JP2006170775A - 屈折率測定方法およびその測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 一眼カメラやコンパクトカメラ、デジタルカメラ等に使用されるプラスチック光学レンズ、またレーザービームプリンターやデジタル複写機等の画像形成装置に使用される光走査装置のプラスチック走査レンズ(トーリック光学レンズ)などを対象とし、これらレンズ光学素子の光学性能の一つである屈折率の測定評価方法に関する。
【解決手段】 コリメータレンズとVブロックプリズム間に円形ないし矩形の小孔を有するスリット板を挿入して単色光の平行光束径を小さくして、Vブロックプリズム上に取付けた試験片に照射し、Vブロックプリズムと試験片の屈折率差に応じた屈折光の偏角をテレメータによって検出することにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の細部の屈折率分布を算出することを特徴とした屈折率測定方法およびその装置。
【選択図】 図1
【解決手段】 コリメータレンズとVブロックプリズム間に円形ないし矩形の小孔を有するスリット板を挿入して単色光の平行光束径を小さくして、Vブロックプリズム上に取付けた試験片に照射し、Vブロックプリズムと試験片の屈折率差に応じた屈折光の偏角をテレメータによって検出することにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の細部の屈折率分布を算出することを特徴とした屈折率測定方法およびその装置。
【選択図】 図1
Description
本発明は、例えば一眼カメラやコンパクトカメラ、デジタルカメラ等に使用されるプラスチック光学レンズ、またレーザービームプリンターやデジタル複写機等の画像形成装置に使用される光走査装置のプラスチック走査レンズ(fθ光学レンズ)などを対象とし、これらレンズ光学素子の光学性能の一つである屈折率の測定評価方法に関する。
近年、レーザプリンタ、カメラなどの光学機器に使用される光学レンズとして、プラスチックス材料による成形レンズが普及している。このプラスチックス成形レンズは、ガラス研磨レンズに比して非球面レンズの製作性に優れ、安価であるが、製造上の屈折率の分布が不安定で、レンズ内部に不均一性を生じることが多い。
レンズ内部の屈折率の不均一性は、光学特性に大きい影響を及ぼし、画質、解像度を劣化する原因になる。よって、光学レンズ内部の屈折率の分布を高精度に測定し、光学レンズの均質性を評価し対策を講じる必要がある。
例えばレーザービームプリンターやデジタル複写機等の画像形成装置に用いられる光走査装置においては、レンズの高性能化や低コスト化を目的として、走査レンズ(fθ光学系)に長尺の非球面トーリックレンズが用いられている。このような走査レンズは、ポリゴンミラー等の光偏向器で偏向された光束を、被走査面上に結像させるために、主走査方向に長いレンズ形状を有している。
通常、上記のような長尺の走査レンズは射出成形によって形成される。この形成されたプラスチックレンズは、レンズ形状や成形条件に依存して、副走査方向に屈折率分布や複屈折分布が生じる。屈折率分布は、成形直後のレンズが、レンズ外形の周囲からレンズ中心の肉厚の部分に向かって冷却が進む過程で発生する。冷却の始まる外周部では温度勾配が大きく、急速に冷却が進行するので、屈折率分布が生じる。
一方、レンズ中心の肉厚の部分は、比較的一様な温度勾配で冷却が進行するため、屈折率分布が生じにくい。
また、複屈折分布は、レンズ内部に応力が残留することによって生じる。このような複屈折分布の発生は、屈折率分布と同様に、樹脂の流動過程と冷却によってレンズが収縮する過程で発生する残留応力と、成形後に型から取り出すときの樹脂内部応力の開放が要因である。
一方、安定性という観点からみると、ガラスレンズに比べて屈折率の分布が不安定で、一枚のレンズの内部で物性の変動が大きい欠点がある。しかも、屈折率分布の存在は補正することができないので、屈折率分布が大きいと、そのレンズによる結像性能の低下に直接的に影響する。
最近では、例えば複写機やレーザービームプリンターにおいて高精細な画像形成技術が求められ、このためには従来に増して光学レンズ内の屈折率や複屈折の分布を高精度に計測評価するとともに、これらに変動が生じないように成形制御する必要性がある。
(従来の光学性能(屈折率)評価)
光学レンズの屈折率を測定する方法として、現状、広く用いられている光学レンズの屈
