JP2006177667A - 超音波探傷方法及び超音波探傷装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 圧縮性流体中の異物を被検査体内部の欠陥として誤認検出することを防止すると共に、被検査体内部の曲成欠陥の有無を的確に判定する。
【解決手段】 超音波を送受信する探触子10と、被検査体1とを、非圧縮性流体を介在させて相対移動させ、その相対移動時に探触子10から被検査体1に送信された超音波の反射波によるデータに基づいて、被検査体1の内部欠陥を検出する超音波探傷検査方法において、反射波によるデータの中から、被検査体1が存在すべき領域内での欠陥として予備的に認識される欠陥候補のデータを抽出すると共に、被検査体1と探触子との相対移動距離の変化に対応する超音波の送信から欠陥候補からの反射波を受信するまでの時間の変化を割り出し、それらの変化の態様の直線性に基づいて欠陥候補が曲成欠陥であるか否かを判別する。
【選択図】図2
【解決手段】 超音波を送受信する探触子10と、被検査体1とを、非圧縮性流体を介在させて相対移動させ、その相対移動時に探触子10から被検査体1に送信された超音波の反射波によるデータに基づいて、被検査体1の内部欠陥を検出する超音波探傷検査方法において、反射波によるデータの中から、被検査体1が存在すべき領域内での欠陥として予備的に認識される欠陥候補のデータを抽出すると共に、被検査体1と探触子との相対移動距離の変化に対応する超音波の送信から欠陥候補からの反射波を受信するまでの時間の変化を割り出し、それらの変化の態様の直線性に基づいて欠陥候補が曲成欠陥であるか否かを判別する。
【選択図】図2
Description
本発明は、被検査体との間で非圧縮性流体を介して超音波を送受信することで、被検査体の欠陥を検出する超音波探傷検査方法及び超音波探傷装置に関し、例えば陰極線管用ガラスパネルのフェース部に存在する内部欠陥を検出するための技術に関する。
一般に、テレビ受像機等の構成要素である陰極線管としては、いわゆる直視型陰極線管と、投射型陰極線管とが公知となっている。これらの陰極線管は、画像が映し出される略矩形のフェース部を有する陰極線管用ガラスパネル(以下、単にパネルともいう)と、略矩形の大開口部から略円形の小開口部に至る略漏斗状の側壁部を有する陰極線管用ガラスファンネル(以下、単にファンネルともいう)とを備え、このファンネルの小開口部に、電子銃が装着されるネック部を連設して構成される。そして、パネルとファンネルとは、雌型と雄型とからなる金型を用いて溶融ガラスをプレス成型することにより製造されるものである。
前記直視型陰極線管は、パネルの内表面に形成された蛍光膜に例えば各色の光を配列させることにより画像を映し出す構成であるのに対して、前記投写型陰極線管は、パネルの内表面に形成された所定の光を発する蛍光膜に電子線を照射させ、この蛍光膜に焦点距離が存在する投写用レンズ系を介してスクリーンに拡大投影することにより画像を映し出す構成である。
これらの陰極線管を構成しているパネルは、単体の状態で、或いはファンネルと封着されてガラスバルブとされた状態で、そのフェース部に内部欠陥が存しているか否かの探傷検査が行われ、その検査方法としては超音波を利用した探傷検査が提案され或いは実用化されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
一般に、超音波探傷検査は、探触子から被検査体(例えば、パネル)に送信された超音波の反射波を受信し、この受信された反射波のうち、傷等の欠陥による反射波が送信からの時間遅れを生じることに基づいて被検査体の内部を非破壊で探傷検査する手法である。そして、探触子と被検査体の双方を非圧縮性流体に浸漬した状態で、或いは探触子と被検査体の間に部分的に非圧縮性流体を介在させた状態で超音波の送信及び受信を行うと共に、探触子と被検査体とを相対移動させることで被検査体の全体或いは一部について探傷検査が行われている。なお、非圧縮性流体は、超音波の伝搬経路を確保するためのものであって、通常は安価且つ安全な水が使用されるため、記載の便宜上、以下では非圧縮性流体を単に水とも記す。
