JP2006137907A - 鉄系金属部材の摩擦面改質材及び摩擦面改質方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 機器内部の金属部材の摩擦・摺動面の摩耗を復元すると共に、摩擦面の荒れ(凸凹)を修復し、しかも耐久性に優れる修復面を付加し得る新規な鉄系金属部材の摩擦面改質材を提供する。
【解決手段】 シュンガイト鉱石あるいは蛇紋岩を出発原料にした含水珪酸マグネシウム組成を有する長さ1.5μm〜20μmの繊維状結晶体を含有させた。この摩擦面改質材は粉体であり、その中に繊維状結晶体を70重量%以上含有することが好ましい。また粒子径2μm〜8μmの石英粒子またはシリカゲル粒子を30重量%以下の割合で含んでいることが好ましい態様である。また繊維状結晶体の平均直径は1.0〜1.4μmであることが好ましい。
【選択図】 図8
【解決手段】 シュンガイト鉱石あるいは蛇紋岩を出発原料にした含水珪酸マグネシウム組成を有する長さ1.5μm〜20μmの繊維状結晶体を含有させた。この摩擦面改質材は粉体であり、その中に繊維状結晶体を70重量%以上含有することが好ましい。また粒子径2μm〜8μmの石英粒子またはシリカゲル粒子を30重量%以下の割合で含んでいることが好ましい態様である。また繊維状結晶体の平均直径は1.0〜1.4μmであることが好ましい。
【選択図】 図8
Description
本発明は、鉄系金属部材の摩擦面改質材及び鉄系金属部材の摩擦面改質方法に関する。さらに詳しくは、鉄又は鉄基合金の摺動摩擦面から放出された鉄イオンを金属表面で再金属化して、摺動摩擦面の摩耗の復元や荒れを修復する触媒の働きをもつ摩擦面改質材と、この改質材を用いて効率よく簡便に鉄系金属部材の摩擦面の摩耗復元や荒れを修復する方法に関するものである。
一般に、金属部材の摺動部を有する機器としては、内燃機関や自動変速機、デファレンシャルなどの駆動系機器、緩衝器、パワーステアリング、ギア、油圧機器等が知られている。例えば、上記内燃機関においては、ピストンとシリンダーライナー、クランク軸や連結棒の軸受、カムとバルブリフターを含む動弁機構などに各種摺動部分が存在する。
このような摺動部分に用いられる金属部材に対しては、焼き付きを防止し、その作動を円滑にするために、潤滑油やグリースが用いられる。そしてこれら潤滑剤には摺動面の摩擦や摩耗を抑制するために、一般に極圧添加剤や耐摩耗剤などが配合されている。しかしながら、このような潤滑剤を使用していても、機器の長期間使用により、金属部材の摺動・摩擦面に摩耗が生じるのを免れず、その結果、摺動・摩擦面に荒れ(凸凹)や摩耗が生じる。例えば自動車においては、振動やノイズが増大したり、シリンダーの圧縮圧の低下により燃料油の燃焼不良によるパワーの低下や燃費の悪化など好ましくない事態を招く。
機器の摺動部分に組み込まれた金属部材の表面に、摩耗や荒れ(凸凹)が生じた場合、それを修復する技術として、例えばナトリウムやリチウムを含有する合金、あるいは錫、アンチモン、ビスマスなどの金属の微粉末を塩素化パラフィン(ハロゲン化炭化水素)と共に潤滑剤に注入し、当該金属部材の摩擦面に供給する技術が知られている。
この修復技術は、摩耗で生じた金属部材表面の凹部に前記修復材粉末を充填材料にして埋めると共に、薄膜を形成させ、平滑面に修復する技術である。しかし、一時的に表面を修復することができても、形成された薄膜の耐磨耗性が十分ではなく、また当該金属部材と異種の材料を充填材に用いるため、機器を長期稼動させると充填材の劣化による割れや剥離が発生し、再び荒れが生じやすいという欠点を有している。また、金属部材表面の凹部を埋める修復材粉末などの量が過大になると、充填材が機器内部へ沈殿し、それによる潤滑系配管の詰まりなどの懸念もある。
