本発明は、デジタル無線伝送技術に関し、特に、OFDM(直交周波数分割多重:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号の特定シンボルのタイミング検出を目的としたパイロットキャリア送受信方法、送信装置及び受信装置に関する。
地上波デジタル放送やテレビジョン放送番組素材伝送の伝送方式には、OFDM方式が採用されている。この方式は、周波数方向で互いに直交する多数の搬送波(キャリア)を用いてデータを変調する伝送方式であり、時間方向で見ると各搬送波の伝送速度が抑えられているため、相対的に長くなる伝送シンボルとの対比によって、マルチパスによる遅延波の影響を緩和することができる。
伝送シンボルは、有効シンボルとガードインターバルとを組み合わせた単位により構成される。有効シンボルはデータ信号を伝送する期間であり、ガードインターバルはマルチパスによる影響を軽減するための期間である。尚、ガードインターバルは、有効シンボルの信号波形の一部を巡回的に繰り返したものである。
したがって、OFDM方式で送信された信号(以下、「OFDM信号」という。)を受信して伝送シンボルを得て、当該伝送シンボルからガードインターバルを取り除くことにより、シンボル間の干渉を受けていない有効シンボル分のデータ信号を取り出すことができ、マルチパスによる遅延波の影響を緩和することができる。
しかしながら、このガードインターバルを取り除いた信号においても、遅延波による周波数選択性フェージングの影響が残留する。これを等化する目的のために、振幅及び位相の基準信号であるパイロットキャリアがデータキャリアと共に送信される。
前述の地上波デジタル放送やテレビジョン放送番組素材伝送においては、移動環境下で信号の送受信が行われるため、マルチパス環境が高速に変動する。このようなマルチパス環境に対応するため、以下に説明するように、パイロットキャリアの送信方法に工夫を施している。
まず、地上波デジタル放送のOFDM信号におけるパイロットキャリアの配置方法について説明する。図1は、地上波デジタル放送のOFDM信号における伝送フレームの一部を示したものであり、パイロットキャリアの配置を周波数方向及び時間方向の2次元で表現した図である。図1より、周波数方向にはキャリアが配置され、キャリア番号は1,2,3,・・・と表記されている。また、時間方向には伝送シンボルが配置され、伝送シンボル番号は1,2,3,・・・と表記されている。
地上波デジタル放送において、パイロットキャリア(図1の黒丸)は、データキャリア(図1の白丸)に対して周波数方向に12キャリアずつ、シンボル毎に右(キャリア番号の大きい方)に3キャリアずつシフトする配置となっている。このように、周波数方向及び時間方向にパイロットキャリアを分散させた配置となっているため、この配置はスキャッタードパイロット(SP:Scattered Pilot)と呼ばれる。この地上波デジタル放送の伝搬路は4シンボルを単位として推定されるため、周波数(キャリア)方向ではキャリア3本に1本の割合でパイロットキャリアが配置されているのと等価であり、有効シンボル期間の1/3までの遅延時間を持つマルチパス伝搬路の推定ができるようになっている。
次に、テレビジョン放送番組素材伝送用のOFDM方式の標準規格ARIB STD−B33(非特許文献1を参照。)で用いられているOFDM信号のパイロットキャリアの配置方法について説明する。図2は、標準規格ARIB STD−B33に記載されているOFDM信号の伝送フレームの一部を示したものであり、図1と同様に、パイロットキャリアの配置を周波数方向及び時間方向の2次元で表現した図である。図2より、パイロットキャリア(図2の黒丸)は、データキャリア(図2の白丸)に対してキャリア方向に8キャリアずつ、シンボル方向に連続して挿入された配置となっている。このため、この配置は連続パイロット(CP:Continual Pilot)と呼ばれる。標準規格ARIB STD−B33のOFDM信号は、有効シンボル期間の1/8までの遅延時間を持つマルチパス伝搬路の推定ができるようになっている。
さらに、上記のOFDM信号を同一周波数上で伝送し、伝送容量の拡大及び周波数利用効率の向上を実現する技術の開発が進められている。これは、複数の送信アンテナ及び受信アンテナを用いて複数のOFDM信号を同一周波数上で同時に伝送することから、「MIMO(Mu1tiple-Input Multiple-Output)伝送方式」と呼ばれる。
MIMO伝送方式では、同一周波数上で複数のOFDM信号を空間多重伝送するため、これら複数のOFDM信号間で干渉が生じる。そこで、空間多重する各OFDM信号が通過するそれぞれの伝搬路の伝達関数を推定(伝搬路推定)し、その伝搬路推定の結果に基づいて、受信したOFDM信号から干渉や混信の影響を除外することにより、高ビットレートの伝送を実現することができる。
この伝搬路推定を正確に行うためには、各OFDM信号のパイロットキャリアが、多重した他のOFDM信号のパイロットキャリアと互いに干渉し合わないように工夫する必要がある。
その工夫の例として、パイロットキャリアの時間間欠伝送を行うMIMO伝送方式の事例が開示されている(非特許文献2または特許文献1を参照。)。図3は、同一周波数上にMIMO伝送される2組のOFDM信号(OFDM信号1及びOFDM信号2)に組み込まれたパイロットキャリアが互いに干渉し合わないように工夫したものであり、図1及び図2と同様に、各信号における伝送フレームの一部を、周波数方向及び時間方向の2次元で表現した図である。図3より、各OFDM信号1,2において、パイロットキャリアは、周波数方向に一定の間隔で配置され、時間方向にヌルキャリア(電力0のパイロットキャリアまたはキャリア位置で無信号とする。)と交互に配置されている。ここで重要な点は、OFDM信号1,2の2つのOFDM信号のパイロットキャリアが同一シンボルで重なって伝送されないように、シンボル毎に交互に間欠されていることである。但し、このようなパイロットキャリアの時間間欠伝送を行う方式では、受信側において間欠タイミングをシンボル単位の同期精度で再現する必要がある。
また、パイロットキャリアを符号分割多重して伝送するMIMO伝送方式の事例が開示されている(非特許文献3を参照。)。図4は、同一周波数上にMIMO伝送される2組のOFDM信号(OFDM信号1及びOFDM信号2)に組み込まれたパイロットキャリアを分離可能なように、送信された時に、パイロットキャリアが符号分割多重される様に工夫したものであり、図1〜図3と同様に、各信号の伝送フレームの一部を、周波数方向及び時間方向の2次元で表現した図である。図4のOFDM信号におけるキャリア配置と図2に示した標準規格ARIB STD−B33のOFDM信号におけるキャリア配置とを比較すると、パイロットキャリアが周波数方向に一定の間隔で配置され、その間にデータキャリアが配置されている点で同一であるが、1シンボル分の全パイロットキャリアをまとめてパイロットキャリア群とした場合に、図4のキャリア配置は、各シンボルのパイロットキャリア群には、ビット長4の直交符号がシンボル毎に変化するように割り当てられて乗算され、また、4シンボル毎に当該直交符号が繰り返されて乗算されている点で相違する。つまり、シンボル方向で各パイロットキャリアを見ると、その位相が直交符号の変化を反映して非反転または反転して(位相変調されて)いる。図4では、OFDM信号1のパイロットキャリアに直交符号(1,−1,1,−1)をかけ、OFDM信号2のパイロットキャリアに直交符号(1,1,−1,−1)をかけており、1をかけたシンボルのパイロットキャリアの位相は非反転、−1をかけたシンボルのパイロットキャリアの位相は反転している様子がわかる。
この結果、送信するOFDM信号毎に直交符号が異なるように割り当て、同時に送信された複数のOFDM信号中のパイロットキャリアを受信側で相関処理によって分離することにより、送信側と受信側との間の伝搬路を推定することができる。しかし、パイロットキャリアの分離を行うには、受信側は、受信したパイロットキャリアに対して、送信側で信号に乗算した直交符号と同じタイミングで同じ直交符号をかけて復号する必要がある。そこで、同一周波数かつ同時間で複数のOFDM信号を同一の空間上に多重伝送し、パイロットキャリアを時間間欠や直交符号化して伝送するMIMO伝送方式においては、受信側で各パイロットキャリアを抽出して伝搬路推定を行うために、OFDM信号の特定シンボルを検出すること、及びその同期捕捉をすることが必要となる。
一方、地上波デジタル放送及び標準規格ARIB STD−B33のOFDM信号では、パイロットキャリアの他にTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号を挿入する。このTMCC信号のフレーム同期信号を用いることにより、フレーム単位(204シンボルまたは408シンボル)の先頭シンボルを検出することができるが、より短い時間で特定シンボルの検出を行うことはできない。
