JP2006170239A - 滑り軸受組み合わせ摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転機械に用いられる滑り軸受における組み合わせ摺動部材において、断続的かつ長時間の無潤滑摺動と、土砂等スラリーを含んだ液体中、気体中及び気液混合流体中での摺動を持続する組み合わせ摺動部材
が存在していなかった。
【解決手段】無潤滑滑り軸受用組み合わせ摺動部材として、回転軸スリーブ側摺動部材を、網目状炭素繊維材料を回転軸方向に積層成型させ、摺動面において炭素繊維端面が露出した低熱膨張係数の筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材とし、軸受固定側摺動部材に超硬合金、セラミックスのいずれか1つ以上を使用することにより、課題を解決するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、回転機械に用いられる滑り軸受摺動部材が、水中、土砂等スラリー中に加えて、断続的な無潤滑条件下における摺動を可能とする滑り軸受摺動部材組み合わせに関するものである。
本発明の滑り軸受組み合わせ摺動部材に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
特開昭60−146916
従来の滑り軸受組み合わせ摺動部材は、軸スリーブ側/軸受外輪側の組み合わせとして金属軸スリーブ/ゴム軸受、金属軸スリーブ/樹脂軸受、超硬合金軸スリーブ/セラミックス軸受、金属軸スリーブ/黒鉛軸受、金属軸スリーブ/金属軸受等の組み合わせが用いられていた。
特に回転機械としてポンプを例にとると、荷液にメタノール、ガソリン等低蒸気圧の揮発性液体を扱うポンプでは軸受設置部位における潤滑液体は気化状態になるため、滑り軸受は断続的な気中運転となり、また水用ポンプであっても起動運転及び意図的な先行待機空運転を行う場合には、滑り軸受を構成する摺動部材は気体中に置かれて無潤滑摺動状態が継続することになる。このため従来の滑り軸受では無潤滑条件下となる気体中で摺動を行うとなると、摺動部のうち特に回転軸スリーブ側摺動部材における激しい発熱と回転軸スリーブ側摺動部材の膨張による回転軸スリーブ側摺動部材の外周摺動面と、固定軸受側摺動部材の内周摺動面との抱き付きにより摺動部材が速やかに破損するか、或いは、無潤滑摺動下における待機空運転により高温状態となった摺動部材に対して、急激な潤滑液体の導入に伴う熱衝撃作用により高温化した摺動部材の激しい熱衝撃破壊を生起し、また、スラリー混入条件下においては土砂スラリーによる激しい土砂摩耗現象により滑り軸受としての機能を喪失し全く使用不可能という問題点があった。
一般に、無潤滑摺動条件及びスラリー条件下における耐摩耗性の確保と摺動発熱の抑制には、高硬度耐摩耗材料を用い、摺動表面における表面状態を非常に滑らかにすることが重要であるが、固定軸受側摺動部材、回転軸スリーブ側摺動部材に一体ムク構造の高硬度材料を用いると、高硬度材料の特性である脆性により、材料の一部の破壊が急激な全体破壊を招くという問題を解決するに到っていない。また、セラミックス材料の急激な脆性破壊を嫌い、その代わりに軸受部材に回転方向に炭素繊維を巻きつけた炭素繊維強化複合材を用いる例も検討されているが、無潤滑摺動を一度行うと軸受材料である炭素繊維材料の析出、剥離、脱落が発生し、摺動表面性状の安定化が実現出来ておらず回転機械の安定稼働には多くの課題を残す状況にあり、要求を充たすまでに到っていない。
解決しようとする問題点は、回転機械に用いる滑り軸受における組み合わせ摺動部材において、長時間の無潤滑摺動と土砂等スラリーを含んだ液中摺動の両立を可能ならしめる組み合わせ摺動部材がなく、短時間の無潤滑摺動を可能とする硬質材料同士の組み合わせ摺動部材においても、急激な抱き付き、並びに、急激な潤滑液の流入による急激な変動負荷により、滑り軸受を形成する材料の著しい破損によって滑り軸受の機能を一気に失うことを抑止する手法が無いと言う欠点がある。そのために、滑り軸受破壊の大きな因子である温度上昇による抱き付きを遅延させるために回転軸スリーブ側の外径膨張を低く抑え、更に、無潤滑摺動を含む長期間の摺動に対する摺動面性状の安定性を有し、急激な摺動環境変化に伴う著しい破壊を伴わない組み合わせ摺動部材が求められているが、それを満足するものがない。
本発明の目的とするところは、気体中、液体中及び気液二相流体中とで使用される滑り軸受の摺動部材が、これらの無潤滑条件下及び高温状態からの急激な潤滑液体流入に伴う熱衝撃負荷条件下において安定した摺動特性を有する滑り軸受の組み合わせ摺動部材を提供することであり、例えば立軸ポンプにおいて荷液による潤滑を前提とした水中軸受として、軸受近傍で状態変化が発生しうる揮発性荷液潤滑が強要されるポンプ、並びに意図的な先行待機空運転を行うポンプで安定性が得られ、かつ、破壊を伴わない良好な摺動特性を有する滑り軸受組み合わせ摺動部材を提供することにある。
上記の目的を達するために、上記請求項1に記載の発明は、液体中、気体中及び気液混合流体中で使用される滑り軸受における組み合わせ摺動部材にあって、回転軸スリーブ側摺動部材を、網目状炭素繊維材料を回転軸方向に積層成型させた筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材とし、その炭素繊維強化炭素系積層複合材の外周摺動面に炭素繊維端面を露出させた回転軸スリーブ側摺動部材を回転自在に嵌合させる固定軸受側摺動部材に、超硬合金、セラミックスのいずれか1つ以上を用いたことを特徴とする滑り軸受組み合わせ摺動部材としたものである。