折率の測定方法として、二光束干渉計(トワイマン・グリーン干渉計、フィゾ干渉計、マッハ・ツェンダ干渉計など)を使用して干渉縞より屈折率を測定する方法が知られている(例えば、非特許文献1)。この測定原理を応用した屈折率測定&評価方法に関する先行特許として、例えば以下に示すようなものがある。
光学レンズの屈折率を測定する方法として、現状、広く用いられている光学レンズの屈
折率の測定方法として、二光束干渉計(トワイマン・グリーン干渉計、フィゾ干渉計、マッハ・ツェンダ干渉計など)を使用して干渉縞より屈折率を測定する方法が知られている(例えば、非特許文献1)。この測定原理を応用した屈折率測定&評価方法に関する先行特許として、例えば以下に示すようなものがある。
1)特許文献1
本発明におけるレンズの屈折率分布測定方法は、被検レンズを、屈折率がその被検レンズとわずかに異なる試液中に浸し、これにコヒーレント光を透過させて、その透過光を参照光と重ね合わせて干渉縞を発生させるようにした干渉計に、上記透過光と参照光の少なくとも一方を平行光から非平行光に微調整可能な拡がり角微調手段を併設し、その拡がり角微調手段を調整することによって、上記被検レンズの屈折率と上記試液の屈折率との差により生ずる縞成分を消去し、その時に観測される干渉縞の状態から被検レンズの屈折率分布を測定するようにしたことを特徴としている(基本はマッハ・ツェンダ干渉計)。
本発明におけるレンズの屈折率分布測定方法は、被検レンズを、屈折率がその被検レンズとわずかに異なる試液中に浸し、これにコヒーレント光を透過させて、その透過光を参照光と重ね合わせて干渉縞を発生させるようにした干渉計に、上記透過光と参照光の少なくとも一方を平行光から非平行光に微調整可能な拡がり角微調手段を併設し、その拡がり角微調手段を調整することによって、上記被検レンズの屈折率と上記試液の屈折率との差により生ずる縞成分を消去し、その時に観測される干渉縞の状態から被検レンズの屈折率分布を測定するようにしたことを特徴としている(基本はマッハ・ツェンダ干渉計)。
2)特許文献2
本発明は、同一光源からの可干渉光を基準となる参照波と測定対象の光学素子よりなる被検物を透過する被検波とに分割し、参照波と被検波との重畳による干渉縞像を形成し、形成された干渉縞像から光学素子の屈折率分布を測定する光学素子の屈折率分布の測定方法(マッハ・ツェンダ干渉計)において、参照波と被検波との重畳光束を二つに分割し、その一方の重畳光束と他方の光束との間にnπ/2の位相差を設けてその各光束による干渉縞像を各々形成し、被検物を被検波の光軸に対して直交する軸線周りに回転させてその二つの干渉縞像の明暗変化をカウントして干渉縞の位相変位量を算出し、これより各回転角における透過波面を計測することを特徴としている。
本発明は、同一光源からの可干渉光を基準となる参照波と測定対象の光学素子よりなる被検物を透過する被検波とに分割し、参照波と被検波との重畳による干渉縞像を形成し、形成された干渉縞像から光学素子の屈折率分布を測定する光学素子の屈折率分布の測定方法(マッハ・ツェンダ干渉計)において、参照波と被検波との重畳光束を二つに分割し、その一方の重畳光束と他方の光束との間にnπ/2の位相差を設けてその各光束による干渉縞像を各々形成し、被検物を被検波の光軸に対して直交する軸線周りに回転させてその二つの干渉縞像の明暗変化をカウントして干渉縞の位相変位量を算出し、これより各回転角における透過波面を計測することを特徴としている。
3)特許文献3
本発明の屈折率分布測定方法は、光源から発せられた干渉光を二つの光束に分割し、分割された一方の光束の光路中に基準光学系を配置し、他方の光束の光路中に被測定試料を配置し、前記基準光学系を透過した光束と前記被測定試料を透過した光束を合成し、その合成によって生じた干渉縞から算出される前記各透過光束の光波の位相差分布を基にして、前記被測定試料の屈折率分布を測定するようにする(基本はマッハ・ツェンダ干渉計)。また、本発明の屈折率分布測定装置は、光源から発せられた干渉光を二つの光束に分割する光分割手段と、分割された一方の光束の光路中に配置されている基準光学系を透過した光束と分割された他方の光束の光路中に配置された被測定試料を透過した光束とを合成する光合成手段とを備えており、前記合成によって生じた干渉縞から算出される前記各透過光束の光波の位相差分布を基にして、前記被測定試料の屈折率分布を測定するようにすることを特徴としている。