ところで、この種の超音波探傷方法は、水中に気泡や塵埃等の異物が存在すると、これらの異物で反射した反射波も探触子に受信される。しかも、この反射波の一部が探触子の表面で反射して、再度異物へと送信され、更にこの異物での反射波が探触子に再度受信されることがある。そして、このように探触子の表面と異物との間で超音波が往復伝搬して、その反射波(以下、多重反射波という)が受信されると、この多重反射波はあたかも被検査体内部で反射したかのような時間遅れをもって探触子に受信され、この多重反射波を被検査体内部の欠陥として誤認検出するという問題があった。
そこで、この問題の対策として、例えば下記の特許文献2には、探触子と被検査体表面との相互間領域での反射波が、予め定めた判定レベル以上の振幅をもって受信された場合に、被検査体内部に対する探傷動作を一時的に中断することが開示されている。このようにすれば、水中の異物による多重反射波が探触子に受信される前に、探傷動作が中断されるので、多重反射波を被検査体内部の欠陥として誤認検出するという不具合が回避され得ることになる。
また、例えば下記の特許文献3には、探触子と被検査体表面との相互間領域での反射波と、被検査体内部で反射したものと推定される反射波とを別々に且つ同時に受信し、更にこの両方の反射波を比較して、探触子と被検査体表面との相互間領域での反射波が検出された時点で、その時に検出された被検査体内部で反射したものと推定される反射波を消去することが開示されている。このようにすれば、水中の異物での反射波が受信された時点で、これに対応する多重反射波が消去され、多重反射波を被検査体内部の欠陥として誤認検出するという不具合が回避され得ることになる。
ところで、上記のパネルのフェース部に存在する内部欠陥は、ガラス原料を溶融する工程からプレス成型工程までの間で、溶融ガラス内に気泡や異物(固体)などが混入して、製造されたパネルに、曲成欠陥と呼ばれる湾曲面や屈曲面等の曲面を界面とする欠陥として現れることが多い。しかも、このような曲成欠陥がパネルのフェース部に存在すると、映し出される画像に悪影響を及ぼすことがあり、特に投写型陰極線管に使用されるパネルにおいては、その曲成欠陥が拡大されて例えば黒色の異形態として映し出され、画像に多大な悪影響を及ぼす可能性がある。
すなわち、この種のパネルにおいて、上述の黒色の異形態等に起因する画像不良は、フェース部に存在する全ての内部欠陥が関与するものではなく、主として上述の曲成欠陥が関与するものであって、この事を勘案すれば、それらの内部欠陥の形状に由来するところが大きい。したがって、この種のパネルの探傷検査において、あらゆる内部欠陥を画像に悪影響を及ぼす本来的欠陥として捉えることはむしろ徒労に帰するものであるから、内部欠陥の形状を把握した上で、既述のような欠陥の誤認検出を防止することが重要となる。
しかしながら、上記の特許文献2及び特許文献3に開示された手法は何れも、水中の異物と、被検査体の内部欠陥とを識別することを主たる目的とするもので、検出された内部欠陥の形状を把握した上でその欠陥の誤認検出を防止するものではない。したがって、この種のパネルのように内部欠陥の形状を問題とするような被検査体の探傷検査においては、上記の特許文献2及び特許文献3に開示された手法を採用しても、本来的な要請に応じた検査を行いつつ内部欠陥の誤認検出を防止することは実質的に不可能である。
なお、以上のような問題は、上述のパネル(投写型陰極線管のパネル)を検査する場合に限らず、内部欠陥の形状が品質に大きく影響を及ぼす他の物品を検査する場合にも、同様にして生じ得る。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、検査の適正化を図るべく被検査体の内部欠陥の形状を把握した上で、非圧縮性流体中の異物と被検査体の内部欠陥との誤認検出を防止することを技術的課題とする。
