JP2006144068A - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐応力腐食割れ性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法を提供する。
【解決手段】結晶粒界にクロム炭化物が選択的に整合析出しており、結晶粒界近傍のクロム欠乏層が実質的にないオーステナイト系ステンレス鋼。溶体化処理後、鋭敏化処理をし、クロム炭化物を整合析出させた後に、結晶粒界近傍のクロム欠乏層を無くすための回復処理を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼、およびその製造方法に関するものである。
従来、原子力プラントあるいは化学プラント内の構造用部材(ボルト、板等)として用いられているSUS304、316等のオーステナイト系ステンレス鋼は、長年使用され、高い負荷応力が存在すると環境下で応力腐食割れ(SCC)を生じ易くなることが知られている。そこで従来から、各種環境に対して、耐SCC性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼の開発が強く望まれている。
例えば、軽水炉型原子力発電プラント炉内構造用部材には、SUS304、316等のオーステナイト系ステンレス鋼が用いられてきているが、溶接部などの結晶粒界近傍では、Crの欠乏層が形成されたりする。このような偏析状態で高い負荷応力や残留応力が存在すると、軽水炉の環境である高温高圧水中で応力腐食割れを生じやすくなる。
この問題に関しては、これまで例えば特許文献1に記載の高Niオーステナイト系ステンレス鋼などが開発され、特定組成の高Niステンレス鋼に、合金中の結晶形態を最適なものとする熱処理、後加工方法を組み合わせた技術などが提案されている。
しかしながら、Ni含有量の多い高Niステンレス鋼組成とすることなく、従来構造材として使用されているJIS(日本工業規格)に規定するSUS304、SUS316、SUS310S等のステンレス鋼をベース合金としたもので、例えば軽水炉の使用環境下(高温高圧水中)において応力腐食割れ(SCC)を生じない構造材料が待望されている。そして、その製造において簡易な方法として、冷間加工による後加工等を必要としない製造方法が望まれている。
特開平9−125205号
本発明者らは、上記問題点に鑑み、主に熱処理を施すことによってSCC発生を生じ難くして、原子炉の配管や炉内構造物の構成材料として長期間使用できるオーステナイト系ステンレス鋼、およびその製造方法を開発すべく、鋭意検討した。
その結果、本発明者らは、従来は粒界Cr欠乏層を形成する鋭敏化処理として避けられていた600〜800℃における熱処理を積極的に用いて、更なる熱処理を施すことにより、鋭敏化の問題を回避しつつ粒界に炭化物を析出させて耐SCC性を向上させる製造方法によって、かかる問題点が一気に解決されることを見出した。本発明は、かかる見地より完成されたものである。
本発明は、結晶粒界にクロム炭化物が選択的に整合析出しており、結晶粒界近傍のクロム欠乏層が実質的にないオーステナイト系ステンレス鋼を提供するものである。結晶粒界近傍のクロム欠乏層が実質的にないとは、炭化物周辺のクロム欠乏した領域でのクロム濃度が母相のクロム濃度と同程度になっていることをいう。
ここで、オーステナイト系ステンレス鋼は、C、Si、Mn、P、S、Ni、Cr、Mo、N、等の元素を含有しており、残部が実質的にFe及び不可避不純物からなるものであり、例としては、重量%で、C:0.08%以下、Mn:2.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:8.0〜10.5%、Cr:18.00〜20.00%、残部Feよりなる組成のSUS304(JIS規格)、重量%で、C:0.08%以下、Mn:2.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:10.0〜14.0%、Cr:16.00〜18.00%、Mo:2.00〜3.00%、残部Feよりなる組成のSUS316(JIS規格)、又は、重量%で、C:0.08%以下、Mn:2.00%以下、Si:1.50%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:19.0〜22.0%、Cr:24.00〜26.00%、残部Feよりなる組成のSUS310S(JIS規格)が挙げられる。