機器の金属部材の表面に生じた荒れ(凸凹)を平滑にする目的で、金剛石や石英などの鉱物微粉末、あるいはシリカや窒化珪素などの研磨剤を潤滑油に混合し、当該金属部材の摩擦面を研磨する方法も知られている。しかしながら、研磨によって摩擦・摺動面を平滑にする場合は、摺動し合う摩擦面間の隙間は大きくなり、これが過大になると、当然、当該機器の所定の性能は発揮されなくなる。
このような状況下、本願発明者は、鉄(又は鉄基合金)の表面に摩擦エネルギーを加えると2価の鉄イオンが放出されること、ならびに自然界では地殻を構成する蛇紋石の結晶構築の際にマグネシウム原子と鉄原子の置換反応が行われていることの知見に基づき鋭意研究を重ねた結果、マグネシウムと鉄の置換反応を用いることにより、金属表面から摩擦により放出された2価鉄イオン(Fe2+)を、鉄(又は鉄基合金)金属表面で再金属化させて戻すことができることを見出した。これにより、金属摩擦面を修復する触媒物質を発明し、金属部材の摩擦面改質材として、その目的に適合し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、機器内部の金属部材の摩擦・摺動面の摩耗を復元すると共に、摩擦面の荒れ(凸凹)を修復し、しかも耐久性に優れる修復面を付加し得る新規な金属部材の摩擦面改質材を提供することを第1の目的とする。又この摩擦面改質材を用いた潤滑油を提供することを第2の目的とする。さらに、本発明は、この摩擦面改質材を用いて効率よく金属部材の摩擦面の摩耗を復元し、摩擦面の荒れを修復する摩擦面改質方法を提供することを第3の目的とする。
本発明の第1の目的は、シュンガイト鉱石あるいは蛇紋岩を出発原料にした含水珪酸マグネシウム組成を有する長さ1.5μm〜20μmの繊維状結晶体を含有することを特徴とする鉄系金属部材の摩擦面改質材により達成される。
この摩擦面改質材は粉体であり、その中に繊維状結晶体を70重量%以上含有することが好ましい。また粒子径2μm〜8μmの石英粒子またはシリカゲル粒子を30重量%以下の割合で含んでいることが好ましい態様である。また繊維状結晶体の平均直径は1.0〜1.4μmであることが好ましく、特に好ましい平均直径は1.0〜1.2μmである。
また、本発明の第2の目的は、液状潤滑剤を主材とし、これに前記の摩擦面改質材を0.001重量%以上含有させたことを特徴とする潤滑油により達成される。
さらに本発明の第3の目的は、この摩擦面改質材を含有する液状潤滑剤を2以上の鉄又は鉄基合金の金属部材の摺動面に供給し、液状潤滑剤を介して金属部材を互いに接触させながら摺動することにより、金属部材の摩擦面上に鉄を再結晶化して摩擦面を改質することを特徴とする鉄系金属部材の摩擦面改質により達成される。
本発明の金属摩擦面改質材は、必須成分として含水珪酸マグネシウム組成を持つ繊維状結晶体を70重量%以上の割合で含む粉体から構成されている。この繊維状結晶体は、シュンガイト鉱石あるいは蛇紋岩を粉砕し、磁力選別、比重選別などのプロセスを経て珪酸マグネシウム成分を抽出し、鉱酸処理並びに加圧加熱処理を行って不純物を排除し、結晶構造を整えて得られる。その主要元素はケイ素、マグネシウム、酸素及び水(結晶水)であり、その他少量の鉄、アルミニウムなどの元素が含まれる。上記主要元素からなる組成式は、Mg6(Si4O10)(OH)8あるいはMg3(Si2O5)(OH)4で表すことができる。
