以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
[画像形成装置の全体構成及び動作]
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真プロセスを利用したカラー画像形成装置(複写機或いはレーザプリンタ)である。画像形成装置100は、複数の画像形成手段としてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの独立した画像形成ステーション(第1、第2、第3、第4の画像形成ステーション)Sa、Sb、Sc、Sdを縦一列に有する。画像形成装置100は、画像形成装置本体Aに接続されたパーソナルコンピュータなどのホスト機器或いは画像読み取り装置からの画像情報信号に応じて、転写材、例えば記録用紙、OHTフィルム(光透過性樹脂フィルム)などにフルカラー画像を形成することができる。
本実施例では、各画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdの構成及び動作は、現像色が異なる以外は実質的に同一であるので、以下特に区別を要しない場合は何れかの色用の画像形成ステーションに属する要素であることを表すために符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して総括的に説明する。
画像形成ステーションSは、像担持体としての円筒状の電子写真感光体、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1の周面に沿って、帯電手段としての帯電ローラ2、現像手段としての現像器4、クリーニング手段としてのクリーニング装置6が設けられている。又、感光ドラム1を画像情報に応じたレーザー光で走査露光し得るように、画像露光手段としてのスキャナーユニット3が設けられている。更に、全ての画像形成ステーションSの感光ドラム1に対向して転写ユニット5が設けられている。転写ユニット5は、転写材担持体としての転写ベルト11を有する。転写ベルト11は、駆動ローラ13、吸着対向ローラ14及び2つの張架ローラ15、16に掛け回して設置されている。転写ベルト11は、矢印の反時計方向に感光ドラム1とほぼ同じ周速度で回転駆動される。そして、転写ユニット5が備える転写ベルト11に転写材Pを吸着担持させて搬送することにより、各画像形成ステーションSの感光ドラム1から転写材P上にトナー像を静電的に転写して、フルカラー画像を得ることができる。
更に説明すると、像担持体として繰り返し使用される回転可能な感光ドラム1は、図中矢示の反時計方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。例えば、フルカラー画像の形成時を例に説明すると、感光ドラム1は、先ず、回転過程で一次帯電ローラ2により所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。次いで、感光ドラム1は、各画像形成ステーションSの現像色に対応する分解色の画像情報に応じてスキャナーユニット3による画像露光を受ける。これにより、各感光ドラム1上に、目的のカラー画像の第1、第2、第3、第4の色成分像、本実施例では、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック成分像に対応した静電像(潜像)が形成される。
次いで、感光ドラム1に形成された静電像は、現像器4により、各画像形成ステーションSに対応する色の現像剤により現像される。
一方、転写材Pが、転写材収容部としての転写材カセット17からピックアップローラ18により送り出され、レジストローラ19を通過する。その後、転写材Pは、転写ベルト11と、吸着部材(吸着帯電部材)としての吸着ローラ20(詳しくは後述する)とによって形成されたニップ(吸着ニップ、吸着部)mを通過することにより、吸着ローラ20に印加される吸着バイアスの作用により、転写ベルト11に静電的に吸着される。転写ベルト11に吸着された転写材Pは、転写ベルト11の図中矢印方向への回転に伴い縦方向(本実施例では鉛直上方向)に搬送される。
転写ベルト11に担持された転写材Pは、先ず、第1の画像形成ステーションSaにおける感光ドラム1aと転写ベルト11とで形成されたニップ(転写ニップ、転写部)nに搬送される。転写部nでは、転写ベルト11を介して、転写部材(転写帯電部材)としての転写ローラ12a(詳しくは後述する)が感光ドラム1に押圧されている。そして、この転写ローラ12aに印加される転写バイアスによって、感光ドラム1上の第1色目のトナー像(イエロートナー像)が転写材Pに静電的に転写される。
以下、同様にして、転写材Pが第2、第3、第4の画像形成ステーションSb、Sc、Sdにおける転写部nを通過するごとに、各感光ドラム1b、1c、1dと対向して転写ベルト11の裏側に配置された転写ローラ12b、12c、12dの作用によって、それぞれマゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が転写材P上に順次重ねて転写される。これにより、転写材P上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー像が重畳されたトナー像が形成される。
第4の画像形成ステーションにおける転写部nを通過した転写材Pは、転写ベルト11の後端(駆動ローラ13の位置)で転写ベルト11の曲率によって分離される。その後、転写材Pは、定着手段としての熱ローラ定着器8へと搬送される。定着器8は、加熱手段を内蔵した定着ローラ81と、これに圧接する加圧ローラ82とを有し、転写材Pは両ローラ81、82によって形成されるニップ(定着ニップ、定着部)を通過することにより、表面にトナー像が加熱及び加圧されて定着される。その後、転写材Pは、排出ローラ9等を介して機外に排出され、転写材排出部としてのトレー10に載置される。