溶体化処理後、鋭敏化処理をし、結晶粒界にクロム炭化物を選択的に整合析出させ、その後、回復処理をすることにより、結晶粒界近傍のクロム欠乏層を実質的に無くした、オーステナイト系ステンレス鋼を提供するものである。
前記溶体化処理が1000℃以上1180℃以下で実施され、前記鋭敏化処理が600℃以上800℃未満にて5時間以上の第1の熱処理を施し、その後、800℃以上900℃以下にて5時間以上の第2の熱処理を施すことにより実施されることが好ましい。
または、前記溶体化処理が1000℃以上1180℃以下で実施され、前記鋭敏化処理が600℃以上700℃以下にて5時間以上の第1の熱処理を施し、その後、700℃を越え800℃未満の温度にて5〜20時間の第2の熱処理を施すとともに、引続き800℃以上900℃以下にて5時間以上の第3の熱処理を施すことにより実施されることが好ましい。
本発明は、別の局面によれば、オーステナイト系ステンレス鋼に、1000℃以上1180℃以下で溶体化処理後、600℃以上800℃未満にて5時間以上の第1の熱処理(炭化物粒界析出熱処理)を施し、その後、800℃以上900℃以下にて5時間以上の第2の熱処理を施す、ステンレス鋼の製造方法を提供するものである。ここで、第1の熱処理では、5時間以上100時間以内の熱処理を施すことが良い。第1の熱処理では、ステンレス鋼に鋭敏化が生じて耐SCC性に乏しくなるが、第2の熱処理を施すことにより、粒界に炭化物の析出を残したままで鋭敏化の回復が図れる。よって、本発明によれば、鋭敏化の問題が回避されるとともに、粒界に炭化物を析出させることで耐SCC性が著しく向上する。
また、本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼に、1000℃以上1180℃以下で溶体化処理後、600℃以上700℃以下にて5時間以上の第1の熱処理(炭化物粒界析出熱処理)を施し、その後、700℃を越え800℃未満の温度にて5〜20時間の第2の熱処理を施すとともに、引続き800℃以上900℃以下にて5時間以上の第3の熱処理を施す、ステンレス鋼の製造方法を提供するものである。ここで、第1の熱処理では、5時間以上100時間以内の熱処理を施すことが良い。第3の熱処理では、5時間以上100時間以内の熱処理を施すことが良い。第1および2の熱処理では、ステンレス鋼に鋭敏化が生じて耐SCC性に乏しくなるが、第3の熱処理を施すことにより、粒界に炭化物の析出を残したままで鋭敏化の回復が図れる。よって、上記と同様に、鋭敏化の問題が回避されるとともに、粒界に炭化物を析出させることで耐SCC性が向上する。
本発明は、また別の局面によれば、上記いずれかの方法により製造した耐食性ステンレス鋼を提供するものである。
かかる耐食性ステンレス鋼は、好ましくは、結晶粒界にクロム炭化物が選択的に整合析出しており、結晶粒界近傍のクロム欠乏層が実質的にないものである。
本発明においては、前記オーステナイト系ステンレス鋼が、鋼中の重量%でSi量が0.1%以下であることが更に好ましい。Si量を鋼中の重量%で0.1%以下に低減させることにより、耐SCC性が一層向上する。
以上説明したように、本発明の製造方法では、溶体化処理後、特定の温度および時間で複数回の熱処理を施すことにより、結晶粒界にCr炭化物を析出させることができる。これにより、得られるオーステナイト系ステンレス鋼は、SCCが発生し難く、長期間の高温高圧水中での使用にも十分に耐えられる。また、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼では、Si量の適正化を図ることにより、SCCの原因を抑制することができる。よって、一層の耐SCC性に優れたステンレス鋼を得ることができる。
このような本発明の製法により得られたオーステナイト系ステンレス鋼は、原子力プラントや化学プラントの配管又は各種構造物の材料として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施の形態によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施の形態によって何ら限定されるものではない。
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、C、Si、Mn、P、S、Ni、Cr、Mo、N、等の元素を含有しており、残部が実質的にFe及び不可避不純物からなるものである。