上記請求項2に記載の発明は、内周摺動面に超硬合金、セラミックスのいずれか1つ以上を用いた固定軸受側摺動部材に対し、その摺動部材に回転自在に嵌合させる回転軸スリーブ側摺動部材として、筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材を用い、その炭素繊維強化炭素系積層複合材を形成する際に、積み重ねる複数の網目状炭素繊維材料の繊維方向を、積み重ねる炭素繊維層毎に異なる角度に変化させて積層成型した回転軸スリーブ側摺動部材として用いたことを特徴とする滑り軸受組み合わせ摺動部材としたものである。
また、上記請求項3に記載の発明は、回転軸スリーブ側摺動部材の回転軸方向に網目状炭素繊維材料を積層成形させ、外周摺動面に炭素繊維端面を露出させた筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材を用いた回転軸スリーブ側摺動部材に対し、その摺動部材の外周摺動面を嵌合させる固定軸受側摺動部材として、その摺動部材の内周摺動面上に超硬合金、セラミックス材料のいずれか1つ以上を用いた摺動部材を複数分割配置したことを特徴とする滑り軸受組み合わせ摺動部材としたものである。
また、上記請求項4に記載の発明は、回転軸スリーブ側摺動部材の回転軸方向に網目状炭素繊維材料を積層成形させ、外周摺動面に炭素繊維端面を露出させた筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材を用いた回転軸スリーブ側摺動部材に対し、その摺動部材の外周摺動面を嵌合させる固定軸受側摺動部材として、その摺動部材の内周摺動面上にセラミックス溶射皮膜を用いたことを特徴とする滑り軸受組み合わせ摺動部材としたものである。
また、上記請求項5に記載の発明は、内周摺動面に超硬合金、セラミックスのいずれか1つ以上を用いた固定軸受側摺動部材に組み合わせる回転軸スリーブ側摺動部材として、その摺動部材を構成する筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材内に金属、セラミックスのいずれか1つ以上を含浸させたことを特徴とする滑り軸受組み合わせ摺動部材としたものである。
従来、超硬合金、セラミックス等を用いた固定軸受側摺動部材は、高硬度、高耐食性を有するが、回転軸スリーブ側摺動部材として超硬合金、セラミックス溶射金属を用いる回転軸を組み合わせると、無潤滑摺動下において硬質材料同士の強度の局部接触による凝着摩耗の発生に伴う摺動面性状の変化による摺動特性の大幅な低下や、回転軸スリーブ側摺動部材の異常な温度上昇を伴う回転軸スリーブの熱膨張による軸受隙間の喪失による抱き付き現象や、回転軸スリーブ内の金属製回転軸の熱膨脹による回転軸スリーブへの引っ張り応力負荷状態による回転軸スリーブ摺動部材料の破断、或いは連続した無潤滑摺動直後の潤滑液の急激な流入による高温化した摺動部材の急激な温度降下による熱衝撃破壊を招くといった不具合があったが、このような不具合を本発明は確実に解消できる。
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る滑り軸受組み合わせ摺動部材の展開図を示す。この組み合わせは回転機械の固定軸受側軸受ケース1の内側に固定した固定軸受側摺動部材2に超硬合金、窒化珪素(Si)、炭化珪素(SiC)、炭化タングステン(WC)、アルミナ(Al)、クロミア(CrO、Cr)、ジルコニア(ZrO)のセラミックスのいずれか1つを用い、この固定軸受側摺動部材2に、金属製回転軸3の外周に回転軸スリーブ側摺動部材4を一体的に固定したものを摺動自在に嵌合したものにおいて、そのスリーブ側摺動部材4はリング形網目状炭素繊維材料5、5を軸方向に積層成型させて1つの筒形炭素繊維強化成型体とした低熱膨張係数の第1筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材6を用い、上記繊維材料5の炭素繊維端面7を外周摺動面8において露出させてある。
上記固定軸受側摺動部材2と回転軸スリーブ側摺動部材4との組み合わせにより、無潤滑摺動下における局部接触による凝着摩耗の進行による摺動面性状の変化拡大を抑制し、回転軸スリーブ側摺動部材4の摩耗が進行しても、外周摺動面8における炭素繊維端面7が常に摺動面に存在し摺動特性の安定化が得られ、回転軸スリーブ側摺動部材4の異常な温度上昇によっても線膨張係数が低く抑えられるために抱き付きに到る時間が長くなり、仮に回転軸スリーブが破断に到る場合においても炭素繊維強化炭素系積層複合材故に破断が一気に進行することを抑制することができる。
従って、滑り軸受組み合わせ摺動部材において、固定軸受側摺動部材2に超硬合金、セラミックスのいずれか1つ以上を用い、回転軸スリーブ側摺動部材4として炭素繊維端面7が外周摺動面8に露出した第1筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材6を用い、その両摺動部材2、4を組み合わせたものは、従来例の組み合わせに比較して、無潤滑摺動を含む長期間の摺動に対しても、発熱による寸法変化が小さく、長時間摺動を経ても摺動面の剥離、溶融等の摺動面性状変化が生じにくく、回転軸スリーブ側摺動部材4の破断限界における材料破壊も急激に進行させない。