一方、トナー像の転写材Pへの転写が終了した感光ドラム1は、クリーニング装置6により清掃され、繰り返し画像形成に供される。クリーニング装置6は、感光ドラム1の表面に残留したトナー等の付着物をクリーニング部材であるクリーニングブレード61で掻き取ってクリーニングする。
又、画像形成装置100は、図示しない自動両面機構を有していてよい。転写材Pの第1面(おもて面)に引き続いて転写材Pの第1面とは反対の第2面(裏面)に画像形成(両面画像形成)を行う際には、一旦定着器8を通過した転写材Pは、自動両面機構を通過した後に表裏を反転されて、再び転写材供給部に送られて、レジストローラ19、吸着部mを経て転写ベルト11上に静電吸着される。そして、第2面(裏面)に対して上述と同様にして画像形成が行われる。
尚、所望の色用の単一又は複数の画像形成ステーションによって、単色又はマルチカラーの画像を形成することも当然可能である。
又、本実施例では、感光ドラム1と、感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びクリーニング装置6は、枠体によって一体的にカートリッジ化され、装置本体Aに対して着脱可能なプロセスカートリッジ7を構成している。プロセスカートリッジ7は、装置本体Aが備える、装着ガイド、位置決め部材などの装着手段(図示せず)を介して、取り外し自在に装置本体Aに装着される。
[現像器]
本実施例では、現像器4は、現像剤として負帯電性の非磁性一成分現像剤、即ち、磁性体を含まない所謂ノンマグトナーを使用する。又、本実施例の現像器4は、接触一成分接触現像方式を採用している。つまり、現像器4は、感光ドラム1に当接する現像剤担持体としての現像ローラ41を有する。そして、現像ローラ41上薄層状に担持されたトナーが、現像ローラ41と感光ドラム1とが対向する現像部へ搬送され、又現像ローラ41に現像バイアスが印加されることによって、感光ドラム1上の静電像に応じて感光ドラム1へとトナーが供給される。これによって、感光ドラム1上の静電像はトナー像として現像される。
[吸着ローラ]
本実施例では、転写ベルト11上に転写材Pを吸着させるための吸着部材として吸着ローラ20を有する。吸着ローラ20は、転写ベルト11を介して対向ローラ14に対向する位置にて転写ベルト11に当接するように配置されている。吸着ローラ20には、吸着ローラ20に対しバイアスを出力する吸着バイアス出力手段としての高圧電源(吸着バイアス電源)61(図3)が接続されている。本実施例では、吸着バイアス電源61は、転写材Pを転写ベルト11に吸着させる際に、定電流制御された正極性の吸着バイアスを出力し、吸着ローラ20に印加する。
尚、吸着ローラ20を非駆動時に転写ベルト11から離間させる離間機構が設けられていてもよい。この場合、何らかの原因で転写ベルト11に付着したトナー等の異物が吸着ローラに付着し、これが原因で転写材が汚れてしまうのを防止することができる。
本実施例では、吸着ローラ20は、直径6mmの芯金上に、電気抵抗値を調整したゴム層と、離型性を有するコーティング層(離型層)とを有する二層ローラである。
ゴム層は弾性を付与するために設けられており、EPDMゴムに抵抗調整のためにカーボンブラックを分散させた直径12mmである。ゴム層の電気抵抗値は、幅1cmの金属箔をローラ外周に巻き付け、芯金との間に500Vの電圧を印加した時の抵抗値が1×105Ωになるように調整されている。このゴム層の上に、抵抗調整され離型性を有するフッ素コーティング(離型層)が施されている。離型層の厚みは100μmであり、フッ素樹脂中に金属酸化物を添加されている。そして、最終的な吸着ローラ20としての電気抵抗値は、前述の測定法で1×106Ωになるように調整されている。
尚、本実施例では、転写ベルト11を挟んで吸着ローラ20に対向する、転写ベルト11が張架されたローラ(対向ローラ)14としては、直径25mmの金属ローラを用いた。そして、この対向ローラ14を接地することによって、吸着ローラ20から接地への電流経路が形成されている。
吸着バイアスは、装置本体Aが使用される環境やプリント条件から制御手段としてのDCコントローラ60で決定された信号によって、吸着バイアス電源61(高圧基板)61から発生される。本実施例では、図3又は図4に示すように、吸着バイアス電源61から吸着ローラ20に所定の電流又は電圧を印加した際に、この所定の電流又は電圧を印加するのに必要な電圧又は電流(吸着ローラ20と対向ローラ14との間に発生する電圧又は電流)を、電圧計63又は電流計64により検知し、この検知結果を高圧基板上のA/DコンバーターによりA/D変換しコントローラ60によりモニターできるようになっている。
[転写ユニット]
転写ユニット5は、感光ドラム1上のトナー像を転写ベルト11に担持された転写材Pに転写するための転写部材として、転写ベルト11を介して感光ドラム1に押圧された転写ローラ12を有する。そして、転写ローラ12には、転写ローラ12に対しバイアスを出力する転写バイアス出力手段としての高圧電源(転写バイアス電源)62(図3)が接続されている。本実施例では、転写バイアス電源62は転写工程時に定電圧制御された正極性の転写バイアスを出力し、転写ローラ12に印加する。
又、本実施例では、転写ローラ12は、電気抵抗が調整されたエピクロルヒドリンゴムを、直径6mmの芯金の上に成型した、直径12mmのソリッドゴムローラである。転写ローラ12の電気抵抗値は、前記の測定方法で2×107Ωである。
本実施例では、転写ベルト11は、PVDF製の樹脂にイオン導電剤を添加して、1×108Ω・cmの体積抵抗率に電気抵抗値が制御されたものである。又、転写ベルト11は、厚さ65μmの単層構成である。
転写ベルト11の体積抵抗率は、JIS法K6911に準拠した測定プローブを用い、ADVANTEST社製高抵抗計R8340にて100Vを印加して測定した値を、転写ベルト11の厚みで正規化したものである。尚、転写ベルト11のほか、紙などの転写材Pの体積抵抗率は、この測定法により測定された値である。
