JP2006152207A - 電磁波シールドゴム材 - Google Patents

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Abstract

【課題】カーボン系充填剤を配合した電磁波シールドゴム体であって、電磁波シールド性に優れたものを提供する。
【解決手段】電磁波シールドゴム材は、基材ゴムの原料ゴム100重量部に対して、導電性カーボンブラックが5重量部以上60重量部以下の範囲および/または金属被覆炭素繊維が20重量部以上50重量部以下の範囲で含有してなることを特徴とする。これによって、ゴム体は導電性を有し、電磁波シールド性が増加されることになる。また、導電性カーボンブラックがケッチェンブラックであり、金属被覆炭素繊維がニッケル被覆炭素繊維にすることで、電磁波シールド性がより高くなり、しかも成形時の加工性に優れる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電磁波シールドゴム材に関する。更に詳しくは、カーボン系充填剤を配合した電磁波シールドゴム材に関する。
電磁波から電子機器等をシールド(遮蔽)するために、電磁波シールド材料で電子機器等を被覆することが行われている。電磁波シールド材料が有する電磁波シールド性能に関しては、周波数範囲30MHz〜1000MHzにおける電磁波シールドの性能レベルとして、0〜10dBでは電磁波シールド性能がほとんどなく、10〜30dBで最小限度のシールド効果ありで、電磁波シールドといえる対応が可能となる。そして、30〜60dBで平均的なシールド効果を有し、中位の障害への対応が可能であるとされ、60〜80dBで平均以上のシールド効果を有し、ほとんどの障害に対応が可能であり、80dB以上で高性能なシールド効果を有し、最も優れた電磁波シールドを有すると分類されている。このことにより、電磁波シールド材として用いられるためには、30dB以上のシールド性を有する必要があるといえる。
ここで、一般的に電磁波シールド用材料としては、従来から、アルミニウム板等の金属板を使用する方法、ステンレス鋼繊維製金網等の金属繊維製金網を用いる方法、メッキ、塗装などを筐体に施す方法などがあり、用途やコストに応じて使い分けられている。
しかしながら、金属板は重く、またスペース効率の点で問題があり、シールド効果は高いものの、シールド形状に対する適合性や小型化、軽量化の用途には最適とはいえず、また、金属繊維製金網を用いる方法は、シールド形状への対応性は良好であるものの、耐久性、コストの点からみて十分ではない場合があり、一方、メッキや塗装に関しては、軽量化などには問題がないものの、リサイクル性やコストの点からは最適ではない。
このような問題を解決するために、プラスチック材料やゴム材料にカーボンブラック、黒鉛、炭素繊維などを含有させて、導電性を付与した電磁波シールド材料が開示されている(例えば、特許文献1〜特許文献4)。このような電磁波シールド材料は、素材にプラスチックやゴムを使用しているために、金属に比べて軽く、加工性、量産性に優れ、比較的安価に製造できるという利点がある。
特開2002−167474号公報 特開平10−298355号公報 特開昭61−200604号公報 特開昭59−217737号公報
しかしながら、これらの電磁波シールド材料は、目的とする電磁波シールド性が充分でないという問題があった。このようなことから、本発明の目的は、カーボン系充填剤を配合した電磁波シールドゴム材であって、電磁波シールド性に優れたものを提供することにある。
以上の課題に鑑み、本発明においては、ゴム基材に金属酸化物で被覆した炭素繊維や、窒素吸着比表面積(以下、比表面積と称する)およびn−ジブチルフタレート(DBP)吸油量(以下、DBP吸油量と称する)が大きいカーボンブラックを配合することで、電磁波シールド性が向上することを見出して、本発明を完成するに至った。
より具体的には、本発明は次のような電磁波シールドゴム材を提供する。
(1) 基材ゴムの原料ゴム100重量部に対して、導電性カーボンブラックが5重量部以上60重量部以下の範囲および/または金属被覆炭素繊維が20重量部以上50重量部以下の範囲で含有してなる電磁波シールドゴム材。
本発明によれば、導電性カーボンブラックが5〜60重量部および/または金属被覆炭素繊維が20〜50重量部含有されているので、シールド効果が増加され、電磁波シールド性が高いものとなる。尚、導電性カーボンブラックや金属被覆炭素繊維が上記の範囲よりも多く添加することも可能であるが、これ以上多く添加しても、シールド効果は増加せずに下がる傾向があるため、コスト面から好ましくないことになる。ここで、基材ゴムとは、原料ゴムにゴムを加硫させるための加硫剤や加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤などを配合したゴム組成物のことをいう。