本発明は、被検査体である物品の内部欠陥として曲成欠陥が品質に悪影響を及ぼすことが多いという知見、並びに、超音波を利用して物品の検査を行う際に、被検査体と探触子との相対移動距離の変化に対応する超音波の送信から受信までの時間の変化の態様が、非圧縮性流体中の異物と、被検査体内部の曲成欠陥とで相違するという知見に基づいてなされたものである。
すなわち、上記課題を解決するために創案された本発明は、超音波を送信及び受信する探触子と、被検査体とを、非圧縮性流体を介在させて相対移動させ、その相対移動時に前記探触子から被検査体に送信された超音波の反射波によるデータに基づいて、前記被検査体の内部欠陥を検出する超音波探傷検査方法において、前記反射波によるデータの中から、前記被検査体が存在すべき領域内での欠陥として予備的に認識される欠陥候補のデータを抽出すると共に、前記被検査体と探触子との相対移動距離の変化に対応する超音波の送信から前記欠陥候補からの反射波を受信するまでの時間の変化を割り出し、それらの変化の態様の直線性に基づいて前記欠陥候補が曲成欠陥であるか否かを判別する工程を含むことに特徴づけられる。ここで、「曲成欠陥」とは、被検査体の内部に、泡状の空洞や異物(固体)などが存在することにより、湾曲面や屈曲面等の曲面からなる界面によって包囲された欠陥を意味するものである。
このような方法によれば、被検査体と探触子との相対移動距離(以下、単に相対移動距離ともいう)の変化に対応する超音波の送信から欠陥候補の反射波を受信するまでの時間(以下、単に時間ともいう)の変化の態様を割り出し、それらの変化の態様の直線性を求めることで、高い直線性をもって検出された欠陥候補のデータは、非圧縮性流体中の異物によるものと判定することができる。また、これに対して、相対移動距離と時間との変化の態様の直線性が低い場合にはその態様が曲線状を示すようになるため、被検査体内部の曲成欠陥と判定することができる。詳述すると、被検査体の内部欠陥の中でも、品質に悪影響を及ぼすことが多い曲成欠陥のみを本来的な欠陥として判定し、それ以外の品質上問題とならない形状の欠陥については、欠陥として判定しないことになるので、曲成欠陥のみが特に大きな問題となる物品については、無駄を生じることなく要請に応じた適正な検査が行なわれ得ることになる。更に、このような曲成欠陥と、非圧縮性流体中の異物とを、明確に区別できることから、この両者を誤認検出するという事態の発生確率も極めて低くなり、検査の質の向上が図られる。
上記方法において、前記直線性を示すパラメータは、前記相対移動距離と前記時間との相関係数としてもよい。ここで、「相関係数」とは、統計学で定義したものを意味している。
このようにすれば、相関係数の絶対値が1に近づくに連れて、相対移動距離と、時間との間に、高い直線性があると判定でき、その一方で、相関係数の絶対値が0に近づくに連れて、両者の間に直線性がないと判断することができる。つまり、相関係数の絶対値が1に近いときは、非圧縮性流体中の異物によるものと判断でき、逆に相関係数の絶対値が0に近いときは、被検査体内部の曲成欠陥と判断することができる。そして、相関係数の絶対値が0.8を超える場合には、その欠陥候補のデータが非圧縮性流体中の異物によるものと判断し、相関係数の絶対値が0.8以下である場合には被検査体内部の空洞状欠陥によるものと判断することが好ましい。このように相対移動距離と、時間との変化の態様の直線性を相関係数で示すことで、その直線性を客観的数値で判断することが可能となり、プログラム等によって、欠陥候補データから被検査体内部の曲成欠陥を自動的に検出することが容易となり、探傷検査を簡略化して高速化を図ることができる。
上記の方法において、前記相対移動距離と前記時間との2次回帰を求め、この2次回帰の2次項の係数に基づいて前記欠陥候補が曲成欠陥であるか否かを判別する工程を更に含むようにしてもよい。