すなわち、本発明の大きな特徴は、スラリー条件下における土砂摩耗に対する耐摩耗性を確保するために、固定軸受側摺動部材2の内周摺動面に超硬合金又はセラミックスなどの高硬度材料を用い、回転軸スリーブ側摺動部材4の外周摺動面8には、高硬度材料である炭素繊維端面7を露出させると共に、回転軸スリーブ側摺動部材4の外周摺動面8に炭素繊維端面7を不連続に分散分布させており、従来用いられる回転軸スリーブ側摺動部材の外周面のような硬質平坦な摺動面を用いないところにある。
また、回転軸スリーブ側摺動部材4の外周摺動面8に炭素繊維端面7を不連続に露出させることにより、連続的な無潤滑摺動運転による局所的な摺動部位の凝着現象をその局部のみに留め、スラリー条件下において発生する土砂摩耗による回転軸スリーブ側摺動部材4の外周摺動面8の炭素繊維端面7に損壊が生じても、新らたな炭素繊維端面7が摺動面8に露出することによって摺動表面状態の安定性が確保でき、その摺動部材4の外周摺動面8の破壊を局部に止める点において、従来の一体ムク構造で硬質平坦な摺動面を有する高硬度材料を用いた摺動部材の不具合を確実に解消している。
以上のことから、清水はもちろん土砂を含むスラリー、無潤滑状態となる空気、液体の状態変化による蒸発気体が発生する揮発性液体を取り扱う回転機械の滑り軸受組み合わせ摺動部材として有用である。
なを、上記回転軸スリーブ側摺動部材4における第1筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材6は、その積層複合材6を積層成型するにあたって用いるリング形網目状炭素繊維材料5を異なる任意形状(例えば方形又は多角形)の網目状炭素繊維材料を用いて積層成型し、その積層成型した網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材を機械加工によって筒形成型体とすることもできる。また、上記網目状炭素繊維材料5は布状炭素繊維材料を用いてもよい。
また、網目状炭素繊維材料を積層成型する際、その炭素繊維の結合母材として炭素を用いて積層成型した炭素繊維強化炭素系積層複合材としているが、この結合母材は炭素に限定されるものではなく、樹脂、金属、セラミックスの何れか1つ以上の材料を用いてもよい。いずれの積層成型によっても網目状炭素繊維材料の炭素繊維端面が摺動面に現れるようにすることが必要である。
また、固定軸受摺動部材2として使用するセラミックス材料は、上記窒化珪素(Si)、炭化珪素(SiC)、炭化タングステン(WC)、アルミナ(Al)、クロミア(CrO、Cr)、ジルコニア(ZrO)以外の硬質材料を用いてもよい。
図2は本発明の第2実施形態に係る滑り軸受組み合わせ摺動部材の展開図を示す。この図2のうちの図2(a)に示す組み合わせ摺動部材における回転軸スリーブ側摺動部材4は、複数のリング形網目状炭素繊維材料の繊維方向を問わないで積層成型した上記第1実施形態の第1筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材6の一例である。この一例の積層複合材6aの炭素繊維材料5a、5aでは繊維方向を一致させていることに対し、図2(b)に示す組み合わせ摺動部材における回転軸スリーブ側摺動部材4では、複数のリング形網目状炭素繊維材料9の繊維方向を変えて積層成型した第2筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材10を用いている。すなわち、この第2筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材10は網目状炭素繊維材料9を積層成型する際に積み重ねるに当たって、その網目状炭素繊維材料9の繊維方向を、炭素繊維材料毎に異なる方向に変化させた炭素繊維材料9a、9bとなるようにして積層成型し、上記回転軸スリーブ側材摺動部材4となる例示の第1筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材6の外周摺動面8に露出する炭素繊維端面7の上記炭素繊維端面形状よりも、回転軸スリーブ側摺動部材4となる第2筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材10の炭素繊維端面11の炭素繊維端面形状を外周摺動面12全体に、より不規則に分散分布する構造となるようにしたものである。更に、網目状炭素繊維材料9の積層過程において、炭素繊維の並ぶ方向が同一方向である場合、上記第1の炭素繊維強化炭素系積層複合材6aのように網目状炭素繊維5aが積層成型されて得られた外周摺動面8aは、炭素繊維端面7aと摺動面の為す角度が摺動面の垂直方向毎に固定されるが、積層された網目状炭素繊維材料9における炭素繊維配置方向が積層単位毎に異なっていれば、外周摺動面12全体における摺動面から露出した炭素繊維端面11、及び、その炭素繊維端面11と外周摺動面12との為す角度がより一層拡散し、回転軸スリーブ側摺動部材4における材料の方向性による弊害を解消し、安定性と耐破壊性を一層向上させることができる。
なお、回転軸スリーブ側摺動部材4として用いる第2筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材10の網目状炭素繊維材料9を任意角度毎ずらして積層する場合,ずらす角度は等間隔、不等間隔のいずれかとし、回転軸スリーブ側摺動部材の外周摺動面に炭素繊維端面が分布して現れるようにすればよい。