(2) 前記導電性カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が200m/g以上、n−ジブチルフタレート(DBP)吸油量が150cm/100g以上である(1)に記載の電磁波シールドゴム材。
本発明によれば、窒素吸着比表面積が200m/g以上、n−ジブチルフタレート吸油量(以下、DBP吸油量と称する)が150cm/100g以上であるので、ゴムとの親和性が高く、ゴムへの分散性に優れるとともに、添加された基材ゴムの加工性も優れることになる。また、このカーボンブラックが添加された基材ゴムの体積固有抵抗値が10-5〜103(Ω・cm)程度となり、導電性に優れることになる。
(3) 前記導電性カーボンブラックは、ケッチェンブラックである(1)または(2)に記載の電磁波シールドゴム材。
ケッチェンブラックは、外側に薄い黒鉛結晶が寄り集まったようないわば“中空のシェル状粒子”が存在しているので、高表面積、高吸油量を可能とし、高い導電性能を発揮できるので、従来のカーボンブラックに比較して少量の添加でよく、また、混練による導電性の低下が少ない。
(4) 前記金属被覆炭素繊維は、直径が3μmから10μm、長さ2mmから12mmであって、金属含有量が前記炭素繊維の質量に対して1質量%から100質量%の金属酸化物で被覆してなる(1)に記載の電磁波シールドゴム材。
金属被覆炭素繊維は、炭素繊維の表面に金属含有量が炭素繊維の質量に対して1〜100質量%、好ましくは20〜50質量%の金属酸化物で被覆されているので、導電性に優れることになる。また、繊維の直径が3〜10μm、長さ2〜12mmであるので、混練性や補強効果の点で優れる。尚、取扱い性を良くするために、公知の強化繊維に採用されている集束剤処理を行って炭素繊維フィラメントを集束して形成したストランドを2〜12mm程度の長さにカットされたチョップドファイバーであるのが好ましい。
(5) 前記金属酸化物は、ニッケルフェライトである(4)に記載の電磁波シールドゴム材。
本発明によれば、ニッケルフェライトは磁性酸化物であるので、これで被覆した炭素繊維は、特に電磁波吸収機能を発揮することになる。
(6) 前記基材ゴムに少なくとも導電性カーボンブラックおよび/または金属被覆炭素繊維を混練し、該導電性カーボンブラックおよび/または金属被覆炭素繊維を混練した前記基材ゴムをシート体に成形し、その後、該シート体を列理方向が互いに直角になるようにして重ねて熱プレスで加硫してなる(1)から(5)いずれか記載の電磁波シールドゴム材。
本発明によれば、炭素繊維が網目状に配向されることになるので、一方向に配向したものに比べてシールド効果が高められる。すなわち、炭素繊維等を添加した混練物は、カレンダーロール機や押出機等で成形されるが、押出される際に、炭素繊維が列理方向に配向することになるので、加硫する前の成形されたシート体を列理方向が直交するようにして複合して加硫することで、得られた電磁波シールドゴム材は炭素繊維が網目状に配向されることになる。ここで、列理とは、基材ゴムに配合された繊維等が押出成形やカレンダー成形等での機械的処理で、一方向に配向して異方向性を示すことを言う。また、列理方向とは、基材ゴムを成形する際の流れ方向(押出し方向)で、繊維等が配向した方向のことをいう。
本発明の電磁波シールドゴム材は、ゴム基材の原料ゴム100重量部に対して、導電性カーボンブラックを5〜60重量部および/または金属被覆炭素繊維を20〜50重量部を含有しているので、高い電磁波シールド性を有するという効果がある。特に、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が200m/g以上、DBP吸油量が150cm/100g以上であることにより、又、前記金属被覆炭素繊維が直径3〜10μm、長さ2〜24mmであって、該炭素繊維の質量に対して1〜100質量%の金属酸化物で被覆されたものであることにより、電磁波シールド性をより一層向上させることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の電磁波シールドゴム材は、基材ゴムの原料ゴムに導電性カーボンブラックおよび/または金属被覆炭素繊維を添加したものである。基材ゴムの原料ゴムとしては、例えば天然ゴムのほか、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、エチレンープロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、水素添加ニトリルゴム、シリコンゴムなどの合成ゴム単独、もしくはこれらのゴムを各種変性処理にて改質したものが挙げられる。また、これらの原料ゴムは単独で使用するほか、複数をブレンドして用いることができる。そして、原料ゴムには、それの100重量部に対して、導電性カーボンブラックが5〜60重量部および/または金属被覆炭素繊維が20〜50重量部を含有して用いられる。