特許第02678465号公報
特許第03423486号公報
特開平11−311600号公報
大門昌彦、「光学素材の屈折率および光学的均質性の測定」光学第20巻第2号(1991年2月)、P63〜68
本発明の屈折率分布測定方法は、光源から発せられた干渉光を二つの光束に分割し、分割された一方の光束の光路中に基準光学系を配置し、他方の光束の光路中に被測定試料を配置し、前記基準光学系を透過した光束と前記被測定試料を透過した光束を合成し、その合成によって生じた干渉縞から算出される前記各透過光束の光波の位相差分布を基にして、前記被測定試料の屈折率分布を測定するようにする(基本はマッハ・ツェンダ干渉計)。また、本発明の屈折率分布測定装置は、光源から発せられた干渉光を二つの光束に分割する光分割手段と、分割された一方の光束の光路中に配置されている基準光学系を透過した光束と分割された他方の光束の光路中に配置された被測定試料を透過した光束とを合成する光合成手段とを備えており、前記合成によって生じた干渉縞から算出される前記各透過光束の光波の位相差分布を基にして、前記被測定試料の屈折率分布を測定するようにすることを特徴としている。
上述の二光束干渉計を基本とする方法は、干渉縞像の解析により相対的な屈折率分布の測定は可能であるが、屈折率の絶対値については正確には求められない。すなわち、プラスチック射出成形によるレンズ成形品内部の屈折率分布は一様ではなく、非常に不規則な形の干渉縞が発生するので、N本の縞をどのように評価すればよいかが問題となり、屈折率分布を定量的に測定することは、極めて困難である。
一方で、精密偏角屈折計などを使用してVブロック法により屈折角を計測して屈折率を求める方法および測定装置(例えば、カルニュー光学工業(株)製 精密屈折計KPR)が知られている。この方法は屈折角を直接計測して屈折率を求めるため、干渉縞解析による測定方法よりも屈折率の測定精度が高く、屈折率に対する光強度分布を得ることができ、光学素子の内部状態を正確に評価することが可能である。試料を所定形状に高精度に加工する必要があるが、光路進行方向に積算された屈折率分布が定量的に得られる利点がある。
しかし、これまで行われてきた測定方法は試験片の代表的な屈折率を1つだけ測定する用途で利用されることが多かったため、光束径が直径14mm程度と広くこの範囲内での平均的な屈折率は測定できるが、同一試験片内の細部の場所による屈折率分布を正確に測定するような用途には利用されていなかった。例えば、トーリックレンズ試験片の板厚方向や幅方向に存在する各部の屈折率をその方向に対する屈折率分布として正確に測定するような用途には使用することができなかった。
本発明の目的は、例えば一眼カメラやコンパクトカメラ、デジタルカメラ等に使用されるプラスチック光学レンズ、またレーザービームプリンターやデジタル複写機等の画像形成装置に使用される光走査装置のプラスチック走査レンズ(fθ光学レンズ)などを対象とし、光学性能の一つである屈折率分布を直接的にしかも定量的に求めることが可能な光学素子の屈折率測定方法及びその装置を構築し、これにより光学性能を評価することで精度の高い光学素子成形品を製造することである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の光学レンズの屈折率測定方法は、90℃の角度を有するVブロックプリズム上に取付けた試験片に対し、スペクトル光源ランプから出た光を干渉フィルターで単色光にし、コリメータレンズを介して平行光束にして照射し、Vブロックプリズムと試験片の屈折率差に応じた屈折光の偏角をテレメータによって検出する手段により、試験片の屈折率を算出する測定方法において、
コリメータレンズとVブロックプリズム間に円形ないし矩形の小孔を有するスリット板を挿入して、単色光の平行光束径を小さくしてVブロックプリズム上に取付けた試験片に照射し、Vブロックプリズムと試験片の屈折率差に応じた屈折光の偏角をテレメータによって検出することにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の細部の屈折率分布を正確に算出することを特徴としている。
コリメータレンズとVブロックプリズム間に円形ないし矩形の小孔を有するスリット板を挿入して、単色光の平行光束径を小さくしてVブロックプリズム上に取付けた試験片に照射し、Vブロックプリズムと試験片の屈折率差に応じた屈折光の偏角をテレメータによって検出することにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の細部の屈折率分布を正確に算出することを特徴としている。
