JP2006141673A - 生体適合性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】各種の人工の医療部材あるいはその一部に使用された時に、生体組織との良好な密着性及び接着性を有すると共に、優れた生体適合性を有するフィルムを提供することにある。
【解決手段】ポリエチレン樹脂からなると共にフィブリル化(微細繊維化)されたポリエチレン繊維(2)と多孔質のリン酸カルシウム系化合物(3)を配合した混合物をフィルム状に抄造した後に120℃〜200℃の温度で15〜60秒間加熱処理したものからなることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、生体内や生体表面等で使用される各種の人工医療部材あるいはその一部に用いるフィルムに関するものである。
従来、シリコーンゴムが生体不活性、長期安定性、強度、柔軟性等の特性を持っているため医療用材料として広く用いられている。また、リン酸カルシウム系化合物は生体活性材料として単独、または無機材料、有機高分子と複合化させて医療分野において広く用いられている。しかしながら、シリコーンゴムは生体不活性であるために、生体組織と接着が起こらない弱点を有し、一方、リン酸カルシウム系化合物は生体活性があるが、単独では脆く、衝撃で破損する恐れがある弱点を有していた。そのため、それぞれの弱点を改善したものとして、シリコーンゴム、ポリウレタン等の高分子基材表面に活性基を導入したリン酸カルシウム系化合物を化学結合したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2001−172511号公報
本発明の課題は、生体組織との良好な密着性及び接着性を有すると共に、優れた生体適合性を有するフィルムを提供することにある。
本発明の請求項1に係る発明は、フィブリル化されたポリエチレン繊維と多孔質のリン酸カルシウム系化合物を配合した混合物をフィルム状に抄造した後に120℃〜200℃の温度で15〜60秒間加熱処理したものからなることを特徴とする生体適合性フィルムである。
本発明の生体適合性フィルムは、フィブリル化されたポリエチレン繊維と多孔質のリン酸カルシウム系化合物を配合した混合物をフィルム状に抄造した後に120℃〜200℃の温度で15〜60秒間加熱処理したものからなっているので、ポリエチレン繊維の生体不活性と、ポリエチレン繊維の一部が溶融して強固に固定化されて脱落しないようになっているリン酸カルシウム系化合物の良好な生体組織との密着性及び接着性と、を有しているので、優れた生体適合性を有している。
本発明の生体適合性フィルムを実施の形態に沿って以下に説明する。図1は本発明の生体適合性フィルムの一実施形態を示す側断面図であり、生体適合性フィルム(1)は、フィブリル化されたポリエチレン繊維(2)と多孔質のリン酸カルシウム系化合物(3)とからなっており、その製造方法は、フィブリル化されたポリエチレン繊維と多孔質のリン酸カルシウム系化合物を配合した混合物を抄造機でフィルム状に抄造した後に120℃〜200℃の温度で15〜60秒間加熱処理して製造する。加熱処理時間が15秒未満であると、リン酸カルシウム系化合物が強固に固定化されず脱落し易くなり、60秒を越えると繊維間が完全に融着してしまい、通気性がなくなる。前記条件で加熱処理すれば、ポリエチレン繊維の一部が溶融してリン酸カルシウム系化合物を強固に固定化し、化合物が脱落しない。従って、ポリエチレン繊維の生体不活性と、リン酸カルシウム系化合物の生体
組織との優れた密着性、接着性等の機能を有している。
前記ポリエチレン繊維(2)に用いるポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、あるいは高密度ポリエチレン樹脂などが使用され、好ましくは高密度ポリエチレン樹脂である。前記フィブリルとは、繊維を構成している微細繊維のことを指しており、フィブリル化とは1本の繊維が多くのフィブリルに分かれる現象のことをいう。ポリエチレン繊維がフィブリル化していれば、網目構造が緻密で、柔軟性、強度が高く、リン酸カルシウム系化合物を固定化しやくなり、さらに前記条件で加熱処理することにより、ポリエチレン繊維の一部が溶融して、多孔質のリン酸カルシウム系化合物の孔に入り込んで固定化を強固にして化合物が脱落しないようになり、全体の強度も向上する。
