対の光学面と、当該一対の光学面の間に設けた側面とを有し、表面改質領域が、側面の少なくとも一部に設けられている。この場合、通常光学面を設けない側面が表面改質領域によって保護される。
また、第6の発明に係る光学素子は、第1〜5の発明に係る光学素子において、表面改質領域の研磨面上に溶解防止膜が形成されている。この場合、溶解防止膜によって表面改質領域が上記所定の液体から保護されるので、上記所定の液体に対する光学素子の耐性をさらに高めることができる。この際、表面改質領域の滑らかに平坦化された表面に封止性の良好な薄い溶解防止膜を均質にコーティングすることができ、膜応力によって光学素子の光学特性や光学系の結像特性が劣化することを防止できる。
また、第7の発明に係る光学素子は、第1〜6の発明に係る光学素子において、光学素子の基材が蛍石である。この場合、光学素子をArFエキシマレーザやF2等の各種レーザ光に適合させることができる。なお、蛍石を基材とした場合、光学素子が純水等に直接接触することによって浸食され易くなる傾向があるが、表面改質領域では、純水等に対する耐液性が改善され、表面改質領域の研磨面上に溶解防止膜を形成した場合には、さらに耐液性を高めることができる。
また、第8の発明に係る光学素子は、第1〜7の発明に係る光学素子であって、光学系が、ArFレーザ光に対して使用される。この場合、微細な光処理が可能なArFレーザ光に適用される液浸型の光学系を提供することができる。
また、第9の発明に係る光学素子は、第7,8の発明に係る光学素子において、所定の液体が、水を含む液体であり、溶解防止膜が、酸化珪素、フッ化マグネシウム、及びフッ化ランタンのうち少なくとも1つを主成分とする。この場合、溶解防止膜は、純水等の液体に対する耐性の点で優れ、紫外光の透過損失も少なくなる。
また、第10の発明に係る光学素子は、物体との間に所定の液体を満たした状態で使用される光学系に用いられるものであって、光学素子の表面のうち、光学面領域を除いた非光学面領域の少なくとも一部に平滑化処理が施されている。
上記光学素子によれば、非光学面領域の少なくとも一部に平滑化処理が施されているので、この平滑化処理が施された領域において、研削面に比較して上記所定の液体に接する表面積が少なくなり、上記所定の液体に対する光学素子の耐性を高めることができる。つまり、光学素子のうち特に非光学面領域において、上記所定の液体から受けるダメージを低減して、上記所定の液体による浸食を抑制することができる。また、光学素子のうち平滑化処理が施された領域では、薄い膜のコーティングが容易であるので、膜応力を低減することができ、光学素子を高性能とすることができる。
また、第11の発明に係る光学素子は、物体との間に所定の液体を満たした状態で使用される光学系に用いられるものであって、光学素子の表面のうち、所定の液体と触れる可能性がある液体接触性領域に研磨加工が施されている。
上記光学素子によれば、所定の液体と触れる可能性がある液体接触性領域に研磨加工が施されているので、この液体接触性領域において、研削面に比較して上記所定の液体に接する表面積が少なくなり、上記所定の液体に対する光学素子の耐性を高めることができる。つまり、光学素子のうち特に液体接触性領域において、上記所定の液体から受けるダメージを低減して、上記所定の液体による浸食を抑制することができる。また、光学素子表面のうち研磨加工が施された領域では、薄い膜のコーティングが容易であるので、膜応力を低減することができ、光学素子を高性能とすることができる。
また、第12の発明に係る光学素子の製造方法は、物体との間に所定の液体を満たした状態で使用される光学系に用いられるものであって、光学素子の表面のうち、光学面領域を除いた非光学面領域の少なくとも一部に研磨加工を施す工程を備える。
上記光学素子の製造方法によれば、非光学面領域の少なくとも一部に研磨加工を施すので、この研磨加工が施された領域において、上記所定の液体に対する光学素子の耐性を高めることができる。また、光学素子のうち研磨加工が施された領域では、薄い膜のコーティングが容易であるので、コーティングに付随する膜応力を低減することができ、光学素子を高性能とすることができる。
また、第13の発明に係る光学素子の製造方法は、第12の発明に係る製造方法において、研磨を施した領域の表面上に溶解防止膜を形成する工程をさらに備える。この場合、溶解防止膜によって表面改質領域が上記所定の液体から保護されるので、上記所定の液体に対する光学素子の耐性をさらに高めることができ、溶解防止膜の膜応力によって光学素子の光学特性や光学系の結像特性が劣化することを防止できる。
また、第14の発明に係る光学素子の製造方法は、第12,13の発明に係る製造方法であって、研磨加工において、光学素子の基材が結晶材料である場合、当該結晶材料の結晶方位による研磨速度差を参酌して、研磨ツールの光学素子の表面上における滞在時間を調整する。この場合、光学素子の基材の研磨異方性を相殺するような加工が可能になり、光学素子の高精度な加工が可能になる。
また、第15の発明に係る光学素子の投影露光装置は、露光ビームでマスクを照明し、当該マスクのパターンを投影光学系を介して基板上に転写し、投影光学系の基板側の光学素子の先端部と基板の表面との間を所定の液体で満たした装置であって、光学素子の表面のうち、光学面領域を除いた非光学面領域の少なくとも一部に、研磨加工が施された表面改質領域を有する。
上記投影露光装置によれば、投影光学系の基板側の光学素子において、非光学面領域の少なくとも一部に研磨加工が施された表面改質領域を有するので、この表面改質領域において、上記所定の液体に対する光学素子の耐性を高めることができる。また、当該光学素子の表面改質領域では、薄い膜のコーティングが容易であるので、コーティングに付随する膜応力を低減することができ、光学素子を高性能とすることができる。