導電性カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが挙げられ、特にBET法により窒素吸着量から算出された比表面積(試験法;ASTM D3037‐93)が200m/g以上、好ましくは200〜1500m/g、より好ましくは800〜1300m/gであり、DBP吸油量(試験法;ASTM D2414‐96)が150cm/100g以上、好ましくは200〜600cm/100g、より好ましくは350〜500cm/100gである。このような導電性カーボンブラックを用いることにより、加工性に優れたゴム組成物を得ることができる。上記物性を充足する導電性カーボンブラックは市販されており、例えばライオン・アクゾー社製のケッチェンブラックなどを使用することができる。その他に、ゴムを加硫させるための加硫剤や加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤などの従来からゴムの配合剤として使用されていたものを、機械物性、成形性および表面外観など損なわない範囲で、適宜配合することができる。
本発明における導電性カーボンブラックの配合量は、成形時の流動性、得られる成型品の比重および強度、シールド性の観点から、基材ゴムの原料ゴム100重量部に対して、5〜60重量部であることが好ましい。
金属被覆炭素繊維としては、炭素繊維の表面に金属含有量が炭素繊維の質量に対して1〜100質量%、好ましくは20〜50質量%の金属酸化物で被覆したもので、例えば、炭素繊維を金属酸化物の前駆体溶液である金属アルコキシド、金属塩化物、金属硫化物、金属硝酸塩、金属酢酸塩等の水溶性アルコキシドまたは塩類の水や有機溶媒若しくはこれらの混合物溶液に浸漬させ、炭素繊維表面に金属イオンあるいは化合物を供給、吸着させながら、加熱酸化反応により炭素繊維表面にフェライト化合物等の金属酸化物被膜を生成させることによって製造される。その他にメッキ法(電解、無電解)、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、蒸着法などにより金属を被覆する方法であってもよい。この金属被覆炭素繊維の原料となる炭素繊維としては、市販されている一般的なフェノール樹脂、レーヨン、ポリアクリロニトリル等の高分子繊維、石油系ピッチ、炭素系ピッチ、液晶系ピッチ等のピッチ系繊維等を原料とする炭素繊維の何れも使用でき、特に限定されるものではない。しかし、製造の容易さおよび得られる品質の安定性等の観点から、主としてポリアクリロニトリル系繊維が好ましい。
炭素繊維に被覆する金属の量は、炭素繊維100質量%に対して1〜100質量%の範囲内となるよう用いることが好ましい。金属量が1質量%未満となると導電性が低下する傾向にあり、100質量%を超えると比重が増大する傾向にある。また、被覆された金属層の厚さは0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.0μmである。
炭素繊維に被覆される金属酸化物は、Ni、Fe、Cr、Mn、Cu、Zn、Co、Al、Si、Ti、Zr、Ga、Sn、V等の少なくとも一種類以上の金属を含む酸化物であり、これらの金属酸化物の中でも、磁性酸化物であるNiフェライト等のフェライト化合物を被覆した炭素繊維は、特に電磁波吸収機能を発揮するので好ましい。尚、炭素繊維の金属被覆は、金属酸化物で被覆することに限定されるものではなく、メッキ法、蒸着法などによって、金属膜で被覆することでもよい。
また、金属被覆炭素繊維は、取扱い性を良くするために、公知の強化繊維に採用されている集束剤処理を行って炭素繊維フィラメントを集束して形成したストランドを2〜24mm程度の長さにカットされたチョップドファイバーであるのが好ましい。また、フィラメントの径としては、3〜10μm程度であるのが好ましい。
集束剤としては、一般に市販されている無機、または有機集束剤の何れも使用できる。炭素繊維用集束剤としてエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂等の単独、または二種以上の組合せを使用することができる。特に、エポキシ樹脂とウレタン樹脂の単独あるいは二種以上を組合せた集束剤が好ましく、これらにより集束したストランドは開繊性が良く、加工時に拡がり性が良い。
