JP2006135074A - 熱電素子およびそれを備えた熱電装置 - Google Patents

熱電素子およびそれを備えた熱電装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 構造を複雑化することなく、従来の熱電素子と比較して飛躍的に安定した冷却および/または加熱特性を示す熱電素子およびそれを備えた熱電装置を提供する。
【解決手段】 冷却装置(熱電装置)10に備えられた冷却素子(熱電素子)1は、所定の内圧を有する中空部12・13が設けられた陰極2と陽極3とを備えており、冷却装置10は、中空部12・13の内圧を調節する加減圧ポンプ11を備えており、定常状態における中空部13の内圧を、真空空間5の内圧よりも高くなるよう調節している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、熱電素子およびそれを備えた熱電装置に関し、詳細には、電子トンネル効果を用いて一方から他方へと熱を移動させることによって、冷却および/または加熱を行う熱電素子およびそれを備えた熱電装置に関するものである。
熱電素子は、一方の電極から他方の電極へと熱を移動させることによって、一方の電極を冷却し、他方の電極を加熱することができる。このような性質を有する熱電素子は、小型冷蔵庫やレーザ発信器の冷却装置の電子冷却素子として利用されている。
現在、冷蔵庫、冷凍庫においては、コンプレッサーが一般的に用いられているが、環境志向の高まりから、スターリングエンジンなどの脱フロン冷却機構が求められてきているため、レーザなどの小型電子部品の冷却機構には、上記電子冷却素子であるペルチェ素子が一般的に用いられている。
コンプレッサーやスターリングエンジンは、高冷却性能を有するものの、動作原理の点から冷却システムが大きくなってしまうというデメリットがある。一方、ペルチェ素子は小型ではあるものの、コンプレッサーなどに比べ冷却性能が半分程度に低下してしまうといったデメリットがある。
上記デメリットを解決すべく、ペルチェ素子並みに小型、かつコンプレッサー並みの冷却性能を有する素子の開発が求められており、候補の一つとして、電子トンネル効果を用いた冷却素子が挙げられている。
このような冷却素子(熱電素子)としては、ペルチェ素子、電子トンネル効果を用いた電子冷却素子がある。以下、各素子について簡単に説明する。
ペルチェ素子は、図7に示すように、金属50とN型半導体(陽極)51、P型半導体(陰極)52とを組み合わせ、N型半導体側を正電位、P型半導体側を負電位にすることにより、金属50が冷却されるというものである。
一般にペルチェ素子の冷却性能指数(COP)は、以下の式で与えられる。
COP=(α−α)2÷{√(ρ)+√(ρ)} …(1)
ここで、αは半導体の熱起電能、ρは半導体の比抵抗、kは半導体の熱伝導率を示す。また、添字p、nはそれぞれP型、N型であることを意味している。上記COPの値が大きいほど冷却能力は高く、高効率の冷却素子を得ることができる。
また、電子トンネル効果とは、真空もしくは絶縁体を隔てた対向する2つの電極間を電子が移動する現象であり、より詳しくは、真空空間に形成されたエネルギー障壁を、所望のエネルギーをもった電子が通過することによって起こる現象である。このような現象を利用して冷却を行う素子が、電子トンネル効果を用いた冷却素子である。
電子トンネル効果を利用したヒートポンプに関する文献として、特許文献1がある。このヒートポンプは図8に示すように、陰極71および陽極72と、これらの電極に各々負電圧と正電圧を印加して電流を供給するための電源73と、両電極の表面に被覆された低仕事関数材料74とで構成される。陰極71と陽極72はスペーサー76を用い、0.1〜1μmの間隔の真空空間75を介して、対向配置されている。低仕事関数材料74は、動作温度でトンネル電子77および熱電子77を放出する材料であり、仕事関数が約0.3eV以下のものが用いられる。上記構成により、低仕事関数材料74の表面から、その接触する電極の温度によりエネルギーを供給されたトンネル電子・熱電子77が真空空間75内に放出される。
電源73を用いて図8に示すように電圧を印加すると、陰極71からトンネル電子・熱電子77が放出され、真空空間75を移動して陽極72へ取り込まれる。陰極71からトンネル電子77、および熱電子77が放出される際には、陰極71の有する熱は冷却される。一方、運動エネルギーをもったトンネル電子77、および熱電子77が供給される陽極72は温度が上昇する。このようにして陰極71が冷却されると同時に陽極72は加熱されるというものである。
また、以上のような電子冷却素子(熱電素子)を備えた熱電装置について、特許文献2および特許文献3に記載がある。
特許文献2に記載の熱電子ヒートポンプ装置は、電子冷却素子部、電流計、温度計、電源と、それらを制御する制御手段からなる。電子冷却素子部は陰極、陽極からなり、各電極の対向面に低仕事関数材料が配置されている。電流計、電源は陰極と陽極の間に設けられ、電流計は陰極と陽極間の電流を計測するためのものである。温度計は陰極側に設けられ、素子の冷却量を測定するためのものである。また、制御手段は、電流計、温度計、電源と接続している。制御手段により、陰極の温度と、陰極と陽極間を流れる電流量をモニターし、冷却効率が最大となるように電源の電圧量を調整するというものである。
一方、特許文献3に記載の熱電気装置は、ケーシングと、ケーシング内に設置された熱交換機構と、熱交換機構により隔てられた2つの流路、外気流路と室内空気流路からなる。熱交換機構は、陰極と陽極の間が真空状態に保持された熱電気素子からなり、該陰極、陽極の双方、またはいずれか一方の対向面に配置された、カーボンナノチューブなどの電導性物質からなるナノ構造体で形成される。
特許文献3に開示された実施例では、該熱電気素子に印加される電圧を切り替えることにより、冷房/暖房の切替が可能であると記載されている。例えば、室内空気流路側を陰極、外気流路側を陽極とした場合、室内空気は該電子冷却素子により冷却されるため、該熱交換器は冷房器として機能する。一方、室内空気流路側を陽極、外気流路側を陰極とした場合、室内空気は該電子冷却素子により加熱されるため、該熱交換器は暖房器として機能することもできる。