本発明の改質材においては、前記の珪酸マグネシウムの繊維状結晶体以外に、必要に応じ、他の表面改質機能を有する粒子及び触媒能を有する粒子を30重量%以下の割合で含有させることができる。特に制限はないが、例えば石英粒子や酸化ボロン粒子など研磨性を有するものを加えることで、鉄及び鉄基合金の摩擦面からの鉄イオン発生を促進でき、金属面の補修に用いる鉄分が増えることで金属部材の摩擦面改質機能がさらに向上する。
この研磨粒子の粒径は、金属摺動面の隙間を考慮して定められ、通常は2〜8μmとするのが好ましい。
この研磨粒子の粒径は、金属摺動面の隙間を考慮して定められ、通常は2〜8μmとするのが好ましい。
触媒能を有する粒子として、シリカゲル粒子がある。シリカゲルは組成式をSiO3-nH2Oで表され、摩擦面改質材主成分の珪酸マグネシウムの繊維状結晶体の含水量を調整し、これにより摩擦面改質機能を一定水準に維持する働きを行う。シリカゲル粒子の粒径も、金属摩擦面の隙間を考慮して定められ、通常は2〜8μmとするのが好ましい。
本発明の改質材は、直径1.0〜1.4μm、長さが1.5〜20μmの繊維状結晶体と粒子径が2〜8μm程度の粉体粒子の混合物からなる。使用する改質材は、被処理金属部材の設計上のクリアランスと表面粗さに応じて、繊維状結晶体の長さと粉体粒子の粒子径を前記の範囲内で適宜選択することが望ましい。一般に当該摩擦面の表面荒れが大きい場合には、繊維状結晶体及び粉体粒子が大きい方が効果的に機能し、逆に表面荒れが小さい場合には短繊維状結晶体及び粉体粒子が小さい方が効果的に機能する。また、被金属部材が装着された機器の種類や動作状況、摺動部分の相対速度などによっても、最適な繊維状結晶体及び粉体粒子の粒度分布が左右されるので、これらも考慮して改質材を適宜選択する。
本発明の改質材が適用される金属部材の材質は、当該改質材が金属面から放出される鉄イオンを再付着させて、摩擦面の荒れ(凹部)を埋める充填材に用いる上から、特に鉄または鉄基合金などの鉄系金属が望ましい。この鉄系金属部材を構成する材料としては、例えば、炭素鋼、機械構造用低合金鋼、高張力鋼、ケイ素鋼、快削鋼、ステンレス鋼、工具鋼、耐熱鋼、高マンガン鋼、ニッケル鋼、ニッケルモリブデン鋼などを挙げることができる。
次に、本発明の金属部材の摩擦面改質方法及びその作用について説明する。当該金属表面改質材を潤滑剤中に均質に分散させ、これを被処理金属部材の摩擦面に供給することにより、摩擦面の摩耗や荒れを修復して平滑面を形成すると共に、摩擦抵抗を減らし、対摩耗性を付加する。潤滑剤中に分散状態で含まれる改質材の量は、該当潤滑剤1リットルあたり、通常0.01〜0.1gの範囲である。この量が0.01g未満では摩擦面の改質効果が十分発揮されず、また、0.1gを越えるとその量の割には効果の向上が見られず、むしろ経済的には不利になる。また、当該改質材の使用総量は、改質すべき鉄または鉄基合金の摩擦面の総和に応じて適宜選択される。
摩擦面改質材を分散させる液状潤滑剤に用いる基油としては、タービン油、ギヤ油、圧縮機油、冷凍機油、摺動面油、油圧作動面油などの工業用潤滑油及び合成潤滑油などの潤滑油や、エンジンオイルなどがある。
潤滑剤中に改質材を分散させる方法には特に制限がなく、使用する液状潤滑剤に当該改質材を直接添加し、攪拌を行って分散させてもよい。しかし、均一分散性及び操作性などを考慮すると、潤滑剤を構成する基油、あるいは当該潤滑剤やグリースに悪影響を与えることのない液状液体に、あらかじめ当該改質材を比較的高濃度に分散させ、この高濃度分散液を使用する潤滑剤に添加混合することが望ましい。このように改質材を分散させた液状潤滑剤を本発明の潤滑油として使用できる。