ここで、転写材Pを静電吸着する観点からは、転写ベルト11の体積抵抗率は高いことが望まれる。一方、転写ベルト11の体積抵抗率が高すぎると、転写ベルト11自体がチャージアップしてしまい、高い転写電圧が必要になったり、別途転写ベルト11を除電する機構が必要となる。従って、自己減衰(転写工程終了後に転写ベルト11を特別な除電手段で除電せずに、次の画像形成が開始されるまでに転写ベルト11の帯電電位が十分に減衰する)を実現し、且つ、十分な転写材Pの吸着力を保持できるという観点から、転写ベルト11の体積抵抗率は、1×105〜1×1012Ω・cmが好ましい。但し、後述するように、転写材Pの電気抵抗を測定する際に、非通紙部を介して電流が逃げることを抑制するためには、転写ベルト11の体積抵抗率は、更に好ましくは、1×107〜1×1012Ω・cmとする。本実施例では、この理由から上記の抵抗値を決定した。
[転写材の電気抵抗値検知]
次に、本発明において最も特徴的な転写材Pの電気抵抗値の検知方法について説明する。
前述のように、転写材Pは、その種類によって電気抵抗値が大きく異なることがある。又、例えば、転写材Pとして多く用いられる紙の体積抵抗率は、環境変動により107Ω・cmから1012Ω・cm程度まで変動する。更に、両面画像形成時などには、第1面に画像を形成する時と、第2面に画像形成する時とでは転写材Pの電気抵抗値が大きく変わる。
このように電気抵抗値が異なる転写材Pに対して同じ転写バイアスを印加しても、転写材Pの電気抵抗が低い場合には転写電荷のリークが発生し易くなったり、或いは転写材Pの電気抵抗が高い場合には転写材Pへの電荷の付与が困難になる。
従って、特に、転写材吸着方式の画像形成装置においては、使用される転写材Pの電気抵抗を検知し、その転写材Pの電気抵抗値に応じて適正な転写バイアスを選択し、転写材Pの種類や環境変動による転写材Pの電気抵抗値の変動が画像に及ぼす影響を抑制することが重要である。
一方、例えば、本実施例のように、イオン導電性を有した転写ベルト11を使用した場合には、転写ベルト11は、使用される環境の湿度によって吸湿し、電気抵抗値が低下し易い。より具体的には、一般的に用いられるイオン導電性の材料では、低温低湿(L/L環境:15℃/10%RH)と高温高湿(H/H環境:30℃/80%RH)とで、転写ベルト11の電気抵抗値が約1桁変動することがある。又、転写ベルト11の使用に伴う削れ等により、耐久により転写ベルト11の電気抵抗値が変動することもある。
前述のように、転写材の電気抵抗と転写ベルトの電気抵抗との総和から転写バイアスを予測することが提案されているが(特許文献1)、この方法では、転写ベルトの電気抵抗のばらつきや画像形成装置内の温度の変化、耐久による電気抵抗変動に対して正確に転写バイアスを決定することは困難であった。即ち、本発明の目的の一つは、転写材の電気抵抗を精度良く検知して、その検知結果に応じて転写バイアスを適正に制御することである。
又、転写材吸着方式の画像形成装置、特に、複数の画像形成手段を縦方向(典型的には重力方向)に配置して、転写ベルトによって、この複数の画像形成手段に対して転写材を搬送する場合、転写ベルトへの転写材の吸着性が重要となる。従って、斯かる画像形成装置においては、使用される転写材の電気抵抗を検知し、その転写材の電気抵抗値に応じて適正な吸着バイアスを選択し、安定した転写材の搬送性を維持することが重要である。即ち、本発明の目的の他の一つは、転写材の電気抵抗を精度良く検知して、その検知結果に応じて吸着バイアスを適正に制御することである。
そこで、本実施例では、画像形成装置100には、検出位置にて転写ベルト11に転写材Pが担持された状態で転写ベルト11及び転写材Pに第1のバイアスを印加し、検出位置にて転写ベルト11に転写材Pが担持されていない状態で転写ベルト11に第2のバイアスを印加する検出部材と、この検出部材が前記第1のバイアス及び前記第2のバイアスを出力するために、この検出部材に対し定電流制御されたバイアスを出力する検出バイアス出力手段と、検出バイアス出力手段が定電流制御されたバイアスを出力する際の出力電圧値を検知する検知手段とを設ける。
本実施例では、上記検出位置を、第1の画像形成ステーションSaよりも転写材Pの搬送方向上流に配置する。特に、本実施例では、上記検出部材の機能を、吸着ローラ20が兼ね備える構成とする。つまり、本実施例では、吸着部mが検出位置となる。この場合、上記検出バイアス出力手段の機能は、吸着バイアス出力手段である吸着バイアス電源61が兼ね備える。そして、吸着バイアス電源61が定電流制御されたバイアスを出力する際の出力電圧値を検知する検知手段として、吸着バイアス電源61に接続された電圧計63が用いられる。
そして、本実施例では、画像形成装置100の動作を統括的に制御するエンジン制御部が備えるコントローラ60とされる制御手段が、前記第1のバイアスが出力されている時の電圧計63の検知結果と、第2のバイアスが出力されている時の電圧計63の検知結果と、に基づいて、感光ドラム1上のトナー像を転写ベルト11に担持された転写材Pに転写する際に転写バイアス電源62が出力するバイアスの値を決定する。更に、本実施例では、コントローラ60は、前記第1のバイアスが出力されている時の電圧計63の検知結果と、第2のバイアスが出力されている時の電圧計63の検知結果と、に基づいて、吸着バイアス電源61が出力するバイアスの値を決定する。
つまり、本実施例によれば、上述のようにして転写バイアスを決定することにより、第1のバイアスが出力されている時の検知手段の検知結果と、第2のバイアスが出力されている時の検知手段の検知結果の差が、前回の画像形成時の前記検知結果の差と異なる場合には、転写バイアス出力手段が出力するバイアスの値が異なることになる。又、本実施例では、上述のようにして吸着バイアスを決定することにより、前記検知手段の検知結果の差が、前回の画像形成時の前記検知結果の差と異なる場合には、吸着部材へ印加されるバイアスが前回の画像形成時と異なることになる。