このようにすれば、相対移動距離と時間との2次回帰により求められる2次項の係数は、相対移動距離の変化に対する時間の変化が、曲線状に推移するか否かを判定するもので、仮に相対移動距離と時間との直線性(例えば、上記の相関係数)に基づいて非圧縮性流体中の異物が被検査体内部の曲成欠陥として誤って判断されたとしても、更なる判定基準である2次回帰の2次項の係数に基づいて、相対移動距離と時間との曲線関係を判定することで、曲成欠陥の検出精度を向上することができる。詳述すると、例えば、相対移動距離を横軸、時間を縦軸に取って、上記の欠陥候補データをプロットすれば、当該データが被検査体内部の曲成欠陥である場合にはそのプロットの描く軌跡は、曲成欠陥の形状を反映して湾曲線等の曲線を示す。この場合、欠陥候補データをプロットする際に、曲成欠陥の全周面に亘ってプロットしたのでは、その処理が面倒且つ煩雑になるばかりでなく、その結果として描かれる軌跡も不明確なものになるおそれがある。そこで、曲成欠陥の全周面のうち、超音波が送信される側のみの部分周面(例えば半周面)における曲面形状を上記の軌跡として反映させるようにすれば、データ処理の簡素化や軌跡の明確化を図る上で有利となる。そして、このような処理態様とした上で、これらの欠陥候補のデータにおける相対移動距離と時間との2次回帰を求めると、曲成欠陥の上記の部分周面に相当する当該データにおけるその2次回帰の2次項の係数は、正の係数となる。したがって、2次回帰の2次項の係数が正となった場合には、曲成欠陥と判定し、逆にその2次項の係数が零又は負となった場合には、非圧縮性流体中の異物と判定することができ、結果的には、曲成欠陥の検出精度が高められることになる。
上記方法において、被検査体は、略矩形のフェース部と、該フェース部の周縁に略垂直に連なるスカート部とを備えた陰極線管構成要素である陰極線管用ガラスパネルであることが好ましい。
この場合には、パネルのフェース部に映し出される画像に多大な悪影響を与える恐れのある曲成欠陥を高精度で検出することができ、パネルに対する無駄な検査や検査漏れを可及的に低減して、検査の質を高めることが可能となる。
上記課題を解決するために創案された本発明に係る装置は、超音波を送信及び受信する探触子と、被検査体とを、非圧縮性流体を介在させて相対移動させ、その相対移動時に前記探触子から被検査体に送信された超音波の反射波によるデータに基づいて、前記被検査体の内部欠陥を検出する超音波探傷検査装置において、前記反射波によるデータの中から、前記被検査体が存在すべき領域内での欠陥として予備的に認識される欠陥候補のデータを抽出すると共に、前記被検査体と探触子との相対移動距離の変化に対応する超音波の送信から前記欠陥候補からの反射波を受信するまでの時間の変化を割り出し、それらの変化の態様の直線性を求める信号処理手段を備えていることに特徴づけられる。
このような構成によれば、信号処理手段が、欠陥候補のデータから、相対移動距離の変化に対応する時間の変化を割り出し、それらの変化の態様の直線性を求めることになる。したがって、これに対応する構成については、既に述べた事項と同様の作用効果を享受することができる。
上記の装置において、信号処理手段は、前記直線性を示すパラメータとして前記相対移動距離と前記時間との相関係数を算出するようにしてもよい。また、信号処理手段は、前記相対移動距離と前記時間との2次回帰を求め、この2次回帰の2次項の係数を算出するようにしてもよい。そして、これらに対応する構成については、既に述べた事項と同様の作用効果を享受することができる。また、既に述べた事項と同様の観点から、前記被検査体は、略矩形のフェース部と、該フェース部の周縁に略垂直に連なるスカート部とを備えた陰極線管構成要素である陰極線管用ガラスパネルであることが好ましい。
以上のように本発明によれば、欠陥として予備的に認識される欠陥候補のデータから、被検査体と探触子との相対移動距離の変化に対応する超音波の送信から受信までの時間の変化の態様の直線性を求めることで、被検査体内部の曲成欠陥の形状を把握した上で、その曲成欠陥を非圧縮性流体中の異物と的確に区別して判定できるようになり、この両者を誤認検出する確率が極めて小さくなると共に、曲成欠陥を容易かつ高確率で検出することができる。
