JP2006151898A - ダイズ黒根腐病を生物的に防除するための組成物及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物における黒根腐病に対する低環境負荷型の防除技術として、微生物の有する拮抗作用を利用した生物的防除技術を提供する。
【解決手段】植物における黒根腐病を防除する能力を有するトリコデルマ属に属する微生物を有効成分として含有する、植物における黒根腐病の防除用組成物、及び、この組成物を植物に施用することを含む黒根腐病の防除方法。
【選択図】図1

Description

本発明は植物病害、特にダイズ黒根腐病の生物的防除用の組成物及びそれを用いた植物病害の防除方法に関する。
ダイズは、古来よりわが国において生産される重要な作物の一つであるが、近年になり水田転換畑を利用した栽培が主体となったことから、連作により黒根腐病が発生・蔓延し大きな被害を生じている。
ダイズ黒根腐病を引き起こすダイズ黒根腐病菌は糸状菌の一種で子のう菌類に属す多犯性の病原菌であり、ダイズのほか、アズキ、ラッカセイ、インゲンマメ、エンドウ、ルーピン等の多くのマメ科植物やチャなどを侵す。罹病組織中に形成される微小菌核が第一の伝染源であり、土壌中で数年間生存が可能な土壌伝染性の難防除病害である。
ダイズ黒根腐病の防除に有効な農薬はなく、薬剤を用いた防除法は確立されておらず、耕種的な対策により防除が行われているのが現状である。本病の発生は土壌水分が高い場所で多いことから、圃場の排水能を高めるための高畝のほか明渠の設置や発病株の抜き取りおよび田畑輪換などの栽培技術で対応しているが効果は十分ではない。また、ダイズ黒根腐病の防除に有効な農薬が開発されたとしても、国民の環境に対する関心の高まりから低環境負荷型の病害防除技術として生物的防除技術開発への要望は大きい。
なお、ダイズ黒根腐病の生物的防除技術としては、フザリウム菌に属する生命研条寄第6536(FERM BP−6536)またはその変異株を含有する土壌で栽培する工程を含む、カロネクトリア・クロタラリエ(Calonectria crotalariae)の該植物への感染を予防する方法(特許文献1)があるが、有効成分である微生物が本発明で用いられるものとは全く異なる。
国際公開WO99/16317号パンフレット
植物における黒根腐病に対する低環境負荷型の防除技術として、微生物の有する拮抗作用を利用した生物的防除技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、微生物の有する拮抗作用を利用した生物的防除技術に利用できる有望な拮抗菌を土壌中から選抜することを試み、本発明を完成させるに至った。
本発明は以下の発明を包含する。
(1)植物における黒根腐病を防除する能力を有するトリコデルマ属に属する微生物を有効成分として含有する、植物における黒根腐病の防除用組成物。なお本発明において「防除用組成物」とは、「防除剤」や、「防除資材」を包含する概念である。
(2)植物がダイズである(1)に記載の組成物。
(3)トリコデルマ属に属する微生物がトリコデルマ・ハルジアナムT−29株(受領番号NITE AP−40)又はその変異株である(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物を植物に施用することを含む、植物における黒根腐病の防除方法。
(5)植物がダイズである(4)に記載の方法。
(6)トリコデルマ・ハルジアナムT−29株(受領番号NITE AP−40)。
本発明によれば、植物による黒根腐病を生物的に防除することができる。
本発明による防除の対象となる黒根腐病は糸状菌カロネクトリア・イリシコーラ(Calonectria ilicicola、(同義:カロネクトリア・クロタラリエ syn. Calonectria crotalariae)(本明細書ではこれを「黒根腐病菌」と称することがある)の感染により引き起こされるものである。
黒根腐病菌は、ダイズ、アズキ、ラッカセイ、インゲンマメ、エンドウ、ルーピン等の多くのマメ科植物やチャなどを侵し、黒根腐病を引き起こす。本発明の組成物はこれらの植物における黒根腐病の防除、なかでもダイズにおける黒根腐病の防除に適する。