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼の例としては、重量%で、C:0.08%以下、Mn:2.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:8.0〜10.5%、Cr:18.00〜20.00%、残部Feよりなる組成のSUS304(JIS規格)、重量%で、C:0.08%以下、Mn:2.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:10.0〜14.0%、Cr:16.00〜18.00%、Mo:2.00〜3.00%、残部Feよりなる組成のSUS316(JIS規格)、又は、重量%で、C:0.08%以下、Mn:2.00%以下、Si:1.50%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:19.0〜22.0%、Cr:24.00〜26.00%、残部Feよりなる組成のSUS310S(JIS規格)をベースとする。
このようなステンレス鋼に、1,000〜1,150℃(SUS304、SUS316)又は1,030〜1,180℃(SUS310S)の温度で固溶化熱処理を施した後、600℃以上800℃未満の温度にて5時間以上の第1の熱処理を施し、その後、800〜900℃にて5時間以上の第2の熱処理を施す。これらのステンレス鋼においては結晶粒界に母相と整合したCr炭化物が析出し(整合析出)、この炭化物が結晶粒界に析出することにより結晶粒界が強固になり、耐SCC性が向上する。
図1(a)に、整合析出した粒界炭化物の断面図を模式的に示す。図1(a)において、粒界炭化物1は、結晶粒界3に析出しており、粒界炭化物1の格子と、母相2の格子とのつながりがある(連続している)。このような状態を、整合析出といい、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、結晶粒界にクロム炭化物が整合析出していることを特徴とする。いっぽう、図1(b)に、非整合析出した粒界炭化物の断面図を模式的に示す。図1(b)において、粒界炭化物1は、結晶粒界3に析出しているが、粒界炭化物1の格子と、母相2aの格子とのつながりがない。
本実施の形態(その1)では、先ず、SUS304又は316を1,000〜1,150℃の温度で、SUS310Sを1,030〜1,180℃の温度で、5分以上溶体化熱処理し、合金中の溶質原子を母相中に固溶させる。この溶体化熱処理を施したオーステナイト系ステンレス鋼を、600〜800℃にて5時間以上の第1の熱処理を施すことによって、鋭敏化が起こり、鋼にはクロム欠乏層が発生する。
この第1の熱処理では、処理温度が600℃未満では、結晶粒界へのクロム欠乏層の発生とともに目標とする炭化物の析出が十分に行えないので好ましくない。また、処理温度が800℃を超えると、クロム欠乏層の発生に時間がかかることになる。したがって、結晶粒界に炭化物を十分に析出させてクロム欠乏層を発生させるには、熱処理温度範囲としては600〜800℃が好ましく、600〜700℃でも構わない。熱処理の時間は、炭化物を十分に析出させ、高い耐SCC性を得るためには最低5時間程度とするのが望ましい。また、通常の処理時間は100時間程度までで十分である。
次いで、本実施の形態の方法では、800〜900℃にて5時間以上の第2の熱処理を施す。この第2の熱処理によって、粒界に炭化物を析出させた状態で、クロム欠乏層をなくした状態を形成することができる。この第2の熱処理により、結晶粒界が強固になり、耐SCC性を向上させることができる。
この第2の熱処理では、処理温度が800℃未満で加熱しても、Cr欠乏層の回復が十分に行えないので、目標とする耐SCC性が得られない。また、処理温度が900℃を超えると、母相と整合した炭化物が再固溶化して逆に析出が十分に起こらない。したがって、結晶粒界に炭化物を十分に析出させるとともに、Cr欠乏層を回復させるには、熱処理温度範囲としては800〜900℃が好ましい。熱処理の時間は、炭化物を十分に析出させるとともに、Cr欠乏層を回復させ、高い耐SCC性を得るためには最低5時間程度とするのが望ましい。また、通常の処理時間は100時間程度までで十分である。
本実施の形態の製造方法では、ベース合金としてSUS304、SUS316、SUS310Sのいずれかのオーステナイト系ステンレス鋼を使用し、複数回の熱処理を行うことによって、SCCを生じにくいような粒界炭化物の析出状態を付与しておく。これにより、SCC発生を生じ難くして、原子炉や化学プラントの配管や各種構造物の構成材料として長期間使用できるオーステナイト系ステンレス鋼を提供する。