本発明における金属被覆炭素繊維の配合量は、機械物性、成型性および成型体表面の外観の面から、基材ゴムの原料ゴム100重量部に対して、20〜50重量部であることが好ましい。この炭素繊維が少なすぎると十分な電磁波のシールド特性および機械物性が得られず、多すぎると成形性(流動性)が悪くなるばかりか、成形体の表面外観も悪化するため好ましくない。
これらの各成分を含有した本発明の電磁波シールドゴム材は、ゴム硬度が40〜90度(JIS A硬度)以下である事が好ましい。このような硬度への調整は、例えば原料ゴム100重量部当り30重量部以上、好ましくは50〜100重量部の可塑剤またはパラフィン系オイルをさらに配合することによって行われる。可塑剤としては、この種のゴム技術分野で使用されている任意のものを使用することができる。
本発明で用いられる基材ゴムの調製方法には特に制限はないが原料の混合を単軸あるいは2軸の押出機、オープンロール、ニーダ、インターミックス、バンバリーミキサ等など通常公知の溶融混合機に供給して180〜450℃の温度で混練する方法などを例として挙げることができる。また、原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などのいずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練し、ペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
本発明に係る電磁波シールドゴム材は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形および射出圧縮成形など各種公知の成形法により成形体を得ることが可能であり、なかでも射出成形や押出成形等であると、成形された基材ゴムのシート体は炭素繊維が成形方向(列理の方向)に配向することになり、このシート体を互いに列理方向が直交するようにして重ね合わせて、熱プレス等によって加硫することで、ゴム材は炭素繊維が網目状に配向し、電磁波シールド性が高められることになる。加硫剤としては、用いられるゴムの種類に応じて、イオウ系、有機過酸化物系のものが用いられる。
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<試験例1>[ニッケル被覆炭素繊維配合による電磁波シールド性の検討]
原料ゴムのNBRに表1に示すように加硫剤、加硫促進剤を配合した基材ゴムにニッケル被覆炭素繊維(東邦テナックス社製「BLSFIGHT MC」)を20、50、60重量部(以下、重量部をphr(par hundred rubber)と表示する)配合し、オープンロール機(関西ロール社製「テスト用ロール機」)で混練し、該混練物をテスト用ロール機でシート体に成形し、該シート体を50t電熱プレス機((株)佐藤製作所社製)で加硫して、実施例1〜3の電磁波シールドゴム材を作成した。そして、作成した各電磁波シールドゴム材について、KEC法により電磁波シールド性を測定した。そして、電界についてのシールド性を図1に、また、磁界についてのシールド性を図2に示した。ここで、基材ゴムは、原料ゴムのNBR100重量部に対して、加硫促進助剤として酸化亜鉛(堺化学工業社製「1号」)5phrと硫黄(鶴見化学工業社製「325メッシュの粉末硫黄」)5phr、加硫促進剤として4−4’ジチオジモルフォリン(川口化学社製「アクターR」)1phrを、また、カップリング剤としてビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグサ社製「Si69」)2phrを添加して構成される(表1参照)。
Figure 2006152207
一方、対照として上記の基材ゴムにニッケル被覆されていない炭素繊維(東邦テナックス社製「HTA-C6-E」)を20、40、60phrと配合して、実施例と同様な方法で対照例1〜3のゴム材を作成し、同様にしてSEC法により電磁波シールド性を測定した。そして、電界についてのシールド性を図3に、また、磁界についてのシールド性を図4に示した。尚、使用した各炭素繊維の物性は表2に示した。
Figure 2006152207
実施例1〜3、対照例1〜3の電磁波シールド性は、図1、図3に示すように、電界においては、ニッケル被覆炭素繊維を配合した実施例の方がニッケル被覆されていない炭素繊維を配合した対照例に比べ、5〜15dB程度シールド性が高くなっていることが確認された。また、図2、図4に示すように、磁界においては、ニッケル被覆炭素繊維を配合した実施例は10MHz程度からシールド効果が得られ始めて、1000MHzでは、ニッケル被覆されていない炭素繊維を配合した対照例に比べ、10〜40dB程度シールド性が高くなっていることが確認された。これは、炭素繊維をニッケルで被覆することにより、ゴム材の体積固有抵抗が低くなっていることが原因であると考えられる。