本発明に使用することができるトリコデルマ属に属する微生物としては、黒根腐病を防除することができるものであれば特に限定されないが、典型的にはトリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・ハマタム(Trichoderma hamatum)、トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens(同義:グリオクラディウム・ビレンス syn. Gliocladium virens))、トリコデルマ・ポリスポラム(Trichoderma polyspolum)に属するものが挙げられ、トリコデルマ・ハルジアナム又はトリコデルマ・ハマタムに属するものが好ましい。なかでも、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託申請されたトリコデルマ・ハルジアナムT−29株(受領番号NITE AP−40、受領日平成16年11月25日)が特に好ましい。本発明にはまた上記トリコデルマ・ハルジアナムT−29株の変異誘発処理された変異株を用いることもできる。変異誘発処理は任意の適当な変異原を用いて行なうことができる。ここで、「変異原」なる語は、その広義において、例えば変異原効果を有する薬剤のみならずUV照射のごとき変異原効果を有する処理をも含むものと理解すべきである。適当な変異原の例としてエチルメタンスルホネート、UV照射、N−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、ブロモウラシルのようなヌクレオチド塩基類似体及びアクリジン類が挙げられるが、他の任意の効果的な変異原もまた使用することができる。
本発明に使用されるトリコデルマ属菌は、往復振とう培養、ジャーファメンター培養、培養タンク培養等の液体培養(固形物含有液体の流動培養を含む)、棚段培養等の固体培養等の通常の培養法によって培養することができる。トリコデルマ属菌の培養のための培地は、該菌が効率的に繁殖し胞子形成し得るものであれば特に限定されない。かかる培地としては例えば、天然物を利用したものではオオムギ粒培地(6条カワムギ20g,水20g)やジャガイモ煎汁培地(PSA培地またはPDA培地:ジャガイモ200g,サッカロースまたはデキストロース15〜20g,寒天15〜20g)のほか、炭素源としてグルコース、シュークロース、デンプン、デキストリン、黒砂糖、フスマ、コメヌカなどの糖類を、窒素源として硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩、硝酸塩等の無機窒素源、または、酵母エキス、コーン・スティープ・リーカー、肉エキス、小麦胚芽、ポリペプトン、サトウキビ絞り粕、ビール粕、大豆粕、コメヌカ、魚粉等の有機窒素源を、無機塩としてリン酸一カリ、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸第一鉄等の、リン、カリウム、マンガン、マグネシウム、鉄等を含む塩類を、それぞれ含有する合成または天然の培地が挙げられる。
また本発明に使用されるトリコデルマ属菌は、フスマ、ムギワラ、コメヌカ、イナワラ、トウモロコシガラ、オートミール、ムギ粒、大豆粕、コーンミール、食品残渣等の有機物粉末に菌体を接種し、適当な条件、例えば24〜26℃暗黒条件下で培養することもできる。またこれらの有機物粉末にベントナイト、珪藻土、タルク類、パーライト、バーミキュライト等の無機物を適宜添加したものもまた培地として使用することができる。こうして得られた培養物又はそれを適宜乾燥させたものはそれ自体が植物病害の防除資材として好適に使用できるため好ましい。トリコデルマ属菌が上記有機物粉末を培地として用いた場合に優れた胞子形成能を示すことから、かかる防除資材は大量生産が容易である。
本発明の防除用組成物としては、上記トリコデルマ属菌の培養物をそのまま使用することができる。培養物中には、分生胞子、子のう胞子、厚膜胞子等の各種胞子(本明細書ではこれらを総称して単に「胞子」と称することがある)が含まれていることが好ましいが、菌糸体又はその断片が更に含まれていてもよい。かかる培養物は適宜乾燥して使用することもできる。
本発明の防除用組成物としてはまた、上記培養物から、形成された胞子を常法により分離または高濃度化したもの又はその乾燥物を使用することができる。この場合もまた菌糸体又はその断片が含まれていてもよい。分離または高濃度化の方法はとしては、ろ過、遠心分離等の方法によりペレット状又は懸濁液状の組成物を得る方法のほか、例えば次の方法が挙げられる。すなわち、固形物含有液体の流動培養では、菌糸体を先ず生育させ、液体をろ過により除去し、残固形物ごと乾燥させ、胞子形成を促し、十分に胞子形成させたのちに、解砕し篩分けする方法や、この工程の胞子形成後に、界面活性剤を含む水にて処理し、胞子懸濁液をろ過により回収し乾燥して胞子を得る方法も可能である。固体培養では、固体表面に胞子形成後に培地ごと篩分けしたり、もしくは培地を乾燥後、解砕し篩分けすることより胞子を回収できる。