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、投写型陰極線管用ガラスパネル(以下、単にパネルという)1は、画像を表示する有効画面を備えたフェース部2と、該フェース部2の周縁にブレンドR部3を介して該フェース部2を囲繞するように略直角に連なるスカート部4とを備えている。そして、スカート部4は、4つの対角部4aで連なる各辺部4bを有し、この各辺部4bの先端における開口端には、ファンネルとの封合に供される封着端面5が形成されている。
図2に示すように、上記パネル1の探傷検査を行う本実施形態に係る超音波探傷検査装置6は、水槽7の中に非圧縮性流体としての純水を貯留すると共に、走査部8によって図中の矢印A方向に駆動される搬送コンベア9と、この搬送コンベア9に載置されるパネル1と、超音波の送受信をする探触子10とを、純水の中に浸漬させた状態で、探触子10により超音波を送受信して、該探触子10に接続されている演算装置11によってパネル1の曲成欠陥の有無を判定するように構成されている。なお、走査部8は、図示しないが、パネル1の位置を検出する位置センサを有している。また、探触子10は、図示しないが、搬送方向と直交する方向に配列された複数の振動子を一の検出ユニットとして、この検出ユニットが搬送方向の複数箇所に配列されることにより構成されている。そして、各検出ユニットは、各振動子が千鳥状になるように配列され、且つ、各振動子は搬送方向に抜け部分がないように、換言すれば、搬送されるパネル1のフェース部2が全域に亘って洩れなく各振動子による検査を受け得るように配列されていることが好ましい。
被検査体であるパネル1は、例えばフェース部2の外表面が上を向くように搬送コンベア9上に載置され、矢印A方向に搬送される。一方、探触子10は、フェース部2の外表面から例えば10mm上方に離隔して配置される。そして、この探触子10に接続されている演算装置11は、例えば、制御部12と、送信部13と、受信部14と、位置検出部15と、信号処理部16とから構成される。制御部12には、送信部13と、信号処理部16が接続されており、この信号処理部16には、受信部14及び位置検出部15が接続されている。超音波の送受信を行う探触子10には、送信部13と受信部14が接続されており、走査部8には位置検出部15が接続されている。なお、演算装置11の各構成要素には必要に応じて、所定の情報を表示するようにモニタが接続されていてもよい。
以下、この演算装置11を含む本実施形態に係る超音波探傷検査装置の動作について説明する。
先ず、制御部12から送信部13に制御信号が入力されると、この制御信号に基づいて送信部13から探触子10に送信信号が入力される。この送信信号に基づいて探触子10から搬送コンベア9上に載置されたパネル1のフェース部2に向けて超音波が送信される。この際、超音波は例えばパルス波やトーンバースト波として送信される。そして、送信された超音波の反射波は、探触子10で受信されると共に受信信号に変換される。この受信信号は受信部14に入力されると共に、超音波が送信されてから受信されるまでの時間(以下、送受信時間という)が検出される。一方、走査部8で検出されたパネル1の位置データは、位置検出部15に入力され、パネル1の搬送方向(図中の矢印A方向)に沿った移動距離が求められる。
そして、信号処理部16には、超音波の送受信時間のデータと、これに対応する移動距離のデータとが入力されて、図示しないメモリに記憶される。そして、再度超音波が送信されて受信されるまでに、搬送コンベア9によってパネル1は僅かに移動し、パネル1のフェース部2全面について、送受信時間と移動距離とのデータがほぼ連続して信号処理部16に記憶される。また、信号処理部16には、パネル1の内壁面で反射した超音波の送受信時間と、これに対応する移動距離とのデータが予め登録されており、この登録されたデータと、測定されたデータとを比較して、測定されたデータの中からパネル1のフェース部2内部で反射した反射波に対応する送受信時間をもつ欠陥候補のデータを検出する。そして、この欠陥候補のデータについて、超音波の送受信時間とパネル1の移動距離との相関係数並びに2次回帰が求められる。