また、他の実施の形態(その2)として、SUS304又は316を1,000〜1,150℃の温度で、SUS310Sを1,030〜1,180℃の温度で、5分以上溶体化熱処理し、合金中の溶質原子を母相中に固溶させる。この溶体化熱処理を施したオーステナイト系ステンレス鋼を、600℃以上700℃以下にて5時間以上の第1の熱処理を施すことによって、鋭敏化が起こり、鋼にはクロム欠乏層が発生する。さらに、700℃を越え800℃未満の温度(例えば720℃〜780℃)にて5〜20時間の第2の熱処理を施すとともに、引続き800〜900℃にて5時間以上の第3の熱処理を施す態様も好適である。この形態では、第2の熱処理は、700℃を越え800℃未満の温度にて5〜20時間施すことが好ましい。第1の熱処理と第3の熱処理との間に、第2の熱処理を設けて段階的に熱処理を行うことにより、確実に粒界へ炭化物の析出を行うことが可能となり、一層粒界を強固にすることができる。結果として、耐SCC性が一層向上する。
オーステナイト系ステンレス鋼の中で、Cは所定の強度を得る為に、またオーステナイトを安定化させる為に不可欠の元素である。本発明では、第1の熱処理で炭化物の析出により鋭敏化されたクロム欠乏層を形成させる。よって、炭化物析出の観点からもC量を一定量、例えば重量%で0.01%以上有することが好ましい。
オーステナイト系ステンレス鋼の製造過程において、Siは脱酸材等として重要な役割を果たしており、通常0.5%程度含まれている。しかし、本発明では、この0.5%程度のSi量が、耐SCC性向上の観点から、工業的に安定して低減できる範囲で極力低減することが望ましい。よって、例えば0.1%以下好ましくは0.05%以下とすることによって、得られるステンレス鋼の一層の耐SCC性向上が達成される。
Crはオーステナイト系ステンレス鋼の耐食性を保持する上で極めて重要な元素であり、Crはフェライト生成元素である。Cr量をあまり高くするとオーステナイトの安定性が悪くなり、また、オーステナイト系ステンレス鋼の延性を低くし、加工性を劣化させる。
本発明の製造方法で得られたオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば原子力プラントにおける配管や炉内構造材として特に好適に用いることができる。
原子力プラントは、通常、加圧水型原子炉(PWR)を用いたプラントと、沸騰水型原子炉(BWR)を用いたプラントとに大別される。これらのプラント内における環境水は、それぞれ異なった状態にあるので、各種の環境水に則した耐食性が要求される。
加圧水型原子炉(PWR)では、燃料集合体で高温となった熱水は、高温配管にて蒸気発生器へ供給され、蒸気発生器にて熱交換され低温となって一次冷却材ポンプを介して低温配管にて原子炉圧力容器内へ戻される構成となっている。プラント内の環境水は、高温高圧水となっており、用いられるステンレス鋼は高温高圧水中に曝される。
沸騰水型原子炉(BWR)では、炉上部に燃料集合体で沸騰して発生した気液二相流から蒸気のみを取り出すために、気水分離器、さらに、その上部には蒸気乾燥器が設置されており、主蒸気−給水系統とは別にジェットポンプと再循環ポンプとを組合せた外部再循環回路を構成している。プラント内の環境水は、高温高圧飽和溶存酸素水となっており、用いられるステンレス鋼は高温高圧飽和溶存酸素水中に曝される。
これら各種原子力プラントの各系統、各種配管およびポンプ等の構成部材、あるいは炉内構造物を、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼によって作製することによって、高温高圧水環境下あるいは高温高圧飽和溶存酸素水環境下においても、SCCが発生し難く、長時間使用できる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものでない。
各種熱処理を施したオーステナイト系ステンレス鋼(SUS316)について、SSRT試験(ASTM G129、ASTM:アメリカ材料試験協会規格)を用いて、SCC感受性評価を行った。SSRT試験により、各種供試材について粒界破面率(%)を算出し、破面率が大きい供試材は耐SCC性に乏しく、破面率が少ない供試材は耐SCC性に優れると評価される。
SSRT試験における高温高圧水の水質条件は、以下のようにした。
・試験温度 : 340℃
・圧力 : 160kgf/cm2・G
・溶存酸素濃度: <5ppb
・溶存水素濃度: 30cc/kg H2O・STP
・ボロン量 : 1200ppm(Bとして)
・リチウム量 : 2ppm(Liとして)
・歪速度 : 0.5μm/分
先ず、Siを0.5重量%含有するSUS316について、第1の熱処理および第2の熱処理を順に行い、粒界破面率を調べた。その結果を表1に示す(供試材番号101〜130)。