米国特許第5722242号明細書(登録日:1998年3月3日) 特開2002−333230号公報(公開日:2002年11月22日) 特開2003−258326号公報(公開日:2003年9月12日) APPLIED PHYSICS LETTERS、Vol.78、No.17、2572頁、2001年
上述したペルチェ素子は、コンプレッサーに比べコンパクトな設計が実現でき、またCOなどの老廃物を出さないため、小型冷蔵庫やレーザ発信器の冷却など、幅広い用途で実用化されている。しかしながら、従来のコンプレッサーやファンに比べ、冷却能力が極端に低いため、高コストとなってしまう。例えば、容量60Lの冷蔵庫において、庫内温度を57℃から5℃に冷却する場合の冷却性能指数(COP)を計算すると、コンプレッサー式では約1.2であるのに対し、ペルチェ式では約0.6である。
ペルチェ素子の冷却能力が低い原因の一つとして、熱のやり取りを行う電極(N型半導体、P型半導体)同士が導体で接続されているため、熱の逆流が起こってしまうことが挙げられる。
これに対して、電子トンネル効果を用いた冷却素子(以下、電子トンネル効果素子と呼ぶ)では、熱のやり取りを行う電極の間を絶縁体、若しくは真空にすることで、熱の逆流を防ぎ、ペルチェ素子に比べ、冷却能力を高くすることが可能である。
特許文献1に記載の電子トンネル効果を利用した電子トンネル効果素子(文献では、ヒートポンプ)の場合には、熱のやり取りを行う電極間が真空であり、かつ電極の温度制御を行う必要がないため、ペルチェ素子に比べ、高い冷却効率を実現できる。
しかしながら、従来のコンプレッサーに匹敵する程度の冷却能力を実現するためには、電極間を真空にして、かつ、真空空間における電極間の距離を非常に狭くする必要がある。
以下、非特許文献1をもとに、電極間の真空空間、および電極材料の仕事関数を見積もる。
非特許文献1によると、冷却性能指数(COP)は、トンネル電子により運ばれる熱量(以下、Qtunとする)、熱電子により運ばれる熱量(以下、Qとする)、真空空間を移動するトンネル電子数(以下、Jtunとする)、真空空間を移動する熱電子数(以下、Jとする)、および対向電極間に印加する電圧(以下、Vbiasとする)を用いて、
COP=(Qtun+Q)÷{(Jtun+J)×Vbias} …(2)
とあらわされる。
ここで、JtunおよびJは、さらに、
tun=N(Ex)×D(Ex、Vx) …(3)
=α×T×exp(−β/T) …(4)
とあらわされる。
上式中のN(Ex)はエネルギーExをもつ電子数、D(Ex、Vx)はエネルギーEx、ポテンシャルエネルギーVxを持つ電子の状態密度、Tは温度、α、βは定数である。さらに、Qtun、QとJtun、Jは、
tun=∫(k×T+Ex)×Jtun(Ex)dEx …(5)
=(γ+η×T)×J …(6)
の関係にある。
なお、Qtunの積分範囲は−∞〜qVmaxであり、γ、ηは定数である。上式において、Qは温度Tのみの関数であるのに対し、Qtunは温度T、電子エネルギーEx、ポテンシャルエネルギーVxの関数である。ここで、Vxは、
Vx∝φ/q−Vbias×x/d …(7)
とあらわされる。
なお、φは対向電極の仕事関数、dは真空空間距離を表している。上式より、冷却能力を高めるためには、仕事関数φを出来るだけ低くするとともに、真空空間距離dを出来るだけ狭くする必要がある。
図9に、電子放出側仕事関数を0.6eVとし、真空空間距離dを変化させたときの、冷却性能指数(COP)変化を示す。初期庫内温度は52℃であり、庫内を7℃に冷却する場合の結果である。同図には、同一温度差におけるコンプレッサー、およびペルチェ素子の冷却性能指数も追記しているが、コンプレッサーと同等の冷却性能を実現するためには、真空空間距離dを5nm以下に保つ必要がある。
上述したように、仕事関数が低いほどCOPが高くなる傾向にある。しかしながら、一般的な低仕事関数では、材料表面が非常に活性であるため、大気中の水分や酸素と反応性が高く、特性維持が非常に困難である。
すなわち、上記のような仕事関数0.6eV程度の材料を用いる場合には、真空空間部分の真空度を高く維持することが必要不可欠である。
ところが、図8にあるような従来のヒートポンプ構造では、大気圧の影響を大きく受け、電極が変形するという問題が生じ、さらに、陽極と陰極で熱応力によるたわみが発生するという問題も生じる。
電子トンネル効果を用いた電子冷却素子においては、上述したように、陰極、陽極間の真空空間距離を5nm以下とすることが、安定した冷却特性を得るための条件であるにもかかわらず、このような大気圧による電極の変形と、温度による電極たわみとの影響で、5nmという狭い真空空間を維持することが困難である。そのため、従来の構造では、冷却特性が著しく低下してしまう。
なお、特許WO99/13562には、図10に示すように、電極101・102の間の真空空間103を電磁アクチュエーター120等で制御する方法が提案されているが、空間ギャップを高精度でセンシングする手段と、それをフィードバックする手段が必要であり、複雑な冷却システムになってしまうという課題があった。
そこで本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造を複雑化することなく、従来の熱電素子と比較して飛躍的に安定した冷却および/または加熱特性を示す熱電素子およびそれを備えた熱電装置を提供することにある。
本発明に係る表示装置は、上述した課題を解決するために、陰極と陽極とが真空空間を介して対向配置され、陰極に負電圧を印加し、陽極に正電圧を印加することによって、上記陰極から上記陽極へと電子を移動させて、陰極を冷却し、陽極を加熱する熱電素子であって、所定の内圧を有する中空部を備えた機構部材が、上記陰極および陽極の対向側とは反対側に、該陰極および陽極とそれぞれ一体的に設けられていることを特徴としている。
本発明の熱電素子は、陰極に負電圧を印加するとともに陽極に正電圧を印加することによって、上記陰極から放出された電子を、上記真空空間を通過させて上記陽極へと移動させる、いわゆる「電子トンネル効果」を用いて、冷却および/または加熱を行うものである。
この電子トンネル効果を用いた熱電素子においては、上述のように、上記陰極と陽極との真空空間距離をできるだけ狭く、具体的には5nm以下とすることによって、その冷却・加熱効率を向上させることができる。