また、第16の発明に係る光学素子の投影露光装置は、露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介してマスクのパターンを基板上に転写する際に、当該基板の表面と投影光学系との間に所定の液体を満たす装置であって、第1〜11の発明に係る光学素子を備える。
上記投影露光装置によれば、投影光学系に組み込まれる光学素子が、研磨加工が施された表面改質領域、平滑化処理が施された領域、若しくは研磨加工が施された液体接触性領域を有するので、これらの領域において、上記所定の液体に対する光学素子の耐性を高めることができる。また、当該領域では、薄い膜のコーティングが容易であるので、コーティングに付随する膜応力を低減することができ、光学素子を高性能とすることができる。
〔第1実施形態〕
図1(a)、1(b)、及び1(c)は、本発明の第1実施形態に係る光学素子の形状を説明する底面図、側断面図、及び平面図である。本実施形態の光学素子43は、物体との間に純水(つまり、脱イオン水)等の液体を満たした状態で使用される液浸型の光学系において、当該液浸型光学系の下端すなわち物体側に組み込まれるものである。この光学素子43は、対象光(例えばArFエキシマレーザの波長193nm等の紫外光)に対して透過性を有する蛍石やフッ化バリウム等の結晶塊から切り出された一体型の光学部品であり、光学素子としての機能を発揮する本体部分44と、本体部分44を周囲から支持するためのフランジ部分45とを備える。
図1(a)、1(b)、及び1(c)は、本発明の第1実施形態に係る光学素子の形状を説明する底面図、側断面図、及び平面図である。本実施形態の光学素子43は、物体との間に純水(つまり、脱イオン水)等の液体を満たした状態で使用される液浸型の光学系において、当該液浸型光学系の下端すなわち物体側に組み込まれるものである。この光学素子43は、対象光(例えばArFエキシマレーザの波長193nm等の紫外光)に対して透過性を有する蛍石やフッ化バリウム等の結晶塊から切り出された一体型の光学部品であり、光学素子としての機能を発揮する本体部分44と、本体部分44を周囲から支持するためのフランジ部分45とを備える。
本体部分44は、截頭円錐状の外観を有する平行平板であり、上側の入射面43aと、下側の射出面43bと、これらの間に設けられた側面43dとを備える。このうち、入射面43aと射出面43bとは、互いに平行で平坦な光学面であり、本体部分44の表面領域のうち光学面領域を構成する。また、側面43dは、射出面43bの周囲に所定の傾き角で設けられたテーパ状の傾斜面であり、本体部分44の表面領域のうち非光学面領域を構成する。
図2(a)の拡大断面図に示すように、入射面43aにおいて、下地である本体部材44aの表面は研磨された光学面OS1となっており、この光学面OS1上に対象光を透過させる薄膜OF1が形成されている。薄膜OF1は、ArFエキシマレーザの波長193nm等の紫外光に対して良好な透過性を有するだけでなく、純水等の液浸に対して極めて溶解度が低い保護膜となっている。また、図2(b)の拡大断面図に示すように、射出面43bにおいて、下地である本体部材44aの表面は研磨された光学面OS2となっており、この光学面OS2上に対象光を透過させる薄膜OF2が形成されている。薄膜OF2も、ArFエキシマレーザの波長193nm等の紫外光に対して良好な透過性を有するだけでなく、純水等の液浸に対して極めて溶解度が低い保護膜となっている。
以上のような保護膜を設ける理由について説明する。この光学素子43の場合、上下に純水等の浸液を配置するタイプの液浸型光学系に組み込まれるので、射出面43bだけでなく入射面43aも純水等の浸液に接することになる。光学素子43の基材である蛍石やフッ化バリウム等については、純水等の浸液にわずかであるが溶解性を有しており浸食される可能性があるので、光学素子43の基材を浸液に露出させた場合、経時的劣化によって所望の光学性能が得られなくなる。特に射出面43bについては、蛍石やフッ化バリウムが純水等の浸液に溶け出した場合、この成分が浸液を挟んで対向するウェハ上に不純物として到達し、半導体デバイスに致命的な影響を与える可能性もある。そこで、入射面43aや射出面43bに薄膜OF1,OF2を設けることで、入射面43aや射出面43bが純水等の液浸に浸食されることを防止している。薄膜OF1,OF2の材料としては、SiO2、MgF2、LaF3等を使用することができる。これらの材料は、真空蒸着、スパッタ等の各種成膜方法を利用して本体部材44aの表面上に成膜される。
なお、光学素子43の上下ではなく下方のみに浸液を配置する場合、図2(b)等に示す薄膜OF1は省略することができる。
また、薄膜OF1,OF2の下地として反射防止膜等を形成することもできる。この場合、光学素子43の入射面43aや射出面43bにおける透過損失を低減することができる。
図2(c)の拡大断面図に示すように、側面43dにおいて、下地である本体部材44aの表面は研磨面PSとなっており、この研磨面PS上に溶解防止膜PFが形成されている。ここで、研磨面PSは、研磨によって形成された表面改質領域である。また、溶解防止膜PFは、純水等の液浸に対して極めて溶解度が低い保護膜となっている。ただし、溶解防止膜PFは、ArFエキシマレーザの波長193nm等の紫外光に対して良好な透過性を有する必要はない。