更に説明すると、本実施例では、コントローラ61は、吸着ローラ20と対向ローラ14との間に転写ベルト11と転写材Pとを挟時している時(第1の状態)の電圧計63の検知結果と、吸着ローラ20と対向ローラ14との間に転写ベルト11だけを挟持している時(第2の状態)の電圧計63の検知結果とに基づいて、転写材Pの電気抵抗(インピーダンス)を求める。この時、本実施例では、前記第1の状態での電圧計63の検知結果から求めた電気抵抗から、前記第2の状態での電圧計63の検知結果から求めた電気抵抗を減算することによって、転写材Pの電気抵抗を検知する。そして、検知した転写材Pの電気抵抗に応じて、適正な転写バイアス、吸着バイアスを決定する信号を生成する。
図2は、転写材Pの転写ベルト11への吸着部(検出位置)mでの電気抵抗をモデル化して表した図である。吸着バイアスや転写バイアスは、転写材Pの抵抗値を正確に検知して、転写材Pの状態に最も適したバイアスを印加することが望ましい。吸着部mにおいて、転写材Pを挟持している時は、吸着ローラ20、転写材P、転写ベルト11及び対向ローラ14が直列に接続されており(図2(a))、又、転写材Pを挟持していない時は、吸着ローラ20、転写ベルト11及び対向ローラ14が直列に接続されている(図2(b))ものとみなせる。このため、図2(a)の状態で検知された電気抵抗と、図2(b)の状態で検知された電気抵抗との差を求める、即ち、減算することによって、正確に転写材Pの抵抗を測定できる。
尚、実際には、転写材Pの搬送方向、即ち、転写ローラ20、転写ベルト11及び対向ローラ14の表面移動方向と交差する方向(本実施例では略直交方向)において、吸着ローラ20の幅に対して転写材Pの幅が短い場合には、転写ローラ20と転写ベルト11との間に転写材Pが存在する通紙部の外側の、転写材Pが存在しない非通紙部を介して吸着電流が逃げることがある。そのため、転写材Pの電気抵抗を厳密に求めることはできない。しかし、転写ベルト11の電気抵抗を十分に大きくすることによって、非通紙部に流れる電流I2の成分は、通紙部に流れる電流I1と比べて無視することが可能になる。本実施例では、前述のように体積抵抗率が1×108Ω・cmと、比較的電気抵抗の高い転写ベルト11を使用し、極力I2が小さくなるようにしたが、実用上充分の好結果を得ることができた。
以下、より具体的な一実施例を示す。
本実施例では、図3に示すように、吸着ローラ20に所定の電流を印加し、このとき吸着バイアス電源61の入力側と出力側の端子間に発生する電圧(吸着バイアス電源61による供給電圧)を電圧計63により検知する。そして、A/D変換された検知電圧値を示す信号がコントローラ60に送られる。コントローラ60は、この電圧値の検知結果から、吸着ローラ20と対向ローラ14との間に転写材Pがある時と無い時との電気抵抗を求める。そして、両者の差に基づいて、転写材Pの電気抵抗を求め、転写ローラ12に印加する転写バイアス、吸着ローラ20に印加する吸着バイアスを決定する。
つまり、先ず、画像形成を行う前の前回転時において、吸着ローラ20と転写ベルト11との間に転写材Pが存在しない状態で、吸着ローラ20と対向ローラ14との間に10μAの定電流が流れるように定電流制御したバイアスを印加し、この時の電圧値を電圧計63で測定する。ここで流す定電流値は、これに限定されるものではないが、制御の容易性などの点から、好ましくは、吸着ローラ20と転写ベルト11との間に転写材Pが存在する時に吸着部に流す下記の電流値と同じにする。
この時、吸着ローラ14にバイアスを供給している吸着バイアス電源61と、GNDに接続されている導電性金属製の対向ローラ14との間には、吸着ローラ20と転写ベルト11だけしか存在しない。このため、この時に測定される電圧値を電流値(定電流)で除することにより計算される電気抵抗値は、吸着ローラ20及び転写ベルト11の総和の電気抵抗値Z2となる。
次に、プリント動作時において、転写材Pが吸着ローラ20に達した時に、吸着ローラ20と対向ローラ14との間に10μAの定電流が流れるように定電流制御したバイアスを印加し、この時の電圧を電圧計63で測定する。ここで流す定電流値は、これに限定するものではないが、特に、検出部材として吸着ローラ20を利用する場合は、好ましくは、転写材Pが十分に転写ベルト11と転写材Pが吸着されるような値に設定する。
この時、吸着バイアス電源61と対向ローラ14との間には、吸着ローラ20、転写材P及び転写ベルト11が存在する。このため、この時に測定される電圧値を電流値(定電流)で除することにより計算される電気抵抗値は、転写ローラ20、転写材P及び転写ベルト11の総和の電気抵抗値Z1となる。
コントローラ60は、上述のようにして測定された電気抵抗値Z1から電気抵抗値Z2を引くことにより、即ち、Z1−Z2を計算することで、純粋に転写材Pの電気抵抗値を算出することができる。一方、コントローラ60が備える記憶手段としてのROMには、予め求められた、転写材Pの電気抵抗値と転写バイアスの値(電圧値)とを関係付ける転写バイアス補正情報、及び転写材Pの電気抵抗値と吸着バイアスの値(電圧値)とを関係付ける吸着バイアス補正情報が、例えば表1に示すようなテーブルデータの形態で記憶されている。従って、コントローラ60は、このテーブルデータに従って、求めた転写材Pの電気抵抗値に対応する適正な転写バイアス、吸着バイアスを決定することができる。そして、決定した値の転写バイアスを転写バイアス電源62から転写ローラ12に印加し、又決定した値の吸着バイアスを吸着バイアス電源61から吸着ローラ20に印加することにより画像形成を行なう。
尚、表1のテーブルにおける転写バイアスの電圧値は、実際にゼロックス社製商品名4024用紙、秤量75g/m2を様々な環境条件において電気抵抗値を変化させ、それぞれの条件で最も転写効率が良く、且つ、画像不良が発生しないことを確認して決定した。又、同様に表1のテーブルにおける吸着バイアスの電圧値は、転写材Pが十分に転写ベルト11と転写材Pが吸着され、且つ、転写材Pに与える電荷量が一定になるように、転写材Pの電気抵抗の検知時と同じ10μA程度を流すことができるという条件で決定した。