本発明の防除用組成物としてはまた、上記トリコデルマ属菌を液体培養(固形物含有液体の流動培養を含む)により培養した場合の培養液を活性炭粉末、珪藻土、タルク等の多孔吸着体に吸着させ乾燥させたものを使用することもできる。
なお上記のいずれにおいても乾燥方法は通常の方法でよく、例えば自然乾燥や低温での通風乾燥の他、凍結乾燥、減圧乾燥でよい。これらの乾燥物は乾燥後さらにボールミル等の粉砕手段で適宜粉砕してもよい。
これまでに説明したトリコデルマ属菌の培養物、分離もしくは高濃度化された胞子、培養液の吸着物又はそれらの乾燥物(以下、「培養物等」という)は、単独で又は適宜組み合わせて本発明の防除用組成物として使用することができる。培養物等は、各種土壌や麦粒、木材片、サトウキビ絞り粕、ビール粕、大豆粕、コメヌカ、魚粉、各種堆肥、食品残渣等の有機物と組み合わせた堆肥状資材の形態で使用することもできる。培養物等はまた、他の任意成分と組み合わせて通常の微生物製剤と同様の形態(例えば粉剤、水和剤、乳剤、液剤、フロアブル剤、塗布剤等の形態)に製剤化することもできる。水和剤の形態が特に好ましい。水和剤化することにより植物の播種時や生育時での土壌灌注や散布による施用が可能になり施設内だけでなく露地での広範な用途に対応可能となるからである。これらの資材や製剤中において組み合わせて使用される任意成分としては例えば固体担体、補助剤が挙げられる。固体担体としては例えばベントナイト、珪藻土、タルク類、パーライト、バーミキュライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ビール粕、サトウキビ絞り粕、オカラ、フスマ、キチン、コメヌカ、小麦粉等が挙げられ、補助剤としては例えばゼラチン、アラビアガム、糖類、ジェランガム等の固着剤や増粘剤が挙げられる。
本発明の防除用組成物の植物への施用方法は、植物病害の発生状況、施用対象である植物の種類、トリコデルマ属菌の剤形などの諸条件に応じて適宜選択され、例えば、地上部散布、施設内施用、土壌混和施用、土壌灌注施用、表面処理(種子粉衣処理、種子塗布処理)等の各処理により行われ得る。より具体的な施用方法としては、各種形状のトリコデルマ属菌含有組成物を植物の種子に粉衣・塗布する処理、植物の育苗培土や栽培土壌に灌注する処理、植物の育苗培土や栽培土壌に混和する処理、植物の茎葉に散布する処理、および、植物の付傷部に接触させる処理が挙げられる。これらの処理は単独または複数が組み合わされて行われてよい。また施用時期は播種時、生育時等いずれの時期であってもよい。丹波黒大豆のような苗移植栽培を行なうダイズでは、育苗培土に本発明の防除用組成物を混和するか、トリコデルマ属菌を繁殖させた育苗土(すなわち育苗土資材)を用いて育苗を行なうことにより、出芽直後の幼苗を黒根腐病菌の感染から保護することができ、初期生育の健全化が図れる。
更にまた、上記トリコデルマ属菌の植物への施用に際しては、必要に応じて通常使用される他の有効成分、例えば殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺真菌剤、殺細菌剤、抗ウイルス剤、肥料、土壌改良剤等を混合施用するか、または、混合せずに交互施用もしくは同時施用することも可能である。
本発明の防除用組成物の植物への施用量は、植物病害の発生状況、施用対象である植物の種類、トリコデルマ属菌の剤形などの諸条件に応じて適宜決定される。例えば、ふすま・バーミキュライト培地培養物では10a当たり約1tを全面土壌混和することで高い黒根腐病防除効果が生まれる。
以下本発明を実施例に基づいて説明するが本発明はこれらの実施例によっては限定されない。
トリコデルマ属菌の分離法
各地圃場のダイズ根域やダイズ栽培経歴のある圃場またはダイズ黒根腐病発生圃場から得た土壌からトリコデルマ属菌を分離した。各圃場の土壌10gを殺菌水90mlの入った300mlコルベンに入れ、振とう培養器で20分間往復振とう(124往復/分)して得た懸濁液を殺菌水で希釈段階希釈後、1000倍希釈液1mlを、溶解し40℃に保ったMartinのローズベンガル培地(Martin, J. P.(1950)Use of acid rose bengal and streptomycin in the plate method for estimating soil fungi. Soil. Science. 69:215−232.)9mlと混和して25℃暗黒条件下で3〜5日間培養し、生じたトリコデルマ属菌の菌叢を釣菌・分離した。分離した菌株はいずれも素寒天培地で培養後、常法により単菌糸分離株とした。トリコデルマ属菌の菌叢はローズベンガル培地において生育が早くかつ、特徴的な菌糸塊を有した菌叢を作り、白色から青緑色の胞子塊ができるので、区別は容易である。