図3は本発明の第3実施形態に係る滑り軸受組み合わせ摺動部材における固定軸側摺動部材の一部切断斜視図を示す。この固定軸受側摺動部材は従来の固定軸受側摺動部材における連続した無潤滑摺動による軸受隙間の喪失にともなう抱き付き状態において、抱き付きによる破壊が固定軸受側摺動部材全体に及ぶことを防止するためのものでる。
すなわち、回転軸スリーブ側摺動部材の摺動発熱による熱膨張に伴う軸受隙間の喪失、抱き付き現象は、固定軸受側摺動部材の接触局部に対して激しい凝着と熱衝撃を与えるために、脆性材料である超硬合金又はセラミックス製固定軸受側摺動部材に生じた欠陥は材料全体に及ぶ。抱き付き現象による固定軸受側摺動部材に作用する欠陥を、凝着の発生した摺動部局部に留めるため、固定軸受側摺動部材を分割構造としたものである。
言い換えれば、無潤滑摺動において生じる局部的な異常負荷による材料破壊の進行を、固定軸受側摺動部材全体に及ぶことを抑制しようとするものであり、固定軸受側摺動部材を分割したものである。すなわち、固定軸受側軸受ケース13の内周軸方向に形成した所定間隔の溝13aにセラミックス製分割型動部材14を一体的に嵌合したことにより、局部における材料破壊を摺動部材14の一部のみに抑えることができる。
図4は本発明の第4実施形態に係る滑り軸受の組み合わせ摺動部材における固定軸受側摺動部材の一部切断斜視図を示す。この固定軸受側摺動部材は固定軸受側軸受ケース15の内周面15aにセラミックス溶射皮膜製摺動部材16を溶射処理によって溶着したものであり、固定軸受側軸受ケース15の内周面15aに上記溶射処理をほどこしたものは、無潤滑摺動による固定軸受側軸受内径の発熱による膨脹量を、より大きな線膨張係数をもつ固定軸受側軸受ケース15によって吸収することにより、回転軸スリーブ外径の膨脹による抱き付きを遅延させ、連続的な無潤滑摺動における抱き付きに至る時間を延長することができる。更に、固定軸受側摺動部材としてムク材料である超硬合金又はセラミックスを用いる場合に比較して、溶射処理によって摺動面を造るコストは大幅に低減できる。
図5は本発明の第5実施形態に係る滑り軸受の組み合わせ摺動部材における回転軸受側摺動部材の拡大展開図を示す。この回転軸スリーブ側摺動部材4である第3筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材17は、その繊維強化炭素系積層複合材内に金属を含浸させるものである。すなわち、回転軸スリーブ側摺動部材4を構成する軸方向に積層形成した網目状炭素繊維5の間隙に含浸金属18を充填したものである。その金属含浸によって無潤滑摺動下における回転軸スリーブ側摺動部材4の寸法安定性を簡単容易に確保することができる。
従来、無潤滑摺動によって最も高温となる回転軸スリーブは、その線膨張係数に従った外径の拡大によって滑り軸受の抱き付き状態に到るが、元来緻密体でない炭素繊維強化炭素系複合材料は、摺動表面における発熱が回転軸スリーブ材料全体に行き渡りにくく、その摺動表面における寸法変化と熱負荷によって滑り軸受は抱き付き状態に到る。そこで本発明の回転軸スリーブ側摺動部材4は網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材17内に金属18を含浸させることにより、その繊維強化炭素系積層複合材料17の外周摺動面19における炭素繊維端面20部の発熱を速やかに回転軸スリーブ側摺動部材4全体に伝え、回転軸スリーブ側摺動部材4全体の熱容量を増加させて温度上昇を緩やかにすることができる。
なお、上記網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材17に含浸させる金属18は、固定軸受側摺動部材2である超硬合金又はセラミックスと凝着摩耗を引き起こさない金属を用いる。
図6は本発明の第6実施形態(第5実施形態の付随)に係る滑り軸受組み合わせ摺動部材の展開図を示す。この組み合わせ摺動部材は固定軸受側摺動部材として、固定軸受側軸受ケース13の内周にセラミックス製分割型摺動部材14を不連続に分割配置し、その摺動部材14にはタングステンカーバイド(WC)セラミックスを用いる。一方、それに組み合わせる回転軸スリーブ側摺動部材4として、網目状炭素繊維部材9の繊維方向を任意の異なる方向で積層成型した第4筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材21を用いている。この炭素繊維強化炭素系積層複合材21に対して含浸金属18を充填したものである。
したがって、この第4筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材21は、上記第2筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材10の特長と第3筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材17の特長を合わせもった滑り軸受組み合わせ摺動部材として実用的に極めて優れている。
ここに、上記図1乃至図6に開示した本発明の滑り軸受組み合わせ摺動部材を、図7の縦型渦巻ポンプおよび図8の縦型斜流ポンプにそれぞれ実施した場合の有用性について説明する。