本発明の熱電素子は、機構部材が、陰極および陽極の対向側とは反対側に陰極および陽極とそれぞれ一体的に構成されている。そのため、熱電素子の外部の大気圧が陽極および陰極に直接影響することはない。
すなわち、機構部材には、中空部が設けられており、該中空部は、所定の内圧を有しているため、例えば、その内圧が、真空空間の内圧と一致するように調整されていれば、外部からの大気圧の影響は、機構部材における中空部と外部との境界部に及ぶのみであって、電子トンネル効果に寄与する陰極および陽極は、真空空間と、真空空間の内圧と一致した内圧を有する中空部との間に保持されていることから、大気圧による影響を受けず、したがって変形することはない。よって、陽極および陰極の変形を抑制することができるため、本発明の熱電素子のように、冷却・加熱効率を向上させるために陰極と陽極との真空空間距離をできるだけ狭くする構成とした場合であっても、陽極および陰極の大気圧による変形を抑制することができ、大気圧による陰極と陽極との真空空間距離の変動を無くすことができる。
また、例えば、中空部の内圧を、上述したような熱応力によるたわみを抑制するような圧力とすれば、問題となっていた熱応力による陰極および陽極のたわみを抑制することができる。よって、上記の構成とすれば、本発明の熱電素子は、熱応力による陰極および陽極のたわみによる真空空間距離の変動を無くすことができる。
したがって、冷却・加熱効率を向上させるために、陰極と陽極との真空空間距離をできるだけ狭くする構成とした場合であっても、大気圧による電極部材の変形、熱応力による電極部材のたわみによって生じる陰極と陽極との真空空間距離の変動はなくなり、所望の真空空間距離(5nm以下)とすることができる。
以上により、本発明の熱電素子は、所定の内圧を有する中空部を備えた機構部材を備えるという比較的簡易な構成によって、冷却効率や加熱効率を向上させ、かつ冷却および/または加熱特性を安定させることができる。
ところで、本発明の熱電素子は、陰極側が冷却され、陽極側が加熱されるため、対象物の冷却および加熱という2つの目的に利用することができる。つまり、本発明の熱電素子は、その陰極側の機能を利用すれば冷却素子となり、その陽極側の機能を利用すれば加熱素子となる。例えば、本発明に係る熱電素子を冷却装置の冷却素子として用いれば、従来のコンプレッサー式の冷却装置と同程度の性能を有し、かつ、よりコンパクトな装置を実現することができる。
また、本発明に係る熱電素子は、上記陰極の一部分および陽極の一部分が、上記機構部材を兼ねていることが好ましい。
上記の構成とすることにより、本発明に係る熱電素子は、上記陰極および陽極の内部に中空部が設けられた構成となっている。
これにより、陰極および陽極における電子トンネル効果に寄与する部分に効果的に中空部の内圧が直接加えられることになり、より正確に陰極および陽極の変形やたわみを抑制することができる。
また、本発明の熱電素子は、上記陰極および陽極の内部に中空部を設けることによって、陰極および陽極の大気圧による変形や、熱応力によるたわみを抑制し、これらが原因となって生じる真空空間距離の変動を無くすことができることから、熱電素子自体を大型化することなく、冷却および/または加熱特性を安定させ、冷却効率や加熱効率を向上させた熱電素子を実現することができる。
本発明に係る熱電装置は、上述した課題を解決するために、上記熱電素子を備えた熱電装置であって、上記中空部の内圧を調節する調節手段を備えていることを特徴としている。
これにより、例えば、上述したように、中空部の内圧を、陰極および陽極に電圧が印加されていない非定常状態における上記真空空間の内圧と一致するように調整している場合、調節手段によってその内圧が変動しないように調節し、所望の内圧に維持することができる。
また、調節手段を設けていれば、例えば、非定常状態の場合と、陰極および陽極に電圧が印加されている定常状態の場合とで、中空部の内圧を変化させることができる。
また、本発明に係る熱電装置は、上記調節手段は、陰極のたわみ量と陽極のたわみ量との差がなくなるように中空部の内圧を調節するようになっており、さらに、上記中空部の内圧を計測する内圧計測手段と、上記陰極および陽極の温度を測定する温度計測手段と、上記内圧計測手段および温度計測手段の計測結果に基づいて、上記調節手段を制御する制御手段とを備えていることが好ましい。
具体的には、本発明の熱電素子は、上記陰極および陽極に電圧を印加すると、上記陰極から放出された電子を、上記真空空間を通過させて上記陽極へと移動させ、上記陰極を冷却し、上記陽極を加熱する。すなわち、電圧を印加し始めてしばらくすると、陰極と陽極とは温度が異なってくる。電極部材は、上述したように、熱応力によるたわみが生じる。たわみの大きさ(以下、たわみ量とする)は、温度に依存しており、温度が高いほどたわみが大きくなる。すなわち、本発明の熱電素子のように、上記陰極を冷却し、上記陽極を加熱する構成では、陰極および陽極のたわみの大きさは異なってくる。
したがって、本発明の熱電素子は、調節手段を設けることにより、陰極および陽極のそれぞれのたわみに対応して各中空部の内圧を変化させることができ、たわみが原因による真空空間距離の変動を抑制することができる。
すなわち、本発明の熱電素子は、非定常状態の場合は、陰極側の中空部の内圧および陽極側の中空部の内圧はともに、真空空間の内圧と一致するように調節され、定常状態になると、陽極側の中空部の内圧は、真空空間の内圧よりも高くなるように、陰極側の中空部の内圧は、非定常状態の内圧のままになるように調節されることが好ましい。
これにより、陰極と陽極とのたわみの大きさが均等もしくは実質的に均等になる。したがって、上記陰極を冷却し、上記陽極を加熱することによって生じる真空空間距離の変動を効果的に抑制することができる。
また、上記の構成とすれば、上記気圧計測手段および温度計測手段の計測結果に基づいて、正確に中空部の内圧を調節することができる。これにより、例えば、熱電装置自体が振動するような環境下に設置された場合や、冷却および/または加熱する対象物の温度が変化するような場合であっても、気圧計測手段および温度計測手段を備えることによって、中空部の内圧を適宜調節し、上述したような陰極および陽極への影響を確実に抑えることができる。そのため、陰極と陽極との間の真空空間距離の変動を引き起こすことはない。