改質材の使用方法においては、このようにして、潤滑剤に当該改質材を均等に分散させたのち、まず機器の慣らし運転(無負荷運転)を30〜120分間程度行った後、本運転を行う。このならし運転においては、一般に潤滑剤中の改質材粒子が、摩擦面に存在する突起と衝突して更に微細化されると共に、多くの突起が破壊され、また摩擦面のくぼみに詰まっている汚染物が潤滑中に排出される。ならし運転の時間が30分未満では上記の現象が十分に発揮されず、また120分よりも長く慣らし運転をする必要もなく、120分以下で十分である。
本発明の改質材は、鉄または鉄基合金の摩擦・摺動面から放出される鉄イオンを再金属化させる触媒として働き、再金属化された鉄分を摩擦面の荒れ(凹部)を埋める充填材に用いることで、金属表面を改質させるが、その作用プロセスについて説明を加える。
(1)改質材の主成分である組成式Mg6(Si4O10)(OH)8あるいはMg3(Si2O5)(OH)4で表される含水珪酸マグネシウム組成を持つ繊維状結晶体は、内部にケイ素を含み、酸素を頂点にもつSi-O四面体が2次元的に展開した網状の四面体シート(Tetrahedral Sheet)と内部にマグネシウムの二価陽イオン(Mg2+)を含むMg-O八面体がつながった八面体シート(Octahedral Sheet)の層状の組み合わせで構成される。すなわち、図1に示すMg−O八面体シートの底辺酸素(O)と図2に示すSi−O四面体シートの頂点酸素(O)とが共有された2層の結晶体となっている(図3,4参照)。この層状結晶体は、基本的には図5(A)に示すような平面的な結晶であるべきであるが、2つのシート間で共有される酸素原子の四面体シート頂点での原子間距離と、八面体シートの底辺酸素での原子間距離とが相違するため、層間のバランスがずれ、展開した平面は図5(B)に示すように湾曲する。電子顕微鏡観察によれば、この結晶形状は四面体シートを外側にした直径約70nmの筒状或いはロール状のチューブであった(図6A)。さらにこのロール状結晶が数100本集合し、図6Bに示すような繊維状クラスターを形成していた。その直径は0.5〜1.8μmであった。本発明の摩擦面改質材はこのような繊維状結晶体を使用する点に特徴がある。
(2)機器の慣らし運転において、改質材中の繊維状結晶体が潤滑剤中で回転運動を起こし、繊維状結晶体の先端が摩擦面に接触することで、運動力学的に摩擦面の汚染物の洗浄を行う。また、摩擦面と繊維状結晶体の衝突により、当該結晶体は先端部から徐々に削れ、微細化されて行く。例えば、滑り軸受けの間隙は10〜50μmであり、この間隙に入る長さの繊維状結晶体とすることが望ましい。実際には各産地の蛇紋岩を用いても得られる繊維状結晶体の長さは最長20μm程度である。一方、後述するように繊維状結晶体の直径は1.0〜1.4μmであるから、結晶体端部から微細化されるためには、約1.5μm以上の長さとすることが好ましい。従って、改質材中の繊維状結晶体好ましい長さは、1.5〜20μmとなる。
(3)摩擦面の突起同士の接触により、局部的に約800〜1200℃の高温が発生し、この熱エネルギーと摩擦面に加わる荷重による圧力により、摩擦面の金属鉄が活性化され、鉄の二価陽イオン(Fe2+)が放出される。このFe2+イオンは、結晶体の八面体結晶に含まれるマグネシウムの二価陽イオン(Mg2+)と置換する。すなわち、マグネシウムが八面体結晶より放出され、Fe2+イオンが結晶内に取り込まれる(図7参照)。
(4)八面体結晶中にFe2+イオンを含む結晶は、弱い磁性を持ち、鉄の金属表面上に吸着し、Si-O四面体と共に再配置されて、分子数が100〜500個レベルの新たな結晶体となる(これを修復触媒と呼ぶ)。