先ず、図7に示す縦型渦巻ポンプ22においては、上記本発明の滑り軸受組み合わせ摺動部材を、インペラシャフト23をポンプケーシング24内部で支える荷液潤滑型滑り軸受25として使用している。本来、この渦巻ポンプ22は運転中に滑り軸受設置部位の圧力が減圧状態となるが、この種の渦巻ポンプを精製油搬送用のプロセスポンプやタンカーの荷役ポンプポンプのように高い吐出圧力が必要で、取り扱う液体がガソリン、ナフサ、アセトン、メタノール等の潤滑液体が気化する低蒸気圧の揮発性液体で使用する場合には、ポンプ内羽根車の入口近傍における回転軸付近が断続的な気化状態となることから、滑り軸受には非常に高い無潤滑摺動特性を要求されていたが、本発明によってこの問題を解消することができた。
すなわち、本発明による無潤滑滑り軸受用組み合わせ摺動部材を上記ポンプをはじめとする回転機械の滑り軸受に適用すれば、優れた無潤滑摺動特性、耐熱衝撃性、耐摩耗性を確保でき、通常運転環境において無潤滑摺動等の危険性を持ちながら使用されている回転機械に大きな信頼性を与えることができる。
その他の用途に用いた本発明の滑り軸受用組み合わせ摺動部材としては、図8に示すように土砂スラリー等を取り扱う縦型の斜流ポンプ26に用いる。この斜流ポンプ26では、ポンプ内水位が上昇する迄に気中無潤滑運転に曝される部位となるインペラシャフト27の中間軸受設置部位28に優れた無潤滑摺動特性、耐熱衝撃性、耐摩耗性を持つ本発明の滑り軸受組み合わせ摺動部材を中間軸受29として装着すると、潤滑用の注水装置が不要になり、また、長時間の土砂摩耗に曝されるインペラ保持部30に、本発明の滑り軸受組み合わせ摺動部材を下部軸受31として装着することにより、土砂スラリー潤滑条件下で使用する上記下部軸受31の耐磨耗性を充分に確保できるようにできた。
特に長時間の無潤滑摺動特性を確保することは、前述した先行待機空運転が強要されるポンプにおける先行待機許容時間の長時間化、先行待機空運転中における滑り軸受機能喪失の抑止に大きな効果を与えることが可能となる。
このような先行待機空運転が強要されるポンプの用途としては都市防災用の排水ポンプがある。このポンプは都市洪水を防止するために地下に設置される雨水タンク内の排水を迅速に行うため、雨水タンク内水位が極めて低い状態においてもポンプは先行待機空運転が行われるために、ポンプ内に用いられる滑り軸受には極めて高い無潤滑摺動特性と、雨水タンク内水位の急激な上昇によって高温化した滑り軸受に作用する熱衝撃に耐えうる耐熱衝撃性が必要とされる。
更に公共性を有する設備に用いられるポンプ故に求められる非常に大きな信頼性を、本発明による滑り軸受用組み合わせ摺動部材は急激に破壊が進行しないという特長によって確保することが可能となる。
それ以外の用途としては、極低温下で使用され潤滑媒体の供給が困難な部位で使用されるポンプ、電動機、スクリュー向けの滑り軸受として、或いは減圧環境となる雰囲気で使用されるポンプ、電動機、スクリュー向けの滑り軸受としての適用可能性を有する。
ここに、本発明の軸受組み合わせ摺動部材の実用性を明らかにするために行った滑り軸受摺動部材の摺動実験装置および試験内容について説明する。
図9は本発明の軸受組み合わせ摺動部材における滑り軸受摺動部材の摺動実験装置を示す。この実験装置によって行った試験は、既存する様々な組み合わせ摺動部材を用い、清水雰囲気、スラリー雰囲気、無潤滑雰囲気及び無潤滑域から急激な潤滑液流入を繰り返し行う使用環境下での、摺動特性と破壊形態を調査した。その結果、本発明の滑り軸受組み合わせ摺動部材によるものが非常に優れていることが判明した。
すなわち、縦型の滑り軸受実験装置32は上部の電動機33によってトルク検出器34を介して回転軸35が回転するようにしてある。上記回転軸35は上部軸受34と下部供試軸受37によって回転自在に保持している。その下部供試軸受37の摺動部位には、回転軸35に着脱自在に固定した供試回転軸スリーブ38が摺動回転できるように挿入してある。上部軸受36と下部供試軸受37の中間位置には偏芯荷重発生用円板40を装着しており、この円板40には振れ回り荷重を発生させるための偏芯おもり41が半径方向に調節移動自在に固定してある。この偏芯おもり41を取り付けた円板40を上記回転軸35と共に回転させることによって、下部供試軸受37に振れ回りの軸受荷重を与える構造としてある。
また、上記下部供試軸受37は前後左右に移動自在の供試軸受設置箱39内に取外し自在に固定しており、その供試軸受設置箱39を一方向から加圧する拘束用の油圧ライン42により、下部供試軸受37に対して半径方向荷重を加えるようにしてある。また、供試軸受設置箱39の両端には振れ回りラジアル荷重計測用に左側ロードセル43および右側ロ−ドセル44を設置して軸受荷重を計測するようにしてある。さらに、下部供試軸受37の摺動状態を把握するために、上記左右のロードセル43、44による計測荷重、トルク検出器34による負荷トルクの他に、下部供試軸受37の近傍における回転軸35の振れ回り変位を計測するための変位計45、供試軸受設置箱39の振動加速度を計測するための振動加速度計46、供試軸受設置箱39内に設置された下部供試軸受37内部の各部温度計測用の上部温度計47,および下部温度計48がそれぞれ設置してある。さらに供試軸受設置箱39には、スラリー等潤滑媒体の供給ライン49を接続してある。