前記リン酸カルシウム系化合物(3)は、多孔質のものが好ましく、例えばハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、非晶質リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム等を用いることができ、その粒径は1〜15μmの範囲である。1μm未満では凝集し易くなり、15μmを越えると耐屈曲性が低下する。配合比率はフィブリル(微細繊維)化されたポリエチレン繊維100重量部に対しリン酸カルシウム系化合物20〜80重量部を配合する。20重量部未満では生体組織との密着力に欠け、80重量部を超えるとポリエチレン繊維との密着力に欠ける。
前記生体適合性フィルム(1)の厚さは特に限定されないが、通常10〜200μmであり、又、使用する用途によっては、生体適合性フィルム(1)の片面にシリコーンゴム層を積層しても良い。
以下に、本発明の生体適合性フィルムを具体的な実施例に沿って詳細に説明する。
フィブリル化されたポリエチレン繊維[繊維長5mm、重量2g/1万m、三井化学
(株)、商品名:SWP]100重量部に対し、青色に染色した多孔質のハイドロキシアパタイト(粒径8μm)50重量部を配合した混合物を用いて、テスト抄造機で厚さ50μmのフィルム状に抄造し、その後、オーブンで150℃の温度で60秒間加熱処理して、本発明の生体適合性フィルムを作成した。
以下に、本発明の比較用の実施例を説明する。
フィブリル化されていないポリエチレン繊維100重量部に対し、青色に染色した多孔質のハイドロキシアパタイト(粒径8μm)50重量部を配合した混合物を用いて、テスト抄造機で、厚さ50μmのフィルム状に抄造し、その後、オーブンで150℃の温度で60秒間加熱処理して、比較用の生体適合性フィルムを作成した。
〈評価〉
本発明の実施例1及び比較用の実施例2の生体適合性フィルムを用いて、以下の測定方法で摩擦試験、屈折試験、引張試験を実施し、その良悪を評価した。その結果を表1に示す。
(1)摩擦試験方法
作成した生体適合性フィルムを用いて、所定の大きさに切断した試験片を100枚作成し、学振試験機(重り1kg)にカナキン3号布を付けたもので、それぞれの表面を繰り返し擦り、青色に染色したハイドロキシアパタイトがとれて、カナキン3号布が青色になった時の回数を測定し、100枚の平均値を求めた。
(2)屈折試験方法
作成した生体適合性フィルムを用いて、25mm×200mmの短冊状に切断した試験片を100枚作成し、それぞれ、その試験片を繰り返し折り曲げて、試験片の表面にひびが入る回数を測定し、100枚の平均値を求めた。
(3)引張試験方法
作成した生体適合性フィルムを用いて、25mm×100mmの短冊状に切断した試験片を10枚作成し、それぞれ、その試験片を引張試験機で引っ張り、破断する時の値を測定し、10枚の平均値を求めた。
Figure 2006141673
表1に示すように、本発明の実施例1の生体適合性フィルムは、摩擦試験でのカナキン3号布が青色になる回数の平均値は1000回以上で、屈折試験での試験片表面にひびが入る回数の平均値が500回以上で、引張試験での引張強度の平均値が18.5N/25mmであり、ハイドロキシアパタイトが強固に固定化されていることを示しており、フィルムの機械的強度も良好であり、一方、比較用の実施例2の生体適合性フィルムは、摩擦試験でのカナキン3号布が青色になる回数の平均値は246回で、屈折試験での試験片表面にひびが入る回数の平均値が265回で、引張試験での引張強度の平均値が7.3N/25mmであり、ハイドロキシアパタイトの固定化が悪く、フィルムの機械的強度も劣っている。
本発明の生体適合性フィルムの一実施形態を示す側断面図である。
符号の説明
1…生体適合性フィルム
2…ポリエチレン繊維
3…リン酸カルシウム系化合物

Claims (1)

  1. フィブリル化されたポリエチレン繊維と多孔質のリン酸カルシウム系化合物を配合した混合物をフィルム状に抄造した後に120℃〜200℃の温度で15〜60秒間加熱処理したものからなることを特徴とする生体適合性フィルム。
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