ここで、転写材Pの先端が第1の画像形成ステーションSaの転写部nに達する時点までには、吸着電流と転写電流の干渉を防止するため、吸着ローラ20に印加する吸着バイアスは、上述のようにして決定した一定の電圧値に切り替えて、定電圧制御を行うことが好ましい。
このように、検出部材として吸着ローラ20を利用する場合は、検出位置である吸着部mで転写材Pの搬送方向先端側の所定範囲で転写材Pの電気抵抗の測定を行う。この時、上述のように、転写材Pの電気抵抗の測定時に吸着部mに流れる電流値を、転写材Pを転写ベルト11に吸着させるのに十分な値とすることで、転写材Pを転写ベルト11に吸着させると共に、転写材Pの電気抵抗を測定することができる。そして、転写材Pの電気抵抗が求められた時点で、典型的には同じ転写材Pの途中から、転写材Pの電気抵抗に応じて決定された一定の電圧値の吸着バイアスを印加し始めることができる。
又、本実施例では、上述のようにして決定した一定の電圧値の転写バイアスを定電圧制御にて転写ローラ12に印加する。小さいサイズの転写材Pを用いる場合に、通紙部よりも外側の非通紙部に転写電流が逃げて転写電流不足により転写不良が発生することを防止するためである。尚、本実施例では、全ての画像形成ステーションSで転写バイアスの値は同一とし、少なくとも転写材Pが各画像形成ステーションSの転写部に到達する時点までには転写バイアスの印加を開始する。但し、転写材Pの測定結果に基づいて決定する転写バイアスの値は、全て若しくは一部の画像形成ステーションSで異なっていてもよい。
又、通常、転写材カセット17等に収納された同一種類の転写材Pは、短い時間間隔ではほぼ同じ環境下にあり、電気抵抗の変動は少ないことが予測される。従って、例えば連続して複数枚の同一の記録材Pに画像形成を行う場合には、前回測定した転写材Pの電気抵抗値に基づいて決定された転写バイアス、吸着バイアスの値を、次の画像形成時に適用してもよい。
即ち、例えば、画像形成開始信号が画像形成装置に入力されてから1枚目の転写材Pの電気抵抗を検知した結果を、コントローラ60の記憶部等に記憶しておき、複数の転写材に連続して画像形成を行う場合、コントローラ60は、その電気抵抗値に基づいて次の2枚目の転写材Pへの画像形成時の転写バイアス、吸着バイアスを制御する。これにより、再度検知工程を行わなくても、転写材Pの種類が変更されていない限り2枚目以降についても、最適な転写バイアス、吸着バイアスにて画像形成を行うことができる。
複数の転写材Pに連続して画像形成を行う場合に、途中で転写材Pの種類が変更された否かは、例えば、転写材カセット17が装置本体Aから着脱されたかどうかを検知する手段からの情報や、ホストコンピュータからの転写材Pの種類の変更情報を用いることによって判断することができる。
以上、本実施例によれば、転写材Pの電気抵抗値を正確に検知し、この結果に基づいて最適な転写バイアスの値、吸着バイアスに制御し、良好な画像を安定して得ることが可能となった。
つまり、本実施例によれば、例えば一日のうちの装置本体A内の環境変動、製造上のバラツキ、或いは耐久による劣化等により転写ベルト11や吸着ローラ20の電気抵抗値が変動した場合でも、転写ベルト11や吸着ローラ20の電気抵抗の変動分をキャンセルして、転写材Pの電気抵抗値を直接求めることができる。これにより、精度良く、通紙時に必要とされる最適な転写バイアス、吸着バイアスの値を求めることができる。
更に、転写材Pの搬送方向において最初の画像形成手段(本実施例では第1の画像形成ステーションSa)よりも上流側にある検出部材、特に、本実施例では吸着ローラ20を利用して転写材Pの電気抵抗値を検知することにより、転写材Pが第1の画像形成ステーションSaの転写部nに到達する前に転写材Pの電気抵抗値を検知し、その結果に応じて転写バイアスを変更することができる。これにより、望ましくは第1の画像形成ステーションSaにて形成する画像の先端から直ちに、転写材Pの電気抵抗の検知結果を反映させることができる。又、このように、転写材Pの搬送方向において最上流の画像形成ステーションSaにて形成する画像の先端から、転写材Pの電気抵抗の検知結果を反映させるような場合を考えると、転写材Pが第1の画像形成ステーションSaの転写部nに到達する前に転写材Pの電気抵抗値を検知することで、転写材Pの電気抵抗値の検知から転写バイアスを切り替えるまでの時間的な余裕を確保することができる。このため、画像形成速度(プロセススピード)の高速化への対応も容易となる。
実施例2
次に、本発明の他の実施態様について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は実施例1と同じであるので、実施例1のものと実質的に同一若しくは相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
本実施例では、実施例1と同様に、吸着ローラ20を利用して転写材Pの電気抵抗を求めて、転写バイアス、吸着バイアスを決定する。本実施例では、実施例1と異なり、吸着ローラ20に定電圧制御されたバイアスを印加することにより、測定された電流値に基づいて転写材Pの電気抵抗値を求める。
つまり、吸着ローラ20を定電流制御で駆動すると、予期せぬような高抵抗の転写材Pが給紙された時や、何らかの故障で吸着ローラ20への給電が不安定になった時に、異常な高電圧が高圧基板(吸着バイアス電源)61にかかり、高圧リーク、放電に起因する異常画像の発生や、場合によっては電源の故障を引き起こすことが懸念される。そのため、本実施例では、定電圧制御されたバイアスを用いて転写材Pの電気抵抗値を測定する。
本実施例では、検出位置にて転写ベルト11に転写材Pが担持された状態で転写ベルト11及び転写材Pに第1のバイアスを印加し、検出位置にて転写ベルト11に転写材Pが担持されていない状態で転写ベルト11に第2のバイアスを印加する検出部材と、この検出部材が前記第1のバイアス及び前記第2のバイアスを出力するために、この検出部材に対し定電圧制御されたバイアスを出力する検出バイアス出力手段と、検出バイアス出力手段が定電圧制御されたバイアスを出力する際の出力電流値を検知する検知手段とを設ける。