この滑り軸実試験装置31によって行った摺動試験においては、下部供試軸受は内径100ミリメートル、摺動長さ60ミリメートルの部位での回転摺動を行い、摺動面圧0.2MPa×摺動速度6m/secの無潤滑摺動による抱き付き限界時間の計測と限界時破壊形態の確認試験によって得られたデータを下記表1に示す。
Figure 2006170239
また、摺動面圧0.075MPa×摺動速度6m/secの摺動条件下において、1サイクルを1時間の無潤滑摺動を連続で行い、回転軸の回転を止めることなく潤滑液としてスラリーを急速流入させスラリー潤滑摺動を、1時間継続する摺動試験を繰り返す断続的無潤滑摺動試験による耐久性の評価を行った。この試験によって得られた抱き付き限界時間の計測と限界時破壊形態の確認試験によって得たデータを下記表2に示す。
Figure 2006170239
使用した材料の材質等は次の通りである。
軸スリーブ側としての炭素繊維強化炭素系複合材料は、本発明による網目状炭素繊維材料を軸スリーブの軸方向に積層成型した筒型網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材(表内略称:積層繊維)、従来の炭素繊維糸を軸スリーブの回転方向に巻き上げて成形した炭素繊維糸複合材料(表内略称:糸巻繊維)、並びに、炭素繊維布を軸スリーブの回転方向に巻き上げて成形した炭素繊維布複合材料(表内略称:板巻繊維)の3種類である。
また、従来から用いられている軸スリーブ側超硬合金は、90%のWCを含有し残部にNiを含有する非磁性超硬合金(軸スリーブ肉厚として6ミリメートル、14ミリメートル)の2種類
上記表1並びに表2うちの記号AからHが本発明の滑り軸受用摺動部材組み合わせであり、記号IからQが従来の摺動部材の組み合わせである。
なお、上記表1及び表2の評価欄の記号は、
◎:上記試験の結果:上記液体、気体、気液混合流体に最も効果的に実用可能。
○:上記試験の結果:上記液体,気体,気液混合流体に通常に実用可能
△:上記試験の結果:上記液体,気体,気液混合流体の条件次第で実用可能
×:上記試験の結果:実用不可能
を意味し、摩擦係数、耐摩耗性、材料破壊特性の因子を異常抱き付き状態再現試験、無潤滑断続運転試験によって総合的に評価した結果を示すものである。
なお、滑り軸受用組み合わせ摺動部材は、上記表1および表2で評価したもの以外の一般的なゴム軸受、樹脂軸受等についても多数の評価試験を行ったが、これらのデータは省略した。
図10は上記表1記載の条件での試験データグラフで、横軸に摺動時間、縦軸に振れ回り回転軸の軸変位量をとったものであり、この表1のうちから、本発明の固定軸受側摺動部材に分割型タングステンカーバイドセラミックス(WC)を用いて、回転軸スリーブ側摺動部材には網目状炭素繊維材料を積層成型して金属含浸を施した筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材を組み合わせた非常に優れた記号Aのもの、従来の固定軸受側摺動部材に摺動方向と平行に炭素繊維糸を巻き上げて成型したものを用いて、回転軸スリーブ側摺動部材には超硬合金を組み合わせた記号Jのもの、固定軸受側摺動部材には分割型タングステンカーバイドセラミックスを用いて、回転軸スリーブ側摺動部材に摺動方向と平行に炭素繊維糸を巻き上げて成型したものを組み合わせた記号Kのもの、固定軸受側摺動部材に分割型タングステンカーバイドセラミックスを用いて、回転軸スリーブ側摺動部材に超硬合金を組み合わせた記号Nのもの、および、固定軸受側摺動部材に一体円筒構造のシリコンカーバイドセラミックスを用いて、回転軸スリーブ側摺動部材に超硬合金を組み合わせた記号Pのものを選んで比較したものである。
硬質材料同士を組み合わせ摺動部材として選んだ記号N、並びに記号Pでは、短時間の内に抱き付き状態に至る。組み合わせ摺動部材の内、一方に炭素繊維強化炭素系複合材を選んだ記号A、記号J、記号Kのものは、比較的長時間の無潤滑摺動を実現している。しかし、摺動面において摺動方向と同方向に炭素繊維が露出した記号J、並びに記号Kのものは、軸受隙間を示す振れ回り回転軸変位量の減少が、突発的かつ急激に発生することを確認した。試験後における摺動部材は、記号J、並びに記号Kで用いた炭素繊維強化炭素系複合材の炭素繊維の剥離が確認され、損傷を受けた摺動部材は再使用不可能であることを確認した。
この比較から、無潤滑摺動においては局所的な接触を繰り返すことから、無潤滑摺動条件下での固定軸受側摺動面と回転軸スリーブ側摺動面の種々の摺動形態により、摺動における疲労を受ける局所を分散化することが摺動特性の安定化に有効に作用することが判った。このことによって摩耗が進行しても摺動面の性状に変化を与えないためには、本発明のように摩耗が進行しても炭素繊維端面が摺動面に露出する構造とすることが望ましい。反面、摺動方向と平行に炭素繊維が巻き上げられている構造では、無潤滑摺動下において作用する応力が繊維を緩める方向に作用するために、長期間の無潤滑摺動には適していないということが明らかとなった。
このように様々な摺動部材の組み合わせの内、固定軸受側摺動部材に硬質セラミックス材料を選定し、回転軸スリーブ側摺動部材に、炭素繊維端面が露出した摺動部材を選定した組み合わせは、他の形態の組み合わせ摺動部材に比較して摺動状態の変化が微小であり、無潤滑摺動の継続によって引き起こされる固定軸受側摺動材部内周面と回転軸スリーブ側摺動部材外周面の抱き付きに至った後の状態も、摺動材料の著しい損傷を引き起こさないという特長を有している。