以上のような溶解防止膜PFを側面43dに設ける理由について説明する。本実施形態の光学素子43の場合、図3に示すように、本体部分44の下側半分を浸液ILに浸漬するタイプの液浸型光学系に組み込まれるので、射出面43bだけでなく側面43dも純水等の浸液に接することになる。つまり、側面43dは、浸液と触れる可能性がある液体接触性領域となっている。一方、旧来の一般的な光学素子の場合、加工の作業性等の観点から、側面を研削加工を施したままの研削加工面として露出させている。このような研削加工面は、粗面である上、無数のクラックが存在しているため、表面積が大きいという特徴を有している。ここで、本実施形態の光学素子43の側面43dを仮に旧来のように研削加工面とした場合、このような光学素子43の基材である蛍石やフッ化バリウム等が側面43dに露出して、前述のように純水等の浸液ILによって徐々に浸食される可能性がある。一般的に、物質の溶解速度は接触面積が大きいほど高く、上記のような研削加工面は、表面積が大きいため溶解速度も極めて大きくなる。このように溶解速度が大きいと、浸液IL中に溶け出す光学素子43の基材の量も増加する。光学素子43が液浸型の投影露光装置に組み込まれる場合、この浸液ILは結像の対象であるウェハWに直接接しているため、溶解成分がウェハW表面に付着・浸透して半導体製造に致命的な影響を与えてしまう可能性がある。また、研削加工面の溶解速度は大きいため、側面を研削加工した光学素子43を長期間、浸液IL中で使用した場合、光学素子43先端の形状自体が変化してしまう可能性もある。特に光学素子43が液浸型の投影露光装置に組み込まれる場合、近年の投影露光装置は、高い露光解像度性能を得るためにNAが大きくなっており、光学素子43先端の外周ぎりぎりまで露光光ELが通過している。この露光光ELが通過する部分まで光学素子43先端の溶解が進むと、光学素子43としての性能を維持することができなくなるおそれもある。そこで、本実施形態の光学素子43では、側面43d全体を研磨面とするとともに側面43d全体を被覆する溶解防止膜PFを設けて、側面43dが純水等の浸液ILに浸食されることを防止するとともに、溶解成分の浸液ILへの溶出や拡散による汚染を防止している。
なお、本実施形態の光学素子43では、側面43dに溶解防止膜PFを形成するだけでなく、側面43d全体を研磨することによって側面43dを表面粗さの少ない表面改質領域としている。一般にコート膜は膜応力を有している。このため、あまり膜厚の大きいコート処理を光学素子43の側面43dに施すと、膜応力によって高精度に研磨した射出面43bが変形したり、光学素子43の本体部材44a内部で屈折率の変化が生じ、露光等に際しての結像性能に悪影響を与える場合がある。よって、側面43dに形成する溶解防止膜PFの膜厚は可能な限り薄くするのが理想的である。ここで、溶解防止膜PFの膜厚を小さくした場合、本実施形態のように光学素子43の側面43dが研磨加工面であれば特に問題が生じないが、光学素子43の側面43dの下地が仮に研削加工面であるとすると、光学素子43の基材が部分的に露出して光学素子43の先端が徐々に溶解する。この種の光学素子43が液浸型の投影露光装置に組み込まれる場合、上述したと同様の事情で、光学素子43先端における上記溶解によって形成された物質が不純物としてウェハWに付着し、半導体特性に影響を与えてしまうという問題がある。つまり、光学素子43の側面43dの下地を仮に研削加工面とした場合、被覆される下地面の粗さとコート膜厚の上限とに起因して、研削加工面をコート材料で完全に覆うことができなくなる。こうして、光学素子43の基材である蛍石やフッ化バリウム等が側面43dに部分的に露出すると、蛍石やフッ化バリウムが純水等の浸液ILに溶け出して、対向するウェハW上に不純物として到達し、かかるウェハWから得た半導体デバイスに致命的な影響を与える可能性がある。一方、本実施形態のような光学素子43では、側面43dを研磨加工面としており、被覆される下地面を平滑化して表面粗さを良好なものとしている。よって、溶解防止膜PFの膜厚を小さくしても、側面43dがコート材料で完全に覆われるので、蛍石やフッ化バリウムが純水等の浸液ILに溶け出すことを防止でき、光学素子43を浸液ILによる溶解から守ることができ、溶解成分の不純物によってウェハWが汚染されることを防止できる。
側面43dに成膜する溶解防止膜PFの材料としては、SiO2、MgF2、LaF3に限らず、Au、Pt、Ag、Ni、Ta、W、Pd、Mo、Ti、Cr、ZrO2、HfO2、TiO2、Ta2O5、Cr2O3等を使用することができる。これらのコート材料は、真空蒸着、スパッタ等の各種成膜方法を利用して本体部材44aの表面上に成膜される。また、溶解防止膜PFは、単一の材料からなる単一層に限らず、複数種類の材料からなる複数層とすることができる。
図1に戻って、光学素子43のフランジ部分45は、均一な厚さを有する環状の部材であり、上面45aと、下面45bと、側面45dとを備える。これらの面45a,45b,45dは、いずれも結像に関係のない非光学面領域であるが、光学素子43の保持に関係する部分であり、一定の加工精度が要求される。上面45aについては、本体部分44の入射面43aに近い領域で純水等の液浸に接触する可能性があるので、入射面43aと一括して表面研磨処理が施されており、薄膜OF1が延長して形成されている。つまり、上面45aは、研磨面上に形成された薄膜OF1によって保護されており、純水等の液浸に対して極めて溶解度低い保護膜となっている。しかも、薄膜OF1の下地が研磨面となっているので、入射面43aと同様の膜厚によって膜応力を低減しつつ、薄膜OF1による表面の被覆を完全なものとすることができる。
以下、図1等に示す第1実施形態の光学素子43の製造について説明する。まず、光学素子43の素材である蛍石やフッ化バリウム等の結晶塊を研削加工して、全体の輪郭を最終製品に近いものとする。次に、本体部分44の側面43dの下地を研磨によって鏡面に仕上げることによって研磨面PSとする。その後、本体部分44の入射面43aの下地を研磨によって平坦な光学面OS1に仕上げるとともに、射出面43bの下地を研磨によって平坦な光学面OS2に仕上げる。この際、フランジ部分45の上面45aの下地も研磨によって鏡面に仕上げられる。次に、入射面43aや射出面43bの下地である光学面OS1,OS2上に所定の成膜を行って、保護層である薄膜OF1,OF2を形成する。この薄膜OF1,OF2の膜厚は、例えば90〜800nm程度とする。最後に、本体部分44の側面43dの下地である研磨面PS上に所定の成膜を行って、保護層である溶解防止膜PFを形成する。この溶解防止膜PFの膜厚は、例えば100〜200nm程度とする。なお、薄膜OF2と研磨面PSとは、隣接して形成されるので、互いに干渉しないように適当なマスクを配置して個別の成膜を行うこともできるが、薄膜OF2と研磨面PSとを一括して同一の材質で成膜することもできる。