したがって、本発明の熱電装置は、冷却効率または加熱効率の向上を、真空空間距離を狭くすることによって実現しようとする場合であっても、安定した冷却および/または加熱特性を備えることができる。
したがって、本発明の熱電装置は、冷却効率や加熱効率を向上させるために上記陰極と陽極とによって形成される真空空間距離を狭く設定した熱電素子を備えた場合であっても、安定した冷却および/または加熱特性を備えることができる。
本発明に係る表示装置は、以上のように、陰極と陽極とが真空空間を介して対向配置され、陰極に負電圧を印加し、陽極に正電圧を印加することによって、上記陰極から上記陽極へと電子を移動させて、陰極を冷却し、陽極を加熱する熱電素子であって、所定の内圧を有する中空部を備えた機構部材が、上記陰極および陽極の対向側とは反対側に、該陰極および陽極とそれぞれ一体的に設けられていることを特徴としている。
上記の構成とすることにより、冷却・加熱効率を向上させるために、陰極と陽極との真空空間距離をできるだけ狭くする構成とした場合であっても、大気圧による電極部材の変形、熱応力による電極部材のたわみによって生じる陰極と陽極との真空空間距離の変動はなくなり、所望の真空空間距離(5nm以下)とすることができる。
これにより、本発明の熱電素子は、所定の内圧を有する中空部を備えた機構部材を備えるという比較的簡易な構成によって、冷却効率や加熱効率を向上させ、かつ冷却および/または加熱特性を安定させることができる。
したがって、例えば、本発明に係る熱電素子を冷却装置の冷却素子として用いれば、従来のコンプレッサー式の冷却装置と同程度の性能を有し、かつ、よりコンパクトな装置を実現することができる。
また、本発明に係る熱電装置は、上述した課題を解決するために、上記熱電素子を備えた熱電装置であって、上記中空部の内圧を調節する調節手段を備えていることを特徴としている。
上記の構成とすれば、調節手段を設けることにより、陰極および陽極のそれぞれのたわみに対応して各中空部の内圧を変化させることができ、真空空間距離の変動を抑制することができる。
〔実施の形態1〕
本発明の第1の実施形態について図1ないし図4に基づいて説明すると以下の通りである。本実施の形態では、本発明に係る熱電素子の一例として、小型冷蔵庫やレーザ発信器の冷却装置に内蔵される冷却素子を挙げて説明する。図1は、本実施の形態の冷却素子(熱電素子)1の構成を示す断面図である。
本実施の形態にかかる冷却素子1は、「電子トンネル効果」を利用したものであるため、ここでは先ず、この電子トンネル効果について詳述する。
「電子トンネル効果」とは、真空もしくは絶縁体を隔てた対向する2つの電極間を電子が移動する現象である。より詳しくは、真空空間に形成されたエネルギー障壁を、所望のエネルギーを持った電子が通過するという効果である。このエネルギー障壁の高さは、電手を放出する陰極側の金属の仕事関数に依存している。つまり、陰極側の電極材料の仕事関数が低いほど、真空空間に形成されるエネルギー障壁は低くなる。
ところで、陰極側から放出される電子は、高いエネルギーを有する熱電子、中程度のエネルギーを有するトンネル電子、低いエネルギーを有する逆流電子という3種類の電子に分類される。これら3種類の電子のうち、熱電子はエネルギー障壁を飛び越えて陽極に到達することができる。また、トンネル電子の一部もエネルギー障壁を通過して陽極に到達することができる。それゆえ、熱電素子の冷却および/または加熱特性に影響を与えるのは、熱電子およびトンネル電子の数である。
熱電子数およびトンネル電子数を増加させる手段としては、(1)真空空間の距離を狭める、(2)陰極に低仕事関数材料を用いる、(3)バイアス電圧を高くする、という3つの方法が考えられた。しかしながら、上記(1)の手段は、真空空間距離を維持することが難しいという問題点を有している。また、上記(2)の手段は、用いる材料に依存するが、本技術分野において一般的に用いられる低仕事関数材料は大気中で非常に不安定であるため、利用可能な低仕事関数材料が制限されるという問題点が存在する。また、上記(3)の手段は、消費電力が増加してしまうという問題点を有している。
そこで、上記(1)の手段に基づいて、真空空間距離を狭く構成した場合であっても、簡易な構成によってその距離を維持することができれば、熱電子数およびトンネル電子数を増加させることができるとともに、安定した冷却および/または加熱特性を備えることができるのではないかと考えた。
そこで、本実施の形態の冷却素子1は、陰極2および陽極3にそれぞれ所定の内圧を有する中空部12・13を設ける。これにより、陰極2および陽極3が大気圧の影響を受けて変形したり、電圧を印加して陰極2および陽極3に生じる温度変動に起因する熱応力によるたわみが生じた場合であっても、真空空間距離の変動をなくし、熱電素子の真空空間距離の距離を所望の距離に維持することができる。そのため、本実施の形態の冷却素子1は、図1に示すように、陰極2と、陽極3と、電源4とを主な構成部材として有している。また、陰極2と陽極3は、互いの板面を対向させて配置されており、対向している陰極2と陽極3との間には、真空空間5が形成されている。
なお、本実施の形態の冷却素子1は、円盤形状を有している。しかしながら、本発明はこの形状に限定されるものではない。
また、真空空間5を形成している陰極2および陽極3の対向面の端部には、真空シール6が設けられており、これによって、真空空間5は密閉され真空状態が保たれている。シール材としては、絶縁体であり熱伝導率の比較的低い、低融点ガラスなどが適している。
なお、ここで「真空状態」とは、通常、電子トンネル効果を用いた熱電素子を構成する場合に形成される真空空間における気圧の状態を表すものであり、完全に真空となっている状態だけではなく、真空に近い状態のことも含んでいる。
上記陰極2および陽極3は、銅、タングステンなどの熱伝導性の高い材料が望ましく、例えば、厚み5mmの銅を用いることができる。陰極2は電源4から負電圧が印加され、陽極3は電源4から正電圧が印加される。