「TV放送番組素材伝送用可搬型OFDM方式デジタル無線伝送システム」,標準規格,社団法人電波産業会(Association of Radio Industries and Businesses),STD B-33
岡部聡、池田哲臣,「直交偏波を用いたOFDM信号の多重伝送方式に関する検討」,信学技報,電子情報通信学会,TECHNICAL REPORT OF IEICE A-P2003-173,RCS2003-179(2003-11)
古田浩之、池田哲臣,「スタジオカメラ用無線ネットワークのためのMIMO−OFDM用チャネル推定方法の一検討」,信学技報,電子情報通信学会,TECHNICAL REPORT OF IEICE A-P2003-216,RCS2003-222(2003-11)
特開2004−96186号公報
地上波デジタル放送やテレビジョン放送番組素材伝送で使用するOFDM方式において、挿入される復調基準となるパイロットキャリアには、シンボル同期、特に特定シンボルを抽出する機能はない。これらのOFDM方式において、シンボル同期は、ガードインターバル相関を利用して行い、特定シンボルの抽出は、データの復調後のフレーム同期によってフレームの先頭を検出しシンボル位置を計算して行う。
このフレーム同期はTMCC信号を用いて捕捉される。しかし、TMCC信号により同期捕捉を行うには、最大1フレーム(408シンボル)分の信号に対して相関処理を行う必要があり、さらにフレーム同期を完全に捕捉するには複数フレームの信号に対して相関処理を行う必要がある。このため、同期捕捉を行うためには数フレーム(数千シンボル)分の時間が必要となる。
また、図3に示したパイロットキャリアの時間間欠によるMIMO伝送においては、同時に送信するOFDM信号1,2間のパイロットキャリア同士の干渉を防ぐため、時間軸で交互に間欠させた異なるシンボルタイミングでパイロットキャリアを送信している。このため、受信装置は、複数のOFDM信号を混信状態で受信した場合であっても、互いに干渉を受けないパイロットキャリアを受信することができる。しかしながら、複数のOFDM信号を受信する受信装置において、受信したシンボルが何シンボル目であるかを特定できない場合には、送信されたパイロットキャリアがどのOFDM信号のものであるかを認識することができないという問題があった。
また、図4に示したパイロットキャリアの伝送に直交符号を割り当てて符号分割多重するMIMO伝送においても、空間多重されたOFDM信号の各パイロットキャリアを混信させずに伝送することができる。この場合、受信装置は、混信したパイロットキャリアを復号するため、送信時と同じシンボルタイミングで直交符号を乗算する必要がある。そのためにはパイロットキャリアの多重構造を分析し、直交符号の周期を検出する手段が必要となる。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、パイロットキャリアを各シンボルの周波数軸方向に一定の間隔で配置し、データキャリアと共にOFDM方式で送信する場合において、特定のシンボルを短時間にかつ正確に検出可能なパイロットキャリア送受信方法、送信装置及び受信装置を提供することにある。
本発明で開示するパイロットキャリア送受信方法は、振幅及び位相の基準となるパイロットキャリアを各シンボルの周波数軸方向に一定の間隔で配置し、データキャリアと共にOFDM方式で送信する場合の前記パイロットキャリアの送受信方法において、送信装置が、符号系列を用いて生成した複数の異なるパイロットキャリア群のうちから、相互相関値及び自己相関値が自己相関ピークに対して小さい値をとるパイロットキャリア群を選択し、該パイロットキャリア群をシンボルに割り当てて送信し、受信装置が、受信した信号の各シンボルについて周波数軸方向の相関処理を施し、所望のシンボルを検出することを特徴とする。ここで、パイロットキャリア群は、相互相関値及び自己相関値が自己相関ピークに対して小さい値をとるが、この自己相関値は、自己相関ピーク値を含まない概念であり、自己相関ピーク値以外の自己相関値を意味する(以下同じ。)。
本発明で開示するOFDM信号送信装置は、振幅及び位相の基準となるパイロットキャリアを各シンボルの周波数軸方向に一定の間隔で配置し、データキャリアと共にOFDM方式で送信する送信装置と、該送信装置から受信した信号の各シンボルについて周波数軸方向の相関処理を施し、所望のシンボルを検出する受信装置とを備えた通信システムにおける送信装置であって、各シンボルにパイロットキャリア群を挿入するために、符号系列を用いて生成した複数のパイロットキャリア群のうちから、相互相関値及び自己相関値が自己相関ピークに対して小さい値をとるパイロットキャリア群を選択し、該選択したパイロットキャリア群を出力するパイロットキャリア挿入制御部と、該パイロットキャリア挿入制御部により出力されたパイロットキャリア群をシンボルに挿入して割り当て、データキャリアと共に送信する手段とを備えたことを特徴とする。
本発明で開示するOFDM信号送信装置は、前記パイロットキャリア挿入制御部が、各シンボルに挿入する複数のパイロットキャリア群を生成するためのそれぞれの符号系列または複数のパイロットキャリア群、及び前記符号系列またはパイロットキャリア群を各シンボルに割り当てるためのシンボルの順序を記憶する記憶手段と、該記憶手段から読み出した符号系列またはパイロットキャリア群、及びシンボルの順序に従って、相互相関値及び自己相関値が自己相関ピークに対して小さい値をとるパイロットキャリア群をシンボル毎に生成して出力するパイロットキャリア生成出力手段とを備えたことを特徴とする。
本発明で開示するOFDM信号受信装置は、前記OFDM信号送信装置と、該OFDM信号送信装置から送信された信号を受信する受信装置とを備えた通信システムにおける受信装置であって、所望のシンボルを検出するために、受信した信号の各シンボルに含まれるパイロットキャリア群と、前記OFDM信号送信装置により割り当てられた所望のシンボルに含まれるパイロットキャリア群と同じパイロットキャリア群との間で、周波数軸方向の相関演算を施すキャリア相関演算部を備えたことを特徴とする。
本発明で開示するOFDM信号受信装置は、前記キャリア相関演算部が、複数のパイロットキャリア群を生成するためのそれぞれの符号系列または複数のパイロットキャリア群のうちの、少なくとも一つの符号系列またはパイロットキャリア群を記憶する記憶手段と、該記憶手段から一つの符号系列を読み出してパイロットキャリア群を生成し、または前記記憶手段から一つのパイロットキャリア群を読み出すパイロットキャリア生成/読出手段と、所望のシンボルを検出するために、受信した信号の各シンボルに含まれるパイロットキャリア群と、前記パイロットキャリア生成/読出手段により生成または読み出されたパイロットキャリア群との間で、周波数軸方向の相関演算を施す相関演算手段とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、送信装置は、相互相関値及び自己相関値が自己相関ピークに対して小さい値をとるパイロットキャリア群を各シンボルに割り当てて送信し、受信装置は、相関処理により所望のパイロットキャリア群を識別する。これにより、受信装置は、所望のシンボルを検出することができ、そのシンボルの同期捕捉が可能となる。
以下、図面を参照して、本発明のOFDM方式におけるパイロットキャリア送受信方法、それに基づく特定シンボルの識別方法、並びにその方法を用いた送信装置及び受信装置についての実施例を説明する。
まず、OFDM信号の特定シンボルの検出が可能となる相関の小さいパイロットキャリアの生成方法について説明する。電波産業会の標準規格ARIB STD B−33(非特許文献1を参照。)に即したOFDM信号を例にとると、このパイロットキャリアは、以下に示す生成多項式(1)を用いて得られるM系列(Maximum-1ength sequence)をBPSK(2位相変調:Binary Phase Shift Keying)した信号である。
g(x)=x11+x2+1 ・・・ (1)
標準ARIB STD−B33では、フルモードFFT(Fast Fourier Transform)ポイント1024の場合を例にとると、パイロットキャリアの数は1シンボル当り108本である。この108本のパイロットキャリアを生成するために、式(1)を用いて、ある初期値により生成したM系列を8bit間隔で取り出し(これを「8でデシメーションする」という。)、108bitのパイロットキャリアを生成する。