また、請求項2に記載の光学レンズの屈折率測定装置は、90℃の角度を有するVブロックプリズム上に取付けた試験片に対し、スペクトル光源ランプから出た光を干渉フィルターで単色光にし、コリメータレンズを介して平行光束にして照射し、Vブロックプリズムと試験片の屈折率差に応じた屈折光の偏角をテレメータによって検出する手段により、試験片の屈折率を算出する屈折率測定装置において、コリメータレンズとVブロックプリズム間に円形ないし矩形の小孔を有するスリット板を挿入して単色光の平行光束径を小さくして、Vブロックプリズム上に取付けた試験片に照射してVブロックプリズムと試験片の屈折率差に応じた屈折光の偏角をテレメータによって検出することにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の細部の屈折率分布を正確に算出することが可能な屈折率測定装置であることを特徴としている。
また、請求項3に記載の屈折率測定方法は、上記請求項1において、コリメータレンズとVブロックプリズム間に設置した円形ないし矩形の小孔を有するスリット板を、90℃の角度を有するVブロックプリズム上に取付けた試験片に対して、駆動装置により上下左右に移動させることにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の屈折率分布を正確に測定することを特徴とする屈折率の算出方法である。
また、請求項4に記載の屈折率測定装置は、上記請求項2において、コリメータレンズとVブロックプリズム間に設置した円形ないし矩形の小孔を有するスリット板を、90℃の角度を有するVブロックプリズム上に取付けた試験片に対して、駆動装置により上下左右に移動させることにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の細部の屈折率分布を正確に算出することを特徴とした屈折率測定装置である。
また、請求項5に記載の屈折率測定方法は、上記請求項1において、試験片を設置したVブロックプリズムを、コリメータレンズとVブロックプリズム間に設置した円形ないし矩形の小孔を有するスリット板に対して、駆動装置により上下左右に移動させることにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の屈折率分布を正確に測定することを特徴とする屈折率の算出方法である。
また、請求項6に記載の屈折率測定装置は、上記請求項2において、試験片を設置したVブロックプリズムを、コリメータレンズとVブロックプリズム間に設置した円形ないし矩形の小孔を有するスリット板に対して、駆動装置により上下左右に移動させることにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の細部の屈折率分布を正確に算出することを特徴とした屈折率測定装置である。
本提案で述べた屈折率測定方法およびその装置により、一眼カメラやコンパクトカメラ、デジタルカメラ等に使用されるプラスチック光学レンズ、またレーザービームプリンターやデジタル複写機等の画像形成装置に使用される光走査装置のプラスチック走査レンズ(fθ光学レンズ)などの光学性能の一つである屈折率分布を、直接的にしかも定量的に求めることが可能である。本屈折率測定方法およびその装置により光学性能を評価することで精度の高い光学素子成形品を製造することが可能である。
光学レンズの屈折率測定装置および屈折率測定方法の実施の形態について詳細に説明する。
図12はVブロック法における光学レンズの屈折率測定の基本構成を示す図である。90℃の角度を有するVブロックプリズム1上に取付けた試験片2に対し、スペクトル光源ランプ3から出た光を干渉フィルター4で単色光にし、スリット5を通過した後にコリメータレンズ6で平行光束にして照射し、Vブロックプリズム1と試験片2の屈折率差によって生じた屈折光の偏角をテレメータレンズ7とスリット8を有するテレメータ9によって検出することにより試験片の屈折率を算出する。具体的な屈折率の算出方法は、測定した偏角をδ、Vブロックプリズムの屈折率をNとすると、試験片の屈折率nは次式から求められる。