また、本実施の形態の冷却素子1には、陰極2および陽極3の対向面に、それぞれ3eV以下の仕事関数を有する低仕事関数材料からなる層7・7が電子放出材料として形成されている。低仕事関数材料からなる層7に含まれる低仕事関数材料としては、セシウム化合物(TaCs、MoCs、CCs、NiCsなど)、アルカリ金属を含む有機化合物(アルカライド、エレクトライドなど)、カルシウム化合物(WCa、CaB6など)、カーボンナノチューブ、アルカリ金属を含む無機化合物(アルカライド、エレクトライドなど)が挙げられる。また、上記材料に電子を注入した材料であっても良い。
さらに、陰極2には、対向側とは反対側に中空部12が設けられており、陽極3にも同じく、対向側とは反対側に中空部13が設けられている。なお、本実施の形態における冷却素子1は、図1に示すように、中空部12・13が陰極2および陽極3の内部にそれぞれ設けられた構成となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、陰極2および陽極3の対向側とは反対側に、それぞれ中空部12・13を備えた機構部材を陰極2および陽極3と一体的に備えた構成であってもよい。
本実施の形態の冷却素子1は、電子トンネル効果を用いており、陰極2および陽極3に電圧を印加して、上記陰極2から放出された電子を、上記真空空間5を通過させて陽極3へと移動させ、陰極2を冷却し、陽極3を加熱する構成となっている。すなわち、電圧を印加し始めてしばらくすると、陰極2と陽極3とは温度が異なってくる。そこで、陰極2と陽極3には、大気圧の影響を大きく受けて電極が変形するという問題を有するとともに、熱応力による「たわみ」が生じるという問題が生じる。これらの問題は、真空空間5内における上記陰極2と陽極3との真空空間距離を変動させてしまい、特に、上述したように、真空空間距離を狭く設定することにより冷却効率の向上を図ろうとする冷却素子1では、安定した冷却特性を得ることができない。
そこで、真空空間距離を狭く設定した場合であっても、その距離が変動しないように、所定の内圧を有する上記中空部12・13が設けられている。
以下に、中空部12・13の内圧について、陰極2・陽極3の大気圧による変形および、熱応力によるたわみに基づいて、具体的に説明する。なお、図1に示すように、陰極2・陽極3はともに、その端部は真空シール6により固定されている。そのため、陰極2・陽極3の端部では、大気圧による変形や、熱応力によるたわみを抑えることができる。しかしながら、端部以外の領域では変形やたわみが生じ、陰極2と陽極3の中央付近では、変形やたわみが特に大きくなる。そこで、以下の説明では、陰極2・陽極3の変形やたわみが最大となる、陰極2・陽極3の中央付近での変形およびたわみについて説明する。
まず、陰極2および陽極3に電圧が印加されていない非定常状態の場合について考える。なお、ここで、非定常状態とは、陰極2および陽極3に電圧が印加され、電子が陰極2から陽極3に安定して放出されている状態を定常状態とした場合、この定常状態以外の状態を表し、陰極2および陽極3に電圧が印加されていない状態と、電圧が印加された直後の状態とが非定常状態に相当する。
冷却素子1が非定常状態である場合、中空部12・13の内圧は、陰極2および陽極3の電子トンネル効果に寄与する部分2a・3aに、すなわち陰極2および陽極3における対向側に、大気圧が影響しない程度の圧力を有していればよい。このように構成することにより、外部からの大気圧の影響は、陰極2および陽極3における中空部12・13と外部との境界部が変形するのみであって、電子トンネル効果に寄与する部分2a・3aには、大気圧の影響が及ばない。特に、中空部12・13の内圧を、真空空間の内圧と一致するように調整しておくことにより、陰極2および陽極3の電子トンネル効果に寄与する部分2a・3aには、外部圧力がかからない。このため、陰極2および陽極3の電子トンネル効果に寄与する部分の変形をより厳密に抑制することができる。
したがって、陰極2および陽極3に電圧が印加されていない非定常状態の場合は、中空部12・13の内圧を、真空空間の内圧と一致するように調整しておくことがより好ましい。
これにより、非定常状態において、大気圧が原因による真空空間の距離の変動を抑制することができる。
次に、定常状態における陰極2および陽極3のたわみについて説明する。
陰極2および陽極3は、非定常状態から定常状態に移行すると、温度が変化する。そのため、陰極2および陽極3には、熱応力によるたわみが生じる。具体的には、陰極2および陽極3において、熱応力によるたわみは、陰極2および陽極3の電子トンネル効果に寄与する部分2a・3aに生じるが、以下の説明では、陰極2および陽極3のたわみとして説明する。たわみの大きさ、すなわち「たわみ量w(m)」は、以下の式(8)に基づいて求めることができる。
w=3×P×a×(1−ν)/(16×E×h) …(8)
ここで、Eは、縦弾性率、若しくはヤング率(GPa)、aは電極半径(m)、νはポアソン比、hは電極厚み(m)、Pは電極の中空部の内圧(Pa)を示している。また、Pは、以下の式(9)にて表すことできる。
P=K×E×(T2−T1)×h …(9)
ここで、Kは平板型の彎曲係数(1/℃)、Tは陰極または陽極の電極温度(℃)、Tは冷却する対象物(例えば、空気)の温度(℃)を示している。
したがって、上記の式(8)および式(9)より、陰極2および陽極3におけるたわみ量w(m)は、電極温度(T)と、冷却する対象物(例えば、空気。以下、対象物とする)の温度(T)との差に依存していることがわかる。すなわち、電極温度と対象物との差が大きいほど、電極に生じるたわみ量も大きくなる。
そこで、定常状態において、例えば、陽極3の温度と、対象物の温度との差のほうが、陰極2の温度と、対象物の温度との差よりも大きい場合、陽極3のたわみ量は、陰極2のたわみ量よりも大きくなる。
具体的には、図1に示した陰極2に負電圧を印加すると、陰極2は真空空間5側へたわみ、陽極3に正電圧を印加すると、陽極3は真空空間5側とは反対側へそれぞれたわむ。
陰極2と陽極3のたわみ量に差がなければ、定常状態になった場合であっても、結果的に真空空間の距離は、非定常状態のときと変わらない。ところが、上述したように、陰極2と陽極3とのたわみ量wに差があり、陽極3のたわみ量wが、陰極2のたわみ量wよりも大きいと、所定の距離(5nm以下)であった真空空間の距離が、陰極2および陽極3に電圧を印加して定常状態となると、距離が変動することになる。