分離トリコデルマ属菌の培地上での対峙培養
PDA培地で3日間25℃暗黒下で培養したトリコデルマ属菌の菌叢と、オ−トミ−ル培地で5日間25℃暗黒下で培養した黒根腐病菌の菌叢周辺部から菌叢ディスク(径6mm)を切り出し、PDA平板培地上で4.5cm離して置床して25℃暗黒条件下で対峙培養させた。培養3および7日後に対峙様相を観察した。この結果、トリコデルマ属菌と黒根腐病菌を対峙培養させた結果、黒根腐病菌菌叢の生育をトリコデルマ属菌が抑制する型、黒根腐病菌の菌叢の中にトリコデルマ属菌が侵入する型およびトリコデルマ属菌の菌叢の中に黒根腐病菌が侵入する型の3種の拮抗型が観察された。
ガラス室条件下での有望菌株の選抜
ダイズ黒根腐病菌の生物防除に有望なトリコデルマ属菌を得るため、小型ポットを使いガラス室条件下でスクリーニングを行った。高圧滅菌器で殺菌した土壌(クロボク土)にトリコデルマ属菌および黒根腐病菌を培地ごと同時に混和し、プラスチック製ポット(280ml)に詰めた後、ダイズ品種タチナガハをポット当たり5粒播種した。この際に、トリコデルマ属菌はふすま・バーミキュライト培地で25℃暗黒下10日間培養し、同様にダイズ黒根腐病菌(農研センター分離株S−14菌株)は、ふすま・バーミキュライト培地で25℃暗黒下20日間培養したものを用いた。混和したトリコデルマ属菌および黒根腐病菌はポット当たりそれぞれ2gとした。試験は1菌株当たり6ポットを供試し、3反復で行った。ポットはガラス温室に保ち播種20日後に出芽前苗立枯率を調べると共に、ダイズを引き抜き、出芽後の発病茎率を調べ、以下の基準に基づいて発病率を求めた。
Figure 2006151898
そして、発病率に基づき下記式により発病率に基づく防除価を算出した。
Figure 2006151898
また播種20日後には抜根して根部を観察し、発病度を求めた。発病度は、根部の発病程度を次の5段階に分け、各発病程度を示す株数を数え、下記式を用いて算出した。
0:無発病(健全),1:根部あるいは地際部に褐変が認められる,2:褐変が主根または地際部全体を取り巻く,3:褐変が地際部を中心に長く進展する,4:主根が腐朽し根量減少,5:枯死。
Figure 2006151898
また発病度に基づき下記式により発病度に基づく防除価を算出した。
Figure 2006151898
結果を表1に示す。試験回時が異なる結果を含む表記のため、数値は防除価で示した。
Figure 2006151898
幼苗検定の結果、菌株T−5、T−13およびT−28等で高い防除価を示す菌株が見つかった。多くの菌株を用いた幼苗検定により、表1に示す17種類の菌株を得た。
上記17株のうちT−29株の菌学的性質は以下の通りである。
(顕微鏡による観察)
2%マルツ培地上における分生子柄の分岐様式およびフィアライドの着生様式はともに規則的でフィアライドは分岐に単生する。分生胞子は濃緑色球形〜亜球形を呈し、大きさは2.1〜2.4×2.4〜2.6μmである等の特徴により、本菌はリファイの分類(Rifai, M.A.(1969)A reversion of the genus of Trichoderma. Mycological Papers No. 116:1−56.)に従いトリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)と同定された。
(培養性質)
PSA培地において10℃〜35℃の範囲で生育し、30℃で最適生育温度(菌糸生育速度20.1mm/日)であった。PSA培地25℃培養2日後の菌叢は、培地中央部が淡黄色に着色し、菌糸は白く平滑に伸長し、気中菌糸は少なかった。菌糸細胞には平均2.2個の核を有した。また、分生胞子形成が良好であった。
以上の性質から、T−29菌株は新規株と特定された。本株はTrichoderma harzianum T−29(トリコデルマ・ハルジアナムT−29)として独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託申請された(受領番号NITE AP−40)。
また、T−27株の菌学的性質は以下の通りである。
(顕微鏡による観察)
2%マルツ培地上において典型的に分生子柄やフィアライドの形成のない菌糸の伸長(ステライル・ハイファル・エロンゲーション、Sterile hyphl elongations)を呈す。分生子柄やフィアライドの形成のないステライル菌糸の基部には短い分生子柄と洋なし型のフィアライドが密生する。分生胞子は濃緑色倒卵形〜俵型を呈し、大きさは3.6〜4.6×2.4〜3.0μmである等の特徴により、本菌はリファイの分類(Rifai、 M.A.(1969)A reversion of the genus of Trichoderma. Mycological Papers No. 116:1−56.)に従いトリコデルマ・ハマタム(Trichoderma hamatum)と同定された。