この生成多項式(1)を用いて生成されるM系列符号は、0,1の符号の数がほぼ均一で白色雑音に近い性質を持ち、自己相関値が高く、別のM系列符号との相互相関値が低いという性質がある。したがって、式(1)を用いて生成されるパイロットキャリア群をあるシンボルに割当りてる一方、式(1)とは別のM系列により生成されるパイロットキャリア群を別のシンボルに割り当てることにより、キャリア方向の相関検出を用いてこの2つのシンボルの識別を行うことができる。
次に、この互いに相関の小さい複数組のパイロットキャリア群を各シンボルに割り当ててシンボルを識別する方法について、図5を参照して詳しく説明する。図5は、横軸を時間軸とし、1シンボル単位で互いに相関の小さいパイロットキャリア群P1及びP2を{P1,P2,P2,P2}の順で繰り返して割り当てた例を示す図である。各シンボルのパイロットキャリア群P1,P2において、キャリア方向にパイロットキャリア群P1との相関検出を行った場合、図5に示したように、パイロットキャリア群P1が割り当てられたシンボルでは自己相関ピークが検出される。これに対し、パイロットキャリア群P2が割り当てられたシンボルでは、パイロットキャリア群P1とパイロットキャリア群P2との間の相互相関が小さいため、相関ピークは検出されない。したがって、パイロットキャリア群P1を割り当てたシンボルを4シンボル毎に検出することができる。
尚、送信側で複数のパイロットキャリア群をOFDM信号の各伝送シンボルに割り当てて伝送し、受信側でその相関演算により特定シンボルを識別する際には、受信装置において、相関検出を行う時に既にガードインターバル(GI)相関及びキャリア相関によりパイロットキャリアの配置が識別されているものとする。したがって、パイロットキャリア群を識別することにより特定の伝送シンボルの検出を行うには、位相差0(M系列の自己相関演算において出力がピークをとる条件)の相関値を計算すればよい。この場合、受信した各伝送シンボルに含まれるパイロットキャリア群と、所望の伝送シンボルに含まれるパイロットキャリア群と同じパイロットキャリア群とが同じキャリア番号で相関演算される位相差0の場合において、シンボルに割り当てられる各パイロットキャリア群の相互相関値が、その自己相関ピークと比較して充分に小さい値をとる必要がある。また、前記キャリア相関によるパイロットキャリアの配置を識別するためには、位相差0以外の自己相関値も自己相関ピークと比較して充分に小さい値をとる必要がある。すなわち、パイロットキャリア群を識別することにより特定の伝送シンボルの検出を行うには、パイロットキャリア群の相互相関値及び自己相関値(自己相関ピーク値を含まない)が自己相関ピークに対して充分に小さい値をとる必要がある。
次に、前述の108本のパイロットキャリアの生成方法について、以下の例に従って説明する。標準規格ARIB STD−B33では11次のM系列を用いてパイロットキャリアを生成するが、処理を簡単にするために、この108bitより大きく、かつ最も近い周期を持つ7次の生成多項式を用いてM系列符号(周期127bit)を生成し、連続した108bitを抜き出してパイロットキャリアを生成するものとする。このパイロットキャリアの生成に用いるM系列符号の生成多項式の一例を以下に示す。
g(x)=x7+x3+1 ・・・ (2)
この場合、108bitの値0,1の個数がそれぞれ等しくなるように、M系列符号から連続して抜き出す。また、別のシンボルに割り当てるもう1組のパイロットキャリアとして、以下に示す生成多項式(3)のM系列符号に対しても同様の処理を行い、0の数と1の数とがなるべく均等となるように、連続した108bitを抜き出して生成する。
g(x)=x7+x3+x2+x+1 ・・・ (3)
つまり、生成多項式(2)を用いて生成したM系列符号のうち連続した108bitを抜き出してパイロットキャリア群を生成し、あるシンボルに割り当てる。また、生成多項式(3)を用いて生成したM系列符号のうち連続した108bitを抜き出してパイロットキャリア群を生成し、別のシンボルに割り当てる。
相関演算においては、自己相関ピーク値以外の自己相関値及び相互相関値の絶対値が相関ピーク検出の妨げとなり、検出誤差の原因となる。しかし、生成多項式(2)及び(3)を用いて2組のパイロットキャリア群を生成し、相関演算を行う場合には、自己相関ピーク値以外の自己相関値及び相互相関値の最大振幅値は、自己相関ピークを基準にして、自己相関特性で最大約−16.5dB、相互相関特性で最大約−13.5dBとなるから、十分に自己相関ピークを検出することができる。
以上のように、相互相関の小さい複数のパイロットキャリアを、複数のM系列符号から生成することができる。また、お互いに相関の小さい複数のパイロットキャリア群を各シンボルに割り当て、キャリア方向の相関演算及び相関ピーク検出を行うことにより、特定シンボルを識別することができる。
尚、ここでは相互相関の小さい複数のM系列符号からパイロットキャリア群を生成する方法について説明したが、M系列符号同士を排他的論理和で組み合わせてGold符号や嵩(かさみ)符号等の相関特性の良い符号系列を生成し、この符号系列からパイロットキャリアを生成するようにしてもよい。また、式(1)のように周期Nが1伝送シンボル分のパイロットキャリア数よりも充分に大きいM系列符号から、初期値を違えて相互相関の小さい複数の符号組み合わせを生成し、この組み合わせからパイロットキャリアを生成するようにしてもよい。
以下、前述のパイロットキャリア生成方法を用いて、パイロットキャリアの時間間欠による多重伝送を用いたMIMO伝送を行った場合における、復調時に所望の時間間欠タイミングを検出する方法について説明する。
本実施例は、OFDM信号のフレーム同期をとる場合に、フレーム同期を検出するために要する時間及びフレーム幅を短縮することを可能とするものである。図6は、前述のパイロットキャリア生成方式に従って、M系列符号から生成した互いに相関の小さいOFDM信号のパイロットキャリア群P1,P2を、OFDM信号のシンボルにそれぞれ割り当てた様子を示す図である。送信側は、パイロットキャリア群P1,P2の配置がフレーム内で繰り返しとならないように、あるパターンに合わせて当該配置を割り当て送信する。例えば、図6に示したように、パイロットキャリア群P1,P2の配置は、8次のPN(擬似雑音)系列符号のパターンに合わせて割り当てられ、送信側は、このPN系列符号の{1}の値にパイロットキャリア群P1を、{0}の値にパイロットキャリア群P2を割り当てて送信する。
このとき、受信側は、パイロットキャリア群P1またはP2で相関をとることにより、この符号系列のパターン認識を行う。PN符号系列では、符号の次数分以上のビット数のパターンの繰り返しは行われない。したがって、符号の次数と同じシンボル数(図6では8)だけ連続して相関をとることにより、このPN符号系列のうちのどの部分と相関をとっているかについて判別することができるため、フレーム内の現在のシンボル位置を判別することができる。このため、同期ワードが含まれていないフレームの途中部分の信号を受信している場合においても、この符号系列の次数に相当する分のシンボルの相関をとるだけでフレームの先頭位置を推定することができるので、従来方式のフレーム同期に要する時間を短縮することができる。また、本実施例では、TMCC信号の同期ワードを用いることなくフレーム同期を捕捉しているので、同期ワードをTMCC信号に割り当てる必要がない。したがって、従来の同期ワードの分だけフレーム長を短くすることができる。また、PN符号系列の次数を変えることにより、フレーム長を変更することができる。これにより、次数の小さいPN符号系列を用いることにより、より小さなフレームの長さを選択することができる。
次に、2つのOFDM信号(OFDM信号1及びOFDM信号2)をMIMO伝送する場合を例にとり、時間間欠多重して伝送した各パイロットキャリアから時間間欠のタイミングを検出する方法について説明する。図7は、前述のパイロットキャリア生成方式に従って、M系列符号から生成した互いに相関の小さいOFDM信号のパイロットキャリア群P1,P2を、OFDM信号1とOFDM信号2にそれぞれ割り当てて時間間欠方式により多重した場合のキャリア配置の例を示したものであり、横軸がキャリア単位の周波数方向、縦軸がシンボル単位の時間方向を表し、周波数方向及び時間方向の2次元で表した図である。また、黒丸は奇数シンボルのパイロットキャリア群、黒四角は偶数シンボルのパイロットキャリア群、白丸はデータキャリア群、×印はヌルキャリアを示す。この場合、互いに相関の小さいM系列符号から生成した2組のパイロットキャリア群P1,P2のうち、パイロットキャリア群P1を奇数シンボル、パイロットキャリア群P2を偶数シンボルに割り当てている。