本測定方法においては図13に示すように、ガラス製のVブロックプリズム上に一つの角度が90℃±1’程度に研削・研磨仕上げした試験片をこれと同程度の屈折率に調整した接触液を介してセットする(図13(a)、(b)参照)。ここで、前述の図12に示すスペクトル光源ランプ3から出た光を干渉フィルター4で単色光にし、スリット5を通
過した後にコリメータレンズ6で平行光束にして照射した場合の平行光束径は、通常広範囲な試験片形状に対応するためにφ14mm程度(図13(c)参照)となっており、この照射領域での平均的な屈折率が得られることになる。
過した後にコリメータレンズ6で平行光束にして照射した場合の平行光束径は、通常広範囲な試験片形状に対応するためにφ14mm程度(図13(c)参照)となっており、この照射領域での平均的な屈折率が得られることになる。
この方法で測定された屈折率を図14に示す。図の横軸は屈折率、縦軸は計測された光の強度を示す。屈折率は中央に光強度のピークを持ち、その左右に向かって光強度が除々に低下する。試験片の内部が均質であればあるほど特定の屈折率の領域にシャープな光強度分布が得られ、この光強度分布のピーク値での屈折率をもって最終的に試験片の屈折率とする。例えば、ガラスなどは内部が均質であるので上述の光強度分布はシャープなピークを持ち、樹脂などの射出成形品の場合は内部が均質ではないので光強度分布は屈折率に対してなだらかな分布をもつ結果が得られる。
図1は、上記の図12に示したVブロック法における光学レンズの屈折率測定の基本構成図に、本発明である特定領域の屈折率を測定するためのスリット板を設置したときの構成を示す図である。本提案では90℃の角度を有するVブロックプリズム1上に取付けた試験片2に対し、スペクトル光源ランプ3から出た光を干渉フィルター4で単色光にし、スリット5を通過した後にコリメータレンズ6で平行光束にして照射するところまでは基本構成と同様であるが、コリメータレンズ6とVブロックプリズム1の間に矩形のスリット板10を挿入して、単色光の平行光束径を小さくしてVブロックプリズム上に取付けた試験片2に照射し、Vブロックプリズム1と試験片2の屈折率差によって生じた屈折光の偏角をテレメータレンズ7及びスリット8を有するテレメータ9によって検出することにより試験片の屈折率を算出する。
図2は、試験片2を設置したVブロックプリズム1を測定の光軸方向からみた図であり、上記図1に示したコリメータレンズ6とVブロックプリズム1の間に矩形のスリット板10の作用を詳述した図である。スリット板10には幅1mm、スリット長さ14mmの矩形孔12が開いており、直径14mmの平行光束はこの矩形孔12により試験片2に照射される部分が特定されることになる。
図2(a)は、スリット板11の矩形孔12が試験片2の中央に位置(Aとする)している場合、図2(b)は、矩形孔12が試験片2の中央から紙面に向かって左方向に少し移動した状態(Bとする)、図2(c)は、矩形孔12が試験片2の中央から紙面に向かって左方向にさらに移動した状態(Cとする)を示している。
図3は、図2のスリット位置A,B,Cにおける試験片の屈折率の測定例を示した図である。試験片内に屈折率分布がある場合には図3に示すようにスリット位置A,B,Cそれぞれの測定場所において屈折率分布のピーク値が異なる測定結果が得られ、コリメータレンズ6とVブロックプリズム1の間に矩形のスリット板10を挿入して、単色光の平行光束径を小さくしてVブロックプリズム上に取付けた試験片に照射することで、試験片内の屈折率分布が測定可能であることがわかる。
次に、これまで述べた矩形のスリット板11に設置したスリット長さ(SL)14mmの矩形孔12をさらに短くして小さな領域の屈折率が測定可能かどうかを調べるために、図4に示すように矩形孔12のスリット長さSLを14mmから徐々に短くしていき、測定可能な最小スリット長さを求めた。なお、測定は試験片の中央とし、スリット幅は本提案での測定対象であるレンズに対しては十分な分解能であるので1mm固定とした。
図5は、この検討結果を示した表であり、スリット長さSLを14mmから徐々に短くしていったときの屈折率の測定結果を示す。スリット長さSLが3mmまでは測定された屈折率に変化はなく、スリット長さSLが2mmでは結果が異なる。これは、矩形孔12
が小さくなるにつれて測定に必要な光強度が低下して屈折率を特定するピーク値が出なくなることに起因する。従って、屈折率測定が可能な試験片の最小領域は、矩形スリット孔形状でスリット幅1mm、スリット長さ3mmであることがわかった。