図4は、本体部分44の側面43dの下地に研磨面PSを形成するための研磨加工装置を説明する図である。この研磨加工装置は、光学素子43の製造の途中段階である被加工体PWを支持する研磨雇い91と、研磨雇い91を保持して回転するステージ92と、被加工体PWの側面PWdに研磨剤を介して接してこれを研磨する研磨ツール93とを備える。研磨雇い91は、研削工程終了後の被加工体PWを中央に固定して保持する支持用の部材である。ステージ92は、研磨雇い91とともに回転する円板状の部材であり、裏面中心から垂直下方に延びる回転軸94の延長方向には、ステージ92すなわち被加工体PWを所望の回転速度で回転させるための回転駆動機構(不図示)が接続されている。研磨ツール93は、被加工体PWの側面PWdに所定の付勢力で押圧される部材であり、裏面中心から延びる回転軸95の延長方向には、研磨ツール93を所望の回転速度で回転させるとともに研磨ツール93を側面PWdに平行な方向に2次元的に揺動させるための駆動機構(不図示)が接続されている。研磨ツール93の端面には、硬質ポリウレタン、ブラシ等からなる研磨パッド93aが取り付けられている。
ここで、被加工体PWは、その中心と研磨雇い91の回転中心とが一致するように取り付けるのが望ましい。また、研磨ツール93の回転軸95は、被加工体PWの側面PWdの傾斜角度と垂直になるように設定されている。図示していないが、研磨ツール93と被加工体PWの側面PWdとの接触領域には、研磨液が適宜供給可能となっており、被加工体PWの側面PWdの鏡面研磨加工が可能になっている。
なお、被加工体PWが研磨液に対して溶解特性を持つ場合は、図1(b)に示す入射面43a及び射出面43bに相当する一対の平面PWa,PWbには、研磨液への溶解を防ぐために、適宜マスク処理を行うことが重要である。
また、研磨ツール93を側面PWdに沿って揺動させることで、被加工体PWの側面PWdにおける研磨磨耗量の均一性を制御・確保することも可能である。
前述したように、光学素子43の素材として、紫外線で良好な透過性を有する蛍石やフツ化バリウムが用いられる場合があり、この場合、被加工体PWも蛍石やフツ化バリウムで形成される。これらの材料は結晶材料であるため、結晶方位により物理特性や機械特性が異なり、当然結晶方位によって研磨速度も異なる特徴を持つ。このため、図4の研磨加工装置においてステージ92を定速回転させて被加工体PWの側面PWdの研磨を行うと、結晶方位による研磨速度差の影響を受け、研磨終了時点の側面PWdの真円度が悪化する場合がある。例えば図4において、被加工体PW上側の平面PWbが{111}面になるように結晶方位を設定した場合、ステージ92を定速回転させることによって研磨を行った側面PWdは、120degごとにPVを持つ真円度の低い面となる(図5の点線参照)。そこで、光学素子43の側面43dが例えば保持やシールの観点で加工精度を求められる場合には、ステージ92の回転速度を可変とする。具体的には、ステージ92を回転駆動するための回転駆動機構をNC制御型の装置として、側面PWdの研磨速度の変化を相殺するような滞在時間を達成する(図5の実線参照)。つまり、研磨ツール93が被加工体PWの側面PWdのうち研磨速度が速い結晶方位の方向に滞在している場合は、ステージ92の回転速度を速くする。一方、研磨ツール93が側面PWdのうち研磨速度が遅い結晶方位の方向に滞在している場合は、ステージ92の回転速度を遅くする。このように、研磨速度に応じてステージ92の回転速度を調節することで、被加工体PWの側面PWdが均一に研磨され、面研磨加工後の被加工体PWの側面PWdひいては光学素子43の側面43dについて、真円度のズレを小さくすることができる。
以上説明した本実施形態の光学素子43によれば、本体部材44aの側面43dの下地表面が研磨された研磨面PSとなっており、この研磨面PS上に純水等の液浸に対して極めて溶解度が低い溶解防止膜PFが薄く形成されている。この結果、側面43dの浸液に対する耐性を高めることができ、低い応力によって光学素子43の光学特性を高く維持することができる。しかも、光学素子43の先端が溶解防止膜PFによって被覆されており、蛍石やフツ化バリウム等が純水等の浸液ILに浸食されることを防止できるので、蛍石やフツ化バリウム等の溶解成分がウェハW表面に付着・浸透して半導体製造に致命的な影響を与えてしまうことを防止できる。
以上説明した第1実施形態の光学素子43では、側面43dにおいて、本体部分44の側面43dの下地が研磨面PSであるとしたが、かかる研磨面PSは、高精度の研削加工等によって平坦化された鏡面等に置き換えることができる。さらに、溶解防止膜PFの膜厚を比較的大きくすることができる用途では、側面43dの下地は、鏡面に限らず平滑化処理された平滑面とすることができる。この場合、側面43dの下地は、溶解防止膜PFに設定された膜厚に応じて一定以下の表面粗さを有する平滑面となる。
また、上記光学素子43では、入射面43aや射出面43bを平面としているが、これらの下地である光学面OS1,OS2を凹面や凸面とすることで、両面43a,43bを凹面や凸面に仕上げることもできる。
〔第2実施形態〕
図6は、第2実施形態に係る光学素子の形状を説明する側断面図である。本実施形態の光学素子143は、第1実施形態の光学素子43を部分的に変更したものであり、特に説明しない部分は第1実施形態の場合と同様である。本実施形態の光学素子143の場合、側面143d全体が溶解防止膜PFで被覆されているのではなく、側面143dの下半分だけが溶解防止膜PFで被覆されている。光学素子143の本体部分44が浸液に完全に漬かるのではなく、下半分の液体接触性領域だけが浸液に漬かる場合、厳密には下半分のみが液体接触性領域となっているので、側面143dの下半分だけに溶解防止膜PFを形成しても光学素子143を十分に保護することができ、蛍石やフツ化バリウム等の溶解成分が汚染物質として拡散することを防止できる。なお、図示の例では、側面143dのほぼ全体を研磨した後に溶解防止膜PFを成膜しているが、側面143dの下半分のみを研磨した後に研磨面上に溶解防止膜PFを成膜することもできる。