送信装置が、このような伝送フレームを持つOFDM信号1,2をそれぞれ異なる送信アンテナから送信し、受信装置が、各受信アンテナにおいて受信した信号の伝送シンボルに含まれるパイロットキャリア群に対し、特定したいシンボルに含まれて送信されるパイロットキャリア群と同じパイロットキャリア群を用いて、キャリア方向に相関演算を行う。この様子を図8に示す。図8は、横軸を時間軸とし、上記のパイロットキャリア群P1,P2を交互に用いて2つのOFDM信号(OFDM信号1及びOFDM信号2)においてシンボル毎に時間間欠して伝送した場合に、受信装置において観測される各伝送シンボルのパイロットキャリア群を示す図である。受信装置は、時間方向で見ると、OFDM信号1のパイロットキャリア群とOFDM信号2のパイロットキャリア群とをシンボル単位で交互に受信し、この受信信号に対しパイロットキャリア群P1を用いてキャリア方向に相関演算し、パイロットキャリア群P1の相関ピークの検出を行う。この相関ピークが検出されたシンボルがパイロットキャリア群P1を含んだシンボルである。このようなパイロットキャリア送受信方法により、特定シンボル(この実施例では、パイロットキャリア群P1を含む奇数シンボル)の検出を行うことができる。
このように、2組以上の任意の数のOFDM信号を多重伝送したMIMO伝送システムにおいて、パイロットキャリアを時間間欠して伝送した場合には、前述のパイロットキャリア送受信方法を用いることにより、その時間間欠タイミングの検出を行うことができる。また、OFDM信号が1波の場合においても、シンボル単位で複数の相関の小さいパイロットキャリア群の割り当てを行うことにより、特定シンボルの検出を行うことができる。
以下、前述のパイロットキャリア生成方法を用いて、パイロットキャリアに直交符号による位相変調を施してMIMO伝送を行った場合における、復調時にその直交符号の周期の先頭シンボルを検出する方法について説明する。
図9は、MIMO伝送システムにおいて、送信装置が、複数のOFDM信号を同一の周波数帯でまたは周波数帯が重なった状態で、4つのOFDM信号を4つの送信アンテナから送信し、受信装置が4つの受信アンテナで受信する場合のパイロットキャリアの配置例を示す図である。縦軸は1シンボル単位の時間軸、横軸は1キャリア単位の周波数軸を表し、黒丸はパイロットキャリア群P1を、黒四角はパイロットキャリア群P2を、白丸はパイロットキャリア以外のキャリア(データキャリア)を表している。ここでは、簡単のために、パイロットキャリア以外のキャリアを全てデータキャリアとしている。尚、パイロットキャリア群P1(黒丸)とパイロットキャリア群P2(黒四角)は、相互相関値及び自己相関値(自己相関ピーク値を含まない)が自己相関ピークに対して小さい値をとる符号系列によりBPSKした2種類の符号である。ここでは、同一周波数で多重されたパイロットキャリアの識別を行うために、各OFDM信号のパイロットキャリアの時間方向に周期が4チップの直交符号1〜4(図9に示した各OFDM信号1〜4の右側に記載してある。図4ではパイロットキャリアに直接非反転/反転の区別を示したが、ここでは見易さを優先した。)を1チップずつ1シンボル毎に乗算して位相変調を行っている。
この場合、送信装置は、4シンボル周期のパイロットキャリアについて、ある符号系列からパイロットキャリア群P1を選択し、当該周期の先頭シンボルに割り当てる。また、パイロットキャリア郡P1の符号との相関値が非常に低い符号系列からパイロットキャリア群P2を選択し、当該周期の残りの3シンボルに割り当てる。このように、識別したいシンボル(ここでは直交符号の先頭シンボル)のパイロットキャリアと残りのシンボルのパイロットキャリアとを相互相関の小さな2種類以上の異なる符号系列から選択し、それぞれのシンボルに割り当てる。
図9に示したフレーム構造を持つOFDM信号1〜4では、4シンボルを1区間とした場合に、1シンボル目のパイロットキャリア群{P1_1,P1_2,P1_3,P1_4,P1_5,・・・,P1_Np}は、ある符号長の符号系列に含まれる符号P1により構成される。ここで、P1_kにおけるkはパイロットキャリアの番号、Npはパイロットキャリアの総数を示している。尚、本来、kはデータキャリアを含むキャリア番号とするべきだが、ここでは便宜上データキャリアを省略し、パイロットキャリアのみに番号を付けて示した。
また、同一区間のうち、残りの2シンボル目のパイロットキャリア群{P2_1,P2_2,P2_3,P2_4,P2_5,・・・,P2_Np}、3シンボル目のパイロットキャリア群{P3_1,P3_2,P3_3,P3_4,P3_5,・・・,P3_Np}、4シンボル目のパイロットキャリア群{P4_1,P4_2,P4_3,P4_4,P4_5,・・・,P4_Np}の3つのパイロットキャリア群は、P1との相互相関が非常に小さい符号P2により構成される。したがって、P2_k=P3_k=P4_k(k=1,2,3,・・・,Np)となる。尚、符号P2は、プリファードペアなM系列符号、嵩み符号、Gold符号等である。また、パイロット配列及びパイロットキャリアは、OFDM信号1からOFDM信号4まで全て同一である。
そして、送信装置は、前述のパイロット配列及びパイロットキャリアが同一のOFDM信号1からOFDM信号4までのパイロットキャリア群に対して、それぞれ直交符号{1,1,1,1}、{1,-1,-1,1}、{1,1,-1,-1}、{1,-1,1,-1}を時間方向に1bitずつシンボル単位で割り当てる。説明を簡略にするため、ここではパイロットキャリア番号1のパイロットキャリアのみに着目し、4シンボル目までのパイロットキャリア{P1_1,P2_1,P2_1,P2_1}(全てのチャンネルで同一)に対して1シンボル毎に直交符号を1bitずつかけ、OFDM信号1では{P1_1,P2_1,P2_1,P2_1}、OFDM信号2では{P1_1,−P2_1,−P2_1,P2_1}、OFDM信号3では{P1_1,P2_1,−P2_1,−P2_1}、OFDM信号4では{P1_1,−P2_1,P2_1,−P2_1}とする。ここでは、直交符号の成分{1}を乗算した場合は符号はそのまま、直交符号の成分{-1}を乗算した場合はマイナス符号(−)が付いている。送信装置は、上記操作を全てのシンボルかつ全てのOFDM信号1〜4で行い、全てのOFDM信号1〜4の時間同期を行った状態でこのように直交符号化した信号を空間に送信する。
ここで、送信装置の各送信アンテナから受信装置の各受信アンテナまでの伝搬路の伝達関数を仮にh_lm(複素数,l:受信アンテナの番号(l=1,2,・・・,n_t(=4))、m:送信アンテナの番号(m=1,2,・・・,n_r(=4)))とした場合、番号lの受信アンテナで受信する信号に着目すると、各送信アンテナから送信されるOFDM信号のキャリア番号1のパイロットキャリアはh_lmの伝搬路を経た結果、
1シンボル目 {h_11・P1_1+h_12・P1_1+h_13・P1_1+h_14・P1_1}
2シンボル目 {h_11・P2_1−h_12・P2_1+h_13・P2_1−h_14・P2_1}
3シンボル目 {h_11・P2_1−h_12・P2_1−h_13・P2_1+h_14・P2_1}
4シンボル目 {h_11・P2_1+h_12・P2_1−h_13・P2_1−h_14・P2_1}
となる。このパイロットキャリアを受信信号から抽出するために、受信装置は、受信信号からシンボル同期を検出し、FFT処理を施す。上記受信したパイロットキャリアは各シンボルにおいて共通のパイロットキャリアを用いているので、次式のように変形することができる。
1シンボル目 {h_11+h_12+h_13+h_14}・P1_1
2シンボル目 {h_11−h_12+h_13−h_14}・P2_1
3シンボル目 {h_11−h_12−h_13+h_14}・P2_1
4シンボル目 {h_11+h_12−h_13−h_14}・P2_1
したがって、受信装置は、既知の符号P1(=P1_1)または符号P2(=P2_1)を用いて相関をとることにより、現シンボルのパイロットキャリアを構成する符号系列が符号P1であるか符号P2であるかを識別することができる。
この場合に使用する符号P1,P2は自己相関に比べて相互相関が非常に小さいため、受信装置は容易に符号P1,P2の識別を行うことができる。また、シンボルのパイロットキャリア群がP1である場合には、その区間(ここでは4シンボルで1区間としている。)の先頭の伝送シンボルを検出することができる。
受信装置は、検出した区間の先頭から、抽出したいパイロットキャリアに割り当てられた直交符号をシンボル毎に1bitずつ変化させて乗算し、4シンボル分ずつ積算し、復調を行う。例えば、OFDM信号2を送信する送信アンテナとの間の伝搬路(伝達関数h_12)を推定する場合は、次の操作を行う。まず、OFDM信号2に対する直交符号{1,−1,−1,1}を上記の各シンボルの受信信号に乗算し、