図11は前記表2記載の条件での試験データグラフで、横軸に運転時間、縦軸に振れ回り回転軸変位量をとったものであり、表2のうち、特に優れた固定軸受側摺動部材に分割型タングステンカーバイドセラミックスを用い、回転軸スリーブ側摺動部材に網目状炭素繊維材料を積層成型して金属含浸を施した筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材を組み合わせた記号Aのもの、固定軸受側摺動部材に摺動方向と平行に炭素繊維糸を巻き上げて成型したものを用い、回転軸スリーブ側摺動部材には超硬合金を組み合わせた記号Jのもの、固定軸受側摺動部材に分割型タングステンカーバイドセラミックスを用い、回転軸スリーブ側摺動材に摺動方向と平行に炭素繊維糸を巻き上げて成型したものを組み合わせた記号Kのもの、固定軸受側摺動部材に分割型タングステンカーバイドセラミックスを用い、回転軸スリーブ側摺動材には超硬合金を組み合わせた記号Nのもの、固定軸受側摺動部材に一体円筒構造のシリコンカーバイドセラミックスを用い、回転軸スリーブ側摺動部材には超硬合金を組み合わせた記号Pのものを選び比較したものである。
この実験では、前項の実験に比較して軽荷重による無潤滑摺動を最初に行い、その後スラリー摺動を継続して行うことを繰り返し行うものであるが、回転軸スリーブ側摺動部材に超硬合金を用いたものの多くは、実験開始段階における無潤滑摺動によって破損し実験を継続することが不可能となることが判明した。
回転軸スリーブ側摺動部材に超硬合金を用い、実験における無潤滑摺動を唯一可能とした記号Jによる組み合わせ摺動部材は、軽荷重条件化における無潤滑摺動に耐えうるが、無潤滑摺動後に継続して行った珪砂スラリー潤滑による土砂摩耗現象により、試験完了時点において固定側軸受内径が摩耗によって大きく拡大することとなった。土砂摩耗現象により軸受内外径隙間が拡大する挙動は、回転軸スリーブ側摺動部材に摺動方向と同方向に炭素繊維が露出した記号Kによる組み合わせ摺動部材でも確認でき、試験後における摺動部材の損傷状況の確認でも、摺動方向と平行に存在する炭素繊維が剥離させられており、損傷を受けた摺動部材は再使用不可能となる。
このように、本発明による固定軸受側摺動部材に超硬合金又はセラミックス製硬質材料を用い、回転軸スリーブ側には網目状炭素繊維材料を積層成型した筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材を用いた摺動部材の組み合わせは、珪砂スラリーによる土砂摩耗に対する耐摩耗性はもちろん、連続的な熱衝撃負荷状態においても極めて安定的な挙動を示し、断続運転後の材料状態もほぼ完全に初期の状態を保ち、破壊の形態も緩やかな摩耗の進行に抑えられることを確認した。
なお、固定軸受側摺動部材に摺動方向に炭素繊維糸を巻き上げて成型した炭素繊維糸強化炭素系複合材を用い、回転軸スリーブ側に網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材を用いた従来の組み合わせ摺動部材では、表1中の記号Iによる結果から明らかなように摺動表面における面状態が固定軸受側、回転軸スリーブ側共に滑らかでないことによる異常な摩擦係数による発熱と抱き付きによって、早期の段階で滑り軸受が機能を失うことを確認した。
無潤滑摺動を含む評価試験によって破壊した各種材料の分析から、滑り軸受における固定軸受及び回転軸スリーブの破壊形態を評価すれば、摺動部材は摩耗が穏やかに進行するのとは異なり、固定軸受側摺動部材の破損は、抱き付き時における局部的凝着(焼き付き)による熱衝撃によるものであり、回転軸スリーブ側摺動部材の破損は、異常温度上昇による軸スリーブ内金属軸の熱膨張による回転軸スリーブへの引っ張り応力負荷による破断、摺動方向に巻かれた炭素繊維の剥離、無潤滑摺動状態による摺動表面における凝着摩耗による形状喪失によるものであることを確認した。
本発明による滑り軸受用組み合わせ摺動部材は、旧来の滑り軸受用組み合わせ摺動部材に比較して、高荷重摺動条件下においても非常に長い無潤滑摺動状態の維持を可能とし、無潤滑摺動と液中摺動の繰り返しによる材料破壊を抑制し、無潤滑摺動条件及びスラリー条件を含む長時間の摺動においても摩耗の進行が極めて緩やかであり、固定軸受側摺動内周面と回転軸スリーブ側摺動外周面の抱き付き状態に到達する際の摺動部材の破壊が、滑り軸受全体の破壊に及ばないことを確認した。
以上のように本発明による滑り軸受組み合わせ摺動部材では、このように無潤滑条件下或いは土砂等スラリーを有する液中及び断続的に無潤滑状態が発生する条件下においても、安定的な摺動挙動を示し、回転機械の即時停止を誘発するような大規模で急激な破壊挙動を示すことのない性質を有していることが明らかとなり、本発明による滑り軸受組み合わせ摺動部材を用いることは、滑り軸受の信頼性の向上に大きな効果を発揮する。更に旧来の注水装置が必要不可欠な立軸ポンプにおける注水装置の省略等にも非常に大きな性能的優位性を付与することが可能となるものである。
本発明による組み合わせ摺動部材は、潤滑機構の中に流体が存在しないことを前提に、低い摩擦係数による摺動発熱の抑制を計り、軸受隙間を長期間安定的に確保することを可能とするものである。本発明による組み合わせ摺動部材を産業機械に適用する場合、摺動部分における冷却手段を従来の流体軸受のように大きな冷却能力を確保する潤滑液体による冷却に頼る必要性が生じないことから、強制空冷を施すか、或いは滑り軸受における放熱を促進する機構等の他の簡便な冷却手法を援用して、摺動部分における発熱を奪う手法を確保することで、完全な無液気中摺動滑り軸受を実現することが可能となる。数多くの産業機械に適用される滑り軸受において流体潤滑を行う設備類の省略が可能となるもので回転機械類全般に対して大きな経済的効果をもたらす。