が小さくなるにつれて測定に必要な光強度が低下して屈折率を特定するピーク値が出なくなることに起因する。従って、屈折率測定が可能な試験片の最小領域は、矩形スリット孔形状でスリット幅1mm、スリット長さ3mmであることがわかった。
なお、スリット板11に設置するスリット孔12は、矩形孔だけではなく円形孔であっても測定可能であり、この場合は、直径2mmが屈折率測定可能な試験片の最小領域となる。このように最小スリット孔を有するスリット板を利用することにより、試験片内の細部の屈折率分布を詳細に測定することが可能となる。
また、上記の屈折率分布測定は、上述した円形ないし矩形の最小小孔12を有するスリット板11を、図4(a)に示す駆動装置13により試験片に対して上下左右に移動させるか、前記円形ないし矩形の最小小孔12を有するスリット板11を固定しておいてVブロックプリズム1を図4(a)に示す駆動装置14により上下左右に移動させることで可能となる。
外形長さ78mm、高さ(幅)12.2mmの矩形形状に、R1面とR2面の2つの光学面形状を有する図6に示すトーリックレンズ形状15(図6(a)は側面図、(b)は正面図)を例として、成形後のレンズ成形品内部の屈折率を測定する方法およびその結果について説明する。
なお、このレンズ成形品の成形条件は以下に示す通りである
・使用樹脂 ポリオレフィン系樹脂
・樹脂温度 270℃
・充填時間 2.0sec
・金型温度 135℃(一定)
・保圧圧力 金型内実測値80、90、100MPa
・保圧時間 30sec
・冷却時間 120sec
図に示すように、レンズ形状の中央部から屈折率測定のための試験片2を切り出し、レンズ形状の中央断面とR1面が直角(90℃±1’程度)となるように研削・研磨仕上げした。
・使用樹脂 ポリオレフィン系樹脂
・樹脂温度 270℃
・充填時間 2.0sec
・金型温度 135℃(一定)
・保圧圧力 金型内実測値80、90、100MPa
・保圧時間 30sec
・冷却時間 120sec
図に示すように、レンズ形状の中央部から屈折率測定のための試験片2を切り出し、レンズ形状の中央断面とR1面が直角(90℃±1’程度)となるように研削・研磨仕上げした。
この際、R1面の表層部は金型表面に接して急冷されるので内部応力などが存在し、物性が不均質であるので表層の1mmの部分は研削削除した。また、試験片の研削・研磨面が加工時の加工歪や熱歪の影響を受けるのをさけるために十分に時間をかけ注意して試験片製作を行った。
図7は、レンズ形状15から切出した試験片をVブロックプリズム1に設置するとき、屈折率分布を測定する試験片内の光路(図中の矢印)を示した図である。図に示すように照射された光は、試験片の光学面であるR1面側から入射して、レンズ形状の中央から切出した試験片中央断面から出ていくことになり、この間の試験片内部の平均的な屈折率分布が得られることになる。
次に、図8は、試験片2をVブロックプリズム1に設置したとき、光学面であるR1、R2各面の位置関係と測定光路を示した図である。
前述したスリット幅1mm、スリット長さ3mmの矩形孔12を有するスリット板11(図8(b))を使用し、このスリット板を動かすことにより矩形孔領域内でレンズ試験片の高さ方向の屈折率分布を測定する。
図9は、このレンズ試験片の高さ(幅)方向の屈折率分布を測定する位置を詳しく示した図である。レンズ高さ(幅)12.2mmの中心と、ここから高さ(幅)方向に±1.5、3.0、4.5、5.0mmの位置(図9(b))での屈折率を測定する。
冷却の始まる成形品の表層部では温度勾配が大きく急速に冷却が進行する。一方、レンズ中心の部分は、比較的一様な温度勾配で冷却が進行する。
よって、急冷される表層部の密度が高く除冷される内部の密度が低くなることから、屈折率分布は図9(c)に示すようにレンズ中央からレンズ側面に向けて徐々に屈折率が大きくなることが予想される。
図11は、図10に示す型温135℃で、保圧圧力を3種類(80、90、100MPa)変化させた成形条件において、図9(b)に示すレンズ試験片の測定位置で屈折率分布を実際に測定した結果を示す。いずれの保圧圧力条件においてもレンズ高さ(幅)12.2mmの中心からレンズ側面に向けて除々に屈折率が大きくなっていることがわかる。また、保圧値が高いほどレンズ試験片の各測定位置での屈折率の絶対値が大きい。さらに、レンズ高さ(幅)中心からレンズ側面にいたる間の屈折率の差は、2.0E−04程度存在していることもわかる。