1シンボル目 {h_11+h_12+h_13+h_14}・P1_1
2シンボル目 {−h_11+h_12−h_13+h_14}・P2_1
3シンボル目 {−h_11+h_12+h_13−h_14}・P2_1
4シンボル目 {h_11+h_12−h_13−h_14}・P2_1
を得る。このとき、上記相関検出によりシンボル毎に割り当てられているパイロットキャリア群は識別されているので、上記に示した各シンボルの全受信信号を、対応する既知の符号P1(=P1_1)または符号P2(=P2_1)で各々除算すると、
1シンボル目 {h_11+h_12+h_13+h_14}
2シンボル目 {−h_11+h_12−h_13+h_14}
3シンボル目 {−h_11+h_12+h_13−h_14}
4シンボル目 {h_11+h_12−h_13−h_14}
を得る。さらに、4伝送シンボル分の加算平均を求めることにより、必要な伝搬路の伝達関数h_12を求めることができる。
他のOFDM信号を送信する送信アンテナとの間の伝搬路の伝達関数も、同様にして、直交符号の乗算、パイロットキャリアによる複素除算と加算平均を行うことにより求めることができる。また、受信アンテナが異なる場合も同様に求めることできる。
以上を一般的に表すと、次のようになる。まず、伝送シンボルi(i=1,2,3,・・・)、キャリア番号j(j=1,2,3,・・・)において、受信アンテナl(l=1,2,・・・,n_r)で受信される信号r_lは、送信アンテナm(m=1,2,・・・,n_t)で送信されるビット長Wの直交符号w_m[mod(i,W)]、伝搬路応答の伝達関数h_lm[i,j]、パイロットキャリア群P1及びP2(P1,P2は相互相関が非常に小さい符号系列)を用いて次式で表すことができる。
但し、上式(4)及び(5)の受信信号には、簡略化のため雑音を考慮していない。Wシンボルで区分したシンボル周期の先頭(mod(i,W)=1)のときはパイロットキャリアに符号P1を用いた式(4)が、それ以外(mod(i,W)≠1)のときはパイロットキャリアに符号P2を用いた式(5)が適用される。また、式(4)及び(5)の結果は、n_t本の送信アンテナから送信される全てのOFDM信号が、伝搬路応答に応じた配分で混信した状態のまま受信されることを示している。
受信装置は、式(4)及び式(5)の受信信号に対して、符号P1,P2でそれぞれ相関をとると、符号P1で相関をとった場合には、式(4)で受信した伝送シンボルにおいて自己相関ピークを検出し、式(5)で受信した伝送シンボルにおいて相関値がほとんど0となる。一方、符号P2で相関をとった場合には、式(5)で受信した伝送シンボルにおいて自己相関ピークを検出し、式(4)で受信した伝送シンボルにおいて相関値がほとんど0となる。これにより、識別した伝送シンボルに対して、そのシンボルに対応する既知のパイロットキャリアで式(4)及び(5)を除算すると、以下の式(6)を得ることができる。
この受信信号から特定の伝搬路に対応する応答、例えば送信アンテナmと受信アンテナlとの間の伝達関数を求めるためには、符号P1により検出した伝送シンボルを先頭に、単に任意のW個の伝送シンボルi’, i’+1,i’+2,・・・, i’+(w-1)に含まれるパイロットキャリアを抜き出して、その伝搬路に対応した直交符号w_m[1],w_m[2],・・・,w_m[W]と各伝送シンボルにおいて掛け合わせ、加算平均を求める。
つまり、式(7)のように、h_lm[i’+△,j]が分離し、必要な伝達関数を得ることができる。ここで、△は(W−1)/2に最も近い整数とし、W個の伝送シンボルの間でh_lm[i,j]はほとんど変化しないものとする。
以上、パイロットキャリアの位相変調に用いた直交符号の周期の先頭シンボルのみにパイロットキャリア群P1を割り当て、その他のシンボルのパイロットキャリア群に符号P1と相関の小さい符号P2のパイロットキャリア群を割り当てた場合の特定シンボルの検出方法について説明した。これに対し、複数のシンボルに3種類以上のパイロットキャリア群を割り当てる場合や、その種類の異なるパイロットキャリア群を伝送シンボルに割り当てる方法を工夫する場合には、別の効果が得られることも考えられる。
パイロットキャリア群を伝送シンボルに割り当てる方法を工夫する例として、直交符号の周期における先頭シンボルの検出及びキャリア番号の認識を容易に行う場合について以下に説明する。図10は、縦軸が1シンボル単位の時間軸、横軸が1キャリア単位の周波数軸を表し、黒丸はパイロットキャリア群P1を、黒四角はパイロットキャリア群P2を、白丸はパイロットキャリア以外のキャリア(データキャリア)を表した図であり、図9と同様に、パイロットキャリア配置を示している。図10のパイロットキャリア配置と図9のパイロットキャリア配置とを比較すると、図10は、直交符号周期の最後のシンボル以外(最初から第3番目までのシンボル)に全て同じパイロットキャリア群P1を割り当て、最後のシンボルのみに、パイロットキャリア群P1と相関の小さいパイロットキャリア群P2を割り当てている点で相違する。
図11は、図10に示したパイロットキャリア配置の場合における相関検出の様子を示す図である。図11を参照して、横軸は時間軸を示しており、受信装置は、1シンボル単位で互いに相関の小さいパイロットキャリア群P1,P2を{P1,P1,P1,P2}の順で繰り返して割り当てた信号に対し、キャリア方向にパイロットキャリア群P1で相関検出を行う。すなわち、受信装置は、パイロットキャリア群P1の相関をとり、その相関値の立ち上がりを検出することにより、直交符号周期の先頭の検出を行う。この場合、パイロットキャリア群P1は連続しているので、パイロットキャリア群P1のみを用いることにより、前述の操作以前に行う周波数制御のために、パイロットキャリアのキャリア相関を行い、キャリア番号を認識することができる。
以上のように、本実施例3によれば、直交符号を用いて位相変調したパイロットキャリアを送信するMIMO伝送方式において、互いに相関の小さい複数組の異なるパイロットキャリア群を選択し、各シンボルに割り当てることのみにより、パイロットキャリアを復調するために必要な符号周期の先頭シンボルを検出することができる。
次に、前述のOFDM信号のパイロットキャリア送受信方法を実現して特定シンボルの検出を可能にするOFDM方式の送信装置及び受信装置について説明する。ここでは、標準規格ARIB STD−B33によるOFDM信号の送信装置及び受信装置の例について説明する。
図12は、OFDM方式の信号伝送における送信装置1のシステム構成図である。この
送信装置1は、符号化部10、Mapper部20、フレーム構成部30、IFFT部40、GI信号付加部50、直交変調部60及び送信変換部70を備えている。符号化部10は、誤り訂正符号化及びインターリーブ等の符号化を施して送信データ信号を生成する。Mapper部20は、前記送信データ信号に対して直角位相振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)等の変調を行う。フレーム構成部30は、前記変調後の送信データ信号に対して、制御情報が付加されたTMCC信号や、付加情報を伝送するためのAC(Auxiliary Control)信号、復調基準となるパイロットキャリア等の信号を付加すると共に、当該送信データ信号を決められた周波数のフレーム構成に配置する。IFFT部40は、前記フレーム構成された送信データ信号を逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)することにより、周波数軸データから時間軸データに変換する。GI信号付加部50は、前記変換された信号にガードインターバル(GI:Guard Interval)を付加する。直交変調部60は、ガードインターバルが付加された送信データ信号に対し、直交化及び周波数変換を施す。このように、符号化部10、Mapper部20、フレーム構成部30、IFFT部40及びGI信号付加部50を経て生成された送信データ信号であるOFDM信号は、送信変換部70及び送信アンテナ80を介して送信される。
図13は、OFDM方式の信号伝送における受信装置2のシステム構成図である。この