本発明の第1実施形態を示す滑り軸受組み合わせ摺動部材の展開図 炭素繊維材料を積層成型した回転軸スリーブ側摺動部材の展開図 超硬合金又はセラミックス分割型の固定軸受側摺動部材の一部切断斜視図 セラミックス溶射型の固定軸受側摺動部材の一部切断斜視図 金属を含浸した積層複合部材による回転軸スリーブ側摺動部材の展開図 第6実施形態を示す滑り軸受組み合わせ摺動部材の展開図 本発明の滑り軸受組み合わせ摺動部材を用いた渦巻ポンプの縦断側面図 本発明の滑り軸受組み合わせ摺動部材を用いた縦型斜流ポンプの縦断側面図 本発明の有効性を実証するための滑り軸受摺動実験装置の一部切断側面図 無潤滑摺動試験のデータグラフ 無潤滑−スラリー含有水潤滑サイクル試験のデータグラフ
符号の説明
1 固定軸受側ケース
2 固定軸受側摺動部材
3 金属製回転軸
4 回転軸スリーブ側摺動部材
5 リング形網目状炭素繊維材料
6 第1筒形網目状炭素繊維強化積層複合材
7 第1筒形網目状炭素繊維強化積層複合材の炭素繊維端面
8 第1筒形網目状炭素繊維強化積層複合材の外周摺動面
5a 第1筒形網目状炭素繊維強化積層複合材のリング形網目状炭素繊維材料
6a 繊維方向を一致させた第1筒形網目状炭素繊維強化積層複合材
7a 繊維方向を一致させた第1筒形網目状炭素繊維強化積層複合材の炭素繊維端面
8a 繊維方向を一致させた第1筒形網目状炭素繊維強化積層複合材の外周摺動面
9、9a、9b 第2筒形網目状炭素繊維強化積層複合材のリング形網目状炭素繊維材料
10 第2筒形網目状炭素繊維強化積層複合材
11 第2筒形網目状炭素繊維強化積層複合材の炭素繊維端面
12 第2筒形網目状炭素繊維強化積層複合材の外周摺動面
13 分割型摺動部材を保持する固定軸受側ケース
13a 分割型摺動部材を保持する固定軸受側ケースの溝
14 分割型摺動部材
15 溶射皮膜製摺動部材を保持する固定軸受側ケース
15a 溶射皮膜製摺動部材を保持する固定軸受側ケースの内周面
16 溶射皮膜製摺動部材
17 第3筒形網目状炭素繊維強化積層複合材
18 含浸金属
19 第3筒形網目状炭素繊維強化積層複合材の外周摺動面
20 第3筒形網目状炭素繊維強化積層複合材の炭素繊維端面
21 第4筒形網目状炭素繊維強化積層複合材
22 縦型渦巻きポンプ
23 縦型渦巻きポンプのインペラシャフト
24 縦型渦巻きポンプのケーシング
25 縦型渦巻きポンプの滑り軸受
26 縦型斜流ポンプ
27 縦型斜流ポンプのインペラシャフト
28 縦型斜流ポンプの中間軸受設置部位
29 縦型斜流ポンプの中間滑り軸受
30 縦型斜流ポンプのインペラ保持部
31 縦型斜流ポンプの下部滑り軸受
32 滑り軸受実験装置
33 電動機
34 トルク検出器
35 回転軸
36 上部軸受
37 下部供試軸受
38 供試回転軸スリーブ
39 供試軸受設置箱
40 偏芯荷重発生用円板
41 偏芯おもり
42 拘束用油圧ライン
43 左側ロードセル
44 右側ロードセル
45 軸変位計
46 振動加速度計
47 上部温度計
48 下部温度計
49 潤滑媒体供給ライン

Claims (5)

  1. 液体中、気体中及び気液混合流体中で使用される滑り軸受における組み合わせ摺動部材にあって、回転軸スリーブ側摺動部材を、回転軸方向に網目状炭素繊維材料を積層成型させた筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材とし、その炭素繊維強化炭素系積層複合材の外周摺動面に炭素繊維端面を露出させた回転軸スリーブ側摺動部材を回転摺動自在に嵌合させる固定軸受側摺動部材に、超硬合金、セラミックスのいずれか1つ以上を用いて成ることを特徴とする滑り軸受組み合わせ摺動部材
  2. 上記請求項1記載の滑り軸受組み合わせ摺動部材にあって、回転軸スリーブ側摺動部材を、積層成型する複数の網目状炭素繊維材料の繊維方向をそれぞれ任意角度ずらせて積層成型し、外周摺動面において炭素繊維端面が連続して露出するようにした筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材として成ることを特徴とする滑り軸受組み合わせ摺動部材。
  3. 上記請求項1又は請求項2記載の滑り軸受組み合わせ摺動部材にあって、固定軸受側摺動部材の内周摺動面上に超硬合金製、セラミックス製のいずれか1つ以上を用いた分割型摺動部材を不連続に装着配置して成ることを特徴とする滑り軸受組み合わせ摺動部材。
  4. 上記請求項1又は請求項2記載の滑り軸受組み合わせ摺動部材にあって、固定軸受側摺動部材の摺動面にセラミックス溶射皮膜を用いて成ることを特徴とする滑り軸受組み合わせ摺動部材。
  5. 上記請求項1乃至請求項4記載の滑り軸受組み合わせ摺動部材にあって、回転軸スリーブ側摺動部材である筒形網目状炭素繊維強化炭素系積層複合材内に金属、セラミックスのいずれか1つ以上を含浸させて成ることを特徴とする滑り軸受組み合わせ摺動部材。
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