図4に示すように、本実施例では、実施例1と同様に前記検出部材として吸着ローラ20を利用し、前記検出バイアス出力手段として吸着バイアス電源61を利用する。そして、本実施例では、吸着バイアス電源61が定電圧制御されたバイアスを出力する際の出力電流値を検知する検知手段として、吸着バイアス電源61に接続された電流計64が用いられる。
更に説明すると、本実施例では、コントローラ61は、吸着ローラ20と対向ローラ14との間に転写ベルト11と転写材Pとを挟持している時(第1の状態)の電流計64の検知結果と、吸着ローラ20と対向ローラ14との間に転写ベルト11だけを挟持している時(第2の状態)の電流計64の検知結果とに基づいて、転写材Pの電気抵抗を求める。このとき、本実施例では、前記第1の状態での電流計64の検知結果から求めた電気抵抗から、前記第2の状態での電流計64の検知結果から求めた電気抵抗を減算することによって、転写材Pの電気抵抗を検知する。そして、検知した転写材Pの電気抵抗に応じて、適正な転写バイアス、吸着バイアスを決定する信号を生成する。
より具体的には、本実施例では、吸着ローラ20に所定の電圧を印加し、このとき流れる電流(吸着バイアス電源61から対向ローラ14に流れる電流)を電流計64により検知する。そして、A/D変換された検知電流値を示す信号がコントローラ60に送られる。コントローラ60は、この電流値の検知結果から、吸着ローラ20と対向ローラ14との間に転写材Pがある時と無い時との電気抵抗を求める。そして、両者の差に基づいて、転写材Pの電気抵抗を求め、転写ローラ12に印加する転写バイアス、吸着ローラ20に印加する吸着バイアスを決定する。
更に、本実施例では、計算によって求められた転写材Pの電気抵抗に基づき、第1の画像形成ステーションSaの転写バイアスを決定すると同時に、各画像形成ステーション間での転写バイアスの差を決定する。
つまり、転写材吸着型の画像形成装置では、転写材Pが転写を受けて、転写材Pの搬送方向の下流の画像形成ステーションSに移動するに従って、トナー像を転写材Pに転写するのに必要とされる転写バイアス(絶対値)が高くなる場合がある。これは、転写部nにおける主に転写ベルト11及び転写材Pのチャージアップに起因するものである。転写ベルト11及び転写材Pが上流側の画像形成ステーションSで転写部において帯電を受けてチャージアップすると、後続の画像形成ステーションSでは、その帯電電荷による電位をかさ上げして転写バイアスを印加しないと、同じ転写電流を流すことができない。
又、転写材Pには、様々な電気抵抗値のもの(種類、個体差、環境変動等による。)が存在するため、チャージアップを起こすものと、無視してもかまわないものがある。高抵抗のOHTフィルム(光透過性樹脂)や、一旦定着器8を通過して水分が蒸発し高抵抗化した両面画像形成時の転写材Pは、一旦帯電するとその電荷を保持し易い。このため、上流側の画像形成ステーションSの転写部nで電荷を付与されると、次の画像形成ステーションSにおける転写工程に影響を及ぼすことがある。
このことから、本実施例では、吸着部mで検知された転写材Pの電気抵抗値に基づき、第1の画像形成ステーションSaにおける転写バイアスを決定するのと同時に、各画像形成ステーションSでの転写材Pのチャージアップを見込んで、第2の画像形成ステーションSb以降における転写バイアスを決定する。特に、本実施例では、各画像形成ステーション間で転写バイアスを順次に増加させる量(転写バイアス順次アップ量:その量がゼロである場合も含む。)を決定する。
一例を挙げると、第1の画像形成ステーションSaの転写バイアスの電圧値(定電圧)が2000Vで、順次アップ量が200Vであった場合は、転写バイアスの電圧値(定電圧)は、第2の画像形成ステーションSbでは2200V、第3の画像形成ステーションScでは2400V、第4の画像形成ステーションSdでは2600Vとなる。
以下、より具体的な一実施例を示す。
本実施例では、先ず、画像形成を行う前の前回転時において、吸着ローラ20と転写ベルト11との間に転写材Pが存在しない状態で、吸着ローラ20に1000Vの定電圧を印加し、この時の電流値を電流計64で測定する。ここで印加する定電圧値は、下記の転写材Pが存在する際に吸着部に流れるように設定されている電流値と、同程度の電流値が流れるような電圧値に設定するのが好ましい。この時に印加された電圧値と、検知された電流値とから計算される電気抵抗値Z2は、対向ローラ14、転写ベルト11及び吸着ローラ20の電気抵抗を直列に合計したものである。
次に、プリント動作時において、転写材Pが吸着ローラ20に達した時点で、1500Vの定電圧を吸着ローラ20に印加する。ここで印加する定電圧値は、これに限定するものではないが、特に、検出部材として吸着ローラ20を利用する場合は、好ましくは、所定の転写材P(例えば、一般に用いられる普通紙の片面画像形成時で設定することができる。)が十分に転写ベルト11と転写材Pが吸着される電流が流れるような値に設定する。この時に印加された電圧値と、検知された電流値とから計算される電気抵抗値Z1は、対向ローラ14、転写ベルト11、転写材P及び吸着ローラ20の電気抵抗を直列に合計したものである。
実施例1と同様に、各部材は図2に示すように直列に接続されていると考えることができるため、測定された電気抵抗値Z1から電気抵抗値Z2を引くことにより、即ち、Z1−Z2を計算することで、転写材Pの電気抵抗値を算出することができる。
そして、実施例1と同様にして、検知された転写材Pの電気抵抗値から、第1の画像形成ステーションSaにおいて通紙時に必要とされる転写バイアスの電圧値(定電圧)、及び吸着バイアスの電圧値(定電圧)を求める。本実施例では更に、使用される転写材Pの状態(電気抵抗値)から、その転写材Pのチャージアップのし易さを予測して、後続の画像形成ステーションSにおける転写バイアスを適宜変化させる。これによって、更に高精度のバイアス制御を行なう。