受信装置2は、受信アンテナ110、受信変換部120、直交復調部130、GI信号除去部140、FFT部150、フレーム分離部160、伝搬路推定部170、波形等化部180、De−Mapper部190及び復号化部200を備えている。受信変換部120は、送信装置1から送信されたOFDM信号を、受信アンテナ110を介して受信し、周波数変換を施してIF(Intermediate Frequency)信号に変換し、直交復調部130に出力する。直交復調部130は、前記IF信号に対して直交復調を行う。GI信号除去部140は、送信装置1により付加されたガードインターバルを除去する。FFT部150は、前記ガードインターバルを除去した信号を高速フーリエ変換(FFT)することにより、時間軸データから周波数軸データに変換する。フレーム分離部160は、前記高速フーリエ変換後の信号を、パイロット信号、AC信号、TMCC信号及びデータ信号に分離する。伝搬路推定部170は、フレーム分離部160により分離されたパイロット信号を入力し、当該パイロット信号を用いて送信装置1と受信装置2との間の伝搬路を推定する。波形等化部180は、フレーム分離部160により分離されたデータ信号と、伝搬路推定部170により推定された伝搬路情報とを入力し、当該伝搬路情報に基づいて、伝搬路によって歪んだデータ信号の波形等化を行う。De−Mapper部190は、前記波形等化されたデータ信号に対してQAM等の復調を行う。復号化部200は、インターリーブ復調及び誤り訂正復号を行う。これにより、受信装置2は、送信装置1における符号化部10に入力された元の信号を得ることができる。
次に、本発明のパイロットキャリアの送受信方法を実現する送信装置について説明する。図14は、パイロットキャリア挿入制御部90を付加したOFDM信号の送信装置1−1におけるシステム構成図である。図14の送信装置1−1と図12に示した標準規格ARIB STD−B33によるOFDM方式の信号伝送における送信装置1とを比較すると、図14の送信装置1−1は、図12の送信装置1にパイロットキャリア挿入制御部90を接続した構成となっている。尚、図14において、図12と共通する部分には同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。このパイロットキャリア挿入制御部90は、フレーム構成部30に接続され、フレーム構成部30がパイロットキャリアを付加しフレーム構成するためのパイロットキャリアの送出を制御する。すなわち、パイロットキャリア挿入制御部90は、複数のパイロットキャリア群のうちから、各シンボルに割り当てる(挿入する)ための相互相関の小さい異なるパイロットキャリア群を選択し、当該パイロットキャリア群をフレーム構成部30に出力する。
図15は、図14に示したパイロットキャリア挿入制御部90の第1の構成例である。このパイロットキャリア挿入制御部90−1は、少なくともパイロットキャリア構成・順序記憶部91及びパイロットキャリア生成部92を備えて構成されている。図14及び15に示したように、パイロットキャリア挿入制御部90の出力はフレーム構成部30の入力に接続されている。パイロットキャリア構成・順序記憶部91は、各シンボルに挿入するための複数組のパイロットキャリア群の構成パターン、及び各パイロットキャリア群を挿入するためのシンボルの順序を記憶しており、これらの構成パターン及びシンボル毎の順序をパイロットキャリア生成部92に伝達する。パイロットキャリア生成部は、パイロットキャリア構成・順序記憶部91から伝達された各パイロットキャリア群の構成パターン及び各パイロットキャリア群を挿入するシンボルの順序に従って各シンボルのパイロットキャリア群を生成し、フレーム構成部30に出力する。
尚、パイロットキャリア構成・順序記憶部91が記憶する複数組のパイロットキャリア群の構成パターンを、複数組のパイロットキャリア群にBPSKするための複数組の符号系列としてもよい。この場合、パイロットキャリア構成・順序記憶部91に代わる符号系列・順序記憶部は、複数の符号系列及びシンボルの順序を記憶しており、パイロットキャリア生成部92は、前記符号系列・順序記憶部から符号系列及びシンボルの順序を読み出し、シンボル毎に異なる符号系列を生成する符号系列生成部と、当該符号系列をパイロットキャリア群に変調するBPSK−Mapper部とから構成される。
図16は、図14に示したパイロットキャリア挿入制御部90の第2の構成例である。このパイロットキャリア挿入制御部90−2は、図15に示したパイロットキャリア挿入制御部90−1とは別の構成を有し、フレーム構成部30に出力するパイロットキャリア群を切り替える点で異なる。パイロットキャリア挿入制御部90−2は、異なるパイロットキャリア群をそれぞれ記憶しているパイロットキャリア構成記憶部93−1〜93−n、当該パイロットキャリア構成記憶部93−1〜93−nにそれぞれ対応してパイロットキャリア群を読み出す読み出し制御回路94−1〜94−n、パイロットキャリア群のシンボル毎の順序を記憶しているパイロットキャリア順序記憶部95、読み出し制御回路94−1〜94−nからの出力(パイロットキャリア群)を切り替えるための切り替え回路制御信号を出力する切替制御回路96、及び、読み出し制御回路94−1〜94−nからの出力(パイロットキャリア群)を切り替える切替回路97を備えて構成されている。以下、動作について説明する。まず、読み出し制御回路94−1〜94−nは、当該読み出し制御回路94−1〜94−nの制御により、全シンボルに挿入するための全てのパイロットキャリア1〜nを、パイロットキャリア構成記憶部93−1〜93−nのシフトレジスタ(またはメモリ)からそれぞれ読み出して生成する。次に、切替制御回路96は、パイロットキャリア順序記憶部95からパイロットキャリア群のシンボル毎の順序を読み出し、当該順序に従ってパイロットキャリア群を指定し、切り替え回路制御信号を切替回路97に出力する。切替回路97は、当該切り替え回路制御信号により指定されたパイロットキャリア群を選択し、当該パイロットキャリア群を出力する。これにより、各シンボルにそれぞれ挿入したい複数のパイロットキャリア群を割り当てることができる。
尚、パイロットキャリア構成記憶部93−1〜93−nがそれぞれ記憶するパイロットキャリア群を、パイロットキャリア群にBPSKするための符号系列としてもよい。この場合、パイロットキャリア構成記憶部93−1〜93−nに代わるそれぞれの符号系列記憶部は、符号系列を記憶しており、読み出し制御回路94−1〜94−nは、前記符号系列記憶部から符号系列をそれぞれ読み出し、当該符号系列をパイロットキャリア群に変調する。
次に、本発明のパイロットキャリアの送受信方法を実現する送信装置から当該パイロットキャリアを含むOFDM信号を受信し、特定したいシンボルの検出を実現する受信装置について説明する。図17は、キャリア相関演算部210を付加したOFDM信号の受信装置2−1における第1のシステム構成図である。図17の受信装置2−1と図13に示した受信装置2とを比較すると、図17の受信装置2−1は、図13の受信装置2にキャリア相関演算部210を接続した構成となっている。尚、図17において、図13と共通する部分には同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。このキャリア相関演算部210は、当該入力がフレーム分離部160の出力に接続され、フレーム分離部160において伝送シンボル毎にデータキャリアと分離されたパイロットキャリア群を入力し、当該パイロットキャリア群と、所望の伝送シンボルに含まれて送信されるパイロットキャリア群と同じパイロットキャリア群(受信装置2−1で再現されたパイロットキャリア群)との間でキャリア方向の相互相関値を計算する。この場合、図14に示した送信装置1−1が、図5に示したように、パイロットキャリア群{P1,P2,P2,P2,・・・}によりOFDM信号を送信したとすると、受信装置2−1のキャリア相関演算部210は、所望の伝送シンボルが含まれるパイロットキャリア群P1との相関演算を行い、相関ピークを検出する。尚、伝搬路による位相の変化を考慮して相関ピークは絶対値とする。
図18は、キャリア相関演算部210を付加したOFDM信号の受信装置2−2における第2のシステム構成図である。図18の受信装置2−2と図17に示した受信装置2−1とを比較すると、図18の受信装置2−2は、キャリア相関演算部210をFFT部150に接続した構成であるのに対し、図17の受信装置2−1は、キャリア相関演算部210をフレーム分離部160に接続した構成である点で相違する。尚、図18において、図17及び図13と共通する部分には同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。ここで注意すべき点は、所望の伝送シンボルに含まれて送信されるパイロットキャリア群と同じパイロットキャリア群が、OFDM信号の全信号をフレーム構成したときと同じキャリア番号に配置され、データキャリアが配置された位置のキャリアが、ヌルキャアとして配置される場合に、受信信号と相互相関を行う信号は、前記パイロットキャリア群及びヌルキャリアから構成された信号である点である。つまり、キャリア相関演算部210は、パイロットキャリア群が配置された受信信号をFFT部150から入力し、当該受信信号と、所望の伝送シンボルに含まれて送信されるパイロットキャリア群が配置された前記信号との間において、パイロットキャリア群についてキャリア方向の相互演算を行う。