そこで、このように、陰極2と陽極3とのたわみ量wに差がある場合、陽極3に設けられた中空部13の内圧と、陰極2に設けられた中空部12の内圧とに差をつけることが好ましい。具体的には、陽極3のたわみ量wが、陰極2のたわみ量wよりも大きい場合は、定常状態における、陽極3に設けられた中空部13の内圧は、陰極2に設けられた中空部12の内圧よりも高い気圧を有していることが好ましい。これにより、中空部13の内圧を中空部12の内圧と同じ圧力とした場合と比較して、陽極3に生じるたわみ量wは変化する。すなわち、陽極3に生じるたわみ量wは小さくなる。
したがって、陽極3のたわみ量wと、陰極2のたわみ量wとの差はなくなり、陰極2および陽極3にそれぞれ電圧を印加した場合であっても、無印加時において設定した真空空間5の距離に変動は生じず、所定の距離を常に維持することができる。
すなわち、陽極3に設けられた中空部13の内圧は、陰極2に設けられた中空部12の内圧よりも高い気圧を有していることが好ましい。詳細については、以下の実施例にて説明するが、例えば、陰極2に設けられた中空部12の内圧が真空空間5の内圧と一致するように調整されている場合、陽極3に設けられた中空部13の内圧を、例えば、約0.9気圧に調整しておくことができる。
以上のように、本実施の形態における冷却素子1を用いれば、中空部12・13を備えることにより、上述したように、陰極2および陽極3の、大気圧による変形や、温度によるたわみが発生した場合であっても、真空空間5の距離を常に維持することができる。
したがって、真空空間5の距離を5nm以下と短く構成した場合であっても、真空空間5の距離に変動を生じさせることはなく、冷却特性を向上させることができ、かつ、安定した冷却機能を備えた冷却素子1を提供することができる。
次に、以上のような構成を備えた冷却装置10(熱電装置)について図2に基づいて説明する。
上記冷却素子1は、上述したように、例えば、陽極3に設けた中空部13の内圧が、非定常状態と定常状態とで異なることが好ましい。そのため、本実施の形態の冷却装置10は、この内圧を調節するための加減圧ポンプ11(調節手段)を備えている。上述した一例は、陽極3に設けた中空部13の内圧が非定常状態と定常状態とで異なる場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。したがって、本実施の形態の冷却装置10は、図2に示すように、陰極2に設けた中空部12の内圧を調節することができる加減圧ポンプ11も備えている。
さらに、冷却装置10は、図2に示すように、圧力計14(内圧計測手段)と、温度計15(温度計測手段)と、制御装置16(制御手段)とを備えている。
上記圧力計14は、上記陰極2および陽極3内に設けられた中空部12・13の圧力を測定する。また、上記温度計15は、上記陰極2および陽極3の温度を測定する。
上述したように、冷却素子1は、非定常状態から定常状態に移行すると、陰極2および陽極3に温度変化が起こる。そのため、陰極2および陽極3には、熱応力によるたわみが生じる。このような冷却素子1を備えた冷却装置10では、冷却素子1の陰極2および陽極3の温度が静的に変化する場合、すなわち、陰極2および陽極3の温度が設定温度と一致する場合のみならず、実際は冷却装置10全体が振動したり、冷却対象物の温度が変化したりする場合がある。このような場合には、冷却素子1の陰極2および陽極3の温度も動的に変化する。すなわち、陰極2および陽極3の温度と設定温度とが一致しない場合がある。
そこで、本実施の形態の冷却装置10は、圧力計14および温度計15によって、中空部12・13の内圧および陰極2および陽極3の温度を測定し、その測定結果に基づいて、加減圧ポンプ11を動作させる制御装置16を備えている。圧力計14によって測定された中空部12・13の内圧のデータおよび、温度計15によって測定された陰極2および陽極3の温度のデータを受けて、制御装置16は、加減圧ポンプ11を動作させて中空部12・13の内圧を調節する。
具体的には、温度(電極温度および対象物温度)とたわみとの関係、中空部の内圧とたわみとの関係については、上記の式(8)および式(9)より求めることができる。したがって、温度(電極温度および対象物温度)および中空部の内圧を監視データとして用いることで、陰極2および陽極3のたわみを制御することができる。なお、冷却対象物温度を測定する温度計は、図示を省略する。本実施の形態では、上記陰極2、上記陽極3の温度データから、上記陽極3の中空部の内圧を制御する場合について説明する。
まず、陰極2、陽極3の温度データおよび、対象物の温度データを取得し、式(8)および式(9)を用いて、これらの温度データから、陰極2および陽極3それぞれのたわみ量wを見積もる。
図3は、陰極2および陽極3における設定温度との温度差(℃)と、陰極2と陽極3とのたわみ量wの差(nm)についての関係を示したグラフである。
図3によれば、陰極2および陽極3がともに、設定温度からの温度差が1℃上昇した場合には、たわみ量の差は12nmであると見積もることができる。
次に、陽極3の中空部13の内圧を変化させた場合、式(8)から陽極3のたわみ量wを見積もることができるので、図4に示すように、陰極2と陽極3の温度差(℃)と、陰極と陽極3とのたわみ量の差を0nmとするために陽極3の中空部13の内圧との関係を見積もることができる。
図4によれば、例えば、設定温度と陰極2および陽極3の温度に温度差がない場合に、中空部13の内圧を0.9気圧とすることによってたわみ量の差を0nmとすることができた場合であっても、陰極2および陽極3がともに設定温度からの温度差が1℃上昇していれば、たわみ量の差を0nmとするために中空部13の内圧は、0.9気圧よりも0.2気圧増加した1.1気圧とする必要がある。この結果に基づいて、上記制御装置16は、上記加減圧ポンプ11を駆動させ、陰極2と陽極3とのたわみ量の差が0nmとなるように、上記陽極3の中空部13の内圧を制御する。
このように、本実施の形態の冷却装置10は、圧力計14と温度計15と制御装置16とを設けることにより、圧力計14からの圧力データと温度計15の温度データをもとに、上記加減圧ポンプ11を駆動させ、上記陽極3の中空部13の内圧を調節することによって、冷却素子1の真空空間5の距離の変動は生じない。