図6は、第2実施形態に係る光学素子の形状を説明する側断面図である。本実施形態の光学素子143は、第1実施形態の光学素子43を部分的に変更したものであり、特に説明しない部分は第1実施形態の場合と同様である。本実施形態の光学素子143の場合、側面143d全体が溶解防止膜PFで被覆されているのではなく、側面143dの下半分だけが溶解防止膜PFで被覆されている。光学素子143の本体部分44が浸液に完全に漬かるのではなく、下半分の液体接触性領域だけが浸液に漬かる場合、厳密には下半分のみが液体接触性領域となっているので、側面143dの下半分だけに溶解防止膜PFを形成しても光学素子143を十分に保護することができ、蛍石やフツ化バリウム等の溶解成分が汚染物質として拡散することを防止できる。なお、図示の例では、側面143dのほぼ全体を研磨した後に溶解防止膜PFを成膜しているが、側面143dの下半分のみを研磨した後に研磨面上に溶解防止膜PFを成膜することもできる。
〔第3実施形態〕
図7は、第3実施形態に係る光学素子の形状を説明する側断面図である。本実施形態の光学素子243も、第1実施形態の光学素子43を部分的に変更したものである。本実施形態の光学素子243の場合、側面243d全体が研磨面PSのままで露出しており、溶解防止膜で被覆されていない。光学素子243が浸液に比較的侵食されにくい材料でできている場合、或いは光学素子243の侵食がある程度許容される用途では、研削面を研磨面PSに加工するだけで側面243dの表面積が減少し、浸食量が飛躍的に減少するので、光学素子143を十分に保護することができる。なお、入射面43aや射出面43bについては、これらが光学面であることを考慮して、保護用の薄膜OF1,OF2を残しているが、用途によってはこれら薄膜OF1,OF2を省略することもできる。
図7は、第3実施形態に係る光学素子の形状を説明する側断面図である。本実施形態の光学素子243も、第1実施形態の光学素子43を部分的に変更したものである。本実施形態の光学素子243の場合、側面243d全体が研磨面PSのままで露出しており、溶解防止膜で被覆されていない。光学素子243が浸液に比較的侵食されにくい材料でできている場合、或いは光学素子243の侵食がある程度許容される用途では、研削面を研磨面PSに加工するだけで側面243dの表面積が減少し、浸食量が飛躍的に減少するので、光学素子143を十分に保護することができる。なお、入射面43aや射出面43bについては、これらが光学面であることを考慮して、保護用の薄膜OF1,OF2を残しているが、用途によってはこれら薄膜OF1,OF2を省略することもできる。
〔第4実施形態〕
以下、本発明に係る液浸型レンズ系を組み込んだステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置について説明する。
以下、本発明に係る液浸型レンズ系を組み込んだステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置について説明する。
図8は、本実施形態の投影露光装置の概略構成を示し、この図8において、露光光源としてのArFエキシマレーザ光源、オプティカル・インテグレータ(ホモジナイザー)、視野絞り、コンデンサレンズ等を含む照明光学系1から射出された波長193nmの紫外パルス光よりなる露光光ELは、マスクであるレチクルRに設けられたパターンを照明する。レチクルRのパターンは、両側(又はワークであるウェハW側に片側)テレセントリックな投影光学系PLを介して所定の投影倍率β(βは例えば1/4,1/5等)でフォトレジストが塗布されたウェハW上の露光領域に縮小投影される。以下、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で図8の紙面に垂直にY軸を取り、図8の紙面に平行にX軸を取って説明する。
レチクルRは、レチクルステージRST上に保持され、レチクルステージRSTには、X方向、Y方向、各軸の回転方向にレチクルRを微動する微動機構と、レチクルRを例えばX方向に一定速度で移動させるための走査機構とが組み込まれている。レチクルステージRSTの2次元的な位置、及び回転角はレーザ干渉計(不図示)によってリアルタイムに計測され、この計測値に基づいて主制御系14がレチクルRの位置決めを行うとともに、レチクルRを例えばX方向に一定速度で移動させる走査を行う。
一方、ウェハWは、ウェハホルダ(不図示)を介してウェハWのフォーカス位置(Z方向の位置)及び傾斜角を制御するZステージ9上に固定されている。Zステージ9は投影光学系PLの像面と実質的に平行なXY平面に沿って移動するXYステージ10上に固定され、XYステージ10はベース11上に載置されている。Zステージ9は、ウェハWのフォーカス位置(Z方向の位置)、及び傾斜角を制御してウェハW上の表面をオートフォーカス方式、及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込む。XYステージ10は、ウェハWのX方向、及びY方向の位置決めを行うとともに、ウェハWを例えば−X方向に一定速度で移動させる同期走査を行う。Zステージ9(ウェハW)の2次元的な位置、及び回転角は、移動鏡12の位置としてレーザ干渉計13によってリアルタイムで計測されている。この計測結果に基づいて主制御系14からウェハステージ駆動系15に制御情報が送られ、これに基づいてウェハステージ駆動系15は、Zステージ9及びXYステージ10の動作を制御する。露光時には、ウェハW上の各ショット領域においてレチクルRとウェハWとを同期移動させながら露光を繰り返す動作、すなわちステップ・アンド・スキャン露光が繰り返される。