また、ニッケル被覆炭素繊維の添加量との関連では、電界においては、図1に示すように、実施例2、実施例3、実施例1の順にシールド効果が高い結果であり、添加量が50phrまではシールド効果が増加するが、60phrでは、シールド効果が低下することが確認された。また、磁界においても、図2に示すように、電界においてと同様に、実施例2、実施例3、実施例1の順にシールド効果が高い結果であり、添加量が50phrまではシールド効果が増加するが、60phrでは、シールド効果が低下することが確認された。
ここで、電磁波シールド性を測定するKEC法について説明する。該KEC法は図5に示す装置および測定システムにより測定される。図5(a)はKEC導波管を示す斜視図であって、このKEC導波管は中心部分に中心導体を有する外部導体と、該外部導体の先端部に形成された入出力端子を備えている。測定は図5(b)の測定システムに示すように、KEC導波管を向かい合わせに設置し、入力側には信号発生器(アンリツ社製「MG3642A」)を接続し、出力側にはプリアンプ(アジレント社製「8447D」)、スペクトラムアナライザー(アドバンテスト社製「R3361B」)が接続されている。そして、この装置を用い、厚み1mmの試料をKEC導波管の間に挟んでセットし、信号発生器で電磁波を発生させ、透過した電磁波をスペクトラムアナライザーで受信し、下記数式(1)によって表される方法でシールド効果が決定される。具体的には、本発明のシールド材料からなる厚み1mmの板状成形品を、電界発信源と電界受信源を遮断する様に設置して求める。
Figure 2006152207
<試験例2>[炭素繊維の繊維長による電磁波シールド性の検討]
試験例1の対照例で使用した炭素繊維について、繊維長が電磁波のシールド性に対する影響を検討した。
試験例1と同配合の基材ゴムに、繊維長が3、6、12mmの炭素繊維(東邦テナックス社製「HTA-C6-E」)を50phr添加し、試験例1と同様の方法でNo.1〜3の電磁波シールドゴム材を作成した(各成分の配合割合は表3参照)。そして、作成した各電磁波シールドゴム材について、試験例1と同様にKEC法により電磁波シールド性を測定した。そして、電界についてのシールド性を図6に、また、磁界についてのシールド性を図7に示した。
Figure 2006152207
図6、図7に示すように、電界、磁界のいずれにおいても、繊維長が3mm、6mm、12mmの順にシールド効果が高い結果で、繊維長の減少に伴ってシールド効果が増加することが確認された。また、試料を1mm幅に切断し、切断面を走査電子顕微鏡(以下、SEMと称する)により観察の処、混練時には、繊維長が約50μmまでに減少し、炭素繊維が列理方向(シート体の成形方向のことをいう)に配向して分散していることが確認された。また、混練前の繊維長は短いほど、混練時の炭素繊維の分散状態は、密度が高く分散するために、より高いシールド効果が得られた。
<試験例3>[成形シート体積層による電磁波シールド性の検討]
また、炭素繊維が列理方向に配向することから、加硫する前の成形シート体を2層として、それぞれのシート体を列理方向が直交するようにして積層して加硫し、積層による電磁波シールド性を検討した。
試験例2において、炭素繊維50phr添加した配合(表3のNo.1)で、試験例1と同様の方法で厚み1mmの成形シート体を2枚成形し、これらの成形シート体を成形方向(列理方向)が互いに直交するようにして積層し、試験例1と同様の方法で加硫して2層の電磁波シールドゴム材を作成した。一方、比較のため、厚み2mmの成形シート体を成形し、加硫して単層の電磁波シールドゴム材を作成した。そして、作成した各電磁波シールドゴム材について、試験例1と同様にKEC法により電磁波シールド性を測定した。そして、電界についてのシールド性を図8に、また、磁界についてのシールド性を図9に示した。
図8、図9に示すように、電界、磁界のいずれにおいても、2層の各電磁波シールドゴム材の方が単層の各電磁波シールドゴム材に比べて約5dB程度シールド効果が高められることになる。これは、加硫する前の成形シート体の列理方向を互いに直交させることで、得られた電磁波シールドゴム材は炭素繊維が網目状に配向されることになるためである。
<試験例4>[各種カーボンブラック配合による電磁波シールド性の検討]
カーボンブラックとしてケッチェンブラックを配合したことによるシールド効果を検討した。