つまり、本実施例では、コントローラ60は、計算された転写材Pの電気抵抗値の情報によって、通紙される転写材Pがチャージアップし易い高抵抗の転写材P、例えばOHTフィルム、或いは両面画像形成時に第2面(裏面)に対する画像形成のために一旦定着器8を通った後再度吸着部へと供給された転写材Pであると判断した場合、転写バイアスの電圧値(定電圧)を、転写材Pの搬送方向下流側にいくに従って各画像形成ステーション間で順次増加させる量(転写バイアス順次アップ量)を、その転写材Pの電気抵抗値に応じて適宜変更する。これにより、結果的に各画像形成ステーションSにおいて、ほぼ同じ転写電流が流れるように制御する。
具体的には、本実施例では表2に示すテーブルデータに基づいて転写バイアス、吸着バイアス、順次アップ量を決定する。
表2のテーブルデータは、一例としてOHTフィルムを通紙した場合に最適化されたものである。
OHTフィルムは、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムの表面に、帯電防止処理を施したものが主であるが、厚み方向には絶縁に近い非常に高い電気抵抗値を示す。そのため、転写電荷を受けると、この影響が下流の画像形成ステーションまで影響を及ぼすことがある。特に、転写部nのインピーダンスが高い場合は、OHTフィルムの電荷減衰が阻害されるため、下流の画像形成ステーションにおける転写バイアスの嵩上げを十分にする必要がある。
高温高湿環境(H/H環境)などで、OHTフィルムの電気抵抗値が低い場合は、第1の画像形成ステーションSaで受けたOHTフィルム上の表面電荷が減衰するため第2の画像形成ステーションSb以降の転写バイアスを嵩上げする必要はない。これは実施例1で示した普通紙の片面プリントの場合と同じである。
一方、低温低湿環境(L/L環境)などでOHTフィルムの表面の帯電防止処理の効果が弱くなり、OHTフィルムの電気抵抗値が高い場合は、第1の画像形成ステーションSaの転写バイアスは高く設定する必要があり、且つ、転写材Pのチャージアップによるより下流の画像形成ステーションSにおける転写電界の不足を補うため、下流に行くに従って転写バイアスを嵩上げすることが必要となる。
15℃/10%RHの低温低湿環境(L/L環境)で、転写材PとしてOHTフィルムを用いて本実施例の画像形成装置100を動作させた。前回転時の吸着電流は5μA流れ、Z2は200MΩと求まった。又、プリント開始時の吸着電流は1.5μAで、Z1は1000MΩとなった。このため、転写材Pの電気抵抗値は800MΩであることが判明した。
そして、表2より、第1の画像形成ステーションSaにおける転写バイアスの電圧値(定電圧)は3500Vと決定された。又、第2の画像形成ステーションSb以降における転写バイアスの電圧値(定電圧)は、それぞれ3800V、4100V、4400Vと決定された。決定された転写バイアスを各画像形成ステーションSの転写ローラ12に印加することにより、乾燥して電気抵抗値が上昇したOHTフィルムを用いた場合でも、適正な画像形成が行なえた。
ここで、上記実験条件によれば、転写材Pの抵抗値が800MΩである。この場合、実施例1におけるように、定電流制御されたバイアスにより転写材Pの電気抵抗を検知する構成では、前回転時に吸着ローラに10μAを流そうとした場合の吸着電圧は8000Vとなる。しかしながら、高圧電源が発生することができる電圧には上限がある。例えば、実施例では、吸着バイアス電源61として容量3500Vの高圧電源を用いたが、この電源では上記8000Vの電圧を印加することはできず、誤検知を起こすことになる。このように、本実施例のように定電圧制御されたバイアスにより転写材Pの電気抵抗を検知する構成とすることで、予期せぬほど電気抵抗が高い転写材Pが通紙された場合の転写材Pの電気抵抗の誤検知を防止し、転写バイアス、吸着バイアスの制御の精度を高める効果もある。
尚、定電圧制御にて転写材Pの電気抵抗を検知する方法は、転写バイアスを順次上昇させる方法と共に用いる態様に限定されない。当然、実施例1のように、転写バイアスは全ての画像形成ステーションSに対して同一とする場合において、定電圧制御にて転写材Pの電気抵抗を検知する方法を適用してもよい。
以上、本実施例によれば、実施例1と同様の効果を奏し得ると共に、チャージアップし易い転写材Pが通紙された場合に、その転写材Pの状態に応じて、より精度の高い転写バイアス、吸着バイアスの制御を行うことができる。
(その他の実施例)
以上、具体的な実施例に則して本発明を説明したが、本発明は上記実施例の態様に限定されるものではない。
上記各実施例では、転写材Pの搬送方向において最初の画像形成手段より上流に配置される検出部材、特に、その検出部材として吸着ローラ20を利用するものとして説明した。前述のように、このような配置の検出部材を用いることで、その最初の画像形成手段にて形成する画像の、望ましくは先端から直ちに、転写材Pの電気抵抗の検知結果を反映させることができ、又、このような場合に画像形成速度(プロセススピード)の高速化への対応も容易となるので極めて有利である。特に、吸着ローラ10を検出部材として用いることで、検出部材を別個に設けなくてもよいので、構成の簡略化が可能である。
但し、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、吸着ローラ20よりも転写材Pの搬送方向上流側に、転写ベルト11との間で記録材Pを挟持し得るように配置された検出部材を別個に設けることもできる。