(5)上記八面体結晶中の二価鉄イオン(Fe2+)は、摩擦面の鉄母材(金属鉄)に電子を放出し三価鉄イオン(Fe3+)となる。三価鉄イオン(Fe3+)は二価鉄イオン(Fe2+)よりもイオン半径が小さく、八面体の中心から容易に抜け出し、抜け出した三価鉄イオン(Fe3+)は母材となる鉄金属に吸着される。ここで、三価鉄イオン(Fe3+)は鉄母材から電子を受け取り金属鉄(ゼロ価の鉄)に還元される。一方、中心原子を失った八面体結晶体は、瞬時に浮遊している二価鉄イオン(Fe2+)を捕獲する。このため熱エネルギーが存在する限り二価鉄イオンが供給されるので、八面体結晶体は二価鉄イオンの捕獲と三価鉄イオンの放出のサイクルを連続して行う(図8参照)。
(6)母材に吸着した三価鉄イオン(Fe3+)は、鉄母材から電子を受け取り金属鉄(ゼロ価の鉄)に還元・再金属化された後、摩擦面に加わる荷重による圧力や摩擦面の突起による打撃により、金属面の荒れの凹部に押し込まれ、これが充填材となって、金属面を平滑にする。また、再金属化された鉄は母材の鉄金属と結合することで一体のものとなり、強固な補修層が構築される。補修された断面を確認すると、実際には、潤滑剤中に浮遊している炭素やマグネシウム、シリコンなども補修層に取り込まれ、一部がこれらの元素と鉄の共晶体となり、元の鉄素材よりも強固な物質になっていることも確認されている。
(7)金属面の突起がなくなり、金属面が滑らかになると、熱エネルギーの発生が無くなるので、金属面からの鉄イオンの放出が止まり、修復触媒の働きによる修復のサイクルも停止する。それに伴い、補修層の成長も抑制され、摩擦面間の理想的なクリアランスが保たれる。残存する修復触媒は、前記の補修層上に吸着・堆積し、結晶化して補修層をさらに平滑化する。当該修復触媒はそれ自体に自己潤滑性を有し、金属部材の摩擦面を保護する固体潤滑膜を形成することにより、当該金属の摩擦面に優れた耐摩耗性を付与する。また、このようにして改質処理された金属部材の摩擦面の平均的な粗さは、通常0.5μm以下となる。
(8)金属部材の摩擦面の補修が完了した後も、荷重の変化や摩擦面に生じた傷等により、摩擦面に熱エネルギーが生じると、当該修復触媒は、(5)の修復サイクルを開始し、この効果により、金属面に自己修復力が備わることになる。
本発明の金属面改質材は、金属部材の摩擦面の補修並びに改質に用いられるが、金属部材の種類としては、機器の摺動部分に用いられ、鉄あるいは鉄基合金からなる摩擦面をもち、潤滑剤を必要とする部材であればよく、特に制限がない。このような金属部材としては、例えば自動車部品では、内燃機関、各種変速機、緩衝器、パワーステアリング、デファレンシャルギア、ハブベアリング、エアコンコンプレッサー、燃料噴射ポンプなどに用いられる部材が挙げられる。その他、自動二輪車のギア、産業用機器の油圧回路にも本発明の金属面改質材を適用することができる。
本発明の摩擦面改質方法は、機器をある時間稼動させることにより、摺動部分における金属部材の摩擦面に生じた荒れや欠損を修復するために用いても良いし、あるいは、未使用の機器における摺動部分の摩擦面を改質し、寸法精度の向上と耐磨耗性を付与する為に用いても良い。いずれにしても、機器を稼動させながら、被処理金属部材の摩擦面を修復又は改質を行うことができ、機器を分解したり、長期間運転を止める必要がない。
以下、本発明の実施例により、さらにその効果を説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