以上に示したように、本測定手法及び測定装置によりレンズ成形品内部の詳細な屈折率分布を定量的に予測することが可能である。
1 Vブロックプリズム
2 試験片
3 スペクトル光源ランプ
4 干渉フィルター
5 スリット
6 コリメータレンズ
7 テレメータレンズ
8 スリット
9 テレメータ
10 矩形あるいは円形の小孔を有するスリット板
11 スリット板
12 矩形あるいは円形の小孔
13 スリット板駆動装置
14 Vブロックプリズム駆動装置
15 レンズ成形品
2 試験片
3 スペクトル光源ランプ
4 干渉フィルター
5 スリット
6 コリメータレンズ
7 テレメータレンズ
8 スリット
9 テレメータ
10 矩形あるいは円形の小孔を有するスリット板
11 スリット板
12 矩形あるいは円形の小孔
13 スリット板駆動装置
14 Vブロックプリズム駆動装置
15 レンズ成形品
Claims (6)
- 90℃の角度を有するVブロックプリズム上に取付けた試験片に対し、スペクトル光源ランプから出た光を干渉フィルターで単色光にし、コリメータレンズを介して平行光束にして照射し、Vブロックプリズムと試験片の屈折率差に応じた屈折光の偏角をテレメータによって検出する手段により、試験片の屈折率を算出する屈折率測定方法において、
コリメータレンズとVブロックプリズム間に円形ないし矩形の小孔を有するスリット板を挿入して単色光の平行光束径を小さくして、Vブロックプリズム上に取付けた試験片に照射し、Vブロックプリズムと試験片の屈折率差に応じた屈折光の偏角をテレメータによって検出することにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の細部の屈折率分布を算出することを特徴とした屈折率測定方法。 - 90℃の角度を有するVブロックプリズム上に取付けた試験片に対し、スペクトル光源ランプから出た光を干渉フィルターで単色光にし、コリメータレンズを介して平行光束にして照射し、Vブロックプリズムと試験片の屈折率差に応じた屈折光の偏角をテレメータによって検出する手段により、試験片の屈折率を算出する屈折率測定装置において、
コリメータレンズとVブロックプリズム間に円形ないし矩形の小孔を有するスリット板を挿入して単色光の平行光束径を小さくして、Vブロックプリズム上に取付けた試験片に照射してVブロックプリズムと試験片の屈折率差に応じた屈折光の偏角をテレメータによって検出することにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の細部の屈折率分布を算出することを特徴とした屈折率測定装置。 - 上記請求項1において、コリメータレンズとVブロックプリズム間に設置した円形ないし矩形の小孔を有するスリット板を、90℃の角度を有するVブロックプリズム上に取付けた試験片に対して、駆動装置により上下左右に移動させることにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の屈折率分布を測定することを特徴とした屈折率測定方法。
- 上記請求項2において、コリメータレンズとVブロックプリズム間に設置した円形ないし矩形の小孔を有するスリット板を、90℃の角度を有するVブロックプリズム上に取付けた試験片に対して、駆動装置により上下左右に移動させることにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の細部の屈折率分布を算出することを特徴とした屈折率測定装置。
- 上記請求項1において、試験片を設置したVブロックプリズムを、コリメータレンズとVブロックプリズム間に設置した円形ないし矩形の小孔を有するスリット板に対して、駆動装置により上下左右に移動させることにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の屈折率分布を測定することを特徴とした屈折率測定方法。
- 上記請求項2において、試験片を設置したVブロックプリズムを、コリメータレンズとVブロックプリズム間に設置した円形ないし矩形の小孔を有するスリット板に対して、駆動装置により上下左右に移動させることにより、Vブロックプリズム上に取付けた試験片の細部の屈折率分布を算出することを特徴とした屈折率測定装置。
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