図9は、投影光学系PLの下端部の構造を概念的に説明する側方断面図である。この投影光学系PLは、液浸型レンズ系であり、露光波長を実質的に短くして解像度を向上することができ、また、解像度を維持したままで焦点深度を広くすることができる。
投影光学系PLは、一体的に組み立てられた上部側の本体部分30と、本体部分30下端に取り付けられた交換部分40とを備える。
前者の本体部分30は、鏡筒31内に複数の光学素子を備えており、そのうちの1つの光学素子33が鏡筒31の下端に固定されて露出している。本体部分30は、下端に円形の開口AP1を有しており、光学素子33のフランジ部分35は、開口AP1の周囲に設けた環状の係止部31cによって下方向及び横方向から支持され、不図示の部材によって上方向に移動しないように固定されている。開口AP1の内側面IS1と光学素子33の側面33dとの間に形成された隙間には、Vリング等からなる環状シール部材37が設けられている。この環状シール部材37は、外側で内側面IS1に固定されており、内側で光学素子33の側面43dに一定の付勢力で密着している。
後者の交換部分40は、第1実施形態で説明した断面台形状の光学素子43(図1参照)と、これを保持する環状のホルダ46とを有しており、不図示の締結具によって本体部分30に対して着脱可能に固定されている。ホルダ46は、円形の開口AP2を有しており、光学素子43のフランジ部分45は、この開口AP2の周囲に設けた環状の係止部46cによって下方向及び横方向から支持されている。さらに、このフランジ部分45は、鏡筒31下端との間に挟持されたOリング等からなる環状シール部材47によって下方向に付勢される。これにより、光学素子43がホルダ41底面から所定量だけ突出した状態で固定される。
交換部分40の下端に対向してその周囲に、環状又は矩形枠状のノズル装置53が設けられている。このノズル装置53は、不図示の支持手段を介して鏡筒31側に固定されており、交換部分40の下端に露出する光学素子43先端の突起部分を周囲から覆うように配置される。ノズル装置53は、円形の開口AP3を有しており、開口AP3の内側面IS3と光学素子43の側面43dとの間に形成された隙間には、Vリング等からなる環状シール部材57が設けられている。この環状シール部材57は、外側で内側面IS3に固定されており、内側で光学素子43の側面43dに一定の付勢力で密着している。
交換部分40を鏡筒31の下端に固定した状態において、交換部分40と鏡筒31との間には、純水等である第1浸液IL1を収容する浸液溜ICが形成される。この浸液溜ICは、光学素子33の射出面43bと光学素子43の入射面43aとの間に挟まれて略円板状の輪郭を有する実質的な閉空間となっている。なお、開口AP1の内側面IS1と光学素子33の側面33dとの間に設けた環状シール部材37によって、第1浸液IL1やこれから発生した蒸気が光学素子33上方すなわち鏡筒31内部に流入することを規制している。
一方、交換部分40若しくはノズル装置53と、処理対象であるウェハWとの間には、純水等である第2浸液IL2がその表面張力によって保持されている。つまり、第2浸液IL2は、開放空間に保持された状態となっている。なお、開口AP3の内側面IS3と光学素子43の側面43dとの間に設けた環状シール部材57によって、第2浸液IL2やこれから発生した蒸気が光学素子43の上部や交換部分40の内部に流入することを規制している。
第1浸液IL1を収容する浸液溜ICには、吐出ノズル51と吸引ノズル52とが一対以上互いに対向して形成されており、浸液溜IC中の第1浸液IL1を徐々に交換できるようになっている。つまり、鏡筒31の下部側面の適所に第1浸液IL1を所定流量で吐出させる吐出ノズル51が1つ以上形成されており、ホルダ41の側面の適所に第1浸液IL1を排出させる吸引ノズル52が1つ以上形成されている。吐出ノズル51や吸引ノズル52の個数や配置は、投影光学系PLの使用条件等に応じて適宜変更することができる。
光学素子33は、第1浸液IL1に接しているので、本体部分30の寿命を延ばすためには、光学素子33の材料が第1浸液IL1に対して耐食性を有するものであるか、光学素子33の下半分が第1浸液IL1に対して耐食性を有する保護膜で覆われていればよい。本実施形態の場合、光学素子33の基材を浸液に対する耐食性が高いものとせず、蛍石やフツ化バリウム等の耐食性が低いものとする。これに対応して、光学素子33の射出面33bに光透過性の保護膜を形成し、光学素子33の側面33dに保護膜を形成する。これらの保護膜は、図1等に示す薄膜OF2や溶解防止膜PFと同様の特性を有するものであり、第1浸液IL1に対して極めて高い難溶性を示し、光学素子33の基材を確実に保護する。これにより、第1浸液IL1に接触する光学素子33すなわちその基材が侵食されにくくなり、本体部分30の耐水性を高めることができるので、本体部分30ひいては投影光学系PLの結像性能を良好に維持することができる。なお、光学素子33の材料が第1浸液IL1に対して耐食性を有するもの、例えば合成石英ガラス等である場合、薄膜OF2や溶解防止膜PF等の保護膜は必ずしも必要ない。
一方、光学素子43は、第1及び第2浸液IL1,IL2に接している。この光学素子43の基材は、第1実施形態の欄で説明したように、蛍石やフツ化バリウム等の浸液に対する耐食性が低いものである。これに対応して、図1等に示すように、光学素子43の入射面43aに光透過性の薄膜OF1を形成するとともに、光学素子43の射出面43bに光透過性の薄膜OF2を形成し、光学素子43の側面43dに溶解防止膜PFを形成する。これらの保護膜は、第1及び第2浸液IL1,IL2に対して極めて高い難溶性を示し、光学素子43の基材を確実に保護する。これにより、第1及び第2浸液IL1,IL2に接触する光学素子43すなわちその基材が侵食されにくくなるので、光学素子43の基材が溶け出して汚染物質となることを防止できるとともに、投影光学系PLの結像性能を長期間にわたって良好に維持することができる。