Figure 2006144068
第1の熱処理が5時間に満たず3時間の場合、供試材101〜103および110〜112に示す結果のように、粒界破面率が9%以上であった。第2の熱処理が5時間に満たず3時間の場合、供試材104、107、113、116、121に示す結果のように、粒界破面率が8%以上であった。
これに対して、第1の熱処理が600〜700℃にて5時間以上、第2の熱処理が800〜900℃にて5時間以上の場合には、いずれの供試材についても粒界破面率が8%未満に抑制された。この結果によって、600〜700℃にて5時間以上の第1の熱処理、その後、800〜900℃にて5時間以上の第2の熱処理を施すことによって、耐SCC性が向上することがわかった。
図2に、表1における5時間以上の熱処理でのSSC評価線図を示す。網掛けで示した部分が、好ましい処理温度範囲である。
次いで、Siを0.5重量%含有するSUS316について、第1の熱処理、第2の熱処理、第3の熱処理を順に行い、粒界破面率を調べた。その結果を表2に示す(供試材番号201〜224)。
Figure 2006144068
第1の熱処理が5時間に満たず3時間の場合、供試材201〜203および210〜212に示す結果のように、粒界破面率が7%以上であった。第2の熱処理および第3の熱処理が5時間に満たず3時間の場合、供試材204、207、213、216、219、222に示す結果のように、粒界破面率が5%より大きかった。
これに対して、第1の熱処理が5時間以上、第2、第3の熱処理も5時間以上の場合には、いずれの供試材についても粒界破面率が5%以下に抑制された。この結果によって、600〜700℃にて5時間以上の第1の熱処理、その後、700℃を越え800℃未満の温度(750℃)にて5時間以上の第2の熱処理、引続き800〜900℃にて5時間以上の第3の熱処理を施すことによって、耐SCC性が著しく向上することがわかった。
次に、Si含有量を減少させ、Siを0.1重量%含有するSUS316について、第1の熱処理、第2の熱処理を順に行い、粒界破面率を調べた。その結果を表3に示す(供試材番号301〜308)。
Figure 2006144068
第1の熱処理が5時間以上、第2の熱処理を20時間とする場合、いずれの供試材についても粒界破面率が0%になった。この結果によって、上記第1の熱処理および上記第2の熱処理を施すステンレス鋼が、鋼中の重量%でSi量が0.1%以下であることによって、耐SCC性が一層著しく向上することがわかった。
同様に、Si含有量を減少させ、Siを0.1重量%含有するSUS316について、第1の熱処理、第2の熱処理、第3の熱処理を順に行い、粒界破面率を調べた。その結果を表4に示す(供試材番号401〜408)。
Figure 2006144068
第1の熱処理が5時間以上、第2、第3の熱処理を20時間とする場合、いずれの供試材についても粒界破面率が0%になった。この結果によって、上記第1の熱処理および上記第2、第3の熱処理を施すステンレス鋼が、鋼中の重量%でSi量が0.1%以下であることによって、耐SCC性が一層著しく向上することがわかった。
オーステナイト系ステンレス鋼(SUS316)に、700℃で10時間、800℃で30時間熱処理を行った。図3に粒界Cr炭化物の析出状況をSEMにより観察した結果を示す。これによれば、粒界Cr炭化物が結晶粒界にそって半連続上(炭化物と炭化物の間の隙間が認められる状態)に析出していることがわかった。
また、実施例2のオーステナイト系ステンレス鋼(SUS316)に、700℃で10時間の炭化物粒界析出熱処理(第1の熱処理)を実施した後の、炭化物粒界付近のCr含有量について測定した結果を、図4に示す。測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)に付属する微細領域の組成分析が行えるエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて実施し、図4のXによる断面に沿ってCr含有量を測定した。図4より、炭化物粒界付近にCrの含有量が耐食性限界値以下になるCr欠乏域が発生していることがわかる。
次に、図4に示す合金に、800℃で30時間の回復処理(第2の熱処理)を行った後の、炭化物粒界付近のCr含有量について測定した結果を、図5に示す。図5のYによる断面に沿ってCr含有量を測定した。図5より、回復処理をすることにより、炭化物粒界付近のCrの含有量が耐食性限界値以上に回復していることがわかる。オーステナイト系ステンレス鋼を、これらの熱処理により図5に示す状態にすることにより、耐SCC性を著しく向上させることができた。