そして、この結果は制御部へ入力され、相関係数及び2次回帰の2次項の係数が判定される。詳述すると、相関係数の絶対値が0.8以下であって且つ2次項の係数が正である場合にはパネル1のフェース部2に曲成欠陥があると判定される。一方、相関係数の絶対値が0.8を超える場合、或いは2次回帰の2次項の係数が零又は負である場合には水中の気泡や塵埃などの異物と判定される。なお、曲成欠陥があると判断した場合には制御部12から走査部8に制御信号が入力され、そのパネルを自動破棄するようにしてもよい。
したがって、上記のような本実施形態によれば、欠陥として予備的に認識される欠陥候補のデータから、パネル1の移動距離と、これに対応する超音波の送受信時間との、相関係数及び2次回帰の2次項の係数を求めることで、水中に存在する気泡や塵埃などの異物をパネル1の曲成欠陥と誤って判断する確率が非常に小さくなると共に、パネル1内部の曲成欠陥を容易かつ高確率で検出することができる。そのため、パネル1により映し出される画像に悪影響を与える可能性のある曲成欠陥を優先的に検出することができると共に、画像に特に影響がないパネル1を誤って不良品と判断して廃棄処分するという誤作業が低減され、パネル1の歩留りを格段に向上することができる。
なお、本実施形態ではパネル1を搬送コンベア9で移送してパネル1のフェース部2の探傷検査を行ったが、例えば探触子10側に走査部8を接続して、所定の走査手段により探触子10を走査するものであってもよい。更には、探触子10及びパネル1に走査部8を接続して、所定の走査手段で双方を相対移動させるようにしてもよい。このようにすれば、探触子10とパネル1の移動距離が少なくて済み、検査に要する作業スペースの省スペース化を図ることができる。
また、パネル1と探触子10を水に浸漬させた状態で超音波の送受信を行うものに限らず、例えばパネル1のフェース部2に対して、所定の直径を有する水柱を探触子の上方から流下させるものであってもよく、更にはこの水柱はフェース部の内外表面よりも流路面積が小さいことが好ましい。この場合、水柱はパネル1のフェース部2に対応する領域に複数箇所設けられていることがより好ましい。また、非圧縮性流体はアルコール等の水以外の非圧縮性流体であっても問題なく適用することができる。
更に、本発明は、パネル1に限らず、ガラス物品全般、或いは材質の異なる金属や樹脂等を被検査体とした場合であっても、問題無く適用することができ、この中でも曲成欠陥を注視して検出する必要のある材料については、本発明を適用する効果は大きい。
本発明の実施例1〜5として、パネル1のフェース部2内部の曲成欠陥(実施例1および2)、水中の塵埃(実施例3および4)、及び水中の気泡(実施例5)による反射波のデータをそれぞれ計測し、上記の本発明に係る判定基準により曲成欠陥を正しく識別できるか否かを確認した。先ず、実施例1〜5についての各々の反射波のデータを、パネル1の移動距離を横軸に、この移動距離に対応する超音波の送受信時間を縦軸にして、プロットしたものを模式的に表わすと図3〜7に示すようなグラフを得る。ここで、符号20はパネルの内壁面、符号21は欠陥候補を示す。次に、これら反射波のデータから図8〜12に示すような欠陥候補のデータを検出すると共に、この欠陥候補データについて、相関係数並びに2次回帰の2次項の係数を求めた。なお、送受信時間は超音波を送信してから受信するまでの制御部12から得られるクロック数、また、移動距離は走査部8から得られるカウント数で示す。その結果を下記の表1に示す。
上記の表1によれば、実施例1および2(パネル1のフェース部2内部の曲成欠陥)については、相関係数が0.8以下で且つ2次回帰の2次項の係数が正であることから、パネル1のフェース部内部の曲成欠陥であると正しく判定することができた。また、実施例3および4(水中の塵埃)と実施例5(水中の気泡)については、相関係数が0.8を超えているため水中の気泡や塵埃などの異物と判定することができ、2次回帰の2次項の係数についても、負を示しているので、水中の異物であると正しく判定することができた。