以上のような投影光学系PLにおいて、レチクルR(図1参照)を透過して本体部分30の上端に入射した像光は、本体部分30の下端に設けた光学素子33から収束しつつ出射し、第1浸液IL1を経て光学素子43に入射する。この光学素子43を通過した像光は、第2浸液IL2を経てウェハWに入射してここに投影像を形成する。
図8に戻って、第1浸液IL1は、その液体のタンク、加圧ポンプ等からなる液体供給装置75によって、供給管25を介して吐出ノズル51から流量制御された状態で浸液溜IC中に供給される。液体供給装置75の前段には、温度調節装置76が設けられており、浸液溜ICに連通する吸引ノズル52から回収管26を介して第1浸液IL1を吸引する。すなわち、液体供給装置75から送り出される第1浸液IL1は、温度調節装置76で例えば冷却されて所望の温度とされる。ここで、第1浸液IL1は、例えば本実施形態の投影露光装置が収納されているチャンバ内の温度と同程度に設定されている。このように、温度調節装置76を用いて一対の光学素子33,43間の空間に挟まれた第1浸液IL1の温度を一定に保つことにより、投影光学系PLの結像特性を安定化することができる。この際、温度調節装置76によって温度調節された第1浸液IL1により、露光光ELによって加熱される光学素子33や光学素子43の表面が冷却されるので、これらの光学素子33,43について浸食の進行を抑えることもできる。
また、第2浸液IL2は、その液体のタンク、加圧ポンプ等からなる液体供給装置71によって、供給管21を介して吐出ノズル53a(図10参照)から、ウェハW上に流量制御された状態で供給される。また、第2浸液IL2は、その液体のタンク、吸引ポンプ等からなる液体回収装置72によって、吸引ノズル53b(図10参照)及び回収管22を介して、ウェハW上から回収される。液体回収装置72から液体供給装置71にかけての循環路上には、温度調節手段である温度調節装置73が設けられている。すなわち、液体回収装置72で回収された第2浸液IL2は、温度調節装置73で例えば冷却されて所望の温度とされた状態で、液体供給装置71に戻される。ここで、第2浸液IL2は、例えば本実施形態の投影露光装置が収納されているチャンバ内の温度と同程度に設定されている。このように、温度調節装置73を用いて光学素子43とウェハWとの間の空間に挟まれた第2浸液IL2の温度を一定に保つことにより、投影光学系PLの結像特性を安定化することができる。この際、温度調節装置73によって温度調節された第2浸液IL2により、露光光ELによって加熱される光学素子43の表面が冷却されるので、光学素子43の浸食の進行を抑えることもできる。
以下、図8等に示す投影露光装置の動作について説明する。予め、液体供給装置75等を動作させて、投影光学系PLの浸液溜IC中に一定温度の第1浸液IL1を循環させる。次に、Zステージ9及びXYステージ10を適宜駆動して、ウェハWに対して投影光学系PLを適所に移動させる。この際、液体供給装置71、液体回収装置72等を動作させて、ウェハWと光学素子43との間に一定温度の第2浸液IL2を循環させる。一方、パターンが形成されたレチクルRは、照明光学系1から射出された露光光ELによって重畳的に均一に照明される。レチクルRのパターンを透過した光束は、投影光学系PLを介して、感光性基板であるウェハW上にマスクパターンの像を形成する。この際、投影光学系PLの光軸AXと直交するX方向に沿ってレチクルRとウェハWとを反対方向に移動させる同期走査を行って、レチクルR上のパターンをウェハW上に徐々に露光する走査露光を行う。かかる走査露光の合間に、XY平面内においてウェハWをステップ移動させることによって、ウェハW上の全面に所望のパターンが逐次露光される。この際、投影光学系PL先端の光学素子43の入射面43a、射出面43b、及び側面43dに、薄膜OF1,OF2及び溶解防止膜PFがそれぞれ形成されているので、光学素子43の入射面43a及び射出面43bを第1及び第2浸液IL1,IL2から保護することができ、光学素子43の側面43dからの浸食を防止することができる。さらに、光学素子43の浸食防止によって、光学素子43の成分が第2浸液IL2を介してウェハWを汚染することを防止できる。なお、第1浸液IL2を挟んで光学素子43に対向する光学素子33についても、第1浸液IL2による浸食を同様に防止することができる。
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第4実施形態の投影露光装置において、投影光学系PLを浸液溜ICのないものとすることもできる。この場合、投影光学系PLを構成する全光学素子のうち光学素子43のみが浸液に接することになり、第1浸液IL1用の液体供給装置75、温度調節装置76等は不要となる。
また、上記投影露光装置において、第1及び第2浸液IL1,IL2としては、純水以外にも、露光光ELに対する十分な透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLやウェハW表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なものを用いることができる。例えば波長200nm以下の露光光ELに対しては、これを透過させる液体として例えばフッ素系オイル(フロリナート;米国スリーエム社製)や過フッ化ポリエーテル(PFPE)等を含むフッ素系の浸液等の使用が好適である。この場合、薄膜OF1,OF2や溶解防止膜PFも、フッ素系の浸液に対して耐浸食性を有する材料で作製する。
また、露光光ELとしては、ArFエキシマレーザ光に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、F2レーザ光(波長157nm)や水銀ランプのi線(波長365nm)等を使用してもよい。
