JP2006136899A - 高寸法精度管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】曲がりが小さく、外径偏差、内径偏差、円周方向肉厚偏差も良好な高寸法精度管を安定して製造することができる高寸法精度管の製造方法を提供する。
【解決手段】管3内にプラグ1を装入して、管3をダイス2の孔に押し込んで通過させる押し抜きを行うにあたり、ダイス回転装置4によってダイス2を回転させながら押し抜きを行う。それにより、プラグ1及びダイス2の円周方向寸法の誤差や素管の材質の円周方向不均一があっても、押し抜き加工中の管3の円周方向全体がダイス2と均一に接触して、押し抜き加工後の管3の曲がりが抑止される。
【選択図】図1
【解決手段】管3内にプラグ1を装入して、管3をダイス2の孔に押し込んで通過させる押し抜きを行うにあたり、ダイス回転装置4によってダイス2を回転させながら押し抜きを行う。それにより、プラグ1及びダイス2の円周方向寸法の誤差や素管の材質の円周方向不均一があっても、押し抜き加工中の管3の円周方向全体がダイス2と均一に接触して、押し抜き加工後の管3の曲がりが抑止される。
【選択図】図1
Description
本発明は、高寸法精度管の製造方法に関し、特に、曲がりの小さい管の製造に好適な高寸法精度管の製造方法に関する。
金属管、例えば鋼管は、通常、溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、例えば電縫鋼管のように、帯板の幅を丸め、該丸めた幅の両端を突き合わせて溶接する方法で製造し、一方、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔後マンドレルミル等で圧延する方法で製造している。溶接管の場合、溶接後に溶接部分の盛り上がりを研削して管の寸法精度を向上しているが、その肉厚偏差は後工程で低減させる努力が払われているもののその肉厚偏差は3.0%を超える。また、継目無管の場合、穿孔工程で偏芯しやすくて、該偏芯により大きな肉厚偏差が生じやすい。この肉厚偏差は後工程で低減させる努力が払われているが、それでも充分低減することができず、製品の段階で8.0%以上残存する。
最近、環境問題から自動車の軽量化に拍車が掛かっており、ドライブシャフト等の駆動系部品は中実の金属棒から中空の金属管に置き換えられつつある。これら自動車用駆動系部品等の金属管には肉厚、内径、外径の各偏差として3.0%以下、さらに厳しくは1.0%以下の高寸法精度が要求される。
金属管(以下、単に管ともいう)の肉厚、内径、外径の精度を高める手段として、従来、一般に、例えば、特許文献1に記載されるように、管(溶接管、継目無管とも)を造管後にダイスとプラグを用いて冷間で管を引き抜く製造方法(いわゆる冷牽法)がとられている。
しかし、従来の冷牽法では、設備上の制約や管の肉厚・径が大きくて引き抜き応力が充分得られずに縮径率を低くせざるを得ない場合などでは、加工バイト(プラグとダイス孔内面との隙間)内で管の応力が引張力であるがゆえにダイスと管、及び引き抜きプラグと管の接触が不十分となり、管の内面、外面の平滑化が不足して凹凸が残留しやすい。そのため、冷牽で管の縮径率を大きくして加工バイト内で管の内外面とプラグ、ダイスの接触を向上させることが行われている。しかし、ダイスを用いて管を冷牽した場合、管の内面に凹凸が発生して管の縮径率が大きくなるほど凹凸による粗さが増加する。その結果、冷牽法では高寸法精度の管を得ることが難しく、寸法精度のさらに良好な管が強く求められていた。
前述のように、従来、ダイスとプラグを用いて管を引き抜いた場合、管の寸法精度を向上することが困難である理由は、引き抜きであるがゆえに加工バイト中のダイスと管外面、プラグと管内面の接触が不十分となることに由来する。すなわち、図3に示すように、プラグ1を装入してダイス2から管3を引き抜くことにより、ダイス2の出側で管引き機5によって加えられた引き抜き応力によって加工バイト中には張力が発生して、加工バイト入側では、プラグ1に管3の内面が沿って変形するため、管3の外面はダイス2に接触しないかあるいは軽度にしか接触せず、逆に、加工バイト出側では、ダイス2に管3の外面が接触して変形するため、管3の内面はプラグ1に接触しないかあるいは軽度にしか接触しない。そのため、管3の内面及び外面ともに加工バイト中に自由変形の部分が存在して凹凸を十分平滑化できずに、引き抜き後には精度の低い管しか得られていなかった。