1 パネル
2 フェース部
6 超音波探傷検査装置
10 探触子
11 演算装置
12 制御部
13 送信部
14 受信部
15 位置検出部
16 信号処理部
2 フェース部
6 超音波探傷検査装置
10 探触子
11 演算装置
12 制御部
13 送信部
14 受信部
15 位置検出部
16 信号処理部
Claims (8)
- 超音波を送信及び受信する探触子と、被検査体とを、非圧縮性流体を介在させて相対移動させ、その相対移動時に前記探触子から被検査体に送信された超音波の反射波によるデータに基づいて、前記被検査体の内部欠陥を検出する超音波探傷検査方法において、
前記反射波によるデータの中から、前記被検査体が存在すべき領域内での欠陥として予備的に認識される欠陥候補のデータを抽出すると共に、前記被検査体と探触子との相対移動距離の変化に対応する超音波の送信から前記欠陥候補からの反射波を受信するまでの時間の変化を割り出し、それらの変化の態様の直線性に基づいて前記欠陥候補が曲成欠陥であるか否かを判別する工程を含むことを特徴とする超音波探傷検査方法。 - 前記直線性を示すパラメータは、前記相対移動距離と前記時間との相関係数であることを特徴する請求項1に記載の超音波探傷検査方法。
- 前記相対移動距離と前記時間との2次回帰を求め、この2次回帰の2次項の係数に基づいて前記欠陥候補が曲成欠陥であるか否かを判別する工程を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波探傷検査方法。
- 前記被検査体は、略矩形のフェース部と、該フェース部の周縁に略垂直に連なるスカート部とを備えた陰極線管構成要素である陰極線管用ガラスパネルであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の超音波探傷検査方法。
- 超音波を送信及び受信する探触子と、被検査体とを、非圧縮性流体を介在させて相対移動させ、その相対移動時に前記探触子から被検査体に送信された超音波の反射波によるデータに基づいて、前記被検査体の内部欠陥を検出する超音波探傷検査装置において、
前記反射波によるデータの中から、前記被検査体が存在すべき領域内での欠陥として予備的に認識される欠陥候補のデータを抽出すると共に、前記被検査体と探触子との相対移動距離の変化に対応する超音波の送信から前記欠陥候補からの反射波を受信するまでの時間の変化を割り出し、それらの変化の態様の直線性を求める信号処理手段を備えていることを特徴とする超音波探傷検査装置。 - 前記信号処理手段は、前記直線性を示すパラメータとして前記相対移動距離と前記時間との相関係数を算出するものであることを特徴とする請求項5に記載の超音波探傷検査装置。
- 前記信号処理手段は、前記相対移動距離と前記時間との2次回帰を求め、この2次回帰の2次項の係数を算出するものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の超音波探傷検査装置。
- 前記被検査体は、略矩形のフェース部と、該フェース部の周縁に略垂直に連なるスカート部とを備えた陰極線管構成要素である陰極線管用ガラスパネルであることを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の超音波探傷検査装置。
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JP2004368027A JP2006177667A (ja) | 2004-12-20 | 2004-12-20 | 超音波探傷方法及び超音波探傷装置 |
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2004
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