図19は、図17及び18に示したキャリア相関演算部210の構成例である。このキャリア相関演算部210は、各シンボルに2種類以上のパイロットキャリア群を挿入したOFDM信号を送信装置1−1から受信し、当該OFDM信号から特定したいシンボルを検出する機能を有し、パイロットキャリア構成記憶部211、相互相関演算部212及び自乗検波部213を備えて構成されている。パイロットキャリア構成記憶部211は、送信装置1−1により所望の伝送シンボルに割り当てて送信されるパイロットキャリア群と同じ既知のパイロットキャリア群を記憶している。相互相関演算部212は、パイロットキャリア構成記憶部から所望の伝送シンボルに含まれるパイロットキャリア群を読み出し、当該パイロットキャリア群と、受信したOFDM信号からフレーム分離部160を経て抜き出した各伝送シンボルのパイロットキャリア群(図17)、またはFFT部150により高速フーリエ変換されて出力された周波数軸データの信号におけるパイロットキャリア群(図18)との間で相互相関値を計算する。自乗検波部213は、相互相関演算部212により計算された相互相関値の絶対値を検波するために自乗検波する。
(システム例1)
以下、本発明のOFDM方式におけるパイロットキャリア生成方法に基づいて作成した複数のOFDM信号を送信するMIMO伝送システムにおいて、キャリア相関演算部210を備えてタイミング制御を行う事例について説明する。図20は、MIMO伝送システム3の概要図である。MIMO伝送システム3は、m本の送信アンテナTx_1〜Tx_mを備えた送信装置1−2と、n本の受信アンテナRx_1〜Rx_nを備えた受信装置2−3とから構成される。この送信装置1−2であるMIMO送信部は複数のOFDM送信機を含み、それぞれのOFDM送信機には、図14〜図16に示したように、フレーム構成部30にパイロットキャリア挿入制御部90,90−1,90−2が接続されている。
図21は、図20に示したMIMO伝送システム3の受信装置2−3に含まれるOFDM受信機による伝搬路推定部170周辺の動作を説明する概要図である。この受信装置2−3は、受信アンテナRx_1〜Rx_nの数分のOFDM受信機を含み、フレーム分離部160(160−1〜160−I)、伝搬路推定部170(170−1〜170−I)、波形等化部180及びキャリア相関演算部210を備えている。波形等化部180は、行列化回路180−1、逆行列化回路180−2、ベクトル化回路180−3及び行列乗算回路180−4を備えている。尚、図21には、伝搬路推定部170周辺の動作を説明するために必要な処理部だけが示されており、他の処理部は省略してある。
次に動作について説明する。フレーム分離部160は、受信アンテナRx_1〜Rx_nが受信したOFDM信号のパイロットキャリアを抽出し、伝搬路推定部170は、相関ピークが検出された特定シンボルのタイミング信号をキャリア相関演算部210から入力し、全送信アンテナTx_1〜Tx_mとの間の経路について伝搬路推定を行う。そして、行列化回路180−1は、伝搬路推定部170により推定された全ての伝搬路特性を入力し、行列化する。逆行列演算回路180−2は、行列化回路180−1により行列化された伝搬路特性を逆行列に変換する。一方、フレーム分離部160は、受信アンテナRx_1〜Rx_nが受信したOFDM信号のデータキャリアを抽出し、ベクトル化回路180−3は、当該データキャリアをベクトル化する。そして、行列乗算回路180−4は、逆行列演算回路180−2により逆行列に変換された伝搬路特性と、ベクトル化回路180−3によりベクトル化されたデータキャリアとを掛け合わせ、De−Mapper部190に出力する。これにより、波形等化部180は、伝搬路において互いに干渉を受けたデータキャリアを干渉除去及び分離することができ、当該データをDe−Mapper部190に出力することができる。
このように、MIMO伝送システム3では、伝搬路推定に必要なパイロットキャリアを抽出するために、キャリア相関演算部210が、各OFDM受信機のパイロットキャリアを入力して特定シンボル(例えば、直交符号によりパイロットキャリアが位相変調されている場合にはその先頭シンボル)のタイミング検出を行い、この特定シンボルのタイミングを各OFDM受信機の伝搬路推定部170に出力するようにした。これにより、伝搬路推定部170は、各経路の伝搬路特性を正しいシンボルで取得することができる。
尚、このMIMO伝送システム3において、パイロットキャリアの間欠パイロット方式を用いた場合は、パイロットキャリアは図3に示したようなキャリア配置で送信され、本発明の開示する特定シンボルの検出機能により検出した特定シンボルを元に、受信したパイロットキャリア(干渉なし)の間欠タイミングを認識して伝送路特性を得ることができる。また、パイロットキャリアの直交符号化を用いた場合には、パイロットキャリアは図4に示したようなパイロットキャリア配置で送信され、本発明の開示する特定シンボルの検出機能により検出した特定シンボルを元に、直交符号の先頭シンボルを認識し、受信したパイロットキャリアから前述の式(4)〜式(7)で示した手法により復調を行って伝送路特性を得ることができる。
(システム例2)
以下、本発明のパイロットキャリアの送受信方法に基づいて作成した複数のOFDM信号を同時に送信する偏波多重伝送方式において、キャリア相関演算部210を備えてタイミング制御を行う事例について説明する。図22は、偏波多重伝送システムの概要図である。この偏波多重伝送システム4は、送信装置1−3及び受信装置2−4から構成される。送信装置1−3は、S/P(Serial/Parallel)部、パイロットキャリア挿入制御部90、OFDM送信機100−1,100−2、合成部102及び送信アンテナ80を備えている。また、受信装置2−4は、受信アンテナ110、分波部240、キャリア相関演算部210、OFDM受信機230−1,230−2、干渉除去部250及びP/S(Parallel/Serial)部を備えている。送信装置1−3のOFDM送信機100−1,100−2は、図12に示した送信装置1の符号化部10、Mapper部20、フレーム構成部30、IFFT部40、GI信号付加部50、直交変調部60及び送信変換部70を備えている。また、受信装置2−4のOFDM受信機230−1,230−2は、図13に示した受信装置2の受信変換部120、直交復調部130、GI信号除去部140、FFT部150、フレーム分離部160、伝搬路推定部170、波形等化部180、De−Mapper部190及び復号化部200を備えている。
次に、動作について説明する。送信装置1−3のS/P部101は、伝送するデータをシリアル/パラレル変換して2組に分割し、OFDM送信機100−1,100−2は、当該分割されたデータをOFDM信号1及びOFDM信号2にそれぞれ変換する。合成部102は、OFDM送信機100−1,102によりそれぞれ変換されたOFDM信号1,2を、H偏波とV偏波に乗せて足し合わせ、この2信号を同時に同周波数で送信アンテナ80から送信する。また、受信装置2−4の分波部240は、受信アンテナ110が受信した信号をH偏波及びV偏波に分割し、OFDM受信機230−1,230−2は、分波部240により分割されたそれぞれのOFDM信号1,2を復調する。P/S部260は、OFDM受信機230−1,230−2により復調されたOFDM信号1,2をパラレル/シリアル変換して元の信号を得る。
ここで、この偏波多重伝送システム4のOFDM受信機230−1,230−2には、偏波同士の干渉を除去するために、そのFFT部(図13に示した受信装置2のFFT部150と同等)に干渉除去部250が接続されている。偏波多重伝送方式の場合、受信側では交差偏波特性(偏波同士が直交していることを利用して、両偏波に乗せた信号を互いに干渉無く分離することができる特性)をある程度得ることができる。したがって、例えば、OFDM信号1を受信するH偏波受信機(OFDM受信機230−1)は、V偏波で伝送されたOFDM信号2がわずかに混じった状態でOFDM信号1を受信する。そのため、OFDM受信機230−1は、OFDM信号1を希望波(D)、OFDM信号2を非希望波(U)としたときに高いDU比を得ることができるので、ある程度の誤差範囲内で非希望波であるOFDM信号2を復調することができる。同様に、OFDM信号2を受信するV偏波受信機(OFDM受信機230−2)は、H偏波で伝送されたOFDM信号1がわずかに混じった状態でOFDM信号2を受信する。そのため、OFDM受信機230−2は、OFDM信号2を希望波(D)、OFDM信号2を非希望波(U)としたときに高いDU比を得ることができるので、ある程度の誤差範囲内で非希望波であるOFDM信号1を復調することができる。干渉除去部250は、前述の手法により取得した非希望波であるOFDM信号1及びOFDM信号2を互いの受信信号における干渉波のレプリカとし、始めに受信した信号からこのレプリカを減算することにより、簡易的な干渉除去を行う。その上で、再度、OFDM受信機230−1,230−2の伝搬路等化部が伝搬路等化を行う。尚、この伝搬路等化部は、図13に示した伝搬路推定部170及び波形等化部180により構成される(図の簡略化のために、伝搬路等化部と1つにまとめて記した)。