また、上記投影露光装置においては、投影光学系PLとウェハWとの間を局所的に第2浸液IL2で満たす露光装置を採用しているが、特開平6−124873号公報に開示されているように、露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる液浸露光装置や、特開平10−303114号公報に開示されているように、ステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する液浸露光装置にも本発明を適用可能である。
また、上記投影露光装置においては、ステップ・アンド・スキャン方式で露光を行っているが、ステップ・アンド・リピート方式で露光を行う場合にも、上記と同様の投影光学系PLや浸液給排機構が必要となる。この場合も、浸液に接する光学素子を第1〜第3実施形態に例示するような構造とすることによって、光学素子の側面等の浸食を低減することができ、ウェハWの汚染を防止することができる。
1…照明光学系、 14…主制御系、 15…ウェハステージ駆動系、 30…本体部分、 31…鏡筒、 33…光学素子、 35…フランジ部分、 37…環状シール部材、 40…交換部分、 41…ホルダ、 43…光学素子、 43a…入射面、 43b…射出面、 43d…側面、 44…本体部分、 45…フランジ部分、 46…ホルダ、 47…環状シール部材、 51…吐出ノズル、 52…吸引ノズル、 53…ノズル装置、 57…環状シール部材、 71…液体供給装置、 73…温度調節装置、 75…液体供給装置、 76…温度調節装置、 AP1…開口、 AP2…開口、 AP3…開口、 IC…浸液溜、 IL1…第1浸液、 IL2…第2浸液
Claims (16)
- 物体との間に所定の液体を満たした状態で使用される光学系に用いられる光学素子であって、
前記光学素子の表面のうち、光学面領域を除いた非光学面領域の少なくとも一部に、研磨加工が施された表面改質領域を有することを特徴とする光学素子。 - 前記所定の液体に接するように前記光学系の物体側に配置されることを特徴とする請求項1記載の光学素子。
- 前記光学系は、露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介して前記マスクのパターンを基板上に転写する際に、当該基板の表面と前記投影光学系との間に前記所定の液体を満たす投影露光装置に組み込まれる、前記投影光学系であることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか一項記載の光学素子。
- 前記表面改質領域は、前記非光学面領域のうち、前記所定の液体と触れる可能性がある部分領域に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項記載の光学素子。
- 前記光学素子は、対向する一対の光学面と、当該一対の光学面の間に設けた側面とを有し、前記表面改質領域は、前記側面の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載の光学素子。
- 前記表面改質領域の研磨面上に溶解防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項記載の光学素子。
- 前記光学素子の基材は、蛍石であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項記載の光学素子。
- 前記光学系は、ArFレーザ光に対して使用されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項記載の光学素子。
- 前記所定の液体は、水を含む液体であり、前記溶解防止膜は、酸化珪素、フッ化マグネシウム、及びフッ化ランタンのうち少なくとも1つを主成分とすることを特徴とする請求項7及び請求項8のいずれか一項記載の光学素子。
- 物体との間に所定の液体を満たした状態で使用される光学系に用いられる光学素子であって、
前記光学素子の表面のうち、光学面領域を除いた非光学面領域の少なくとも一部に平滑化処理が施されていることを特徴とする光学素子。 - 物体との間に所定の液体を満たした状態で使用される光学系に用いられる光学素子であって、
前記光学素子の表面のうち、前記所定の液体と触れる可能性がある液体接触性領域に研磨加工が施されていることを特徴とする光学素子。 - 物体との間に所定の液体を満たした状態で使用される光学系に用いられる光学素子の製造方法であって、
前記光学素子の表面のうち、光学面領域を除いた非光学面領域の少なくとも一部に研磨加工を施す工程を備えることを特徴とする光学素子の製造方法。 - 前記研磨加工を施した領域の表面上に溶解防止膜を形成する工程をさらに備えることを特徴とする請求項12記載の光学素子の製造方法。
- 前記研磨加工において、前記光学素子の基材が結晶材料である場合、当該結晶材料の結晶方位による研磨速度差を参酌して、研磨ツールの前記光学素子の表面上における滞在時間を調整することを特徴とする請求項12及び請求項13のいずれか一項記載の光学素子の製造方法。
- 露光ビームでマスクを照明し、当該マスクのパターンを投影光学系を介して基板上に転写し、前記投影光学系の前記基板側の光学素子の先端部と前記基板の表面との間を所定の液体で満たした投影露光装置であって、
前記光学素子の表面のうち、光学面領域を除いた非光学面領域の少なくとも一部に、研磨加工が施された表面改質領域を有することを特徴とする投影露光装置。 - 露光ビームでマスクを照明し、投影光学系を介して前記マスクのパターンを基板上に転写する際に、当該基板の表面と前記投影光学系との間に前記所定の液体を満たす投影露光装置であって、
請求項1から請求項11のいずれか一項記載の光学素子を備えることを特徴とする投影露光装置。
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