したがって、本実施の形態の冷却装置10は、冷却効率を向上させるために冷却素子1の真空空間5の距離を狭くした場合であっても、真空空間5の距離を所望の距離に維持することができるため、安定した冷却特性を備えることが可能となる。
なお、図2に図示していないが、陰極2および陽極3と、加減圧ポンプ11との間には電磁弁を設けており、必要に応じて、電磁弁の開閉を行う。
また、陰極2および陽極3の中空部12・13に充填する材料としては、特に限定されるものではない。例えば、熱膨張率の高い気体や、陽極3の中空部13内に蒸気圧の高い液体を封入して、陰極2および陽極3が温度変化した際に各電極に応力を発生させることも考えられる。
〔実施の形態2〕
本発明に係る他の実施の形態について、図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。本実施の形態では、上記実施の形態1との相違点について説明するため、説明の便宜上、実施の形態1で説明した部材と同様の機能を有する部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図5は、本実施の形態における冷却素子20の構成を示す断面図である。
上記実施の形態1における冷却素子1は、真空空間5における陰極2と陽極3との間には、低仕事関数材料からなる層7・7のみが備えられた構成となっている。これに対して、本実施の形態の冷却素子20は、真空空間5における陰極2と陽極3との間に、さらに、平坦化材料21とスペーサー22とを備えている。
図6は、図5の破線Aで囲んだ部分を拡大した冷却素子20の部分断面図である。
図6に示すように、強平坦化材料21とスペーサー22との接触部には、低仕事関数材料からなる層23を形成していない。これは、低仕事関数材料からなる層23が5nm未満の非常に薄い膜であるため、スペーサー22と接触させることで膜に亀裂が入ったり、膜剥がれが起こったりすることを防止するためである。低仕事関数材料からなる層23に含まれる低仕事関数材料としては、上記実施の形態1と同じく、セシウム化合物(TaCs、MoCs、CCs、NiCsなど)、アルカリ金属を含む有機化合物(アルカライド、エレクトライドなど)、カルシウム化合物(WCa、CaB6など)、カーボンナノチューブ、アルカリ金属を含む無機化合物(アルカライド、エレクトライドなど)が挙げられる。また、上記材料に電子を注入した材料であっても良い。
上記スペーサー22の材料としては、絶縁体であり、かつ熱伝導率の低い材料が望まれる。このスペーサーの具体的な材料としては、絶縁材料であるSiOやアルミナなどが考えられる。また、電気伝導性があり熱伝導しにくい材料としてフラーレンがあるが、このような材料をスペーサーとして用いてもよい。
上記平坦化材料21は、全電極面に渡って真空空間5を一定に保つためのものであり、材質としては、SiやTaなどが挙げられることができ、例えば、厚さ0.25mmのSiを用いることができる。
以上の構成とすることにより、冷却素子20は、スペーサー22を備えていることにより、上記実施の形態1の構成と比較して、真空空間5における陰極2と陽極3との距離をより正確に維持することができる。
また、平坦化材料21を設けていることにより、上記実施の形態1の構成と比較して、陰極2と陽極3との対向面に部分的に生じるたわみを確実に抑制し、陰極2と陽極3との距離を電極全面にわたって均一にすることができる。
また、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本発明は、以下の構成とすることもできる。
2枚の金属板を真空空間を介して近接対向させ、陰極に負電圧を、陽極に正電圧を印加して前記陰極から真空空間中に電子を放出し、前記放出した電子を前記陽極側でトラップする電子トンネル効果を用いた電子冷却素子において、前記陰極、陽極を中空構造とし、前記陰極、陽極の中空構造内を所定の圧力に保つことを特徴とする、電子冷却素子。
この場合、さらに、上記電子冷却素子において、前記電子冷却素子の非動作時、若しくは動作開始時に、前記陰極、陽極の中空構造内圧力を、前記陰極、陽極のうち電子トンネル効果に寄与する部分に応力がかからない程度の真空度とすることを特徴とする、電子冷却素子。
また、上記電子冷却素子において、前記電子冷却素子の非動作時、若しくは動作開始時に前記陰極、陽極の中空構造内圧力を、前記陰極、陽極間の真空空間の真空度と同程度とすることを特徴とする、電子冷却素子。
また、上記電子冷却素子において、前記陽極の中空構造内圧力のみを可変させることを特徴とする、電子冷却素子。
また、上記電子冷却素子周辺に、前記陰極、陽極の中空構造内の真空度を計測するための計測手段と、上記陰極、陽極の温度を計測するための温度計と、上記陰極、陽極の中空構造内の圧力を最適値に制御するための制御手段を兼ね備えた冷却システム。
〔実施例〕
以下の説明は、本発明の冷却装置について説明する。
本実施例では、上記実施の形態2中の図5と同じ冷却素子20の構成を備えた冷却装置について説明する。
本実施例の冷却素子について説明すれば以下の通りである。
本実施例では、図5に示した冷却素子20の構成において、陽極3および陰極2には、厚み5mmのCuを用い、平坦化材料21には、厚さ0.25mmのSiを用い、スペーサーには、SiOを用い、低仕事関数材料からなる層23に含まれる低仕事関数材料には、セシウム化合物(CsO)を用いた。
非定常状態における中空部12・13の内圧を、真空空間5の内圧と一致するように0.001気圧に調整した。
次に、陽極3および陰極2に0.6Vの電圧を印加した定常状態では、中空部13の内圧を、0.9気圧となるように調節した。この調節は、冷却素子20を備えた冷却装置に設けた加減圧ポンプ(実施の形態1では図2の加減圧ポンプ11)によって行った。
室内温度を27℃とし、庫内(室内)温度を7℃に設定した。なお、本実施例では、冷却素子20自体の温度は静的に変化するため、陽極3および陰極2の温度は、設定温度と一致している。
〔比較例〕
上記実施例と同じ構成の冷却素子20を用い、中空部12・13の内圧を、非定常状態と定常状態とで変化させず、常時、中空部12・13の内圧を、真空空間5の内圧と一致するように0.001気圧に調整した。