これに対して、発明者らは、外径偏差、内径偏差、円周方向肉厚偏差の良好な高寸法精度管を得るために、特願2003−107364において、管内にプラグを装入した状態で管をダイスの孔に押し込んで通過させる押し抜きを行うという高寸法精度管の製造方法を提案している。押し抜きの場合、図2に示すように、プラグ1を装入してダイス2に管3を押し込むことにより、加工バイトの内部は全て圧縮応力が作用する。その結果、加工バイト入側、出側を問わずに、管3はプラグ1及びダイス3に十分接触できる。しかも、軽度の縮径率であっても、加工バイト内部は圧縮応力となるため、引き抜きに比較して管3とプラグ1、管3とダイス2が十分接触しやすくて、管3は平滑化しやすくなって高寸法精度の管が得られる。
特開平07−032030号公報
しかし、高寸法精度管の製造にあたり、外径偏差、内径偏差、肉厚偏差が良好であっても、加工後の管の曲がりが大きい場合には、その管は製品とならないことがある。特に、機械構造用鋼管の場合では1m長さ当たり1mm未満と厳格な管の曲がり抑制が要求されている。
加工後の鋼管の曲がりについては、引き抜きの場合、管の先端を挟んで案内しつつ引き抜きを行うため、管は曲がりにくい。これに対して、押し抜きの場合、管の先端はダイス出側で自由に変形可能であるため、曲がりが発生しやすいという難点がある。ダイスやプラグの製作精度を著しく良好にしても円周方向で数十μmの寸法誤差を生じたり、押し抜き前の管(素管)も円周方向の材質が必ずしも均一でないため、ダイスやプラグの円周方向寸法のわずかな誤差や素管の材質の円周方向不均一が原因で曲がりが発生しやすかった。
本発明は、上記の事情に鑑み、曲がりが小さく、外径偏差、内径偏差、円周方向肉厚偏差も良好な高寸法精度管を安定して製造することができる高寸法精度管の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは、管とダイスとの接触に着目した。すなわち、ダイス等の円周方向寸法の誤差や素管の材質の円周方向不均一があっても、押し抜き加工中に管の円周方向全体がダイスと均一に接触できれば、押し抜き後の管の曲がりを抑止できると考えた。そして、ダイスを回転させれば、押し抜き加工中の管の円周方向全体をダイスと均一に接触させることが可能になるとの考えに至った。
上記の考えに立脚して、本発明は以下の特徴を有している。
[1]金属管を該金属管内にプラグを装入した状態でダイスの孔に押し込んで通過させる押し抜きを行うにあたり、ダイスを回転させながら押し抜きを行うことを特徴とする高寸法精度管の製造方法。
[2]ダイスの回転速度を管の押し抜き速度と同等以上とすることを特徴とする前記[1]に記載の高寸法精度管の製造方法。
[3]ダイス入側から管外面とダイスとの間に、強制的に常温で流体の潤滑剤を供給しつつ押し抜きを行うことを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の高寸法精度管の製造方法。
[4]金属管内にプラグを装入しない状態で押し抜きを行うことを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の高寸法精度管の製造方法。
本発明においては、金属管をダイスの孔に押し込んで通過させる押し抜きを行うにあたり、ダイスを回転させながら押し抜きを行うようにしているので、ダイスの円周方向寸法の誤差や素管の材質の円周方向不均一があっても、押し抜き加工中の管の円周方向全体がダイスと均一に接触して、押し抜き後の管の曲がりを抑止し、外径偏差、内径偏差、円周方向肉厚偏差も良好な高寸法精度鋼管を安定して製造することができる。
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示すものであり、管3内にプラグ1を装入して、管押し機(図示せず)によって管3をダイス2の孔に押し込んで通過させる押し抜きを行うにあたり、ダイス回転装置4によってダイス2を回転させながら押し抜きを行うようになっている。
これによって、押し抜き加工中の管3の円周方向全体がダイス2と均一に接触するようになり、プラグ1及びダイス2の円周方向寸法の誤差や素管の材質の円周方向不均一があっても、押し抜き後の管3の曲がりが抑止され、外径偏差、内径偏差、円周方向肉厚偏差も良好な高寸法精度鋼管を安定して製造することができる。
その際に、ダイス2の回転速度について本発明者らが検討したところ、ダイス2の回転速度が押し抜き加工速度と同等以上あると、より一層安定して曲がりが抑止できることを見出した。すなわち、ダイス2の回転速度が押し抜き加工速度以上の場合には、ダイス2と管3が円周方向で一周分以上接触でき、曲がりを充分抑止することができるからである。
なお、ダイス2の回転速度は速ければよいが、速すぎるとダイス2の芯振れが生じやすくなるため、押し抜き加工速度の1000倍以下が好ましい。
ここで、ダイス2の回転速度については、ダイス2の最小径孔部の周速度を代表値とし、押し抜き加工速度については、ダイス2出側の管3の押し抜き方向速度を代表値としている。