(培養性質)
PSA培地において10℃〜35℃の範囲で生育し、30℃で最適生育温度(菌糸生育速度19.9mm/日)であった。PSA培地25℃培養2日後の菌叢は、菌糸は白く平滑に伸長し、気中菌糸は少なく培地の着色は認められなかった。菌糸細胞には平均3.8個の核を有した。
なお、表1の菌株のうち次のものについては種が特定された。T−5:トリコデルマ・ハルジアナム,T−13:トリコデルマ・ハルジアナム,T−21:トリコデルマ・ビレンス,T−26:トリコデルマ・ハルジアナム,T−27:トリコデルマ・ハマタム,T−28:トリコデルマ・ハルジアナム,T−29:トリコデルマ・ハルジアナム,:トリコデルマ・ハルジアナム,T−30:トリコデルマ・ハマタム,T−31:トリコデルマ・ポリスポラム。
実施例1で選抜されたトリコデルマ・ハルジアナムT−29株を含む17種類のトリコデルマ属菌を用い、野外設置ポット条件下でダイズ黒根腐病に対する生物防除効果を調べた。なお本実施例で用いたふすま・バーミキュライト培地は、ふすま200g、バーミキュライト200gおよび水600gを、たらい等を使い均一に混和後、1Lビーカー当たり500gを分注しオートクレーヴ滅菌(120℃,15分)を行って作成した。クロボク土を充墳した野外設置のコンクリート製枠ポット(50cm×50cm×50cm)を1処理当たり3ポット使い、クロルピクリン剤により土壌消毒(30L/10a)し使用時までポリフィルムマルチのまま放置した。3ヶ月後(5月27日)に、黒根腐病菌(カロネクトリア・イリシコーラ、農研センター分離S−14菌株)をふすま・バーミキュライト培地にて25℃暗黒下で40日間培養した培養物140gを各ポット表層土壌(0〜10cm間)に混和して、黒根腐病菌を接種した。接種後トリコデルマ属菌を処理するまでポットは特に何もしなかった。8日後の6月4日に、各トリコデルマ属菌をふすま・バーミキュライト培地で25℃暗黒条件下にて10日間培養した培養物140gを各ポットの表層土壌(0〜10cm間)に混和処理した。無処理の対照区として、何も培養していないふすま・バーミキュライト培地だけ140gを同様にポットの表層土壌に混和処理した。そして、ダイズ品種タチナガハの種子を1カ所2粒、ポット当たり9カ所点播した。播種後、各ポットには水道水で給水した。播種20日目に出芽前苗立枯率を調べた。また収穫時(12月2日)に出芽後立枯率を調べた。
出芽前苗立枯率(%)と出芽後立枯率(%)との和を発病率(%)とした。
Figure 2006151898
そして、発病率に基づき下記式により防除価(1)を算出した。
Figure 2006151898
また収穫時(12月2日)には抜根して根部を観察し、発病度を求めた。発病度は、根部の発病程度を次の5段階に分け、各発病程度を示す株数を数え、下記式を用いて算出した。
0:健全。1:主根を含む根の一部(1/4程度)に褐変や腐朽が認められる。2:主根を含む根の半分程度が褐変や腐朽している。3:側根の多が腐朽・脱落し、主根の腐朽も著しい。4:収穫時までに枯死し、多くの場合側根は全部腐朽脱落するとともに主根だけがゴボウ根状となる。発病程度については図1も参照されたい。
Figure 2006151898
また発病度に基づき下記式により防除価(2)を算出した。
Figure 2006151898
結果を表1に示す。T−29は防除価(1)及び(2)の両方について特に高い値を示した。
Figure 2006151898
発病程度の分類を示す写真である。

Claims (6)

  1. 植物における黒根腐病を防除する能力を有するトリコデルマ属に属する微生物を有効成分として含有する、植物における黒根腐病の防除用組成物。
  2. 植物がダイズである請求項1に記載の組成物。
  3. トリコデルマ属に属する微生物がトリコデルマ・ハルジアナムT−29株(受領番号NITE AP−40)又はその変異株である請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物を植物に施用することを含む、植物における黒根腐病の防除方法。
  5. 植物がダイズである請求項4に記載の方法。
  6. トリコデルマ・ハルジアナムT−29株(受領番号NITE AP−40)。
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