室内温度を27℃とし、庫内(室内)温度を7℃に設定した。なお、本比較例においても、上記実施例と同様、冷却素子20自体の温度は静的に変化するため、陽極3および陰極2の温度は、設定温度と一致している。
以下の表は、定常状態における上記実施例および比較例における陰極2および陽極3のたわみ量wおよび、陰極2と陽極3とのたわみ量wの差を計測した結果である。
Figure 2006135074
なお、陰極2・陽極3はともに、その端部は、図5に示すように、真空シール6により固定されている。そのため、陰極2・陽極3の端部では、大気圧による変形や、熱応力によるたわみを抑えることができる。しかしながら、端部以外の領域では変形やたわみが生じ、陰極2と陽極3の中央付近では、変形やたわみが特に大きくなる。そこで、以下のたわみ量の計測は、陰極2・陽極3の変形やたわみが最大となる、陰極2・陽極3の中央付近での計測結果である。
上記の表によると、比較例における冷却素子の陰極2のたわみ量wは−249nm、陽極3のたわみ量は311nmであった。
一方、実施例における冷却素子の陰極2のたわみ量wは−249nm、陽極3のたわみ量は249nmであった。
なお、ここで、このたわみ量wは、正方向を、各電極内に設けた中空部から、真空空間5へ向かう方向、つまり陰極2と陽極3との対向面側方向へのたわみと定義し、負方向を、真空空間5から各電極内に設けた中空部へ向かう方向、つまり陰極2および陽極3の対向面側とは反対側方向へのたわみと定義している。すなわち、陰極2は陽極3との対向面側へ、陽極3は陰極2との対向面と反対側へそれぞれたわんでいることになる。
その結果、比較例においては、陰極2と陽極3とのたわみ量の差が60nmとなったが、実施例における冷却素子では、陰極2と陽極3とのたわみ量の差はなかった。すなわち、陰極2と陽極3とのたわみ量の差が60nmに及んだ比較例の構成では、5nmの真空空間を維持することができなかった。
一方、実施例における冷却素子は、陰極2と陽極3とのたわみ量に差がなかったので、定常状態においても、初期に規定していた5nmの真空空間を維持することができた。
これにより、非定常状態において、真空空間5の内圧と一致するように調整していた中空部13の内圧を、定常状態において、0.9気圧となるように調節する本発明の冷却素子は、中空部13の内圧を調整するという比較的簡易な構成によって、冷却効率や加熱効率を向上させるために、5nmという狭い真空空間距離を設定した場合であっても、冷却特性を安定させることができた。
本発明の熱電素子は、従来の熱電素子と比較してコンパクトな構造でありながら、高い冷却特性を有しているため、熱電装置に有効に利用することができる。また、本発明の熱電素子は、一体で冷却および加熱の両方の機能を備えていることから、加熱・冷却装置の熱電素子として利用することもできる。
本発明の一実施の形態を示すものであって、電子トンネル効果を用いた冷却素子の構成を示す断面図である。 本発明の一実施の形態を示すものであって、図1に示した電子トンネル効果を用いた冷却素子を備えた冷却装置の構成を示す部分断面図である。 陰極および陽極における設定温度との温度差(℃)と、陰極と陽極とのたわみ量wの差(nm)についての関係を示したグラフである。 陰極と陽極における設定温度との温度差(℃)と、陰極と陽極とのたわみ量の差を0nmとするための陽極の中空部の内圧との関係を示すグラフである。 本発明の他の実施の形態を示すものであって、電子トンネル効果を用いた冷却素子の構成を示す断面図である。 図5に示す冷却素子の真空空間部分を拡大した断面図である。 従来の冷却素子の一例であるペルチェ素子の構造を示す模式図である。 従来の電子トンネル効果を用いた冷却素子の構成を示した断面図である。 従来の電子トンネル効果を用いた冷却素子のCOP値の変化を示したグラフである。 従来の電子トンネル効果を用いた他の冷却素子の構成を示した模式図である。
符号の説明
1,20 冷却素子(熱電素子)
2 陰極
2a 陰極の電子トンネル効果に寄与する部分
3 陽極
3a 陽極の電子トンネル効果に寄与する部分
4 電源
5 真空空間
6 真空シール
7,23 低仕事関数材料からなる層
10 冷却装置(熱電装置)
11 加減圧ポンプ(調節手段)
12 (陰極側の)中空部
13 (陽極側の)中空部
14 圧力計(内圧計測手段)
15 温度計(温度計測手段)
16 制御装置(制御手段)
21 平坦化材料
22 スペーサー

Claims (6)

  1. 陰極と陽極とが真空空間を介して対向配置され、陰極に負電圧を印加し、陽極に正電圧を印加することによって、上記陰極から上記陽極へと電子を移動させて、陰極を冷却し、陽極を加熱する熱電素子であって、
    所定の内圧を有する中空部を備えた機構部材が、上記陰極および陽極の対向側とは反対側に、該陰極および陽極とそれぞれ一体的に設けられていることを特徴とする熱電素子。
  2. 上記陰極の一部分および陽極の一部分が、上記機構部材を兼ねていることを特徴とする請求項1に記載の熱電素子。
  3. 陰極および陽極に電圧が印加されていない非定常状態における上記中空部の内圧が、上記真空空間の内圧と一致するように調整されていることを特徴とする請求項1に記載の熱電素子。
  4. 請求項1ないし3に記載の熱電素子を備えた熱電装置であって、
    上記中空部の内圧を調節する調節手段を備えていることを特徴とする熱電装置。
  5. 上記調節手段は、陰極のたわみ量と陽極のたわみ量との差がなくなるように中空部の内圧を調節するようになっており、
    さらに、上記中空部の内圧を計測する内圧計測手段と、
    上記陰極および陽極の温度を測定する温度計測手段と、
    上記内圧計測手段および温度計測手段の計測結果に基づいて、上記調節手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする請求項4に記載の熱電装置。
  6. 上記調節手段は、陰極の中空部の内圧と、陽極の中空部の内圧とを、それぞれ独立して調節するようになっていることを特徴とする請求項4に記載の熱電装置。
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