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、耐応力腐食割れ性に優れ、高温高圧水環境下で稼動する原子力プラントの各種配管や構造物の構成材料として特に好適であり、プラントの安全性と信頼性向上の観点から、産業上の意義は極めて大きい。
図1(a)は、粒界におけるCr炭化物の整合析出を示す図であり、図1(b)は、粒界におけるCr炭化物の不整合析出を示す図である。 5時間以上の熱処理でのSCC評価線図を示す図である。 実施例2の粒界Cr炭化物の析出状況をSEMにより観察した結果を示す図である。 実施例2において、第1の熱処理を実施した後の、炭化物粒界付近のCr含有量について測定した結果を示す図である。 実施例2において、第2の熱処理を実施した後の、炭化物粒界付近のCr含有量について測定した結果を示す図である。
符号の説明
1 粒界炭化物
2、2a 母相
3 結晶粒界
4、4a 母相の格子
5 粒界炭化物の格子

Claims (9)

  1. 結晶粒界にクロム炭化物が選択的に整合析出しており、結晶粒界近傍のクロム欠乏層が実質的にない耐SCC性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼。
  2. 溶体化処理後、鋭敏化処理をし、結晶粒界にクロム炭化物を選択的に整合析出させ、その後、回復処理をすることにより、結晶粒界近傍のクロム欠乏層を実質的に無くした、耐SCC性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼。
  3. 前記溶体化処理が1000℃以上1180℃以下で実施され、前記鋭敏化処理が600℃以上800℃未満にて5時間以上の第1の熱処理を施し、その後、800℃以上900℃以下にて5時間以上の第2の熱処理を施すことにより実施される請求項2に記載の耐SCC性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼。
  4. 前記溶体化処理が1000℃以上1180℃以下で実施され、前記鋭敏化処理が600℃以上700℃以下にて5時間以上の第1の熱処理を施し、その後、700℃を越え800℃未満の温度にて5〜20時間の第2の熱処理を施すとともに、引続き800℃以上900℃以下にて5時間以上の第3の熱処理を施すことにより実施される請求項2に記載の耐SCC性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼。
  5. オーステナイト系ステンレス鋼に、1000℃以上1180℃以下で溶体化処理後、600℃以上800℃未満にて5時間以上の第1の熱処理を施し、その後、800℃以上900℃以下にて5時間以上の第2の熱処理を施すことを特徴とする耐食性ステンレス鋼の製造方法。
  6. オーステナイト系ステンレス鋼に、1000℃以上1180℃以下で溶体化処理後、600℃以上700℃以下にて5時間以上の第1の熱処理を施し、その後、700℃を越え800℃未満の温度にて5〜20時間の第2の熱処理を施すとともに、引続き800℃以上900℃以下にて5時間以上の第3の熱処理を施すことを特徴とする耐食性ステンレス鋼の製造方法。
  7. 前記オーステナイト系ステンレス鋼が、鋼中の重量%でSi量が0.1%以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の耐食性ステンレス鋼の製造方法。
  8. 請求項5〜請求項7に記載のいずれかの方法により製造した耐食性ステンレス鋼。
  9. 結晶粒界にクロム炭化物が選択的に整合析出しており、結晶粒界近傍のクロム欠乏層が実質的にない、請求項8に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008095268A (ja) * 2006-09-13 2008-04-24 Toray Ind Inc 熱可塑性樹脂用の溶融紡糸装置および溶融紡糸方法
JP2008150706A (ja) * 2006-11-21 2008-07-03 Akita Fine Blanking:Kk 高温耐久性を高めたナノ表面改質方法並びにナノ表面改質方法が施された金属部材並びにこれを構成部材に適用したvgsタイプターボチャージャにおける排気ガイドアッセンブリ

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