また、この偏波多重伝送システム4による偏波多重伝送方式では、伝搬路推定に必要なパイロットキャリアを抽出するために、各OFDM送信機100−1,100−2のフレーム構成部にパイロットキャリア挿入制御部90が接続され、干渉除去部250及び各OFDM受信機230−1,230−2の伝搬路等化部にキャリア相関演算部210が接続されている。このキャリア相関演算部210は、各OFDM受信機230−1,230−2のパイロットキャリアを入力して特定シンボル(例えば直交符号によりパイロットキャリアが位相変調されている場合にはその先頭シンボル)のタイミング検出を行う。そして、干渉除去部250及びOFDM受信機230−1,230−2の伝搬路等化部は、この特定シンボルのタイミングをキャリア相関演算部210から入力する。これにより、各経路の伝搬路特性を正しいシンボルで取得することができる。
以上のように、本発明の実施例によれば、復調基準となるパイロットキャリアをデータキャリアと同一のシンボルで伝送するOFDM方式の信号伝送であって、当該パイロットキャリアを周波数方向に一定の間隔で配置するOFDM方式の信号伝送において、送信装置1−1が、OFDM信号の復調基準となる各シンボルのパイロットキャリア群を生成する符号系列に、相互相関が小さい2組以上の複数の異なる符号系列から選択し、パイロットキャリア群を生成して各シンボルに割り当てるようにした。また、受信装置2−1,2−2は、符号の相関特性を用いて各シンボルに割り当てたパイトロットキャリア群の符号系列を識別するようにした。これにより、特定のシンボルを検出することが可能となる。したがって、新しく信号の情報量を増やすことなく既存のパイロット信号を変更するだけで、TMCC信号を用いたフレーム同期捕捉に要する時間よりも短い時間でフレーム同期を行うことができる。また、TMCCの同期ワードを用いることなくフレーム同期をとることができるから、TMCC信号に同期ワードを割り当てる必要がなく、フレームについて同期ワード数分だけ短縮することが可能となる。
また、本発明の実施例によれば、復調基準となるパイロットキャリアをデータキャリアと同一のシンボルで伝送するOFDM方式の信号伝送であって、当該パイロットキャリアを周波数方向に一定の間隔で配置するOFDM方式の信号伝送において、複数のOFDM信号を同一周波数上に同時に伝送するMIMO伝送方式に適用するために、時間間欠でパイロットキャリアを送信する場合にも、送信装置1−2が、OFDM信号の各シンボルの復調基準となるパイロットキャリア群を生成するための符号系列を、相互相関が小さい2組以上の複数の異なる符号系列から選択し、パイロットキャリア群を生成して各シンボルに割り当てるようにした。また、受信装置2−3は、符号の相関特性を用いて各シンボルに割り当てたパイトロットキャリア群の符号系列を識別するようにした。これにより、各パイロットキャリアの間欠タイミングを検出できる、シンボル同期を正確にとることが可能となる。
また、本発明の実施例によれば、復調基準となるパイロットキャリアをデータキャリアと同一のシンボルで伝送するOFDM方式の信号伝送であって、当該パイロットキャリアを周波数方向に一定の間隔で配置するOFDM方式の信号伝送において、複数のOFDM信号を同一周波数上に同時に伝送するMIMO伝送方式に適用するために、送信装置1−2が、直交符号を用いて位相変調されたパイロットキャリアを送信する場合にも、各OFDM信号の各シンボルの復調基準となるパイロットキャリア群を生成するための符号系列を、互いに相互相関が小さい2組以上の異なる符号系列から選択し、各シンボルに割り当てるようにした。また、受信装置2−3が、符号の相関特性を用いて各シンボルに割り当てたパイロットキャリア群の符号系列を識別するようにした。これにより、各パイロットキャリア群にかけた直交符号の周期の先頭となるシンボルを検出し、復号に必要なシンボル同期を正確にとることが可能となる。
地上波デジタル放送のパイロットキャリア配置を示した図である。
標準規格ARIB STD−B33のパイロットキャリア配置を示した図である。
時間軸に1シンボルずつ間欠させたパイロットキャリア多重伝送方式における パイロットキャリア配置を示した図である。
符号分割多重方式を用いたパイロットキャリア多重伝送方式におけるパイロットキャリア配置を示した図である。
各シンボルに互いに相関の小さいパイロットキャリアを割り当て、キャリア方向の相関演算及び相関ピーク検出により、特定シンボルを検出している様子を示した図である。
8次のPN系列符号に従ってシンボル毎にパイロットキャリア群を割り当てて送信した場合に、パイロットキャリア群P1を用いて相関演算を行い、パイロットキャリア群P1を含むシンボルの検出を行った様子を示した図である。
相互相関の小さい2組のパイロットキャリア群を各シンボルに交互に割り当て、OFDM信号1では奇数シンボルに、OFDM信号2では、偶数シンボルにパイロットキャリアを挿入して送信した場合のOFDM信号の様子を示した図である。
相互相関の小さい2組のパイロットキャリア群を各シンボルに交互に割り当て、OFDM信号1とOFDM信号2とで交互にパイロットキャリアを挿入して送信した場合に、パイロットキャリア群P1を用いて相関演算を行い、パイロットキャリア群P1を含むシンボルを検出した様子を示した図である。
相互相関の小さい2組の符号をパイロットキャリア群に割り当て、直交符号分割多重したMIMO伝送システムのパイロットキャリア配置を示した図である。
MIMO伝送システムにおいて、相互相関の小さいシンボル検出用パイロットキャリアの配置を工夫した例を示した図である。
各シンボルに相関の小さい2組のパイロットキャリアを割り当てる場合において、検出したいシンボルに割り当てたパイロットキャリアと異なるパイロットキャリアを用いた相関検出によりシンボルの識別を行った様子を示した図である。
標準規格ARIB STD-B33によるOFDM信号の送信装置のシステム構成図である。
標準規格ARIB STD-B33によるOFDM信号の受信装置のシステム構成図である。
パイロットキャリア挿入制御部を付加したOFDM信号の送信装置におけるシステム構成図である。
パイロットキャリア挿入制御部の第1の構成を示した図である。
パイロットキャリア挿入制御部の第2の構成を示した図である。
キャリア相関演算部を付加したOFDM信号の受信装置における第1のシステム構成図である。
キャリア相関演算部を付加したOFDM信号の受信装置における第2のシステム構成図である。
キャリア相関演算部の構成例を示した図である。
本発明のパイロットキャリア送受信方法を実現するMIMO伝送システムの概要図である。
MIMO伝送システムの受信装置に含まれるOFDM受信機の概要図である。
本発明のパイロットキャリア送受信方法を実現するパイロットキャリア挿入制御部及びキャリア相関演算部を接続した偏波多重伝送システムの概要図である。
符号の説明
1,1−1,1−2 送信装置
2,2−1,2−2,2−3,2−4 受信装置
3 MIMO伝送システム
4 偏波多重伝送システム
10 符号化部
20 Mapper部
30 フレーム構成部
40 IFFT部
50 GI信号付加部
60 直交変調部
70 送信変換部
80 送信アンテナ
90,90−1,90−2 パイロットキャリア挿入制御部
91 パイロットキャリア構成・順序記憶部
92 パイロットキャリア生成部
93−1〜93−n パイロットキャリア構成記憶部
94−1〜94−n 読み出し制御回路
95 パイロットキャリア順序記憶部
96 切替制御回路
97 切替回路
100−1,100−2 OFDM送信機
101 S/P部
102 合成部
110 受信アンテナ
120 受信変換部
130 直交復調部
140 GI信号除去部
150 FFT部
160,160−1〜160−I フレーム分離部
170,170−1〜170−I 伝搬路推定部
180 波形等化部
180−1 行列化回路
180−2 逆行列演算回路
180−3 ベクトル化回路
180−4 行列乗算回路
190 De−Mapper部
200 復号化部
210 キャリア相関演算部
211 パイロットキャリア構成記憶部
212 相互相関演算部
213 自乗検波部
230−1,230−2 OFDM受信機
240 分波部
250 干渉除去部
260 P/S部