すなわち、試験例1の基材ゴムに「ケッチェンブラックEC」と「ケッチェンブラックEC600JD」の2種類のケッチェンブラック(いずれもライオン社製)を、表4に示すように、20、40、60phr添加して、試験例1と同様の方法で実施例4〜8の電磁波シールドゴム材を作成した。一方、対照として、従来のカーボンブラック(アセチレンブラック)(東海カーボン社製「トーカブラック#4500」)を60phr添加して対照例4を作成した。そして、各実施例および対照例について、電磁波シールド性を試験例1と同様の方法で測定し、結果を図10、図11に示した。図10は電界においてのシールド性を示すものであって、図11は磁界においてのシールド性を示したものである。尚、各カーボンブラックの物性を表5に示した。
Figure 2006152207
Figure 2006152207
図10、図11に示すように、「ケッチェンブラックEC」および「ケッチェンブラックEC600JD」を添加した実施例4〜8は、電界、磁界のいずれにおいても、従来のカーボンブラック(アセチレンブラック)を添加したものに比べてシールド効果が高い結果であった。また、「ケッチェンブラックEC」、または「ケッチェンブラックEC600JD」を添加した実施例では、いずれも添加量が増加するに伴い、電磁波シールド効果が増加していることが確認された。また、「ケッチェンブラックEC」と「ケッチェンブラックEC600JD」を比較すると、「ケッチェンブラックEC600JD」の方が、より低い添加量で「ケッチェンブラックEC」よりも高いシールド効果が得られることが確認された。これは、「ケッチェンブラックEC600JD」の粒子は、「ケッチェンブラックEC」の粒子と比較すると密度が低く、同じ重量では粒子数が多くなるためであると考えられる。
<試験例5>[ケッチェンブラックおよび炭素繊維との併合による電磁波シールド性の検討]
炭素繊維を配合した基材ゴムに、さらにケッチェンブラックを配合したことによるシールド効果を検討した。
原料ゴムのNBRに表6に示すように加硫剤、加硫促進剤、可塑剤を配合した基材ゴムに炭素繊維(東邦テナックス社製「HTA-C6-E」)を40phr添加し、更に、「ケッチェンブラックEC」を20、40phr、または、「ケッチェンブラックEC600JD」を10、20phr添加して、試験例1と同様の方法で実施例9〜12の電磁波シールドゴム材を作成した。一方、対照として、「ケッチェンブラックEC」、または、「ケッチェンブラックEC600JD」を添加しないで、炭素繊維を添加したのみの対照例5を作成した。そして、各実施例および対照例について、電磁波シールド性を試験例1と同様の方法で測定し、結果を図12、図13に示した。図12は電界においてのシールド性を示すものであって、図13は磁界においてのシールド性を示したものである。
Figure 2006152207
図12、図13に示すように、炭素繊維(東邦テナックス社製「HTA-C6-E」)を添加したゴム材においても、「ケッチェンブラックEC」、または「ケッチェンブラックEC600JD」を添加した実施例9〜12は、「ケッチェンブラックEC」、または「ケッチェンブラックEC600JD」を添加していない対照例5に比べて、電界、磁界のいずれにおいても、シールド効果が高い結果で、「ケッチェンブラックEC」、または「ケッチェンブラックEC600JD」を添加したことによりシールド効果が増加していることが確認された。また、「ケッチェンブラックEC600JD」を20phr添加した実施例12は、「ケッチェンブラックEC」を40phr添加した実施例10に比べて、電界、磁界のいずれにおいてもシールド効果が高い結果であり、炭素繊維を併用して添加した場合においても、「ケッチェンブラックEC600JD」の有効性が確認された。
<試験例6>[ケッチェンブラックおよびニッケル被覆炭素繊維との併合による電磁波シールド性の検討]
ニッケル被覆炭素繊維を配合した基材ゴムに、さらにケッチェンブラックを配合したことによるシールド効果を検討した。
原料ゴムのNBRに表7に示すように加硫剤、加硫促進剤を配合した基材ゴムにニッケル被覆炭素繊維(東邦テナックス社製「BLSFIGHT MC」)を50phr添加し、更に、「ケッチェンブラックEC600JD」を0、10、20phr添加して、試験例1と同様の方法で実施例13、14、15の電磁波シールドゴム材を作成した。そして、各実施例について、電磁波シールド性を試験例1と同様の方法で測定し、結果を図14、図15に示した。図14は電界においてのシールド性を示すものであって、図15は磁界においてのシールド性を示したものである。
Figure 2006152207