(1)金属面改質材の調製
含水珪酸マグネシウムの繊維状結晶体を80重量%、石英粉体12重量%、シリカゲル粉体8重量%を混合し、改質材を調製した。この改質材0.18gを同重量の灯油に懸濁分散した後、20mLのポリアルファオレフィンに添加し、均質に分散させた。使用した含水珪酸マグネシウム繊維状結晶体の平均直径は1.2μm、平均長さは8.6μm(長さ分布5μm〜12μm)であり、石英並びにシリカゲル粉体の平均粒子径は5.3μm、粒度分布が3μm〜8μmである。
含水珪酸マグネシウムの繊維状結晶体を80重量%、石英粉体12重量%、シリカゲル粉体8重量%を混合し、改質材を調製した。この改質材0.18gを同重量の灯油に懸濁分散した後、20mLのポリアルファオレフィンに添加し、均質に分散させた。使用した含水珪酸マグネシウム繊維状結晶体の平均直径は1.2μm、平均長さは8.6μm(長さ分布5μm〜12μm)であり、石英並びにシリカゲル粉体の平均粒子径は5.3μm、粒度分布が3μm〜8μmである。
(2)改質処理を施した自動車のアイドリング燃費の測定
走行距離18,605kmの乗用車のガソリンエンジン(排気量1300cc)に充填されているエンジンオイル4リッターに上記(1)で得た金属面改質材分散液20mLを添加した。60分間の無負荷運転(アイドリング)を行った後、5分間の無負荷運転を3回行いその平均燃料消費率を求めたところ11.8g/分であった。
走行距離18,605kmの乗用車のガソリンエンジン(排気量1300cc)に充填されているエンジンオイル4リッターに上記(1)で得た金属面改質材分散液20mLを添加した。60分間の無負荷運転(アイドリング)を行った後、5分間の無負荷運転を3回行いその平均燃料消費率を求めたところ11.8g/分であった。
比較例として、金属面改質剤を投与する前のエンジンで、同じく5分間の無負荷運転を3回行いその平均燃料消費率を求めたところ15.0g/分であった。金属面改質材の使用により、燃料消費率は15.0g/分から11.8g/分に向上し、燃費改善率は27.1%であった。
金属面改質材を入れたままの状態のエンジンでさらに2000km走行した後に、同様にして5分間の無負荷運転を行い燃料消費率を測定したところ、11.5g/分の数値を示し、金属面改質材の燃費改善効果が維持されていることが確認された。このように、本発明による改質材を用いてエンジン内の摺動部を補修することにより、摩擦抵抗の減少で大幅に燃料消費率が改善されていることが確認された。
実施例1の走行試験終了後のエンジンのカムシャフトの摺動部分の表面を原子間力顕微鏡により観察した。比較例として金属改質材を使用していない同型エンジン(同程度の走行距離)のカムシャフト摺動部分表面を観察した。図9は、エンジン摺動部の補修処理を行わず走行したエンジンカムシャフト摺動部分の原子間力電子顕微鏡像の一例(比較例)を示す。図10は、走行試験終了後のエンジンのカムシャフト摺動部分の原子間力電子顕微鏡像を示す。図10に示すように、金属面改質材の働きにより金属表面が著しく平坦になっていることが確認できた。
摩擦面改質材に含有される繊維状結晶体(繊維状クラスター)の直径は、出発原料となる蛇紋岩の形成に関わる地質的要件により異なる。そこで各産地から得られた原料を元に製造された摩擦面改質材の中に含まれている繊維状結晶体の直径を電子顕微鏡により観察して測定した。