また、ダイス2を回転させると、ダイス2と管3との摩擦力が増大して焼き付きが発生しやすくなる。そこで、ダイス入側から管3外面とダイス2との間に、強制的に常温で液体の潤滑剤を供給しつつ押し抜きを行うとよい。ダイス2の回転速度の増加とともに、液体潤滑剤の流体油膜が形成されやすくなり、焼き付きを防止することができる。
なお、管の寸法サイズへの要求が外径のみ厳しい場合には、管にプラグを装入しないで押し抜きを行うと、管とダイスの接触のみになって押し抜き荷重が低減し、ダイスの回転負荷も減少して、より曲がりの少ない管が得られる。
以下、実施例に基づいて説明する。
本発明例1として、φ34mm×7tmmの強度410MPaの鋼管を用いて、傾斜部の角度θpを5.5°とし傾斜部分の長さLpを20mmとしたプラグ1を鋼管3に装入し、傾斜部の角度を5.5°としたダイス2の孔に鋼管3を押し込んで通過させる押し抜きを行うにあたり、ダイス2を回転駆動装置4によって回転させながら押し抜きを行った。その際の押し抜き加工速度は30mm/秒で、ダイス2の回転速度は100mm/秒であった。
本発明例2として、上記と同じロットの鋼管を用いて、傾斜部の角度θpを10.5°とし傾斜部分の長さLpを11mmとしたプラグ1を鋼管3に装入し、傾斜部の角度を10.5°としたダイス2の孔に鋼管3を押し込んで通過させる押し抜きを行うにあたり、ダイス2を回転駆動装置4によって回転させながら押し抜きを行った。その際の押し抜き加工速度は50mm/秒で、ダイス2の回転速度は50mm/秒であった。
比較例1として、上記と同じロットの鋼管を用いて、傾斜部の角度θpを5.5°とし傾斜部分の長さLpを20mmとしたプラグ1を鋼管3に装入し、傾斜部の角度を5.5°としたダイス2の孔に鋼管3を押し込んで通過させる押し抜きを行うにあたり、ダイス2を回転させずに押し抜きを行った。
比較例2として、上記と同じロットの鋼管を用いて、傾斜部の角度θpを10.5°とし傾斜部分の長さLpを11mmとしたプラグ1を鋼管3に装入し、傾斜部の角度を10.5°としたダイス2の孔に鋼管3を押し込んで通過させる押し抜きを行うにあたり、ダイス2を回転させずに押し抜きを行った。
従来例として、上記と同じロットの鋼管を用いて、傾斜部の角度θpを5.5°とし傾斜部分の長さLpを20mmとしたプラグ1を鋼管3に装入し、傾斜部の角度を5.5°としたダイス2の孔に鋼管3を通して引き抜きを行った。
これら加工を行った後の鋼管について、鋼管の曲がりを測定し1m長さ当たりの曲がり量に換算した。また、鋼管の寸法精度(外径偏差、肉厚偏差)を測定した。これらの結果を表1に示す。
ここで、外径偏差は、管の内周方向断面を画像解析して、真円からの最大偏差(すなわち、(最大径−最小径)/真円径×100%)を円周方向に算出することにより求めた。また、肉厚偏差は、管の内周方向断面を画像解析して、肉厚断面の画像から平均肉厚に対する最大偏差(すなわち、(最大肉厚−最小肉厚)/平均肉厚×100%)として直接測定した。
表1より明らかなように、本発明例1及び本発明例2では、曲がりが著しく小さくなっており、寸法精度も良好な鋼管が製造されている。これに対して、比較例1及び比較例2では、加工後の鋼管の寸法精度は良好であったが、曲がりが発生している。従来例では、鋼管の曲がりは小さかったが、引き抜き後の寸法精度が著しく低下している。
1 プラグ
2 ダイス
3 管
4 ダイス回転装置
5 管引き機
2 ダイス
3 管
4 ダイス回転装置
5 管引き機
Claims (4)
- 金属管を該金属管内にプラグを装入した状態でダイスの孔に押し込んで通過させる押し抜きを行うにあたり、ダイスを回転させながら押し抜きを行うことを特徴とする高寸法精度管の製造方法。
- ダイスの回転速度を管の押し抜き速度と同等以上とすることを特徴とする請求項1に記載の高寸法精度管の製造方法。
- ダイス入側から管外面とダイスとの間に、強制的に常温で流体の潤滑剤を供給しつつ押し抜きを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の高寸法精度管の製造方法。
- 金属管内にプラグを装入しない状態で押し抜きを行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高寸法精度管の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP2004326543A JP2006136899A (ja) | 2004-11-10 | 2004-11-10 | 高寸法精度管の製造方法 |
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