図14、図15に示すように、ニッケル被覆炭素繊維(東邦テナックス社製「BLSFIGHT MC」)を添加したゴム材においても、「ケッチェンブラックEC600JD」を20phr添加した実施例15は、「ケッチェンブラックEC600JD」を添加していない実施例2に比べて、電界、磁界のいずれにおいても、シールド効果が高い結果であった。特に、磁界においてのシールド効果が40dB程度増加している。尚、「ケッチェンブラックEC600JD」を10phr添加した実施例14は、「ケッチェンブラックEC600JD」を添加していない実施例13とほぼ同程度のシールド性であった。従って、「ケッチェンブラックEC600JD」を20phr以上添加することで、シールド効果がより一層増加されることになり、高いシールド性を有する電磁波シールドゴム材が得られることが確認された。
ニッケル被覆炭素繊維を配合した本発明の電磁波シールドゴム材の電界におけるシールド性を示した図である。 ニッケル被覆炭素繊維を配合した本発明の電磁波シールドゴム材の磁界におけるシールド性を示した図である。 炭素繊維を配合した対照例の電磁波シールドゴム材の電界におけるシールド性を示した図である。 炭素繊維を配合した対照例の電磁波シールドゴム材の磁界におけるシールド性を示した図である。 電磁波シールド性を測定するKEC法を説明する図であって、(a)はKEC導波管を示す斜視図であり、(b)は測定システムを示した図である。 繊維長別のニッケル被覆炭素繊維を配合した本発明の電磁波シールドゴム材の電界におけるシールド性を示した図である。 繊維長別のニッケル被覆炭素繊維を配合した本発明の電磁波シールドゴム材の磁界におけるシールド性を示した図である。 ゴムシート体の積層有無による電磁波シールドゴム材の電界におけるシールド性を示した図である。 ゴムシート体の積層有無による電磁波シールドゴム材の磁界におけるシールド性を示した図である。 「ケッチェンブラックEC」、または「ケッチェンブラックEC600JD」を配合した本発明の電磁波シールドゴム材の電界におけるシールド性を、従来のカーボンブラックを配合した対照例と対比して示した図である。 「ケッチェンブラックEC」、または「ケッチェンブラックEC600JD」を配合した本発明の電磁波シールドゴム材の磁界におけるシールド性を、従来のカーボンブラックを配合した対照例と対比して示した図である。 炭素繊維と「ケッチェンブラックEC」、または「ケッチェンブラックEC600JD」とを併合して配合した本発明の電磁波シールドゴム材の電界におけるシールド性を、炭素繊維のみを配合したものと対比して示した図である。 炭素繊維と「ケッチェンブラックEC」、または「ケッチェンブラックEC600JD」とを併合して配合した本発明の電磁波シールドゴム材の磁界におけるシールド性を、炭素繊維のみを配合したものと対比して示した図である。 ニッケル被覆炭素繊維と「ケッチェンブラックEC600JD」とを併合して配合した本発明の電磁波シールドゴム材の電界におけるシールド性を、ニッケル被覆炭素繊維のみを配合したものと対比して示した図である。 ニッケル被覆炭素繊維と「ケッチェンブラックEC600JD」とを併合して配合した本発明の電磁波シールドゴム材の磁界におけるシールド性を、ニッケル被覆炭素繊維のみを配合したものと対比して示した図である。

Claims (6)

  1. 基材ゴムの原料ゴム100重量部に対して、導電性カーボンブラックが5重量部以上60重量部以下の範囲および/または金属被覆炭素繊維が20重量部以上50重量部以下の範囲で含有してなる電磁波シールドゴム材。
  2. 前記導電性カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が200m/g以上、n−ジブチルフタレート(DBP)吸油量が150cm/100g以上である請求項1に記載の電磁波シールドゴム材。
  3. 前記導電性カーボンブラックは、ケッチェンブラックである請求項1または2に記載の電磁波シールドゴム材。
  4. 前記金属被覆炭素繊維は、直径が3μmから10μm、長さ2mmから12mmであって、金属含有量が前記炭素繊維の質量に対して1質量%から100質量%の金属酸化物で被覆してなる請求項1に記載の電磁波シールドゴム材。
  5. 前記金属酸化物は、ニッケルフェライトである請求項4に記載の電磁波シールドゴム材。
  6. 前記基材ゴムに少なくとも導電性カーボンブラックおよび/または金属被覆炭素繊維を混練し、該導電性カーボンブラックおよび/または金属被覆炭素繊維を混練した前記基材ゴムをシート体に成形し、その後、該シート体を列理方向が互いに直角になるようにして重ね合わせて熱プレスで加硫してなる請求項1から5いずれか記載の電磁波シールドゴム材。
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