また、各改質材を用いて金属の摩耗試験を行い、金属面改質効果を確認した。各産地の蛇紋岩を出発原料とする繊維状結晶体を80重量%、石英粉体12重量%、シリカゲル粉体8重量%を混合して改質材を調製した。各繊維状結晶体の長さを、平均約12μm(分布8μm〜16μm)に調製し、混合する石英並びにシリカゲル粉体の平均粒子径は5.3μm、粒度分布が3μm〜8μmとした。この改質材0.1gを同重量の灯油に懸濁分散した後、1Lのポリアルファオレフィンに添加し、均質に分散させた。
金属の摩耗試験は、「Falexピン&Veeブロック試験機」を使用し、試験片の摩耗量を測定した(ASTM D2670に準拠)。一対の鉄製Vブロックで、試験片となる直径6.35mmの鉄製ピンを挟み、摩擦面に各産地由来の繊維状結晶体を含有した改質材分散液を介在させながら、ピンを300rpmで回転させる。まず、50ポンドの荷重でVブロックを挟み、60分間ピンを回転させて「なじみ運転」を行い、その後450ポンドの荷重でVブロックを挟み、30分間ピンを回転させ、試験片となるピンの重量変化を測定した。改質剤を含まないポリアルファオレフィンを介在させた場合は、10.8mgの重量減少が生じている。表1において効果「×」は、ピンの重量が減少したものであり、改質剤の効果が認められずピン表面が摩耗したことを示す。表中の効果「○」はピンの重量が増加したものであり、これはVブロックとの摺動摩擦により、Vブロックからの鉄がピンに沈着、再結晶化したことを示している。すなわち本発明の金属面改質剤の効果が高いものと認められる。表1の効果「△」はピンの重量変化がなかったものであり、これはピンでの鉄の放出と沈着・再結晶化が平衡しているものと思われ、やはり本発明の金属面改質材による補修効果があったものと考えられる。以上の結果から、平均直径約1.0〜1.4μmの繊維状結晶体クラスターに金属面改質(補修)効果が認められ、平均直径約1.0〜1.2μmのものが特にその効果が高いことが確認できた。
以上のように本発明の摩擦面改質材は含水珪酸マグネシウム組成を有する長さ1.5μm〜20μmの繊維状結晶体を主成分とするものであり、鉄系金属部材の摩擦面の荒れを効率よく修復することができる。耐磨耗性を付与することにより、機器の寿命延長を図り、運転に必要な燃料や電力を削減できる。
Claims (8)
- シュンガイト鉱石あるいは蛇紋岩を出発原料にした含水珪酸マグネシウム組成を有する長さ1.5μm〜20μmの繊維状結晶体を含有することを特徴とする鉄系金属部材の摩擦面改質材。
- 前記繊維状結晶体を平均直径が1.0〜1.4μmであることを特徴とする請求項1の摩擦面改質材。
- 前記繊維状結晶体を70重量%以上含有することを特徴とする請求項1又は2の摩擦面改質材。
- 粒子径2μm〜8μmの石英粒子またはシリカゲル粒子を30重量%以下の割合で含んでいることを特徴とする請求項1又は2の記載の摩擦面改質材。
- 液状潤滑剤を基油とし、これに請求項1〜4の何れかの摩擦面改質材を0.001重量%以上含有させたことを特徴とする鉄系金属部材の潤滑油。
- 前記摩擦面改質材を0.001〜0.01重量%含有していることを特徴とする請求項5の潤滑油。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の摩擦面改質材を含有する液状潤滑剤を2以上の鉄系金属部材の摺動面に供給し、液状潤滑剤を介して金属部材を互いに接触させながら摺動することにより、金属部材の摩擦面上に鉄を再金属化して摩擦面を改質することを特徴とする鉄系金属部材の摩擦面改質方法。
- 前記液状潤滑剤は、1リットル当たり、前記摩擦面改質材を0.01〜0.1g含有することを特徴とする請求項7の摩擦面改質方法。
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