又、検出部材として転写ローラ12を用いることもできる。例えば、図5に示すように、転写材Pの搬送方向最上流の第1の画像形成ステーションSaの転写部(検出位置)nにおいて、転写ベルト11と感光ドラム1との間に転写材Pが存在する第1の状態と、存在しない第2の状態で、検出バイアス出力手段として機能する転写バイアス電源62から、所定の電圧が印加されるように定電圧制御されたバイアスを転写ローラ12に印加する(感光ドラム1が対向部材(対向電極)として機能する。)。この時、それぞれの状態において、検知手段としての電流計64で、転写部nに流れる電流値を測定する。コントローラ60は、それぞれの状態において測定された電流値から、転写材Pの電気抵抗値を求める。より詳細には、上記実施例と同様に、第1の状態での電気抵抗値から第2の状態での電気抵抗値を減算することにより、転写材Pの電気抵抗値を求めることができる。そして、転写材Pの電気抵抗の測定結果に基づいて、第1の画像形成ステーションSa、及びその下流側の第2、第3、第4の画像形成ステーションSb、Sc、Sdにおける転写バイアスを決定することができる。更に、連続して画像形成を行う場合などにおいては、同一種類の次の転写材Pに対する吸着バイアスを決定するようにしてもよい。
このように、検出部材として転写ローラ12を用いる場合、先ず、画像形成前の前回転時に、転写ベルト11と感光ドラム1との間に転写材Pが存在しない状態で、転写部nに所定の電圧を印加した際の電流値を測定する。次いで、転写材P上の非画像形成領域、即ち、転写材Pの搬送方向において先端側の余白部分において所定の電圧を印加した時の電流値を測定することができる。或いは、転写ベルト11と感光ドラム1との間に転写材Pが存在する状態で印加する所定の電圧値を、転写材Pの種類によって予め決められているトナー像の転写用のバイアスと同じとすれば、上記非画像形成領域に限らず、転写材Pの搬送方向先端から所定の領域内で電流値を測定することができる。この場合は、第1の画像形成ステーションにおいては、少なくとも転写材Pの搬送方向において途中から、転写材Pの電気抵抗が求められた時点で、その値に応じた転写バイアスに制御することができる。勿論、後続の画像形成ステーションにおける転写バイアスのみを転写材Pの電気抵抗に応じた転写バイアスに制御してもよい。
又、検出部材として転写ローラ12を用いる場合についても、上記実施例にて説明したように、図6に示す如く電圧を検知する構成としてもよい。例えば、転写材Pの搬送方向最上流の第1の画像形成ステーションSaの転写部(検出位置)nにおいて、転写ベルト11と感光ドラム1との間に転写材Pが存在する第1の状態と、存在しない第2の状態で、検出バイアス出力手段として機能する転写バイアス電源62から、所定の電流が流れるように定電流制御されたバイアスを転写ローラ12に印加する。この時、それぞれの状態において、検知手段としての電圧計63で、転写部に印加される電圧値を測定する。コントローラ60は、それぞれの状態において測定された電圧値から、転写材Pの電気抵抗値を求める。より詳細には、上記実施例と同様に、第1の状態での電気抵抗値から第2の状態での電気抵抗値を減算することにより、転写材Pの電気抵抗値を求めることができる。これに限定されるものではないが、例えば、転写バイアス電源62から定電流制御にて印加するバイアスを、流れる電流が本来転写に必要な電流値となるように制御して、この時転写部で発生する電圧を検知するようにすることができる。これによって、上記同様、転写材P上の非画像形成領域に限らず、転写材Pの搬送方向先端から所定の領域内で電圧値を測定することができる。
ここで、検出部材として転写ローラ12を用いる場合について、第1の画像形成ステーションSaにおいて転写材Pの電気抵抗を測定し、第1〜第4の画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdにおける転写バイアスを決定する(全て同じ値であっても、全て若しくは一部が異なっていてもよい。)例を説明したが、これに限定されるものではない。各画像形成ステーションSにおいてその画像形成ステーションSにおける転写バイアスを決定したり、或いは、隣接する上流側の画像形成ステーションSにおいて測定した転写材Pの電気抵抗値に応じて、隣接する下流側の画像形成ステーションSにおける転写バイアスを決定するようにしてもよい。又、最上流の画像形成ステーションSにおける転写バイアスについては、上記実施例のように吸着ローラ20など更に上流側に配置された検出部材を用いて測定された転写材Pの電気抵抗値に基づいて決定するなどしてもよい。又、例えば、第1の画像形成ステーションSaにおいて測定された転写材Pの電気抵抗値に基づいて、実施例2で説明したように、転写バイアス順次アップ量をも決定するようにしてもよい。
又、検出部材は、上述の如きローラ状のものに限定されるものではなく、ブラシ状、ブレード状のものであってもよい。更に、例えば、上記実施例における吸着ローラ20と対向ローラ14との配置関係を逆にして、転写ベルト11の内側のローラにバイアスを印加して、転写ベルト11の外側のローラを対向部材(対向電極)として機能させてもよい。即ち、検出位置において転写材Pを担持した状態の転写ベルト11、及び検出位置において転写材Pを担持していない状態の転写ベルト11にバイアスを印加する検出部材と、転写ベルト11を介して検出部材に対向する位置に配置される対向部材(対向電極)の配置関係は、転写ベルト11の表裏に関して任意である。
尚、インライン方式の画像形成としては、4つの異なる色のステーションを横方向に並べた構成もあるが、この場合、装置の設置面積が大きくなりオフィスにおける装置の小型化の要求を満足し得なくなり易い。又、レーザスキャナーなどの光学素子が本体の上部に来るため、本体を上開きにして搬送路や消耗部品にアクセスすることが難しく、トナーや感光ドラムの交換が難しくなったり、ジャム(紙詰まり)時の操作性が悪くなる場合がある。これに対し、上記実施例の画像形成装置100(図1)のように、複数の画像形成ステーションを縦に並べることによって、画像形成装置100の設置面積の低減を図り、更に転写材Pの搬送路に沿って装置本体Aを縦に分割することによってジャム処理性、消耗部品の交換性を向上させることができる。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、転写材担持体に担持された転写材に画像形成手段により形成したトナー像を静電的に転写する方式の画像形成装置であれば、複数の画像形成部が、例えば水平方向に直列に配列された画像形成装置であっても本発明は等しく適用することができる。